機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-90 真実との邂逅

 

 

 

 放たれるアグニの閃光を躱し、幾度目かの接近。

 シグーが持つ重斬刀が、遂にストライクの持つアグニを切り落とした。

 

「ぐっ、くそぉ!」

「貴様に討たれるのならそれもまたとは思ったが、どうやらその器ではないらしいな……ムウ」

「何ぃ!」

 

 僅かに膨れる怒り。

 シュベルトゲベールを構えて、ストライクは接近戦に切り替える。

 しかし、ムウが接近戦へと切り替えるというのであれば、ラウはその逆──シグーに装備させてきたビームライフルを構えてストライクを狙った。

 

「堕ちろ、ムウ・ラ・フラガ!」

「なっ!?」

 

 正確無比な射撃に、ストライクの脚部が撃ち抜かれ爆散。機体の重量バランスが崩れた。

 そうして姿勢制御に意識を向けた時には、もう遅い。続く2射目でシュベルトゲベールを持つ腕部。3射目には左肩のソードストライカーも破壊される。

 

「くっ、がぁ!?」

 

 至近で起きた爆発にコクピット内部まで衝撃が及び瞬間的に意識が飛んだ。

 

「ふっ、やはり運命は私の味方のようだ──何っ!?」

 

 ラウが瞬間的に感じた悪寒。

 そこへ意識を向けた瞬間には光条が放たれて、ラウが乗るシグーのライフルを撃ち抜いていた。

 

「ムウさん!」

「フリーダムっ!? チィ!」

 

 その途轍もない機動力で以て接近。すれ違い様にビームサーベルを出力して、フリーダムはシグーの両脚部を切り落とす。

 

「くっ、さすがは……と言うところか──だが、役者は揃ったな」

 

 機体制御を失い墜落していく中、ラウはコクピット内でほくそ笑んだ。

 僅かにスラスターを稼働させて、地表にある建物の近くへとシグーを不時着させると、コクピットを抜け出る。

 

 同様に墜落していたストライクからは、ムウが出てきて互いに銃を向けた。

 

「はっ、今日こそ付けるかね、決着を!」

「野郎、何を言って──」

「ならば来たまえ! 引導を渡してやろう、この私がな!!」

 

 不敵に笑い放たれる銃弾をコクピットに隠れて躱したムウは、建物へと駆けていくラウを追うようにストライクから降りて駆け出していく。

 

「待て! ラウ・ル・クルーゼ!」

「ムウさん、待って──」

 

 直前で降りてきたキラの制止の声も間に合わず、ムウもまた廃墟となっているであろう建物へと入っていった。

 

 キラは逡巡。コクピット内にもしもの時のために用意されていたハンドガン持って、フリーダムを降りた。

 

「ここ、は…………」

 

 研究施設の様な建物。それを目の前にして、キラは足を止めた。

 廃墟となってる分どこか異様な雰囲気。それに僅かに呑まれる。

 

 銃を撃ったことはない。これより先は、本物の軍人同士の戦いの場であろう。

 だが、キラに今この場で退く選択肢はなかった。

 こんな事になるのなら、自分ではなくアスランが来てればよかったかと思うが、背に腹はかえられない。

 

 意を決して。キラは微かに銃声の聞こえてくる建物へと足を踏み入れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュエルのアサルトシュラウド装備が備える射撃兵装がバスター目掛けて放たれる。

 ディアッカはそれを対装甲散弾砲で迎撃。だがその一斉射撃を隠れ蓑に再びバスターへの接近を狙う。

 元よりデュエルは白兵戦向きの機体だ。射撃戦闘においてバスターに敵うはずもない。

 必然的に距離を置いての戦闘では勝負にならないのなら、接近するしかない。

 

 だが──

 

「甘いんだよ、イザーク!」

 

 それは何度もみた。何度も経験した。

 緩急もなく速度もない突撃に、今更ディアッカが捕まるわけもない。

 ミサイルポッドからの牽制だけで軽く押し留めることができる。

 

「アサルトシュラウド装備して接近戦なんて、はなから無理筋なんだっての!!」

 

 白兵戦を挑むにも、機動性を殺すデッドウェイトである射撃兵装を増やした状態で、さらに追加装甲によって運動性まで失われている。

 機動戦をするにはあまりにもお粗末な機体だ。

 

「ぐっ、このぉおお!!」

 

 懲りずに接近を試みるイザークの姿に、ディアッカは小さく笑う。

 思い出すはつい先日、シミュレーターでタケルのシロガネにボコボコにされた時の話である。

 

 

 “勘弁して欲しいぜ。ったく、お前にあんな機体使わせたら何もできねえじゃねえか”

 

 “そういえばミゲルから聞いたんだけど、ディアッカが僕のせいでトラウマ抱えちゃったって……”

 

 “ん? まぁな。お前達のせいで、接近されるのが怖くなっちまったっつーか、接近されると焦っちまうっつーか……というか逆にききたいんだけどよ、お前がバスターに乗って同じ状況だったらどうするんだ”

 

 “んー、僕たちの時みたいに後ろに防衛対象が……って時じゃなければ簡単だよ。全力で接近に合わせて後退して行けばいいでしょ”

 

 “下がってどうすんだよ? ”

 

 “相対速度合わせちゃえば止まって見える様なものじゃん。上手く速度調節すれば相手がのこのこのんびり近づいてきてくれる感じにできるんだよ。後は狙いすましてズドン。これで良くない? ”

 

 “そんな簡単な話かぁ? ”

 

 “もちろんバスターみたいな装甲厚くて重武装となれば、速度が出ないからそんな簡単じゃないけどね。でも相手が接近戦をお望みならバスターにとっては絶好のカモでしょ。相手は接近しなければ攻撃できないけどバスターは相手が攻撃を振りかぶるその瞬間まで好き放題撃てるんだから”

 

 “なるほど、要するに足を止めるなってことね”

 

 “狙いが付けにくくなるって言うなら散弾砲使えばいい。接近する程当てやすいよ”

 

 “はぁ……お前って敵に回すとえげつねえよな、本当……”

 

 “酷い言い草だね。せっかく色々と教えてあげたって言うのに”

 

 

 

「本当に……アイツの突撃に比べりゃ遅すぎるんだっての!!」

 

 アサルトシュラウドの追加装甲によって速度の出ないデュエルに合わせるように、バスターを後退させていく。

 そのまま引き付けて、引き付けて──十分な距離まで寄せたところで、連結兵装の対装甲散弾砲を放った。

 

「なっ!? うぁああ!!!」

 

 実弾故にデュエルにとって致命傷にはならないが、衝撃は別だ。

 十分に引き付けた分その威力も高い。

 直撃したデュエルは弾かれるように地表へと墜落していく。

 そこへ追い討ちの2射目を放ち、デュエルはそのままPS装甲を落とした。

 

「ふぅ、こうでもしないと、あの坊ちゃんは話を聞かないからなぁ────さて、どんな顔してくれるもんかね」

 

 墜落したデュエルの目の前へとバスターを着陸させ、ディアッカはコクピットを降りていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『兄さん。機体を降りて、そこから入っておいでよ』

 

 相も変わらず当然のように通信を繋いでくるユリスの声に従い、タケルは目の前に鎮座している建物へと目を向ける。

 

「降りた瞬間に僕の機体をドカン、なんてことをされかねない気がするけど?」

『そんなつまらない事で兄さんを殺すわけないでしょ。私は兄さんをただ殺したいわけじゃない──全力で殺し合いたいのよ』

 

 なんとも歪んだ趣向の持ち主である──タケルは、思わず顔を顰めた。

 殺し合うことに快感を覚えているなんて、変態極まりない。

 しかし、彼女の言うことには一定の信頼があった。

 オーブでの戦いでも無様を見せた己は見逃されてる──少なくとも彼女の自身への執着は、ただの生き死にによる決着ではなく、本当に殺し合いの果てにつくものなのだろうとわかる。

 

「わかったよ。それで、君はこの目の前の建物にいると?」

『言っておくけどここへ兄さんを呼んだのは私じゃないわよ。彼が会いたいと言ってたから呼んだだけ』

「彼、ね……一体どちら様だい?」

『来ればわかるわ』

 

 そう、と一呼吸置いてから、ハンドガンを手にしてタケルはシロガネを降りていく。

 

 建物へと歩いていくと、タケルの目の前には1人の少女が姿を現す。

 誰か、などとは言わずともわかる。反射的に、身構えるタケルであったがユリスは両手を上げて、戦闘に意思がないことを示してきた。

 

「ここでやり合う気は無いと?」

「さっきも言ったでしょう? やるなら本気の殺し合い。そもそもここに呼んできたのは彼に会わせるためなのに、やり合ってたら意味が無いじゃない」

「ふぅん? 信じて良いの?」

「信じないなら好きに銃でも向ければ良い」

 

 そう言って、ユリスは無防備を晒した。

 無警戒に見せる背中。そのまま着いてこいと言うように歩き始め、タケルは逡巡。

 銃をしまい、彼女の背を追うように歩き出した。

 

「じゃあ向けない」

「ふふ、子供みたい」

「君よりは大人だと思うけど?」

「ユリスよ。ユリス・ラングベルト」

「タケル・アマノだ」

「誰が名前をつけてくれたの?」

「育ててくれた父」

「へー、私はいつだか死んだ被験体の名前だけど」

「可哀想とでも言って欲しいの?」

「別に。名前なんかに意味は無いもの────さ、行きましょう」

 

 そのまま少しの距離だけ空けて歩いていく。

 既に何度も交戦し、命を狙いあった関係でいながら……同じ顔で恐らくは同じ境遇の2人。

 自身の正に分身と呼べるユリスに、自然と親近感をタケルは抱いていた。

 

 微かに聞こえる銃声の中、2人はメンデルが誇る巨大研究所の廃墟へと入っていく。

 

『──ここがなんだか知っているかね、ムウ?』

『知るか、この野郎!』

『ふっ、罪だな……君が知らないと言うのは!』

 

 よく知った声のやりとりが聞こえてきて、タケルは表には出さずとも僅かに動揺した。

 

「あの人が、君が言う彼?」

「知ってるの?」

「まぁ……一応」

「ふぅん。兄さんも不思議な運命を辿ってるのね」

 

 そのまま、聞こえてくるやり取りに耳を傾けつつ2人は歩いていく。

 

『ムウさん!』

『キラ!? お前なんで』

『あのまま戻るなんてできませんよ……マリューさんに何て報告すれば良いんですか』

『この、生意気言いやがって……』

『ふっ、よく来てくれたキラ・ヤマト。さぁ遠慮せず来たまえ。始まりの地へ────ここは、君達にとって生まれ故郷だ』

 

 生まれ故郷──その言葉に、タケルは確信を得た。

 

 ここなのだ。タケルが生まれ、キラが生まれ、そして目の前にいる少女ユリスも生まれた、人工子宮の研究施設。

 だが、ここに自分達を呼び込み、何をしようと言うのか。聞こえてくる声の主、ラウ・ル・クルーゼの意図がわからない。

 

『ぐぁっ!?』

『ムウさん!』

 

 ムウの苦悶の声と、キラの焦りの声が聞こえてタケルが思わず動き出そうとするも、それをユリスが制した。

 

「大丈夫。負傷したなら殺しはしないわ──彼もここで決着を求めてるわけじゃないもの」

「それをどう信じろと? 銃声が飛び交っているのに殺す気がない何て、信じられるものか」

「それで死ぬならそれまで。流石に殺す気で来られて応戦しないわけにはいかないでしょ。彼には殺しにかかる気が無いだけよ」

「だったら──行き先が一緒なら君の案内も必要ない。僕は2人と合流するよ」

「うん、良いよ。私は彼のところに行くから後は好きにすれば?」

 

 瞬間、タケルは小さく聞こえる声の方へと駆け出した。

 階段を駆け上がり、通路を抜け、そしてある部屋のドアの前で隠れてる見知った2人を見つけた。

 

「キラ、フラガ少佐!」

「タケル!?」

「お前まで、なんで……」

「問答は後です。フラガ少佐、傷は?」

 

 腰に巻いて持ってきたポーチを漁りながら、タケルはムウの様子を確認する。

 

「肩をかすめた程度だ。大した事ない」

「止血テープだけ巻きます。キラ、警戒をお願い」

「う、うん……」

 

 とは言うものの、キラに警戒はできても応戦はできない。

 返事を返したキラであったが、周囲を見回して敵の気配がないかを確認するだけ。

 仮に今襲撃されたら、何もできない確信があった。

 

 タケルがムウの応急処置を終えるのを、焦燥に駆られながら横目で見つめるのであった。

 

 

「久しぶりだな、タケル・アマノ君」

 

 聞こえる声に反応を示さず、タケルはムウの応急処置を終える。

 

「わざわざ呼び立てしてしまってすまなかったね。だが君にも来てもらいたかった」

「──タケル、お前。奴と面識があるのか?」

 

 ラウの言葉に、ムウとキラが怪訝な表情を浮かべた。

 一歩間違えばスパイの疑惑もかけられ兼ねない。ラウからかけられる言葉はそうとも取れそうなものであった。

 

「オーブ領海でアークエンジェルの援護のために戦った時、僕はザフトの部隊にやられて瀕死の重傷を負ったところをそのまま彼らに救助されました。あの人とはカーペンタリアで会ったんです」

 

 そう言ってタケルは、両手を上げるとそのまま部屋へと入っていった。

 

「お、おいバカ!?」

「タケル、何考えて!」

「大丈夫です。彼に今ここで僕らを殺す意志はありませんから」

 

 部屋の中にはラウと、そして追いついてきたのであろうユリスが並び立っていた。

 2人に対して、微動だにせず相対するタケル。

 タケルの言葉を俄かには信じられず、ムウとキラは部屋へ入ったものの大きなソファの影に隠れた。

 

「カーペンタリア以来ですね、クルーゼさん。お元気そうで」

「君こそ壮健そうで何よりだ。聡明な君の事だ……私があげたメッセージの意味は理解してくれただろう?」

「そうですね……知った時は貴方を恨みましたよ。できれば知らずにいたかった。でも知っておいてよかったとも、今は思っています──その点は感謝していますよ」

「ふっ、なるほど。賞賛に値するよ、君は。真実を知ってなお、まだそちらにいると言うのだからね────不思議そうだな、ムウ。我々の会話が理解できないかね?」

「当たり前だ! いきなり何の話だ!」

「ではキラ・ヤマト……君はどうかね?」

 

 かけられる問いにキラは肩を一度震わせるも、その意図を察した。

 タケルが知り、そして知らずにいたかったこと。そんなのはたった一つしかない。僅かに思考が巡る時間。キラは口を閉ざした。

 

「そこにいるタケル・アマノ君と、ここにいるユリス・ラングベルトは君の犠牲者だよ、キラ・ヤマト」

「──知ってます」

「ほう、それは話が早い」

 

 自身の生まれ。もたらされた悲劇。

 それらをキラは既に知っている

 最高のコーディネーター。その愚かな欲望のために生み出された犠牲者達の事を。

 

「キラ、タケル……どう言う事だ?」

 

 この場で──ただ1人ムウだけが、何も知らない。

 話に置いていかれてる雰囲気を感じながら、ムウは2人へと問いかけた。

 

「ふっ、はっはっはっは! 知らないのはどうやらお前だけらしいな、ムウ────折角だ、そこの無知で罪深い愚か者に、お仲間の君たちから教えてやると良い」

 

 ラウの声に、キラは一度目を伏せた。タケルもまたそんなキラの様子を伺う。

 ここに来た以上、自分達が話さなくても彼が伝えるだろう。

 荒唐無稽な信じ難い話である。敵方であるラウから聞かされて無駄な問答をするよりは、自分達から伝えるべきであるとも思えた。

 意を決して、キラは口を開く。

 

「僕は遺伝子研究の科学者であった本当の両親が生み出した人工子宮────それによって生み出された最高のコーディネーターの成功体です」

「そして僕とあっちの彼女は、その成功のために生み出された実験被験体。僕はその最終ナンバー283号……だったはずですが、恐らく彼女が──」

「そう、私が本当のラストナンバー284号よ。兄さん」

 

 284号。その意図するところを理解して、そして今なお自身を兄と呼ぶユリスにタケルは顔を顰めた。

 

「ユリス、僕たちは受精卵クローンだ。同じ遺伝子、同じコーディネート……僕と君は同じ存在というだけ。兄妹や家族といった繋がりはない」

「あら、冷たいのね」

「生まれの繋がりなんて、僕には関係ないだけだ」

「ふふ、まぁ良いけど」

 

 真剣な面持ちで2人からもたらされた話にムウは表情を失った。

 何を言ったのか、何を聞かされたのか。まるで理解が及ばない話。

 

「キラ、タケル……お前達、何をいって」

「驚きかね、ムウ? だがこれは現実だ。彼らは人の愚かな欲望が生み出した産物。そしてこの場所は、神を気取った愚か者達の夢の跡なのだ」

 

 信じがたい事実に呑まれたムウを嘲笑う様に、ラウ・ル・クルーゼは嬉々として語り出す。

 

 

 1人の男から始まる、人類の愚かな歴史を────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──くっ、くそ。この俺がナチュラルなんぞに」

 

 墜落したデュエルの中で、被りを振りながらイザークは朦朧とする意識を繋ぎ止めた。

 対装甲散弾砲とそれによって墜落した衝撃で、わずかな時だが意識を飛ばしていた。

 機体の状況は問題ないが、エネルギー切れでPS装甲がダウンしている。

 既に戦いは決していた。

 

「くっ、ちくしょう!!」

 

 見下していたはずのナチュラルのパイロットに負けたこと。

 自尊心を傷つけるには十分すぎる事実に、思わずイザークはコクピット内に拳を叩きつけた。

 

『おーい、イザーク。聞こえるか?』

「は?」

 

 ザフトしか──いや、ザラ隊しか知らない通信回線。

 そして聞こえてくる、死んだと思っていたはずの仲間の声。

 

「ディアッカ、貴様……なのか?」

『お、起きてたみたいだな。悪かった、大分手荒になっちまって』

 

 メインカメラが拾う光学映像には、デュエルの目の前へと降り立つバスターの姿が映し出される。

 

「貴様! 俺だとわかっていながらなぜ攻撃してきた!」

『あぁ? だってお前、動けなくなるくらいにしないと裏切り者とか言って話聞かないだろ絶対?』

「ぐっ、そこまで短慮ではない! ふざけやがって! それよりどういうことだディアッカ。貴様が何故、ストライクと共にいる!!」

 

 ディアッカの物言いに怒りを示したり、そのまま矢継ぎ早で問答に入ったりと、相変わらず忙しい奴だと思いながら、ディアッカはコクピットを開いた。

 

『とりあえずコクピットから降りてゆっくり話をしようぜ──ちゃんと説明すっからよ』

「──いいだろう。その代わり、少しでも納得いかなかったら許さんからな!」

『おいおい、そんなの一生説明したって無理じゃねえか』

「うるさい!! 早く出てこい!!」

 

 相も変わらずな嘗ての友に苦笑しながら、ディアッカはバスターのコクピットを出てコロニーの大地へと降りていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドミニオンの艦橋で、ナタルは険しい表情で状況を確認していた。

 

「ディザスターからの連絡は?」

「いえ、まだ何もありません」

「──そうか。引き続き監視を頼む」

「はっ!」

 

 応答するオペレータから視線を外して、隣で何も気にしていない様子で佇むアズラエルを見た。

 

「アズラエル理事。彼女が今どんな状況にあるのか、理事はご存知なのではありませんか?」

「いいえ。知っているのは彼女が今私の為に大切な任についているということだけです」

「何を言って──」

「目的だけは明確にしてあるんですよ。私が望むことをやり遂げろとね。それに付随する過程に全部口を挟んではいない……彼女はそれで結果を示してきた。だから彼女を自由にさせているんです」

「では、私は彼女の現状をどう判断しろと?」

「ないものとして考えましょう。どの道、戻ってきても補給や整備が必要な状況かもしれませんから」

「であれば、増援の要請は必要不可欠と判断しますが」

「そんなことをしてたら、ザフトにしてやられちゃうじゃないですか」

 

 ふざけているのか──そう思わずにはいられなかった。

 敵方の戦力は艦船が3。その数だけでも不利だというのに、艦載機もほとんどのストライクダガーが先の戦闘で撃たれている。残る新型3機だけでは、先の戦闘を見る限りまず渡り合えないだろう。

 

「話になりません。勝ち目のない戦いを自ら起こすほど愚かな事はない。私は艦の人員の命を預かる身です。不用意な賭けには賛同できません」

「ここでの戦いが、その後の世界に大きく影響してくるんです。今ここで命を賭けずしてどうするんですか。我々のここでの頑張りが、後々の兵士たちの命を救うんですよ────ここはそういう局面なんです。認識が足りませんね」

「でしたら、せめて増援を待つべきです。戦局を左右するというのであれば、それこそ準備を怠るべきではありません」

「まっ、それも間違いではないですがね。ですが間に合わないのなら動くしかないんです。最悪を想定して動く……これも当然のことでしょう」

 

 まるで間に合わないことがわかってるような。

 そんなアズラエルの声音と言葉に、ナタルは苦々しく唇を噛んだ。

 いってることはどちらも間違いではない。

 今この場にいるクルー達を無為に犠牲にはできないし、ここで踏ん張ることで後の連合の兵士を救えるというのなら、逃げずに戦う必要があるのもわかる。

 

 だが、目の前の男が見せる不敵な笑みだけは、言葉尻だけで捉えてはいけない何かがある気がした。

 

「艦と艦載機の整備が済み次第、再度進行する。総員、作業を急げ」

 

 

 通信機に投げつけられたナタルの声は、嫌というほどいつも通りの声のままであった────

 

 

 

 

 




イザーク君、ちょっと一周回って可愛いなおい

ここの場面はアニメだとホイホイ場面が切り替わってメンデルと外の話を行き来してくれるけど
小説だとそうもいかなくて難しいです本当。

なんか読みにくいわかりにくいって感触がありましたらどうぞお教えいただければと思います。

感想よろしくお願いします

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読者の皆様、ご愛顧の程どうもありがとうございます。
この喜びを糧に今後も書いていきますのでお楽しみいただければ幸いです。
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