機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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テンション上がってきた


PHASE-95 悪夢を越えて

 

 

 

 眩い──そう表現するしかないほどの光。

 

 戦場にいる全ての者が目を奪われるその光景。

 

「あっはぁ! 綺麗〜」

「なんだ!? あの光は!」

 

 核による攻撃。

 死神の鎌のごとく振り下ろされた圧倒的な光と熱が、宇宙要塞ボアズをその面影も無くなる程に破壊し尽くした。

 

 拠点の制圧などと言う生易しいものではない。

 一切合切を灰燼に帰すその威力は、それ故に使用を禁じられたものなのだと、目にした誰もが理解する。

 

 ミディバイドを駆るミゲル・アイマンもまたその威力を目の当たりにして、そして震えた。

 

「てめぇら……それはもう戦争でもなんでもねえだろうがよ!!」

 

 ビームソードを翻し、ディザスターへと接近。出力に任せて叩きつける。

 

 ミゲルの怒りは天を衝く程で、核の光に見惚れ不意を打たれたディザスターは受け止めきれずに後退させられる。

 

 たった今、この瞬間に。どれ程の数の命が奪われたのか。

 元が資源衛星であったボアズには充分な居住スペースが確保され、宇宙要塞として機能させるために、管制から整備、物資管理など地上にある基地と同等に人が配備されている。

 そこに居た者達が皆、有無を言わさず消されたのだ。

 戦いの有無もないそれはパナマで見た虐殺と同じ。

 

 ミゲルは思い至り唇を噛んだ。

 

 返されただけだ────核も、目の前の虐殺も。

 

 先に核を持ち出したのはザフトである。フリーダム、ジャスティス、そして自身が乗るディバイド。

 そしてパナマで行われた虐殺への報復がこれなのだ。

 結局は、自らが蒔いた種。怒りを覚えるなど本来お門違いなのかもしれない。

 

「でもよぉ……」

 

 ──だがそれでも。

 

(それ)で焼くのは違うだろう!!」

 

 確かに核を用いた。だがそれも機動兵器であるMSへと収めたものだ。

 虐殺もした。だがそれも元を正せばアラスカでの非情な地球軍の作戦を目の当たりにした故だ。

 この様な、戦略兵器による一方的な虐殺など。される謂れは無いはずだ。

 

 後退していくディザスターへと追い縋る。

 怒りに任せ再びビームソードを叩きつけたところで、ディバイドには接触回線で通信が届いた。

 

『ねぇ、なんで怒ってるの? バカみたい』

「何!?」

『こうなる道を自ら歩んでおいて、今更悪いも何も無いじゃない────これを悪いと言える世界なら、私と兄さんは生まれてこなかった』

「何訳のわかんない事を!!」

 

 距離を離し通信を遮断。

 即座に背部のガラディンを展開して大口径の高出力プラズマ砲が火を噴く。

 

「甘いのよ、その程度で!!」

「なっ!? この距離で躱した!」

「はぁああ!」

「ちっ、嘗めるな!」

 

 今度はディザスターから接近。

 両腕部のビームサーベルが展開され、ディバイドを急襲する。

 ディバイドもビームソードで迎え打つが、出力の差を把握したユリスは打ち合う事をせずぶつかり合う事をせず。

 接近し回り込み、次々と死角を狙う様にビームサーベルを翻した。

 

「この、ちょこまかと!」

 

 ディバイドのビームソードを最大出力。

 大きく光の刃を伸ばして、ディザスターを引き剥がす様に薙ぎ払う。

 シールドで受けるのも憚るその刃から逃れるため、ディザスターは大きく距離をとった。

 

『良いの、お兄さん? 私と遊んでて?』

「今度は何を言って──」

 

 センサー類が拾う戦場の情報に目を見開いた。

 

 そこに広がるのは地獄絵図。

 今は跡形も無い防衛対象であったボアズ。その唯一の救いは、出撃できる全戦力が出払っていた事である。出撃したMSとそのパイロットにはまだ健在な者が多い。

 犠牲になったのは要塞内部にいた支援の人員のみなのだ。

 

 だが、ボアズを失いヤキン・ドゥーエへ撤退しようとする生き残り達を、地球軍の部隊が追い回し次々と手にかけていく。

 戦う意志をなくした敗残兵を、容赦なく刈り取っていく光景がそこにはあった。

 

「ふふ、どうするのかなお兄さん? 怒りに任せて私と遊ぶ? それともお仲間を助けにいく?」

「くっそがぁ!」

 

 ミゲルはディバイドを翻した。

 向かうは追い回される残存部隊。その殿を務め、少しでも多くの仲間を撤退させる。

 それが今、ミゲル・アイマンにできる最善だった。

 

 だが、その想いは非情な悪意に阻まれる。

 

 眼前を奔る閃光。

 ディザスターの肩にある大型ビーム砲塔が、ディバイドの向かう先を次々と先撃ちしていき、ミゲルの目の前で同胞達の命が消えていく。

 

「あっははは! ホラ、早く守らないと皆死んじゃうよ!」

「てめぇ……」

 

 ディザスターへと振り返りガラディンを構える。

 展開されたガラディンのプラズマ散弾砲で面制圧をかけてディザスターを退ける。

 被弾を嫌ってシールドを構えたディザスターに向けて、そのまま最大出力で2回3回と立て続けた。

 

 そのうちの一つがシュバイツァを掠める。

 

「ん? ちっ……運の良い」

 

 僅かに受けた損傷の影響でディザスターのコクピットには、シュバイツァの使用のエラーが発生し、ミゲルの攻撃が功を奏した。

 

「まぁ良いわ。目的は果たせたのだから……じゃあね、お兄さん」

「よし! 下がったか……急いで守備軍を──」

 

 ドミニオンへと撤退していくディザスターを見送り、ミゲルは急いでボアズ守備軍の撤退を援護しに向かおうとした。

 だが、既に被害は壊滅的の一言に尽きる。

 殆どは屠られ、残っているもの達も散り散り。部隊単位での撤退はもはや叶わず、地球軍も既に撤退の姿勢に入っていた。

 

 ミゲル・アイマンは、間に合わなかったのである。

 

 

「く……そ……こんな……くそぉおおおお!!」

 

 

 ディバイドのコクピットの中で、ミゲルは力及ばずに守れなかった事を悔いるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 観測される事態────消し飛んだボアズと、犠牲になった部隊。

 

 その事実を見せつけられ、パトリックを始めその場にいたもの達は怒りに震えた。

 

「こんな、事が──」

「おのれ、ナチュラル共!! クルーゼ!!」

「はい」

「ヤキン・ドゥーエにあがる──“ジェネシス”を使うぞ!!」

 

 怒りなどでは無い。もはやそれは憎しみ。

 膨れすぎた憎悪を湛えて、先鋭した怨嗟を纏って、パトリックは憤怒の形相でそれを告げた。

 

「はっ!」

 

 従順に返礼をして、ラウはわからないくらいにほくそ笑む。

 

 また一つ、世界は進んだ。

 また一つ、人は歩みを進めた。

 世界の流れは止まらず、人類はその流れに逆らう事なく歩み続けるだろう。

 

 ──終末へ向かって。

 

 人類の破滅に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクンと脈打つ心臓がやけにうるさくて、フレイ・アルスターはそれを落ち着ける様に目を伏せた。

 しかし、目を伏せれば先の光景がまた過り、フレイの胸をざわつかせる。

 

 

 第7機動艦隊旗艦ヘレネーの艦橋にて、ミュラーの隣でフレイは先の戦闘を目にしていた。

 否、戦闘となったのは最初だけである。

 ピースメーカー隊の発進──そして核攻撃。

 フレイが目にしたのは、恐怖を覚えるにふさわしい圧倒的な光と、その後に残る破壊の痕のみ。

 あの一瞬でどれだけの数の命が失われたのか。それを思った時には、胸の内に強烈な吐き気を覚えていた。

 

 顔色悪いフレイを気遣い、ミュラーが外の見えない場所へと退避するよう命じて、今フレイはヘレネーの休憩スペースに来ていた。

 

 流石に後悔が募った。

 逃げ出してはならぬと自分を叱咤してヘレネーへと同乗したが、とても間近で見るものでは無いと思えた。

 これまで見てきた戦火とは違う。

 規模の大きすぎる兵器の威力を目の当たりにして、これまでとは違う気持ちの悪さを覚えたのだ

 

 これはもう、戦争ではないと。

 

 MSとか戦艦だとか、それらの性能がなんの意味も齎さない規格外の兵器。

 それを撃ち放ってしまったこと。それがフレイの胸にある気持ち悪さ──不安の正体である。

 撃てば撃ち返されるのは当然の帰結だ。同じことをやり返される覚悟を持たなければならない。

 月基地か、或いは再び地上へと何らかの報復がなされるか。

 いずれにしても、ザフトとてこのままでは終わらないはずである。

 

 戦後の平和を────見据えていた世界が、脆く崩れ去っていく様な気がしていた。

 

「アルスター」

「准将……すいません。すぐに戻りますから」

 

 いつの間にか来ていたミュラーの声に、フレイは気丈に返した。

 

「気にするな。あれを見て思うところがいない奴などいない。むしろ色々と俺から今後を聞かされてるお前の方がよっぽどキツイはずだ」

「大丈夫ですから……自分で望んで、私はここにいます」

「無理はするなよ。次はプラントだ……後味の悪さは、ボアズの比じゃないからな」

「いえ、ちゃんと見届けます。この戦争がどうなるのか。どれほど惨いものなのか────それを知らないと、私の言葉には何も意味を持ちませんから」

 

 強く視線を返すフレイに、ミュラーは嬉しくもあり、どこか辛くもあった。

 彼女を保護したのは元々、ブルーコスモスに利用されないためだ。

 戦火に散ったジョージ・アルスター外務次官の娘。反コーディネーターを謳うにはちょうど良いプロパガンダになる彼女を保護し、利用されない様にするため。

 だが、終戦後の平和を見据えてミュラーもまた、彼女を利用する事を考えてしまった。

 まだ15の身空で背負うには重すぎる戦後の未来を、彼女の志願理由にかこつけて背負わせてしまった。

 大人として。歴の長い軍人として。

 そんな選択を安易に取ってしまった己を、ミュラーは情けなく思った。

 

「──無理だけはするなよアルスター。一先ずは休んでおけ」

「お気遣い、ありがとうございます」

 

 感謝を返すフレイの声を聞いて、ミュラーは踵を返した。

 

 

 次なる目標──プラント本国までの距離は、着実に縮まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全艦発進準備。各艦員は至急持ち場に就け。全艦発進準備。各艦員は至急持ち場に就け』

 

 エターナル、クサナギ、アークエンジェル艦内にはそれぞれ緊急発進のアナウンスが流れていた。

 その最中、呼び出されたパイロット達は各々の乗艦に戻り艦橋へとあがる。

 

「ラクス、動くの?」

「月艦隊のボアズ侵攻と聞いたが」

 

 艦橋へと入ったところですぐに、キラとアスランは状況を知ってるであろうラクスへと問いかけた。

 既に艦橋のモニターにはクサナギやアークエンジェルの艦橋とも通信が繋がっており、指揮官同士で話が進んでいた事がわかる。

 

「キラ、アスラン……いえ、残念ですが事態はもっと早く、そして最悪な方向へと進んでしまいました」

 

 ラクスの言葉に、嫌な予感がヒシヒシと感じられた。

 モニター越しに見えるキサカやマリューの表情も悲痛を示して硬い。

 

「クライン派からの情報ではもうボアズは落ちた。地球軍の核攻撃によってな」

 

 バルトフェルドの言葉に、艦橋へと上がっていたパイロット達一同の息を呑む気配が伝わってくる。

 正に考え得る最悪。

 核攻撃の引き金が引かれた──それは、互いに戦略兵器を撃つ事を厭わなくなった事を指す。

 戦争をどうにか止めたいと願っていた彼らにとって、最も厳しい現実であった。

 

『ジョシュアのサイクロプスの後だからな……ある種、驚きは小さいけど』

『ムウ……』

『クルーゼさんが言ってた最後の扉って、これの事だったんですね』

 

 メンデルで聞いた、ラウの言葉。

 最後の扉──そしてユリスが持ち去った、最後の鍵。

 終末戦争へと導く、核攻撃の扉であったのだ。

 

「とにかくもう、これでプラントも黙っちゃいないだろう。Nジャマーキャンセラーは、プラントにもあるんだからな────どちらももう、躊躇(ためら)うまい」

 

 そう、この先は核に核を返す戦争だ。

 撃たれた以上プラントも黙ってはいないし、撃った以上地球軍も止まることをしない。

 目の前に並んだ現実に、彼らは僅か打ちひしがれた。

 

 結局、この事態を避けることは叶わず。

 願い虚しく、人は滅びの道を歩もうとしている。

 

「──何で、そんなものがあるんだろうね」

「キラ?」

 

 徐に呟いたキラの言葉は、静まり返った艦橋の中で妙に大きく響き渡った。

 

「核なんてさ……MSも銃も同じかもしれないけど」

「そうだな、同じだ。だからこそ、まだ止められる」

「アスラン?」

 

 MSも銃も、そして核兵器も。使うのが人なら、止めるのもまた人だ。

 だからこそまだ、次の引き金は止められる可能性がある。

 

「ザフトを動かしてるのは父上だ。俺は息子として、父上を止めなければならない。愚かな核の撃ち合いなどしても、何も取り戻せはしないと」

 

 母を失い、変わりきってしまった父。最後に見た姿は、いっそ憐れみすら覚える程、憎しみに取り憑かれたものだった。

 息子として──アスランは、亡き母が決してナチュラルを滅ぼす事を望む様な女性ではなかったと。もう一度父に思い出してもらいたかった。

 

『うん、止めよう──僕達で』

『兄様……』

 

 クサナギの艦橋からも、タケルの声が挙がる。

 

『この事態はユリスを逃した僕の──いや、止められなかった僕達のせいだ。だから、絶対に止めよう。

 起きてしまった事は戻せないけど。僕達にはまだ、止められる未来が残されてるはずだ』

 

 考え得る最悪。だが、まだ終わりではない。

 まだ世界も人も、そこまでは至っていない。

 

『父さん達が託してくれたのは、ここで折れない意志だから』

 

 決意の瞳を携えて、偉大な父の遺志をタケルは言葉に紡いだ。

 

『兄様……うん、私も諦めないぞ』

『艦長、俺達も沈んではいられないな』

『えぇ、その通りね』

「ラクス、僕達だって」

「はい、この状況に悲観してなどいられませんね」

 

 カガリの声を皮切りに、決意が伝播する。

 最悪の事態に沈んだ空気が、戦う意志に彩られていく。

 

 

「よし、話は纏まったな。全艦緊急発進。ヤキン・ドゥーエに向かうぞ!」

 

 

 バルトフェルドの号令に、異口で応の声が揃い、彼らは世界を止めるべく戦地へと向かった。

 

 これが、戦火を止める最後のチャンスだと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤキン・ドゥーエ。

 プラント防衛の最後の砦であるここに、ザフトは全戦力を配置していた。

 

 

 補給と整備を終えて再度の侵攻を開始した地球軍艦隊に対して、ザフトはすぐ後ろにプラントを置く背水の陣。

 

 

『ナチュラル共の野蛮な核など、もうただの一発とて我らの頭上に落とさせてはならない!!』

 

 

 ヤキン・ドゥーエに上がったパトリックに代わり、国防の指示を一任されたエザリア・ジュールの演説と共に、ヤキンを取り巻くように居並ぶ無数のMS達。

 

「母上……」

 

 今はジュール隊の隊長として部下を持つイザークもまた、デュエルのコクピットで母の演説を耳にしていた

 

『血のバレンタインの折、核で報復しなかった我々の思いを、ナチュラル共は再び裏切ったのだ! 

 ザフトの勇敢なる兵士達よ! 今こそその力を示せ! 奴等に思い知らせてやるのだ! この世界の、新たな担い手が誰かということを!』

 

「ジュール隊、行くぞ!!」

 

 母の声に背中を押されるようにイザークはデュエルを走らせた。

 背後には母のいる国防本部。そして守るべきプラントが居並ぶ。

 これより先はたったひとつの砲火とて、漏らすわけにはいかない──決死の覚悟を以て、ザフトの部隊は迫り来る地球軍を迎え打つ姿勢だ。

 

 

 そして、彼もまた。

 

「────来たか、地球軍」

 

 胸に宿す憎しみの炎。瞳に映るは絶対的な敵。

 先のボアズ防衛戦における屈辱。何もできぬまま無様にも仲間を討たせたその雪辱を晴らすため。

 

 何より、彼が戦う理由の根幹────プラントで暮らす弟と母を守り抜くために。

 

 ミゲル・アイマンもまた背水の陣で目の前の戦場を臨んでいた。

 

「借りは返す。プラントには、一つたりとも核を撃たせはしねぇ」

 

 ディバイドのガラディンを展開。

 砲身が組み替えられ作られるのは、散弾砲と大口径ビーム砲に続く最後の形態。

 MSが扱うには桁違いな、超長距離で射抜くことができるビームスナイパーライフルである。

 

「ここから先へはいかせねえぞ!!」

 

 

 ディバイドから放たれる閃光が火蓋をきり、今ここに第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦が幕を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エターナル、クサナギ、アークエンジェルの3隻が戦場へと近づいた所で、戦端は開かれた。

 

 両陣営の争いが戦場に幾つもの光を咲かせて、彼らの眼に映り込む。

 

「ちっ、おっぱじまっていたか。MS隊全機発進だ!」

 

 バルトフェルドの号令に合わせて、各艦の艦載機が発進シークエンスを開始した。

 

 

『核を、たとえ一つでもプラントに落とさせてはなりません。

 討たれる謂れの無い人々の頭上に、その光の刃が突き刺されば、それはまた果てない涙と憎しみを呼ぶでしょう』

 

 

 通信越しに聞こえるラクスの言葉に、今眼前に広がる戦場がそれを定める場所だと。搭乗機で待ち構えていたパイロット達は改めて認識した。

 

 撃ち合う両者の中を駆け抜け、放たれる禁断の光の矢を全て防ぐ。

 そんな不可能に近いミッションであっても、今の彼らは臆する事なく向かう覚悟を胸に宿している。

 

「キラ・ヤマト──フリーダム、行きます!」

「アスラン・ザラ──ジャスティス、出る!」

 

 エターナルからはフリーダムとジャスティスが。

 

「ムウ・ラ・フラガ──ストライク、出るぞ!」

「ディアッカ・エルスマン──バスター、発進する!」

 

 アークエンジェルからはストライクとバスターが。

 

「サヤ・アマノ──アストレイ、出撃します!」

「こちらアイシャ。ルージュも行くわ!」

「アサギ・コードウェル、行きます!」

「マユラ・ラバッツ、出撃します!」

「ジュリ・ウー・ニェン、発進します!」

 

 サヤ、アイシャ、アサギ、マユラ、ジュリとクサナギからも順番に発進していく。

 そして──

 

「エリカさん、シロガネの発進後に“ビャクライユニット“を射出してください」

『調整は終えてるわ。後は貴方次第よ』

「ありがとうございます。タケル・アマノ──シロガネ、出撃する!」

 

 クサナギより、タケルのシロガネも飛び立った。

 

 

 

 

「ミーティア、リフトオフ!」

 

 バルトフェルドの声に合わせて、エターナル艦首両舷に固定された大型アームドユニット“ミーティア“が切り離される。

 フリーダムとジャスティスの専用運用艦であるエターナルに備え付けられた、両機専用の外部アームドモジュールである。

 核動力搭載機である両機の特徴を生かし、その潤沢なエネルギーを用いた圧倒的火力と機動力を付随させることができる外部ユニットとなっており、93.7cm高エネルギー収束火線砲や77門もエリケナウス 対艦ミサイル発射管。更には機体本体の腕部マニピュレーターで制御する2門の120cm高エネルギー収束火線砲とMA-X200 ビームソードの複合兵装。

 これらが備える火力は戦艦数隻分にも及ぶ。

 

 

「こちらも出すわ──ビャクライユニット射出!」

 

 そしてクサナギからも、白銀に輝く大型の戦闘機のようなものが射出される。

 サイズはメビウスをひと回り大きくした程度であるが、見た目としては刺々しいユニットが幾つも備えられたエールストライカーの様である。

 

 シロガネ用に製作された追加スラスターユニット──名称“ビャクライ“。

 

 シロガネの背部メインスラスターをすっぽり覆うように装着される、大型スラスターと6枚のサブスラスターを複合させたシロガネの強化ユニットである。

 主な目的はドラグーン兵装の課題であった電力の確保。その為に高性能バッテリーをユニットに2つ積み込んだ長期戦を見据えたものになっている。

 また、装着時は背部スラスターを覆ってしまう関係で使用不可となるジンライに変わり、ビャクライユニットのサブスラスター6基がジンライ同様に、ドラグーン兵装ビャクライとなっており、こちらはビーム砲塔を備えたものである。

 

 

『私達は、一歩間に合わなかったのかもしれません』

 

 

 発進したフリーダム、ジャスティス、シロガネの3機は各々が外部モジュールとドッキング。

 

 

『平和を叫びながら、その手に銃を取る。それもまた悪しき選択なのかも知れない。でもどうか今、この果てない争いの連鎖を────断ち切る力を!』

 

 

 聞こえるラクスの声に、3人は力をもらった気がした。

 ミーティアとビャクライを装備して、3人は破滅へと向かおうとする戦場を見据える。

 

「ドッキング完了──いけます!」

「こちらも問題無い──やるぞ!」

「シロガネ・ビャクライ──最大戦速で戦場に向かう!」

 

 

 

 争いを止める最後の剣を手にして、彼らは今、戦場を駆ける。

 

 

 




舞い降りる剣と併せてseedの心震える名シーン第2弾。(オーブ脱出は心が咽び泣く名シーン
断ち切る力をーーからのミーティアが本当好き。

残りのお話もあと僅か。どうぞ最後までお楽しみください。

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