機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-98 世界を止めて

 

 

 

 薄暗いロッカールーム。

 

 常飲している細胞分裂の抑制剤を口に含みながら、ラウ・ル・クルーゼは出撃の準備を整えた。

 

 パイロットスーツに着替え、格納庫へと向かう。

 

 思えば、短くも長い人生であった。

 

 

 アル・ダ・フラガに生み出され、捨てられ。

 人類に絶望し、世界に憎悪を抱きながら生きてきた。

 

 同時に、そうなってからは世界が面白くて仕方なかった。

 きっかけを与えれば動いていく。

 さながら盤上の駒を扱うゲームの様に。

 

 己も含めて、この世界に生きる者達は世界に操られる道化の様にも思えた。

 

 同志となるユリスにそれを伝えた時は酷い顔をされたものである。

 

 神様気取りの愚者に生み出された自身もまた、この世界で生きる事を放棄して高みの見物に至ろうとした、神様気取りの愚者であったのだ。

 

 ふっ、と小さく笑みが零れた。

 

 道化でないのは、彼等くらいの者だろう。

 今終末へと向かう世界に、必死に抗おうとしている。

 

 ならば、最後まで道化を演じよう。

 扉の開かれた世界。その行く末を任せ、自身は役を演じ切ろう。

 

 最後の最後まで……

 

 

 

 ラウは格納庫へと辿り着く。

 

「理論はお解りかと思いますが?」

「あぁ、問題ない」

 

 迎えてくる整備士に尋ねられ、鎮座する機体を見上げる。

 

 ZGMF-X13A プロヴィデンス

 

 ミゲルが乗るディバイドと同時期で開発されたが、設計の変更等で完成が遅れた、核動力機体の最後の1機。

 背部に備えられた円盤状のバックパックと、機体各部に計11基のドラグーン兵装を備えており、その砲門の数は43門にもなる。

 プラント及びジェネシスを防衛するため、ラウの専用機として完成された、単騎で戦域を制圧する最強のMSであった。

 

 神の意志──その意を持つプロヴィデンスに乗り込むと、ラウは機体を起ち上げていく。

 

「使って見せるさ──あの男にできて私にできないはずがない」

 

 ドラグーンは、ムウが乗るガンバレルシステムから考案され作られたものだ。

 カガリやサヤが扱えないと言ったように、使いこなすにはある種の資質が問われる。

 

 常人と比べて遥かに優れる空間認識能力────その資質を、ムウが持っていてラウが持っていないはずが無い。

 

 

 起ち上がったプロヴィデンスのデュアルアイに光が灯る。

 PS装甲が展開され、少し色濃くなった灰色を身に纏い、ザフト最強のMSが動き出す。

 

「ラウ・ル・クルーゼだ──プロヴィデンス、出るぞ!」

 

 ヤキン・ドゥーエより、この舞台の最後の役者が躍り出た。

 

 

 

 

 

 

 ラウが乗るプロヴィデンスの発進と同時────ジェネシスの第2射が放たれた。

 

 

 またも宇宙を引き裂く禍々しい光に、地球軍が次々と呑み込まれていく。

 

 だが、展開している地球軍を狙ったにしては、その射線は少し外れていた。

 

 

 

「この照準──まさか、想定される目標はどこだ!」

 

 ドミニオンでそれを確認していたナタルはハッとした様に確認の指示を飛ばす。

 

「推定目標──月面、プトレマイオスクレータかと思われます!」

「くっ、やはりそうか!」

 

 してやられた。ザフトは先に補給拠点となる月基地を落としにきたのだ。

 

「映像、出ます!」

 

 オペレーターが艦橋モニターに表示した月面の映像に皆が息を呑む。

 その余りにも超大な威力に噴煙のキノコ雲が上がっており、間違いなく月基地は壊滅している事が容易に想像つく。

 

 地球軍は残る残存戦力だけで、ジェネシスを攻略することを余儀なくされた。

 

「支援隊より入電! 我、艦隊の半数を喪失!」

 

 更に苦しい報告が挙がる。

 月面より向かってくるはずの支援艦隊までもが、先の2射目に呑み込まれていたのだ。

 

 もはや数の利すら取れない。

 頼みの綱は、現在旗艦となっているドゥーリットルが保有している核攻撃隊のみであった。

 

 しかし、戦闘開始から思う様にジェネシスへの侵攻はできていない。

 ザフトも何重にも張り巡らされた防衛戦で、死守する構えなのだ。

 

「核攻撃隊を出せ!」

 

 ナタルの背後から声が挙がった。

 見ればCICの席でドゥーリットルへの通信を繋いでいるアズラエルの姿。

 

「アズラエル理事、何を!」

「核攻撃隊の半分をプラント群へ向けろ! あの忌々しい砂時計を狙って、奴らに防衛の手を広げさせるんだ!」

 

 ドゥーリットルからは二つ返事の了承が返された。

 

 ジェネシスの防衛線を緩めさせる。

 プラントを狙われれば、ザフトは防御に回らざるを得ないだろう。そうすれば、ジェネシスへ

 だがその分、ジェネシスを破壊するための手が削られる。

 

「しかし、それではあの兵器を撃つ事が──」

「月基地が撃たれた事を理解しろバジル―ル! 残る目標は地球しかない! 次が放たれたら終わりだ! もう、その秒読み段階なんだよ!」

「くっ!」

 

 確かに状況はそうだ。

 アズラエルが言うように、残る目標は地球以外に無い。

 そして今さらもう、ザフトは躊躇しない。

 ジェネシスのミラーブロックの換装が済めば、地球が撃たれる。

 もはや、なりふり構っては居られない状況であった。

 艦長席へと座りなおしたナタルは指示の声を飛ばす。

 

「機関最大! 転進してプラントへ向けろ! 敵防衛軍を釣りだしてから再度転進! 敵の大量破壊兵器を叩く!」

「ドゥーリットルへ打電だ! 核攻撃隊の半数をα隊としてプラント群、もう半数をβ隊として例の兵器に向かわせる。カラミティ、フォビドゥン、レイダーをαに、ディザスターをβに回せ!」

「りょ、了解!」

 

 ドミニオン、及び数隻がプラント群へ進路を向けて転進。

 追い詰められながらも、必死にジェネシスを破壊するべく抗戦を試みはじめる。

 

 

 

「地球軍! ドミニオン他数隻が転進していきます!」

 

 ミリアリアの報に、3隻同盟は息を呑んだ。

 プラントへの転身。核攻撃への示唆だと誰もが読める。

 

「くそっ、目標はプラントか!」

「アークエンジェルが追います! クサナギとエターナルはジェネシスへ!」

「わかった!」

「了解した!」

 

 ここで、彼等も二手に別れた。

 艦船の戦闘力でドミニオンに渡り合えるアークエンジェルを連合に。クサナギとエターナルはザフト──ジェネシスへと舵を切る。

 

 フリーダム、ジャスティス、アカツキ、ストライクとバスターは、核ミサイルを止めに先んじてプラントへと向かい、クサナギの艦載機達はアカツキを除いて、ジェネシス攻略の為エターナルとクサナギへと随伴していく。

 

 

 

 その最中、タケルが乗るシロガネはエターナルとクサナギの進路を切り拓くべく、ジェネシスへと先行していた。

 

「っ!?」

 

 直上より飛来する光。

 

 危なげなく躱したタケルがそちらへと意識を向けると、そこにはオレンジを基調とした機体──ミゲル・アイマンが乗るディバイドの姿があった。

 

「──ジェネシスへは、行かせねえよ!」

 

 ザフトの切り札であるジェネシスの防衛。

 最重要任務として、その最前線に配置されたミゲルのディバイドが、ガラディンを展開して構える。

 大口径のプラズマ収束砲が、シロガネ目掛けて放たれた。

 

 ビャクライユニットの推力に任せて大きく躱すが、タケルはガラディンの威力に表情を険しくさせた。

 

「くっ、この出力……ここに来て核搭載機か!」

「逃がすかぁ!!」

 

 砲身の転換。散弾砲へと変えて、更にシロガネを追い撃つ。

 

「嘗めるな!」

 

 ビャクライによって、背中にMSを背負っているようなサイズへと変貌したシロガネだが、それでもまだ距離が離れているこの状態であれば躱すことは容易い。

 そして、その莫大な推進力を以てすれば、接近とて容易い。

 

「ちっ! 捉えらえれねえか!」

「うぉお!」

「甘いんだよ!」

 

 接近してくるシロガネに対して、ディバイドはガラディンをマウント。シールドとビームソードを手に取りシロガネの接近戦に応じていく。

 

「対応が早い! 厄介な!」

 

 受け止められた瞬間にシロガネは距離を取り、ビャクヤで牽制の射撃。

 それを躱したディバイドは、シールドからライフルに持ち替えて、シロガネへと撃ち返していく。

 

 シロガネはそれをビャクヤで切り払い再び接近戦へ。

 ディバイドは機先を制する様にガラディンを展開し、寄せ付けないように撃ち放つ。

 

「くっ、やっぱり!」

「くそ、思った通り!」

 

 一合、また一合と。

 光の刃を打ち合わせ、引き金を引く度に見えてくる。

 見知った動き。覚えのある攻防。

 

「ザフトの新型……そのパーソナルカラー」

「その戦い方……その動き」

 

 再び、ビャクヤとビームソードがぶつかり合った。

 

「やはり君か、ミゲル!」

「やはりお前か、タケル!」

 

 

 死闘の末に友となった2人は、戦場で望まぬ再会を果たす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゥーリットルよりピースメーカーα隊が出撃。

 その随伴にはカラミティとフォビドゥン、レイダーが付き、プラント群へと向かう。

 

 それを迎え撃つは、イザーク・ジュールが率いるジュール隊を筆頭とした、プラント防衛部隊。

 

「──核攻撃隊、来たな。散開!」

 

 多くの仲間達を従えて、イザークはデュエルを走らせた。

 

「プラントへと放たれる砲火。一つたりとも通すんじゃないぞ!」

 

 通信越しに聞こえる了解の声と共に、プラント防衛部隊がピースメーカーα隊へと向かう。

 

 

「ちっ、またこいつらの御守りかよ」

「あぁーうざい!!」

 

 それらを次々と排除していくカラミティとフォビドゥン。

 ありったけを撃ちまくるカラミティと、フレスベルグで複数を一気に巻き込むフォビドゥンの構成に、ピースメーカー隊へ近づけない。

 

「くっ、あいつらぁ!」

 

 デュエルを駆るイザークが必死に食らいつこうとするも、レイダーに標的にされ、その高い機動力に翻弄される。

 

 その間にも、準備を終えたメビウスから核ミサイルが次々と放たれていった。

 

 

「させるか!」

「何故こんな事、平然とできる!!」

 

 

 戦場を駆け抜けるフリーダムとジャスティス。

 再び開かれるミーティアと併せた全砲門の解放で、一気に核ミサイルを薙ぎ払う。

 

「ちぃ、あいつ等!!」

「今日こそは!」

 

 そんなフリーダムとジャスティスを確認して、カラミティとフォビドゥンが2機に応じていく。

 

 足を止められた2機の隙間を掻い潜り、次なる核攻撃隊がプラントへと迫った。

 

「ええぃ!!」

「これ以上やらせるかよ!」

 

 カガリが乗るアカツキがビームライフルと背部のプラズマ収束砲2門を。

 バスターは連結兵装、対装甲散弾砲で、後続の核ミサイルを薙ぎ払った。

 

 

 アークエンジェルもまた、核攻撃隊の母艦であるドゥーリットルを沈めるべく接近していく。

 

「アンチビーム爆雷発射。バリアント、ゴッドフリート照準!」

 

 

 

 

 

 

「α隊、半数が損失!」

 

 オペレーターからの報告にナタルは表情を苦くした。

 

 ここに来てこれまでの行動が裏目に出た。

 先に行われた核攻撃によって、連合の狙いがプラントだと想定されるのは自明の理。

 核攻撃隊を別けて、引き付けたかったはずのザフト部隊よりも、駆けつけたフリーダム、ジャスティス等との交戦となってしまった事で、結果的にカラミティ等Xシリーズを足止めされてしまった。

 

「ちっ、あの馬鹿どもが!」

「ブルー117、マーク52αにアークエンジェル接近。距離900! ドゥーリットルへと向かっています!」

 

 思わず歯噛みしてしまう。

 理解はしている──自分達が彼等の敵だという事は。

 そうとしか思われないことをやってしまっている。

 

 たった今、またもや核ミサイルをプラントへと放った。それで信じて欲しいなどとは、言えるわけがない。

 

 それでも──

 

「(地球を守りたいと思うのはきっと貴女も同じだと言うのに……私達は敵になってしまうのだな)」

 

 それが仕方ない事だとはわかっているが、ナタルはやるせなくなった。

 

「バジル―ル! ドゥーリットルを撃たせるな、前に出ろ! 何をやっている!!」

 

 アズラエルの声に、ナタルは迷いを払拭した。

 ドゥーリットルに核攻撃隊はもう残っていないが、まだ核ミサイルが残されている。

 艦船ごとジェネシスへと突撃させれば、遠隔で起爆させてあれを破壊する事も出来る筈であった。

 

 ジェネシスを破壊するまで、ここでドゥーリットルを撃たせるわけにはいかないのだ。

 

「推力最大。回頭20。アンチビーム爆雷発射。ゴッドフリート照準」

 

 起ち上がっていく艦砲システム。見慣れた戦艦に、ナタルは敵意の目を向けた。

 

 

「てぇー!」

「てぇー!」

 

 

 嘗て共に死線を潜り抜けた2人の艦長。

 悲しき定めに翻弄されながら、マリューとナタルはその砲火を撃ち合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昏い、だが戦火に明るく燃える宇宙。

 

 そんな中、プロヴィデンスで出撃したラウは待ち構えていた。

 

 

 激戦の最中にある戦場で、迫りくるストライクダガーの部隊を、ドラグーンから放たれる光条で切り刻む。

 

 ジェネシス防衛線の最前線。

 シロガネとディバイドが戦う地点より程無い所で、全ての地球軍の侵攻を阻止していた。

 

 

 ピクリと察知する────ラウへと届いてくる違和感。

 瞬間、それを理解して胸の内に歓喜が湧いた。

 

 

 ────決着の時であった。

 

 

「そうだろう、ムウ・ラ・フラガ!!」

「ラウ・ル・クルーゼ!!」

 

 

 飛来してくるパーフェクトストライクからアグニが放たれる。

 それを機体を翻して躱すと、ドラグーンを射出。

 ストライクを全方位から取り囲んで狙い打つ。

 

「これが望みか、貴様の!!」

 

 驚異的な直観力と、ガンバレルを扱っていた経験を頼りに、ドラグーンを搔い潜ったストライクはシュベルトゲベールを取り出し、プロヴィデンスへと叩きつけた。

 

「私のではない! これが人の夢、人の望み、人の業!!」

 

 プロヴィデンスの複合兵装防盾がそれを受け止める。

 

「他者より強く、他者より先へ、他者より上へ!!」

「ふざけるな!!」

 

 弾かれ距離を離した瞬間に、ソードストライカーのビームブーメランを投射。同時にミサイルポッドをフルオープン。更にアグニによる狙撃と、波状攻撃でストライクがプロヴィデンスを狙う。

 しかしそれを、ドラグーンの砲火で撃ち払い、アグニを躱して、今度はプロヴィデンスが前に出た。

 

「競い、妬み、憎んで! その身を喰い合う!」

 

 複合兵装防循から出力される高出力のビームサーベルをシュベルトゲベールで受け止める。

 光の刃が干渉し合い、周囲にまき散らされる光に照らされながら、2人は何度も刃をぶつけた。

 

「わかるはずだ! これが人類の結果だと!」

「貴様の理屈だ! 思い通りになど!」

 

 ドラグーンからの光にシュベルトゲベールが撃ち抜かれ、ストライクは後退。

 そのままエールストライカーのビームサーベルを出力。

 再び、プロヴィデンスとぶつかり合った。

 

「既に遅いさ、ムウ。私は結果だよ──だから知る!」

 

 切り払われ、距離を取られた。

 ドラグーン全機の射出。そして放たれる無尽蔵とも言える光の驟雨がストライクを襲う。

 

「自らの闇に喰われて人は滅ぶとなぁ!!」

 

 ムウは必死に躱そうとするが敵わず。ランチャーストライカーが射貫かれ、ソードストライカーも射貫かれてしまい、やむなくパージ。

 残ったエールの機動性を生かして、再び接近戦を挑んだ。

 

「うぉおお!!」

 

 プロヴィデンスが防循での防御。それを見た瞬間に、2本目のビームサーベルを抜き放ち、機体を翻す。

 ドラグーンを備えるバックパックのせいで、接近戦での動きが鈍いプロヴィデンスの背後へと回り込む。

 

「ふっ」

 

 しかし、まるでわかっていたかのようにドラグーンがストライクを囲んだ。

 瞬間、血の気が引いたムウはストライクを後退させる。

 胸部装甲を数か所掠める閃光。後退していなければコクピットを射抜かれていただろう。

 だが、一つ二つとコクピットを避けるもののストライクに、光の矢が突き刺さって行く。

 その衝撃はコクピット内部に届き、計器類に紫電が奔った。

 

「くっ、ぐぉあああ!」

 

 コクピット内での小さな爆発。

 

 ラウはそれを流し見ると、興味を失ったように次なる目標へと向かってプロヴィデンスを走らせた。

 

 

 

 この結果は機体の性能差だけではない。

 

 

 所詮子は親には勝てない。

 

 

 ムウとの戦いに、ラウはそんな感触を胸に抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェネシスへと転身するタイミングを、アークエンジェルによって抑えられ、ドミニオンとアークエンジェルは互いの砲火を撃ち合う。

 

 プラント周辺では未だピースメーカーα隊が僅かに残っているが、それもカガリとディアッカによって間もなく殲滅される。

 

 

「はぁ、はぁ……くっ」

 

 玉の様に浮かぶ汗が、カガリの視界を遮った。

 パイロットスーツのヘルメットの機能でそれを除去し、カガリは集中を切らさぬように必死であった。

 

 決して多くは無い実戦経験。

 1つ逃せばプラントが落ちる恐怖が身を固くさせ、カガリの体力を奪う。

 

「でぇい!」

 

 フォビドゥンから放たれるフレスベルグが不意を突いてアカツキを狙う。

 意識の外にあったそれにオオヒメは反応しきれず、ミカガミで受ければ装甲事態の損傷は免れるが大きな衝撃を受けるだろう。

 そしてその隙を狙うべく、フォビドゥンはニーズヘッグを構えて、アカツキへと迫っていた。

 

「でやああ!」

 

 しかし、それを間に入ったデュエルが防いだ。

 

「なっ!?」

 

 カガリが僅かに驚きの声を漏らす。

 第3勢力としての介入。無論彼等は、ザフトと連合、両陣営からの攻撃されることを覚悟してのものである。

 だが明確に、ザフトの一員であるデュエルから救われた──驚くには十分である。

 

 そんな周囲の惑いをよそに、デュエルのコクピットの中で、イザークはフォビドゥンを見据えた。

 

 先の戦闘から────既に何度も、プラントへ向かう核ミサイルを彼等には防いでもらった。

 

 ディアッカがメンデルで言ったように、今この場では彼等とわかりあい、共に核による破壊を防いだのだ。

 

 彼等はプラントを守る為に、手を差し伸べてくれた。

 ならば次は、ザフトである自分が手を伸ばす番だ。

 

 イザーク・ジュールは不倶戴天の敵となった、連合の新型を見つめる。

 ビームサーベルを出力。シールドを構えながら、フォビドゥンへと吶喊した。

 

「でぇやあああ!!」

 

 対するフォビドゥンはフレスベルグで迎撃。

 放たれた閃光が、デュエルに直撃する。

 

 しかし、撃墜されたかと思われたデュエルは爆炎の中より現れた。

 シールドを排し、アサルトシュラウドを排し、その手には2本のビームサーベル。

 

「いいぇやあああ!!」

 

 接近──カウンターで振り下ろされたニーズヘッグを機体を僅かに逸らして掻い潜る。

 そのまま一閃。ニーズヘッグを切り落とし、更に回転の勢いのままにもう一振り。

 

「うぁああ!?」

 

 光の刃が、フォビドゥンのコクピットを切り裂いた。

 

 

「シャニ!? ちっ、よくも!!」

「アスラン!」

「あぁ、仕留める!!」

 

 フォビドゥンの撃墜に僅かにオルガの意識が逸れた。

 その瞬間を察知して、フリーダムがエリケナウス対艦ミサイルでカラミティを包囲。

 それらの迎撃にカラミティが手を回したところで、ジャスティスが上段よりミーティアのビームソードを振り下ろした。

 

「ちっ、この!?」

 

 ギリギリで横に避けるも、そこを背後からフリーダムが急襲。

 ビームソードで、カラミティを上下に両断した。

 

「がぁあああ!?」

 

 爆散していくカラミティ。

 オーブの侵攻戦から続いた、因縁の敵との決着であった。

 

 

 同じころ、ドゥーリットルも、カガリとディアッカによって撃破された。

 核攻撃隊も全てを撃ち落とし、周囲にプラントの脅威となるものは消えた。

 

 ジェネシスを破壊するために地球連合に残されたのは、ユリス・ラングベルトが率いるピースメーカーβ隊だけとなる。

 

 

「マリューさん!」

「必要な機体は補給を! ドミニオンは抑える──ジェネシスへ!!」

 

 

 まだ、戦いは終わりではない。

 プラントへの脅威が消えたところで、ジェネシスがある。

 

 マリューの言葉に、やるべき事を見定めて、キラ達は急ぎジェネシスへと機体を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ジェネシス近傍。

 

 ぶつかり合うシロガネとディバイドが光を散らした。

 

「ミゲル! 自分が何を守っているのか、わかってるの!」

「わかっているさ! お前こそ、プラントが何をされたのか理解しているのか!!」

 

 距離を取り、ディバイドはビームライフルで牽制。

 それらを躱しながら、タケルは表情を険しくさせた。

 

「核ミサイルだ! あの忌まわしき悲劇を、奴らは繰り返そうとした! それも1基どころではない! すべてのプラント目掛けてだ!」

「わかってるよ! 君が言う事はわかるけど!!」

 

 放たれるガラディンの散弾砲を、機動性に任せて躱し切り、再びシロガネは接近。

 ビャクヤのサーベルを出力して叩きつける。

 

「先に核を持ち出したのはプラントだ!」

「MSになっ! 核エンジンと核ミサイルを同列に扱うんじゃねえよ!」

「だったらその機体だって、どれだけの人を殺してきた!」

「そんな問答に意味があるのかよ!」

 

 光の刃で切り結ぶ。

 嘗て、アストレイとハイマニューバで戦った時の様に。

 熾烈な距離を離さぬドックファイト。

 その中で、タケルとミゲルは言葉をぶつけあった。

 

「奴らはプラントを狙った! 平和に生きてる人々を容赦なく核の炎に晒そうとした! それでも尚、お前は撃つなと言うのか! 俺達にこれからも、核の炎に怯えて暮らせと言うのか!」

「プラントを撃たれたから地球を撃つの? 撃てばそれで平和に暮らせると、ミゲルは本当に思ってるの!」

「なれるさ! それでプラントはやっと安心を手にできる。ナチュラルの核に怯える事なくな!」

「地球にだってコーディネーターは居るんだ! 平和に生きてるだけのコーディネーターが沢山……それを皆犠牲にして良いっていうのか!」

 

 僅かに、ミゲルの戦意が揺れる。

 ナチュラルかコーディネーターか。その区分で言ってしまえば、タケルが言うように確かに多くのコーディネーターが地球には生きている。

 それらを犠牲にすることは、地球軍が行った核ミサイルの非道と何が違うのか。

 

 動きを止めたミゲルに併せて、タケルとシロガネも動きを止めた。

 

「ミゲル! ジェネシスは──」

『青臭い話も大概にしてよ、兄さん』

 

 瞬間、太い閃光が2機の間に飛び込んでくる。

 

「あれは──」

「くっ、ユリスかっ!」

 

 センサーが拾う──ディザスターが引き連れてきた核攻撃隊。

 それを見て、タケルもミゲルも息を呑んだ。

 

 ジェネシスを止める為か──それともプラントを狙った別動隊か。

 

「ちっ、やらせるかよ!」

 

 どちらにしても、今のミゲルがそれを逃がすわけにはいかない

 ミゲルは即座にガラディンを展開して、ピースメーカー隊を狙った。

 

『ふふ、良いよ狙って。どうせ最後に私が墜とすつもりだったし』

「何っ!?」

 

 ガラディンが火を噴く。散弾砲でいくつものメビウスが破壊された。

 だが、ユリスが投げてきた言葉に、ミゲルは訝しんだ。

 

『もう後はジェネシスが地球を撃って終わり。地表にいる半数の生物は死滅し、地球は死の星へと生まれ変わる。その先に待つのは最後の最後まで喰い合う殺し合いの世界よ』

「そんな──くっ、そんな事させない!」

 

 シロガネをジェネシスへと向けるタケル。

 だが、接近してくるディザスターのシュバイツァでその機先を制されて機体を止めざるを得なかった。

 

『逃がすわけないでしょ、兄さん!』

 

 足を止めたシロガネにディザスターが肉薄。

 ディザスター腕部のビームサーベルとビャクヤが火花を散らす。

 

「くっ、ユリス!」

『あはは! 少し予定より早いけど、さっそく私と踊ってよ兄さん──っ!?』

 

 ディザスターを閃光が襲う。

 射手は無論、この場にいたも一人──ミゲル・アイマンが乗るディバイドである。

 

「ミゲル! 

『むっ、ザフトのお兄さんはジェネシスを守るんじゃなかったの? 兄さんは敵でしょ?』

「悪いがそいつは俺のダチなんだよ……少なくとも、性悪女のてめえなんかと比べたら、どっちを助けたいかは一目瞭然だ!」

 

 ビームソードを翻し、ディザスターへと接近。

 ディザスターへと叩きつけ、一気に押し切っていく。

 

『くっ、ちょい役のお兄さんが生意気に……』

「行けよタケル! ちょうどいい事にこいつにはカリがあるんでな!」

「ミゲル、でもユリスは──」

「さっさと行け! ジェネシスを止めるんだろ……安心しろ、お前以外に負けやしないからよ!」

 

 ミゲルの言葉に、タケルは心を決めて、シロガネを翻した。

 

「忘れないでよミゲル──僕に勝ったのは君だけだ!」

 

 現行最速のMS。それを体現するように、閃光の如くシロガネが駆け抜ける。

 道中でピースメーカー隊をビャクライによって仕留め、そのままジェネシスへと向かっていった。

 

 それを背中越しに見送ってミゲルは、見るからに不機嫌そうな雰囲気が漏れ出てるディザスターへと目を向ける。

 

「俺が勝ったのは条件付きだろうが──バカ野郎」

『覚悟はできた、ザフトのお兄さん? 私と兄さんの邪魔をした罪は重いよ』

「ったくあのバカ。とんでもねえ奴に愛されてんな、おい」

 

 冷や汗を流しつつ、異常な威圧感を見せ始めるディザスターを見据えてミゲルは集中していく。

 気を抜けばすぐに墜とされる──そんな気配をヒシヒシと感じながら、それでもミゲルはディバイドを走らせた。

 

 

「性悪女! ここから先へは行かせねえぞ!」

『良いわよ、さっさと死んでもらうから!!』

 

 

 ガラディンとシュバイツァが放たれ、戦場に新たな光が咲き乱れた。

 

 

 




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