機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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ドラマCD風短編完結。
書いてて楽しかった。


ザラ隊のオーブ旅行記 後編

 

 

 

 オーブ首長国連邦オノゴロ島・モルゲンレーテ本社前

 

 

 

 

「──あぁ、なんだか酷く疲れた朝を迎えてるなぁ」

 

 

「何だ何だぁ、朝から湿気た面見せるなよタケル」

「昨日から引き続き誰のせいだと思ってるのさ」

「他人のせいにするのは良くないなタケル・アマノ。貴様が勝手に疲れているだけだ」

「その通りだな。俺達は良く眠れたしよ。帰っちまったアスランも、寝起きスッキリって面だったぜ」

「ぐぬぬ、言うに事欠いて君達は……よくもいけしゃあしゃあと……人の布団に手突っ込んでまさぐろうとする変態集団に囲まれて僕は一睡もできなかったんだよ!」

「そいつは大変だったな……写真ならまだ残ってるぞ」

「ミゲル、それは流石に僕もそろそろ手加減できなくなるよ────具体的にはアカツキ持ち出して蒸発させる」

「怖えよ!」

「君達の方がよっぽど怖いよ!」

 

 

 

 

「全くもぅ……とにかく行くよ。こんなところでこんなバカな話ばっかりしてられないよ」

「そうだな。ここからは今回の旅行のマジでメインイベントだしよ」

「ふんっ、確かにな。俺もこればかりは興味が尽きなかったぞ」

「お前らも物好きだよなぁ。知ってる俺からするとそんな楽しいもんじゃねえんだぜ」

「ホントね。何が面白くてオーブに旅行に来て一番の目玉がモルゲンレーテ本社の見学なのさ。しかもシミュレーター関係……」

「全くの素人で軍人でもなかった3人の少女が、ザフトの部隊をちぎっては投げの大活躍してたんだぜ? そりゃあお前、ザフトの軍人として期待せざるを得ないだろうが」

「貴様にわかるか? 戻ってきた同期が妙に成長していて、教官を任される話を受けていた所を目にしたこの俺の気持ちが……部隊長である俺よりも、ディアッカの方が指導に関しては評価されてるという事なのだぞ!」

「そりゃあ、イザークはその性格を直さなきゃ絶対教官にはなれないと思うけど……というか、ディアッカは一体何でそんな話に?」

「いやぁ、なんつーかクサナギでお前から色々と教わった事ぺらぺら喋っちまったっつーか……ほら、他の連中が知らないと自慢したくなるみたいな感じでさ」

「具体的には?」

「MSは人型機動兵器だから、まず目指すべきは己の手足と同じくらい動かせるように挙動を覚える事。戦うの何か二の次だ、とか……万能な人間は存在しないんだから、できるできないを見極めて長所を伸ばせ、とか?」

「まぁ……それっぽい事は言ってるよね。普通な事だと思うけど?」

「それが普通ではないんだよなぁ……戦争中って事もあってザフトの教官連中はMSを動かす事より、MSで敵を討つ事に傾倒しがちだったからよ。極論言えば、MSに乗って動けなくても照準とトリガーさえ引けりゃ戦えるぐらいの勢いだったし」

「それって数の利がある地球軍の思考じゃない? なんだろう……やっぱりザフトってバカなのかな?」

「実際俺だって、ヘリオポリスでお前に叩かれるまではMSの挙動何て全然把握できてなかったしな。

 人型だけど結局は兵器──人間に近い動きとか人間と同じ挙動ってのを意識してなかった」

 

「厳密には重量の観点から考えるとそれも違うしおかしくないんだけどね。それに、アサギ達は3人だけだから僕がつきっきりだったのもあるし……何より彼女達はテストパイロット。元々が機体の挙動を全力で掴んでもらうのが仕事だったんだから、操縦能力に優れるのは当たり前だよ」

「それが戦場でも結果に繋がってんだから聞きたいんだっての」

「うぅ~ん、まぁ良いけどさ。思う通りの結果が得られなくても文句言わないでよ────それじゃ行こうか」

「おう!」

 

 

 

 

 

「ん? あら、アマノ三佐。お疲れ様です!」

 

「お疲れ様、カナエさん。この間お願いしていた見学証3つをお願いします。それと、エリカさんとアサギ達はもう来てるかな?」

「はい、ご用意できてますよ。ではこちらを──」

「うん、どうもありがとう」

「それとシモンズ主任は設計局の方に。あの子達は、アップしてくると先程出て行きました」

「あ、そうなんだ。流石アサギ達……やる気満々だね」

 

「ん? どういうことだタケル?」

 

「ふふ、ご期待には応えないとって事さ……それじゃとりあえず本社内を案内するよ。行こっか!」

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃまず、ここが格納庫エリアだね」

「ほー、随分広いんだな」

「プラントと違って土地の広さは十分だしね……復興に併せて、施設と設備は大分充実させたから」

「とは言っても、何もないではないか」

「そりゃそうだよ。ようやく出来上がってきたばかりだもん。まだ何にも作ってない、正に真っ新の施設と設備しかないよ────じゃなきゃ、ザフトのミゲル達に全エリア見学の許可なんて出るわけないでしょ」

「あぁ、それで俺がモルゲンレーテを見たいっつったらこの時期を指定して来たのか」

「うん、そう言う事だね。早いと見学できるものも無いし、遅いと機密だらけで何も見れなくなるし、ミゲルの要望に応えてあげるならこのタイミングしかないなって……一応僕なりに、命の対価となるお礼として考えたつもりだよ」

「タケル、お前……バカ、俺は恩を着せたくてお前を助けたんじゃねえぞ」

「でも、ミゲルが居なきゃ僕は死んでたわけだしさ」

「お前、むず痒いからやめろってそう言うの」

「おっ、ようやくタケルからミゲルへの反撃が成ったようだな」

「ふっ、散々おちょくられたんだ。もっとやっても良いんだぞ、タケル・アマノ」

「いや確かに、お返しではあるけどさ……別に僕は復讐的なもので言ってるわけじゃないんだけど……」

 

「だぁあもう、ホラ 次行こうぜ次!」

 

「あはは、確かにちょっとは仕返しになったかもね」

 

 

 

 

 

 

「さてそれじゃ、ここが設計局になる場所だね」

「ん? こっちは結構人もいて作業してるじゃねえか──良いのか?」

「どうせ3人とも図面なんか見たってなんもわからないでしょ」

「そりゃあそうかもしれねえが」

「そうまではっきり言われると面白くはないな」

「つっても実際わからねえから文句も言えねえだろ?」

 

「まぁ、ついでに言うとここで今やってるのは構想練ってる段階だからね。図面も精々アイデアばっかりで、具体的な図面引いてるスタッフはほとんどいないよ。丁度次の量産機のプロジェクトがスタートしたばっかりなんだ」

「ん? て言うとあのM2アストレイの次か?」

「あぁ、そっか。ディアッカはクサナギでアストレイをしっかり見ちゃってるもんね……うん、その通り。今はここでどんな方向性にしていくかって検討中」

「あれ? でもそれじゃタケルは今何してるんだ?」

 

「ん~僕は今設計局の統括と新規技術の開拓かなぁ。モルゲンレーテ以外にも民間軍事企業がいくつかあるから……それらとやり取りしつつ、モルゲンレーテじゃ手が回らない新機軸の技術アイデアを提供して開発してもらってる。

 あぁ、後は趣味でハイエンド機の設計をやってるよ。シロガネとアカツキの改良案をずっと模索してるからね」

「なるほど……要するにいざって時の為の自分とカガリの機体はしっかり用意しておこうってんだろ」

「そう言う事。備えは怠れないからね」

 

「ホント疑問なんだけどよ……何でお前それだけ技術屋やってんのにパイロットとしても超優秀なんだよ。俺たちと同じ時間軸で生きてねえんじゃねえか?」

「1日36時間とかな」

「何を馬鹿な事を言っている貴様等。それだけ必死に生きてるって事だろう」

「うん、まぁ、最近は少しのんびりしてるよ……大切な妹も弟も、友人達も皆、心配性でおっかないからさ」

「んでお前の事になると厳しいけど優しい奥さんだっているもんな」

 

「う、うん……まぁ、ね」

 

「てめぇ、このやろ。思い出して幸せそうな顔してんじゃねえよ!」

「痛っ!? なんだよミゲル急に……」

「独り身の妬みだ。大人しく食らっとけ!」

「ちょっとっ!? 何だよそれぇ」

 

 

「つってもミゲルだって結構モテるけどな」

「今やミゲルも特務隊……アカデミーじゃ憧れの的らしいな」

「アスランなんてザフトからすりゃあ思いっきり裏切り者なのに、英雄扱いで教材に載ってんだぜ」

「あれだけは未だ納得いかんな。奴の実力は認めるが……組織を離反した者が英雄扱いとは、軍規の乱れの元だろう。ミゲルの方が良いだろうに」

「お前は載りたいとか思わないのかイザーク?」

「ナンセンスだな。俺は英雄視されたくて戦ってるわけではない」

「あぁそう。お前ってホントバカ真面目だよな」

「うるさい」

 

「ちょっ!? ミゲルやめてって」

「はっ、モテない男のやっかみを喰らえ!」

 

 

 

 

 

 

「もぅ、全く…………今度は変なやっかみしてくるし。昨日と今日だけで一気にミゲルが嫌な奴になってきたよ」

「そう言うなって。俺は楽しんでるぜ」

「それいじめてる側は認識してないってやつだよ。良くないよミゲル」

「お前が虐められる様な弱い奴ならな」

「そりゃあ、報復としてアカツキで蒸発させることも辞さないけどさ……」

「だから怖えってそれ!! お前の場合おふざけじゃなくて全力すぎるんだよ」

「まっ、良いよ良いよ。僕の報復はこれからなんだから……」

「あん? 一体何が──」

「それじゃ、どうぞ楽しんでねミゲル────骨の髄まで」

 

 

「あっ、来た来た!」

「もー待ちくたびれましたよ!」

「早くやりましょう、アマノ三佐!」

「おいおいタケル……まさかミゲルへの報復って……」

 

 

「ふっふっふ、流石に何もない開発エリアを見てもらっただけじゃ、僕の気が済まないからね。

 ようこそ、3人共────オーブ国防軍三佐にしてモルゲンレーテ技術設計局統括、タケル・アマノが監修して用意させた最高のシミュレータールームへ!」

 

 

「うぉっ、すげえなおい……20台くらいあるじゃねえか」

「アサギ達のお陰で国防軍もここで訓練をしていくことになってね。大幅増台したんだ。

 苦労したんだよホント。……納入されてから急いで調整してさ。この日に間に合わせるために、諸々必要なデータもクサナギから全部引っ張ってきたんだから」

「うわぁ……嫌な予感してきたぞ俺は」

「どう言うことだディアッカ?」

「どうも何も、わからねえか。ここでやる気なんだよタケルは。アサギ達も含めた、鬼の模擬戦を…………」

 

 

「ご名答。というわけでザフトのエース諸君! せっかくだからウチの子達と模擬戦といこうじゃないか。

 使える機体データはできる限り取り揃えてるよ。フリーダムにジャスティス、僕のシロガネやストライク等のXシリーズもある。もちろんアストレイも健在。流石にミゲルの核動力機体はデータ不足で用意できなかったから許して欲しいけど……機体データはどれでも好きなのを使って良いよ。

 但し、機体毎にコストを割り振ってるから、コストが高い高性能機を使用する場合は、相手になるアサギ達のアストレイに、相応の魔改造データを加えるからね!」

 

 

 

 

「へぇ……ははっ、面白いじゃねえか!」

「どう、ミゲル? 君達にとっては1番のプレゼントでしょ?」

「良いのかタケル……自慢の教え子だろう? 泣かせちまっても、俺のせいにするなよ」

「やってごらん。その減らず口、帰る頃には叩けなくしてあげるよ」

「ほぅ……上等だぜ!」

「ばっ!? ミゲルお前この状況をわかってんのか!」

「3対3の模擬戦だろ? いくらタケルの自慢の教え子っつったって、俺達が揃って苦戦すると思うのか?」

「腑抜けるなよディアッカ──タケル・アマノが言った通り、今の俺たちはザフトのエースなんだぞ。軽々しく下に見られてどうする」

「バカっ、甘いんだよ認識が! タケルが何の勝算も無しにアサギ達に無茶な模擬戦組ませるわけないだろ!」

「ぶー、失礼だよディアッカ!」

「私達だって、そう簡単に負けるほどヤワじゃないよ!」

「目にもの見せてあげます!」

 

「ホラ、何も無さそうじゃねえか?」

「一応言っておくけど、MS開発者として真っ当な視点から格機体のコストは設定してるからね。初期型のXシリーズはM2より若干コスト高いくらいかな。勿論そっちが低いコストの機体を選んだ場合も同様に機体性能は向上する様にしてあるよ」

「つまりは使い慣れた機体でやれば良いってことだろ?」

「うん、そういう事」

「俺のデュエルもある様だな。ディアッカ、お前はバスターを使え。その方がこちらも連携を取りやすい」

「良いけどよぉ……本当にどうなっても知らねえぞ!」

「それじゃ俺は……タケル、確かその子等が使うアストレイは特化型って話だったよな?」

「機動戦仕様で良い?」

「良くわかってるじゃねえか。同じ条件だしそれで行くぜ」

「じゃあミゲルはM2マニューバね────よし、それじゃ全員シミュレーター乗り込んで!」

 

「おうよ!」

「ふんっ、吠え面かくなよ、タケル・アマノ」

「くっそー、絶対最初に俺落としにくるだろ!」

「ふふん、どうだろうねー」

「アサギ、ヘマしないでよ」

「マユラちゃんも、気をつけてね」

 

 

 

「ふふ、それじゃいくよ────オーブVSザフト、開始!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん…………だと……」

「そんな、バカな……」

「だから言ったじゃねえかよぉ……絶対対策してきてるってぇ……」

 

 

「いぇーい!」

「本当に勝っちゃった!」

「やりましたよ、アマノ三佐!!」

「うん、お疲れ様3人共! 凄かった! 完璧な戦いだったよ!」

 

 

「くっ…………ディアッカ! お前が開幕に不意を打たれて落とされなければこんな結果には──」

「無茶言うな! 開幕にステージギミックの小惑星群に入り込まれて、いつの間にかお前達をすり抜けられて囲まれてたんだっての! そんな事言うなら前に出たお前等がきっちり補足してくれって!」

「むしろ何で抜かれたんだ!? 俺とイザークで警戒しながらくまなく索敵してたって言うのに」

「ふふふーん……小惑星群に潜り込んだのはブラフなんだよねー」

「そのまま最大戦速で後退して、索敵外から大回りしてバスターを囲ったの」

「後方支援機のバスターを潰せば、後は私の独壇場になりますから」

 

「嘘だろ……」

「ホラみろ! シミュレーションステージまであらかじめ用意されてた完璧な茶番だぞこれ!」

「むっ、失礼だねディアッカ。ちゃんとステージはランダム選択にしたし、あらかじめどのステージで戦うことになるのかわかってる様な、そんな不公平な事はしないよ。全ステージ分アサギ達に想定させて作戦を組ませてあげてはいたけど……僕が関わったのはミゲル達がどの機体を選ぶかの予想ぐらいだ。作戦は彼女達が全部組み立てたよ────実際、僕もちょっと驚いたくらいだし」

「何だとぉ!?」

「これが、オーブの底力だよ」

「こんなバカな事が……」

 

「まぁ、個人個人で言えばそりゃあ勝てないだろうけどさ…………彼女達はそれを入念な準備と戦略で覆したって事だよ。ミゲルもイザークも、アサギとマユラの相手は簡単じゃなかったでしょ?」

「ちっ……まぁな。上手い具合に距離を取られたり躱されたり。早さこそ劣るが、ぶっちゃけお前とやり合ってる気分だったぜ」

「その上で後方からは的確な狙撃。あれだけで目の前の相手に集中できなくなる。厄介な事この上無かったな」

「だから言ったんだよ……認識が甘いって。っつーか、タケルだけじゃなくてアサギ達にまで俺は目の敵にされんのかよ……」

「それはまぁ、仕方ないよね。だって後方支援機体が厄介なのは自明の理だし」

 

 

 

「だぁーくそっ!! もう一回だもう一回!」

「次は油断しない! タケル・アマノ、もう一回やらせろ!」

「はぁ? やめとこうぜ。絶対これ何度やっても狩られるぞ」

 

「うーん、やっても良いけど流石に警戒されちゃうとアサギ達だけじゃ厳しいよね」

 

「さっきのは作戦が上手くいっただけだし……」

「ザフトのエース相手じゃもう通用しないと思う」

「流石に次は厳しいですよ」

 

「うん、と言う事でシロガネ使って僕がアサギ達の誰かと交代で入ることにしようか」

 

「はぁ!?」

「何を言い出す貴様ぁ!」

「勝てるわけねえだろが!」

 

「そんな無理だなんて…………ザフトのエースがそんな事言うわけないよね。

 さっきイザークは軽く下に見られてどうするって啖呵切ったし」

 

「くっ、イザーク」

「お前のせいで……」

「俺だけのせいではないだろう!」

 

「さ、お望みの様だからたっぷりやろうか。あぁ、安心して。アサギ達は最長で8時間の戦闘訓練をさせたことがあるから根を挙げないよ」

 

「くっ、くそったれぇえ!!」

「くっそぉおおおおおお!!」

「もういやだぁああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーブ首長国連邦オロファト国際空港

 

 

 

「あーあ、なんだかんだでもう終わりかぁ」

 

「あはは、楽しい時はあっという間だよね」

「貴様は本当に楽しそうだったなぁ、タケル・アマノ」

「そんな怖い顔しないでよイザーク。あの後タッグ戦なんかもやったじゃないか」

「つーかイザーク、お前最後には良い感じの雰囲気だったじゃねえか。あの赤毛の子とよ」

「マユラ・ラバッツか? 接近戦が得意で互いに馬があったからな」

「それを言うならミゲルもアサギと良い感じだったよね」

「あぁ、まぁな。一緒に戦ってるとお前と並んでるみたいでよ。ついノって来るっつーかな……楽しかったぜ」

 

「ザフトにもあの様にシミュレーターを導入するべきか?」

「うーん、MSのデータを扱う専門家が居ないと厳しいと思うよ? モルゲンレーテのは僕が全部データ関係取りまとめてるし」

「そっか、もったいねえなぁ。あれがあったら相当訓練捗るのに」

「何なら、定期的に遊びに来る?」

「そんな簡単に来れる様な所じゃねえんだよ──今はビクトリアに降りてから国際線乗り継いで来るんだぜ」

「後数ヶ月でマスドライバーも建造が終わるから、そうしたら宇宙から直で来れる様になるよ」

「マジか! そいつは朗報だな!」

「代わりに今度は僕がそっち行っても良いけどね」

「おっ、それも良いな。お前ならカナーバ前議長からの覚えもあるだろうし、何なら国防委員会からの要請っつー事で国賓で──」

「そんなやめてよ仰々しい。遊びに行きたいって言ってるのに」

「はは、良いじゃねえか。プラントに来てアカデミー生相手にでもして遊んでやってくれよ」

「そういう遊ぶじゃないって!」

 

 

「もう、最後の最後まで軽口ばっかりだなぁミゲルは」

「湿っぽいのは嫌いなんだよ」

「うーん、それじゃあっさりと終わろうか」

 

 

 

「ミゲル、イザーク、ディアッカ────またね」

「おう、元気でな」

「次は勝たせてもらうぞ」

「キラ達にもよろしく」

「うん。言っておくよ」

 

 

 

「じゃあねー! 気をつけてー!」

 

 

 

 

「ふぅ────さて、帰るかぁ」

「あぁ」

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アマノ邸

 

 

 

「ただいまー」

 

 

「あら、おかえりなさいタケル君」

「あれ、マリューさん。何でウチに?」

「ふふ……ナタルが昨日ね、怒りすぎて貴方に嫌われたのではないかって、もう落ち込んじゃって落ち込んじゃって」

「ナタルが……もしかしてマリューさん煽りましたか?」

「そんな怖い顔しないでよ。珍しくお酒飲んだと思ったら、顔真っ赤にしながらナタルがそんな風に嘆くんですもの。私だって、あんなナタルにそんな事はできないわよ」

「もしかして、それでナタルが二日酔いに?」

「そうよ。それで、貴方が帰ってくるまで、様子見てたってわけ」

「それは…………ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました」

「ふふ、良いのよ気にしないで。あんなナタルを見るのも新鮮で楽しかったし……貴方もナタルもちゃんと想い合ってる様で安心したわ」

「それは当たり前ですよ」

「うん。だからお礼なんか良いから、早く彼女を介抱してあげて。愛する貴方の手で」

 

 

 

 

 

 

「うっ、うぅ…………マリュー、申し訳ないがまた水を──」

 

 

「はい、ナタル。自分で飲める? 身体起こそうか?」

 

 

 

「いえ、大丈夫です……1人で……ん? タケル!?」

「あぁほら、急に起きたりしたら苦しいでしょ。いいよ、横になってて」

「────昨日は、申し訳なかった。友人達との楽しい時間を邪魔してしまって」

「そんな事気にしなくていいのに。そもそも悪いのは僕達だったわけだし…………ナタルは何も間違った事言ってないよ?」

「友人同士なら多少は騒ぐこともあるだろう。無粋だったはずだ」

「ううん、全然。怒られて仕方ないって皆自覚してたし、それに────皆僕が羨ましいって言ってくれたよ」

 

「羨ましい? 一体何が──」

「僕を愛してくれてるナタルが、とても綺麗で強い人だからだよ」

「んなっ!? 揶揄うのはやめてくれタケル…………今は落ち着いて居たい」

「揶揄ってなんかないのに…………それに、ナタルは綺麗なだけじゃなくて、僕の前ではとっても可愛いからね」

 

「こっ、こら! 大人をからかうな!」

「二日酔いで苦しいんでしょ? 手伝ってあげるから、お風呂かシャワー浴びよう。少しは楽になるってマリューさんが言ってたよ」

「そうなのか。うぅ……すまないが頼む……」

「良いよ、そんな。元々僕達が原因なんだし────それじゃ、お湯沸かしてくるね」

「うん、ありがとう────すまない」

 

 

 

「謝るくらいなら、素直に今日は僕に甘えてよ、ナタル!」

 




当然の如く帰結するイチャイチャ。
短編全部、最後これになってそう。
本編と違ってプロットなしでテーマだけ決めて書き出してるので………

ミゲル達は別に弱いわけではないのです悪しからず。ただアサギ達がそこそこ優秀になったのと、えげつない作戦勝ちしただけです。

オーブ旅行記だけで3話書くとは思って居なかったですが、なかなか見られないキャラの絡みもかけて満足でした。
お楽しみいただければ幸いです。

感想をお待ちしております。

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