機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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運命編スタートの前に、少し前置きを綴らせてください。



まず、作者はただの一般人です。普通の貧乏なサラリーマンです。
政治家でも、識者でもありません。

何が言いたいかといますと、SEEDと違って、運命編は勢力図等が諸々複雑であることもあって、頭の悪い作者には非常に難しいお話となっております。
必死に色々と考えて文章にしておりますが、政治的見解について高度な話を作者に求めるのはおやめ下さい。
色々と気になって書けなくなってしまいます。

続いて。作者は元々読専から好きが高じて作者となった人間です。
故に、二次創作程度しか書けませんし、オリジナルでご立派な物語を綴った事はありません。
あくまで大元の原作があっての本作である為、原作として迷走している(と作者は思っています)運命編を元にしている本作は、SEED本編と比べると、色々と読者の満足を頂けない点が出てくるかもしれません。
その時は、それが作者の限界と思って、静かにそっ閉じして頂ければ幸いです。

作者はSEED編から一貫してキャラ愛を頼りに必死で物語を綴っている人間ですので、その点を何卒ご了承いただければと思います。




PHASE-1 平和の果て

 

 

 コズミック・イラ73.10.2

 

 

 L4宙域プラント・アーモリーワン。

 

 先の大戦の後にプラント本国のあるL5ではなくL4宙域に新設されたプラントであり、その名称の意としては軍事工廠の第一位。

 つまりは、プラントにおけるMSや戦艦等の製造コロニーとなっている。

 

 

 L5よりも地球に近いこのプラントへと、タケルとアレックス(アスラン)を伴ったカガリは到着した。

 

 

『ORL-010、ローカライズ、オンライン』

『こちらORL-010、ナブコムリンクを確認』

『101、進入ベクトル良好。減速そのまま。三号デッキは受け入れステータスBで待機』

 

 

 管制官とシャトルのパイロットのやり取りが進んでいき、安全にシャトルはアーモリーワンへと入港。

 

「──到着か。私はプラントの案内人から話を聞いて来よう。アレックス、代表の傍を離れるなよ」

 

 座席を立って、一足先にタケルはシャトルの搭乗口へと向かう。

 今回のカガリの来訪は公にされたものではない。極秘裏に組まれた会談である以上、大々的な出迎えもない為わざわざカガリを先頭にする必要もない。

 オーブにとって盟友とも言えるプラントだが、それでも自国ではない以上、カガリの命を守る護衛として警戒は必須であった──故に、タケルは先にシャトルを出て周囲の安全を確かなものとする必要がある。

 

「了解だ……しかし随分な変わり身だな」

 

 まるで似合わぬタケルの言葉遣いにアスランは苦笑した。

 しかし、当のタケルはその言葉に慌ててアスランのもとへと駆け寄る。

 

「ちょっ……やめてよアスラン。嘗められない様に軍人の仮面被ってんだから」

「普段を知ってると違和感しかないんだが? あと、俺はアレックスだろう……」

「聞こえない様に声は潜めてるでしょ。とにかく、余計な事は言わないでよ。僕の威厳を崩そうとするのも無し」

 

「────良いから行くぞ。2人とも」

 

 

 小声でうだうだとやり取りする2人を置いて、シャトルを降りようとするカガリに、タケルとアスランは青ざめて先回りするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 カガリ達が訪れたアーモリーワンはこの日、雑多な騒ぎで溢れかえっていた。

 というのも、軍事工廠の第一位に相応しく、戦後新造された初の最新鋭戦艦“ミネルバ”の完成披露進宙式を明日に控えているからだ。

 

 

 先の大戦。

 ユニウス条約の締結によって、名実共に終戦とはなったものの、依然として世界に火種は燻っていた。

 

 そもそもの話ではあるが停戦も条約も、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦によって両陣営が疲弊しきった為に、これ以上はどちらも継戦が不可能という事で一時の休戦とする事を宣言したに過ぎないだろう。

 

 勝敗も、歩み寄りも、あの戦いでは定まらなかったのだ。

 

 あれだけの犠牲を出したというのに──いや、あれだけの犠牲を出したが故に。未だ双方の溝は深い。

 ナチュラルとコーディネーターの争いは沈静化をしているだけであった。

 

 

 そんな情勢下で、軍備の拡充は急務と言えるだろう。

 特にユニウス条約によって、人口を大きなファクターとした保有戦力制限が定められたことは、総人口の少ないプラント側にとって厳しい条件であり、より高性能な機体や戦艦を開発するのは当然であった。

 

 そしてそれを大々的に喧伝して、プラント国民に安心を与える事もまた、急務である。

 

 ユニウスセブン。そして先の大戦で行われたプラントへの核攻撃。

 未遂となった核攻撃ではあったが、それはプラント国民の知る所となり、プラント国民の不安は大きく深いものである。

 いつまた核の炎に焼かれるのか──そんな日々に戦々恐々としていた。

 

 プラント最高評議会は国民に見せつけなければならないのだ。

 プラントが保有する技術の高さを。生み出された戦力の精強さを。

 

 

 明日のミネルバ進宙式に合わせてアーモリーワンの工廠には多数のMSが並び、式典が行われる予定だ。

 ジンやゲイツ、更には新開発された最新鋭量産機であるザクが用意され、現在はあちこち所定の位置へと運ぶよう指示が出されていた。

 

 アーモリーワンの工廠は、正に混乱の途であると言えるだろう。

 

 

 

 

 そんなMSがあちこちを跋扈する工廠内を1台のジープが走る。乗っているのは若い男女の3人組であった。

 1人は整備班の作業着で、残り2人はエリートパイロットの証である赤服を身に纏っている。

 

「いやー賑わってるね」

 

 作業服を来た茶髪に赤いメッシュを入れた少年、“ヴィーノ・ディプレ”が軽い口調で、アーモリーワンの惨状を呟いた。

 

「ヴィーノ、周りを見るのも結構ですが、まずは前方を見てください」

「ヴィーノ、前!!」

「えっ? うわっ!?」

 

 間一髪、横合いから出てきたジンの脚を見事なハンドル捌きで躱し、何とかジープはMSに無謀な決闘を挑むことなく戦線を離脱していく。

 

「はぁ~、助かったぁ」

「はぁ、なんかもぅ、ゴチャゴチャね」

 

 背後を振り返り、横合いから急に出てきたジンへと睨みを利かせる少女。

 綺麗なワインレッドの色合いを見せる赤髪と、果たしてその個性は許されるのかと思われる、魔改造されたミニスカート型赤服を身に纏っている彼女は“ルナマリア・ホーク”。

 そして後部座席にはもう1人──

 

「先のはヴィーノが悪いです。周りに気を取られる前に前方を良く確認して走って下さい──ですが、とっさの機転と回避は見事でした。パイロットへの転属をお勧めします」

 

 淡々とした口調で語るのは後部座席に座るもう一人の少女。

 黒髪に黒曜の瞳。まるで人形の様に整った容姿で、ルナマリアと違い、正しく赤服を身に纏う少女。彼女の名は“ヤヨイ・キサラギ”。ルナマリアと共にアカデミーでの実力が高く評価され赤服を許されたエースパイロットである。

 

「はは、首席だったヤヨイにそんな風に言われると嬉しいけどさ……パイロット何て勘弁してよ。俺じゃ何もできずに墜とされるのがオチだって」

「良い線いくと思うのですが……まぁ、本人にその意思が無いのならどの道意味はないですね」

「ヤヨイ、あんたそうやって誰彼構わず手中に落とし込もうとするの止めた方が良いわよ」

「心外ですね。シンやレイは勝手に私を師と仰いでるだけですし私自身にその気は全くありません。私はただ、その人に向いている向いてないを引き出そうとしているだけです」

「じゃあ聞くけど、私は?」

「規律を重んじる軍人としては不適格。その止められない個性はアイドルでもやっていたほうが良いのでは、とは思います」

「──あ、あんたねぇ! いつまで赤服改造した事を根に持ってるのよ」

「アカデミーの皆が憧れるそれを魔改造して着ているのですから、その罪はいつまでもついて回ると思いますが? 嫌ならちゃんと正しく着てください」

「こんのぉ……すまし顔でよくも」

「まぁまぁ、そのくらいにしておきなよ」

 

 隣と背後で勃発しそうな喧嘩の雰囲気に待ったを掛けつつ、ヴィーノは小さくため息を吐いた。

 先程事故りかけたのだし、せめて運転している自分を気遣って静かにしてはくれないものだろうかと、胸中で嘆いたのは内緒だ。

 

 

 こうして人目を集めながら、3人を乗せたジープはアーモリーワンの工廠を走っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 砂時計型のプラントの宇宙港となる中心部。

 もっぱらシャトル等の発着場となっているそこは、明日の進宙式を前に訪れる人も多く、賑わいの最中にあった。

 

「パパ、船は?」

「軍艦なの? 空母?」

「やっぱり……必要ですものね」

「あぁ、ナチュラル共に見せつけてやるともさ」

 

 こんな声が聞こえてくるのも、今の情勢を考えれば仕方のない事なのだろう。

 

 そんな中、通路を進んでいくカガリ達オーブの特使一行。

 先導するプラントの案内役について行く道中で、タケルは奇妙な感覚を感じ取った。

 

「(──なんだ?)」

 

 視線だけで周囲を見回す。

 特に目に付く存在はない。強いて言うなら、緑や水色、金色とカラフルな髪の若い男女3人組がどこか目立つくらいであった。

 

「(気のせい、かな?)」

「どうした、アマノ三佐?」

「いえ、何でもありません。代表」

「警戒するのはわかるが、そう身構えられると向こうの印象も悪くなるぞ」

「失礼。しかし万が一を考えるのが私達護衛の役目です。警戒するなとは言わないで頂きたい」

「はぁ……アレックス、何か面白い話でもしてアマノ三佐の警戒を解け。解けというか説け」

「代表、そんな無茶苦茶な……」

 

 カガリの余りにも唐突な無茶振りに、アスランは顔を引き攣らせた。

 この兄妹は、公的な立場の仮面を被っても尚、自身に苦労を掛けてくると言うのか──アスラン・ザラは胸中で辟易する。

 

「失礼ですが代表。護衛としては私もアマノ三佐と同じ意見です」

「お前達2人がそうでは、オーブがプラントを信用していないと見られる。

 デュランダル議長が盟友たるオーブの代表である私を害するなどあり得ん──新型戦艦の進宙式を明日に控えたこの軍事工廠を会談の場に選んだのは、警戒が厳重な今のここなら私が訪れても絶対に安全だと言う、議長たっての配慮なのだろう?」

 

 前を行く案内人へと、カガリは問いかける。

 えぇ、その通りでしょう。と、返されてカガリは小さく頷くと、タケルとアスランへと視線を向けた。

 

「警戒するなとは言わないが最小限に止めろ。表に出すな。良いな?」

「了解」

「わかりました」

 

 

 

 そうして3人は連絡通路を通り、プラント構造体の柱となる中央エレベーターへと乗り込んだ。

 向かう先は会談の場、アーモリーワンの市街が一望できる高い展望窓のあるフロアである。

 

「やぁ、これは姫。遠路はるばる御足労頂き感謝いたします」

 

 フロアに着くなり、諸手を広げて歓迎の意を示す、黒い長髪を流した男性。

 彼こそがプラントの現最高評議会議長、“ギルバート・デュランダル”である。

 

「いや、こちらこそご多忙な議長にお時間を頂き、有難く思う」

 

 カガリは少しだけ堅い声音で無難に返した。

 タケル達は疎か、代表であるカガリでさえも、通信越しではなくこうして面と向かって相対するのは初であった。

 

「(流石はこの情勢下でプラントをまとめるだけの事はある、と言ったところか)」

「(うっさんくさい笑み貼り付けてさ……この狸。絶対裏で腹黒い事やってるでしょ)」

「(父上とは対称的な穏健派の議長……とはいえ、食わせものである事に変わりはなさそうだな)」

 

 三者三様に胸の内でデュランダルへの警戒を引き上げた。

 

「御国の方は如何ですか? 姫が代表になられてからは、実に多くの問題も解決されて、私も盟友として大変嬉しく、そして羨ましくも思っておりますが」

「素直に喜べる事ばかりではないが、確かに喜ばしい事も多い。偏に復興の協力に惜しみが無かった貴国のお陰だ。感謝している──故に、まだまだ私では至らぬ事ばかりだとも言えるが」

「差し伸べられた手を迷わず取れるのはオーブの……ひいては姫の美徳と言える。御国ではそんな姫に心酔する者も多いと聞きます」

「それは初耳だ。私の近くにはいつも、口煩い側近達しか見当たらないのだがな」

「(良い感じに皮肉が利いてるなぁ。確かにウチは一杯一杯だったから取れる手を全部取って復興してきたけどさ……あんたが言うその美徳は逆を言えば独り立ちできてないって事じゃないの? 誰がプラントへの核ミサイルを止めたと思ってるのさ)」

 

 内心を悟られない様胸中で毒づきながら、タケルは既にデュランダルへ気に入らない曲者狸のレッテルを貼り付けていた。

 

「さて──この情勢下で。代表がお忍びで、それも火急な御用件とは、一体どうしたことでしょうか? 

 我が方の大使が伝えるところでは、大分複雑な案件のご相談という事ですが……」

 

 切り出される本題。

 カガリは表に出さず息を呑み、タケルとアスランもデュランダルの一挙手一投足を見逃さぬ様意識を向けた。

 

「──複雑、か。私にはそう複雑であるとは思えぬのだが。しかし、未だこの案件に対して貴国から明確な返答や動きが得られない、という事は、やはり複雑な問題なのか?」

「──と、言いますと?」

 

 静かな会談場所で、カガリはどこか挑戦的な声音を以てデュランダルに問うた。

 

「我が国は再三再四に渡って、彼のオーブ戦の折に流出した我が国の技術と人的資源。その両方における軍事利用をやめて頂きたいと申し入れている」

 

 

 オーブ首長国連邦代表首長、カガリ・ユラ・アスハの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軍事工廠の第一位であるアーモリーワンと言えど、何も工廠だけが全てではない。

 前提として市民が暮らすプラントである以上、人々が住まう市街は当然ながら整っている。

 

 そんな市街を歩く3人の男女。

 タケルが連絡通路で目にしていた者達である。

 

 緑髪の青年、“スティング・オークレー”。

 水色髪の少年、“アウル・ニーダ”。

 金髪の少女、“ステラ・ルーシェ”である。

 

 道行く3人。その最中、傍らのショーウィンドウに映る自身を見て、ステラは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 ヒラヒラと揺れる妖精を思わせる様なドレス──これはここに来る前に大好きな人が用意してくれたものである。

 自然と、それを着る自分に気分を良くしたのかステラはそれを表現するかのようにその場でヒラヒラと回り始める

 

「うふふ、あははは!」

「何してんのあれ?」

「さぁな……浮かれたバカを演出、とか?」

 

 不思議そうにステラを見るアウルに、スティングは興味なさそうに返した。

 変に気を張って怪しまれるよりは都合が良いが、かと言って人目につくのも彼等の目的を考えると困る所ではある。

 仕方なくスティングは切り札を切った。

 

「ほら、行くぞステラ。“ネオ”が待ってるんだからよ」

「うん!」

 

 犬の様に顔を輝かせて追い付いてくるステラを伴だって、アウルとスティングは目的地を目指す。

 

 そう、アーモリーワンが保有するプラントの軍事工廠。

 そこに保管される最新鋭機のハンガーへと。

 

 

 

 争いの火種は、既にすぐ傍に燻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『工廠を実際にその目でご覧になってもらおう』

 

 

 何を思ったか、会談中にそんな事を言い出したデュランダルに連れられて、会談の場は喧騒に包まれる工廠へと場を移していた。

 

 到着と同時に、タケルは苦々しく顔を顰めた。

 あちらこちらを走る車両。重量を忘れさせず大きな振動と共に歩く機械兵。

 式典の為に動き回る兵器群を目の当たりにして、危険という単語を思い浮かべずにはいられなかった。

 

「失礼、デュランダル議長。どういうおつもりかお聞かせ願いたい。代表をこのような場に連れ出すなど──このようにMSや車両が入り乱れる場で、まさか危険がないとでも言うおつもりか?」

「おや、オーブではMSの工廠は危険が溢れていると?」

「事故などいくらでもあるでしょう。特にこんなごった返しな状況では──」

「良い、アマノ三佐。私なら別に問題ない。察するにこちらで観られるものが、私の問いの答えなのだろう?」

「ご理解頂き感謝いたします、姫」

 

 いけしゃあしゃあとよくも──カガリの言葉に引き下がるが、タケルの内心は腸煮えくり返る心地であった。

 車両の運転間違い。MSの操縦間違い。そんな些細な事でも、今この場に居ることで危険と隣り合わせになるだろう。

 とても一国の代表を連れ立ってくる場所ではない。

 

 しかし、デュランダルはタケルの思いなどなんのそので、カガリと会談を進めていく。

 

「姫は先の大戦でも、自らMSに乗って戦われた勇敢な御方だ。

 また最後まで圧力に屈さず、自国の理念を貫かれたオーブの獅子、ウズミ様の後継者でもいらっしゃる」

「議長にまで覚えがあるとは、父も嬉しい事だろう」

「であればこそ、我らがこの世界の情勢の中でどうあるべきなのか……姫も良くおわかりの事でしょう?」

 

 デュランダルの問いに、カガリは逡巡。

 問いかけの真意を探る様な視線が向けられ、それを受け流すデュランダルとの間に数秒の沈黙が流れた。

 

「────他国を侵略せず、侵略を許さず、そして介入しない。我等は自国の理念を守る、それだけだ」

「それは我々も無論同じです。そうで在れたら一番良い。だが力無くばそれは叶わない。それは姫とて……いえ、姫の方が良くお解りのはず」

 

 中立を謳い続けたオーブ。

 その結果は先の大戦で大西洋連邦の侵攻を許し、そして全てを喪った。

 タケル・アマノが準備を整え、カガリ・ユラ・アスハが反抗の声を挙げ、国民を守る為に全てを賭したが──届かなかった。

 カガリは思い出したかの様に、静かに目を伏せた。

 

「確かに、我らは力及ばず国を失った。力があれば……あの日我らは、偉大な父祖と、父祖が守ってきた地を失う事は無かったのかもしれないな」

「でしたら──」

「だが、忘れてはいまいか? 大戦末期、貴国を襲った核ミサイル──あれが何故あれ程簡単に放たれてしまったのか……そして、その先の惨状を」

 

 切り返すように、カガリは鋭い声で問うた。

 嘗てプラントへと向けて放たれた夥しい程の核ミサイル。

 そしてその先、ジェネシスによる大量破壊。

 カガリが知るのは地球を破滅させる可能性すら孕んでいた、終末へと向かう戦争であった。

 

 その引鉄を引いたのは、プラントなのだと────カガリの視線が物語っていた。

 

「──ナチュラルを滅ぼす。今の我々にとっては忌むべき思想です。

 その思想の下に生み出されたフリーダムとジャスティス。そして露見したNジャマーキャンセラーが、地球軍に核の使用を解禁させたと……こういう事ですね」

「議長、あの戦場に居た者として言わせてもらう。強すぎる力は、相応に自身に返ってくると心得られよ。

 核動力機体など開発しなければ、地球軍が核ミサイルを持ち出すことも無く、あの核攻撃が無ければ、プラントもジェネシスなどという兵器は持ち出さなかったはずだ」

「その結果があの大戦だと?」

「──そうだ。そして今また、我がオーブが齎したものに起因して、そんな力が生み出されようとしている。ここプラントでな」

「それはつまり、条約違反の核を我々が再び用いている疑いがあると?」

 

 デュランダルも険しい顔を見せてカガリへと追及した。が、カガリは静かに頭を振る。

 

「そうではない。だが本質的には同じだ。

 核によって巻き起こった先の大戦と同様。オーブの技術をも取り込んだ貴国の軍備体勢が、また新たなる争いの引鉄となりはしないか?」

 

 感情が乗り、僅かに語気が強くなる。

 そんな制御の利かない自身の心を、まだまだ至らない身だと認識しながら、カガリはデュランダルへと強い視線を向けた。

 

「では、姫は我々にどうしろと?」

「先にも告げている通り、オーブから流出した技術と人的資源の軍事利用を停止する事。

 地球軍との睨み合いがある以上、軍縮ができないことは百も承知だが、我が国を巻き込み争いの火種を生み出そうとすることは看過できない」

 

 毅然と告げられた内容に、デュランダルは静かに目を伏せて頷いた。

 そして逡巡の後に静かに口を開く。

 

「──なるほど、御意向の程はよくわかりました。

 しかし、そうは言われましても簡単にはいきますまい。既に形となっているものも多い。貴国の技術という部分についても、簡単に区分けできる話ではありません」

「確かに難しい話ではあると思う。だから今回はもう一つの──」

 

 

 ──轟音。

 巨大な爆発の音が、カガリの声を遮った。

 

 皆が音の出所へと視線を向けた先。

 会談中の一行の少し先にある、MSハンガーの一角が炎に包まれ燃えていた。

 

 

「アレックス!!」

「分かっている!」

 

 波及してくる衝撃からカガリを守るアスランとタケル。

 

 その最中、カガリは炎の中で揺らめく人型の影を見つめていた。

 

「あれは……」

 

 禍々しさを感じさせるデュアルアイ。

 

 炎の中で立ち上がるその影を見るのは、カガリにとって二度目であった。

 

 

 嘗て、それは戦火の到来を告げた。

 嘗て、それは戦火の苛烈を齎した。

 嘗て、それは世界を破滅に導こうとした。

 

 

 記憶の中で弟が呼んだ呼び名を、カガリはこの時呟く。

 

 

 

「──ガンダム」

 

 

 

 それは、争いを齎す破壊の象徴であった。

 

 

 




まえがきでも述べた通り、運命編については色々とご容赦頂きたいです。
作者は必死に頭をひねっております。

それでも、頑張って物語を綴っていきますので。
読者となって頂ける皆様におかれましては、楽しんで頂ければ幸いです。

それでは……運命編、開幕です。


感想、よろしくお願いいたします。


政治家モードのカガリはウズミを習い、軍人の仮面を被るタケルはユウキを習ってると言うプチ裏話をここに記しておきます。良いよね、親子愛
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