いつも読んでいただいてる読者様、どうもありがとうございます。
併せて、作者の至らない文章に、誤字報告をいつもくれる読者様。本当にいつもありがとうございます。
この場を借りてお礼申し上げます。
今後も本作をお楽しみいただければ幸いです。
3機の最新鋭機の強奪。
それによりアーモリーワン内部は大混乱に陥り、工廠も戦火に包まれていた。
緊急事態に対応が遅れたザフトは、しかし少しずつ落ち着きと動きを取り戻し、現在は何名かの将校が集まって簡易指令所を設立。
対応の指示に追われる。
「くっ、誰がここの指揮を執っている!」
そこへ、カガリとアスランを伴ったギルバート・デュランダルが状況を確認すべく避難してきた。
「あの3機はどうなった! 状況を説明してくれ」
指示を回している将校達へと呼びかけるが、答えられるものは居ない。
当然だ、現状で今の戦闘状況を把握しているのは恐らくモニタリングしているミネルバと、直接その場で戦っている者のみ。
今ここに居るの者は、民間人の避難や負傷者の救護に追われ、それの対応だけでも精一杯の状況なのだ。
「やはり、かなりの混乱の様だな」
行き交う指示の声に、戸惑う市民の悲鳴。
そして負傷者を運び避難誘導の指示と、雑多な声が飛び交う簡易司令所を見て、カガリとアスランは心を落ち着ける事ができなかった。
「仕方ない──開発中の新型の強奪など、潜入への対策はしていてもいざ奪われたケースへの対策と訓練などは、そうはしていないだろうからな」
「経験者は語る、か……正直さっきのアレを見て嫌な事を思い出してしまったよ」
「それは……すまない」
「あぁ、ごめん。お前を責めるわけじゃないんだ。ただ、私にとってあれは戦争に身を置くきっかけとなったからさ……嫌な予感が過ぎるには十分なんだ」
「────ごめん」
「いや、だから謝ってもらう事じゃ」
「議長、ここは危険です。すぐにシェルターへ!」
一際大きな声に2人は視線を向ける。
何名かの将校が、まだこんな危険な場所の止まっておるデュランダルへと詰め寄り、避難を促していた。
「バカを言うな。この状況でそんな事ができるか! 事態すらまともにわかっていないというのに」
「しかし…………であれば、せめてミネルバへ避難を。工廠には有毒ガス発生の懸念もあります」
「だが」
「──議長。我々がこんな所にいれば、将兵達に迷惑がかかる。ひとまず早急にこの場を避難するべきだと、私も考える」
「姫、いえ……アスハ代表。ですがそれでは」
「あれを目にした今、我々は手を取り合ってこの事態に対するべきだ。会談で申し上げた通り、オーブの技術が関わっている以上、我が国も無関係でいられない────事後報告となって申し訳ないが、奴らの破壊が始まった折、私の護衛が貴国のMSに乗り込んで奴らを抑えるべく応戦に回っている」
「なっ、アスハ代表。それは──」
「アレ等との距離が近かったこともあり、彼の判断は護衛として適するものと判断している。が、問題であることも重々承知だ。後程、正式に謝罪の場を設けさせてもらいたい」
「いえ、そうであるなら私とて守られた身でしょう。わかりました、とにかく今はこの事態に動きがとれるミネルバへ────申し訳ないが、代表にも同乗して頂いてよろしいですか?」
「無論だ。議長が言う様に、大戦を経た身として──できる限りの尽力をさせてもらいたい」
「感謝いたします。それではこちらへ」
「それでは、ご案内いたします!」
デュランダルが言うと、案内の将官が1人先導に回る。
向かう先は、ザフト最新鋭艦ミネルバ────カガリは奇しくも、戦火の火種と共に再び軍艦へと乗り込むことになった。
破壊され尽くした工廠ではあるが、それでも当たりどころによってはまだ無事な機体も多い。
ザフトレッドのルナマリア・ホークや、“レイ・ザ・バレル”もまた、自身の乗機が無事であった。とは言っても、工廠の破壊に伴い機体を瓦礫が覆い、コクピットハッチが開かない状態ではあるが。
周囲では必死に整備班が瓦礫の撤去を進めていた。
「早く! 入れるだけ開けばいい!」
「レイ! 開いたぞ!」
焦燥に駆られるルナマリアの横で、整備班に呼ばれたレイは即座にコクピットへと飛び込んだ。
「中の損傷は分からん。いつも通り動けると思うなよ! 無理だと思ったら直ぐ下がれ!」
乗り込む直前で向けられた言葉に静かに頷くと、機体を起動。
レイの搭乗機である指揮官仕様のザク──ザクファントムが起動する。
『そこを退け、ルナマリア』
白く塗装されたザクファントムがその巨体を起こすと、外部スピーカーよりレイの退避勧告が出され、ルナマリア機のコクピットハッチを塞いだ瓦礫を撤去した。
「ありがとね、レイ! さぁ、行くわよ!」
即座にルナマリアも、自身の乗機となる赤く塗装されたザクウォーリアに乗り込んだ。
起動した2機のザクが、戦火の中に飛び立っていく。
VPS装甲によって白と赤に染まった機体──ソードインパルスが敵機を見据える。
突然の乱入者にカオス、ガイア、アビスの3機は俄かに動きを止めていた。
「ちっ、あれも新型か? ガンダム? どういうことだ……あんな機体の情報は……」
「なるほど、最新鋭機はまだあったと────雰囲気がストライクっぽいかな? さっきの感じからするとバックパック換装型だろうし」
惑うスティングとは対照的に、ザクのコクピットでタケルは小さくごちる。
窮地を救われたと言えば救われたが、しかし目の前のこの増援が本当にザフトの援軍なのかも、また奪われた3機と渡り合える実力を持っているのかも疑問であった。
少なくとも強奪部隊は、乗ったばかりの最新鋭機をそれなりに乗りこなしてはいる。
僅かな不安をタケルは過らせたが、それはすぐに払拭された。
「はぁああ!!」
スラスターを吹かして肉薄。
地を這うように滑りながら連結させた2本のエクスカリバーを携え、インパルスはガイアへと向かう。
「なんだ、これは……!」
惑うステラが後退するより早く、エクスカリバーがガイアへと振り下ろされる。
それをすんでの所で回避して後退するも、インパルスはビームライフルを装備。ガイアへと追撃の閃光を放った。
「くっ、こいつ!?」
シールドで防ぐもその勢いに体勢を崩され、ステラは苦々しく表情を歪めた。
「逃すか!」
『シン? 命令は捕獲だぞ! わかってるんだろうな! あれは我が軍の──』
「わかってますよ!」
通信越しに飛んでくる、ミネルバ副艦長“アーサー・トライン”の言葉に、シンは苛立たしげに返した。
「できるかなんて解らないですよ! 大体、なんでこんなことになったんです!」
反撃にMA形態になって向かってくるガイアを、エクスカリバーの連結を解いて迎え撃つ。
すれ違いざまに切りつけようとするがするりと抜けられ、背後からガイアのビーム突撃砲が放たれるが、背中越しにインパルスはシールドで防御。
間髪入れずに、一方のエクスカリバーを投擲。巨大な対艦刀の投擲をシールドで受けたガイアは再び弾き飛ばされた。
「ぐっ、このぉ!」
体勢を整え、ビームサーベルを抜いて向かってくるガイアにエクスカリバーで応じる。
光の刃が火花を散らした。
「ぐっ、なんだってこんな簡単に、敵に!」
『今はそんなお喋りしてる時じゃないでしょ! 演習でもないのよ、気を引き締めなさい!』
尤も意見だが、かといって納得できないこの状況に、シンは小さく舌打ちしながら、回りこんでくるカオスへとビームライフルを撃ち放った。
その最中、タケルは目の前で繰り広げられる最新鋭機同士の戦いを注視しつつも、周囲へと神経をとがらせていた。
「さっきの気配、間違いは無かったはずだ──生きていたのか、ユリス?」
自身を襲った強烈な悪寒。
戦場に居ながら思わずタケルが動きを止めてしまう程の気配は、平和の中で忘れ去られていただけで良く覚えのある感覚であった。
ヤキン・ドゥーエ宙域での──あの最後の戦い。
世界を憎み、同じだけ自身を憎み、そうして全てを賭して殺し合った分身──ユリス・ラングベルト。
最後の交錯で互いの機体を光の刃が切り裂き、紙一重の差でディザスターは爆散。シロガネは目の前で起こった爆発の影響でほぼコクピットだけしか残らなかったものの、タケル自身は生き残った──彼女は機体ごと宇宙に散ったはずであった。
「恐らくは地球軍による強奪作戦。生きていたのなら、君が居るのもおかしくは……」
だが、先程の強烈な感触がまるで嘘のように今は感じられなかった。
もう一度SEEDへ、とも思ったが。既にタケルの集中力はユリスへの疑念で霧散しており叶わない。
「ふぅ、後だ。今はとにかく……」
再び、目の前の戦闘へと意識を集中させる。
無様を晒し片腕を喪ったが、それで撤退などという選択肢はタケルにはありえない。
両腕がもがれたなら脚部で蹴りつける。脚部すら奪われるなら、スラスター操作による体当たりだけでも戦うだろう。
今この時──戦火の火種となる戦いを前にして、タケル・アマノに撤退の2文字は無い。
努めて雑念を排し集中していく。
「さぁ、第2ラウンドだ!」
残った左腕にビーム突撃銃を持たせて、タケルが乗るザクはインパルスを援護するべく戦い続ける。
アーモリーワン周辺宙域。
最新鋭機の強奪──それは奪取した機体と部隊を回収する母艦が居なくては成立しない。
ファーストステージの核動力機体の様に、損傷さえなければ単騎で無限に行動が可能な機体ではないのだ。
必然、強奪し脱出してきた部隊を回収する手段が必要である。
地球軍独立機動部隊、ファントムペインが所有する特殊戦闘艦“ガーティー・ル―”が正にそれであり、現在は条約違反となるミラージュコロイドによって、アーモリーワン宙域へと潜伏していた。
そのガーティー・ルーの艦橋内で、この部隊の指揮官である仮面をつけた男“ネオ・ロアノーク”大佐は時間を気にしていた。
「ふむ、そろそろか」
「では?」
隣に座る艦長、“イアン・リー”少佐の問いに、静かにネオは頷く。
「よーし、行こう。慎ましくな!」
その声が合図となり、ガーティー・ルーのオペレーター達は一斉に動き出す。
「ゴットフリート1番2番起動」
「ミサイル発射管、1番から8番、コリントス装填」
「イザワ機、ハラダ機、カタパルトへ」
艦載砲が順次起動していく。
同時に、現地球軍主力機であるダガーLや宇宙空間における視認性を抑えたダークダガーL等のMS部隊が出撃準備に入る。
「主砲照準、左舷前方ナスカ級。発射と同時にミラージュコロイドを解除。機関最大! さーて、ようやくちょっとは面白くなるぞ、諸君」
アーモリーワン内の騒ぎに応じて、周辺宙域を哨戒中であったナスカ級へと狙いを定める。
「ゴットフリート、てぇ!」
リーの号令と共にガーティー・ルーの艦載砲、ゴットフリートが火を噴いた。
漆黒の宇宙を裂いていく巨大な閃光が、ナスカ級戦艦ハーシェルを貫いた。
更に追撃。続々と放たれるミサイルが2隻目のナスカ級戦艦フーリエを捉える。
アーモリーワンの宇宙港管制局は、この事態に直ぐ増援となるローラシア級の発進命令を下すが、これもまた宇宙港の傍へと潜んでいたダークダガーLの奇襲によって一網打尽とされた。
次々と撃沈していくローラシア級の爆発が、アーモリーワンを揺らした。
アーモリーワン内部で戦いに注視する者達は、突如揺れたアーモリーワンに状況の変遷を察した。
「これは、外……港からの揺れか?」
カオスのビームサーベルを受け流して、タケルは後退してから顔を顰めた。
内部の対応だけでも十分な火種だと言うのに、外で大っぴらに戦いが始まったとなれば本格的な陣営のぶつかり合いとなってくる。
ここで強奪機体を完封できればまだよかったが、流石にそれはもうタケル一人では敵わないだろう。
争いの流れが、止まらない気がしていた。
同様に、カオスに乗るスティングも、先の振動にタケルとは別の意味で顔を顰めている。
「スティング、さっきの!」
「わかってる、お迎えの時間だろ!」
通信を飛ばしてくるアウルに、語気も強く返した。
先の振動は、外にいる母艦が動き出した合図……となれば、合流までのカウントダウンが開始された。
これ以上ここで時間を取られて、撤退を遅らせるわけにはいかない状況である。
「遅れてる、バス行っちゃうぜ?」
「わかってると行ったろうが! ちっ!」
「大体あれなんだよ? 新型は3機のはずだろ? やたら強い量産型までいるし」
「俺が知るか!」
「どうすんの? あんなの予定にないぜ……くそ、ネオの奴」
「だが放ってはおけないだろ! 追撃されても面倒だ」
「了解、一気に仕留めて早く行こうぜ」
現状で一番の脅威となる新型、インパルスへと狙いを定めて、スティングとアウルは、機体を向ける。
執拗に切りかかって来るザクをカオスが受け止め、そして引き付けると同時にアビスの一斉掃射で大きく後退させ引き離す。
「くっ、連携で切り離してきた……狙いは、ザフトの奴か!」
タケルは2機の向かう先を見て狙いを察するが距離を十分に引き離された今、直ぐには助けに行けない。
その間に、MS形態のガイアの機動力に翻弄されているインパルスへと、カオスとアビスが迫る。
「ステラ!」
スティングの声に、ビームサーベルをぶつけていたガイアが後退。
同時に、背後からカオスとアビスがインパルスを急襲する。
カオスの後ろに位置取っていたアビスが腹部のカリドゥス複相ビーム砲を放つと、それを大きく回避したインパルスに頭上からカオスの脚部ビームクローが襲いかかる。
ギリギリのところで飛びのくものの、ビームライフルの追撃が遅い、インパルスはシールドでの防御を余儀なくされた。
そうしてカオスに意識を向けていれば、背後からサーベルを構えたガイアが切りかかる──再びシールドで受け止めたインパルスの体勢が崩された。
「しまった!?」
「もらったぁ!!」
遂に、アビスの3連装ビーム砲がインパルスを捉えた──しかし、間に入り込む衝角を備えたシールドが閃光を防ぐ。
「懐かしいね……昔はいつもシールド投げてバスターに突っ込んでたものだ!」
投げられたシールドの出所は勿論、タケルが乗るザクウォーリア。
肩にマウントされたシールドを外して、タイミングを合わせてインパルスの眼前に投げ込んだのだ。
「ちっ、またアイツ!」
「いい加減しつこい!」
僅かな時を稼いだタケルは、ビーム突撃銃を構えながら機体ごと突撃。
ここ一番での集中を見せて、迎撃の閃光を躱しながら、カオスへと肉薄していく。
跳躍──カオスの頭上を取りながら、ビーム突撃銃を数射。
狙いはまともにつけず、大地を穿ちその衝撃で足元を揺らす。
同時にビーム突撃銃を投擲。カオスにシールドで弾かせた。
「ここで君だけでも!」
残されたハンドグレネード2個を投擲。
僅かに動きを鈍らせたカオスを強烈な爆発で揺らす。
「ぐっ、この野郎!」
「──ここ、仕留める!」
スパイクアーマーを備える右肩を突き出してスラスターを全開。
単純な質量と勢いによる体当たりの衝撃で、カオスを再び地面へと叩きつける。
「そこのザフトの君! 仕留めろ!」
「っ──あぁ!」
体勢を整えたインパルスがエクスカリバーを振りかぶった。
次の瞬間、タケルはインパルスの背後で揺らめく光を見た
──ミラージュコロイド。その単語がタケルの脳裏に過る。
同時に、タケルはエクスカリバーを振りかぶったインパルスへと、ザクで再び体当たりを敢行した。
「うわぁ!!」
インパルスのコクピット内でシンが悲鳴を挙げる中、飛び込んだザクの頭部を寸分違わず閃光が撃ち抜いた。
「ちっ──やはり居たのか!」
完璧なタイミングでの妨害。
そして、恐らくはインパルスのコクピットを狙ったであろう射撃。
周辺の状況を知るためのセンサー類が集約しているメインカメラを撃たれた事で、タケルのザクは今度こそ戦う力を失う。
「あんた、どういうつもりで!」
「今は目の前の敵に集中しろ!」
戦闘力を失ったタケルは、必死に機体を後退させながら、ユリスの気配を探った。
だが、相変わらず──その気配はまるで掴めない。
更に攻撃は先の1射のみで、追撃の気配もない。
「どういうつもりだ……ユリス」
状況と意図がまるでつかめない事に歯噛みしながら、戦う力を失ってしまったタケルはサブカメラが拾う映像にカガリ達がミネルバへと乗る姿を見て、ザクをミネルバへと向けるのだった。
間一髪、撃墜を免れたカオス。
インパルスがザクによって押し倒された隙に、体勢を立て直したスティングは、コクピットでわずかに安どの息を吐いた。
「さっきのは……あいつか」
「ちぇ、見てたのかよ」
「撤退だ! あいつが手を出したって事は、もう限界も近いって事だろう──行くぞステラ!」
未だ執拗にインパルスを狙おうとするガイア。
エクスカリバーと切り結んでいる最中届くスティングからの通信に、ステラは表情を歪めながら首を振る。
「くっ、でもっ!」
「こんの!」
振り下ろされるエクスカリバーを後退して躱すと、MA形態へと変形。
疾走し高い機動性を生かしてガイアが飛びかかる。
それを屈んで躱すと、肩のビームブーメランを投射。ガイアはMSへと戻ってシールドで受け止めた。
「やめろステラ! 離脱だ!」
「私がこんなぁー!!」
精神性の幼さと脆弱さが表に現れたか。
ステラは、思うように倒せないインパルスに拘って戦いを止める気配がなかった。
「あぁもう、じゃあお前はここで
「ぅ!? はっ、あぁ……」
瞬間──アウルの言葉に、ステラは動きを止めて、か細い呼吸を繰り返す。
スティング、アウル、ステラの3人は、嘗て連合に居た3人のブーステッドマンと同じく、戦場における安定性と制御性を持たせるため強い暗示をかけられている。
ブロックワードと呼ばれる、強烈に情緒を揺り動かす制御単語が刷り込まれており、それを聞くと身を振わせる極度のパニック状態に陥ってしまう。
ステラのブロックワード────それは“死”。
「ネオには僕が言っておいてやる──さよならってなぁ!」
「……死ぬ? ぁ……あたし……はぁはぁ、そんな。あっ、あぁぁ──っ!」
半狂乱となって動きを止めたガイアにインパルスが向かうも、カオスがそこへ立ち塞がった。
「アウル! お前……」
「止まんないんじゃ、しょうがないだろ!」
「黙れ、バカ! ちっ、余計な事を!」
必死にガイアを守りながら戦うカオス。
だがこれ以上はもう内も外も持たないだろう。
執拗に追撃してくる目の前の新型を相手にしながら、動けなくなったステラを連れての撤退は至難の業であった。
「いや、死ぬ……ステラ」
『──ステラ』
死に恐怖するステラの耳に、通信越しで静かな声が聞こえた。
「──ユリ、ス?」
『そ、わたし』
通信は音声のみであったが、優し気な声にステラは俄かに落ち着きを取り戻していく。
「ユリス、どこ?」
『──近くで見守ってるよ。だから早くネオの所へ帰っておいで。私もネオも、待ってるから』
「ユリス……ネオ……うん」
落ち着きを取り戻すと同時、今度は何も考慮せずに、アーモリーワンの空へと飛び立っていくガイア。
それをみて、アウルのアビスも続き、スティングのカオスも、インパルスを退けると飛び立った。
「ほら、結果オーライだろ」
『──アウル、死にたくなかったらその口を閉じなさい』
「うゎ、聞いてたのかよ」
『あんたのせいでステラを失い作戦も失敗する所だったのよ。2度とその軽口を叩けない様にしてあげようか?』
「止めろユリス。どこに居るのか知らんがそっちの撤退は問題ないのか?」
『スティング達の脱出を見届けたら行くわ。気にせずどうぞ』
「──了解」
いわば、彼等の監督役と言った所であろうか。
逆らえぬ雰囲気に気圧され、アウルは押し黙りスティングも素直にしたがった。
だが、逃げ行く3機を素直に逃がすほど、ザフトは甘くはない。
「シン! すまない、待たせた!」
「さっさと行くわよシン! このまま逃がしてたまるもんですか!」
増援に駆けつけてきた白いザクと赤いザク。
友人であり、アカデミーの同期であり、そして同じミネルバ配属となった仲間が駆けつけてくれたことに、シン・アスカの意気も上がる。
「レイ、ルナ! よし、追うぞ!」
スラスターを吹かして、インパルスと共に2機のザクも続く。
戦いは、未だ終わらず。
内外の戦いは更なる苛烈さを増していく。
そこそこ頑張ったけど、メインカメラ潰されちゃね……仕方ないね。
執筆に際して運命編もじっくりと見直していますが、ステラ可愛いなぁ。
でも見返してて思うけど、序盤のザフトの無能感というか、なんか無理にアスランに活躍させようとしているというか。
特にアーモリーワン出た後が酷い。
作者はシナリオの大筋は用意しますが、場面場面での細かな展開は、都度都度キャラになりきって思考を回して展開させていくので、ちょっと難しい。
どうなりますかね。作者自身、細かな展開には期待と不安な感じが否めないです。
それでは。
感想をいただけると嬉しいです。