改心とかじゃ無いつもり
時は少しだけ遡る。
ミネルバがアーモリーワンより発進し、ボギーワンとの戦闘準備を進めている頃合いの事だ。
「へぇ、それじゃヤヨイはアマノさんの妹で、本当はサヤちゃんって言うんですね」
ミネルバ内士官室の一室。
部屋の外に保安員が待機する中、格納庫より連れ出されたタケルはルナマリアに色々と聞きたいはずが、逆に質問攻めにあっていた。
「一応まだ人違いの可能性もあると思うが……まぁそう言う事だ」
「その堅苦しい話し方やめませんか? さっきヤヨイに話しかけた時のアマノさんは随分と優しい声音でしたよ?」
さらりと吐かれたルナマリアの言葉に、タケルは少し前の己を呪う。
余りにも予想外な再会だったせいで思わず素の自身を見せてしまった。それを目ざとくこの少女は確認していたのだ。
「家族と他国の軍人を相手にして、同じ様な態度で話すわけがないだろう。君への応対はこれが自然だ」
「聞いてる私はすごく不自然に思うんですけど……」
「公私はしっかり分けるべきだと思うが?」
「あぁ、それは確かに。私もよく言われますね」
「ならば反省し、実践するべきだな」
「──ぷっ、あはは!」
突然、おかしそうに笑うルナマリアに、タケルは呆気に取られた。
今の会話のどこに笑う要素があるのだろうか。まるで見当がつかないが、答えはすぐに目の前の少女が語りだす。
「ふふっ、くぅ……はぁ! 申し訳ありません。アマノさんの物言いが余りにもヤヨイに似ていたので」
「サ──ヤヨイ・キサラギは君にも同じ様に?」
「そうなんですよ。もう本当に口うるさくて、なんて言うか年下のくせに妙に母親くさいって言うか」
あぁ確かに、とタケルも思った。
オーブで2人で暮らしていた時も、サヤは何かにつけて口煩くタケルの世話を焼いたものであった。
記憶を失ったとて、その気質は変わらないのだと僅かに嬉しくなる。
「──まぁ、それは逆に君が大人になりきれてないとも取れるだろう」
「そうそう、それですよ。『ルナマリアは年上なのですから、らしい振る舞いをしてください』って、もうホント同じ様な事言ってくるんですよ」
「だから、それを言われてるなら少しは反省しろと──と言うか、色々と聞きたいのは私の方だったんだが?」
おかしい。いつの間にやら言いくるめられていたと言うか、完全に聞き手と語り手が逆となっていた。
興味津々に、サヤ・アマノについてを聞いてくるルナマリアの勢いに押されて、タケルは応答を余儀なくされていたのだ。
「あっ、ごめんなさい! 1人で勝手に盛り上がっちゃって…………それじゃ、どうぞ。なんでも聞いてください!」
「それはそれでどうなんだ? 仲間の事を他国の軍人に惜しげもなく話すと言うのは……」
「えぇ、だって聞きたいんじゃないんですか? ヤヨイがどんな子か知りたいんですよね?」
「微妙に誤解を与えるような言い方は止めてもらいたい。先ほども伝えたが死に別れたはずの妹かもしれないから確かめたいだけだ」
「はいはい、わかってますよーだ。ホラ、何が聞きたいんですか?」
腰に手を当て唇を尖らせて。見た目よりもどこか幼げに見える仕草に、タケルは小さくため息を吐いた。
真面目な話をしたいと言うのに、どうにもこの少女の空気は軽い──サヤの事で必死であったタケルの意気が少しだけ削がれた。
「調子狂うなぁ──それじゃまず、あの子のMS戦闘の腕前はどの程度だ? ザフトレッドなんだから腕は立つのだろう?」
「なんでそんな事? まぁ良いや。ヤヨイは凄いですよ。アカデミーじゃ主席卒業ですし、対人戦からMS戦闘まで全て完璧。同期で追従できたのはレイとシンがなんとかギリギリって感じで、他のみんなは足元にも及びませんでしたし」
ほぅ、とルナマリアの答えに、タケルは一つの傍証を得た。
嘗てのサヤもまた、国防軍の訓練では負けなし。そして先の大戦を潜り抜けたサヤの実力であれば、ザフトのアカデミーで敵う相手などいるわけもない。
そんな稀有なパターンのそっくりさんが存在する可能性よりも、記憶喪失のサヤ・アマノを想定する方が自然だろう。
「なんでそんなにできるのか、とかは聞いたりしたのか? 普通、そこまでできるやつが居たら怪しいだろう?」
「そうなんですよ。だから私達も色々と聞いてみたんですけど──でも、聞けば納得の理由があったんです!」
「そうなのか。それで、その理由とは何だ?」
どこか瞳を輝かせて答えてくるルナマリアに、タケルはわずか引き気味に返した。
「聞いてくださいよ、ヤヨイってばザフト特務隊のエース、ミゲル・アイマンさんの所に居候の身で、ずっと色々教えてもらってきた一番弟子なのだそうですよ──あぁ、ホント羨ましい!」
羨ましい……と言うより、いっそ妬ましいという雰囲気でルナマリアが語る。
たっぷり数秒。ルナマリアが今何を述べたのかを、タケルはじっくりゆっくり噛み砕いて理解していき、次いでタケルは驚きの表情へと変遷していく。
「はっ? えっ? まっ、嘘? ミゲル・アイマンの一番弟子?」
どう言うことか、皆目見当のつかない事実に混乱していくタケルを、ルナマリアはいきなり出てきた名前に理解が及んでいないのだろうと誤解した。
「あ、すいません。オーブの人じゃわからないですよね。ミゲル・アイマンさんって言うのは──」
「いや、そこは大丈夫だよ。彼とは見知った仲だから」
「うぇえ!? そうなんですか!」
「あぁ、ってそうじゃなくて! 彼女がミゲルの弟子とは一体どう言う事だ!」
「ど、どうって言われましても……本人からそう聞き及んだだけですし……」
先程までとは打って変わって、食いつく様に身を乗り出してきたタケルに、今度はルナマリアが引き始める番であった。
しかし、タケルの追及は終わらない。
「くっ、君達が出会ったのはいつだ? ザフトのアカデミーはどのくらいの期間で訓練を終える?」
「おおよそ一年半って所ですかね……私達は卒業と同時にミネルバ配属ですし……」
「一年半!? はぁ!?」
信じられない、と言うようにタケルは再び驚きの声を挙げる。
「(って言う事は条約締結の時には既に? ミゲルってばオーブきた時そんなの一言も言ってなかったじゃないか! 何で教えてくれないんだよ!)」
「あの……アマノさん?」
「あっ、すまない。余りにも予想外な話だったので少し取り乱した──ちなみに他には何か聞き及んでいないか? 例えば、アカデミーに入るまでの経緯とか」
「それ以上は何も……ヤヨイはあんまり自分の事を話さないので」
「そうか……だが貴重な情報だった。感謝するよ、ルナマリア・ホーク」
「いえいえ、私もかなり有益な情報が聞けましたから」
「そう言えば先の反応を見るに、君は随分とミゲルにお熱の様だな」
先のミゲルを語るときのルナマリアの声音。そしてその表情は間違いなく憧れの類が含まれるものである。
イザークやディアッカから以前聞き及んでいたが、先の大戦での活躍でミゲルが高く評価されていると言うのは本当なのだと証明された。
問われたルナマリアはこれでもかと喜色を浮かべて口を開いていく。
「あっ、わかっちゃいます? そうなんですよ。ザフトに置いてはあのアスラン・ザラに次ぐトップガン! しかも先の大戦ではジンやシグーと言った量産機でずっと戦果を挙げた人ですから。私にとっては憧れなんです。ホラ、私もザフトレッドには成れたものの、シンやヤヨイの様に最新鋭機を任されてるわけじゃないですから」
なるほど、そう言われればそうだろう。
タケルのアストレイやアークエンジェルとの戦い。何度も行われたその戦いにおいて彼だけは唯一、専用チューンこそ施されているものの、ジンやシグーと言った量産機で戦い続けていた。
大戦末期にはその戦果を買われて、最新鋭機のパイロットとなったが、彼の英雄譚を述べるならディバイドでの活躍よりジンやシグーでの戦いの方が多いだろう。
「やっぱり、ちょっと引け目を感じちゃうんですよねぇ。シンやヤヨイと比べちゃうと」
「ナンセンスだな。最新鋭機を任されたからと言って実力が高いわけでもない。現に当時のミゲルはイージスやデュエルなんかより余程手強か……った……」
言いながら、タケルは自身の失態を察した。
まるで彼等と交戦経験があるような物言い。直ぐに、ルナマリアはタケルの言葉に怪訝な表情を見せた。
「な、何ですか今の話……もしかしてアマノさんってあの『オレンジ』のパイ──」
「わー、待った待った! 無し、それ無し!」
慌てて、核心的な事をつかれる前にタケルは待ったをかける。
既に軍人の仮面が剥がれかけているのは言うまでもない。
「ふぅーん、そうなんだぁ……良い事聞いちゃったなぁ。後でメイリンに教えてあげよーっと」
「だ、誰だメイリンとは?」
「私の妹です。あの子ミーハーだからアスラン・ザラみたいにわかりやすく凄い人が好きなんですけど、アマノさんの事も……て言うかこの場合アスハ代表と合わせてですかね。お2人の話が、特に好きなんですよ」
「はぁ? 何でザフトの子が……」
ミゲルやアスランなら、まだわかる。2人は間違いなくプラントの……それもザフトにおいては大戦の英雄と言えるだろう。
それに値する高い戦果を挙げた人物だ。
だが、タケルとカガリがそこに挙げられる理由が分からない。
「プラントを襲った核ミサイルの撃墜。それを主導したラクス・クラインとカガリ・ユラ・アスハ。
それと、オーブにおける防衛戦での逸話……圧倒的劣勢を覆したお2人の話はこちらでも有名でしたよ。そのせいかアスハ代表の就任演説の時は、やっぱりこっちでも注目されてましたから」
「嘘ぉ……噂に尾ひれがついてるってやつじゃんそれ」
小さく、ルナマリアには聞こえない様に羞恥に悶えながらタケルは呟いた。
自国だけならまだ許せる。何ならそう言われるのは国防を担う人間として誇らしいとも思えるだろう。
だがそれが他国の者にまで知れ渡ってるとなると別だ。2人は決して、そんな名の広まり方を望んではいなかった。
「アスハ代表に至ってはMSアカツキに乗って最前線で戦ってますしね。それに、フリーダムやジャスティスと並んで多大な戦果を挙げてるアマノさんのシロガネ。データで閲覧しただけでしたけど、お二人の機体はとても目立ちますから。アカデミーじゃアスランと同じくらいの注目の的でしたよ。
んで、そんなシロガネのパイロットである貴方が、まさか伝説のオレンジのパイロットだなんて事実……あの子にとっては垂涎ものですよ、きっと」
「確認させて欲しいんだが、その伝説のオレンジって名前は何? ちょっとダサくないか?」
「アスラン・ザラとミゲル・アイマンがザフトにおける伝説的パイロットであるなら、地球軍のストライクと、名称不明の『オレンジ』──まぁ、今はオーブのM1アストレイだってわかってますけど、これら2機もまた、敵方における伝説ですから。
ザラ隊とアークエンジェルの死闘。その中で数々の劣勢をしのぎ切り守り続けたその2機の評価も、とても高い話なんですよ────あれ? でもアマノさんってオーブの人じゃ」
「待った! それ以上は危険だから考えちゃダメだ! 色々複雑な事情があるから突っ込まないで!」
疑問を持ってはいけない。
タケルは必死に面倒ごとから目を逸らす様に、ルナマリアを押し留めた。
「えぇ~、教えてくださいよ」
「ダメだ、と言うか……本当はこちらが色々と聞きたかったのに、何故君が質問する側にまた戻ってるんだ──それよりも何か無いのか他に? ヤヨイ・キサラギについて、詳しい情報は」
「んー、ヤヨイが今一番仲が良い男の子の話とか?」
「聞こう」
即断即決。食い気味になるかならないかのギリギリ。
正に返答としては正しいタイミングでの最速を記録して、意思を表明するタケル。
この瞬間、ルナマリアは
“あ、この人シスコン拗らせてるわぁ”
と悟った。
冗談交じりに提示した話題にここまで食いつかれるとは思っていなかったルナマリアは、下手な事は語れないと若干の冷や汗を流しつつ、慎重かつ丁寧に言葉を選んで、該当する同期の少年の名を挙げた。
ちなみに、仲が良いとはただ堅物同士で気が合うと言うだけで、決して男女の仲ではない事をルナマリアは百も承知であったが、あえてそこに言及することは無かった。
その方が絶対に面白そうだとルナマリアの本能が叫んでいた。
果たして──彼女の狙い通り。
ミネルバが大きな揺れに襲われるその時まで、タケル・アマノはルナマリアの存在を忘れて一人悶々と呻く時間を過ごすのであった。
ガーティー・ルー艦内。
スティング、アウル、ステラの3人が帰投してから程なく、
機体反応すら齎すことなくひっそりと艦内へ帰投した機体が1機。
紫を基調としたカラーリングと、禍々しさを印象付ける機体デザイン──GAT-X411β、機体名ディザスター・ホロウ。
生きていたユリス・ラングベルトの乗機として再製造され改修を施された機体である。
機体各部に使われる技術のブラッシュアップと、ミラージュコロイドの搭載。肩にあった高出力砲シュヴァイツァを2門に増やしている。
「ふぅ、久々に兄さんを見た……と言うか、感じられて嬉しかったけど。再会早々オイタが過ぎるわよ兄さん。もう少しでステラもスティングも落とされるところだったし」
不満げにコクピット内で、タケル・アマノへと悪態をつく。
そこに、嘗ての狂気じみた憎しみは感じられなかった。
ヤキン・ドゥーエ攻防戦の折。
機体の爆散によって、奇跡的に重傷を負いつつも機体から投げ出されていたユリスは、地球軍によって拾われ、目が覚めた時には再び大西洋連邦の手の内にあった。
また下らない戦いに利用されるのか、と辟易しつつも。しかし胸中には虚しさと一緒にどこか満足した心地もあった。
ラウ・ル・クルーゼと共に世界を煽った。
条件だけをそろえて、後は自ら破滅へと向かう人類を愚かと決め付け、そうして世界の終わりと共に最も憎い自身の分身との決着を望んだ。
愚かな人類として彼女もまた羨み、妬み、憎んだ──そうして、己の命を顧みることのない死闘の末、死んだはずであった。
いや、死んだのだ。
ラウも……ユリスも……2人が望んだ世界の終わりも、潰えた。
目覚めたユリスが目にした世界には、曲がりなりにも平和と呼べるものが存在しており、世界は間一髪で踏みとどまってしまっていたのだ。
端的に言ってしまえば、彼女達は負けたのだ。
キラやタケル──未来を望む者達との戦いに。
目覚めてそれを知ってから、ユリスの心には空虚だけが残った。
今更もう一度、などと彼女が思う事は無かった。
ラウが逝ってしまった今、唯の人間兵器でしかない自身に何かを成せる様な力はない。
“ラウ、貴方もこんな気持ちだったのかしら……”
ふと、そんな言葉をユリスは胸中で溢した。
嘗て、ラウはユリスに語った事がある。
絶望していた世界であったが、今は生きるのが楽しくて仕方ないと。
それは一つの諦めの境地からくる言葉であったが、当時のユリスにはラウのその言葉が理解できなかった。
互いに世界を憎んで、憎み切って生きていると言うのに、世界が楽しい?
ふざけるなと鼻で笑った。
だが、最後の最後までラウ・ル・クルーゼという役を演じ切った彼は、世界がどのような結末へと至るのか────それを心底楽しみにしていたのだろう。
クローン故の残りわずかな寿命。どう転んでも、その先に自身の未来は無いからこそ。
役を演じきり世界の一部として生き続けた。
彼は、この世界でたった1人だけ……彼が最も忌み嫌うであろう、神を気取った愚か者に相応しい人間で在ったのだ。
今のユリスは自身の生に──命に、全く価値を見出せなかった。
ただ、自分とラウの望みを蹴って選ばれた世界が、この先どんな未来を紡いでいくのか。
それだけは、知っておきたいと思った。
逝ってしまったラウの代わりに、神を気取った愚か者になろうと考えた。
そうして、ユリス・ラングベルトは今の世界で生きる事を決めた。
しゅっ、と圧が抜ける音と共にリラクゼーションルームへと入ると、そこには疲労困憊の様子でいる3人の実験体達の姿。
彼等を見る度に、嫌な気持ちが鎌首をもたげる。
結局世界は何も変わっていない。
再び争いの火種は撒かれ、バカな連中の夢に付き合わされてこうして悲しい命がまた生まれている。
「あっ、ユリス!」
「ステラ、怪我は無い?」
「うん!」
懐いてくる少女を抱き止めて、らしくもなくユリスは安心させるように笑った。
まだブロックワードの影響でその身は小さく震えていたが、それでも彼女の声に安心を覚えたのか、ステラの声音と雰囲気には大分平静が戻ってきていた。
そんなステラを見て、内心でユリスは侮蔑をこれでもかと吐き出す。
同じだった……己がどんな存在かも知らず、生み出され、使われ。
それはラウと、自身と、そして己の分身である彼や、最高のコーディネーターである彼とも同じ。
愚か者達の業と欲望の産物である。
ユリスが嘗て、アズラエルの下で従順にしていたのは大切な目的があったからだ。
それを成すには、そこに居る方が都合が良かったからだ。
正直なところ、今のユリスはディザスターに乗って脱走しても生きていけるし連合に使われる理由は無い。
だがそれをできない理由がここにはあった。
連合が生み出した、ブーステッドマンに類する強化被験体エクステンデッド。
ステラ達3人はそれにあたる。
元々ユリスは自身と同じ存在であるタケルに対して強い執着を持っていた。
それは未来を望むタケルとの訣別もあり、憎み合う死闘へと至ったが、彼女の生来の気質として自身と同様の存在への強い親近感がある。
ラウが逝き、成すべき事を見失った彼女には、それが残り付き纏った。
世界を憎む心が失われてしまった今、彼女は自身と似た境遇である彼等を捨てる事ができなかったのだ。
「アウル、スティングも平気?」
「まぁ、ね」
「疲れたけど、なんとか」
「そう────それじゃ少し休んでおきなさい。
その後はザフトの追撃に備えて、奪ってきた機体の使い方をレクチャーしてあげるわ」
「はぁ? なんだよそれぇ」
「私達はいついかなる時も駆り出されて使われるのよ。準備を怠ってやられるようなら、すぐ捨てられる────生きたいのなら、文句を言わずにやりなさい」
「だとよ、アウル」
「へいへい……」
気だるそうに返す2人に小さく笑みを浮かべながら、ユリスは胸の内にいるステラにも声をかけた。
「ステラはどうする?」
「ん? 何……が?」
まるで理解できていない顔……と言うより実際全く理解していないのだろう。
問いかけに不思議そうに返すステラに、ユリスは小さくため息を吐くのだった。
「────まぁ、流れのままに生きるのもありなのかもしれないわね」
序盤から爆弾を投げちゃってますが、何卒ご理解を。
seed執筆当初からプロットとして運命も出来上がっておりますので、作者は安易な路線変更とかはしておりません。
軍人の仮面ちょいちょい剥がされる主人公。やっぱり付け焼き刃じゃそんなもん……
ユリスは改心したとかではなく、全てを賭けてやった末に至らなかった為にやってらんねえなぁって状態。
でも自分と同じ様な存在が生み出され続けてることだけは、許せないと言うか、生み出す連中を憎む気持ちだけは残ってるわけです。
キャラ設定でも語られていますが、彼女はラウよりも個人に向ける執着が強いのです。
その為、何も知らずに生きてる彼等がクソ共に良い様に使われるのだけは我慢ならないと、こうなっています。
運命編は色んなキャラが主軸となるかと思いますし、彼女もその内の1人となります。
seedから続いている作品である以上、オリジナル要素が多くなるのも含めて、ご理解いただければと思います。
お気に召さない読者にはごめんなさいとしか言えません。