機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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戦闘シーンにおいて凄く悩んだ回。


PHASE-13 戦火の輩

 

 

 ユニウスセブン────それは、禁断の炎に焼かれた忌まわしき墓標。

 

 悲劇の爪痕が遺され、嘆きと怨嗟の声が漂い、遺された者達の悲哀と憎悪が渦巻く場所。

 

 

 

 ゆっくりと、だが確実に落ちていくその墓標を見ながら、ジンを駆る男は胸の内に生きる者達へ向けて呟いた。

 

「アラン、クリスティ──これでようやく俺も」

 

 前に進める──彼は、その言葉を呑み込んだ。

 きっとこの行為は世界を進めるのではなく、また混迷の闇へと戻す事に相違ない。

 間違いなく、世界における悪行なのだ。

 

 だがそれでも、捨てられない事実が彼にはあった。

 

 ユニウスセブンに──平和に暮らす人々に、核の刃を突き立てられた事実は、彼に今の世界を否定させた。

 

 この世界に、平和など存在しない。

 手を取り合うーーーーその選択肢は、あの日炎に焼かれて消えたのだ。

 偽りの平和を歩む、欺瞞に満ちた今の世界を、彼は許しておけなかった。

 

「さぁ行け! 我等の墓標よ! 嘆きの声を忘れ、真実に目を瞑り、またも欺瞞に満ち溢れる世界を、今度こそ正すのだ!」

 

 

 戦場となった墓標へ機体を向けて駆けていく。

 己の命すら惜しむことなく、彼は仲間達との悲願を成就させるため、世界に牙を剥いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユニウスセブン、さらに降下角1.5。加速4%!」

 

 

 状況の観測を続けるバートの報告に、タリアは表情を険しくさせた。

 落下への更なる加速。対応時間が削られたその報告に、嫌な気配が膨れてくる。

 そもそも完全破砕など望めないような急場しのぎの対応で来たのだ。

 その上で敵性勢力の妨害に、更にはボギーワンの介入。

 状況は混乱の一途にあり、破砕作業は遅々として進まないだろう。

 

「破砕作業はジュール隊の方が熟知しているわ。ミネルバ艦載機はジュール隊の作業支援の為に、敵性勢力の排除を優先! メイリン、ヤヨイ達に指示を」

「はい!」

 

 

 タリアは必死に思考を巡らせ、この状況における最善を捻りだす。

 メテオブレイカーを積載してこの場に来たジュール隊は十分に破砕作業をブリーフィングしているはずだ。

 ミネルバはその支援に来たのである。ならば今為すべきは最新鋭機を保有するミネルバの高い戦力で、敵性勢力を排除し、安全な作業を確立させる。

 

「ジュール隊より入電! ミネルバは作業支援の為に敵勢力の排除を優先せよとの事!」

「了解したと伝えて」

「ジュール隊、カオス、ガイア、アビスからの攻撃を受けています!」

 

 再びの嫌な報告に、タリアはまたも表情を歪めた。

 静かに、背後へ座るデュランダルとカガリへと振り返る。

 

「議長方……現時点で、ボギーワンをどう判断されていますか?」

 

 タリアが向けた質問に、デュランダルとカガリは眉を顰めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなひよっ子どもに!」

 

 ビームライフルからの閃光に、ジュール隊のゲイツがまた1機墜とされていく。

 

「くっ、どういう奴等だよ一体! ジンでこうまで──」

「泣き言吐いてる場合じゃねえぞディアッカ! 今はとにかく敵を片付ける事に集中しろ!」

「わかってるけどよ!」

 

 言いながら、ディアッカは迫りくるジンへとオルトロスで牽制を掛けて追い払う。

 ミゲルもまた、ビーム突撃機銃をばら撒きながら、ジンへと肉薄。

 メテオブレイカーを守る様に敵機を追い払っていく。

 

 

 ジンに乗る彼等は、恐らく大戦を経て生き残った者達なのだろう。

 熟練したパイロットとしての技量を感じられた。

 

 先の大戦でその人数を大幅に減らし、現在のザフトは経験浅い新人ばかり。

 ミネルバと同様、どの部隊もアカデミーを出たばかりの様な、真新しい人員で構成されているのが現状だ。

 必然、その経験値の差は古い機体であるジンに乗っている彼等との、機体性能の差を埋める。

 

 

「工作隊は作業を進めろ! これでは奴等の思うつぼだぞ!」

 

 

 ボルテールより発進してきたイザークも戦場へと到着。

 スラッシュウィザードを装備した青いザクファントムが、一機のジンを叩き切った。

 

 ミゲル、ディアッカ、イザーク。旧交も深く十分に連携の取れる3人が揃えば、いくらパイロットが多少優秀であろうと後れを取ること等ない。

 が、しかし事はそう簡単に良い方向には進まなかった。

 

「くっ、別方向からの攻撃!?」

「今度は何だ」

「新手か!」

 

 飛来してくる閃光。

 ガーティー・ル―より発進してきた、カオス等3機の攻撃であった。

 

「カオスにガイア、アビスだと?」

「アーモリーワンで強奪された機体か!」

「ええぃ! こんな時に面倒な!」

 

 ジンの部隊だけでも手一杯だというのに、さらなる敵勢力。

 イザークは苦虫を噛み潰した様な顔を見せながら、未だ迫りくるジン部隊を迎撃していく。

 

 

「冗談じゃないぜ、こんな所でドタバタと!」

「お前らのせいかよ、こいつが動き出したのは!」

「──こいつら、敵?」

 

 

 スティング達は、ジュール隊とアンノウンのジンを区別することなく攻撃を仕掛け始めた。

 

「ちぃ! あいつら!」

「あの3機、今日こそ!」

 

 状況を見据えて、シンとルナマリアは血気盛んに、自分たちの出番だと言わんばかりの勢いで飛びだしていく。

 

「おい、2人共、何も考えず迂闊に前へ──」

「ですが、アスランさん。俺達は奴等と交戦経験があります。ならば、率先して行くべきかと」

「レイに同意します、アスラン・ザラ。今の私達の任務は敵勢力の排除──であれば、奴等は敵勢力であり、私達が相手にするべきだと思います」

 

 追随する様に、レイのザクとヤヨイのセイバーも前に出ていった。

 カオス等3機だけでなく、その他にも優秀なパイロット達が駆るジンが多くいる戦場へと。

 

「敵を甘く見るなと……迂闊に前に出て集中砲火を喰らったらどうする気だ」

 

 大体ルナマリアのザクは砲戦仕様ではないか。何故当然の如く前にでていくのか。

 アスランは、内心で頭を抱えた。

 

 ザフトの教育は一体どうなってるのだろうか。いや、そもそもあのイザークが隊長などやってるくらいなのだから深刻な人材不足の筈だ。

 普通の感性であればあの男に部隊長など任せはしない。

 新人たちの無鉄砲さは巡り巡って、今のザフトの惨状を表しているようにも思えた。

 

「全く、仕方ない」

 

 アスランは辟易しながらも通信回線を開き、目当ての人物達に通信を飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今この場で、見解を述べろと?」

「その判断次第で、できる事があります」

 

 タリアの言葉に、デュランダルは考えを巡らせるように静かに目を伏せた。

 地球軍であるのなら──そう判断できるなら、ユニウスセブンの破砕に際して、ここで争う事は無意味だ。

 そうであるのなら、呼び掛けて戦闘を……ボギーワンからの妨害だけは退けられる事も考えられる。

 

 

 だが同時に、それは別の意味を持つだろう。

 新型機強奪作戦が地球軍によるものだという事が確定される。それはつまり、新たな戦火の火種となる事と同義だ。

 

「ふむ……アスハ代表、そちらの見解は如何でしょうか?」

 

 向けられた問いに、カガリも逡巡。傍らにいるタケルへと視線を向けた。

 タケルと僅かに視線を交わし、その意図を察する。カガリは小さく頷いた。

 

「────確約まではできない。が、あれは地球軍であることが明らかだと私は考える」

「それは、何故でしょうか?」

「先のデブリ帯での戦い。お2人も察しの事とは思うが、アマノ三佐が戦闘していた機体に私達は覚えがある。

 あれは先の大戦で地球連合が開発した新型MSだ」

 

 僅かに、艦橋内の空気がざわつく。

 ボギーワンと地球軍の関与。カガリの言葉は、もはや確定的と言って良いものであった。

 

「先の大戦であの機体は、アマノ三佐の手によって破壊されている。それが再び現れた以上、地球軍が再製造したと考えるのが妥当だろう」

「ですが、データの流出や残骸の回収などでも作れるのではありませんか?」

「それについては私から否定させてもらいます。あれの残骸は回収が可能なレベルでは無かったです。そしてあれはXシリーズの系譜となる新型機。用いられている技術、部材、その他諸々。一から作り直すとなれば相応に物と金、更には設備が必要です。データの流出があったとして、海賊の類が作るには手に余るでしょう」

 

 タケルはMS開発に携わる身としての知見を、淡々と述べた。

 何より、伝えることはできないがユリス・ラングベルトの存在がある以上、地球軍の関与は疑い様がないのである。

 タケルとカガリにとって、タリアの問いは判り切った答えしか出てこなかった。

 

「つまり地球軍と見て良い、という事ですか」

「どうやら、そのようだな」

 

 どこか呻くように、タリアとデュランダルは呟いた。

 本来であれば否定したい事実。言うなればこれは、宣戦布告にも等しい事実が確定したことを意味する。

 騒ぎが収まれば、強奪事件に関して、外交筋から大きな動きとなるだろう。

 無論、外交などと言う選択肢が、まだ残っていればの話だが。

 

「タリア、ボギーワンとコンタクトは取れるか?」

「国際救難チャンネルを使えば」

「ならばそれで呼び掛けてくれ。我々はユニウスセブン落下阻止の為に破砕作業を行っているのだと」

「はい」

 

 

 デュランダルの指示に動き出していく艦橋内。

 そうしている間にも、戦場は混沌を深め、ユニウスセブンは更に高度を落としていく。

 

 

 

 地球の終わる時が近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジュール隊、イザーク・ジュール。ミネルバのMS部隊との連携を求む』

 

 飛び込んで来た通信。

 聞き覚えのある声に、ミゲル達3人は驚愕を浮かべた。

 

「この声……」

「アスランか!」

「貴様ぁ! こんなところで何をやっている!」

 

 案の定、1人だけ猛々しい声で返してくるイザークに、アスランは苦笑した。

 やはりこの男が隊長なのは如何なものだろうか。特務隊のミゲルと入れ替えた方が良いだろうと思えた。

 

 

 “君は隊長に向いてないよ”

 

 

 ふとアスランは嘗て言われた言葉を思い出し、気が付いた。

 ザラ隊の隊長をやっていた自分の方が、隊長としてはよっぽど不適格だった事に。

 それはもう完膚なきまでに、友人のタケルにも言われた事だった。

 任務には集中できず、私情で戦い、更にはキラとの戦いにムキになり撤退するタイミングすら逸した。

 今更になって、嘗ての自身の所業に恥ずかしさと、こんな自分の部下となってしまった彼等への申し訳なさを覚えた。

 

 アスランは抱いていたイザーク隊長不適格論を、胸の奥底にしまい込んだ。

 彼にそんな事を思う資格は無かったようだ。

 

 

 

「とりあえず、イザークが煩いのは置いといて」

「ディアッカ貴様!」

「んで、なんだよ急に。ミネルバのMS隊?」

「あぁ。アカデミーを出たばかりの新人達が、息巻いて俺達の仕事だとあの3機に向かって行ったんだ。正直危なっかしくて見ていられん。援護して欲しい」

 

 伝えられた言葉に、3人は数秒の沈黙。

 そして意味を理解し、小さく笑った。

 

「後輩に手本でも見せてやれってか? ザフトを離れたお前が、お優しい事だな」

「まっ、良いんじゃねえの? 今後の為にもなるだろうし」

「そんな事を言ってくるからには貴様も本気でやるんだろうな?」

 

 むっ、とアスランは口を噤む。

 

 ザフトにおける先達であり、現役である彼等に任せるつもりであったが、そうは問屋が卸さない様である。

 と言うか、イザークには未だアスランへの対抗意識の気配が見え隠れしていた。

 やれやれと思いながらアスランは逡巡──意識を切り換える。

 挑戦的なイザークの声にアスランの気持ちも必然高ぶった。

 

 発進前に、生意気なイザーク2世に言われた事が密かに後を引いていたのだろう。

 戦場で強さを誇示してはしゃぐ趣味は無いが、思いのほか簡単に、アスランは彼等の言葉に乗せられてしまった。

 

「あぁ、良いだろう……ちゃんとついて来いよ、イザーク」

「今は俺が隊長だ! 貴様が後からついて来い!」

「はっ、おもしれえ! ザラ隊再結成てわけだ」

「全く嬉しくねえな。良い記憶なんて無いぜ俺」

 

 どこか素直じゃないディアッカの言葉を聞き流しながら、アスランは微かに笑った。

 

 

「いくぞ!」

 

 

 アスランの声と同時、カオス等3機へとザラ隊は吶喊した。

 

 その道中で飛び込んでくるジン数機を片手間に退けると、ディアッカのザクが足を止めてオルトロスを構える。

 

「そら、行けよ!!」

 

 立て続けの3連射。

 ミネルバの面々と戦闘中のカオス、ガイア、アビスをそれぞれ狙う。

 

 同時──飛来した閃光に惑う瞬間を彼等は見逃さない。

 ちなみにこの時、ディアッカは完璧な動きを見せる僚機達に不覚にも嬉しさを覚えつつ、2年前にそれができていたら自分はアストレイにトラウマを抱えることなど無かっただろうと1人ごちた。

 

 

「まずはこいつだ!」

 

 ブレイズを装備するミゲルのザクが駆け抜けて背後を取ると、ファイヤービーのミサイルを一斉射。

 虚をつかれた3機が回避軌道を取れずに、ミサイルの雨に包み込まれた。

 VPS装甲でダメージを打ち消しながらも、その衝撃が大きくコクピットを揺らす。

 

「がっ!? 何だいきなり──っ!?」

 

 状況を確認しようとしたスティングは、眼前に迫る青いザクに慄いた。

 振りかぶられる長柄のビームアックス。間一髪のところで何とか腕部を犠牲にして、カオスは退いた。

 

「スティング──はっ!?」

 

 そんなスティングに気を回した隙に、アスランのザクがアビスへと肉薄。

 接近の勢いに任せて脚部による蹴りを繰り出し、アビスを弾き飛ばすと、そこへミゲルがビーム突撃銃を斉射。

 アビスのビームトマホークを破壊する。

 

 鮮やかな戦闘。絵に描いたように展開される高度な連携攻撃に、邪魔をしないようにと退いたミネルバの面々は嘆息する。

 

 練度。この言葉が過った。

 違うのだ。味方の動きを把握する術に長け、敵の動きを先読みする慧眼を持ち、何より自身の機体を完璧なまでに乗りこなす。

 見せられたのは、年季の違いという奴だ。

 戦って来た時間も、戦友として共にいた時間も、自分たちとは比較にならない。

 

「何よあれ、すっご!」

「何とも、見事な……」

「流石は特務隊という事ですか、ミゲル」

「あの人……ここぞとばかりに見せつけやがって」

 

 各々が、異なる反応をしながらも、そこに込められるのは畏敬。

 自分達では届かない高みに居る者達への、尊敬の念であった。

 

 

 

「ステラ、退がれ! こいつらヤバい!」

「ぇ……」

 

 明らかに異質な動きで攻めかかってくる4機に、スティング達は後退を始める。

 

 しかし、タイミングが僅かに遅い。

 静かにステラが声を漏らした時には、ガイア目掛けてイザークのザクが肩のビームガトリングを構え、背後よりミゲルが接近し、アスランがビームアックスを投射していた。

 更には、ディアッカが逃げた先を狙うべく、オルトロスを構えている。

 

 絶体絶命。

 ステラが乗るガイアを、ザラ隊は完璧に仕留めに来ていた。

 

 

「させるものですか!!」

 

 

 別方向より飛来する閃光が、ビームアックスを撃ち落とし、ミゲルを押し留めた。

 

「ちっ! ディザスター……潜んでいたか!」

「新手だと!?」

「あの機体は!」

 

 そこに居たのはミゲル達にも覚えのある紫電を思わせる色合いの機体──ディザスター。

 想起させる記憶が、一気に彼等の警戒度を引き上げる。

 

「スティング、アウル、ステラ! さっさと離脱しなさい!」

「おい、ユリス何言って──」

「良いから黙って従え!」

 

 瞬間、ディザスターは両肩のシュヴァイツァでアスラン達を牽制。

 スティング達から彼等を引き剥がすと、ビームサーベルを出力して、突撃した。

 

「(揃いも揃って、全力で墜としに来やがって──ふざけないでよ!)」

 

 本当は傍観でユニウスセブンの情報収集にあたるつもりであったが、スティング達との明らかなる力量の差に、ユリスは歯噛みしながらディザスターを駆った。

 

 エクステンデッドとして十分に強化され、また自身が機体の扱いを彼等に教えておいても尚、大戦を潜り抜けた英雄達は歯牙にもかけぬほど強かったのだ。

 この状況は、それを見抜けなかった彼女の失態である。

 

「アスラン、あの性悪女はやばい!」

「知ってるさ!」

「イザーク、油断するなよ!」

「当たり前だ、二度も負ける気はない!」

 

 迎え撃つザラ隊。

 しかし、そこへボルテールより通信が入る。

 

『ジュール隊長! アンノウンの増援です! メテオブレイカーが狙われています!』

「なんだとぉ!」

 

 ここに来て、まさかの増援報告。

 アンノウンを引きつれていた母艦が居たのか、新たな敵の登場に戦局は再び揺れ動いた。

 

「イザーク、あれは俺が相手をする! ミネルバの皆と一緒にアンノウンとメテオブレイカーを!」

「ふざけたことを言うなアスラン! いくら貴様でもこいつは──」

「こいつを相手に何人も足止めを食うわけにはいかないだろう! 目的はユニウスセブンの破砕だ!」

 

 接近してくるディザスターのビームサーベルをシールドで受け止めて、アスランはユリスを迎え撃つ態勢となった。

 

 今言った様に、第一の目標はユニウスセブンの破砕である。

 増援が湧いてきた以上、ここでディザスターの為に人数を裂くわけにはいかない。

 かと言ってミネルバの面々を援護に残すのは、危険が過ぎる。

 

 ユリス・ラングベルトとディザスターの危険性を彼等は良く知っているのだ。

 

「ええい、バカ者が──死んだら承知せんぞ!」

「ミネルバの部隊は俺達について来い! メテオブレイカーの防衛に回れ!」

「了解です」

「わかりました」

「えっ、あっ、はい!」

「くっ、了解!」

 

 特務隊のミゲルの声に、二つ返事でその場を離れていくインパルス達。

 彼等もまた、ディザスターの危険性は、タケルとユリスの戦闘記録で目の当たりにして理解していた。

 ミゲルの命令に否の声を挙げる事はできない──それをするに自分達が不足である事は、先程もまざまざと見せつけられていた。

 

 

 

 

 残されたアスランのザクを見て、ユリス・ラングベルトはやや燻る胸中の怒りを露わにする。

 

「へぇ、無謀にも私とやり合おうって言うの? 兄さん以外のどこの誰とも知らない奴が」

 

 接触回線にて聞こえてくる声。

 絡みつく様に嫌な気配を纏わせる声を振り払い、ディザスターとの距離を離して機体越しに睨み合う。

 同時、アスランは向けられてくる敵意に比する様に自身の心を研ぎ澄まし、久方ぶりの境地へと至った。

 

 

 ────種が開いた。

 

 

 彼女が相手だというのなら、アスランに出し惜しみはできないだろう。

 

 タケル・アマノは、アスラン・ザラから見ても最強格のパイロットである。

 ユウキ・アマノによって叩き込まれた戦闘術。生まれながらに備えられた高い身体能力。

 その上で更に、彼自身がMSの開発者として優秀な事もあり、MSという兵器の全てを知っているに等しい。

 そんな彼と本気でやり合えるのが彼女、ユリス・ラングベルトなのだ。

 

 ザクに乗っているアスランでは、勝ち目はない──だが、時間稼ぎ程度なら。

 

 今やるべきは、この敵を抑える事。打ち倒すことではない。

 幸いにして、タケルとアスランには戦闘面で似た様な部分がある。

 両者とも、近接戦闘において高い適正を持つのだ。

 

 嘗てイージスに乗って、アストレイを相手にし、SEED下における全力のぶつかり合いをした時と同じだ。

 接近戦においては、決して引けを取らない自負がある。

 

「あまり嘗めないでもらおうか。君の目の前にいるのは、唯一君が言う兄さんが仕留められなかった人間だ」

「ふぅん? それじゃ本気でいくから、あっさりやられないでよ」

 

 途端に敵意や怒りよりも、俄然“やる気”が漲るような気配へと変わるユリス。

 挑発し怒りへと誘うつもりだったアスランは、予定外に奮戦が期待できそうなユリスの気配に、内心で冷や汗をかいていた。

 

「楽しませてよね!」

「そんな余裕は与えないさ!」 

 

 次の瞬間、ザクのビームアックスとディザスターのビームサーベルがぶつかり合った。

 

 

 

 混迷する戦場に、英雄達は火花を散らしていく。

 

 

 

 




任務と状況を考えると、もっと真面目で緊迫したやりとりをって考えてたけど
今のアスラン達が集結したら、きっとこんな空気なんじゃないかなって。
ミゲルの生存とアスランのコミュ力上昇が大きい。ついでにイザークもオーブ旅行記のせいでちょっと軟化してる。

アスランと愉快な仲間達。こんな彼らが描かれたのはSEED編からの賜物。

代わりにミネルバ‘sが影薄くなっちゃった。この後にしっかり描きます。

そして始まる。
巷ではSEED世界最強と噂される男と、本作で最強と言える敵との戦い。
SEED発現のことからわかるように、ウチのアスランはやるべき事見据えてるので強いはず。多分
どうなるかなぁ

次回に乞うご期待
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