機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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体調不良で久々に更新止まった気がします。
更新できなくなると急に不安になる作者。もう執筆が癖になってると言っても過言ではないのかもしれない。

あとユニウスセブン編が長すぎぃ!


PHASE-15 破砕ミッション

 

 

『こちらは宇宙特装艦アークエンジェルです────これより、ユニウスセブンの破砕作業に取り掛かります!』

 

 

 

 国際救難チャンネルによって発信された声。

 次いでアークエンジェルより発進してくる、フリーダムとカゼキリ。

 ユニウスセブン破砕作業におけるアークエンジェルの参戦に、戦場にいたシン達MS部隊とジュール隊の面々は驚きを隠せなかった。

 

「こんなところに足つきとは、相変わらず俺達は因縁深いなおい」

「流石はオーブ……自国の危機でもあるこの事態に、ただ手をこまねいてるわけもないという事だろう」

「まぁ、カガリとタケルがこの事態に何もしないわけないよなぁ」

 

 

 因縁浅からぬ艦であり、しかし今は頼もしき味方と言えるアークエンジェルを見て、ミゲル達はどこか嬉しそうな声音で呟いた。

 

 正直な所、メテオブレイカーだけでは不足だという事は、口にはしなくとも全員が感じていた事だ。

 プラントから緊急出動。時間の猶予が無くメテオブレイカーの数も十分に揃えられなかった以上、完全破砕は難しいだろうと言うのがイザークとミゲルの見解だ。

 

 しかし、彼等が来たのならまだ希望はある。

 どんな手段を積んで来たのかは知れないが、ここまで無策でくるわけもない。

 少なくとも、破砕作業がメテオブレイカーだけで終わる事はなくなったわけだ。

 

「よし、ボルテール! アークエンジェルに繋げ。俺が話す!」

 

 イザークは舞い込んで来た希望に縋るべく、アークエンジェルへと通信を繋いだ。

 

 

 

 

 

 

「艦長、ザフト艦2隻より通信要請です」

「こちらの映像は出さずに音声のみで繋いで頂戴」

 

 アークエンジェルに、ミネルバとボルテールのイザークからの通信が飛び込んでくる。

 艦橋のモニターにはタリアとイザークの姿が映された。

 

『ザフト軍ミネルバ艦長。タリア・グラディスです』

『ザフト軍ジュール隊隊長、イザーク・ジュールだ』

「こちらはアークエンジェルです────名乗りも無く、音声のみでの対応となる非礼をお許しください」

 

 静かに、マリューは非礼を詫びた。

 曲がりなりにも彼女は先の大戦における敵前逃亡艦の艦長だ。出るところに出れば裁かれる過去を持つ人間である。

 

 そしてそれは、ここにいる他のアークエンジェルクルーも同様。

 乗員の情報は、できる限り伏せておきたかった。

 

 

『現在ザフトはこの事態を招いたと思われるテロリスト達と交戦状態にあります』

『こちらはメテオブレイカーによる破砕作業を進めているが、敵の攻勢も激しく作業に遅延が生じている。援護を願いたい』

「了解しました。こちらの方でも破砕の手段は用意してあります。CIC、両艦に破砕プランのデータを送って。代わりにそちらからは敵勢力のデータをお願いします。こちらのMS部隊でも対応しますので」

『わかりました──バート、すぐに送信を』

 

 タリアの指示でミネルバより送られてくる、ジンを駆るテロリストのデータ。

 それを確認してマリューは僅かに顔を顰めた。

 人為的に起こされたこの事態。そしてその犯人がジンを駆る者達。

 これが地球軍のダガーも居る混成部隊であったならまだただのテロリストと言える。だが、ジンで統一された敵部隊を見れば犯人の出所は明らかだ。

 

 ──この事態はプラントのコーディネーターが引き起こしたものであると。

 

 少なくともこの事実を見聞きすれば、誰もがこう思うはずだ。

 

 嘗ての血のバレンタインの悲劇が、今度はコーディネーターの手によって引き起こされようとしている。

 嫌な現実に、不安が過った。

 

「──メテオブレイカーの設置は既に?」

『配置は済んでいるが、起動までには至っていない』

「では敵勢力はこちらで引き受けます。作業を急いでください。その上でこちらも、同時進行で破砕作業を進めます」

『了解しました』

『了解した!』

 

 方針を決めて通信を終えると、マリューは副長席へと目を向けた。

 

「ナタル、聞いていた通りよ」

「了解しました──ハウ、MS隊に打電。ヤマトとアマノ三佐は敵MSの排除を優先。アサギ達は破砕作業に取り掛かれ。格納庫の整備班に破砕用特殊弾頭の射出を急がせろ」

「了解」

「送られてきたデータにあったジン3機。本艦に接近中!」

 

 チャンドラの報告に、艦橋の空気がまた引き締まった。

 

「復帰戦よ。慌てずいきましょう──対MS戦闘用意!」

「イーゲルシュテルン起動。艦尾ミサイル発射管、2番から6番までコリントス装填。バリアント1番2番起動──照準敵MS!」

 

 矢継ぎ早に繰り出されるナタルからの指示。それをブランクなど感じさせず、歴戦の勇士達は作業を進めていく。

 悠然と佇んでいたアークエンジェルの艦載砲が次々と起動していった。

 

「バリアント1番2番、てぇー!」

 

 懐かしさを覚える強い声と共に、アークエンジェルは接近してくるジンへと砲火を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかここでアークエンジェルが出てくるとはね」

 

 アスランのザクとの距離を取り、ユリスは乱入してきたアークエンジェルを見つめて、感慨深く呟いた。

 

 僅かに過る嫌な記憶。

 あの大戦で、最後の最後まで自分とラウが画策した世界に抗った、忌まわしき敵。

 

 だがしかし、今の彼女にそれをどうこう言うつもりはない。

 既に世界は彼等が望んだ未来を歩み、自分達の望みを否定したのだから。

 今更憎しみも何もない。全てを賭して戦い、負けた自分達にこれから先望む未来などない。

 彼女はただ、ラウと同じ様にユリス・ラングベルトの役割を演じ続けて世界がどうなっていくのかを見ていくだけだ。

 

 先程までアスランに向けていた戦意を一気に失ったユリスは、ガーティー・ル―へと通信を繋いだ。

 

「──ネオ・ロアノーク、撤退するわ。スティング達の回収は済んでる?」

『それは問題なくだが、随分派手に遊んでいたな? 収穫はあったのか?』

「一応ね。接近して細かな映像データは入手してある。まぁ十分でしょ」

『なら急いで離脱するぞ。あんな英雄艦に目を付けられたらたまらんからな』

「りょーかい」

 

 ネオとの通信を切ると、ユリスは小さく肩を竦めた。

 

「あの艦を見ても何も変化なし、か…………度し難いわね本当に。あのクズどもの洗脳ってやつは」

 

 どこの誰とも知らない連中へ侮蔑を吐いて、ユリスはディザスターを翻し、ガーティー・ル―へと帰投していく。

 

 

 

 それを見送ったアスランは、じっとりと全身を濡らした汗の感触に辟易しながら大きくため息を吐いた。

 

 限界ギリギリの戦い────ザクの脚部が破壊され、ディザスターの接近を押し留める事も出来ず。

 アークエンジェルの参戦が後僅か遅ければ、アスランのザクは討たれていただろう。

 

「危なかったな。あと一歩で死ぬところだった────カガリに見られてなければ良いが」

 

 見られていたのなら、帰投した後で彼女に泣かれるだろう。何度か頬を叩かれる事も覚悟する必要があるかもしれない。

 アスランは今のうちにと、そっと覚悟を決めた。

 

 あの兄妹は失う事にとんと弱い。

 それは人として当然の反応だろうが、国と大切な人を守ろうとする意志が殊更強すぎるが故に、失う事には非常に臆病なのである。

 

「だからこそ、強いんだろうけどな」

 

 失えないから。失いたくないから────だから強くなれる。

 強くて弱い。まるで矛盾しているようだがこの場合は表裏一体とでも言うべきだろう。

 それがアスランにとっては好ましい姿でもあった。

 

「さて……こんな状態だが、それでもできる事はある」

 

 気を取り直して、アスランはザクを走らせた。

 両脚部を破壊されたが、幸いにもここは宇宙空間だ。地に足を付ける必要はない。

 メテオブレイカーの作業支援位なら、今のザクの状態でもできるだろう。

 

 

「もう俺は十分戦ったからな。だから、残りは頼んだぞ────2人共」

 

 

 直後、ザクのすぐ傍を途轍もない速度で駆け抜けていくMSが2機。

 

 アスランの眼前では、白銀と蒼天の翼が舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『フリーダム、シロガネは敵機の撃破を最優先。敵MSのデータを送ります。最大戦速で排除してください』

 

 ミリアリアより下される指示。キラとタケルは、迷わず頷いた。

 

「了解!」

「行くよ、キラ!」

 

 並んでいたフリーダムとシロガネは散開。

 シロガネは馬鹿げた速度を出しながら、ユニウスセブン宙域を駆け抜け、フリーダムは戦闘宙域を俯瞰できる場所まで舞い上がると全兵装を展開。

 

「これ以上邪魔はさせないよ!」

「一気に叩く!」

 

 駆け抜け様に、シロガネはビャクヤでジンを次々と撃ち抜き、切り裂いた。

 フリーダムはマルチロックオンで敵機を捕捉。幾重にも重なる光条が、ジンの部隊を撃ち落としていく。

 

「坊や、増援が来たわ」

「了解!」

「タケル、そっちは任せるよ!」

 

 新たなる増援を確認。タケルはシロガネを最大戦速で走らせ迎え討つ。

 逃げるどころか、動く事すら許されない程圧倒的な早さでジンの部隊を刈り取っていく様は、正に見敵必殺。

 キラはその場でメテオブレイカーの防衛に回っていく。

 

 

 

 

 

 

 その頃、アークエンジェルより発進したアサギ達アストレイ部隊は、一所に留まり待機していた。

 

「お、来た来た」

 

 アサギが待ちわびた声で迎えるのは、アークエンジェルから射出されてきた、ユニウスセブン破砕用の特殊掘削弾頭。

 MSの背丈程もありそうな巨大な弾頭が、6本ずつワイヤーでまとめられ彼女達の元に飛んできていた。

 

「一度に持てるのは4発だからね。間違えないでよ」

「わかってるよ。マユラってば」

「急ごう2人共。時間は余りないんだし」

 

 射出されてきた計12発を、それぞれ機体に急設したアタッチメントに取りつけていく。

 

 

 

「アストレイ隊、特殊弾頭を装備。作業準備完了しました」

「カズイ君、破砕ポイントの計算を」

「了解です」

 

 ミリアリアの状況報告に、マリューは特殊弾頭の設計者であるカズイへと指示を下す。

 設計者である彼が、この特殊弾頭の仕様と威力を最も理解しているだろう。

 キラの協力の下組んだプログラムを用いて、現在のユニウスセブンの状態から、最適な破砕箇所を計算。

 破砕ポイントのデータを抽出した。

 

「副長、データを送ります!」

「了解だバスカーク────艦尾ミサイル発射管全門装填。照準を破砕ポイントデータとリンクさせろ」

 

 即座にナタルはアークエンジェルによる破砕ポイントのマーキングを狙いミサイルの発射を指示。

 

「てぇー!」

 

 

 

 

 ミサイルの発射と同時に、特殊弾頭を背負ったアサギ達にミリアリアより通信が飛ぶ。

 

『CICよりアストレイ隊へ。破砕ポイントのデータを送りました。ミサイルでマーキングした地点に打ち込んでください』

「はい!」

「了解しました!」

「直ぐに終わらせます!」

 

 通信を受けると同時に、アサギ達は散開。

 それぞれ担当するポイントを決めて、カゼキリを動かしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 久方ぶりに見る友の機体。

 その躍動する姿に、ミゲルは小さく笑みを浮かべた。

 

「はっ、相変わらずタケルのシロガネは早すぎるし、フリーダムはバカみたいな射撃してきやがる────揃って加減ってものを知らねえ」

「そんな事を言ってる場合ではないぞ。奴らが援護してくれるんだ。こっちは急いで作業を完了させる!」

「了解ってね。ミネルバのヒヨッコ連中にも?」

「当たり前だ。メテオブレイカーが終われば次はアークエンジェルからの破砕プランを手伝う事になる。やる事はまだまだあるのだからな────ミゲル、いつまでも見惚れてるんじゃ無い!」

「はいはい、わかってるって」

 

 イザークの声に軽く返してミゲルはシン達へと通信を繋いだ。

 

『ミゲル・アイマンよりミネルバ各機へ。

 防衛に回っているメテオブレイカーの起動作業に集中しろ。露払いはアークエンジェルが引き受けてくれる』

「しかし、全くの無防備で作業と言うのは抵抗があるのですが……」

「戦力的にも、俺やヤヨイは防衛対応に回った方が良くないですか? 任せた結果できませんでした、なんてオチだと洒落にならないですよ」

『あのなぁ、いざという時の防衛対応には俺達が動くから気にせず作業をしてろって言ってるんだよ。俺が問題ないと判断してるから命令してるんだぜ? 具申するより先に手を動かせ手を』

『ミゲル達が防衛を掻い潜られるよりも、君達がメテオブレイカーの操作ミスをする方がよっぽど可能性は高いだろう。君達は作業に集中してくれれば良い』

 

 具申とも不満とも取れる2人の声を、ミゲルと割り込んできたアスランが制した。

 ミゲル達からすれば最新鋭機に乗ってようがヒヨッコはヒヨッコ。任せるのなら防衛よりも起動作業になるのは当然だ。

 

「はぁ!? 俺はそんなミスしませんって!」

「非常に心外ですね。私まで同列に扱われるなんて……」

「ヤヨイ、何自分は違うみたいな空気出してんのよあんた」

「俺達は等しく新人(ニュービー)だろう。素直に従うべきだ、ヤヨイ」

 

 姦しい新人4人に呆れながら、ミゲルは無事に戻って来たアスランを見やる。

 

『良かったぜアスラン、無事…………でもなさそうだな。そんな機体でこっち来るなよ。早く帰投しろって』

『そうはいかないさ。まだ動けるんだからな。この後はアークエンジェルからの破砕プランもあるんだろう? 1人だけ逃げ帰るなんてことできないさ』

『バカか貴様。不十分な機体でウロウロされる方が迷惑だと言っているんだ。その状態で狙われたらどうす──ッ!?』

 

 イザークが怒りの声を露わにしたところで、ザクのセンサーに反応。

 

 数発の光条が、彼らの間を抜けていく。

 

「うぉおお!」

「これ以上はやらせん!」

「なんとしても!」

 

 見れば決死の覚悟を見せる3機のジンが接近して来ていた。

 恐らくは動きを見せず潜んでいたのだろう。

 シロガネがジンの殲滅に宙域を駆けずり回っているが、動きがなければ発見するのは難しい。

 

 だが出てきた以上、彼らの目からは逃れられない。

 

「潜んでいた!? まずい!」

 

 フリーダムが3機のジンを捕捉。

 即座にその動きを捉えて、ウイングのバラエーナとビームライフルを発射。

 

「がぁ────まだ、まだ!!」

 

 3機の内2機を捉えて撃ち落とすが、距離があったためにビームライフルで狙った最後の1機が必死に機体を動かし、バックパックのウイングを掠らせるだけに止める執念を見せた。

 

「ちぃ、キラの奴。甘く見過ぎだ!」

 

 メテオブレイカーへと迫るジンへ、アスランはザクを動かして迎え撃ちにいく。

 抜かれた重斬刀を、シールドで受け止めた。

 

「この、いい加減──」

「どけ! 我が娘のこの墓標────落として焼かねば世界は変わらぬ!」

「なっ!? 娘の墓標?」

 

 ここにいる全員へ向ける様に、通信を飛ばしてくるジンのパイロット。

 その言葉に、アスランは目を見開いた。

 

 微かに過ぎる。

 今もなお、ここで眠っている命────ここで、失われた命。

 ここには、アスランの母も眠っている。

 同じなのだ。目の前にいるジンのパイロットと自分は……同じ境遇の、同じ悲しみを背負う者。

 

「ここで無残に散った命の嘆きを忘れ、討った者達と何故偽りの世界で笑うか──貴様等は!」

 

 僅かに気圧されたアスランのザクは一手遅れ、ジンの出力に押し切られ弾き飛ばされる。

 体勢を崩したザクへ、ジンは一気に追撃に動いた。

 

「軟弱なクラインの後継者共に騙されて、ザフトは変わってしまった……」

 

 再び振り下ろされる重斬刀を、脚部を失ったザクで必死に回避。しかし、体勢悪く右腕部が切り落とされた。

 

「くっ、ふざけるな! 彼等は騙してなど──」

「何故気づかぬか! 我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものなのだと!」

 

 追撃を必死にシールドで受け流しながら、アスランは今度こそ驚愕に顔を染める。

 パトリック・ザラが────地球を滅ぼそうとしたあの父を。

 正しいなどという人間が居るとは信じられなかった。そして、その声と言葉に僅かなりとも気圧されてしまった。

 忘れていた事実──自分はパトリック・ザラの息子であった事。

 カガリとウズミの様に、アスランは息子として至らず、パトリックは父として至らず。

 その結果、互いを滅ぼし合う戦争を引き起こした。

 

 このユニウスセブンの事件を辿れば、そこには父の憎しみを止められなかった自身に責がある気がした。

 完全に虚を突かれたアスランのザクは、再びそのまま押し切られる。

 左腕部も奪われ、今度こそ何もできなくなったザク。

 

 

 だが、それを仕留めることを許すほど、彼らはお人好しでは無い。

 

 

「あーうるせぇうるせぇ! 独り善がりな馬鹿の話なんか聞いてられっかよ!」

 

 

 ブレイズ装備のザクが急接近。

 仕留めにかかろうとしたジンを蹴り付けてから、ビームアックスを叩きつけた。

 

 

「大事な娘さんが寝ている場所をこんだけ荒らしておいて、何言ってんだお前は!」

 

 

 その背後、ガナー装備のザクからオルトロスが放たれジンの頭部を撃ち抜いていく。

 

 

「全ては貴様のエゴだろう。自分勝手なテロ行為の責任を、亡くなった者達とアスランの御父上に擦り付けるんじゃない!」

 

 

 後詰に動いていたスラッシュ装備のザクが、動きの鈍ったジンへと接近──長柄のビームアックスを振り下ろした。

 

 

「くたばれテロリストが!」

 

 

 四肢を奪われ、完全に出来ることがなくなってしまったザクのコクピットの中で、アスランは戦友達の声を聞いた。

 まるで示し合わせたかの様に通信越しに聞こえる、彼等の声。

 同時にジンが爆散し、宇宙の藻屑となって消えていく。

 

「ミゲル、イザーク、ディアッカ……」

 

 彼等の言葉を胸の内で反芻し、アスランは一時とは言え先のテロリストの言葉に、自責の念を抱いた事を恥じた。

 同時に、自責の念に囚われそうであった自分を救い上げてくれた彼等に感謝した。

 

 母を失った事。仲間を失った事。それらを乗り越えてここまで来たのだ。

 もうあんな悲劇を生み出さぬようにと、今を生きているのだ。

 

「すまない3人共、助かった」

「ふんっ! 言っておくが、さっきのつまらん事でウジウジする様なら張り倒すぞ」

「ったく素直じゃねえな、この坊ちゃんは」

「まぁ、イザークらしいけどな────とりあえず今度こそ帰投しろよアスラン。もうどうにもならねえだろ?」

 

 完全に何もできなくなったザクに、ミゲルは苦笑。

 バックパックは生きているからミネルバへ帰投することは出来るだろうが、今度こそ本当に何もできない状態である。

 流石のアスランも、観念したのか小さく頷いた。

 

 

「あぁ、了解だ。ミネルバへ帰投するよ────ありがとう、3人共」

 

 

 返された通信の音声は、どこか嬉しさを湛えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「A-3ポイント到達。特殊弾頭を設置します!」

 

 アークエンジェルから放たれたミサイルによって僅かに抉れた地面へと向けて、アサギのカゼキリが背負っていた特殊弾頭を設置。

 

「弾頭を固定。発射します!」

 

 トリガーを引き、特殊弾頭が起動。

 先端より出力されるビームニードルによって地面を溶解させながら、弾頭がユニウスセブンの地中へと沈んでいく。

 

「目標深度到達──発破」

 

 暫くの時間を置くと、弾頭は設定値の深度へと到達。

 アサギが再びトリガーを引き、弾頭は地下で爆発を起こす。

 同時、弾頭内部に充填された特殊な液体が爆発によって地下に出来た微細な隙間へと流出。

 液体は高い浸透性をもって地下をアリの巣の様に染み込んでいき、やがてそこで爆発性の気体へと気化。

 地下に出来た空間に、爆発性の気体を充満させる。

 

「第2発破──着火!」

 

 同時、アサギのカゼキリは宙へと退避してから、弾頭の設置ポイントへと着火用の炸裂弾を発射。

 地下へと充満した気体に火を与え、地下で更なる大きな爆発を引き起こした。

 

 メテオブレイカーほど地下深くに埋め込むわけではないが、それでも十分な威力を持つ2発目の爆発で、破砕ポイントの周囲を大きく抉り取る事に成功する。

 

 これが、カズイが設計した“多段式発破弾頭である”

 

 そして半径100mを超える範囲の地下に大きな衝撃を与えて抉り取るのみならず、地下深くに形成された罅を基点に、最後はアークエンジェルのローエングリンによって広範囲破砕を行う一助にもなる。

 これが、アークエンジェルの破砕プランであった。

 

 メテオブレイカーほど設置に時間はかからず、MS単機でアタッチメントを備えれば4発まで装着できる。

 あとはこれを数多く設置し、ユニウスセブンを虫食いの如く食い砕くのである。

 

 

「A-3ポイント作業終了。A-4ポイントに向かいます!」

 

 作業を終えたアサギは次の破砕ポイントへと向かっていく。

 それはマユラとジュリも同様。既に2人も装備していた4発目を打ち込みにポイントへと移動している最中であった。

 

 

 

 

 丁度その頃、メテオブレイカーも設置されていた全てが起動。

 2つに割れていたユニウスセブンを、更に2つ──合計4分割にまで割ることに成功する。

 

 

 

 

 限界時間が少しずつ迫る中、ユニウスセブンは確実に砕かれていくのであった。

 

 




謎技術による破砕弾頭。
威力はメテオブレイカーより低いが数撃ちゃ割れる的な

アスランは既にやる事見定めているし、ミゲル生存の影響でザラ隊の面々が頼もしい。
イザーク完全にデレ状態じゃん。

さてさて次回でようやくユニウスセブン編決着の予定。

そしたら新フリーダムとかカゼキリとか、シロガネの設定資料を上げる予定です。


先日本作に評価を頂きまして大変嬉しかったです。
ツィでもちょっと呟いたけど、読者の皆さんから
「こんな展開が見たかった」
って声を頂けたのが、なんだかすごく報われたと言うか、書いててよかったって……
皆さま、本作を楽しんで頂き本当にありがとうございます。



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