機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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花粉症のせいかずっと体調悪いままでかけませんでした。


幕間 それぞれの結果

 

 

 コズミックイラ73年10月某日。

 

 

 100年単位で安定軌道上にあるはずのユニウスセブンは、その大部分を砕かれ燃え尽きながらも、地球圏へと落下した。

 

 メテオブレイカーによって砕かれた4つの破片の内、2つは完全破砕まで及んだものの、残り2つは砕き切る事ができず。

 大気圏突入時にバラバラになりながら1つはユーラシア東部地域へ。もう1つは北大西洋北部へと落下した。

 北京や上海などの人口密集地帯へ落ちた破片により、都市部は壊滅的な被害を受け、北アメリカとヨーロッパ西部は沿岸部が津波で大打撃を受ける等、エイプリルフール・クライシス以来の大災害と言える。

 

 これだけ未曽有の大災害でありながら、どちらも人の手によって引き起こされた事実は、人類がかくも愚かな事の証左なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 地球軌道上。

 ガーティー・ル―艦内。

 

 ユニウスセブンでの戦闘から少しの時を置いて、ファントムペインは次の指示が来るまでの待機命令となっていた。

 

 

 先刻までの彼等の任務────ユニウスセブン落下の原因調査は完遂している。

 

 ジンを駆るテロリスト達によって、ユニウスセブンに大量に取り付けられたフレアモーター。

 これが、落下の原因である。

 プラント構造体のハイテンションストリングスへと大電流を流し強力な磁場を形成。併せて取り付けたフレアモーターが太陽風に因る磁場を発生させることで、磁力反発を引き起こしユニウスセブンを動かしたのだ。

 

 つまりは人災──そして、その犯人はザフトの機体を駆るテロリスト達。

 

 真相は、誰もが読み解ける程容易なものであった。

 

 

 既にユリスが収集した情報は映像付きで大西洋連邦へと送られているが、今の地球はそれどころではないだろう。

 必然、次の指示が飛んでくるまでには幾ばくかの時間を要する。

 

 

 

 

「んで? 何ムスくれてるんだお前さんは?」

「うっさい、変態仮面」

 

 ガーティー・ルー艦橋にて。少しだけ冷ややかな問うてくるネオへと、ユリスは仏頂面で辛辣に返した。

 思わぬ口撃に、対するネオは撃沈。膝から崩れ落ちる。

 

 何故彼女が不機嫌な気配を纏っているのか? 

 理由は色々あるだろう。

 

 まず先の戦闘で、大戦の英雄達によってスティング達が軽くあしらわれた事──曲がりなりにも強奪したセカンドステージの機体の扱い方を彼女がレクチャーしておいてあの結果となったのは、彼女としても面白くない結果であった。

 とは言っても、要因としては偏に彼女の教える才能の無さに因る所が大きい。

 

 ぶっちゃけるなら、スティング達が彼女のレクチャーから得たものなど無いわけだ。

 彼女のレクチャーとは、ただ彼女がアレ等に乗ったならどんな風に戦うかを懇切丁寧に説明してもらっただけなのである。

 経験も技量も、なんなら持って生まれた能力すらも違う彼女にそんなことを説明されたとして、得られる事など何もない。

 要するにまるで参考にならないのである。

 

 ちなみに事の顛末を聞き及んだネオによって、彼女のレクチャーの記憶は、スティング達から消去されていたりする。

 曰く『あいつの真似事何かさせたら、全部撃墜されて失う事になるだろう』との事だ。

 

 その他にも彼女の機嫌を損ねる事はあった。

 ユニウスセブンでの戦闘で、眼中になかったはずのアスランに良い様にしてやられた事である。

 

 彼女にとって自身と対等にやり合えるのはタケルのみ……良くて近しい存在であるキラだ。

 全力でなかったとは言え、スペックで劣るザクとアスランによる奮闘の結果は、彼女のプライドを大いに刺激していた。

 

「あーもう、ホント頭にくる! その気にさせるだけさせて逃げちゃって……何よ、あのスケコマシ! 女の敵!」

「一体誰に文句言ってんだお前は……ていうか俺達は一応秘匿された部隊なんだから、敵と通信とかするんじゃないよ」

「顔は見せてないわ」

「そういう問題じゃない!」

「じゃあどういう問題よ!」

「ラングベルト大尉、余り声を荒げないでもらいたい。クルーが不安に駆られる」

 

 興奮冷めやらぬユリスを、艦長のリーが窘めた。

 一度彼女の逆鱗に触れれば強烈な殺気に襲われることは実証済みだ。

 萎縮してそうなクルー達の気配に、ユリスは不服そうに顔を顰めた。

 

「ちっ、わかったわよ……それで、どうするのこれから?」

 

 ユリスはうんざりした様に目を伏せながら、ネオとリーへと問いかける。

 

「命令が挙がってこない以上、一先ず待機だよ────それより、スティング達の処置はどうなってる?」

「スティングとアウルは調整だけ。ステラは……ユニウスの落下を見て色々と連想しちゃったみたいだから、直近の記憶だけ消去。起きるのは5時間後よ」

 

 戦闘後、離れたところから戦闘宙域を臨んでいた彼等は当然ながらユニウスセブンが落ちる光景を目の当たりににしていた。

 地球へと降り注ぐ、死を振りまく流星──スティングやアウルはまだ問題なかったが、死を連想させる禍々しい光景にステラが情緒を崩していたのだ。

 記憶消去の処置が必要となった彼女だけは、ゆりかごでの睡眠時間が伸びてしまっていた。

 

「そうか、やはりまだまだ完全とは言い難いな──人も、兵器も……この世界も」

「は、バカな事言わないでくれる? 完全なものなんて、出来の悪い空想の中にしか存在しないわよ」

「手厳しいな。それは暗に俺の頭の出来が悪いって事か?」

「そう言ったつもりですが伝わりませんでしたか、大佐?」

 

 不機嫌さをぶつける様に、ユリスは嫌味ったらしくネオへと口撃を繰り返した。

 どうやら相当鬱憤が溜まっているらしい。

 

「このっ、言わせておけば──」

「まぁまぁ大佐。ラングベルト大尉なりに強張った空気を和ませてくれたのですよ」

「あら、流石は艦長殿ね。私の事を良くわかって下さる」

「だそうです大佐。本人からの言質も録れましたぞ」

「んなわけあるか! リー、お前最近ちょっと自由になってきてないか?」

「これは異な事を……私は軍人の模範であることを自負しておりますが?」

 

 まさかの2対1で劣勢。

 目の前の利かん坊側にリーが付くとは想定外で、ネオはガックリと肩を落とした。

 そろそろ本格的に人望の無さを疑うところである。

 

「はぁ、全く…………中間管理職ってのは辛いねぇホント」

 

 しみじみとそんな事を呟きながら、ネオは今後の事を憂いてまた大きくため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 地球に降りたアークエンジェル。

 その格納庫に戻ってきたフリーダムからキラが降りてくると、彼の元には整備班のマードックが出迎える。

 

「おー、お疲れ様だ坊主。どうだった、新生フリーダムの出来栄えは?」

「久々……っていうか、このフリーダム自体は初戦闘でしたけど、まぁ何とか。流石はタケルの作り上げた機体って感じです。僕の事を良くわかってると言うか……」

 

 戦後からそれなりに時を置いた。

 確かにいざという時のためにタケルと相談して作り上げたフリーダムではあるが、決してキラは訓練の類をしてきたわけでは無い。

 フリーダムについても、事細かにキラが設計へ口出しをしたわけでは無い。

 それでもパズルのピースが嵌るかのように、自身の操縦に応えてくれるフリーダムの完成度に、キラは驚きを禁じ得なかった。

 

「にしちゃ、浮かない顔してるじゃねえか」

 

 言葉とは裏腹に、表情には翳りが見え、マードックは怪訝な声をあげる。

 

「えぇ、まぁ…………できるだけの事はしましたけど、全部は破砕できなかったですから」

「おいおい、やめろって坊主。そんな事言い出したらアマノ三佐みたいになっちまうぞ。

 被害を出来得る限りで軽減したんだ。変な責任意識を持つんじゃねえ」

「はい、わかってます……わかってますけど」

 

 それでも、破片は落ちた────大きな塊が2つ。

 メテオブレイカーやカズイが開発した特殊弾頭によって破片は大きく割られ、抉られた。

 更にはアークエンジェルとミネルバの艦載砲によって粉砕。

 その破砕作業を援護するべく、艦の防衛に回ったフリーダムとシロガネの存在。

 

 出来ることは全てやった。だがそれでも、全てを砕くには至らなかった。

 多くの犠牲を生み出すことは、防げなかったのだ。

 

 責任を感じるわけでは無い。が、砕き切れなかった事実が大きな不安となって、キラの胸中に渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わり、こちらはアストレイ隊の3人。

 カザキリから降りてきたアサギが、疲れた顔を見せながら大の字になって格納庫に身体を横たわらせていた。

 

「はぁ~疲れた~」

「もう、だらしないよアサギ。あと、その格好はちょっとはしたない」

「あ、あはは……良いんじゃないかな、凄く疲れたのは事実だし」

 

 もう少し女の子らしくなさい、と言わんばかりのマユラの言葉にアサギは慌てて身体を起こして脚を閉じた。

 タケルがいたらきっと同じ事を言うだろうなと、ジュリは思った。

 あの教官は立ち振る舞いにも割とうるさいのである。

 

「それにしても、良い経験になったよね。軌道上での限界高度を注視しながらの作戦」

「そうね。まるっきりの宇宙空間じゃないから、重力に引っ張られたりもするし」

「それも高度次第で度合いが変わってくるもんね」

 

 アサギ達は破砕作業に集中していたため、戦闘自体はなかったものの、久しぶりの実戦に出てMSを駆った事。更には特異な戦場と作戦を新型量産機のカザキリで行ったことは貴重な経験であった。

 相も変わらずで彼女達はモルゲンレーテのテストパイロットなのだ。

 MSでの貴重な実経験は、価値が高い。

 

「うーん、オーブに帰るまでに主任に提出するレポート纏めておこ!」

 

 よしっ、と言う感じでアサギが立ち上がる。

 

「それじゃ、カゼキリの宇宙空間における実運用は私がまとめるから、2人とも所感を送って」

「あ、じゃあ私は各種兵装について書くよ」

「え~、それじゃあ私が機体からログデータ吸い出してまとめるの?」

「だってアサギにレポート任せたら擬音がやたら出てくるし」

「わかりにくいって主任に突き返されるよりは、ね?」

「うぅ……最近はちゃんと書けてるんだよ!」

 

 

 同僚達からの渋い視線に不満顔を見せながら、アサギは3機のカゼキリから記録されたログデータの吸い出し作業に入るのであった。

 

 

 

 

 

 

「どうにか、無事に地球に降りられたわね」

 

 落ち着いた空気の中、マリューは安堵の息と共に呟いた。

 

 キラとフリーダムの援護があったとはいえ、大気圏降下中に破砕作業を行うと言う荒技。

 どれ程危険な事か。それを理解しながらも迷わず選択し、そして臆さず行動に移してくれたクルー達には感謝しかなかった。

 

「艦ダメージコントロールを急がせろ。あれだけ派手に動きながら降りて来たんだ。どこが壊れていても不思議ではない。それとオーブ本国の状況はわかるか?」

「ダメです。現在は電波状況が乱れていてとても……」

「そうか……ひとまず艦の状態を確認できるまでは下手に動けない。ノイマン、異常があれば直ぐ報告を」

「了解です」

 

 ふぅ、とナタルも一息ついた。

 久々に座るアークエンジェルの副長席に、やはり肩肘は張ってしまっていたのだろう。

 僅かに肩が重かった。

 

「お疲れ様ナタル。相変わらずの見事な手腕だったわよ」

「いえ、マリューこそ。ブランクを感じさせない落ち着いた対応でした」

 

 艦長席の隣へと並び立ち、ナタルとマリューは互いを労い合う。

 懐かしさを感じる艦長と副長としてのやりとり。

 そして、時を感じさせない嘗てと変わらぬ互いの活躍。

 自然と小さな笑みが溢れていた。

 

「経験がものを言うわねホント。自分でも驚くくらいだったわよ」

「存外、私達は戦場離れができていないようですね」

「それ、タケル君が聞いたら怒るわよきっと。もうナタルは戦う事なんか考えないでって」

「か、揶揄うのはやめて下さい。確かに、タケルならそう言ってくれるとは思いますが……」

 

 照れくさそうに……と言うより照れ隠しに視線を背けながら、ナタルはマリューへと返した。

 実際、彼女がタケルと共に暮らし始めて、今後の仕事をと考えた時最初に浮かんだのは国防軍への所属であった。

 ナタル自身の適性もあるし、オーブを守る事を考えるのなら、彼女程優秀な人材を野放しにしておく理由は無い。

 

 だが、タケルがそれをすんなり頷けるはずも無し。

 最愛の女性となったナタルが、国防軍などと危険が伴う職務に就く事を許す事はなく、揉めに揉めて泣き付いた。

 サヤの事もあって失う事を極端に恐れるようになったタケルの事を思えば、ナタルとしても強行な姿勢を貫くことはできず。

 ナタルは仕方なく国防軍への所属を諦め、現在はタケルの仕事の管理など秘書官の様な立ち位置に落ち着いている。

 なんだかんだで、国防軍三佐となったタケルはモルゲンレーテでの開発職だけでなく、軍人としての諸雑務もこなさなくてはならなくなった。その手伝いというわけだ。

 

「ふふ、相変わらず仲が良いのねぇ。そんなわかりやすく照れないでくれるかしら?」

「て、照れてなど!」

「アマノ三佐より入電!」

「あら、噂をすれば?」

「マ、マリュー!」

 

 からかいが過ぎるマリューの言葉に、ナタルの声に僅かな怒気が含まれる。

 

「はいはい、ごめんなさい。それでミリアリアさん、タケル君からはなんて?」

「シロガネはアスハ代表が搭乗中のミネルバに乗り、あちらでオーブへ戻るとの事です」

「シロガネとあちらの損傷については何か言ってる?」

「はい、特に問題は無いそうです」

「そう……では艦の状況が分かり次第、本艦は急ぎオーブへと帰還しましょう。オーブがどうなっているかも気がかりですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェルと同じく、どうにか無事に地球へと降りることができたミネルバ。

 こちらも海面へと着水すると、クルー達が艦のダメージコントロールに奔走する。

 

 そんな中格納庫は、一先ずの作戦成功と無事に地球に降りられたことに、意気揚々の空気が溢れていた。

 人も物も圧倒的に足りない、急拵えの破砕作戦────ユニウスセブン落下の阻止は、絶望的とも考えられていた。

 それが、アークエンジェルの援護もあったとはいえ凡そ6割程度の完全破砕。残る4割も大部分を砕き、当初の想定から比べれば被害は最小限に止めることができたと言って良いだろう。

 カガリが目する通り、この作戦に関与した者達は、地球を救った英雄なのだ。

 

「お疲れ様、レイ」

「あぁ、お互いにな」

「レイ、ルナ、お疲れ」

 

 ザクから降りてきたレイ、ルナマリア、シンの3人は疲労感もそこそこに互いの無事を喜んでいた。

 

「何よシン……なんかちょっと雰囲気違くない?」

 

 どこか明るい声音。

 平時と比べると、何というか溢れている、滾っている。そんな気配が今のシンには感じられた。

 

「ん、そうか? 別にそんなつもりは無いんだけど……」

「ふっ、良い目標と出会えた……という所か? 今のお前からはどこか活力を感じる」

「あーそれは……うん、まぁ確かに」

 

 ルナマリアとレイの言いたい事を理解して、シンは少し照れくさそうに返した。

 

 今回のユニウスセブン破砕作戦。

 破砕が出来たという結果はもちろんの事、シンには多く得られるものがあった。

 聞いた話でしかなかった、先の大戦を生き抜いた者達。その高い実力を目の当たりにした。

 

 何より、シンの心を動かすものがあった。

 

「凄かったからな──彼等は皆」

「あぁ。やっぱり、大戦を潜り抜けてきた人達なんだなって思ったんだ。何ていうか、皆しっかりしてるって言うか、揺るぎないって言うか……」

「ふぅん、珍しいわね。素直にシンが褒めるなんて」

「茶化すなよルナ。そりゃ、悔しいって思う気持ちもあるけどさ……でもそれよりもずっと強いなって思ったんだよ。皆、自分がやるべき事を見据えてて…………あいつも」

「誰よ、あいつって?」

「──彼の事だろう」

 

 問いかけるルナマリアに、レイが視線を明後日の方へと向けながら答えた。

 そこに見えたのはミネルバの格納庫へと入ってくる白銀の機体。

 

 タケル・アマノが乗る、シロガネであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、凄い賑わいだな」

 

 四肢を奪われハンガーに吊るされたザクから降りてきたアスランは、賑やかとなった格納庫の様子に、僅かながら辟易していた。

 気持ちはわかる。作戦としては随分な成功と言える結果を残せた。

 それも戦争における軍事作戦ではなく、多くの命を救う人命救助の為の作戦。

 その結果が大きい程、気持ちは良いものだろう。

 

 だが、アスランとしては完全破砕に至らなかった以上、犠牲者が出たことを考え気持ちは沈む。

 ユリス・ラングベルトが駆るディザスターとの戦いは仕方ないが、その後のテロリストの言葉に気圧されて機体に損傷を受けたのは己の不手際と言える。

 あれがなければ、もう少し作業ができたのだ。

 もう僅かでも、被害を減らすことができた可能性がある。

 

「アスラン」

 

 そんな自戒の念を抱えるアスランを呼びつける声。

 

「──カガリ? どうしたんだわざわざこんな所まで顔を出して」

「お前、わかってて言っているな。ちゃんと見てたんだぞ……墜とされかけてたの。しかも2回」

 

 わかりやすく怒ってる表情を見せるカガリに、アスランはたじたじである。

 見ていたら怒られるであろう事は覚悟していたが、まさか格納庫まで出迎えにきて怒られるとは思っていなかった。

 

「──すまない。少し無茶をした」

「全く、久々にMSに乗った癖に、何でそう向こう見ずなんだお前は」

「そう言わないでくれ。カガリの願いに応え、力に成りたい気持ちは俺だって変わらない。いい加減タケルと同じくらいには信用してくれないか」

 

 大体、無茶を重ねるのはタケルの十八番では無いか。アスランは訝しんだ。

 

「兄様にはもう義姉さんがいる。未だ無茶はするかもしれないが、今の兄様はお前よりよっぽど見てて安心できるぞ──そもそも、お前には前科があるんだからな」

 

 前科──その言葉に、アスランは言葉を詰まらせた。

 自身の命を軽んじる……アスランの悪癖と言えよう。

 機体の損傷を顧みない、ストライクとの死闘。父と話し合うために、ジャスティスを置き去りにしてのプラントへの帰還。そして……父の罪を償うため、ジェネシス諸共自爆しようとした事。

 挙げ連ねてみればわかる。この自身を大切にしない危なっかしさはアスランにしかない。

 カガリが言うように、タケルは自身が危険を受け持つ事は多いが、かと言って自身を顧みないわけではない。

 大切な人を悲しませたくない想いが根本にあるタケルは、少なくとも死することを受け入れはしないのだ。

 この点は間違いなく、アスランとの決定的な違いと言えよう。

 

「すまないカガリ。善処するよ」

「約束してくれ……ちゃんと自分を大切にするって」

 

 大切な人に不安を抱えさせてしまったことを自覚したアスランは、カガリの震える声に静かに頷くことしかできなかった。

 

 そこへ、小さな騒めきが2人の耳に届いた。

 

「むっ──なんだ?」

「さぁ……」

 

 怪訝な表情を見せて、カガリとアスランは声の出所へと向かった。

 僅かに人だかりとなったそこへ歩みを進めかき分けていくとそこには──

 

 

「放しなさい!! な、なんなのですか貴女は!」

「ん~久しぶりねこの感じ。ちょっと見ない間に成長してるようで、抱き心地は全く変わらないわ」

 

 

 そこには、ザフトレッドのパイロットスーツを着た、人形のような少女をこれでもかと言わんばかりに後ろから抱き抱える変態(アイシャ)がいた。

 人だかりの反対側では、タケルがやってしまったと言わんばかりに頭を押さえている姿が見える。

 

「相変わらずツンツンしてるところも可愛いわね」

「わぷっ……は、放せと言っているのです! 誰か、保安員を呼んでください!」

「もぅ、恥ずかしがらなくても良いじゃない」

「だ、だれが恥ずかしがってなど……きゃっ!? ちょっと何処を触って……いひっ!?」

 

 ヤヨイのパイロットスーツを開き、細くしなやかな指を持つアイシャの手が内側へと滑り込んでいく。

 瞬間、ヤヨイは焦りと羞恥に顔を真っ赤に染め必死に抵抗を露わにした。

 しかし、この状態のアイシャは止まらない。

 スーツ内に忍び込ませた手がヤヨイの身体を這い回り、作戦で汗ばんだ首元へとアイシャは顔を埋める。

 

 その様……紛う事なき変態である。

 

 

「はぁ……アイシャさん。一先ずそこまでにして下さい」

 

 

 アイシャ自身の美貌が途轍もないこともあり、色々と危険な光景になりつつあるそこへ、落ち着きを取り戻したタケルがようやく待ったをかけた。

 

「えぇ、何でよ坊や?」

「せめてミネルバに居る時だけはその呼び方やめてくれません? 名前だけで良いですから」

「もう、わがままね……じゃあタケル。何でサヤがここに居るの?」

 

 核心を突く質問。

 無遠慮に投げられた問いに、タケルは眉を顰め、顔を赤く染め上げていたヤヨイも目を見開いた。

 

 

「アイシャさん……彼女はザフトの一員であるヤヨイ・キサラギ──あの子によく似た別人ですよ」

 

 

 タケルは努めて冷静な声音で、突きつけるように事実を述べる。

 しかしその言葉に、アイシャは疎か近くで聞いていたカガリとアスランも視線を険しくさせた。

 

 

「──どういう事、坊や?」

 

 

 知らず冷たくなったアイシャの視線と声に、タケルは僅か身を震わせるのであった。

 

 




アイシャが完全にアウトな人になっちゃった。
絶対後でタケルとカガリが頭抱えるやつ。

さてさて、原作と比べると随分と被害を減らしたブレイク・ザ・ワールドとなりました。
この結果がどう影響してくるのか楽しみですね。
どうぞお楽しみ下さい。


花粉症のせいで体調悪いのと、新年度で仕事も忙しくなっちゃって、本格的に以前のような更新速度は目処がつかなそうです。
頑張って書き進めようとは思いますが、ちょっと気長に待って頂ければ幸いです。

あと、たくさんの評価を頂き嬉しく思います。
やる気は満ち満ちておりますので、今後も楽しい作品になるよう努力していく所存です。
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