でも色々と動き出す感じの大事な回
追記
日常編に短編1話更新しました。
日常編もう一つ更新しました。
タリアとの会談を終えミネルバを離れたタケルは、綺麗な夜景を望めそうな、煌びやかな市街を車で走っていた。
戦後の被害から復興し、発展し。今では十分な賑わいを見せる市街。
夜の帳が降りたばかりでは、まだまだ眠らぬ街であった。
しかし、そんな街の賑わいに反して、タケルの気配は暗い。
「──やっぱり、か」
静かな車中で、タケルはどこか鬱屈とした気分を感じさせる声音と共にため息を吐いた。
「何となく、そんな気はしてたけどね」
呟いて、1人静かに思考を回す。
タリアとの密かな会談で聞き及んだ事。それは想定していたものの、余り嬉しくない内容であった。
“ミネルバの人選は、議長も大いに関わっている──と言うよりは、大部分を議長が推薦したらしいわ”
思い起こして、ため息が漏れた。
タケルがタリアに直接聞きたかった事。
それは、戦後初の新造艦であるミネルバに対して、余りにも不釣り合いに過ぎる人選の内容であった。
新造艦ミネルバには、アカデミーを卒業したばかりの者達がかなりの割合を占めている。
これは不可解な人選だ。
タケルが知る──ユニウスセブンで再会した彼等の様に、先の大戦を潜り抜けた者がいない。
お目付け役の特務隊等も無し。
アーモリーワンから緊急発進したミネルバだったが、仮にカガリが乗り合わせる事無く、そしてまたタケルやアスランも乗り合わせていなかったのなら。
ミネルバは早々に宇宙の藻屑となっていた事だろう。
折角の新造艦に対して、杜撰の一言に尽きる人選であった。
「あり得ないんだ……そんなこと。
オーブ国防軍だって、新造艦のタケミカヅチとアマテラスにはトダカさんとキサカさんを艦長に挿げている。搭載予定のMS部隊だって先の大戦を潜り抜けた者達が大半だ。新しい人材は散りばめて少数の配属に留めている。
ミネルバの人選は、墜とされても構わないと言っているようなものだ……サヤが都合よくオーブの事だけ忘れてるとかならまだ頼れたかもしれないけど、そんなわけでもないし」
そして、そんな意図が不明な人選の決定を下したのがギルバート・デュランダル。
何も知らぬ政治家が増長して軍部の裁定に……なんて愚かな事をしないのは、これまでを見れば良くわかる。
少なくとも彼はそんな無能ではない。己の領分を熟知している。
ならばこの人選は、彼が訳あって、意図して用意したものという事になる。。
少なくともタケルには彼の意図が読めなかった。
理解が、全くと言って良い程及ばなかった。
謎は、ただただ深まっていった。
だがそれでも、はっきりと判明したことがある。
「貴方は知っているはずだ、ギルバート・デュランダル……サヤ・アマノと言う人間を」
新造艦に乗せる人員。それも自らが決定した人選となれば、その素性を洗わないはずがない。
何故プラントに居るのか。何故プラントでヤヨイ・キサラギとしてサヤが存在しているのか。
そして何故、彼女が最新鋭機セイバーのパイロットとしてミネルバに乗艦しているのか。
その全てが、彼に聞けば判る──タケルはそれを確信した。
「……やっぱり無茶する事になりそうだね」
相手は一国家の代表だ。
問い詰めようにも、そう簡単にはいくまい。
必然、色々と想定していた無茶を押し通す必要がある。
危険すら伴う事も。
シャトルの発着場へと着いたタケルは、要人用の駐車エリアへと車を停めた。
そうして荷物を降ろしたところで、タケルの背後から声が掛かる。
「遅かったな、タケル」
そこでタケルの来着を待ち構えていたのは、アスラン・ザラ。
いつもの仏頂面が見えて、タケルはどこか安心した。
「ごめんアスラン、待たせちゃった?」
「いや、大丈夫だ。それ程じゃない」
「なんだ、それじゃもう少しグラディス艦長と話してくれば良かった」
「君はあれか? 俺にだけは嫌がらせをしないと気が済まないのか?」
「やだなぁ、そんなわけないじゃん――――そう言えば、イライラしてばかりいると禿げるらしいよ?」
「知るか!」
吐き捨てるように悪態をついたアスラン。
そうして一通りバカなやり取りをしてから、2人は表情を険しくさせた。
ここからはおふざけ無しだと、その気配が物語る。
「タケル、本当にお前が行くのか? やっぱり俺の方が――」
「ダメだよ。アスランはプラントで顔が割れてるでしょ? 行けばどうあがいたって目を引く。情報が回る……そうなればバカな連中が君を狙って動くはずだ」
「わかってるさ。だが、俺がそれで連中に捕まるとでも?」
「逃れられるとして、そんな状態で何ができるのさ? 顔が割れてて人前に出るのも憚られるアスランが、プラントで潜伏しながらサヤの調査何てできないでしょ」
「それは……確かにそうだが」
だがしかし……プラントはアスランの庭だ。
生まれ育った地である以上、動き方を知っている。
顔を知られてる問題は確かにあるが、代わりとなるアドバンテージだってあるはずだ。
納得できず、アスランは引き下がれないでいた。
「大体、僕の心配してる余裕、アスランには無いからね――――はいコレ」
言って、タケルは一枚の紙を渡した。
「はいコレって……なんなんだ、一体」
「シロガネのプライオリティコード。預けるから、有事の際には君が使って」
「お前……まさか」
プライオリティコード。
それはつまり、起動だけに留まらずシステム面の書き換えもできる機体の全てを変更できる鍵。
つまり、タケルの専用機であるシロガネを、アスランの自由にできる権利だ。
そんなものを託す意味……アスランの脳裏に一抹の不安がよぎった。
「変な勘繰りは止めてよ。別に死ぬ気なんかないから。そういうのはアスランだけで十分だし」
「――悪かったな、死にたがりで」
「でも、今の情勢下で私用で国から離れるんだ。できるだけの備えはしておきたい。だから、シロガネの全てをアスランに託すんだよ。
言うなれば今日から君は、もう1人のタケル・アマノーーーーオーブを護る白銀の剣だ。その名に見合う活躍を見せなきゃならない」
もう1人のタケル。
その言葉を聞いてアスランは幾分か肩が重くなった気がした。
誇張表現を無しに、タケル・アマノはオーブ国防の全てを担ってきた様な男だ。
主力となるMSだけで無く、各種兵装や周辺兵器に用いられる技術。それらを扱うパイロットを育てる環境。
無論、今タケルがアスランに願っているのはシロガネのパイロットとしての代わりではあるが、それ1つを取っても、絶対的で圧倒的な戦果を求められる。決して簡単じゃない。
改めて、オーブにおける彼の影響力を感じた。
「もう一人の君か……随分と重たいものを背負わされたものだ」
「は? 何言ってるの?
それ以上にアスランには僕が居ない間カガリを任せるんだからね。この程度で重たいとか言わないで欲しいんだけど?」
僅か、アスランは呆気に取られた。
タケルの代わりとしてのシロガネのパイロット。それですら、タケルからするとカガリを任せる事と同列には扱われないらしい。
「相変わらず清々しい程カガリ至上主義だなお前は」
「当たり前でしょ――特に今は、セイランの動きが鬱陶しいし」
「あぁ、それは確かに…………カガリも昨日、少し疲れた顔をしてた。何故かお前が悪いんだからなって怒られたし」
「あ、うんそれは……ごめん」
突然のタケルの謝罪に疑問符を浮かべるアスラン。
カガリのアスランへの八つ当たりは恐らくだが我慢ができなかった自分とナタルのせいだろう。
仔細は述べなかったが、タケルは思わず謝罪の言葉を溢す。
「とりあえずさ、僕の心配する余裕なんかないくらい、きっちりシロガネの慣熟をしておいてよ。いざ乗ってみたら扱い切れなかった、じゃ僕の名が泣く」
「バカにするな。あのくらい直ぐに乗りこなして見せるさ」
「アスランこそバカにしないでくれる? シロガネは生半可じゃ扱い切れない僕の専用機だ。一応アスランに合わせた調整はしておいたけど、最終的には慣熟して君自身で仕上げてよね。中途半端は許さないから」
「また相変わらずで徹頭徹尾だな」
「当然でしょ。僕の代わりなんだから」
「そうか……そうだな。
お前の代わりに、オーブもカガリも……俺が守らないとだ」
「うん、お願い」
「あぁ」
大切な妹の為とは言え、この情勢下でオーブを離れるのは不安。
そんなタケルの胸中が、アスランには痛い程わかった。
目の前の男がどれだけの想いでこれまでを生きてきたのかを知っている分、大切なものばかりのこの国を離れる不安と言うのは計り知れない。
だが、かと言って彼はサヤの事を放置もできないのだ。
どちらも捨てられないからーーーータケルの心の天秤は揺れず、ただ真ん中を指し続けてしまう。
故に、周りの助けを必要としている。
その一番の拠り所が今回は自分なのだと認識して、アスランの気持ちも強く固まっていく。
「こっちは任せろ」
「うん。それじゃ、行ってくるね」
「気を付けろよ」
そうして、タケル・アマノはプラントへ向かうシャトルへと乗り込んだ。
鋭い視線が向く先は今は青く、暗闇が続く宇宙。
背後に残すは、大切な故郷。
胸騒ぎが、タケルの鼓動を早めるのだった。
薄暗い部屋で、ジブリールは映像流れていくモニターを見つめていた。
映しだされていたのはまだ年若いながら、立派に一国をまとめる代表。
オーブの代償首長、カガリ・ユラ・アスハの声明発表の映像であった。
“我が国は現在、ユニウスセブンの破砕作業に当たり、地球を守る為に多大な貢献をしてくれたザフトの戦艦、ミネルバを迎え入れている。
地球には、彼等に憤りを覚える者も居るかもしれない。
だが、彼等は地球を救った英雄だ。
大気圏へと突入するギリギリまで。ユニウスセブンの破砕に尽力してくれた。この映像は、我が国の破砕部隊が記録してきたその作戦行動の一部である”
映し出される映像には、ザフトのMS部隊がメテオブレイカーで破砕作業を行う所が。
そして、実際にユニウスセブンが割られるところが映し出されていた。
俄かに、ジブリールはその表情を歪める。
「アスハめ……この情勢下でまだこのような……忌々しい中立の小国が」
ファントムペインから送られてきた証拠映像へのカウンターと言う所か。
出所がオーブの破砕部隊という、所在不明な時点でいくらでも粗は捻りだせるだろうが、少なくとも愚かな民衆は簡単に騙される事だろう。
反プラント感情を煽りたい彼にとっては、嫌な展開であった。
“彼等の勇気ある行動が無ければ。地球はもはや、生き物が住める星でなくなっていただろう。
確かに、コーディネーターのテロリスト達によって今回の事は引き起こされた。しかし、ザフトはその主犯となる者達を厳しい姿勢で粛正し。地球を救うために尽力してくれた。
私は、地球に存在する国の代表として。また、地球に住まう1人として、我らが父祖の地を守ってくれた彼等に報いるべきと考える”
「ふん、今の地球にそう思える人間がどれだけいるのやら…」
所詮は被害が殆ど無かった小国の戯言。
実際に多大な被害を受けた者達の心には響かないだろう。
“然るに。先日大西洋連邦から発信された同盟条約について、我が国オーブは賛同できない。
オーブは今後プラントと……そしてユーラシア連邦と連携し、被災地への支援を行っていく事をここに表明する”
「無茶をするものだな。世渡りが下手と見える……愚かな父の失敗から何も学んでおらん」
この演説で、多少の中立国は靡くだろう。
だがそれまでだ。地球圏の大勢を変えるには、オーブの声だけでは不足。
ジブリールにとって厄介なのは先に声明をだしたユーラシア連邦だ。
地球連合。その枠組みでまとまれない事は大きな障害となるだろう。
中立の一国家が与える影響とは比較にならない。
「丁度良い、精々利用させてもらおうか――――地球が1つとなる為にな」
組上がっていく図式。
再びユーラシア連邦を反プラントへ向けさせるのに、この小国は都合が良い。
彼等は既に宣言したのだ。
プラントとの繋がりを……。
「踊ってもらうぞ。プラントと共にな」
悪意が、暗闇の中から静かに動き出した。
オーブ首長国連邦。
タケル・アマノがプラントへと飛び立ち、カガリ・ユラ・アスハが声明を発表したその翌日の事である。
オロファト国際空港に今、1人の女性が降り立った。
「くぅ~、ひっさしぶり! ほら、行くわよ“サイ”!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよフレイ。こっちは一応護衛なんだからさ。あんまり一人で先に――」
「サイ! 私の事は“フレア”と呼びなさいって言ったでしょ。何のためにお忍びで来たと思ってるのよ」
艶やかな赤い髪を揺らして振り返る女――フレイ・アルスターは荷物を必死に運びながら追いついてくる恋人のサイ・アーガイルへと苦言を呈した。
サングラスで目元を隠しながらも、タイトなスーツでバッチリ決めてきた彼女は一体どこの女優だと思わせる出で立ちだ。
対するサイの方は、暗めの紺色スーツで目立たぬ様相である。
お忍びで来たと言うのなら、もう少し地味な服装にしてくれと思ったサイではあるが、言えば3倍返しで文句を言われそうなので押し黙った。
サイ・アーガイルは終戦後アークエンジェルを降りて、フレイの要望もあり、彼女の専属ボディーガードとなっていた。
ちなみにではあるが、ナチュラルでしかも一般人であったサイに身辺警護の適性などなかった。
それ故に事情を聞いたどこぞの教官が、2人の為を思ってそれは楽しそうに彼を鍛え上げたらしい。
“好きな人と一緒にいる為なら、血反吐を吐く覚悟だよね?”
とは、常にマジの目であった教官の口癖であったとサイ・アーガイルは記憶している。
さて、先日世界に向けて声明を発表していたフレイ・アルスターが何故ここオーブに居るのか。
それはズバリ、里帰りだ。
里帰りとはいっても、残念ながら彼女は既に天涯孤独の身。里帰りにの手前には、“旦那の”と付け加えるべきだろう。
ブレイク・ザ・ワールドによって、オーブも多少の被害が出ている。
サイの両親が住まうオーブへと、2人揃って様子を見に来たわけだ。
無論、それだけが理由というわけでもないが……。
「さぁ、まずはサイの家に急ぐわよ! その後はキラ達の所。せっかくオーブに来たんだからミリィとも会いたいし、忙しいかもしれないけどカガリとだって……時間はいくらあっても足りないんだから!」
「そんな焦らなくても。ミュラーさんからは十分に日程を頂けたじゃないか」
「久しぶりに友達に会うのよ。これ以上に逸る理由が必要?」
ユーラシア連邦事務次官付き広報官。
17歳の少女らしからぬ肩書を抱えながら、しかし今は年相応に笑顔を見せるフレイの姿に。
サイもまた、やれやれと肩を竦めながらも小さく笑みを浮かべた。
無論彼とて、旧友との再会は待ち遠しい。
だが、最愛にして護衛対象である彼女と一緒にいる以上、半分は仕事でもある。
余り気を抜くわけにはいかないが、普段は重荷を背負ってる彼女の気が休まるのなら。
サイは出来得る限り彼女の要望には応えようと思った。
「わかったよ。それじゃ行こうか」
「ええ!」
空港でタクシーを拾い、2人は久しぶりの故郷へと繰り出すのであった。
――地球連合。
元々は地球圏で勢力争いを続けていた3つの国際母体が、先の大戦の折プラントの独立を受け、早期解決の為同盟を結んだ事が切っ掛けとなる。
そうして発足したのが、嘗ての地球連合であった。
細かな国家群も含まれるが大まかには、首都を台北に置く東アジア共和国。ブリュッセルに首都を置くユーラシア連邦。そして、ワシントンに首都がある大西洋連邦が構成母体となる。
だが、しかし――――先の大戦を経て、現在の情勢は大いに変化していると言えよう。
第一に、先の大戦で行われたアラスカにおける非道な作戦だ。
基地守備隊であるユーラシア連邦の部隊を捨て石とした自決作戦を機に、ユーラシアと大西洋連邦には大きな溝が生まれる事になる。
終戦後は大西洋連邦との対立も確実とされていたが、大西洋連邦がNジャマ―キャンセラーを入手したことにより、エネルギー問題解決の為にも同盟を継続。
疲弊した国力を回復するためにも、早急にNジャマ―キャンセラーを普及させていく必用があったユーラシア連邦は、苦渋を呑んで大西洋連邦からの助力を受けるしかなかった。
そんな折、ボルト・ミュラー中将が戦時中の功績を伝手に連邦事務次官に抜擢。
核ミサイルとジェネシスという、この世の終わりとも言える戦火を見た者として、新たに地球とプラントとの融和政策を唱え始める。
各国の軋轢の解消。連合間の睨み合いの構図を緩和し、更にはプラントとの交易開通を推し進める。
プラントの高い技術力が齎せるものは、争いから得るものよりも余程有益だ。
そうして、彼は新たな争いが生まれない様努めてきた。
故に、先日の声明発表は然程時を置かずして出されたと言える。
大西洋連邦が今回の事態を機に再び戦火を巻き起こそうとしているのは明白。
今回の事態で、ユーラシアの国々にも強い反コーディネーター論調が起きつつある。
今同盟に同調する様な事があれば、世論は一気に傾き、再び戦火を巻き起こす事になる。
これまでの努力を無にすること等できようはずがなかった。
対して、大西洋連邦の呼びかけに強い同調を見せたのは東アジア共和国である。
大西洋連邦と並んで、大きな破片が落ち甚大な被害を被った東アジア共和国は、ユーラシアより先んじて声を挙げた。
地球圏で最も多くの人口を抱え、その人口に支えられた高い工業力が強みである東アジア共和国は、遺された者達の声に背を押される様に反コーディネーター論調へと傾いた。
大西洋連邦が出した同盟条約はあくまで、被災への救援救助が名目であったが、既にその気配は臨戦態勢。
新たな戦いの幕開けを予感させるものである。
こうして、現在の地球圏はその勢力図を大きく二分する様な形となった。
大西洋連邦と東アジア共和国を中心として、その他大小さまざまな国家群が寄り集まった、同盟条約賛同派閥と。
プラントの助力を受けると宣言したユーラシア連邦。そして中立の姿勢を断固として崩さない事を示したオーブ首長国連邦。
これらを中心に、中立を表明している幾つかの小国を含む非同盟条約派閥である。
争いを望む者と望まぬ者。
両者の間で揺れ動く世界の中、情勢を定める一矢は思いのほか早く放たれる。
「そんな馬鹿なっ!? 何かの間違いではないのかそれは!!」
タケル・アマノがオーブを発ったその翌日の事である。
行政府で今日も会議漬けとなるはずのカガリが、驚愕の声を挙げてその報を伝えたウナトへと詰め寄っていた。
「残念ながら……確定情報です」
小さく首を振ったウナトより渡される書面を受け取り、カガリは目を通していく。
記載されている文面を見て、カガリはその事実を噛み締め、そして眩暈を覚えた。
「大西洋連邦、ならびに東アジア共和国をはじめとする連合国は、以下の要求を受け入れられない場合、プラントを地球人類に対する極めて悪質な敵性国家として、此れを武力を以て排除する事も辞さない――」
それは嘗てのオーブへの文面と同じ。
一方的な最後通告。もはや攻め入る事を前提とした声明であった。
「――――こんなふざけた声明を。またも話し合いの余地は持たないという事か!」
ブレイク・ザ・ワールドに因る被害への賠償金。プラント保有戦力であるザフトの武装解除。現政権である最高評議会の解体。更には連合理事国からの最高評議会監視員派遣の認可。
凡そ、考えられる全てを盛り込んだような一方的な要求の数々。
無論、こんなのはもはや対等な一国家に対して向けるものでは無い。
差ながら敗戦国か隷属国家にでも突き付ける様な内容だ。
既に最初から、要求を呑ませるつもりなどないのである。
事実上の宣戦布告。
余りにも呆気なく開かれようとする戦端に、カガリは恐怖の色を隠せなかった。
「――ウナト・エマ。国防軍全軍に緊急招集だ」
静かに、カガリは告げた。
「代表? それは一体――」
「判るだろう。大西洋連邦は戦端を開く気でいる。ここまで強引な口実の作り方……既に先を見据えているはずだ。となれば、プラントへの侵攻の可否次第で次なる手を考えるだろう」
「それでは……もしや」
静かに頷くカガリに、理解の及んだウナトが、その先を口にすることなく狼狽えを見せた。
「ミネルバを受け入れ、プラントと協力体制を見せる――――奴等は、“プラント支援国家となった”オーブを狙うはずだ」
それは、予測していた最悪に近しいものであった。
さてさて、いよいよです(ユニウスの時も言ってた気がする
原作との乖離点。
ユーラシアはミュラーとフレイのおかげで大西洋連邦に靡かず中立寄りに。
代わりに原作では全く名前が上がらなかった(多分被害大き過ぎてそれどころじゃなかった)東アジアがミネルバとアークエンジェルの頑張り過ぎで被害少なくなって余裕できた分大西洋連邦側に。
オーブとユーラシア連邦のおかげで、原作より中立表明が多い状況。
後ミネルバの人員については実際問題カガリとアスラン乗ってなかったらデブリ帯の戦闘で終わってたよなって話から抽出。議長暗躍ムーブの糧になってもらいました。
次回はちょっとイチャコラ短編。
seed編後の日常編に割り込み更新しますので、更新時にはご留意を。
それから嬉しいコメントと共に評価をいただけた事嬉しく思います。
今後も楽しめる作品を描いていく所存です。
ありがとうございます。