「イゾルデ、ランチャーワン1番から4番、パルシファル、てぇー!!」
「3時方向MS接近、数6!」
「回避! 取り舵10!」
マリクが必死に操舵する中、迎撃を抜けたミサイルがミネルバを揺らす。
お返しとばかりに放たれたミネルバのトリスタンで、2機のダガーLが沈黙するも、その数は攻め入ってくる群の僅かでしかなかった。
「えぇい!」
「くっ、このままでは」
ガナー装備のオルトロスを構え、ルナマリアとレイも必死に応戦するが甲板の上という限られた状況下で、射撃兵装による迎撃しかできない2人の戦果は当然の如く思わしくはない。
死線を潜ろうとするミネルバの生命線は、空戦を可能としたセイバーとフォースシルエットを装備したインパルス。
が、その両機とて最前線を張り続け、多すぎる数に押しつぶされ掛けていた。
「シン、このままではミネルバが……」
「わかってる!! このぉ!」
また一機、インパルスがサーベルでダガーを切り落とす。
ヤヨイのセイバーもまた、縦横無尽に飛翔し敵艦隊へと単独接近。一撃離脱で艦橋を潰しながら帰り際にダガー部隊へと牽制の一射をかける。
ギリギリもギリギリ、綱渡りの攻防であった。
ヤヨイのセイバーが敵陣をかき乱し、隊列を乱したところでシンが各個に撃破。
2人を躱した……とは言っても、網羅し切れる数ではない以上いくらでも抜けてはくるが、残りはミネルバとザク2機でどうにか迎撃。
絶体絶命の戦力差でここまで喰らいつけるのは、偏に彼らが優秀であったからだろう。
それでも、状況は徐々に劣勢。
被弾を増やしてきたミネルバの迎撃能力は落ち始め、セイバーとインパルスは全力戦闘にエネルギーの消費も激しい。
現状は無理筋の防衛戦……長くはもたない事を皆が察していた。
「くっそぉおお!!」
必死に活路を切り開くようにシンはインパルスを駆った。
ビームライフルとサーベルを使いこなし次々と敵機を屠っていく。
アーモリーワンの頃から比べれば、その技量は間違いなく大きな向上を見せていると言って良いだろう。
このギリギリの状況が、少しずつシンの練度を上げていた。
「4時方向よりミサイル接近多数!!」
「回避! 面舵20、迎撃!」
「ちょっとあの数……冗談じゃないわよ!」
「余計な口利いている暇があるのか!」
降り注いでくるミサイルの群れをミネルバの対空防御と2人のザクが必死に迎撃していく。
正しく、余計な口など利いている暇はない。迎撃の手を緩める事なくオルトロスが火を噴いた。
「これ以上、やらせるものですか!!」
ミネルバの直上を取ったセイバーがアムフォルタスプラズマ収束砲でミサイルの群れを薙ぎ払う。
迎撃に僅かな猶予を作り出したところでセイバーはまた敵陣へと吶喊していく。
その最中、セイバーのコクピットでヤヨイはエネルギーゲージを流し見た。
エネルギーの残りは、3割を切っていた。
連合艦隊後方に佇む旗艦の艦橋にて。
ミネルバ撃沈の任を負う司令官は、戦況を見て静かに唸った。
「なるほど、確かになかなかやる艦だな。“あちら側”でのザムザザーの試験はどのようになっている?」
「はっ、それが……オーブ軍に全機撃墜されたと言う事です」
オペレーターの報告に、司令官は眉を顰めた。
ザムザザーは地球軍において今後の主力を決めるモデルケース。
先の大戦において、MSという同じ土俵では絶対に勝てない事を思い知らされた彼等の、新たな希望の光だ。
それが全滅────俄かには信じられない事態である。
「理事は何と?」
「データは十分。目的としては達したとのことです」
「そうか……であればこちらも少しは援護射撃の戦果を見せねばなるまい。あれの量産を軌道に乗せるためにもな」
この戦いで戦果を重ね、ザムザザーの有用性を示す。そうすることで、今彼が胸に抱く戦術ドクトリンは確かなものとなって今後の地球軍に花開くことだろう。
「では?」
「あぁ、連中の損耗も良いところだろう……ザムザザーで仕留める。出せ」
「はっ、準備出来次第発進させます!」
オペレーターの声に、僅かに慌ただしくなる艦橋内。
直ぐに発進シークエンスが開始された。
「ズール01リフトアップ。B80要員は誘導確認後バンカーに退避────針路クリアー。発進よし」
「ザムザザー、発進!」
傷だらけの女神の元に、更なる脅威が迫る。
「アンノウン接近。これは……」
バートのどこか不穏な声音の報告に、嫌な気配を感じてタリアは肩を震わせた。
「どうしたの、バート?」
「新手です! 光学映像出ます」
バートの報告と共に艦橋のモニターに映されるその姿。
深緑の装甲を持つ大型モビルアーマー、ザムザザーであった。
「な、なんだあれは!?」
「モビルアーマー……」
「で、デカい」
艦橋クルーから口々に出てくる言葉は、それが十二分に脅威となるであろう事を予見させる。
MSと比較しても数倍を超える巨軀。大きさが戦力の指標ではないとは言っても、そのサイズに見合うだけの出力を保有しているのだ。
大型モビルアーマーが持つ大きさとはすなわち、保有する戦闘力に直結する。
「あんなのに取り付かれたら終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動。あれと共に左前方の艦隊を薙ぎ払う!」
「ええー!?」
「沈みたいの!?」
「あっ、はい! じゃなくていいえッ! タンホイザー起動! 射線軸コントロール移行! 照準、敵モビルアーマー」
ミネルバが備える艦首砲タンホイザー。本来は敵艦を一撃の下沈めるための兵装だが、それを大型とは言えモビルアーマーに撃つ事……過分な攻撃では無いかとアーサーが僅かに惑うのをタリアは一喝した。
そんな事を言っている場合では無い。大型のモビルアーマーの搭載火力はMSの比ではない。
撃たなければ、タリアが言う様にミネルバは容易に沈められるのだ。
艦首に備えられた巨大な砲塔が、深緑の機体へと向けられた。
「敵艦、陽電子砲発射態勢確認」
「陽電子リフレクター展開準備。敵艦に向けリフレクション姿勢」
そんなミネルバの動きを、ザムザザーに乗るもの達は嘲笑う。
オーブ軍との戦闘では全滅の憂き目にあったこの機体。その真価を見せる時であると。
展開されるは無論、光の盾────陽電子リフレクターである。
「てぇ!」
画して、光の奔流は放たれた。
ミネルバクルーの絶望を払拭する希望の光。
ザムザザーに乗るもの達にとってもまた、この機体の真価を見せる為に望む希望の光。
光の矛と光の盾。
そのぶつかり合いは、眩い灯りとなって昼間の大海原を照らした。
「あ、あぁ…………」
誰の漏らした声であろうか。
落ち着きのないアーサーか。固唾を飲んで見守っていたタリアか。
或いは、起死回生の一手だと期待したMS部隊の誰かかもしれない。
「タンホイザーを……そんな……跳ね返した?」
インパルスのコクピット内で、シンはその驚くべき光景に目を見開いていた。
絶対的な威力を持つ光の奔流、それを無傷で受け切る機体があるなどと…………俄かには信じ難い。
「シン! 何を呆けているのですか!」
動きを止めたインパルスを狙いダガー部隊が急襲するも、セイバーが全速で駆け抜けて切り伏せる。
厳しい声音で放たれるヤヨイの一喝にシンは意識を持ち直して再び戦線を維持しようと機体を翻した。
「くっ、取り舵20! 機関最大! トリスタン照準、左舷敵戦艦!」
呆けていたのは艦橋も同じであった。
数瞬絶望の光景に目を奪われていたタリアは、必死で嫌な想像を振り払いながら指示を下していく。
「でも艦長! どうするんです? あれ……」
「貴方も考えなさい! マリク、回避任せる!」
「はい!」
「メイリン、シンは? 戻れる?」
「はい!」
「インパルスに対処させて! タンホイザーが効かない以上、手立てはMSよ!」
具体的な対応策など浮かんでこない。
敵の能力はまだまだ未知数。
シンとインパルスの奮起に縋ることしかできない己を、タリアは呪った。
「なんて火力とパワーだよ……こいつは!」
メイリンからの指示を受け、シンはザムザザーを抑えるべく接近した。
しかし、接近したところで巨大なクローが4本。縦横無尽にインパルスを捉えようとし、巨体を思わせない高い機動性にフォースシルエットのインパルスですら追従された。そして、距離を取ろうとすれば背後から次々と高火力の砲撃が襲う。
控えめに言っても防戦一方。
ザムザザーにインパルスが注力したことで、ミネルバの防衛網にはさらに綻びが生じ、攻撃は一層苛烈になっていく。
「インパルスのパワー、危険域です!」
「7時の方向にモビルスーツ、4!」
嫌な報告だけが次々とあがる。
誰もが状況の好転を願って必死に戦うも、その頑張りは余りにも微かな抵抗であった。
「この、ままじゃ…………はっ!?」
残りエネルギーに気を取られていたところで遂に、追い縋っていたザムザザーのクローがインパルスを捉えようとしていた。
「終わりだ!!」
インパルスの胴体を──コアスプレンダーがあるコクピット部分を。ザムザザーのクローが掴もうとするその刹那。
「やらせません!!」
真紅の機体はインパルスとザムザザーの間に割って入り、伸ばされていたクローを切り裂いた。
「シン、下がってください! これは私が──」
「ちっ、余計な横槍を!!」
セイバーの介入に苛立ちを向ける様に、ザムザザーの単装砲がセイバーへと集中して放たれる。
「ぁああああ!!」
「ヤヨイ!!」
至近でそれを受けたヤヨイのセイバーはVPSで破損こそ免れるものの、その衝撃はコクピットを大きく揺らし、色彩を失っていくのだった。
「シン……逃げ……」
茫然とするシンの目の前で、そのままセイバーは海へと落下していった。
「あ……あぁ……」
目の前でヤヨイが墜とされた事実にシンが自失していると、再びインパルスを衝撃が襲う。
ザムザザーの残されたクローがインパルスの脚部を掴み、そしてそのまま海面へ叩きつけようと急速落下していた。
落下による浮遊感を感じながら、シンは走馬灯の様にこれまでを回顧していた。
家族との平和な時間。
巻き込まれた戦乱。全てを失い孤独となり。
そしてザフトで力を手に入れたはずだった。
足りないのか────力が。
まだ及ばないのか────己は。
呪詛の如く、シンは無力な自分を憎んだ。
“下らない…………君の憎しみは全部、向けるべき相手を間違っている”
なら何を憎めば良い?
何かを憎まなくては、胸の内に居座る無力な自分への怒りは収まらなかった。
“力はただの手段で、失った悲しみは理由になっても、失った憎しみは戦う理由にはならない”
ならば何を抱いて戦えば良い?
憎しみ無くして、何を糧に己を高めれば弱い自分は強くなれるのだ。
“そんな風に思えるのなら、きっと君は強くなれてると思う。同じ想いをしたくないと願っているのだから”
強くなれている?
今もまた、大切な仲間に己を庇わせ生き長らえたと言うのにか。
過った先人達の言葉に、シンは頷けなかった。
“家族を失い孤独となったシンの……抑えきれない感情も理解できるのではないですか! ”
消沈した自分の為に、涙と共に怒りの声を挙げてくれた少女の姿が思い浮かぶ。
情けなく弱い己を、大切な仲間と言ってくれた。
素直じゃない子供じみた自分を、いつも気に掛けてくれていた。
また、失うのか。
また、届かないのか。
再びシンは自問自答していく。
────否。
誓ったのだ。二度と失わないと。
新たに手にした自分の居場所を……大切な人達を。
このまま、何もできなくて良いのか。
────否。
憎め、無力な己を。
恐れろ、失った悲しみを。
その分だけ、自身は強くなれるはずなのだから。
────種が、開いた。
全身を震わせるような全能感──それが、シンを襲った。
思うがままに、感じるがままに、シンはインパルスを動かす。
ビームサーベルを出力。ザムザザーが捕えている脚部を自ら切り落とし拘束から解放される。
同時にエネルギーが尽きて装甲が色彩を失うが、スラスターを全開。ザムザザーと距離を取りミネルバへと機体を走らせた。
「ミネルバ、メイリン、デュートリオンビームを! それからレッグフライヤー、ソードシルエットを射出準備!」
鬼気迫るシンの声音が艦橋内に響き渡った。
これまでの生意気坊主な気配ではない。まるで歴戦の戦士の気配を纏った声音に、艦橋内が僅かに揺れる。
「シン……?」
「急げ! やれるな?」
「は、はい!」
返事をしながらも、メイリンは一度タリアへと視線を投げた。
「最優先で指示に従って!」
「はい! デュートリオンチェンバースタンバイ。捉的追尾システム、インパルスを捕捉しました────デュートリオンビーム照射!」
メイリンの合図で、ミネルバよりか細いビームが放たれる。
それを指定地点で受けたインパルスは枯渇したエネルギーを急速充填。
VPSが再び展開され、即座に空を翔けた。
「はぁああ!!」
ビームサーベルを出力。
接近をさせまいと放たれるザムザザーのガムザートフを、隙間を縫うように回避して接近。
至近へと至った所でビームサーベルを振り下ろそうとした。
「──ちっ!?」
しかし、嫌な気配を感じてインパルスは機体を翻した。
3脚のクローと、脚部に備えられた単装砲、更にはイーゲルシュテルン。
その全てがインパルスに向けられていた。
「サーベル1本じゃ厳しいか……」
落ち着き払った声で、シンは確認する様に呟いた。
フォースシルエットの武装の貧弱さが対処の幅を狭めさせる。
手元にある手段だけでは、このデカブツは墜とすのが難しい……だが、ソードシルエットはまだミネルバから射出されない。
今のシンであれば先程までの様に攻撃を受ける事もないが、さっさと目の前のMAを片付けなくてはミネルバが危ういだろう。
加速した思考の中で、シンがザムザザーの撃墜を考えたところで────
海面から勢いよく何かが飛び出してくるのだった。
────沈んでいく。
海面へと叩きつけられた衝撃で意識を手放しかけていたヤヨイは、セイバーと共に海中へと沈んでいった。
薄れた意識の中で想うのは、大切な仲間の無事。
最新鋭機を任された自身には、皆を守る責務がある。
海の底で微睡んでいる暇など、無い。
────情けない。
何がミネルバのMS隊隊長か。
真っ先に墜とされておいて何を偉そうにほざくか。
────また、無様を晒してしまいました。
それ考えた時には、ヤヨイの胸中に酷く嫌な気持ち悪さが広がった。
つまらない自己犠牲で大切な人に傷を遺すのは、これで二度目だったからだ。
────また?
”また“とはなんだ。”二度目“とはどういう事だ。
ヤヨイは覚えのない記憶と感覚に、落ちかけている意識の中で惑う。
────わからない。
鈍った思考で考えても、それは答えの見つからぬ詮無い事であった。
答えなどどうでも良い。ただ一つだけ、絶対的に確かな事があった。
“ 心の底……愛して……した……様……“
ヤヨイ・キサラギは二度と、“あんな”終わり方だけは御免だと言う事だ。
────種が、開いた。
目を見開く。
瞬時にセイバーの状態をチェックしたヤヨイは、海中から抜け出すべくスラスターのパラメーターを調整。
そのまま一気にスラスターを全開にして、海上へと飛び出した。
「状況は必死……でも、まだ間に合う!」
戦場を俯瞰。センサー類が拾う全ての情報を瞬時に整理する。
ミネルバの損傷率は概ね40%。そろそろ退艦命令がチラつく頃であろう。
レイとルナマリアは損傷あるものの健在。だが、戦闘継続は機体エネルギー的にもかなり厳しい。
「インパルスは──」
ミネルバを介して共有されるインパルスのパラメーターを確認して、ヤヨイは好戦的な笑みを浮かべた。
まだ居るではないか。換装さえ済ませれば、元気一杯に暴れてくれそうな狂犬が。
エネルギーは十分。更には動きを見るに、随分とキレている様だ。狂犬の面目躍如と言った所である。
ならば自身もまた、MS隊隊長として肩を並べなくてはなるまい。
ヤヨイはセイバーをミネルバへと向かわせた。
「メイリン、デュートリオンビームの照射準備を!」
「えっ、ヤヨイ!? 無事なの?」
「そんなことは良いです! 急いでください!」
「は、はい!」
海中へと叩き落されていたセイバーの復帰に、インパルスとシンの変貌に続いて驚きを重ねたメイリンであったが、ヤヨイにしては珍しい一喝に慌てて対応していく。
「デュートリオンチェンバースタンバイ。捉的追尾システム、セイバーを捕捉────照射します!」
インパルスと同様、ミネルバから放たれるか細い光を受け取ったセイバーは、エネルギーを急速充填。
即座に機体を翻すと、無造作にビームライフルを3射。
それは余りにも無造作に放たれながら、余りにもあっけなくミネルバをロックしていたダガー3機を射抜いて爆散させる。
「レイ、ルナマリア。あと僅か、持ち堪えてください!」
甲板状で迎撃を続けていた2人に、安心させる様な強い声を向けると、セイバーを変形させて飛翔。
向かう先は、インパルスと対峙するザムザザーであった。
「シン!」
「ヤヨイ!」
余計な言葉は必要なかった。
2人は互いが没入した相手の状態を察知して、全身を支配する全能感に全てを委ねる。
一手、セイバーが変形と同時にビームライフルを斉射。ザムザザーに防御態勢を取らせる。
二手、インパルスがザムザザーの直下から接近。ガムザートフの射線を惹きつけながら接近していく。
三手、潜り抜けたインパルスがそのまま駆け抜け、隙をつく様にセイバーが接近。2本目の脚部を切り落とした。
「ぐっ、こいつらぁ!!」
振るわぬ戦況に怒りを露わにして、ザムザザーは残された2脚の兵装をフルオープン。
セイバーとインパルスにそれぞれ狙いをつけて放った。
「甘い!」
「そんなものに!!」
セイバーとインパルスがすれ違い交錯する。
その瞬間、僅かではあるが二機へ向けられた射線がずれた。
それはチームオペレーションによる弊害。
火器管制それぞれが、それぞれの機体に追いすがっていたが為に。
脚部に集中している火器の射角限界から外れたのである。
これがワンマンのオペレーションであれば、必要な射角を確保するために機体を後退させただろう。
が、複数オペレートであるが故に射撃中は無暗に機体を動かせない。
勝手に機体を動かされては当たるものも当たらないのだ。
本来であれば相手の力量を推し図りまとめ役の機長がその指示を下すのだろうが、先程まで優勢に推し進めていた戦況が、シンとヤヨイの急変を悟らせなかった。
そして────
「隙だらけです!」
「終わりだ!!」
今の2人は、そんな好機を見逃さない。
セイバーとインパルス。
2機は対角から攻め入るように飛び込み、ビームサーベルを出力。
ザムザザーの直上と直下を、光の刃で切り裂き、駆け抜けた。
その巨体に相応しい轟音と共に、ザムザザーが爆散していく。
「シン、まだですよ」
「わかってるさ────ミネルバ、レッグとシルエットを射出してくれ!」
『は、はい!!』
相変わらずの強い声音にメイリンが気圧されながら返事をする声を聞くと、ミネルバより待ち望んだソードシルエットと破損したレッグフライヤーが射出される。
相対速度を同調……ドッキング。
完全な状態に戻ったインパルスは、背中に負った対艦刀エクスカリバーを抜剣。
セイバーと共に敵艦隊へと臆することなく突撃していった。
そこから先は、もはや戦いと呼べるものではなかった。
ヤヨイが駆るセイバーは、数多居並ぶMS部隊を次々と屠る。
アムフォルタスでまとめて薙ぎ払い、最大戦速で駆け抜けては切り裂く。
ミネルバへ向かおうとする敵機の悉くを撃ち落とす様は、その名を冠するに相応しいミネルバの救世主となった。
そしてシンが駆るインパルスもまた、敵艦隊の真っ只中に飛び込み、エクスカリバーによって全てを叩き切る活躍を見せた。
対空防御、艦載砲の斉射。それらをまるで意に介すことなく接近。
一度懐に……敵艦の甲板上に辿り着けば最後。フレンドリィファイヤを恐れて何もできない敵艦隊は、ただただ蹂躙の的となるしかなかった。
本来艦を守るはずのMS達は、その一切がセイバーを相手に空中で屠られていたのだから。
セイバー。MS撃墜38、艦船2隻撃沈。
インパルス。MS撃墜16、空母含む艦船6隻の撃沈。
この日、ザフトに伝説的な戦果が刻まれた。
目醒めた力。しかしそれは遠く、薄く。
望めば届くはずの己の力。それが手のひらから溢れていく時、少年と少女は何を想うか。
隙間の平穏で訪れた再会は、しかし彼らを次なる戦地へと誘う。
次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY
『刻まれた道』
辿り着く先、見据えろ、エスペラント!
多分作者の好きな手法?と言うか描き方として、過去話からそのキャラにとって印象深いセリフを引用してくるのをよく用いる。
それらの繋がりが、影響してきてるんだよって言うのを伝えたくて。
というわけで、運命編から始まったシン・アスカ育成計画の影響的な部分が描かれた回となりました。
そしてヤヨイも……まだ思い出したわけではないですけど、思い出してきてるって感じ。
今後の展開にご期待ください。
それでは、良ければ感想をいただけますと幸いです。