機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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何だろう、SEED編より戦闘シーンが難しい


PHASE-31 変わりゆく戦い

 

 

 

 インド洋において勃発したザフトと地球連合軍との戦闘。

 

 ミネルバを狙い、向かい来るのは、強奪されたカオスを含めたウインダムの大部隊。空母ジョーンズに搭載されたものとインド洋前線基地配備の30機を合わせた────総数45機。

 

 たかが1隻の艦船を沈めるには過剰とも言える数を前にして、しかしタケルが駆るエスペラントはミネルバを飛び出した瞬間にフルスロットル。数の差をものともせずに、真正面から飛び込んでいく。

 

「まずは──先手必勝!」

 

 飛行しながらガラディンを狙撃砲で展開。まだまだ隊列を保っているウインダムの群れを容赦なく狙い撃った。

 

 1度、2度、3度。

 立て続けに放たれた閃光は、寸分違わずウインダムへと突き刺さり3機を撃墜する。

 炸裂する音が、空と海を揺らした。

 

「次……散開しないと一網打尽だ!」

 

 まだ距離がある状況からの狙撃に、ウインダム部隊からは浮足立つ気配が見て取れる。

 タケルは即座に、ガラディンを狙撃砲から散弾砲へと変更。ウインダムが密集する一角を狙い、トリガーを引いた。

 

 再び敵陣を閃光が駆け抜け、数度大きな爆発を起こしていく。

 追加で3機のウインダムが落ち、2機のウインダムがビームライフルを失った。

 ここまで来てようやく、動きを取り戻したウインダム部隊は散開。狙い通りの動きが見られたことでようやくタケルも息を吐いた。

 

 展開するウインダム部隊をかき乱し、後続のシン達の発進進路を確保したのだ。

 

「メイリン・ホーク、進路クリアだ」

『了解です。コアスプレンダー、セイバー、発進願います』

「ヤヨイ・キサラギ────セイバー、出撃します!」

「シン・アスカ────コアスプレンダー、行きます!」

 

 メイリンからの要請を受けて、今か今かと出撃を待ちわびていた2機がミネルバより出撃。

 セイバーは即座に巡行形態へと。コアスプレンダーはドッキングしてフォースインパルスへと移行。

 真紅と白亜の巨人が、エスペラントを追う様に飛翔していく。

 その後に続く様に、ガナー装備のザクが2機。ミネルバの甲板に陣取る形でオルトロスを構えて待機。

 ミネルバを守る迎撃の布陣が敷かれた。

 

「セイバーは私と共に前に出ろ。インパルスは散開した敵を各個撃破だ。ミネルバに向かわせるなよ」

「了解しました、吶喊します!」

「はいはい、わかりましたよっと」

「シン、不満なら私と交代するか? その代わり撃ち漏らしたらタダではおか──」

「い、いえ! 問題ありません!」

「なら素直に返事をしろ。中衛を担う君には前後に味方がいる。頼りながらで良い、敵を討て。数を減らせ」

「──わかり、ました」

 

 タケルが告げてくる指示に、シンは不満と高揚の2つを覚えながら曖昧に返した。

 己だけでは不足。心配の念が強いからこそ、前後に味方を配置したという事だろう。そう考えると、面白くないことは事実。

 だが同時に頼られているとも取れる。敵を討ち数を減らすのは、それが可能だと見込んだ上での指示であるはずなのだ。

 自分の事だけで一杯一杯であるはずの少年の胸に、任された任を全うする使命感と呼べるものが湧いていた。

 

「ザクの2人は甲板から迎撃射撃に集中だ。余裕があればインパルスの援護に注力しろ」

「了解です」

「わかりました」

「よし────ではいくぞ!」

 

 指示を出し終えたところでタケルはエスペラントを吶喊させる。

 背部の大型バーニアが過剰な音を吐き出し、セイバーに次ぐ高い機動性を発揮してウインダム部隊へと肉薄。

 無論、その隣には巡行形態となったセイバーが並んだ。

 

「ヤヨイ、撃墜は二の次だ。まずは敵部隊を分断させる」

「言われなくとも、心得ております!」

 

 思わずタケルがハッとする様な言い回しの後、セイバーは主砲と言えるアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲を撃ち放った。

 先に受けたエスペラントの狙撃が記憶に新しいウインダム部隊はこれに反応。たまらずという様に大きく回避機動を取っていく。

 

「ここ!」

 

 その隙を逃さずエスペラントが飛び込んで回転しながらビームライフルを乱射。

 敵陣を駆け抜け、すれ違いざまにウインダムを撃墜していく。

 

「──追撃です!」

 

 駆け抜けたエスペラントに気を取られた隙に、更にセイバーが肉薄。

 MS形態となって、寄り添う様に固まっている3機のウインダムをビームサーベルで切り捨てて見せると、再び巡行形態へと変形してエスペラントと共に空を翔けた。

 

 そこまでいったところでふとヤヨイがエスペラントに意識をやれば、先に飛び込んで惹きつけた射線を全て躱し、落雷の様な機動を描きながら接近しては次々と敵機を切り捨てていくエスペラントの姿があった。

 

「流石ですね、相変わらず見事な機動戦で──」

 

 ヤヨイは怪訝な表情と共に被りを振った。

 確かに、彼の戦いを見るのは宇宙での戦いから数えて3度目である。相変わらずという表現が出てきてもおかしくはない。

 だが違う、そんな事ではない。今彼女の胸に去来するのはそんな感心ではない。

 

 抱いたのは、どこか温かさすら覚える懐かしさであった。

 

 当然の如く最前線へと出張り、敵の注意を惹きつける。

 そして、集まる攻撃を意に介する事なく受け流しては切り返す。

 

 それを彼女は、脳裏でよく見た光景だと思えて仕方なかった。

 

「くっ、戦闘中に何を惑っているの…………集中しなさい、ヤヨイ・キサラギ」

 

 胸を埋めていく懐かしさに蓋をして自身を叱咤させたヤヨイは、次なる標的を見定めて空を翔ける。

 

 戦いは、まだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 八面六臂で活躍するエスペラントを視認して、スティングとネオは表情を険しくさせていた。

 

「おいおい、なんだよありゃ。また新型だってのか」

 

 宇宙では見なかった機体。それも明らかに動きはエース級……スティングとネオの警戒も一入である。

 

「ちっ、カーペンタリアで合流した様だな。よくもまぁあんなに次々と……ザフトは凄いねぇ」

「言ってる場合じゃねえだろネオ!」

「わかっている。俺達で対応するぞ」

「了解だ。だったら俺は赤い方に行かせてもらうぜ! 宇宙でのカリを返してやる!」

 

 闘志を漲らせて、ヤヨイのセイバーへとカオスが向かう。

 専用チューンされたウインダムを駆るネオは当然、残りの選択肢であるエスペラントへと意識を向けた。

 

「ってことは────あれを俺が相手するの? 冗談キツイぜ全く」

 

 ネオが目にするのは、急激な機体制御を駆使して明らかに身体を壊しそうなヤバい軌道を描きながら、ウインダムへと肉薄していくエスペラント────はっきり言ってドン引きである。

 

「とは言っても、俺が逃げるわけにはいかないからな────仕方ない、腹括るか」

 

 命の危険をヒシヒシと感じながらも、ネオ・ロアノークは指揮官としての根性を見せてエスペラントを迎え撃つ事を決めた。

 

「ふっ、骨は拾ってくれよ。ジョーンズ──」

『悪いけどちょっとすっこんでてくれるかしら、大佐』

「んぁ!? ユリス? 何を言って──」

 

 しかし、覚悟を決めた漢の戦いは割り込んできた声に止められる。

 ウインダムのコクピットには急速接近するMSの反応があった。

 

 接近してくるのはダークパープルの機体。

 大戦中の機体ということで、少し型遅れではあるものの十分な技術体系の更新と改修を行い、現行の地球軍機の中では未だ最強と言えるだろうものだ。

 無論それは、中にいるパイロットも含めて。

 

 

『そいつだけは、私の獲物よ!!』

 

 

 ジョーンズで待機していたはずの、ユリス・ラングベルトとディザスター・ホロウの参戦であった。

 

 

 

 

 

 

「えっ、この感じ…………嘘でしょ」

 

 タケルのエスペラントが発進した直後の事である。

 旗艦であるジョーンズで即応状態の待機中であったユリスは、脳内を叩く覚えのある感覚に驚きの声を上げた。

 

「何で…………兄さんの気配が?」

 

 慌てて、戦場の情報を確認していく。

 この場にオーブ軍は居ない。居るはずがない。

 ここインド洋に居て、今撃ち合っているのは間違いなく連合とザフトのみである。

 

 こんなところに、彼がいるはずがないのだ。

 

 だが、そんなユリスの確信を、脳髄を叩く気配が否定する。

 そもそもこの感覚は彼が近くにいる時しか感じられない────同じ遺伝子故の繋がりだ。

 それが間違い無い以上、あり得ないと否定しようが彼は近くに居る。

 

「────居た、未確認機!」

 

 CICからのデータを確認していき、ユリスは見つけた。

 未確認の、恐らくはカオスやアビス等と同系統の新型機。

 モニタリングされてるその動きを見れば一目瞭然であった。

 

「あっはぁ……本当にいる!」

 

 ニタリ、と形容できそうな。酷く歪んだ笑みを見せて、ユリスは歓喜に震えた。

 つい先程まで彼との死闘を思い出し、そして恋焦がれていたのだ。

 自身の役目の為にも、どうにかそれを押さえ込まなくてはと自制していた。

 だが、今ここに彼がいるのなら────敵う相手は己だけであり、己の役目は見守るから食い止めるへと変化する。

 まだまだ拙いスティング達が彼に堕とされない様、ユリス・ラングベルトはこの戦いにおける自身の目標を見定めた。

 

「ディザスターからジョーンズへ。敵新型機を脅威と断定。対応するため出撃します」

『ラングベルト大尉? 貴官への発進命令は出ておりませんが……』

「問答をしている時間は無い。敵はどれだけの数を並べようが突破して旗艦を落としに来れるだけのパイロットです────死にたくなければ、早く私を出せ」

 

 声音に乗せられるは、かすかな苛立ち。

 彼女の実力が指折りであることは周知の事実だ。その彼女が見せる警戒の色に、担当オペレーターの背後にいるジョーンズ艦長からはすぐさま発進許可が降りた。

 

『ディザスター、発進願います────タイミングをラングベルト大尉に譲渡』

 

 1人だけ艦の防衛の為に即応態勢で待機していたのだ。

 カタパルトに乗せられて準備万端であったディザスターは、即座に出撃タイミングへと移行する。

 

 オペレーターの言葉を聞き入れると、ユリスはスッと大きく深呼吸をしてから戦場を見つめた。

 焦がれた敵を目の前にする……それは飢えにも似た渇望からの解放である。

 

「ユリス・ラングベルト────ディザスター、出るわ!」

 

 電圧を解放しカタパルトが始動。

 紫色の禍々しい機体が、インド洋の空へと飛び立った。

 

 発進と同時、タケルと同じようにユリスも機体をフルスロットル。

 最前線へと出張り、散々にウインダムをかき乱すタケルのエスペラントへと向かう。

 

 光学カメラが目標を捉えた丁度その時、ディザスターと同系色のカラーリングを施されたネオのウインダムが、及び腰の気配を見せながらもエスペラントへと向かう姿をユリスは視認した。

 

「悪いけどちょっとすっこんでてくれるかしら、大佐」

『んぁ!? ユリス? 何を言って──』

「そいつだけは────私の獲物よ!!」

 

 叫ぶ。己の存在を知らしめると同時にディザスターはビームサーベルを出力。

 不意を突くようにエスペラントへと突撃し、光の刃を叩きつけた。

 対するエスペラントは腕部の防盾でそれを受け止める。

 同時、接触回線で2人は脳髄を叩く感覚と共に、互いを認識した。

 

「やっぱり居た! さぁやり合おう、兄さん!!」 

「ディザスター……カオスが居た時点で予想はしていたが、やはりお前も居たか、ユリス!」

 

 シールドとサーベルを弾き合い距離を取った2機は、そのまま全開の機動戦へと移行していく。

 

 インド洋を舞台に、いくつもの因縁を抱えた2人の死闘が幕を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ユリスが出てきたお陰で助かったか」

 

 寸前で相手を掻っ攫われたネオであったが、お陰で戦況へと意識を向ける余裕ができ戦場を俯瞰していく。

 エスペラントとセイバーの攻勢で開幕は浮き足立ってしまったものの、現在部隊は落ち着きを取り戻していた。

 ディザスターにエスペラントがかかりっきりとなった為に、セイバー1機でウインダム数十機の撹乱は叶わず、ようやく数の有利を活かせる状況となった事だろう。

 そのセイバーにもカオスが向かい、早い足を止めたところである。

 

 となれば、ネオがやるべき事は一つだ。

 

「全機、連携をとってミネルバを狙え。最後の新型は俺が抑える」

「了解!!」

 

 残る強敵であるインパルスを抑え、数に任せた波状攻撃でミネルバへと一気に攻め立てる。

 幸い、海中を進むアビスも居る。主力となる新型3機を抑えられれば、ミネルバを守る防衛力はほとんど裸みたいなものだ。

 

「そら、少し遊んでもらおうか。ザフトのエース君」

 

 余裕の声と共に、ウインダムをビームライフルで狙うインパルスへとネオは突撃していく。

 

 ビームサーベルを出力し接近。

 距離を詰められれば他への意識は割きにくくなる。ネオは徹底してインパルスをマークするつもりで光の刃を振りかぶった。

 

「はっ、敵隊長機か!」

 

 ビームライフルで狙い撃ち、1機のウインダムを落としたところで、シンはネオの接近を察知。

 

 迎え撃つか……その選択肢を一瞬思い浮かべながらも、シンは意を決したように機体を後退させネオのウインダムから距離を取った。

 

「何っ、退いただと」

 

 既に前衛を務めたセイバーとエスペラントは敵のエース機体に捕まっている。

 となれば、今ミネルバを守る防衛ラインの最前線は自身のインパルスである。

 自分まで捕まれば、残るは飛べないザクによる迎撃のみ。ミネルバの防衛は困難を極めるだろう────シンはそれを理論ではなく無意識に及ぶ感覚で察した。

 

「レイ、ルナ、牽制を頼む!」

「任せろ!」

「了解!」

 

 シンの声に、ミネルバの甲板でオルトロスを構えていた2人が狙撃。

 インパルスとウインダムの間に大きな閃光が2つ迸っていくと、ネオも危険を察知して後退せざるを得ない。

 そうして更なる距離を取った瞬間、シンはネオのウインダムからミネルバへと攻め入ろうとするウインダムの一団へと意識を向けてビームライフルで牽制。

 ネオがインパルスを抑えると思っていた為か、その射撃に2機のウインダムが回避軌道を取れずに撃ち抜かれた。

 更に──

 

「ランチャー1、ランチャー2、てぇー!」

 

 アーサーの号令と共にミネルバからミサイルが発射され、インパルスの射撃に気を取られたウインダムがまた数機、直撃を貰い撃ち落とされていく。

 

「ちぃ、なかなかやってくれるじゃないか!」

 

 宇宙で相対したときは、まだまだ未熟な気配であったインパルスの強かな対応に、ネオは舌を巻いて唸った。

 無意識のうちに舐めてかかっていたのだろう。

 先のオーブ領海沖での戦いで死線を潜り抜けたパイロットの成長を侮っていたのだ。

 

「だが…………抑えると言った手前、俺も引き下がるわけにはいかないんでね!」

 

 高い授業料を払った分、ネオはそれを取り戻すべく再びインパルスへと狙いを定めた。

 接近してくるネオのウインダムに、対応を同じく後退しようとしたインパルスの出鼻をネオはビームライフルの牽制で制して見せた。

 動く先を予測して放たれた光条に、シンの対応が僅かでも鈍れば。

 

 既にネオのウインダムはインパルスの懐へと飛び込んでいた。

 

「そら、踊ってもらうぞ!」

「ちっ、くっそぉ!!」

 

 叩きつけられる光の刃をシールドで受け止めると、インパルスとネオのウインダムはそこから付かず離れずのドッグファイトへと移行していく。

 

 そうしてインパルスは、徐々にネオのウインダムに押されてミネルバから離されていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 接近してくるウインダムの大部隊を追い払うように、ミネルバは艦載砲をフル稼働で迎撃に回しておた。

 

「3時方向、MS数4、接近!」

「トリスタン照準! てぇー!」

 

 主砲と言える高出力のビーム砲トリスタンが放たれるが、狙いが僅かに甘く命中はしなかった。それでも艦載砲の威力に押されるようにウインダムは僅かに後退していく。

 そんな進展の無い攻防が繰り返されるも、厳しいのはミネルバの方である。

 

「敵母艦は、まだ見つからないの!」

「索敵は続けていますが、未だ……」

「ニーラゴンゴ、そちらではどうかしら?」

『こちらも探しては居るが反応は無い。潜水艦も海上艦も、影も形も見当たらんのだ!』

 

 苦々しく吐かれるニーラゴンゴ艦長の言葉に、タリアもまた表情を険しくさせた。

 

「では彼等はどこから来たと言うのです? 付近に基地があるとでも?」

『こんなカーペンタリアの鼻先にか。そんな情報は全く──』

「艦長、ソナーに感。これは……MS、数1です!」

「それに早い…………接近してくるのは、アビスです!」

「何ですって!?」

 

 バートとメイリンの報告に、艦橋に緊張が走った。

 それは通信を開いていたニーラゴンゴも同様で、慌ただしくオペレーターが対応していく様子が窺える。

 

「迎撃! グーンの発進、急がせい!」

 

 潜水母艦のニーラゴンゴには水中用MSであるグーンが積載されているが、それ等がアビスに敵うかと言われれば間違いなくNOだ。

 セカンドステージの機体であり、水中戦をメインに開発されたアビス。

 水中での機動性だけでも、グーン等と比べれば規格外だ。

 

「くっ、メイリン! バズーカを持たせてレイにも対応させて! ルナマリアはできる限り敵の数を減らせと指示を」

「りょ、了解! ザク、レイ機はバズーカを装備──」

 

 メイリンが指示をしていく声を聞きながら、タリアは唇を噛んだ。

 開幕こそ良かったものの、状況はいつの間にか劣勢。艦を守る戦力が次々と対応に追われ、ミネルバは丸裸にされつつある。

 セイバー、エスペラント、そしてインパルス。

 更にはアビスの対応にザクを回す苦肉の策だ。

 アビスを相手に旧式であるグーンでは如何ともし難い性能の差がある故、これも致し方ない。

 

 

「ちょっとちょっとぉ! 私一人でこの数を捌けって無茶でしょ!!」

 

 

 聞こえてくるルナマリアの嘆きを、タリアは落とされたくなければ奮起しろと一喝で返した。

 無茶だという事は分かっているが、それをしなければ厳しい状況なのだ。泣き言を言っている暇などない。

 

「メイリン、ラウラ隊長は?」

「現在敵機と交戦中。宇宙で確認されたあの紫の高性能機です」

「彼に戻る様に言って頂戴。このままでは──」

 

 ミネルバが沈む────続くであろう言葉を読み取り、メイリンは慌てて通信回線を開いた。

 

 

「ラウラ隊長! 聞こえますか! ミネルバが危険です。戻って下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあ!!」

 

 振り抜かれるビームサーベルを躱し、反撃と言わんばかりに至近でビームライフルを放つも、ディザスターは驚異的な反応でそれを避け、再び接近を重ねてくる。

 

「ちぃ!?」

 

 僅かな舌打ちと共に、それを退けるべくエスペラントは長大なビームソードを振り下ろした。

 受ければシールドごと叩き切るその光刃ではあるが、大振り故に軌道が読みやすく、ディザスターは掻い潜って見せる。

 

「甘いのよ!!」

「どっちが!!」

 

 タケルとて当たらないビームソードなど百も承知。突っ込んできたディザスターに合わせる様に前へと踏み込むと、振り下ろしたビームソードの大きな柄を翻し、ディザスターのコクピットを直接殴りつけた。

 VPSで装甲へのダメージはなくとも、その衝撃は大きくコクピットを揺らす。

 

「くぁっ!? こんのぉ!」

 

 僅かに体勢が崩れたディザスターへと、頭部のCIWSを連射。

 弾幕でどうにか引き剥がすとガラディンの散弾砲を展開して、ビームライフルとの連携で追い打ちをかける。

 

「ちぃっ、賢しい戦いを!!」

 

 歯軋りと共に、ユリスは機体を後退させて距離を取った。

 流石はザフトが開発した最新鋭機と言うところか。機体性能としては僅かにディザスターが劣る様である。

 が、タケルとエスペラントも決して余裕では無い。

 

 確かにスペックではエスペラントが勝るかもしれないが、ガラディンに高出力のビームソードと、主兵装である2つが一撃必殺をコンセプトに設計されたものだ。

 タケルは嘗てシロガネを駆っていた時ですら、ドラグーン兵装であるジンライのフル稼働と2本のビャクヤによる全方位波状攻撃でようやく彼女を追い詰めることができたのである。

 ユリス・ラングベルトの危機回避能力、対応力は高すぎるほどに高い。

 

 エスペラントの武装では絶対的に、彼女に対して相性が悪いのである。

 

「(まずいな……決め手がない。このままズルズルと付かれ続けてはミネルバが……)」

『ラウラ隊長! 聞こえますか! ミネルバが危険です、戻ってください!』

 

 飛び込んでくるメイリンの悲痛な声に、タケルは戦況を確認した。

 セイバーがカオスと交戦中であり、インパルスが指揮官と思わしきウインダムに捕まっている。

 更には海中でレイのザクがアビスとの交戦。

 ミネルバの防衛網は、既に穴だらけの状態であった。

 

「余所見してる場合かしら!!」

 

 タケルの意識がそれたのを如実に察知したユリスは再びの接近。

 2本のビームサーベルによる近接戦闘を仕掛ける。

 

「くっ、この状況は僕の失態だ────だが!!」

 

 嘗めるな。

 胸の奥で奮える心が、彼を境地へと至らせる。

 

 

 種が、開いた。

 

 

 振りかぶられたビームサーベル。それを出力している腕部へとCIWSを連射。

 衝撃にディザスターの右腕があらぬ方向へと弾かれると同時、スラスターを緻密に制御し左腕を蹴りつけて弾く。

 そのまま反動を利用してディザスターを踏みつける様に蹴り出し、一気に距離を取った。

 

「なっ!? やってくれるわね!!」

 

 ずしりと、一段重くなった空気を纏い、ユリスもまたタケルに呼応するようにSEEDを発現。

 だがその時には既に、タケルのエスペラントはミネルバへと最大戦速で翔け出していた。

 

「このっ──逃がすものか!!」

 

 当然、ユリスとディザスターも全力で追う。

 ミネルバへと向かう僅かな距離では、エスペラントが機動性に優れていようと然程離されるはずもない。

 どうするつもりだと加速した思考領域の中でユリスは訝しんだ。

 

 そんな中、タケルはミネルバへと通信を繋ぐ。

 

「ミネルバ! 墜とされたくなければ紫の機体には手を出すな!」

「えっ、何を──」

「信じろ! 撃たなければ撃たれん! 良いな!」

 

 奇妙な指示にタリアも含めてミネルバの艦橋が混乱する中、エスペラントはミネルバ近傍へと到着。

 同時、背後を振り返るとガラディンを大口径カノンモードで発射。

 巨大な閃光がディザスターの眼前に放たれた。

 

「ふんっ、何のつもりよ!!」

 

 範囲を広げれば当たるとでも思ったか。

 僅かな怒りを覚えながらもユリスはそれを軽々と躱す。

 同時、エスペラントはビームソードを出力して接近。ディザスターへと高速で突撃しながら振り下ろすも、それはすんなり躱される。

 しかし勢いのままに即座に距離を離してすれ違い、再びガラディンの巨大な閃光が空を切り裂いた。

 

「だから、当たるわけが無いでしょう!」

 

 ひらりと余裕を持ってディザスターが躱すと、お返しとばかりに肩に備えられた2門のシュヴァイツァが火を噴いた。

 それを今度はエスペラントが軽く躱して見せる。

 SEED状態における反射領域では、ただ構えた射撃兵装など当たるはずがない。

 2機の射撃は互いを捉えることはなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「一体どういうつもりなのかしら……」

「艦長!」

 

 敵を撃つなと言う奇妙な指示。

 そして見せつけるかのような熾烈な攻防。タケルの意図が読めずにいたタリアの呟きに、メイリンの驚きの声が答えた。

 

「何、どうしたの?」

「2機の戦闘で敵部隊が次々と巻き込まれて撃墜されていきます」

「なんですって」

 

 戦域情報を映すモニターにある、敵機を表すマーカーが次々と消えていく。

 そして眼前で繰り返される戦いに、タリアは目を見開いた。

 

「狙って起こしていると言うの? 同士討ちを……」

 

 

 

 

 

 

 

「一体何のつもり、兄さん!」

 

 苛立ち交じりに、ユリスはエスペラントにビームサーベルを振り下ろした。

 それにタケルは黙して応える。

 

 ユリス・ラングベルトは強い。それはもう、間違いなく今のタケルとエスペラントでは墜とせないであろう強さである。

 タケルに応じるようにSEEDへと至った以上、この場で彼女を仕留める事は不可能とタケルは判断していた。

 だが、彼女とて万能ではない事をタケルは知っている。否、タケルだからこそ知り得る事がある。

 

 SEED領域に至り、互いの意識が向いてる先を如実に感じられる今。タケルは彼女の意識が自分にしか向いていない事を感じ取っていた。

 元々タケルへの執着心が強い彼女だ。横槍さえ入らなければ、他へと意識を裂く事など無い。

 その証拠はガラディンのカノンモードによる最初の一撃で証明された。

 背後でウインダムが爆散していようと、ユリスは意識の欠片も向けなかったのである。

 ミネルバへの指示も、下手に手出しをしなければ彼女が接近したところで危険ではないと考えたからだ。

 

 そう、彼女は1人で戦う事しか知らない。

 彼女に、肩を並べる仲間などいなかった。生まれてからこれまで、1人の力でのみ戦ってきた。

 共に戦場に立っていたブーステッドマンの彼等ですら、彼女にとっては仲間になり得なかったのだ。

 作戦の中にある限り、彼女は好きに戦う。己が望む戦いであれば、尚更。

 

 これこそが、タケル・アマノとユリス・ラングベルトの唯一にして絶対なる差と言えるだろう。

 連合の軍人として正式な訓練を受けているわけでもない彼女は、部隊としての戦いを知らない。

 自分以外の味方機は、彼女にとって有象無象でしかないのだ。

 そうしてタケルは上手く距離を取りながら戦い、ガラディンとシュヴァイツァの撃ち合いを誘導。

 次々とウインダムの部隊を巻き込んで数を減らし、更にはミネルバに接近中であった無事な機体達も巻き込まれては敵わないと距離を取り始める。

 

 エスペラントとディザスターの戦闘によって、ミネルバ周辺はある種の安全領域へと至りつつあった。

 

 

「さぁ──仕切り直しだ、ユリス!」

 

 

 あらかたの脅威を振り払った所で、タケルはユリスへと意識を集中させた。

 だがここで、タケルは大きな違和感に気が付く。

 

「何だ……どこを見ている?」

 

 向いていない。

 あれ程に自分へと意識を向けていたユリスの気配が、まるでぶつかり合う感触を見せず、明後日の方向へと向いている。

 

 いつの間にか彼女は、SEEDの領域すら脱していた。

 

 

「あっ、あぁ……」

 

 僅かに感じられるは焦燥。

 未だ嘗て、彼女には見られなかった色に、タケルは訝しんだ。

 

 

「ダメよ……」

 

 

 焦燥は恐怖へ。

 色を変えていく似つかわしくないその気配に、タケルは彼女が意識を向ける先を見た。

 

 

「ダメっ──ステラ!!」

 

 

 機体を翻したディザスターの向かう先。

 

 

 インパルスが、浅瀬に伏すガイアを破壊しようとしていた。

 

 




1つ戦闘あると3話構成ぐらいになりそう。

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