ユーラシア西地域。
ユーラシア連合が所有する地域ではあったが、地球連合内における大西洋連邦の専横。それに対するユーラシア政府の対応に疑問を抱いていた現地民は自立と自治を訴えレジスタンス活動が盛んであった。
しかし、そんな状況下の中で表明された、ユーラシア連邦の反同盟宣言。ユーラシア連邦は、地球連合と袂を分つ事になる。
これにより、大西洋連邦とユーラシア連邦の境となっていたユーラシア西地域は一挙に緊張状態へ。
軍事力において圧倒的に秀でている大西洋連邦はすぐさま動きだし、ユーラシア西地域の制圧に乗り出した。
大西洋連邦の最終的な目的は無論プラント。ひいてはザフトであり、地球に拠点を置くジブラルタル基地とその足がかりとなるマハムール基地への侵攻を見据えたものだ。
元々統制区域としての地盤が不安定であった当該地域を、ユーラシア連邦は奪還不可能と判断。
こうしてユーラシア連邦政府に捨てられた西地域は無政府状態となり、自治と独立を求めたレジスタンスによる些細な反抗だけが残ることとなった。
そんなユーラシア西地域にある軍事拠点────ガルナハン基地を攻略するため、ミネルバはマハムール基地へと来着する。
依然として変わらず、プラントの方針は領土的野心のない専守防衛。積極的自衛権の行使としている。
だがユーラシア西地域の制圧は、大西洋連邦のジブラルタル侵攻を現実のものとさせるだろう。
足場を固めるために幾分か時間を要するだろうが、レジスタンスの細やかな抵抗が大西洋連邦の侵攻に影響を与えられるわけもない。
ザフトとしてもこの戦いは自分たちを守るための侵攻作戦。まさに積極的な自衛権の行使と言えた。
「なるほど……こちら側は随分と面倒なことになっていたのですね」
マハムール基地司令室にて、タケルは重苦しく漏らした。
基地到着と併せて、共に司令室へ通されたタリアとアーサーも同意する様に頷き、基地司令官であるヨアヒム・ラドルは地域図へと目を向けた。
「そうでしょう。大西洋連邦への牽制として基地の制圧は急務と言える」
「ユーラシア西地域が安定すればマハムールも目の前。次なる目標はここでしょう。本当であれば軌道上から一気に攻めたいところですが──」
「それについては何故か、案が議会を通らないらしいわね」
「軌道上からとなれば嫌でも大事になる。戦火を無為に広めないための議会の方針だとは、伺ってはいるがね……かと言って、これ以上連中に好き勝手されるのも困ると言うものだ」
ザフトとしても、これ以上侵攻の気配を無視はできない────ラドルの声音に一段と鋭さが増していく。
相手に侵攻の意思があるのなら、むざむざ攻められるのを待ってるなど愚かでしか無い。積極的自衛権の行使とは、決して弱腰の防衛と言うわけではないのである。
「それで、制圧したとして、ユーラシアへの返還とかの話はあるのですか?」
「それについては我々の知るところではないだろう。だがまぁ、外交筋の裏でやりとりは進んでいるらしい」
外交でのやり取り……タリアとタケルは理解を幾分か示す様に頷いた。
ガルナハン攻略はあくまで侵攻してくる大西洋連邦への牽制。ザフトとしては制圧はしたいが奪う必要は無い。
目的は大西洋連邦の侵攻を防ぐ事であり、制圧できたのなら本来自治権があるはずのユーラシア連邦に返還されるのも、筋と言えば筋だろう。
そうしてユーラシアが抑えてくれるだけで、大西洋連邦へ打撃を与えるには十分なのだから。
だがそのまま素直に返還すれば、その姿勢はプラントとユーラシア連邦の結び付きを強くしてしまう。
先の宣言で連合を離れる意思と、プラントからの被災地への救援を受けると宣言してはいるが、ユーラシア連邦は決してプラントと軍事同盟を結んでいるわけでは無い。
「どうにか攻略したいと言うところですが、こちら側からアプローチできるここの渓谷だけ。だが、当然向こうもそれを見越していてね。ここに陽電子砲を設置し、周りにそのリフレクターを装備した化け物のようなモビルアーマーまで配置している────前にも突破を試みたが、結果は散々だ」
地域図の一部を指し示しながらラドルは苦々しく呟いた。
ガルナハンへと向かう地形の関係上、アクセスできるラインとなる渓谷。その途上に設置されたローエングリン砲台とそれを守るモビルアーマー。
既に何度か侵攻した結果、攻略の糸口は掴めていないと言うことが、彼の表情から読み取れた。
「だが、ミネルバの戦力が加わればあるいは……」
「なるほどね。そこを突破しない限り私たちはすんなりジブラルタルへも行けはしないと。そういうことかしら?」
「その様ですね。この構図を考えた、どこぞのお偉いさんの顔が目に浮かぶ気がします」
「どこの狸が考えたのでしょうね」
意味を解せず惑うアーサーの横で、タケルとタリアは視線を交わして皮肉げに笑った。
やはり想定の通り────ミネルバには地球連合との戦いの最前線が待ち構えている。その予想の通りの構図である気がした。
「まぁいいわ、やれと言われればやるしか無い。それが仕事ですもの」
「では、作戦日時等はまた後ほどご相談しましょう。こちらも準備があります────我々もミネルバと共に、今度こそ道を開きたいですから」
「わかりました、では後ほど。ラウラ隊長、MS隊のデータをまとめてこちらに送っておいてください」
「はい、艦に戻ったら対応します」
話はまとまり、その場での会議はお開きとなった。
タリアとアーサーは足早にミネルバへと戻り、これから戦場の情報と敵戦力をまとめて作戦立案をしなければならないし、タケルとてMS隊の面々の様子を確認して作戦を決める為の情報をまとめる必要があるだろう。
基地を包む程よい緊張感の中で、ガルナハン攻略作戦が始まろうとしていた。
夕暮れ時。
マハムール基地の海辺を望める港に停泊したミネルバを、夕陽が茜に染め上げる。
そんなミネルバの甲板にて。ヤヨイ・キサラギは海を眺めて黄昏ていた。
今日も今日とてクルース・ラウラから提供された訓練でどっぷり疲れた身体に、冷えてきた潮風が心地良く、ヤヨイは心を落ち着けるように深呼吸をしながら大きく伸びをしてみた。
「んっ、ん〜流石に今日は疲れましたね。
機体を乗り換えた2人の為とは言え、シンとルナマリアを同時に相手にしろなどと…………あの男は私を過大評価し過ぎです」
シミュレーション上ではあるが、シンが駆るザクとルナマリアが乗るインパルス。
2人を相手にした模擬戦は、どうにかこうにかヤヨイの勝利で終えることができた。とは言っても、その勝利は薄氷の上を渡るようであり、だいぶ苦戦させられた感は否めない。
2人は機体への慣熟が足りていないが故の組み合わせなのだろうが、今日に限ってシンの調子が良かったのだ。
否、これについては語弊がある。最近のシンの調子が良いと言うべきだろう。
あの一件以来、シンはクルース・ラウラを明確な目標として定めていた。
それがインパルスのパイロットに返り咲く為なのか、それとも彼を超えたいのかは定かでは無いが、以前よりずっと自身を顧みるようになったと思う。
自分のダメなところ。自分の弱いところ。それを認め、学び、克服しようとする。そんな変化がみられる。
おかげで以前よりも訓練時の集中度は高く、更にはそれに触発されるようにルナマリアも練度を高めて来ている。
シンがインパルスのパイロットに復帰するのはそう遠く無いであろうと、ヤヨイはどこか確信めいたものを感じていた。
「こんな所にいたのか────ヤヨイ・キサラギ」
背後より聞こえる声。
今では良く良く聞き慣れた声の主人に、ヤヨイの肩は僅かに強張った。
「ラウラ隊長。艦に戻られたのですか」
「しばらく前にな。色々と話はまとまったがひとまず動き出すのにもう数日を要する。やる事も終えたので息抜きにと思って少しフラフラしていたんだ」
「やる事が無いのでしたら素直の休息を取るべきだと私は思いますが?」
「そう邪険にしないでくれないか?」
突き放されるような物言いに、少しばかりタケルの声音が落ち込んでいく。
記憶を失っているとは言え、大切な妹にあからさまな拒絶の意を示されればタケルの心に少なくないダメージとなるのは必然。
仮面の奥でそんな落ち込む様相を見せるタケルの姿に、ヤヨイもまた嫌悪とは違う嫌な感触が胸中に迫り上がってくる。
思わずヤヨイは首を振った。
「そう言う意図ではありません。
隊長、メイリンから聞きましたがMS隊のオペレーターである彼女にも様々な指導をしているそうですね?」
「あ、あぁ、まぁ確かに。索敵の重要性や通信指示のタイミング等、パイロット目線から色々と教えて欲しいと言われてな……」
「その上でヴィーノやヨウラン達整備班とも一緒になって機体を弄くり回しているそうですね?」
「それは誤解だ。エイブス主任からも彼等の仕事を取らないでくれと言われた。あくまで観て指導している程度に過ぎない」
「携わっていることに変わりはないでしょう────それで、いつ休まれているのですか?」
「そ、それは…………適当に空いた時にだ」
しどろもどろで応対するタケルの答えに、ヤヨイは大きなため息で返した。
何故だかわからないが、妙に懐かしい気分になったのは内緒である。
「隊長は主としてMS隊を取りまとめる立ち位置であると私は認識しています」
「相違ない。だから君たちの訓練データも──」
「きっちりまとめていらっしゃいますね。お陰様で今日も大変でした。その上今日みたいに呼び出しでもなければ訓練相手もしていただいてます」
「当然だな。それは私の職務だろう」
「さて、もう一度お聞きしますが。それでいつ休まれているのですか?」
繰り返される問いに、タケルは仮面で見えない表情を固める。
「────休める時に、だな」
「ですから、休んでくださいと言っているのです。パイロットに通信士に整備士。1人でいくつもやろうとしないでください。それで無理をされて何かあった時、困るのはミネルバの皆です」
「別に無理はしていないのだがな……」
嘗て、アークエンジェルにいた時も同様であった。
アストレイを駆り戦って、マードック等と共に機体を弄って、マリュー等と艦の動きを決める。
できるから。やらなきゃいけない事だから。そう考えて己ができる事を出来る限りやっていた結果であった。
「(そう言えば、ナタルにもマリューさんにも怒られたっけなぁ。と言うかオーブに戻ってからはサヤにも散々言われたっけ)」
そう思い至った所で、タケルは嬉しくなって小さく笑みを浮かべた。
記憶を失っても尚、根底にある妹の優しさは変わらない。それが良くわかるやりとりであった。
やはりここにいるのはサヤ・アマノであるのだ。
「──ありがとね、ヤヨイ。心配しなくてもちゃんと休みは取るよ」
「べ、別に! 心配などではなく、何かあったら困ると言ってるだけで……」
“ お兄様の自由意志に任せたら、適度に休む事すらも忘れそうですから”
ふと、ヤヨイの脳裏にまた見知らぬ記憶が過った。
頑張り過ぎて、働き過ぎて。家にも帰ってこない危なっかしい兄を嗜める、背伸びした妹の声であった。
「────お兄、様」
「ん? 何か言った?」
「っ!? いえ、何でもありません。私ももう休みますので失礼します。隊長、目に余るようであれば艦長に報告させていただきますのでそのつもりで」
「う、うん……わかったよ」
「では」
敬礼の後に甲板を踏み鳴らす小気味良い音と共に、ヤヨイはその場を後にしていく。
それを見送ったタケルは仮面を外してから小さくまた笑みを深めた。
「少し──思い出してくれてるのかな?」
漏らした言葉は誰に訊かれるともなく静かな空気に溶けて消えた。
一堂に会す。
場所はモルゲンレーテ地下艦船ドック。そこに鎮座するアークエンジェル内にある食事用の休憩スペースである。
待ち構えていたマリュー等アークエンジェルクルーと、キラやラクス、バルトフェルドにアイシャと言った面々。
そして、カガリにとんでもない提案をして来たフレイとサイ。更にはキサカにアスランの護衛2人。
随分な大所帯である。
その中で、先の発言の真意を問うために、カガリは静かに居並ぶ者達を睥睨しながら口を開いた。
「それで、どう言う意味だフレイ。私にブリュッセルに来いと言うのは?」
今この場では、嘗ての仲間としての顔ではない。
代表の座を追われはしたものの、カガリは国のために……オーブの為に今後も尽くす所存だ。
アスハの名と力も、決して無くなったわけではないのである。
そんな彼女を、この情勢下で国外へと連れ出す話────軽い話ではない。
「そんな怖い顔しないでよカガリ。こっちだって遊び半分で伝えてるわけじゃないんだから」
「なら早く話せ! 生憎と今の私にそう余裕は──」
「もうカガリ、いくらアークエンジェルに乗ったからって中身まで2年前に戻らないでよ」
「う、うるさいぞキラ。そんなんじゃない! 私は忙しいと言っている!」
「はいはいはい。今のオーブの状況を考えれば言いたい事はわかるけど、落ち着いてカガリさん。この事は、貴女とオーブの事を考えた故の話よ」
「ラミアス艦長……それは一体?」
「まずはキサカさんから説明してもらいましょう」
マリューの言葉に、カガリはハッとしてキサカへと視線を向けた。
カガリの襲撃を予期したかのようなタイミングで現れた、そしてここに来るまでの道中でも、事情を知っている様である事は明らかであった。
促す様な視線に、キサカは静かに頷くと、口を開いていく。
「──異変があったのは、先の防衛戦の準備をしていた時のことだ」
「異変? 特に報告は来てなかったはずだが……」
「命令系統、指揮系統に一部混乱があった。情報が錯綜し不要なものが運び込まれたり必要なものが用意されなかったりな」
「何? 馬鹿な、そんな事あるわけが……有事の際の訓練を国防軍は嫌と言うほど積んでいたはずだ。やるべき事など定まっているはず。そんな混乱が起きるはずが……まさか」
カガリは思い至る。
それは襲撃がある直前、アスランやナタルとも話していた事だ。
外部から潜入した工作員の可能性。それも、政治の深いところにまで潜り込めるほどの。
となれば当然、軍部にもその手が伸びていて不思議ではない。
「キサカ、調査は?」
「それについてはキサカ一佐からの依頼でこちらで請け負ったよ。君もタケルも、国防軍も──暗部には少々疎いということでね」
「バルトフェルド? 貴方がか」
「俺、と言うよりはクライン派の伝手ってところかな。ダコスタ君が良くやってくれるんでな」
「それで、何かわかったのか?」
「ブレイク・ザ・ワールド以降、オーブへの人の入りが多くなっている。ついでに、民衆の政治活動やら何やら、随分と活発になった。極め付けはこれだ」
言ってバルトフェルドは映像データをモニター映した。
「これは……」
そこに映るのは足繁くとある建物へと出入りする首長達の姿。
時や日にちを変えて、何度も秘密裏に集まっていることが伺える映像であった。
「首長同士であればなんて事はないだろう。だがこの警戒の感じは恐らく外部との繋がりの可能性が高い」
「そして今回の件だ。カガリ、お前を政界から追い出す動きが閣僚と民衆から同時に巻き起こった」
「まぁ、こんな事目論むのなんて、外部とは言え限定的だろう。恐らくは──」
「大西洋連邦」
小さく呟くカガリの声に、その場の空気が一気に重苦しくなった。
その事実はつまり、地球圏において最大勢力である大西洋連邦が、カガリ・ユラ・アスハを誅殺しようとした事と同義。
「相当邪魔だったのだろうな。中立を貫く、オーブの獅子の再来が。悲しいかな、今のオーブは一枚岩ではなかったからな。2年前とは違ってね」
「バルトフェルドさん! そんな言い方は」
「俺に怒るな少年。事実を言ってるまでだ。奴らは裏から付け入る隙だらけであったオーブ政府に潜り込み、世論を変えてアスハ代表を政界から追放。そして次のオーブの獅子が出てこない様、君を消そうとしているわけだ」
カガリは握った拳を震わせながら、バルトフェルドの言葉を脳内で反芻していく。
ウズミがいた時の様に、オーブ政府が一枚岩であれば、こんな事態にはならなかったのだ。
恐らく、カガリを追放したオーブはこれより大西洋連邦に擦り寄る形で動いていくだろう。
世界各地で起こっている戦火が飛び火しない様、民衆は煽動されそれを受け入れる体制となっている。
それが最終的に、オーブを戦火に巻き込む道だとしてもだ。
カガリが守ろうとして来たオーブの形が、脆くも崩れ去ろうとしていた。
「カガリ、落ち着け。顔を上げるんだ」
「アス、ラン? 何を──」
俯いていたカガリが顔を上げると、そこにはこの状況にいっそ目をぎらつかせる様な気配の者達が居た。
「カガリ、僕達が何で今この時に、ここに集まったと思う?」
「何で、って……それは」
「
「貴方達が必死に生きている分だけ、のうのうと平和を享受していたのが心苦しくはあったのよね」
キラが、ラクスが、マリューが、告げていく。
それは各々が抱く思いの片鱗を見させる様で、カガリは少しずつ彼等の言わんとしている事を理解し始めた。
「だから、今から僕達がカガリを守るんだ。
カガリを守る事が、ひいてはウズミさんが遺してくれたオーブを守る事に繋がるから」
「その為に皆、ここに集まったのです。嘗て轡を共にした、貴方を助ける為に」
「現状、何をしようにも君がオーブにいるのは危険すぎる。この世界にはブルーコスモスなんて過激なテロ集団もいる事だしな。どんな警備を敷こうとも危険の方が勝るだろう」
バルトフェルドが言う様に、先程のアマノ邸襲撃によりカガリの命の危険度は跳ね上がった。
そしてそれは、カガリに対してだけで収まる話でもない。
いくら十分な警備を敷いたところで、この世界にMSと言った機動兵器がある以上完璧にはなり得ない。
最悪はユニウスセブンの様に戦略兵器すら飛ぶ可能性があるのだ。
たかが1人を殺すために……と思っても、前例として容易く核ミサイルを発射した過去がある。
そんな危険に、オーブを巻き込む事など、カガリにできるはずもない。
絶対的に命を狙われる事となった彼女に、オーブでの居場所はもう無くなったのである。
「だから、アークエンジェルで密かに国外へ脱出するのよ、カガリ。
代表じゃなくなったのなら尚更都合が良いわ。オーブの代表としてではなく、カガリ・ユラ・アスハ個人として、ミュラー事務次官と繋がり、助けてもらいましょうってわけ」
「だが、そんな事をすれば今度はユーラシアが」
「既にもう対立は進んでる。今更どうこう言う事は無いわよ。それよりもこっちとしては大きな利点があるんだから」
「大きな……利点?」
フレイの言葉に、カガリは僅か訝しんだ。
カガリが懸念する様にユーラシア連邦との繋がりは、地球圏内でのユーラシアの立場を悪くするだろう。
フレイが言う、過日の宣言で既に対立模様であるとしてもカガリとの繋がりがユーラシアにどの様な利点となるのか、想像がつかなかった。
「はぁ……ラクスもそうだけど、貴女達本当に認識が薄いのよね。これだから箱入り娘は困るわ」
「それ、フレイが言うのか?」
「自覚しなさいよ2人とも。自分が世界に与えられる影響っていうのを。片やオーブの獅子の再来。片やプラントの絶対的カリスマ歌姫。それで2人とも先の大戦における大きな功労者として名高いのよ。
そんな2人と繋がりが持てる事は、大きな利点でしょ」
「買い被りすぎだフレイ」
「私達は周りの人達に助けられただけで、そんな大層な存在ではありません」
否定的に返してくる2人にフレイは呆れ顔でやれやれと被りを振った。
だが、ここで簡単に退くほどフレイ・アルスターは軽い気持ちでこの話を持ち出したわけでは無い。
今も昔も変わらず。場所を変えても彼女が戦う理由は一つだ。
忌むべき戦争をなくす事。
その為に、ミュラーとも散々やり取りをした上でのこの話だ。
フレイは次なる手札を切った。
「カガリ、ラクス。貴女達だってこんな争いばかりの世界は許せないわよね」
「それはもちろん」
「そうですが……」
「そして、2年前はその思いを同じくする人達が集まって手を取り合った」
「そうだな。クサナギ、アークエンジェル」
「そしてエターナルですわね」
フレイの気配が変わっていく。
それは以前にも垣間見る事があった。あの日声明を出した時の様な力強さを秘めた雰囲気。
いつの間にかその場は、彼女が支配するかの様な空気へと変わっていた。
「ミュラー事務次官は近い内にプラントのデュランダル議長と会談する予定よ。目的は勿論、今世界で起こっている連合とプラントの争いを止める協力関係を作るべく、ね」
「フレイ、それって」
「まさか」
続きを悟ったカガリとラクスが驚きの表情を見せる中、フレイ・アルスターは挑戦的な笑みを浮かべた。
「プラント、ユーラシア、そして貴女達────戦争を打ち砕く新たな同盟を締結する気はない?」
それは、世界を変える一矢となりえる、新たな希望の形であった。
楽しんでいただけてる方は是非感想をお願いします。作者のやる気の為に応援して欲しいです。
どうか、よろしくお願いします。