機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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スーパーウルトラ難産でした。
理由は読めば察せると思う。


幕間 付かず離れず

 

 沈黙が部屋を支配する。

 部屋に居る誰もが口を閉ざし、耳が痛くなるような静寂は一層音を立てる事を拒ませていた。

 

 息苦しく、重苦しい空気に嘆息しながら、キラは傍らに座る大切な人を見る。

 

 

「(──ラクス)」

 

 

 その表情はやはり、見るからに陰っていた。

 それは対面に座っているカガリも同じであり、キラはもう一度嘆息した。

 

「──キラ」

 

 静寂を破り響くは鈴の音の様な声。

 ラクスは視線をそのままに、キラの名を呼ぶ。

 

「貴方のせいではありませんわ」

「でも、ラクスは僕の為に……」

 

 申し訳なさそうに返すキラの声に、ラクスは首を振った。

 

「デュランダル議長が言った事に間違いはありません────全ては、私が自身で選んだ事です」

 

 これ以上述べること等ない。

 そんな気配の見える声音に、キラはまた肩を落として嘆息した。

 

 

 何故こんなにも重苦しい空気となっているのか。

 何故、彼女達は議場を離れこんなところに居るのか。

 

 それは、少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「会談の前にお尋ねしたい。議長、現在プラントに居るラクス・クラインは何者だ」

 

 

 発端は、少し遅れてその場に参席したデュランダルに向ける、カガリからの問いであった。

 

 この日カガリと共にここに来たラクスこそが、シーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインであることを彼等は知っている。

 彼等とはつまり、共にここまで来た皆の事であるが、それ故にアークエンジェルで知り得た偽物のラクスについて、デュランダルへと追及があるのは当然と言えば当然であった。

 

「アスハ代表……それを今聞かれるという事は、つまりはそちらに居られるのが本物のラクス・クラインと────そう言う事でしょうか?」

 

 企てが明るみに出た男の返答ではない、落ち着き払った声音でデュランダルは返す。

 ラクスは静かに席を立つと、彼の問いに答えた。

 

「初めまして、デュランダル議長。私はシーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインです」

「これはこれは……お会いできた事、光栄に思います」

「麗句は必要ありませんわ。その様なものが必要な人間ではありません」

 

 固辞するラクスに、デュランダルは小さく笑みを浮かべた。

 やはり、そこに悪びれた様子は窺い知る事ができない。

 

「デュランダル議長……その、本題からは外れてしまうが、本当なのか? 彼女の偽物を用意したと……」

「えぇ……それはまぁ。事実はその通りであります。必要に駆られた結果、我々は偽物のラクス・クラインを用意しました」

「はぁ、そりゃまたどうして」

 

 誰が見てもわかる問題行為。

 ミュラーもまた、怒りこそないが呆れ交じりにため息を吐いていた。

 

「議長、どういうつもりであれを用意したのかをお聞かせ願いたい。彼女の友人として、納得の行く理由が無ければ、とても看過はできない事だ」

「納得のできる理由、ですか…………しかし、そのようなものが果たして存在するのか」

「何っ!」

「無論、私にはそうするだけの理由があるが、そのどれもが、そちらが納得できる様なものでは無いでしょう」

 

 カガリからの追求の視線は、デュランダルへと変わる事なく注がれる。それはラクスを愛する者としてキラもまた同様。

 唯一、当人であるラクスだけは、思う所も無いのか平静である。

 

 デュランダルは声なき追求に応えるように、静かに口を開いた。

 

「ラクス・クライン。大戦以後、我々は貴女を探していました。穏健派の象徴として先の大戦を戦い、終息へと導いた貴女が戻られるのを、私は勿論プラントの皆も心待ちにしていたのです」

 

 それは、当然の帰結であり純然たる事実。

 プラントの歌姫として、シーゲルの娘として────そして、大戦の英雄として。

 戦後のプラントをまとめ上げるのにこれ以上の象徴的存在はいないだろう。

 デュランダルが言うように、プラントでラクスの帰りを心待ちにしていた人は、決して少なくない。

 むしろ、平和への道を歩み始めたことを考えれば、大多数がラクス・クラインの帰還を心待ちにしていた。

 

「しかし、貴女が戻ることは無かった。何ゆえか…………それはわからずとも、我々は自分達の手で、プラントを立て直す必要があるのだと、そう受け止めました」

「あんな偽物を用意しておいて、よくもそんな事を言えたものだ」

「アスハ代表、事情が変わったのです」

 

 カガリの横槍に、デュランダルは一転して声と表情を険しくさせた。

 それはいっそ、追求を向ける彼らに対して責めるような気配であった。

 

「11月の過日。再び行われたプラントへの核攻撃。

 ユニウス条約によって厳しい制限を掛けられた中で悠長に戦力を蓄えていたザフトへの、市民の怒りは大きいものでした。

 ナチュラルとの約束など信じるからだと。なぜこうなる事を予想できなかったのだと。市民は怒りと恐怖に揺れました。

 とても…………我々の言葉だけで抑えられる状況ではなくなったのです」

 

 仮にも条約を結び、平和の体裁を保っていたはずの世界。

 そこで再び行われたのは、大戦末期の悲劇を繰り返す核による殲滅攻撃。プラント市民が恐慌に陥るのは必定である。

 

 悔恨の面持ちで、デュランダルは続けていく。

 

「必要になりました。市民に訴えかける言葉だけでなく、戦いに駆られそうになる皆を鎮める事ができる、貴女の声と歌が。

 今プラントで歌う彼女が居なければ、我々は今の様に積極的自衛権の行使などと生温い事は言わず、先の大戦の様にナチュラルを殲滅するべしと主戦論に傾倒していったことでしょう────世界は、2年前に逆戻りするところだったのです」

 

 事実として、ミーア・キャンベル扮するラクスが声を挙げなければ、プラントの市民感情は徹底抗戦に向いていた。

 誰もが核の炎に恐怖し、可能性を摘み取るべきだと強行な声で叫んだ。

 それは、まだ新体制となってから間の無い現プラント政権にとって、御し切れる感情ではなかっただろう。

 

「アスハ代表、それでも彼女の代役を用意したのは間違いだと、そう言いますか? 

 確かに、自分達だけではどうにもならずプラントに居ないラクス・クラインの力に頼った事は事実です。過ちであるとわかっていながら騙ったという事は否定しません。ですが、用意しなければ再びの大戦となった事は紛れもない事実です。

 汚い大人の(そし)りは甘んじて受けましょう。ですが、どうかこの事実だけはご理解いただきたい」

 

 どうしようもなかった。

 世界を再び戦禍の渦に巻き込むわけにはいかない。その為の苦肉の策であったと。

 

 デュランダルは真っ直ぐにカガリとラクスを見て、全てを述べた。

 そんなお為ごかしを…………と、カガリは思うが、先の核攻撃でプラントの議会も相当に紛糾していた事は聞き及んでいる。

 その抗戦に傾倒した世論を覆す劇薬が必要だったのは紛れもない事実だ。

 そして、戦後ずっと姿を見せなかったラクス・クラインの登場となれば、そのインパクトも大きい。

 主戦に傾いた国民感情の天秤を戻すには、確かにその一手が最良である事は、今主戦に傾いていないプラントの姿勢を見れば理解できた。

 

「ラクス・クライン。事情があった、必要に駆られたとはいえ、貴女の尊厳を踏みにじる行為を取った事について、今ここで謹んで謝罪をさせてもらいたい────本当に、申し訳ない」

 

 改めて、デュランダルは姿勢も正しく頭を下げて、遅くなった謝罪の言葉を口にした。

 それにどう応えるのかとカガリが隣でラクスの様子を伺うも、その表情には相変わらずの平静な気配がある。

 静かに、ラクスは首を振った。

 

「デュランダル議長……先程も申し上げましたように、今の私にその様な謝罪は必要ありません」

「それはつまり……謝罪は受け取れないと?」

 

 俄かに不安を過らせるデュランダルだが、それに対してもラクスは再び首を横に振った。

 

「いいえ。プラントを捨てて去った私に、やり方がどうであろうと、今のプラントを必死に守ろうとする貴方方を否定する資格など、どこにも無いからです」

「おいラクス、何を言って──」

「カガリさん、私は自らの責任と使命から背を向け、身近な人達との安寧を求めたのです──議長が仰った様に、私を慕う者が多くいる事からも、目を背けて」

 

 ラクスがどこか遣る瀬無い思いを吐き出すように呟くのを、キラは苦々しく見ていた。

 

 シーゲルの娘として、穏健派の象徴として担がれて、父の死に泣くことすら許されず。

 大人達が勝手に負わせた使命と責任を、その異質なまでの心の強さで逃げることもできずに。

 若干16歳の少女、ラクス・クラインは、戦火にその名を轟かせてしまった。

 

 だが、キラだけは、本当の彼女を知っている。

 ボロボロとなった自身を献身的に世話してくれた彼女の姿を。

 歌が好きで、お茶の時間が好きで、大切な人達が大好きなだけの、普通の少女。

 我慢して、我慢して、限界ギリギリまで父の死という悲しみを押し殺したラクスが、何もかも脱ぎ去ったかのように泣きじゃくったのを、キラは良く覚えていた。

 プラントを捨てて去った? 使命と責任? 

 そんなものがラクスにあるとは、キラには到底思えず、しかしラクス自身がそれを感じている。

 遣る瀬無い想いはキラも同じであった。

 

「デュランダル議長、私から今プラントで歌うあの方について、言及するつもりはありませんわ」

「──本当に、よろしいので?」

「はい。ですが、一つだけお約束下さい」

 

 憂を思わせる蒼灰の瞳が、懇願の色を纏う。

 

「私の身代わりを務められた彼女が、不幸にならない様に……これだけは最大限の取り計らいをお願いいたします」

 

 自身の身代わりとなってしまった者に。

 今更戻ることも出来ない己の弱さを恥入りながら、ラクスはデュランダルへと頭を下げた。

 

「──わかりました。約束しましょう」

 

 真剣な面持ちを見せて、デュランダルも必ずやと言った様子で返す。

 安堵の息を吐きながら、ラクスは席につくのだった。

 

 

 それが全て、彼に利する事だと知らぬまま。

 

 

 

 

「さて、話も1つ纏まったところで、今日の本題に移るとしようか」

「それについてですがミュラー事務次官。少しよろしいですか?」

 

 長い前置きを終えて、本題へと入ろうとする所で、デュランダルがミュラーを制する。

 そして至極当然と言った様子で、カガリとラクスを見やった。

 

「この議題に無関係な彼女達を交えるおつもりでしょうか?」

 

 小さく口元に弧を作りながら、先程までの殊勝な気配とは打って変わって、為政者に相応しい底の見えない表情を見せる。

 言葉の意味を取り切る事ができず、ミュラーは剣呑とした視線を向けた。

 

「それはどういう事だろうか、デュランダル議長?」

「私は確かに、貴方からプラントとユーラシア、そしてオーブを交えた協力関係の打診を受けてここに呼ばれました」

「相違ない。何が問題──」

「アスハ()代表は、既にオーブを取り仕切る人間ではないのではありませんか?」

 

 目を見開く。

 よもやの言葉に数秒理解が追いつかずにいたミュラーであったが、畳み掛けるようにデュランダルは続けていく。

 

「そしてラクス・クラインもまた、この場で各陣営の動きをどうこう言える立場の御人ではない。先程、本人からの言質も取れましたでしょう?」

 

 自分はプラントを捨てて去った身。今のプラント政権にどうこう言う資格は無く、偽物のラクスについて言及するつもりは無いと。

 ラクスは言った。認めてしまったのだ。

 今のラクス・クラインは、ここにいる彼女ではなくプラントで歌っている彼女なのだと。

 

「議長! どういうつもりか! 私の事はともかくラクスの事については、貴方もその影響力の大きさを述べたはずだ!」

「そうですね……ラクス・クラインの名と存在の影響力は大きいでしょう。

 しかしそれは、今ここに居るラクス・クラインではない。今その影響力を背負っているのはこちら側に居るラクス・クラインです

 それとも、先の言葉を覆して表舞台に立ちますか? 今プラントで信奉されているラクス・クラインを偽物と断じて、貴方が本物だと改めて公表しますか? 

 そうであるのなら、構いません。ですがそうなれば貴方には再びラクス・クラインの名が付き纏う事になるでしょう」

 

 デュランダルの反論が、ラクスの表情を変えたのをキラは見逃さなかった。

 それは確かな真実であった。

 表舞台に出て真偽を公表すれば、ラクスは当然嘗ての立ち位置へと返り咲く事になるだろう。

 穏健派の象徴。平和を願う歌姫へと。

 

 だがそれを、ラクスは2年前に拒んだのだ。

 神輿に担がれることを拒み、大切な人達との静かな時間だけを望んだ。

 自分を押し殺す世界から逃げ出したかった。

 ラクスは、キラの隣で普通の少女で居たかった。

 

 言い返せずに押し黙るラクス。

 そしてこれが、ギルバート・デュランダルにとって一線を引き、彼等を別つ答えであった。

 

「できはしますまい。皆を捨て、プラントを去ってしまった貴女に、その気持ちは無いでしょう。

 それがもし残っていたのなら……11月のかの日、貴方が沈黙のままで居る事は無かったはずだ」

 

 本当にプラントを想って動く気概があるのなら。

 プラント市民が不安に揺れたあの日、動いて然るべきであった。

 それが無かった以上、デュランダルにとって目の前にいるラクスは、()()()()()ラクス・クラインでは無いのである。

 

 

「カガリ姫。ラクス・クライン。今の貴方方にその力と立場はない。私とミュラー事務次官は本題に入らせてもらうが、関係のないお二人には退室を願いたい」

 

 

 それは明暗分たれた、決別の言葉に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今となっては、簡単に引き下がった事を後悔している」

 

 思い出して、カガリは額を抑えて呻いた。

 こんな蚊帳の外で会談が終わるのを待つためにブリュッセルまで来たわけでは無いと言うのに。

 まるで意味を持たなくなってしまったこの遠征に、カガリの落胆は大きかった。

 

「ですが、議長が言う事も間違っては居ませんわ。今の私達にオーブを、プラントをどうこう言う資格はありません」

「ラクス、そんな事ないはずだ。私はともかく、ラクスにはプラントで慕う人達がたくさん──」

「その方達の想いを、私は切って捨てたのです。オーブで、皆と静かに暮らす為に……」

「で、でもだなぁ……あぁ、もうっ!」

 

 本人がそう認めてしまえば外野であるカガリからこれ以上言えることもなく、ガシガシと苛立ちを紛らわすように頭を掻いた。

 

「カガリだって、ラクスの事気にしてる場合じゃないでしょ。あのデュランダルって人に言われた以上、オーブをこのままにはしておけないわけだし……」

「わかっている! 本当なら今回の会談で、議長にはオーブに居る不穏分子の排除について、協力を願い出るつもりだったんだ……せめて情報だけでもと」

「それなのに最初からあんな突っかかるようじゃダメじゃない?」

「し、仕方ないだろ! ラクスの偽物何て見せられたら、先にそっちの疑念が出てしまうのは……」

 

 政治家としてなら成長もして自分を抑える術をカガリは学んできたはずだった。

 だがしかし、事が友人についてのことであればカガリの性格上抑えられはしない。

 それは慕う兄にも通じる所であり、彼等にとって決して引けない一線である。

 

「カガリ、ラクス」

「フレイ……」

「会談の方は終わったのですか?」

 

 部屋の扉が開き、フレイ・アルスターが顔を覗かせた。

 その背後にはミュラーにサイ。そしてザフトの護衛を連れたデュランダルもこの場に姿を現していた。

 

「滞りなく、と言う所だな。お陰様で良い関係を結べた」

「それはこちらも同様ですよ、ミュラー事務次官。これでプラントも多く抱える問題が解決される」

 

 ミュラーとデュランダルの会話に、滞りなく目的は達せられた事がわかる。

 

 先んじてフレイから聞き及んでいた今回の会談の主題────それは、ユーラシア連邦とプラントの同盟締結である。

 同盟とは言っても、軍事的な同盟ではない。

 目的はたった一つ…………地球に住むコーディネーターのプラントへの移民である。

 

 ブレイク・ザ・ワールドの一件で地球圏での反コーディネーター感情は爆発的に広がった。

 中立であったオーブですらそれに飲まれた事からも、他の国々で地球に住まうコーディネーターがどのような扱いを受けるかなど、想像に難くない。

 その中で、プラントと手を取り合う事を公表したユーラシア連邦には、安全を求めてコーディネーターが移民してくるのは当然の流れだ。

 大西洋連邦と東アジア共和国。地球圏における2大勢力が反コーディネーターに染まっている以上、こうなることは必然。

 だが、いくら声明を出した所で、ユーラシア連邦も被害が無かったわけではない。

 やはり勢力圏内において反コーディネーター感情は大きく、いつ問題が噴出するとも限らない状況であった。

 故にフレイは、この事態を想定したミュラーによってオーブへと遣いに出され、難民となったコーディネーターの受け入れと移民の協力を求めにカガリの元へ訪れていたのだ。

 

 そしてこれは、先の大戦で大いに人数を減らしたプラントにとっても嬉しい話であり、国力増強の面から拒む理由は無い。

 またとない利害の一致に、両者の雰囲気は随分と柔らかいものになっていた。

 

「さて、ミュラー事務次官。それでは私はこれにて、失礼させていただきます」

「早いですな。随分と慌ただしい」

「いえ、ここに居ては彼女達にとってお邪魔でしょう」

 

 その場にいた者達。とりわけカガリとラクスに向けた言葉に、キラやサイ、フレイの表情が険しくなる。

 

「議長、そんな事は……」

 

 何かを言い募ろうとするカガリに対して、デュランダルは固辞するようにそれを制した。

 

「私は既に断ち切ったのですよ、カガリ姫。今の貴方達は関係を結ぶ者では無いと断じた。

 次もし会うのでしたら、その時は是非、政治家として顔を会わせることを私は願いたい」

 

 オーブの代表から、カガリ・ユラ・アスハ個人へと成り下がった事への、どことなく叱責の様な気配をカガリは感じ取った。

 いわばこれは挑戦状とも言うべきか。次に会うときは、国を取り戻し、アーモリーワンの時の様に相対したい。

 そんな風に言われてる気がして、カガリは目つきを一つ鋭くさせた。

 

「良いだろう。次会うときは政治家として貴方の前の立つ。約束しよう、議長────必ず」

 

 それこそがオーブの獅子だと。デュランダルは微かな笑みを浮かべると、そのまま何も言わずに振り返った。

 そうして数歩進みそのまま退室していくかと言う所で、しかし何かに気がついた様子を見せると振り返る。

 

「そうだ────ここでお会いしたのですから、貴方方にこれだけは伝えておくべきでしょう」

 

 思い出した様な言葉に、カガリ達は眉を顰めて次の言葉を待った。

 デュランダルは変わらずの笑みを貼り付けたまま、静かにそれを告げる。

 

「カガリ姫……彼は今ザフトに居ます。ザフトに入り、ミネルバに乗って。今や艦を支える人物として今もまた戦いの最中に」

「彼? 議長、それってまさか!?」

「そうする目的は姫もご存知でしょう? 彼の為にと私もそれで助け舟を出したのだが……存外、私の方が大いに助けられてしまっている」

 

 誰かなど言わなくともわかる。

 何故かなど聞かなくともわかる。

 その選択は、彼であればしてしまうだろう事が、カガリ達にはよく理解できてしまう。

 

「兄……様……」

「彼は戦う気です。どこまでも己の大切なものを守り続けるために。それが選べないはずの選択の先であるとしても……捨てられないが故に」

 

 

 デュランダルの言葉に、カガリは兄の涙を流さぬ泣き顔を幻視した気がした。

 

 

 




政治の話を作者に求めないでください、本当にお願いします。

そしてずっと公言してますが、作者個人のキャラへの悪感情は一切無いです。基本キャラ愛を作品に載せてここまで書いてきてます。
なので、こんなラクスは違うだろぉアンチかよ、とかもやめてください。

原作運命編の中で、ラクスは余りにも生きてる感じがしないと言うか。人間らしさみたいなのが消えていると言うか。
seed編と比べると変わったと言うよりは代わったって感じが作者の印象でした。
本作ではもっと人間味のある子として描いていきたかった。それだけです。
原作seed編の後はキラを放って置けなかったって言う気持ちはもちろんあるだろうけど、それでも素直にキラと一緒に居たかったって言うのも十分にあるわけで。本作ではそこから掘り下げて素直に人間味のあるラクスとしてできてきています。
公私を秤にかけて私を取った、と言うのは原作を見ても決して間違いでは無いのかなと。
もちろんプラントを離れておいた方が、余計な問題がでないだろう、みたいな配慮はあったんでしょうけどね。

原作で終始他のキャラとは一線を引いてた彼女を、作者はキラの大切な人として描きたいと思った次第です。

後最後にですが、議長は狸です。お忘れなきように。

感想、よろしくお願いします。
それと評価のコメント制限やめました。どうぞお気軽にポチーしてください。
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