機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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何だろう。
ここら辺から描いてる時めっちゃ緊張してる。
ちょっと短めで序章。

あとdestinyのbgmで“艦隊指揮”
これ聞いてるとなんて言うか緊迫感やばい


PHASE-43 ダーダネルス海戦

 

 

 ミネルバの甲板に出て。

 タケルは酷く陰鬱な気持ちを払拭する様に眼前の大海原を見つめた。

 

 

 昨日、ブリーフィングに呼び出されたタケルとハイネは、タリアより基地司令部から下った指示を聞かされた。

 指令の内容は、黒海にむけて進行中の地球軍を叩けと言うもの。

 恐らくは奪われて押し込まれた戦線の奪還が目的だろう。鬩ぎ合いの様相となるこの地をザフトとて簡単に手放せるはずもなく、即座にミネルバには迎撃命令が下されたのだ。

 そうして今は、ディオキア基地を出港し黒海を進んでいるのである。

 

 そしてもう一つ。タリアから聞かされた事実。

 それこそがタケルの心を沈めさせる。

 

 “連合の増援部隊として、オーブ軍が派遣されて来ているそうよ”

 

 思い出して、タケルは唇を噛んだ。

 覚悟はしていたはずであった。しかし、余りにも早く訪れたその時に、タケルはどうしようもない程惑ってしまう。

 口でいくら強がろうと、この男にとってオーブが大切な事に変わりはない。

 オーブ国防軍と言えば、タケルにとって手塩にかけて育てたと言っても過言ではないもの。

 直接の指導ではないがモルゲンレーテのシミュレーターを介して、国防軍は訓練を積んでいるのだ。

 謂わば轡を並べた仲間。その認識は間違いがなく、国防軍にはカガリと共にタケルを慕い心酔する者も多い。

 

 本来であればそこに居るはずのサヤがザフトにいるが為に、こうして敵対する立場となってしまった事に、タケルは思う様にはいかない運命を呪った。

 

「っと、こんな所に居たのか。クルース」

「──ハイネ」

 

 1人黄昏ているタケルを心配してか、ハイネが甲板へとやってくる。

 初日こそミゲルと並んでバカを仕掛けて来たこの男にタケルは警戒もしていたが、FAITHとしての実力は本物。

 休暇明けの訓練では高い練度を誇るミネルバMS隊に軽々と追従して見せ皆を驚かせた。

 おかげでインパルスに舞い戻ったシンの鼻っ柱を折ってくれてタケルとしても満足の結果である。

 その高い実力と気さくな性格で、簡単にMS隊に溶け込む様を見せられ、着任早々ルナマリア以外からは怪訝な視線を向けられていた自分との対応の違いにショックを受けていたのは内緒だ。

 

「そんなにショックだったのか? オーブの増援が」

「色々と事情があるんだよ。君には言えないが」

「もしかしてお前、オーブ出身だったりするのか? 確か、シン・アスカもそうらしいな」

「まぁ、そんな所だ。あの国は中立のはずだったからな……どうしてこうなってしまったのか」

 

 言って、タケルは苦々しく仮面の奥で表情を歪めた。

 正直、どうしてこうなったかと言えば、それは自分が国を離れたからだろう。

 何があったかはわからないが、それでも自分が居ればカガリが国を離れる様な事態だけは避けることができたはずだ。

 そうすれば連合との同盟などあり得ない。こうして連合の戦力となって国防軍を派兵してくる事態になどなっていなかった。

 

 実際の所は、タケルが万全を喫して来た外からの侵攻であれば、オーブはいくらでも退け続けることができただろう。しかし、此度は内からの侵略。

 愚直に国防を担って来たタケルに、それに対応できたかと言えば、それは怪しい所である。

 

「だが今お前はこっちに居るんだ。そしてお前にはもう仲間が居る。この艦にな」

「ハイネ……」

 

 厳しい声音であった。

 まるで迷うタケルを叱咤する様な。

 

「迷うなよ。お前が迷えば、あのヒヨッコ達も俺も、実力を発揮できなくなる。巡って、この艦の危機に繋がる」

「────あぁ、わかっている」

「忘れるなよ。今のお前は、あいつらの隊長なんだ。お前の感傷で死なせる様な事、俺は許さねえぜ」

「手厳しいな。ミゲルと違って」

「ばぁか、ミゲルだって同じ様に言うだろうさ。今のお前の腑抜けた面を見たらな」

「仮面で隠れてると思うが?」

「そういう事言ってんじゃねえんだよ!」

 

 ビシっと効果音がつきそうな手刀を不意に浴びせられて、タケルは頭を抑えながらも小さく笑った。

 

「すまないハイネ。少し気が入ったよ」

「お望みならもう1発くれてやるぜ」

「それは流石にごめん被る。君の様にバカにはなりたくない」

「おまっ、ひでえ言い草だな」

 

 ははっ、軽い声でタケルとハイネは笑い合った。

 やはりミゲルと似たもの同士なためか、自然とタケルはハイネと軽いやり取りができ、そんな彼とのやりとりが気落ちしそうな今は心地よかった。

 

 そう。今はこの艦のMS隊の隊長。

 そしてディオキアでデュランダルに向けた言った様に、自分は戦うと決めたはずなのだ。

 父達から託された想いに応える為に。今の自分にできる形で。

 

 

 

『コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ。繰り返す──』

 

 

 

 発令されるアラートを聞いて、タケルとハイネは頷き合うと、格納庫へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エーゲ海と黒海を繋ぐその途上にあるマルマラ海。

 そのマルマラ海からエーゲ海へと繋がる細まった海域。そこはダーダネルス海峡と呼ばれ、ヨーロッパとアジアを分ける境でもある。

 最も狭い海域では陸間が数キロ程度の場所もあり、艦船が進むにしてはやや狭い。

 

 連合、オーブの合同軍はマルマラ海からこの海峡へ入る入り口へと布陣する形でミネルバを待ち構えていた。

 

 

 先鋒を任されるは、タケミカヅチ搭載のオーブ軍MS隊。

 先だって行われたオーブ防衛戦において多大な戦果をもたらしたライトニング隊を、シロガネを中心に再編している。

 

 隊長にはシロガネを駆るタケル・アマノ三佐を据えて。士官のアマギ、イケヤ、ゴウ、ニシザワ、ババを小隊長とした3機編隊。

 総数としては15機のカゼキリを有したオーブ国防軍のエース部隊である。

 

『MS隊全機、発進用意。パイロットは搭乗機にて待機せよ』

 

 タケミカヅチ艦内にて聞こえる指示を聞きながら、先んじてシロガネに乗り込んでいたアスランは時が来たのを確認した。

 

「いよいよか…………タケル、お前は本当に」

 

 操縦桿を握る手に力が込められる────先刻、ユリス・ラングベルトよりもたらされた情報。

 

 タケル・アマノはミネルバに居る。

 

 想定していなかった事態に惑ったものの、今のアスランはオーブの行末を背負う身。

 ここに居ない彼の代わりに、ザフトを討たなければならない。

 でなければ、同盟を結んでしまったオーブは連合に全てを奪われる事となる。

 同盟を結んだとて、簡単に御せる国ではない事を示さねばならないのだ。

 

『アマノ三佐、発進準備は良いかい?』

「愚問だな。こちらはとっくに準備を終えている」

 

 飛び込んでくるユウナの気障な声に返しながら、アスランは再び操縦桿を握った。

 彼がこうして通信をよこすと言う事は発進は目前なのだろう。

 

『まずは君が先行したまえ。その機体はユニウスセブンでも見せたんだろう? 虚仮威しにはちょうど良い』

「あっ、そう言えば…………すまないユウナ。伝えるのを忘れていたが、事情が変わった」

『えっ? 事情が変わった?』

「MS隊の戦力差は精々互角が良い所だろう。こちらが上回ってると言うのは訂正させてくれ」

『ちょっとちょっと、困るよこの土壇場で。あんなに自信満々にこっちが優位だって言ったじゃないか。あの仮面男に大見得切っちゃったんだよ』

「だから、事情が変わったんだ。例のファントムペインの人間から聞いた。向こうにも相当な奴がいるらしい」

『例の追加された新型かい?』

「あぁ、奴は俺が相手をする事になるだろう」

『じゃあそれだけしっかり抑えてくれよ。それでも数の差で我々ならお釣りが来るだろう』

「了解。それとミネルバの艦首砲だけは──」

『大丈夫だ。そうなる前に連合艦隊が側面を突く。君は憂いを抱かず前に出てくれ』

「────あぁ、任せろ」

 

 通信を切ると同時、シロガネがカタパルトへと乗せられていく。

 この機体で戦場に出るのは回数にして2度目。だが、シミュレーターで徹底的に慣熟した機体の挙動は十二分にコクピットシートから伝わる気がした。

 まさかそれが、元の持ち主に披露する事になるとは夢にも思わなかったが、ならばいっそ見せつけたやろうともアスランは思った。

 

 発進シークエンスが完了すると、眼前の大海原を見つめてアスランは戦闘に向けて意識を切り替える。

 

「タケル・アマノ────シロガネ、発進する!」

 

 タケミカヅチより、白銀が戦場へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、時を同じくしてミネルバも待ち構えていた敵艦隊を捕捉。

 

 戦闘準備へと入っていく。

 

「ブリッジ遮蔽。対艦対MS戦闘用意」

 

 スライドして降りていく艦橋。

 アーサー・トラインが現れた副長席に着き、戦闘管制を始めていく。

 

「対艦対MS戦闘用意。トリスタン、イゾルデ起動。ミサイル発射菅は全門ディスパールを装填」

「艦長、敵部隊の光学映像、出ます!」

 

 戦闘準備が着々と進んでいく中、通信のバートが報告して艦橋モニターに映し出された映像に、タリアも含めて一同驚愕の表情を浮かべた。

 

「えぇ!? あ、あれって……確かアマノ三佐の」

「──オーブの、白銀の閃光」

「そんな……だってあの人は今」

 

 メイリンが驚く声を聞きながら、タリアも同じ様に予想だにしていなかった敵機に驚いた。

 ユニウスセブンで見たあの機体は正に一騎当千のワンオフ機。

 必然、十全に乗りこなすのは彼だけであろう。

 その彼が今ミネルバにいると言うのに…………なぜそこに、と。

 

 陽の光を反射して白銀に煌めく、乗り手がいないはずの機体が────ミネルバに向けて飛翔していた。

 

 

 

 

 エスペラントに乗り込んだタケルは、MS隊へと通信を繋いだ。

 

「MS隊全機、戦闘前に伝える事がある」

『何ですか、こんな時に』

 

 無言の応答が各員からそれぞれ返される中、生意気坊主からの声だけがやけに良く聞こえて物怖じしない奴だとタケルは小さく笑う。

 しかし、これから先、その様な余裕は無い。

 既にミネルバは、敵部隊を捕捉しており、そこには嘗ての己の愛機が居たのだから。

 

「まず第一に、敵量産機は量産機では無い。全てセカンドステージの機体群に並ぶ機体だと思え」

『はぁ!? 何言ってんですか、いくら何でもそんなわけ──』

「シン、私の言う事が嘘だと思うか?」

 

 オーブのMS開発の全てを見て来た自分の見解を信じられないのかと、タケルは言外にシンに問い詰めた。

 

 確かに、シンが言う様にカゼキリの性能自体はセカンドステージには届かないだろう。

 だがそこでは無い。タケルが開発して来たカゼキリのコンセプトは最強の量産機ではなく、“最高”の量産機。

 追求した基本性能と、マルチウェポンラックによって、パイロット一人一人が徹底的に己に合わせて作り上げることのできる、全てがワンオフ機なのだ。

 機体とパイロットの親和性。その相乗効果は、嘗ての大戦でアサギ達が証明している。

 機体性能の差に胡座をかける相手では無かった。

 

「油断、慢心、侮りは全て捨てろ。敵は全員が君達より長い時を戦場で戦うために訓練して来た先達ばかりだ」

『了解しました』

『了解です』

『はい』

『わかりましたよ』

『おうよ』

 

 異口ではあるが聞こえてくる了承の声に、タケルはひとまず安堵する。

 これだけでも始まり方は変わるだろう。敵方が強敵な以上、最初の接敵は慎重で良いのである。

 

「それとハイネ。発進後の指揮は最初から君に任せる事になる」

『んあ、いきなりかよおい』

「悪いが敵にシロガネがいる以上、私は全てをかける必要があるのでな」

『おーおー、さっきから聞いてると相当やばいのか、もしかして』

「今更気がついたのか。もしかしても何も相当やばい状況だ────まさか、アスランが来てるとは想定してなかったし」

 

 聞こえない様に、タケルはボソリと呟いた。

 嫌な事は続くもので、まさかこんな形で託した機体と託した人に再会するとは思っても見なかったのだ。

 敵にはオーブの他にインド洋でやり合った部隊もいる。

 そうなれば必ず、奪われたセカンドステージとユリスのディザスターが出てくるだろう。

 ミネルバにとってはオーブ沖以来の死闘となる事は間違いなかった。

 

「シン、ヤヨイ」

『はい』

『何ですか』

「私が着艦したすぐ後に君達には伝えたな。決して縋るなと」

 

 他の者達は意図が不明だが、言われた2人だけは何を言いたいかが理解できて息を呑んだ。

 オーブ沖でのあの変化…………それを、今この時求められているのだと。

 それはつまり、それ程までに厳しい戦闘になると言うことの表れであった。

 

「忘れるな。鍵は君達が戦う理由だ。君達の中にそれはある────決して求めるなよ」

『はい』

『わかって、ますよ』

「よし、では出撃するぞ」

 

 話を終えて通信の音が消えていく。

 カタパルトに運ばれるエスペラントとセイバー。中央カタパルトにコアスプレンダーも乗せられた。

 フォースインパルスも含めて、まずは空戦が十分に可能なこの3機で前へと出て迎撃に入る予定である。

 

 だが、そうして発進を目前に控えたところで、タケルは個人通信でヤヨイを呼び出した。

 

「ヤヨイ」

『隊長? この土壇場で、何用でしょうか?』

 

 普段ならもう各々が集中して発信していく場面。

 気を遣って余計な通信などしないタイミングであり、ヤヨイは僅か怪訝な表情を浮かべた。

 そんなヤヨイの応答に一瞬言い淀むも、タケルはおずおずと口を開いていく。

 

「良いかい。どんな戦況でも、戦えなくなったら撤退して。命に代えてまで、戦う様な事はしないで」

 

 それはいつもの隊長の姿ではないと、ヤヨイにはすぐにわかる声音であった。

 

『何をこんな時に。皆命懸けで戦っていると言うのに、私だけ臆病風に吹かれろと言うのですか』

「そうじゃ無い。でも君は仲間のためなら命を投げ出す覚悟をしているだろう? それは隊長として見過ごせないと言っているんだ」

 

 そう。記憶を失ったヤヨイ・キサラギにとって、ミネルバの仲間こそが全て。

 これまでにもその気配はよく見られており、ミネルバを守るためなら彼女は死を覚悟して戦う。

 その意思は容易に見てとれた。

 実際、オーブ沖の戦闘ではシンを庇う形で撃墜されかけているのである。タケルが言う事は、的を射ているものではあった。

 

 これから出ていく戦場はこれまでとは段違いに厳しいものになるだろう。

 だが、タケルとしては絶対にこんなところでサヤを死なせたくは無いのだ。

 彼女を守るためにここにいるのだ。

 死なせない様、絶対に言質を取る必要があった。

 

 しかし、その様なタケルの心配は、ヤヨイの琴線に触れる事になる。

 

『──貴方は、私を受け入れてくれたのでは無いのですか。記憶を失った私を……私自身を。

 なのに、貴方は私に、ヤヨイ・キサラギであることを捨てろと、そう言うのですか!』

 

 怒りを讃えて、ヤヨイは似つかわしくないほどに声を荒げた。

 

 タケルは最初、死んでいたはずの妹との再会に喜んだ。

 だが記憶のことを知ってからはずっと、ヤヨイとしての自分を尊重してくれていた。

 少なくとも最初の邂逅以降、タケルはヤヨイをサヤと呼ぶ事はしなかった。

 しかし、今目の前で心配の声をあげるタケルは、確実に自身をサヤ・アマノとして見ている。不安を拭おうと、できるはずのない要求をしてくる。

 それがヤヨイには我慢ならなかった。

 

「違う! でも、こんなところで死なせるわけにはいかないから──」

『貴方個人の感情に、私を巻き込まないで下さい! 私はサヤ・アマノではありません、ヤヨイ・キサラギです!』

 

 プツンと通信を切られ、セイバーは発進準備を整えた。

 オペレーターのメイリンが発進のタイミングを譲渡。いつでも発進できる状態になると。

 

「ヤヨイ・キサラギ────セイバー、発進します!」

 

 真紅の機体がカタパルトから飛び出していく。

 それを見送ったタケルは己の不備を呪いながらも、続く様にエスペラントを動かした。

 

『ラウラ隊長、進路クリアです。発進どうぞ』

「了解した。クルース・ラウラ────エスペラント、出るぞ!!」

 

 VPSで機体を染めると、タケルとエスペラントもダーダネルスの空を翔けていく。

 

 更にはコアスプレンダーも発進。

 空中でドッキングを済ませフォースシルエットを装備。

 セイバー、エスペラントと並んだ。

 

 

 

 

 こうして、いくつにも絡み合う運命が今、死闘の幕を上げた。

 

 

 




さぁ、原作でもここら辺から多分話が展開してきたと思うところ。
どうぞお楽しみください。

ただ、原作からしてツッコミどころというか色々噴出する場面でもありますが、あんまりキツイこと言わないでください。
書けなくなっちゃうので。
陣営と政治の話は作者には難しいと前置きしているので、ね。

必死に捻り出しているので、お楽しみいただければ幸いです。

どうぞ感想をよろしくお願いします。
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