機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

200 / 330
タイトルでネタバレするやつ。
あと主人公に石投げるのはやめてあげてください。お願いします。なんでもしますから

運命編はコレで60話。seed編は完結130話でしたが多分残りは80話くらい書くんじゃ無いかなぁと。
気長にお付き合いいただければ幸いです。


PHASE-44 蒼天の剣

 

 

 ダーダネルスの海上に戦火の花が散る。

 

 互いに出撃したMS部隊。

 アスランが駆るシロガネを筆頭としたオーブ国防軍、総数16機。

 迎え撃つはタケルが駆るエスペラントが率いるミネルバMS隊。

 

 初撃となる艦隊からのミサイル群を、エスペラントのガラディンとセイバーのアムフォルタスが薙ぎ払い、遂に両者は戦場で相見えた。

 

「セイバーにインパルス……ならばあれが」

「シロガネ……慣熟してきてるはずだ。見過ごせない」

 

 互いが相手の存在を認識して引き寄せられる様に向かい合う。

 エスペラントはシールドと急遽インパルスの装備から移植したヴァジュラビームサーベルを装備。

 シロガネを相手にして取り回しの悪いビームソードでは、ビャクヤの猛攻を防ぎきれないと判断した故であった。

 そして、想定通りアスランが駆るシロガネは、2本のビャクヤを取り出すと急加速。

 今尚、現行最速を誇るであろうMSが、その猛威を見せつける様にエスペラントへと接近していく。

 

「はぁあ!」

「このぉ!」

 

 2本のビャクヤに、シールドとサーベルをぶつける。

 光の火花を散らしながら、英雄達は戦火の中で激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────始まったわね」

 

 旗艦ジョーンズの甲板にて、ディザスターに乗り込み待機中のユリスは、戦闘の始まりを告げる轟音を聞いた。

 胸中に柄にもなく高揚感が溢れ、その表情に垣間見えるは、始まった闘いに心底期待と興奮を覚えている様である。

 

「あぁ……ホント、羨ましいったらないわ」

 

 身を捩る。今すぐにでも渦中の中に飛び込み、鉄火場の中で共に戦いたい。

 因縁の機体であるシロガネと肩を並べて、そして因縁の敵であるタケルを討つ。

 連合、ザフト、オーブ。対面するは2勢力の構図だが、そう素直に額縁通りには受け取れない。

 オーブにとって……と言うより、今こちら側で戦うタケル・アマノにとっては、連合は決して味方とは言えないからだ。

 異なる思惑を持った者達が入り乱れる────きっとここはヤキン以来の最高の戦場となるだろう。

 

「あぁっ、もうダメ、我慢できない!」

 

 まるで何かの禁断症状かの様に身を震わせたユリスは、通信機へと手を伸ばした。

 呼び出すは、敬意も何も抱いていない変態仮面の上司、ネオ・ロアノークである。

 

「ロアノーク大佐、ディザスター出るわ」

『あんだって? まだこっちは配置について無いぞ。スティング達にも待機命令を出してるってのに、何のつもりだ』

「オーブは予想以上にやるわ。このまま何もしなければ全部持っていかれる。私だけでも出てミネルバ撃沈の助力となっておかないと…………このまま仕留められたら、後であの気障な司令官にでかい顔されるわよ」

『むぅ……それは嫌だな。お上からもどやされる』

「問答はここまで。もう我慢の限界だから────行かせてもらう!」

 

 カタパルトへの誘導すら跳ね除けて、ディザスターを起動。

 大型バーニアが甲高い音を唸らせ、ディザスターは勢い良く飛翔した。

 

 

 胸の内で胎動する宿敵への闘争心を引っ提げ、災厄の機体もまた導かれる様に戦場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タケル!」

「アスラン!」

 

 ぶつかり合ったシロガネとエスペラント。

 接触回線で聞こえるのは、互いに確認の意を込めた呼び声。

 想定した相手に間違いが無いとわかった瞬間に、2機は距離を取った。

 即座に展開されるはシロガネのキョクヤ。腰溜めに構えられたプラズマ収束砲が放たれるも、エスペラントは無難に回避して見せる。

 だが、そこを俊速で踏み込んできたシロガネが急襲。

 再び翻された光刃を、エスペラントはシールドで受け止めた。

 

「アスラン! 教えてよ、オーブは一体どうなってるんだ!」

「今の俺はお前だ! 俺は今、タケル・アマノとしてオーブを護るために敵と戦っている!」

 

 再び離れた両者。

 今度はエスペラントがガラディンを展開。

 プラズマ散弾砲でシロガネを振り払うべく、数発打ち込んだ。

 被弾を嫌ってシロガネは大きく回避すると、反撃とばかりにビャクヤのライフルでエスペラントを狙う。

 

「カガリは外部からの工作で代表を追われた。その上命まで狙われて、今は身の安全と再起の為に国外へと逃げ延びている。

 俺はカガリが戻るまで、同盟を結んでしまったオーブを護らなければならない────その為に俺は、お前からこの機体を託された!」

「だからって! こんな所まで来てザフトを討ってしまえば、オーブの…………カガリの理念はどうなる!」

「ならお前こそ、そんなところで何をしている!」

「くっ!?」

 

 ビャクヤから放たれる光条をシールドとサーベルで払い除け、エスペラントは再び距離をとるべく後退。ガラディンを展開して散弾砲で引き離していく。

 その最中、タケルの胸中はどうしようもない事実に荒れた。

 

 アスランが言う事は尤もである。

 サヤを取り戻すためとはいえ、オーブの軍人であったはずの自分が。それも情勢も不安定な時にオーブを離れザフトへと入る。

 何をしているのだと、彼がこうして怒るのは無理もない事だ。

 

「あの子のためだと言う事はわかる。だが、だからと言ってオーブを放ってお前は」

「──君に何がわかるんだ」

「何っ!?」

 

 操縦桿を握る手を振るわせながら、タケルは静かに返した。

 

「死んでいたはずのあの子が生きていて、目の前で再び仲間の為に死に急ぐ様な戦いをしているんだ」

 

 思い返すは、過ぎ去りし彼の日。

 自身の弱さが招いた、最悪の結果。己を庇い撃たれた、最愛の妹。

 例え記憶を失っていたとしても、同じ道を歩ませることなど、できようはずもない。

 

「見て見ぬ振りなど、できるものか!」

 

 一転して攻勢に転じるエスペラント。

 シールドをマウント、代わりに取り出されたビームライフルで牽制。更には接近しながらガラディンを展開。

 シロガネのキョクヤは、マニピュレーターによる保持で射撃体勢を取る必要があるが、エスペラントのガラディンは肩口へと展開して支えを要する事なく発射できる。

 機動戦と併せて放たれる、ライフルによる正確な射撃と散弾砲による面制圧で、シールドを持たないシロガネを苛烈に攻めたてた。

 

「くっ、ちぃ!!」

 

 アスランはシロガネを疾らせた。

 本領とも言える高速高機動。光の束の隙間を縫う様に躱していく。

 だが、セイバーに並ぶエスペラントの機動性も決して大きく劣るわけでは無い。

 再びシールドとサーベルを持ち出すエスペラントと、ビャクヤで切りかかるシロガネは、そのまま熾烈なドックファイトへと突入していく。

 暴風の様に戦場の全てを舞台にした機動戦は、全くの互角の様相を見せて、戦場に幾つもの火花を散らせていく。

 

 

 

 

 

 

「このぉ!」

 

 ビームライフルで狙い撃つも、その悉くを躱されシンは唇を噛んだ。

 出撃前にタケルが言った通り、侮れる相手では無い…………否、むしろ侮られてるくらいには相手の方が格上な気がしていた。

 3機編成の小隊。インパルスの相手を務めるのはアマギ率いる小隊である。

 

「援護しろ、仕留めにいく!」

「了解!」

「任せてください!」

 

 アマギのカゼキリがビームサーベルを抜いて吶喊。

 後退して距離を保とうとしたシンのインパルスを、しかし後方からの援護射撃が阻む。

 彼我の距離はいとも簡単に詰められていた。

 

「くっそぉ!」

 

 翻された光の刃を、寸でのところでインパルスを仰け反らせて必死に躱した。

 同時にそのままビームライフルを向けて接射するも、アマギはそれを無難に引き下がる事で回避していく。

 

「くっ、こいつらぁ!」

 

 焦りを抱きながらもシンは必死に手繰っていく。堕とされそうな緊張感と恐怖心を抑え込みながらインパルスを動かした。

 余計な事など考える余裕はなく、シンはそのまま必死にアマギ小隊の攻勢を捌き続ける事しかできなかった。

 

 

 そしてそれはヤヨイが駆るセイバーも同様で、ババ隊によって厳しい攻勢に晒されており、墜とされない様にするだけで精一杯。

 

 

「クソっ、このままじゃ!」

「敵には連合の部隊もいると言うのに!」

 

 

 湧き上がってくる焦りを抑え込み、2人は必死に愛機を駆り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディスパール、てぇー!!」

「ミサイル接近!!」

「回避、取り舵20。同時に主砲用意! 前方の艦を牽制する!」

「トリスタン! 照準、敵戦艦──てぇ!」

 

 海面から飛翔し、戦艦として高い機動性を見せるミネルバではあるが、晒される砲火は想定以上で迎撃がやっと。

 艦橋では切羽詰まった指示が幾度も飛び交っていた。

 

「艦長! オーブ機接近、数9!」

「クルース達を抜けてきたのね。メイリン、ハイネ達を出して!」

「はい!」

 

 ハイネ達もまた、既に出撃はいつでもできる状態で待機している。

 メイリンは即座に待機中の彼らに発進の指示を下した。

 

「ヴェステンフルス隊長。オーブ機が接近中です。迎撃に回ってください」

『了解だ。ハイネ・ヴェステンフルス────グフ、行くぜ』

 

 オレンジ色に染められたザクの意匠を残す新鋭機。

 ZGMF-X2000グフイグナイテッドがミネルバより飛翔する。

 背部のフライトユニットによって十分な飛行能力を有するグフは、そのまま接近中のイケヤ小隊の迎撃に向かった。

 

「レイ、ルナマリアも出ろ! 甲板でミネルバと共に防衛に回れ!」

「了解。レイ・ザ・バレル──ザク、発進する!」

「ルナマリア・ホーク──ザク、出るわよ!」

 

 レイとルナマリアも出撃。

 ブレイズウィザードを装備しつつガナーのオルトロスを手にした急造装備で、ミネルバの防衛に回った。

 

 

 

 

「さて、どれ程のものか……確かめさせてもらうぜ、オーブ!」

 

 ハイネのグフはシールドに内蔵されたテンペストソードを装備し接近戦を仕掛けていく。

 タケルに忠告されていたとは言っても、それがどの程度かわからぬ以上、できる事は最大限の警戒の下に最高の攻め手でぶつかるしか無い。

 近中距離の兵装が主であるグフで、距離をとっての戦闘をしても見えてくる事は多くはないのだ。

 元よりハイネは実感で事を判断する気質である。言われてハイそうですかと縮こまる様な闘い方もできなかった。

 

「おおおお!」

 

 迎撃に放たれるビームライフルの光を躱して接近。

 すれ違いざまでテンペストソードを叩きつけるも、それはシールドで防がれて終わる。

 即座にハイネのグフには連携した射撃が放たれた。

 

「うぉっ!? 反応は早いし対応も早い……なるほど、一筋縄じゃいかねえってな!」

 

 巧みに機体を振り回して光条を避けていくと、グフはテンペストソードを握るのと逆の腕部から4連装ビームガンドラウプニルで牽制を掛けた。

 小隊を散開させつつ牽制し、各個に撃破する算段である。

 しかし、イケヤ小隊はこれに散開しながら突撃で対応。

 放たれたビームガンの射撃を避けると、3機纏めて接近し波状攻撃に移った。

 

「何ぃ!?」

 

 一糸乱れぬ接近。機体を翻し、テンペストソードで捌いて2機をやり過ごしたところへイケヤのカゼキリにシールドでバッシュされて、ハイネのグフは衝撃に機体を落下させる。

 

「嘘だろ、一般兵(パン兵)でこの動き…………どうなってんだオーブは!」

 

 認めざるを得なかった。予想だにしない動きと連携。

 ミレニアムシリーズの新鋭であるグフであれば機体の優劣は恐らく無いだろう。

 3機小隊を相手にどうにか互角に持ち込めているのはハイネの実力故ではあるが、それでも数の不利を覆せる気はしなかった。

 

「はは、本当に……やばいじゃないのコレは!」

 

 押し切られそうな劣勢を誤魔化す様に軽口を叩いて、ハイネもまた死闘の領域へと突入していく。

 

 

 

 

 

 

「オーブ機接近! 数6!」

「ミサイルで振り払え! レイ、ルナマリア!」

「了解!」

「このぉ!」

 

 オーブ国防軍の残り2小隊、ゴウ隊とニシザワ隊がミネルバへと襲いかかる。

 タリアの指示でミサイル発射菅を一斉射。

 更に、ブレイズウィザードのファイヤビーも加えたミサイルの弾幕で一気にカゼキリ部隊を引き剥がすと、即座にレイとルナマリアのザクはオルトロスを構える。

 

「ルナマリア、当てるぞ!」

「簡単に言わないでよ!」

 

 ルナマリアはターゲットスコープを覗き込んだ。

 

 射撃を苦手としていた彼女ではあったが、それもガルナハンでの作戦を経て克服。

 元々の能力には別段劣ることがない彼女の射撃能力は、今では十分にレイ達と遜色ない実力になっている。

 とは言え、それに簡単に当たる程、甘い敵ではなかった。

 

 きっちり狙いをつけた射撃は、タイミングを図っていたかのように綺麗に躱され、お返しとばかりに放たれたビームライフルが2人のザクを襲う。

 咄嗟に肩のシールドで防御する頃には、ミネルバに数発のミサイルが着弾していた。

 

「くっ、このままでは!」

「泣き言言ってられないでしょ!」

 

 艦に取り付かせまいと、再びオルトロスを構えて狙撃。

 小隊を散開させて距離を取る。

 

 それでも苛烈な攻めは抑えきれず、ミネルバは被弾を徐々に重ねていった。

 

 

 

「艦長、連合艦隊が布陣していきます。本艦を取り囲む模様です!」

「えぇ!? こんな状況でそんな──」

「メイリン、クルース達は!」

「エスペラント、セイバー、インパルス、共に敵機と交戦中。呼び戻せません!」

 

 限界ギリギリとも言える状況に、タリアは表情を歪めた。

 

「くっ、アーサー! タンホイザー起動。前方の連合・オーブ旗艦を薙ぎ払う!」

「はっ、りょ、了解! タンホイザー起動、照準、前方敵戦艦」

 

 状況打開のために採ったのは、艦首砲による一点突破。

 陽電子砲の尋常ならざる火力で前方を薙ぎ払い、囲われる前に突破する。

 発射シークエンスを進めていくアーサーの声を聞きながら、タリアは半ば祈る様な面持ちで、発射体勢が整うのを待った。

 

「タンホイザー、軸線よし!」

「各位、衝撃に備えよ!」

 

 ミネルバの艦首にせり出してきた巨大な砲身に、光が集い臨界へと向かっていく。

 状況打開の一矢。そうなる事を願って、艦橋クルーの皆がその時を待った。

 

「てぇー!」

 

 トリガーとなる声。それに合わせて、極大の光が放たれようとする刹那──

 

 

「──させるわけないでしょ」

 

 

 巨大な揺れと共に、タンホイザーは彼方より飛来した光条に射抜かれ爆発を起こした。

 発射直前であった事もあり、爆発と被害は甚大。ミネルバは艦首に大きなダメージを受けた。

 

「何!? 一体どこから」

「熱源────すぐ近くにMS反応!」

「まさか、ミラージュコロイド……」

 

 タリアが慄く中、それは虚空よりゆらりと姿を現した。

 現れたるは禍々しい紫を纏うMS────GAT-X411β機体名ディザスター・ホロウ。

 そしてそれを駆るは、ユリス・ラングベルトである。

 

「あっはは! ひとまずコレで戦果としては十分ね! 大事な旗艦を守ってあげたんだから」

 

 愉悦と共に、戦場で悪魔は笑う。

 ミラージュコロイドによるステルス状態からの奇襲。

 恐らくは出てくるタイミングを図っていたのだろう。そして出てきた以上は、彼女にもう手をこまねいてる必要性は無い。

 すぐさま、ユリスは機体をミネルバへと向けた。

 

「さぁ兄さん、いつまでもそんな偽物と遊んでないで、早くこっちに来てよ」

 

 タンホイザーの破壊で甚大な被害を被ったミネルバは姿勢を崩して海面へと落ちていく。

 そんなミネルバに、悪意の矛先を向けて、ユリスはディザスターを動かした。

 

「敵MS、急速接近!!」

「迎撃!」

「ダメです、間に合いません!」

 

 

 

 

 

 

 

「ミネルバが────させるか!!」

「いかせはしない!」

「くっ、アスラン! 邪魔をするな!」

 

 シロガネとの撃ち合いから距離をとって、タケルはエスペラントを走らせる。

 しかし、それにアスランも追従。速度で勝るシロガネがエスペラントの行く手を阻んだ。

 

 手の届かない事態に、タケルが唇を噛んだ。

 モニタリングされる戦況には、ディザスターがミネルバへと急速接近していくのが見える。

 

 守れない────その事実が、タケルの心を蝕んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────種が開いた。

 

 

 

 

 

「ミネルバはやらせません!!」

 

 真紅の機体セイバーを駆るヤヨイが、ババ小隊のカゼキリを交わしてディザスターの眼前へと躍り出た。

 再び開花した超常的な感覚。オーブ沖の戦い以来の全能感に浸りながら、ヤヨイは接近してくるディザスターを迎え撃つべく、セイバーの2本のビームサーベルを出力。

 ディザスターへと、その刃を向ける。

 

 瞬間、ヤヨイの背筋を怖気が走る。

 

 

「はぁ────嘗めんじゃないわよ」

 

 

 種が、開いた。

 

 それは無慈悲で、圧倒的で、欠片の容赦もない攻防。

 翻されるセイバーの一挙手一投足。その全てを見切られ、防がれ、返される。

 SEEDを発現したはずのヤヨイ・キサラギを軽く凌駕して、ユリスが駆るディザスターはセイバーの光刃を受け止め、その片腕を切り飛ばして見せた。

 

 忘れてはならない。

 ユリス・ラングベルトは、キラ・ヤマトと同じく最高のコーディネーターとしてのスペックを持ち、人間兵器として数多の訓練を受け、そうして完成された兵士である。

 同じSEEDの領域へと至ったのなら、純粋な能力の差こそがその明暗を分ける。

 彼女が真に戦闘に没入した時、比肩し得る者などこの世界にそうはいないのである。

 

「なっ…………」

 

 交錯した機体と結果に、呆然とするヤヨイ。

 それは奇しくも既視感のある光景な気がして、ヤヨイの思考をかき乱した。

 同時に致命的な隙となって、ユリス・ラングベルトに次なる手を向けさせる。

 

 ディザスターがセイバーを捨て置いてミネルバへと吶喊。

 悪意の塊とも言える彼女は、ミネルバを必死に守ろうとする者達の目の前で、ミネルバの艦橋へとディザスターの両肩にある大型ビーム砲塔シュバイツァを向けた。

 

「良く目に焼き付けなさい。己の無力さを」

「はっ!? ダメっ!? やめて──」

 

 恐怖を浮かべてヤヨイはセイバーを動かした。

 ハイネのグフも、タケルのエスペラントも、シンのインパルスも、ミネルバの危機に息を呑んだ。

 

 光が収束し、放たれる。

 ミネルバが破壊し尽くされる光景を、幻視した。

 

 

 

 空を、鮮やかな閃光が駆け抜ける。

 

 

 瞬間、SEED領域下での知覚能力がユリスに警鐘を鳴らす。

 反射的に機体を下がらせるも、それすら読んだかの様に、シュバイツァの片方が、迸る閃光に射抜かれて爆散した。

 

 

「くっ、この気配……まさか!」

 

 

 遅れて反応するディザスターのセンサー類が警告を発している中、ユリスはそれを感じ取った。

 胸の内をざわつかせる嫌な気配は、ユリスにとって覚えのあるもの。

 同種の存在────兄と呼ぶタケル・アマノと並んで、同じ場所で生み出されたもの同士の異質なシンパシー。

 ドクドクと溢れ出てくる憎悪の気持ちは、タケルへ向けるものと何ら変わらないだろう。

 

 飛来してきたそれは、ミネルバを守る様にディザスターの前に躍り出ると蒼天の翼を開いて見せた。

 

「あれ、は……」

 

 艦橋から覗くその姿に、タリアは目を見開く。

 

 

「そんな…………なんでお前が……」

「どうして……ここに……」

 

 アスランが。タケルが。

 2人が戦いを忘れて驚愕する中、ユリスはディザスターのコクピットの中で、忌々しげに蒼い翼を睨みつけた。

 

 

「フリーダム……キラ・ヤマトぉ!!」

 

 

 

 舞い降りた蒼天の剣は、静かに戦場を見つめていた。

 

 




原作よりずっとずっと劣勢なミネルバ。
そして舞い降りる剣。原作と同じ様で、ちょっと違ってくる。
ユリスネキは本当に良い敵役で助かります。

さぁ、次回は更なる展開が…………多分ね。
余計な事書かなければ多分更なる展開。
どうぞお楽しみに。


感想よろしくお願いします。

正妻がいつもアンケで強すぎて困る……いやまぁ作者的には嬉しいですけどね。
それだけ魅力的に描けた証左ですし。
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