機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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最近更新速度が上がってるのはディオキア辺りから書いてて大分楽しくなってるから。
どっかでつまづきそうだけど、このまま走ろうと思う。


PHASE-48 黒き波動

 

 

 仇敵と手を結んだタケルとユリス。

 意気揚々と動き出そうかという所で、しかしタケルは動きを止めた。

 

「ユリス、疑問があるんだけど」

「何よ?」

 

 警戒の色を見せながら、部屋から顔を覗かせて周囲を探る合間に、部屋の方へと引きこもったユリスにタケルは問いかけた。

 

「何故わざわざ僕に助けを求めるんだ? そもそも、君が大人しく連合に従ってることが理解できない。君ならいくらでも、どうにでもしそうだけど……」

「これがあるからよ」

 

 言って、ユリスは己の首元を指差した。

 そこにあるのは首輪。それは見た目通りの名前であり、文字通りの意味でもある。

 

 なるほど、わかりやすいとタケルは嘆息した。

 文字通りの逆らうことも逃げることもできない、飼い殺しの首輪。

 さしずめ発信器と命を握るための爆破装置と言うところだろう。

 確かにそんなものをつけられてしまえば、おいそれと反抗はできない。

 

「だから私だけでは無理だと……そう言う事か」

「奴らの害となれば容易くこの首が飛ぶわ。下手なことして私が死んだら、ステラ達がどうなる事か。あっ、だから兄さん、ラウの仮面は着けてくれない? 兄さんを見て罷り間違って私が反乱起こした……なんて取られたら、終わりなんだから」

「流石に君みたいに髪は長くないし、いくら同じ顔だからって男女の見分けくらい……」

「万が一でもあったら困るのよ」

「まぁ、逆らう必要もないけど。個人的には視界も悪くなるし怪し過ぎるから余り着けたくはないんだけ──」

「いいから、着けなさいって言うの!」

 

 バシンといった勢いで取り外されて置かれていたラウの仮面を顔面に叩きつけられて、タケルは渋々と仮面を着けた。

 

「──仕方ない、とりあえずは言う通りに着けるよ。

 それで? 艦を掌握するにしてもどう動けば良い? クルーの人数に艦橋の位置、他にも注意点があれば教えてくれ」

「艦船とは言っても小型で武装も積んでない。一応格納庫はあって私のディザスターを積んでるから整備要員も居るけど多くはないわ。艦橋は6人。格納庫3人。その他雑多に4人。最後にステラ達の処置をしに入ってるラボのスタッフが3人よ。

 まずはステラ達を解放するために処置室へ向かう。間違ってもステラ達に手を出さないでよね」

「あの子達の顔は覚えている。それ以外は敵と言う事か……生死は?」

「見敵必殺よ。有無を言わさず仕留めて」

「穏やかじゃないな。別に殺す必要は──」

「ラボや軍本部に連絡されたら最悪よ。艦の制圧後はラボに向かってそっちも制圧するんだから。開幕から躓きたくないの────甘い幻想は捨てて頂戴」

「──了解だ」

 

 苦渋の決断ではあるが、タケルはユリスの指示に従うと首を縦に振った。

 どの道、タケルにとってもこの艦に居る人員は自らの命どころか大切なものまで脅かす存在だ。

 航行の目的が、自身をラボへと連れて人格を上書きする為となれば、全力で抵抗するのも致し方ないだろう。

 脳裏に免罪符を用意して、タケルは御し切れない嫌な気持ちを飲み下した。

 

「弾数が心許ない。君のナイフも貸して」

「良いけど────それ、お気に入りだから粗末にしないでよ」

「手を組むってなってから君は言いたい放題だな。言っておくけど、僕は決して馴れ合うつもりはないからね」

「良いわよ別に。こっちの指示を聞いてくれれば」

 

 ユリスが手に持つナイフを放り投げ、それを受け取ったタケルはいよいよ臨戦態勢へとシフト。

 右手にハンドガン。左手にナイフを装備し、通路の人気を伺った。

 

「あの子達は?」

「出て左。次を右。突き当たりで一つ上層に登って3つ目の部屋」

「5分以内に制圧する。何食わぬ顔で合流して次の指示を」

「了解。それまでここで気絶させられた振りでもしてるわ」

「せめて誰か来るようなら君の方でも仕留めておいてくれ────じゃ、行くよ」

 

 徹底して気配を消しながら、タケルは部屋を出て行った。

 それを見送ったユリスは、大きく安堵の息を吐きながら笑みを浮かべた。

 

 ある種、賭けに勝ったと言う所。

 互いに仇敵として戦い続けてきたのだ。彼女の提案にタケルが乗るかは、決して確実ではなかっただろう。

 しかし、仇敵でありながらも深い繋がりが2人にはあった。

 互いが相手の思惑を見定めようとした事で雑念を排し、その結果2人は持って生まれた繋がりから相手の心情を感じ取った。

 ユリスはタケルの生き延びようとする意志を。タケルはユリスの大切な人を守ろうとする意志を。

 故に今2人は、しがらみを捨てて手を結んでいる。

 

「さぁ、こうなった以上もう私達は止められないわよ────覚悟しておきなさい、アズラエル」

 

 それはまだ見ぬ本当の敵に向けた言葉。

 妖しく瞳を滾らせて、ユリス・ラングベルトは嗤う。

 

 

 それから20分もしない内に、艦には奇妙な静けさだけが漂う事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は欧州山岳地帯。

 雪吹雪く中、大きな濃緑色の戦艦が大地を走っていた。

 

 地球連合所属・ハンニバル級大型地上戦艦ボナパルト。

 

 ザフト、レセップス級戦艦に対抗する為建造された大型戦艦で。全長250mを有するそのサイズは、正に大型の名に相応しいものだろう。そのサイズを以て艦内へのMS格納は勿論の事、艦外にも多数露店状態でMSの係留が可能だ。

 

 そんな大型戦艦に輸送機を伴って来着したネオ・ロアノーク大佐は、通信を繋いだ。

 

「こちら、第八十一独立機動軍ネオ・ロアノーク大佐だ。ボナパルト、聞こえるか? 識別コードを送る。着艦を許可されたし」

『こちらボナパルト。ようこそ大佐。識別コードを確認しました。アプローチをどうぞ』

 

 ボナパルトの大きな甲板へと、輸送機は確実な飛行で着陸していく。

 そうして来着したネオが輸送機を降りていくと、出迎えの兵士達が見受けられた。随分と大所帯の出迎えである。違和感を覚えたネオであったが、その顔ぶれを見た瞬間に、その意味を理解した。

 

「あれが……代わりの生体CPUというわけか」

 

 胸糞悪いと思いながらも、居並ぶ兵士達の敬礼を受けて返していく。

 

「ネオ・ロアノーク大佐だ」

「ようこそ大佐。どうぞこちらへ」

「あぁ」

 

 士官と思える者の案内を受けてボナパルト艦内へとネオは通された。その後ろにくっつくように、年若い少年少女6人が追従していく。

 

「彼等が、例の補充要員か?」

「えぇ、そうです。我々も少し驚きましたが……能力は十分だという事で。確か、大佐が乗って来られた輸送機に、この子等の機体もあるとお聞きしましたが」

「あぁ、運び出したら後程パイロットにはシミュレーションで慣熟させるつもりだ」

 

 言って、ネオは背後の子供達へと振り返った。

 見た目の特徴もバラバラな少年少女が6人。年の頃は13,14歳という所だろうか。ステラ達と比べても、更に幼い者達ばかりであった。

 

「なるほど、これが次の被検体達の使い方という訳か」

 

 苦々しく、ネオは吐き捨てる。見た目にはバラバラな特徴を持つ子供達だが一点だけ、直ぐに分かる共通点があった────彼等は、そのどれもが生きた目をしていないのだ。

 ステラ達にはまだ己があった。自我があった。だが今目の前に居る子供達は違う。ただ指示された通りに動くだけの人形。正にラボが用意した、MSを動かす為だけの生体部品だ。

 これこそがラボが散々に命を弄んできた中で行きついた結論なのだろう。

 ステラ達には十分な感受性、自我を与える事で、連携や戦術、戦闘時における高度な判断力を備えさせていた。しかし、代償としては運用の不安定……暴走の危険性や、それを防ぐためのブロックワードによる精神の崩壊といった問題が付き纏う。まとめ役であり、尚且つ抑え役でもあったユリスが居なければ、まともに運用できなかったという部分は否めない。

 その上で戦果を見せられなければ、ラボがこういった方向へと舵を切るのは自明の理。

 徹底した人間の部品化──感情を奪い、判断力を奪い、淡々と下される指示だけをこなす人形こそが、エクステンデッドの結論となったのである。

 

「(カオス、ガイア、アビス。あの3機を使わせる子達と、デストロイ用の3人か。この作戦だけで6人もの子供の命を消耗品として使う訳だな……こりゃあきっと、死んでも天国には行けないな)」

 

 思わぬわけはない。思う所が無いわけがない。こんな、命を命と扱わぬ所業。ネオにとっても十分に忌避の対象である。

 が、己は軍人。命令に背く事はできず。ネオはただ目の前の現実を見過ごす事しかできなかった。

 

「君、頼みがあるんだが良いか?」

「えっ、あっはい。何なりと」

「彼等に、もう少し温かい恰好をさせてやれ。この天候と気温では、我々より先に身体が参ってしまう。いくら能力が高くとも、身体自体は未成熟な子供だ。作戦に支障が出かねん」

「それは……確かに。承りました」

 

 ネオの要望に急ぎ対応の指示を飛ばす彼を見ながら、ネオは胸中で己をなじった。

 まるで意味の無い、罪の意識を軽くする行為。そんな己の安寧しか考えてない行動に、心底嫌気がさしていた。

 

「はぁ……これならいっそ、アイツ等と同じくラボに送られた方がマシだったかもな」

 

 陰鬱な言葉をそれっきりとして、ネオは指揮官の顔に戻ると、ボナパルトの指令室へと足を向けた。

 

 

 地球連合の威信をかけた、大規模作戦の時が、刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海中に佇むアークエンジェル。

 

 その展望デッキで暗い海を眺めるキラ・ヤマトは、不安の渦中に居た、

 

 先日、宇宙へと上がると言い出したラクスを、キラは見送った。

 この情勢下で、オーブからも離れている今どうやって向かうのかという問題に直面したが、なんとも驚きの方法で彼女は飛び立っていった。

 

 地上で活動していた偽物のラクス・クライン……ミーア・キャンベルを宇宙に運ぶ為のシャトルを、その似過ぎている容姿を利用して拝借したのだ。

 ギリギリのところで発覚しスクランブルをかけられたが、フリーダムで待機していたキラがこれを援護。そうして、本当にキラの目の前で、ラクスは宇宙へと飛び立って行った。

 

「ラクス……大丈夫かな」

 

 今頃は宇宙で乗っていたシャトルを捨てて、クライン派と合流を果たしているだろうか。

 

 嘗てシーゲルが評議会議長だった頃、非戦の同志たちと結託して建造した偽装小惑星拠点“ファクトリー”。今後はそこを拠点に、密かに動いていくとの事だが、やはりキラの心配は拭いきれなかった。

 彼女の随伴にバルトフェルドとアイシャがついており、一応はファクトリーにMSも保管されているという。守りの手は確保できているのだが……それでも自身が傍に居ないのは不安で仕方ない。

 

 キラは、胸中の不安を吐き出すように、大きく溜め息をついた。

 

「キラ……大きい溜め息ね」

「あっ、ミリィ」

 

 不意に掛けられた声に振り返れば、展望デッキへと来ていた友人の姿があった。

 

「そんな溜め息、幸せが逃げちゃうわよ」

「仕方ないじゃないか。ラクスは行っちゃうし、タケルの事だってあるし……カガリやナタルさんの事だって、心配だし」

「まぁね~、2人とも何とか持ち直してはいるけど、無理してるのがヒシヒシと伝わってくるもんね」

 

 色々と不安は募るわよね~、等と言ってどこか気の抜けた雰囲気のミリアリアに、キラは張っていた肩肘を降ろして、また一つため息を吐いた。

 

「あっ、また吐いた」

「だってさ、そんな風に気の抜けた雰囲気で居られると、ずっと頭をグルグルさせてるのが馬鹿らしくなってくるというか……」

「そうよ。馬鹿らしいでしょ? どうなってるかわからない。どうなるかわからない。今の自分にできる事が無いのに、あれこれ考えて心配して……そう言うの、すっごく疲れるし」

「それは、そうだけど……」

「だから、そんな溜め息ばっかりついてないで、お風呂にでも入ってゆっくりしてなさいよ」

 

 バチンと言った音を立てて、ミリアリアはキラの背中を思いっきり張った。

 随分と手荒な気入れである。思わずキラは背中を抑えて見悶えた。

 

「いっだぁ!? ちょっ、ミリィやり過ぎだって!!」

「あっ……ごっめんキラ!! つい、ディアッカにやるみたいに手加減が……」

「えっ、えぇ……? ディアッカにいつもこんな事してるの?」

「いっ、いつもってわけじゃないけど……喧嘩した時なんかはまぁ……」

 

 しどろもどろで目を泳がせるミリアリアに、キラは色々と察した。

 きっと、多分、恐らく。いや、十中八九。先程の所業は定常化されているに違いない。

 元より最初の邂逅からの負い目があるディアッカは余りミリアリアに強気で出れない。その上ミリアリア自身もディアッカに対して、ある種の信頼を持っていて遠慮が無いのだ。ディアッカにだけは、包み隠さず本音をぶつけても良いと思っている。

 勿論ミリアリアのそれは、彼女を二度と悲しませないと誓ってしまったディアッカの言葉があるからこそだが、やれやれどうして……随分と良い関係が出来上がっているみたいだ。

 

「これはディアッカの将来が心配になっちゃうね」

「あらキラ……もう一回やられたい?」

「いっ!? 遠慮するよもう!」

 

 慌てふためいて、キラはをその場から逃れるべく駆け出した。

 しかし、艦内放送で聞こえる声が、キラとミリアリアの動きを止めた。

 

『キラ君、艦橋へ。緊急ブリーフィングを行うわ。急いで頂戴』

 

 切羽詰まったようなマリューの声に、キラもミリアリアも何事かと表情を引き締める。

 視線を合わせると頷いて、2人は急いで展望デッキを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディオキア基地で待機中のミネルバ。

 

 サヤ・アマノは報告の為に、艦長室を訪れていた。

 

 

「────以上が、私の全てです。グラディス艦長」

 

 

 無論、報告とは己が思い出した全て。ヤヨイ・キサラギはサヤ・アマノである旨の報告である。

 

「そう……思い出したのね。俄かには信じ難かったのだけれど……」

「えっ? どういう事でしょうか? その口振り……グラディス艦長は私のことをご存知だったのですか?」

 

 瞬間、タリアは瞠目してサヤから目を逸らした。

 数秒の逡巡。タリアは椅子から立ち上がると、サヤへと歩み寄り真正面から対峙する。

 

「えぇ、知っていたわ。貴女とクルース……いえ、この際だからちゃんと述べましょう。貴女とタケル・アマノ三佐との関係性を」

「一体、どうして……」

 

 また少し、惑う気配を見せるタリアを怪しみながら、サヤは食いつくようにタリアを見つめた。

 言うべきか言うまいか、そんな躊躇いの雰囲気を醸し出しながら、タリアはおずおずと口を開いていく。

 

「今の貴女に、これを告げるのは酷かもしれないけど……貴方の事は彼から全て聞かされていたのよ。彼がミネルバに着任したその時にね」

「何故……そんな事をお兄様は」

「それが彼がここに来るための条件だったのよ」

「条件?」

「良い? 落ち着いて聞きなさい。タケル・アマノはザフトの軍人として、ミネルバの為にここに来たわけでは無いわ」

 

 タリアの言葉に、目を見開いていく。

 サヤは瞬時に悟った。今知りうる限りの傍証が、いとも容易くその結論へとサヤを導いていく。

 

「まさか、お兄様はサヤの為に……」

 

 静かに、タリアは頷いた。

 

「そうよ。貴女の傍で……直ぐ近くで。ザフトの軍人として生きようとする貴女を守り、いつか記憶を取り戻した貴女とオーブへ帰るために、彼はここに来たの。単身プラントに渡り、議長との面会を経て、ね。あの人もまた、そんな彼の願いに応えて、エスペラントとFAITHの権限を託した」

 

 ルナマリアに叱られたばかり故に、サヤは再び涙を流すことは無かった。しかし、心の内ではやはり遣る瀬無い思いが広がっていく。どんな事実が発覚しても、全ての原因は己に帰結してくる。そんな気がしてならなかった。

 サヤは拳を握り、震わせて、必死に己を責め立てようとする心に抗った。

 

「──お聞かせください。何故艦長も、議長も、オーブの軍人だと判明した私をセイバーに乗せ続け、あまつさえお兄様までザフトで重用したのですか?」

 

 そう。記憶を失っているとは言え他国の軍人。こうしてサヤの様に記憶を取り戻してしまえば、そこには自軍の内情を知る他国の軍人という、非常に厄介な存在が出来上がってしまう。

 それは、仮に優秀な人物だとしても、重用するのは余りにリスクの高い話だ。

 

「私も議長に進言はしたわ。本当に大丈夫なのかと。でも彼は、ザフトの軍人として生きているヤヨイ・キサラギの意志を信じると。そして彼についても、貴女を守る為に手を貸してくれた議長を裏切る事は無いだろうと……そう言って聞かなかった」

「確かに、お兄様はその様な不義理をなさる方ではありませんが……しかし私は」

「そのリスクを取るだけの実力が……貴方達兄妹にはあったという事よ。あの人からするとね」

 

 奥歯を噛み締めて、再びサヤは震える。

 解せない。どう考えてもメリットとデメリットが釣り合ってない。デュランダルの執った行動は決して安全とは言えない博打の様なものである。

 裏切りや離反を、まるで考慮して居ないのだから。

 

「グラディス艦長、議長はお兄様を利用する為に、記憶喪失のサヤを利用したのではないのですか」

「っ!? やめなさいヤヨイ。その発言は大きな問題よ。今の貴女はザフトの軍人……不用意な発言は慎みなさい」

「ですが、それならば合点も行きます。そもそも私は認識票を持っていました。撃墜のショックで記憶を失っていようと、私がサヤ・アマノであるという証拠は必ずあったはずです。

 少なくともヤヨイ・キサラギの記憶に、そのような証拠となる物は覚えがありません。恐らく全ては隠ぺいされて──」

「いい加減にしなさい! 末端の兵士である貴女が、軍を動かすことのできる最高責任者にあらぬ疑いを掛ける。貴女も軍人なら、それがどういうことか分からないわけでは無いでしょう」

 

 サヤはタリアの剣幕を受流しながらも、仕方なく押し黙った。

 少なくともこの場でこれ以上は言えないだろう。

 昨今の情勢を考えれば、今彼を疑う事は下手すると国家反逆罪とも取られ兼ねない。

 

 静かになったサヤを見て、タリアは声を荒げてしまった事を自戒しながらも、大きく息を吐いて席へと戻った。

 その表情には、疲れと共にこれ以上の問答を許さぬと言わんばかりの刺々しさが伺える。

 

「さっきのは聞かなかった事にするわ。少し頭を冷やしなさい。彼を想って色々と疑るのは良いけど、ここはミネルバ。ザフトの艦船の中だという事を忘れない様に。良いわね?」

「わかりました──申し訳ありません、艦長の心労を増やしてしまい」

「そんな事は良いわ。でも、本当に気をつけなさい」

「はい……それでは、失礼しま」

 

『艦長、緊急事態です。至急艦橋へお願いします!』

 

 艦長室を、割り込んで来たアーサー・トラインの通信音声が切り裂く。

 

 ただならぬ雰囲気を感じ取り、タリアとサヤは急いで艦長室を後にして艦橋へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 

 ユーラシア西地区の都市に突如、巨大な機動兵器が出現。

 無差別な破壊行為を開始していた。

 

 

 世界は再び、大きな転換期を迎えようとしていた。




さてさて、原作と違いダーダネルス2回目が無し。
アニメ5話分くらい飛んだかな。その文主人公撃墜で散々話数取られたけど。

ここからあっちこっちに場面を移して、皆んな書いていかなきゃならないから大変。
いやでも文字数増えるなぁこれ。

今更だけど、だらだら長すぎる、とか思ってる人も居るのだろうか。
作者の執筆の源泉は第一にキャラクターをじっくり描くところなのでどうしても展開は遅くなってしまう。
何卒お許しを。

感想、よろしくお願いします。
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