ユーラシアで大きな動きがあり、そしてタケルとユリスが密かな反逆を始めたその頃。
旗艦タケミカヅチはオーブ本国へと帰還していた。
先の遠征軍は、フリーダムによってシロガネを含むほとんどの搭載機を戦闘不能に追いやられ撤退。本国へと帰って来たアスランの胸中は酷く落ち込んだものであった。
当然だろう。息巻いて戦場に赴いておきながら、何の戦果も挙げられずに帰ってきたようなものだ。アスランとしては不甲斐ない気持ちで一杯である。
「そう落ち込むなよ、アレックス」
帰還してタケミカヅチより搬出されていくシロガネを見つめるアスランに、背後から声が掛かる。
いつも通りの気障な笑みを浮かべた、気に喰わないが今は同志となったユウナ・ロマ・セイランが居た。
「逆にどう盛り上がれと? ノコノコ戦場に釣りだされて、俺達は無様を晒したんだぞ」
「そんな事はないよ。気休めでもなんでもなくね」
「どういうことだ? 俺達国防軍は何も──」
「君は自分の戦いに夢中だったから仕方のないことかもしれないけど。序盤、我が軍のアストレイはザフトの最新鋭機を翻弄していた。あちらは我が軍の相手だけで精一杯だったからね。つまり、オーブは艦1隻という同等戦力でミネルバと拮抗して見せたという事だ。数頼みで連合が打破できなかったミネルバを相手に」
「それは……希望的観測じゃないか? 現に終盤は」
「向こうの最新鋭機をアストレイの小隊が完封していた映像記録がある。あれだけで十分、国民を納得させることはできるだろう。あれを見せれば、結果が伴わなかったのは連合が足を引っ張ったからだとでも国民は思うだろうさ」
実際の所、先の大戦によってオーブ国民の反連合感情は決して浅くない。
今でこそブレイク・ザ・ワールドをきっかけに反コーディネーター感情こそが高まってはいるが、元よりオーブは協力的な姿勢を強く示してきたプラントとの親交が厚いのだ。
反連合と反プラントが同居する様な内情は、些細な情報で容易に天秤を傾けるだろう。
「お前って、そう言う事やらせるのホント似合う奴だな」
「誉め言葉と受け取っておくよ。それが今の僕の立ち位置だからさ。そもそも、今回の遠征は僕にとって負けは無い話だったし」
「ん、そうなのか?」
思わずアスランは問いかけた。
アスランからすれば、今回の遠征はオーブの立ち位置を守る為の一大決戦の覚悟であった。
だというのに、目の前のこの男はそれをまるで予定調和の様にこなしていたというのだろうか。
「思う通りに戦果を示せれば、僕の実績もできてこれからは安泰。連合に力を示せてオーブも安泰で万々歳だった。けど、こうして逆の結果になったとしても、僕達にとっては決して悪い事じゃないよ」
「何故……あぁ、そう言う事か」
途中で合点がいったのか、アスランは呆れ交じりに頷いた。
「今回の遠征、半分は父上の強行策だ。大いに失敗したのならそれはそれで今の体制を挫く一手になる。実際、表向きには国民を納得させる情報を出しても、政界には確かな情報が回るから父上にとってこの結果は中々に厳しい現実だろうね。
そう考えてみると、今回の遠征は僕達にとって良いとこ取りと言えなくもない」
少なくとも、連合の目の前でカゼキリの性能は十分に見せつけたと言って良いだろう。
元より先の防衛戦で痛い思いもしているのだ。容易い国ではない事だけは示している。
その上で、内情的には今回の遠征は失敗。現体制を挫く材料くらいにはなった事を考えると、カガリが戻る準備の1歩となったはずである。
ユウナとしてはご機嫌になる結果だ。
「お前……良いのか? 仮にも父親だって言うのに」
「僕にとってはまずカガリが1番だからね。父上は……まぁ4番目くらいかな」
「俺も人の事言えた義理じゃないが……可哀相に」
信頼するはずの息子が軽んじている等と露と知らぬだろう。僅かながらにアスランはウナトの事が不憫に思えた。
まぁ、父親に反逆するのは自分もとやかく言えた事では無い為、どことなく居心地も悪い気持ちである。
「──とりあえず俺は、モルゲンレーテに戻るよ。いろいろとシモンズ主任には怒られるだろうし」
「不甲斐ないもんね。あれだけ注文つけて調整もしてもらって、この体たらくなんだから」
「言うな! そもそもあんな反応速度任せで選択肢の少ない機体を作ったあいつが悪いんだ! ジャスティスだったら、こんな結果には……」
悔しそうに僅か、アスランは唇を噛む。
ビームサーベルとライフルの一体型兵装ビャクヤと、背部の高出力ビーム砲キョクヤ。武装をこれだけに絞ったシロガネは、近中距離で豊富な選択肢を持っていたジャスティスと比べるとやはり劣る。
劣るという言い方は語弊があるが、アスランからすれば戦うに難しい機体であった。宇宙空間であればドラグーン兵装のジンライも使えただろうが、これはアスランにとって未知の領域に近い。どの道、アスランではシロガネのフルスペックを発揮できなかっただろう。
シロガネは、徹頭徹尾タケル・アマノ専用機なのだ。
「──また後で連絡する。失礼するぞ」
「はいはい。存分に次の機会を待って鍛えておいてね」
「うるさい!」
ユウナへ、と言うよりは恐らく自身に向けた怒りに肩を震わせながら、アスランはその場を離れていくのだった。
極大の閃光が薙ぎ払われる。
都合何度目になるだろうか。沸いた疑問を無意味なものと思考の隅へ追いやり、ネオは専用機のウインダムから眼科の地上を流し見る────わかってはいたが酷い光景であった。
何も残らない、全てを焦土と化す馬鹿げた威力の火砲。本来なら敵艦隊に向けて薙ぎ払う様な威力を持つものを、平然と都市部に放っているのである。被害など見なくてもどうなるかがわかる。
そしてそれを成すは、巨体でありながらホバー移動で速度も十分に進行を続ける巨大兵器。GFAS-X1デストロイだ。
巨大な円盤型フライトユニットにMSの下半身を生やした様な奇妙な出立ち。フライトユニットには主砲となる2門の高エネルギー砲 “アウフプラール・ドライツェーン”や、円周上に配置された熱プラズマ複合砲 “ネフェルテム503”。前方後方に向けて備えられた6連装多目的ミサイルランチャーが4基。そして、フライトユニット上面には陽電子リフレクター。
正に、動く要塞。1発の威力としては核ミサイルやジェネシスに遠く及ばずとも、デストロイ“単騎”の持つ破壊力は戦略兵器と呼んで差し支えない規模のものである。
現に、ユーラシア西区域の都市モスクワとワルシャワが、この兵器によって都市ごと消し飛ばされていた。
「命令とはいえ……こんな事が果たして……」
本当に勝利につながるというのだろうか。口には出さずともよぎる疑念を、ネオは考えずにはいられなかった。
これだけの被害を出しているのだ。相応にプラントも対抗してくるだろう。それこそ、核を使われる様なことに、成りかねないだろうか。
ユニウス条約は、既に
そうなればその先は、2年前の大戦の二の舞を演じる事になるだろう。
それはまたもや、人類破滅への序曲となる気がした。
「大佐、急速接近する熱源を確認」
「MSと断定」
「迎撃に入ります」
通信越しに聞こえる無機質な声。それが伝えてくる意味を理解して、ネオもまた状況を確認した。
急速接近してくる熱源反応────それが示すのは、つい先日ダーダネルスでもまみえた蒼翼のMS。
「ちぃ、フリーダムか!?」
厄介な事実に、ネオは歯噛みしながらもウインダムを翻した。
放たれるアウフプラール・ドライツェーンを躱し、反撃にフリーダムのバラエーナプラズマ収束砲を放つも、それは容易く陽電子リフレクターに防がれる。
しかしそれである程度の接近を果たしたキラは、眼前の巨大兵器が見せる予想以上の巨大さに息を呑んだ。
「くッ! なんて大きさだ、こんなっ!?」
ビームライフル程度では、恐らくまともな損傷を与えられないだろう。それは実弾である腰のクスィフィアスでも同じ。PS装甲の弱点である被弾時の衝撃すら、このサイズにはまるで意味がない。
必然、取れる手段は全てを掻い潜ってサーベルで斬り捨てるか、高出力のバラエーナで撃ち抜くしかない。
しかし、それをさせてくれるほど易しい相手では無かった。
「大佐、敵MSを脅威と断定」
「優先目標を設定します」
「変形しての迎撃許可を」
再びの無機質な声音がネオの元に届いた。
まるで雰囲気が変わらないものの別人と聞き分けられる声が3つ。ラボより回された新たなエクステンデッド3名の声であった。
デストロイは、その搭載火器の総数と火力。そして運用OSの煩雑さから、ザムザザーの試験運用より評価されたチームオペレートシステムを採用している。それも、より高い運用ができる様に、エクステンデッド達に更なる改良を加えてだ。
「許可する。変形後、優先目標であるフリーダムを討て」
「了解しました」
次の瞬間、デストロイは動きを見せた。
円盤型フライトユニットが折れて背部へと稼働。そしてフライトユニットに隠されていた本当の姿を曝け出した。
「デストロイ、MSモード」
「戦闘を継続」
それは紛う事なきMSの姿。
ディザスターの意匠を思わせる悪魔的なヘッドに、胸部には巨大な砲門が3つ。
見知った形状へと変わった事で、その威圧感を更に増して、デストロイは地上へと降り立った。
「なっ、MSに変形した!?」
「アームユニット分離。敵機を捕捉」
「座標を把握、追従します」
キラが慄くのと同時に、デストロイは、腕部のアームユニットを切り離した。
それは大気圏内にも関わらず、自立での飛行を可能とした分離兵装。無論、それを統べるはドラグーンシステム。
そして──
「ダイレクトリンク開始」
瞬間、デストロイに乗るエクステンデッド達は繋がった。
システムを介して行われる外部情報の共有。それぞれが戦場における3次元の座標把握を取り、それを統合。それらを元にドラグーンシステムの制御を行う。
高い空間認識能力を必要とするドラグーン兵装を、分担制御するために考案された、システムを介した脳の直結システムである。
これのためだけに特別な処置を施された3人は、このデストロイに乗せられるためだけに調整されてきた────その成果が、フリーダムに牙を向く。
「なっ!?」
縦横無尽。そして幾重にも重ねられる光条。
デストロイのアームユニットに備えられた5指の砲門から光が放たれ、フリーダムを狙った。
その精度。キラに嘗ての宿敵、プロヴィデンスのドラグーンを思わせる程である。
僅かに、背部のウイングを掠らせた閃光に、キラは一気に危機感を抱いた。
「くぅ、こんのぉおお!!」
種が開いた。
否、命の危機を感じ取りキラはそこへ至らされた、というべきか。
クリアになった思考と感覚で、驟雨の如き光が織りなす檻を抜ける。
「──敵機、反応速度向上。同時に機動性に変化有り」
しかし、この世界で最高峰のパイロットであるキラ・ヤマト。そのSEEDを発現した領域に、デストロイのパイロット達は追従してみせた。
ザムザザーの時とは違い彼らはただのナチュラルではない。このデストロイを操るために調整された、専用のエクステンデッド、それが3人なのだ。
ザムザザーで培われた分担制御で火器管制を2人が担い、機体制御と戦域管制に1人が応じる操縦体制。個では決して届かぬ人類の最高峰に、しかし群であれば手を届かせることは可能。
光の檻を抜け出た先で、フリーダムをミサイルが襲う。
「っ!? うぁああ!!」
必死に、キラはフリーダムを駆った。瞬時に展開した6門の射撃兵装。狙いをまともに付ける暇もなく一斉射。
ギリギリで撃ち落とせたミサイルの爆煙から抜け出てきて、戦慄しながらデストロイを見やった。
「これは……こんな……」
のんびり息をつく暇などない。
再び襲いくるアームユニットからの閃光。それを躱したところへ囲う様に胸部3門の1580mm 複列位相エネルギー砲 スーパースキュラが火を噴いた。
「くっ! このままじゃ!」
ギリギリの所で躱しきる。が、余波の熱が僅かにフリーダムの右肩を融解させ、コクピットには赤い表示が見えていた。
『キラ君!』
そんな状態のキラに、飛び込んでくる通信。瞬間、キラは戦慄した。
視界の隅に入るは、威風堂々たる白亜の戦艦。しかし、それも目の前の脅威を前では酷く頼りなく見える。
「──敵勢力増加」
「優先目標Bに設定」
「排除開始」
「っ!? まずい、マリューさん!」
それを伝えるよりわずかに早く、デストロイの口腔部分より200mmエネルギー砲ツォーンmk2が放たれた。
「っ!? 躱して、ノイマン!」
「つぇええい!!」
反射的に艦体を翻したものの、その精度は高くアークエンジェルの右舷を掠めていく。
視界に入れた瞬間のまるで躊躇の無い攻撃は、やはり彼等の恐怖を煽るものであった。
「いきなりご挨拶ね……やってくれるわ」
「ご安心を、次は掠らせませんって!」
プライドを刺激されたノイマンが軽口をたたく中、クルー達は目つきを変えていく。
油断も隙も晒せない。危険度の高い敵である事を肌身に感じて、彼らは最大限の警戒を見せながら動き出す。
「対艦、対MS戦闘用意」
「ゴッドフリート、バリアント起動。艦尾ミサイル発射管、全門ウォンバット装填。ミサイルは自立制御パターンAにセットし敵巨大兵器の上部に集中させる」
「格納庫より入電! カガリです」
「繋いで」
次々と起動していく兵装を確認している中で、モニターに映し出されるはパイロットスーツを着こんだ、カガリの姿。
『ラミアス艦長、ルージュで出るぞ』
「お願いします。巨大兵器はキラ君に任せて、向かってくる連合のMSを」
「了解だ!」
ナタルが僅かに顔を顰めるが、それを横目にマリューはカガリへと頷いた。
「あぁくそ、こんな事になるならアカツキを持ってくるべきだった」
ルージュのコクピットの中で、マリューとの通信を終えたカガリは独り言ちる。
アカツキであれば……あの完全に守る事だけを念頭に兄が作り上げた機体がここにあれば。この場でどれだけの人々が守れたであろうか。
そう考えると、遣る瀬無い思いで一杯になっていく。
『進路クリア―。ストライクルージュ発進、どうぞ!』
しかし、後悔は一時。ミリアリアの声で、意識を切り換えたカガリは眼前の戦場を見つめる。
鉄火場への出撃は久々だが、やはり彼女自身戦士としての性がどうしても出てくる。
内向的なキラと比べると、カガリはやはり武闘派で好戦的な一面を持っているのだ。
恐怖を抑えつけるべく昂っていく高揚感は、カガリに最適な精神状態を生み出していく。
「カガリ・ユラ・アスハ────ストライクルージュ、発進する!」
防御力に振った少し赤み掛かった装甲へと彩られ、カガリのルージュは戦場へと飛び出した。
「ここに来てアークエンジェルか……全くつくづく俺は運が無いな」
悪態と共に、ネオは現状を鑑みてボナパルトへと通信を繋いだ。
「ボナパルト、随伴機にカオス、ガイア、アビスを出せ。新たに出て来た連中を抑えさせる」
「了解しました大佐。直ぐに出します」
後方で控えていたボナパルトがハッチを開いて動き出すのを確認しながら、ネオはウインダムを駆りフリーダムへと向かわせた。
いくら優勢に事を運んでるとは言っても、相手は伝説的な機体。
そのパイロットも含めて、脅威としては十二分であり、決して侮れるわけはなかった。
懐に入られれば対処に困るのは大型兵器の定めである。デストロイとて例外ではない。無論デストロイは寄せ付けないだけの火器を備えているが、それを掻い潜るだけの実力が彼の自由の翼にはあるだろう。
「うぉおお!!」
ビームサーベルを出力し、ネオのウインダムはフリーダムへと叩きつけた。
「艦長、目標まであと40」
ミネルバ艦橋内に、バート・ハイムの報告の声が挙がり、艦橋には緊張が走った。
既に情報と映像で戦場が状況がどうなっているのかは知り得ている。いよいよその渦中へと飛び込むとなれば彼等の緊張と不安は当然と言えた。
「光学映像、入ります」
メイリンの声に合わせる様に艦橋モニターに映されるデストロイの姿。
思わず、その巨大さと戦場の凄惨さに皆が息を呑んだ。
「前線司令部、応答ありません」
「熱紋状況を確認。戦闘中の機体が……これは、フリーダムです!」
「なんですって!?」
先のダーダネルスでの戦闘での介入が記憶に新しい機体。その名前が出てきたことに、タリアとアーサーは驚きの声を挙げる。
「並びにカオス、ガイア、アビス、ウインダム。それから……オーブ所属のストライクルージュ」
「ストライクルージュ? 何でそんなものが」
「それと、戦域内にアークエンジェルもいます」
再び、艦橋内に走る驚き。
ユニウスセブンでは肩を並べて共闘した英雄艦が、何故かこの場所に居るという。
そして、現在の戦況を鑑みればその目的は一目瞭然。件の巨大兵器の破壊だろう。
「流石は正義の味方の大天使、と言うところかしら。世界の平和の為ならどこにでも駆けつけてくれるみたいね」
「まさか、この間のフリーダムの介入も……?」
「思惑などわからないわ。私達があれに助けられたことが事実だとしてもね」
『艦長』
艦橋内に、格納庫より通信が入る。既に搭乗機にて待機中のMS隊からであった。
『出撃します。状況に手をこまねいていても仕方無いでしょう?』
「えぇ、その通りね──コンディションレッド発令。対MS戦闘用意! MS隊は順次発進よ!」
動きを定めればすぐであった。
コンディションレッドの発令と同時に、メイリンがMS隊の発進シークエンスを開始。
メインハッチにはセイバーが、中央カタパルトにはコアスプレンダーが運ばれていく。
『シン、ヤヨイ』
「はい」
「何でしょうか、グラディス艦長」
そんな、これから発進していくというところで、2人にはタリアより通信が入った。
『既に戦場ではアークエンジェルとフリーダムが巨大兵器と戦闘中よ』
「な、なんであの艦がこんな所に!」
「フリーダム……それにアークエンジェルまで」
『思惑は分からないけど、私達がやる事は変わらないわ。こちらはこちらで、あの巨大兵器を何としても食い止めなければならない。貴方達2人の戦果に期待します』
「了解」
「委細承知です。お任せを」
随分と堅苦しい。そしてどこかこれまでより他人行儀なヤヨイの態度に、タリアは数瞬惑うもそれを受け入れて柔らかな笑みと共に頷いた。
全てを思い出した故に生まれた変化。だが、変わらず彼女にはミネルバの仲間を想う気持ちがある。それはこれまでのヤヨイ・キサラギが積み上げて来た信ずるに値するものだ。
こうしてセイバーに乗って戦う以上、彼女の願いは変わらないだろう。
少しだけ安堵の気配を見せて、タリアは通信を切った。
「シン・アスカ」
「な、何だよ。ヤヨイ」
「貴方を教導したのは誰ですか?」
「はっ? そんなの…………隊長に決まってるだろ」
数秒、サヤを気遣って言うか言うまいかを惑って、シンは答えを返した。
そんなシンの珍しい気遣いなど露知らず、サヤは何ら変化を見せる事なく続けていく。
「そうです。貴方を教え導いたのはお兄様です。そしてそれはサヤも同じ」
「だから、何だって言うんだ?」
「肝に銘じてください。無様を晒す事は私も含めて許されません。必ず敵を撃破し、艦長が望む戦果を挙げます」
シンはハッとして息を呑んだ。
サヤが映る通信モニターでは、コクピットの暗がりの中で煌々と黒曜の瞳が輝いていた。
惹き込まれる様な。吸い込まれる様な。そんな妖しさすら垣間見えそうな気配の中で、サヤは戦士としての性を見せつける。
父と兄から伝えられて受け継いだもの。それが立ち直った彼女の背中を強く押してくれていた。
強大な敵。標的としては十分だろう。高まっていく戦意は、彼女に秘められた才覚を引き出して見せる。
──種が開いた。
抱いた悲しみを。捨てきれぬ後悔を。
自身を鈍らせる全てを胸の内に押さえつけ。サヤ・アマノはそこへと至る。
2度と無様な泣き顔を晒さぬ様に。2度と新たな後悔を生まぬ様に。
己が求むる未来を、手に入れ続ける為に。
「──ヤヨ、イ?」
「シン・アスカ、足手纏いは御免ですよ。死に物狂いでついてきなさい」
不遜な物言い。だがそこに含まれる声音はまるで手を差し伸べる様である。言外に、同じところまで来いと呼び込む様なサヤの声に、シンは惹き込まれていった。
それはまるで、あの日彼に認められたときの様な────安心や幸福に近い感覚。
──種が開いた。
共鳴する様に。共有する様に。
2人は惹かれ合う様にそれへと至る。浸っていく全能感。どこまでも飛べそうな高揚感。互いに軽く笑みを浮かべると、眼前の戦場を見据えた。
「ヤヨイ・キサラギ────セイバー、発進します!」
「シン・アスカ────コアスプレンダー、行きます!」
敷かれた運命に導かれた2人は、悪意蠢く戦場へと飛び出した。
べ、別にサヤがシンに靡いたとかそんなんじゃなくてですね……言うなればSEED領域における感応的な?
タケルとユリス。ラウ、ムウ、キラみたいに感じ合うことで互いに引き上げられてくと言った話。
これがまぁ、議長の言ってた遺伝子的超絶相性のなせる技。
デストロイはとある技術で魔改造。一応SEED系列作品にある話です。
まぁあれだけの火器を備える機体を1人で動かそうなんてのが悪いんですよ。チームオペでエクステンデット使えばこのくらいはね。
次回はちょっと場面変わってラボ攻略班サイド。どうぞお楽しみに。
感想是非に。よろしくお願いします。
ユウナとアスラン…………もしかして仲良い?