一体どれ程の犠牲が、この戦いで出たのだろうか。
突如として現れた、連合の巨大兵器デストロイ。
その埒外な火力と戦闘力に、ザフトの部隊は抗う事敵わず全滅。
現在戦場となっているベルリンの前に、モスクワとワルシャワの都市が既に壊滅していると言うのに…………それでもなお飽き足らず、ベルリンの街をも全て焼き払う攻撃が放たれた。
その圧倒的な攻撃密度。MSが主力となった昨今においても見たことの無い数の一斉掃射は、戦場にいた彼等を恐怖に震わせた。
「右舷スラスター被弾!」
「すいません! 避けきれませんでした!」
アークエンジェル艦橋にて、ノイマンが申し訳なさそうに声を挙げる。
操舵手として意地とプライドを賭けた操艦を見せていたものの、デストロイの射撃はあまりに無造作で苛烈。ミネルバが無傷であったのは運の程度の問題だ。被弾したとてこれは彼のせいではないだろう。が、ノイマンは随分と消沈の気配であった。
「ダメージコントロール。艦の動きに問題は?」
「推力80%に低下。飛べはしますがこれまで通りにはいきません」
「申し訳ない」
「気にするなノイマン。艦長、カガリも戻ります。少し艦を下がらせましょう」
「それが良さそうね。でも──」
カガリが引っ込めば前線に残るはフリーダムのみ。援護も無しにあの馬鹿げたMSとやり合わせる事に、マリューの中で抵抗が生まれた。
しかし、それを察知したかのように艦橋にキラより通信が入る。
『マリューさん、僕なら大丈夫ですから。ここにはサヤも居ますし。ミネルバだって』
「サヤさん? もしかして彼女は」
『はい、戻ったみたいです。だからザフトに居る彼女と連携して、僕達であれを止めます』
「そう……わかったわ。ノイマン、アークエンジェルは少し距離をとります。艦を下がらせて頂戴」
「了解です」
少しだけ嬉しさを見せるキラの声音を聞いて、マリューは素直に彼の進言に頷いた。
どの道機動性に劣る艦では足手纏いになる可能性が高い。陽電子リフレクターによって、遠距離からでは決め手にかける以上、やはり頼れるのはMS。そして、あの馬鹿げた火線を潜り抜けることのできるパイロットだ。
希望を託すように頷いて見せると、キラは再び笑みを見せて通信を切りデストロイへとフリーダムを走らせた。
「がんばって……がんばりなさい、キラ君」
未だキラの胸に残る後悔と贖罪の気持ち。だからこそ、サヤ・アマノの本当の意味での生存が嬉しいのだろう。
戦いに向かう、嘗ては頼りなかった少年の逞しい背中に、マリューは静かなエールを送った。
SEEDによって加速した思考が、シンにの脳裏に先の攻撃で生まれた被害を過らせた。
機動兵器がもたらすにはあり得ない、縦横無尽と言う光の嵐。自身を含め、セイバーやグフ、ミネルバに被害が無かったのは、本当に運が良かったとしか言いようが無い。
だが、その結果地上に刻まれた痕は、凄惨の一言。
「くそぉ、お前等はそうやって! いつもいつも無関係な人間を!!」
オーブ戦役、インド洋の戦い────シンの脳裏には再びトラウマと言える記憶が蘇る。
「シン、闇雲に出てはいけません! ちぃ!」
吶喊していくインパルスを狙うのは、デストロイのアームユニットドラグーン。放たれる光条を、しかしインパルスは予想だにしない機動性を見せて掻い潜ったて見せる。
「なっ、あれを抜けるのですか!?」
それはまるで通り抜けると言った様で、サヤは思わず目を見張った。危険だと……無理だとした己の予測を上回る回避起動。
しかし、これこそが恐らく彼の真骨頂。反応速度に優れるのはデータ上で既に示されており、更にインド洋で暴走した折には、SEEDを深めたタケル・アマノとエスペラントの猛攻を限界まで凌いで見せた。ともすれば、攻めきれず先に意識の限界が来て、タケルが落ちる可能性すらあったのだ。
シン・アスカの危機回避能力は、タケルが予見した様にユリス・ラングベルトに匹敵。あるいは上回る可能性すらある。
「彼を援護するよ、サヤ!」
「はっ、キラ・ヤマト!? え、えぇ……わかっています!」
MCSによって補給を済ませ万全となったフリーダムは、フルバーストでインパルスを狙うミサイルを撃ち落とす。
サヤも倣い後続で突撃を敢行し、ビームライフルを放ちアームユニットを引き付けていった。
十分な援護に背中を押されて、シンのインパルスは遂にデストロイに手を届かせる距離まで詰めて見せる。
「コクピット────これで!!」
翻される光の刃。狙うは兵装の位置からコクピットがあると思われる箇所、胸部スーパースキュラの下部。
パイロットを直接狙ったインパルスのサーベルは、しかし僅かに届かず。デストロイの装甲表面を裂くだけに止まってしまう。
「ちっ、浅い──なら!」
「ダメです、下がってください! シン!」
直後、インパルスには頭上よりデストロイ頭部のツォーンが放たれた。頭部の小さな口径とは言え、それはデストロイ基準。通常MSの携行火器とは比べるべくも無い巨大な閃光が、インパルスに飛来する。
「くっ、そぉ!!」
たまらず、シンはインパルスを下がらせる。再び射程外へと押し戻されシンは唇を噛んだ。
「あれは…………子供?」
切り裂かれたコクピット付近の装甲。そこから覗けるコクピット内部を拡大してシンは驚きの声を挙げる。
デストロイの乗っているのは特殊なスーツとヘッドギアで顔こそ見えないものの背格好は明らかにまだ幼いと言える子供。それも2人も乗っていた。
「なんで……なんであんな子供が」
その見た目は嘗て在りし頃の妹と、そう変わらぬ年頃だという事が予見される。
なぜあんな子供達がこんな事を、とシンの戦意は削がれてしまった。
「何を呆けているのですか、シン!」
「はっ!?」
デストロイ本体へと接続されたアームユニットと頭部のツォーンが、インパルスを狙って放たれようとしていた。
寸での所で回避を間に合わせると、シンはさらにインパルスを下がらせてサヤのセイバーと合流する。
「ごめん、ヤヨイ。助かった」
「気を抜かないでください。今貴方に落ちてもらっては困ります。あれを仕留めるには今ここにいる全員の力が必要なのですから」
「ここにいる全員って……」
「シン、回線421です。開いてください」
「えっ、どう言う──」
「問答は後です」
少々険しいサヤの剣幕に押されてシンは言われた通り回線を開いた。すると、インパルスのコクピットには、シンの見知らぬ誰かが映し出される。
「シン、名前は伏せますがフリーダムのパイロットです」
「え、えぇ? なんでそんな」
「協力を取り付けました。今は味方ですのでそのつもりで」
「あの兵器を破壊するために協力させてもらうよ」
「挨拶も後にしてください。シン、私とフリーダムで露を払います。シンは今一度あれのコクピットへ攻撃を叩き込む事に注力してください────良いですね、ヴェステンフルス隊長?」
『好きにやれ。既に艦長にも話を通しておいた。こっちも援護の準備は万端だ』
ハイネからの返事にシンがミネルバの状況を見れば、艦載砲の即応態勢を済ませて後方に鎮座していた。レイのザクが甲板でオルトロスを構えて陣取り、ハイネのグフは艦の前方で管制とミサイルの迎撃に回る姿勢を見せている。
「──わかった」
「貴方の回避能力が頼みの綱です。どれだけ私達が頑張ろうともあの攻撃範囲です。時間をかければミネルバやアークエンジェルの危険性が高まります」
「フリーダムは射撃兵装が豊富だ。牽制は任せて」
見知らぬパイロット────ではあるはずだが、ヘルメット越しで覗く顔と声にシンは既視感を覚えた。
割と最近で聞いた覚え、見た覚えのある気がしたが深く思考を回す前に彼等の間を裂くように、デストロイより光条が放たれる。
SEEDを発現している彼等はそれを難なくかわして散開。各々が成すべきことを見据えてデストロイへと目を向けた。
コクピットは覗けるが、それだけ。システム異常でも起きてなければ被弾としては皆無に等しいだろう。
それはつまり、未だフルスペックの戦いが可能と言うこと。先の全てを灰燼と帰す攻撃力を備えたままである。
大戦の英雄。伝説となった自由の翼を味方に迎えたところで油断など微塵もできる状況では無い。
「次の攻撃が来たら、私が先に仕掛けます!」
「気をつけてね、サヤ」
「要らぬ心配です。貴方はシンの援護だけを考えてください」
「う、うん、わかったよ」
「無茶するなよヤヨイ。俺だってすぐに続くからな」
「期待しますよ、シン・アスカ」
最大火力。そして最大範囲を持つアウフプラール・ドライツェーンが彼等を襲う。
それを再び機体を翻して躱すと、サヤは即座にセイバーを突撃させた。
「さぁ、参りましょう!!」
続く様にフリーダムは2本のビームライフルを持って切り離されるアームユニットを牽制。
シンのインパルスは、セイバーとは別方向より接近を目論み突撃。
破壊の悪魔を前に、戦士たちは手を取り合って挑んでいくのだった。
「クソっ! 全く頭がおかしくなりそうだ」
死屍累々。仕方のない事とは言え、研究員から被験体まで全てが物言わぬ骸に変わったラボで、タケルは忌々しそうに悪態をついた。
視線を巡らせれば乱雑に横たわる、まだまだ幼さが残る少年少女の死体。これだけでも本当に自身を保つのが苦しいと言うのに、タケルが抱えることは目の前の光景だけではない。
「連合っていうのは……本当に……」
鬱屈とした感情が蓄積していく。
ゆりかごで眠るステラたちの調整が終わるまでに、少しでも彼等の身体を理解しようとラボ内の資料を読み漁って、そしてタケルは僅かに後悔した。
必要な能力を備えるために施される処置の数々。未だ行われた投薬による強化は理解が及んでいない部分が多いが、少なくとも外科的処置については概ね理解できた。無論理解できた事が良いことばかりではないが。
苦痛や恐怖への耐性。そのために必要な神経系への鈍化。肉体の成長を強化促進するためのホルモン分泌への操作。それらの為に徹底的に脳を弄くり回している。
無論、脳は未だ人類が解明しきれていない人間の器官だ。SEEDもまた、それに類する不可解な素養。
外科的に脳への処置を施したとて必ずしも成功する様な話ではなく、記録には散々失敗の跡が残されていた。
それだけでも、幾つもの被験体が犠牲になっていたのだ。
その上で更に、命令に従わせるための洗脳教育に投薬処理。そして、人として扱われない訓練。
惨い────そうタケルが思っても、彼等にはそれを惨いと思う機能すら奪われている。
無惨に横たわる被験体を見れば、その事実が余計にタケルの脳裏に過ぎっていった。
「絶対に……ステラ達は助けて見せる」
命を救われた大恩。ユリスとの契約という理由ではあったが、今のタケルにそれは些細な理由であった。
同じ被験体として生を受けた自分やユリスよりも、本当に惨い事実の上に成り立って今を生きる彼等を見捨てる事など、タケルにできるはずもない
メディカルルームに戻ったタケルは、ステラ達の様子を診ていたユリスと合流した。
「ユリス、ステラ達は?」
「あと1時間ってところ。問題は無し。資料は確認できたの、兄さん?」
「胸糞悪い記録ばかりだったけど、一応。必要そうな資料は全部選定してまとめておいたから、ステラ達が起きたら小型艇に運ばせておいてくれ。僕はラボ内の機材を全部見てまわって使えそうな物をリスト化していくから、終わったらディザスターで艦内に積み込みをお願い」
「良いけど……どうしたのよ兄さん。怖いくらいにやる気出しちゃって」
「いや、何でもない。少し感情の整理が追いつかないだけだから」
怖いくらいにやる気……と言うよりは、単純にその気配が怒りや憎しみといった黒い感情に染められてる様で、ユリスは疑問符を浮かべた。
「もしかして、だけど。私達がどう言う存在かを知って同情してるつもり?」
「そんなつもりは…………」
「前にも言ったわね。吐き気がするからやめてって。処置が少ない私はともかく、ステラ達も含めて他は同情される様な存在じゃないわ」
「何をふざけたことを」
「ふざけてるのは兄さんの方よ。被験体は皆辛いとも悲しいとも思っていない。感情を備えているあの子達ですら、境遇に不満を持っちゃいないのよ。兄さんのそれは独り善がりの偽善でしかないわ」
「元は戦争孤児だと言うじゃないか。本来なら普通に生きる事ができたはずなんだ」
「普通って何? 今のあの子達の普通が
ハッとした様に、タケルは俯く。
自身の見識がいかに浅かったか。それをタケルは痛感させられていた。元より自身の境遇もまた、随分と普通からはかけ離れた酷いものであったが故に、知らず悲劇を背負って生まれた自分というフィルターをかけていた。
自分と比べてですら生温い。そんな悪意の塊がここにはゴロゴロ存在している。2年前のユリスとラウの気持ちが、今になってタケルは理解ができた気がしたのだ。
「後悔でもしてるの? あの時メンデルで、ラウの手を取らなかった事を」
「そんな事はない。この世界には大切なものがたくさん在る。それは今も変わらない。あの選択を間違いなどと思う事は──」
「だったらそんな顔しないでくれるかしら。じゃなきゃ、死んだラウが浮かばれないわ」
「────わかって、いるさ」
こんなふざけた事は許せない。そう思う事が烏滸がましいのだとユリスに諭され、タケルは鬱屈して積み上がっていた感情を御し切った。
何を騒ごうが、今が変わるわけではない。変わるのは常に……変えられるのは常に
「ごめん、色々と余計な事を考えちゃって」
「めんどくさいわね本当。今やる事だけ見据えなさいよ。女々しいったらありゃしないんだから」
「そういう君は逆に男らしいと言うか…………君は君でもう少しできる事を見つけて動いてくれないか?」
「無茶言わないでくれる? 私もまた兵器として作られてきた身。兄さんみたいに行儀よくお勉強なんてしてきてないのよ。壊すことしか知らないわ」
「はぁ〜本当連合ってやつはホント……使えないなぁ、もう!」
大仕事となりそうな現状に援軍が望むるべくもない事を知って、タケルは思わず愚かな者達へと呪詛を吐くのだった。
閃光がいくつも駆け抜ける中、シンはインパルスを駆った。
都合6度目の接近を目論み、そしてまたも巨大な閃光に阻まれ失敗する。
フリーダムが飛び交うアームユニットを抑え、セイバーが接近と離脱を繰り返し注意を引く。本命であるインパルスが接近を狙うも、デストロイの兵装はフリーダムとセイバーが引きつけても余りあるほどで、簡単にはいかない。
特に胸部のスキュラとアウフプラール・ドライツェーンの、超高出力火砲が厄介であった。
その威力と範囲、射程も脅威ではあるが、何よりも射線をずらして薙ぎ払う事ができるのだ。狙われれば背後にいるミネルバやアークエンジェルを気遣って回避するのに相当苦労するし、ミサイルなどと違い潜り抜ける様な回避はできない。接近と回避の両立はできず、躱し切るだけで手一杯な動きになってしまう。
そうなれば、次なる手が放たれ接近を阻んでくる。
「クソ! このままじゃ」
「諦めてはなりません! シン、もう一度です!」
「わかってる!」
7度目の接近を試みるシンを援護するべく、サヤはセイバーを走らせデストロイの直上を取った。放つのはビームライフルを数発。それで陽電子リフレクターを展開させれば、対面からフリーダムがバラエーナで牽制。陽電子リフレクターを備えるアームユニットに防御に回らせてデストロイの攻撃リソースを防御に振らせていく。
「くっ、これ以上はエネルギーが……ですが、補給の余裕など」
フリーダム同様。ここまでに続く攻防の中でセイバーもまた多くの攻撃を放ちデストロイの注意を引きつけていた。当然ながらそのエネルギーの消費は激しい。
エネルギーゲージは残り2割。射撃兵装はアムフォルタスプラズマ収束砲どころかフォルティスビーム砲すら、撃つには躊躇する残量である。
「ヤヨイ! お前もシンと仕留めに掛かれ!」
「なっ、ハイネ・ヴェステンフルス! 何故前に出てきたのですか。ミネルバは──」
状況を確認して、サヤは目を見開いた。
後方を見ればミネルバが艦主砲タンホイザーを展開。更に艦載砲の全てをデストロイへと向けて前進して来ていた。
「何のつもりで……」
「ミネルバの一斉掃射で奴にリソースを割かせる。フリーダム、右翼に回り込め! 俺は左翼から攻める。ヤヨイはシンと共に足下から接近して何としてもこれで仕留めろ、良いな!」
徐々に劣勢と見たハイネとタリアによる捨て身の作戦。
MSと比較にならない火力。艦船であるミネルバであれば同等の脅威を引き出せる。
艦載砲のフル稼働でデストロイの注意を引き、ミネルバに意識が向いたその間隙を狙ってハイネとキラは接近。タイミングが遅ければミネルバは落とされるだろう。早ければ迎撃にミネルバの艦載砲の巻き添えを食う。シビアな動きを要求される。
そうしてデストロイの対応力を全てミネルバと彼等に宛がわせた後、シンとサヤの2段構えで仕留めるのだ。
「くっ、何という無茶を……了解しました! フリーダム、聞こえていましたか!」
「了解! 今度こそ、仕留めよう!」
キラはフリーダムをデストロイ右翼へと走らせる。同時、無用の長物となっていたクスィフィアスでデストロイの足元を破砕。僅かにその姿勢を崩して猶予を生んだ。
「アーサー、タイミングを任せる!」
「了解です艦長! タンホイザーの照射5秒後に全砲門で対艦攻撃を仕掛ける」
タリアの声。アーサーの指示が、ミネルバ艦橋を一挙に緊張へと追いやっていった。
操舵のマリクはいつでも回避軌道を取れる様にと瞬きも忘れてモニターを睨む。
動きがあればすぐに報告しようとメイリンとバートはデストロイの僅かな動きさえ見逃さないように拾えるデータに目を凝らした。
「────タンホイザー、てぇ!」
アーサーの合図で放たれる紅蓮を混じらせた閃光。
ユニウスセブンすら砕く陽電子砲がデストロイへと放たれた。
当然ながらその動きを察知していたデストロイは陽電子リフレクターを展開。全てを破壊するはずの光の奔流を受け止めて見せる。
光の矛と盾のぶつかり合いが、大きな衝撃となって周囲に余波を発生させた。これだけでも都市部にとっては壊滅的な被害であろう。市街地を巻き込むような攻撃は本来軍人としてはナンセンス。
しかし、事ここに至ってそんな事を言っている余裕はない。いまここでデストロイを仕留められなければどの道市街地は殲滅され更なる被害を無尽蔵に生み続けるだろう。
「全砲門開け、てぇ!」
余波が消えるその刹那。ミネルバが更なる攻撃を敢行。トリスタン、イゾルデ、各種ミサイル全てを動員した艦砲射撃。威力こそ低くとも、1点に収束しないデストロイへの飽和攻撃に、仕方なくと言う様にデストロイはアームユニットを切り離し陽電子リフレクターによる防御に回らせた。
「ここだ!」
「仕留めるぞ!」
防御に回ったその瞬間を、フリーダムとグフが吶喊。
ビームサーベルとテンペストソードを携え、デストロイを仕留めに掛かる。
「────ネフェルテムで迎撃」
背部のフライトユニットから、幾つもの光が放たれる。円周上に備えられたそれは十分な射角を持っており、半分ずつが左右から接近する両機へと向けられた。
更に、追撃に放たれていた6連装のミサイルが降り注ぐ。SEEDを発現していたキラのフリーダムはギリギリで回避して見せるもハイネのグフは被弾。シールドに2発3発と叩き込まれたミサイルに遂には地上へと叩き落されてしまう。
「くっ、これ以上──」
「やらせるもんかああ!」
疾走する白と赤。お膳立てされた勝利へと続く道をインパルスとセイバーが駆け抜ける。
「シン、怖気づかないで下さい!」
「誰が!」
前に出るインパルス。その背後につくセイバー。
最後のあがきにと胸部のスーパースキュラに光が集い始めるが、その頃には既に2機は懐へと飛び込んでいた。
「これで!」
インパルスが駆け抜け様に巨体を支える脚部をビームサーベルで切り付ける。片側の支えが僅かに崩れ、デストロイが傾いた。
「終いです!」
インパルスが裂いたコクピット付近の装甲。そこを目掛けて、セイバーはビームサーベルを突き刺した。
「やったか!」
「手応えありです!」
インパルスとセイバーがその場を離れると、紫電を走らせ、デストロイが動きを失っていく。
膝を折り、そして支えを失い。徐々にデストロイは空を仰ぎ見る様に倒れていくかに見えた。
「はっ、まずい!」
瞬間、それを察知できたのはキラだけであった。
インパルスによって切り裂かれ開かれていた装甲。そこからシンが覗けたパイロットは2人まで。
コクピットを潰せたかに見えたセイバーのサーベルは、運悪く火器管制を担う最後の一人を仕留めきれないでいた。
「──目標は、殲滅」
もはやできる事は少ない。しかし、デストロイだからこそできる事がある。
胸部のスキュラと頭部のツォーンに再び光が宿っていた。
その射線は、徐々に支えを失い倒れ行く事でアークエンジェルを巻き込もうとしていたのだ。
「させるかぁああ!!」
キラの脳裏に、あの艦に居る大切な人達が過る。
カガリ、マリュー、ナタルにミリアリア。馴染みの戦友たちの事を思えば、キラに選択の余地は無かった。
今直ぐにでも光を吐き出しそうな砲門に向かってフリーダムが翔けた。
引き抜かれるビームサーベル。限界まで振り絞った速度で接近し、胸部のスキュラの砲口へと突き立てる。
「──それ、でも」
爆発を起こしたスキュラの砲門。その影響がコクピットにも及ぶが、死に体となって尚、命令に服すのが彼等エクステンデッド。
直後、頭部を駆動させツォーンが放たれると、フリーダムの頭部を消し飛ばした。
「ぐぅっ! うあああ!」
衝撃によろめく中フリーダムはもう1本のサーベルを出力。
更にスキュラの砲門を1つ潰す────だが、反撃の手はそこまでであった。
「スキュラ────発射」
爆発の衝撃でデストロイが傾き始める中、最後に残ったスキュラが放たれた。
フリーダムの右半身を食い破る様に放たれたスキュラは、機体に合わせてそのまま射線を上方へと向けて流れていく。
「高熱源体接近!」
「回避!!」
「ダメです、間に合いません!!」
キラの奮闘もむなしく、アークエンジェルの右舷を、スキュラの光が抉り取っていく。
デストロイはそのまま倒れ込んでいき、最後の吐息の様に空へと向けて吐き出されたスキュラが消えると、完全に沈黙するのだった。
こうして、巨大兵器デストロイとの戦いは幕を閉じる。
世界に重く深い傷を、幾つも刻み付けて。
難しかったなぁ、ホント。
インド洋あたりから一回の戦闘で大分話数使う様になった気がする。
と言うか以前にも言ったけどSEED編と違ってオリジナルな部分が多いから描く事が明らかに多いんですよね。
どの戦闘だってもう原作通りじゃないからしっかり描写しないといけないし、キャラクターそれぞれの事もしっかり描かなきゃいけないし。
本当にいつまでも終わらない気がします。そんな拙作ですがお楽しみいただければ幸いです。
感想をどうぞ、よろしくお願いいたします。作者に元気とやる気をください。
いやまぁ、最近更新頻度上がってますけどね、多分。楽しくなってるから。
でも感想もらえると嬉しさも出てくるから、ね。
よろしくお願いします。