機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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いよいよ、いよいよ、いよいよ……


PHASE-63 デスティニー

 

 

 

 ギルバート・デュランダルによるロゴス打倒宣言と、そのメンバーの公表。

 民衆の目が公表されたロゴスメンバーへと向かうのは当然の帰結であり、世界各地で反ロゴスの運動が勃発。暴徒と化した民衆と治安維持組織とのぶつかり合いは世界のどこででも起きる様な事態となっていた。

 

 

「ロード・ジブリール!!」

「ブルーコスモスの親玉だ、引き摺りだせ!」

「戦争の根源に鉄槌を!」

 

 

 彼、ロード・ジブリールが住まうとされる邸宅にも暴徒は集まり、過激な抗議活動が行われていた。

 

「くそっ! デュランダル……あの青二才が!」

 

 完全に予想外の事態にジブリールは狼狽えていた。

 既に鎮圧部隊は呼んでいる。程なくして暴徒たちは鎮圧されるだろう。彼の周囲に静寂が戻るのは時間の問題だ。

 だが、世界は違う。

 

 既に扇動の矢は放たれた。今から何を言おうとも、民衆の認識と熱は覆らない。

 デュランダルの宣言の中に流れた映像では、アーモリーワンで破壊活動を行うカオス、ガイア、アビスと、併せてベルリンを蹂躙したデストロイに随伴する3機が映し出されていたのだ。

 プラントに敵対する勢力とユーラシア西地域を焼き払った勢力は同一。その事実と彼の宣言を見れば、その黒幕がロゴスへと向かうのは避けられない。事実故に避けようがない。

 

 彼等は今、世界を敵に回していた。

 

「くっ、ヘブンズベースに避難する! シャトルを用意させろ!」

 

 邸宅の従者に言いつけると、ジブリールはモニター室で世界の状況を見つめた。

 

「このままではすまさんぞ…………デュランダルめが!」

 

 激昂した彼の瞳は、妖しき狂気に揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 一方。オーブ首長国連邦もまた、比較的穏やかでありながらも騒ぎは起こっていた。

 

「いやー、ギルバート・デュランダルには感謝だね、アレックス」

「バカなことを言うな。一方的な宣言と公表……お陰で国内は大騒ぎだ」

 

 

 セイランの屋敷……ではなく、モルゲンレーテの地下ドックにて、ユウナとアレックスは顔を会わせていた。

 最近はもっぱらここが彼等の会合場所だ。

 アスランはモルゲンレーテのスタッフとして所属しており、ユウナは現在国防部分を取り纏める位置にいる。モルゲンレーテへの訪問は公務としては取り付けやすい立場に居た。

 

「大騒ぎとは言っても世界に比べればマシだよ。オーブ国民の穏やかさには頭が下がるね」

 

 大騒ぎと言っても、それはメディアや政界の話。

 国民はまだ、その真偽の程を測っている感じだ。

 公表されたロゴスメンバーの中には、オーブの首長も混じっていた事で、反発の声はそれなりだが、暴徒と化すまではいっていない。

 偏に中立故の国民性と言う所か。基本的に対立構造を好まない人間が暮らしている事が伺えた。

 

「わかっているのか? 俺達が掴めていなかった情報を、デュランダル議長が掴んでいた事の意味が」

「わかってるよ。オーブの内情は筒抜けという証拠だ。僕達ですら掴んでない事実を知ってるという事は、向こうの諜報機関はこっちよりずっと上手だという事」

 

 平和な国故に……平和な国を目指していたが故に。

 対立と争いを前提とした諜報機関の練度が低い。

 カガリの代表退陣への運びや、彼女自身の命を狙った襲撃など、内部工作への脆弱性は明らかであった。

 先の大戦から、国防戦力の充実に力を割きすぎていた所以であろう。

 

「だけど、これはチャンスだ。公表してもらえたのなら情報を洗える。世界に晒された以上、彼等に拒否権は無い。叩けばいくらでも埃が出てくるだろうね」

「だったら暫くはお前の護衛に回らせてもらうぞ。こうなった以上こちらも大っぴらに動くんだろう? 今お前に何かあっては困る」

「意外だね。僕は居なくなってもらった方が、君にとっては嬉しいんじゃないの?」

「バカを言うな。俺はそんな事で、お前に勝ちたくはない」

「甘いなぁ。なりふり構わずで生きられないのは、損だと思うけどね。とりあえず、まずは一致団結しようか。カガリの復帰を希望する者達とのコンタクトは?」

「ついている。ホムラ元代表のお陰でな」

「上々。それじゃここからは反撃の時間といこう」

 

 オーブでも静かに反抗の声が挙がり始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニーメンデルを離れ、ユリス一行はシャトルでとある場所へと向かっていた。

 

 正直な所頼みの綱であったメンデルが、コロニーとしての機能を失っており、尚且つ研究設備やその資料までもほとんどが破棄されているという事実は彼等の心を折りかけた。

 見つかったのは、タケルが手に取った研究員の誰かが遺したノートのみ。

 エクステンデッドの治療は振り出しに戻ったのである。

 

 そんな折、まさかとなったマーチン・ダコスタとの邂逅。

 一行は彼の案内で、本物のラクス・クラインが潜伏しているファクトリーと呼ばれる資源衛星拠点へと向かう運びとなっていた。

 

「正直、兄さんの顔の広さに感謝ね……ついでに運の良さにも。まさかドンピシャでメンデルで遭遇するとか、どんな運命よ」

「そんな事より、世界がどうなってるかだ。いきなり議長がロゴスのメンバーを公表? 今情勢はどうなってるの?」

「私とメイリン・ホークに聞くよりは今から向かうとこで聞いた方が早いんじゃないの? そっちは組織だって動いてる連中なんでしょ?」

 

 静かに振り返り、同乗していたダコスタへとユリスは目を向けた。

 しかし、声を掛けられたダコスタは呆けて、まるで心ここにあらずである。

 それもそのはず。彼の目の前には全くそっくりな顔をしたタケルとユリスが言い合う光景が在るのだから。

 

「あ、あの~」

「ダコスタさん、どうしましたか?」

「なんなのよ。早く答えなさい」

「お二人は一体……」

 

 恐る恐ると口にしたダコスタの問いに、タケルとユリスは閉口。1秒、2秒と間を取ってから同時に返した。

 

「敵です」

「兄妹よ」

「えっ、はっ、ん?」

 

 言ってることが理解できなかったか。それとも完全に被っていてよく聞こえなかったか。恐らくは後者だ。ダコスタは再び混乱人陥る。

 

「あはは……やっぱり仲良いじゃないかな、この2人……」

 

 メイリンは1人、どこか既視感のあるやり取りに肩を竦めながら呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジブラルタルにて待機となっていたミネルバに、基地司令部より一報が届く。

 

 ヤヨイ・キサラギ、シン・アスカ両名への基地工廠への出頭要請である。

 そうして2人は、ジブラルタル基地より遣わされた案内に連れられ、基地の工廠へと赴いた。

 

 暗がりの格納庫の中へと通されれば、連絡通路の先で彼が待っているのが見える。

 

 先日、声明をだしたプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルである。

 

「失礼します! ヤヨイ・キサラギ、シン・アスカの2名を連れて参りました」

「あぁ、ご苦労だったね。下がってくれ」

 

 案内の者を下がらせると、いつも通りの柔和な笑みを浮かべながらデュランダルは2人を迎え入れる様に諸手を広げた。

 

「よく来てくれたね。2人とも」

「お久しぶりです、議長」

「先日の声明、俺……じゃなくて、自分も感動しました」

 

 淡泊なサヤと、少しだけ声の上擦っているシン。

 対称的な反応ではあるが、デュランダルに気にする様子は無かった。

 

「いやありがとう。私も君達の活躍は良く聞いている。色々とあったが、ここまでよく頑張ってくれた」

「つい先日も敵を取り逃がしてしまったばかりです。過分なお言葉となります」

「そう固い事言うなよヤヨイ。その事があっても、議長の御言葉は変わらない」

「──ミゲル」

 

 暗がりの中、デュランダルの後ろより、1組の男女が現れる。

 1人はプラントの歌姫、ラクス・クラインを扮するミーア・キャンベル。もう1人はその護衛を任命されている特務隊のミゲル・アイマンであった。

 

「ふっ、彼の言う通りだ。そんな事で君達への評価は変わらないさ。アーモリーワンから始まり、ユニウスセブン。ユーラシア西地域、そしてベルリン。君達の活躍は、遠く離れたプラント本国でも持ち切りの話題となっている位だ」

「ほ、本当ですか!」

「あぁ。特に君達2人の活躍は素晴らしい。ベルリンでの巨大兵器との戦闘は、あの映像と共にプラント市民の心を奮わせたものだ」

 

 僅かに、サヤは眉根を寄せた。

 甚だ納得のいかない話である。少なくとも現場で戦った当事者は、あの場で何が起こったのかを知っている────デストロイを仕留めたのは、キラ・ヤマトとフリーダムだ。

 あの戦いで称賛をされる謂れは無い。

 

「議長、余り無駄話をしている時間もありませんわ。次の会談の予定が控えております」

「おっと、そうだったね。全く忙しい限りだ────君達も知っての通り、事態を見かねて遂に私はとんでもない事を始めてしまった」

「い、いえ! とんでもない何てそんな……」

「気にしなくて良いさシン・アスカ。自分でもわかっている事だ。お陰で今ジブラルタルには、次々とロゴス打倒の部隊が集結している──所属の垣根を越えてね」

 

 先日の声明を受けて。同盟関係にあるユーラシア連邦を筆頭に、地球圏で軍事力を持つ多くの国家が、打倒ロゴスを掲げてここジブラルタルに集結しようとしていた。

 彼はそんな集結した各勢力の指令達との顔合わせに引っ張りだこな状況なのである。

 

「お陰で基地も私も一杯一杯という訳だ。

 というわけで、まずは見てくれたまえ。先程から気になって仕方ないだろう?」

 

 言ってデュランダルが合図を送ると、薄暗い格納庫がライトアップされ、そこに鎮座していたMSを露わにした。

 灰色の装甲──PS装甲部材に包まれた、恐らくは最新鋭と思われる機体が、そこにはあった。

 

「ZGMF-X42S“デスティニー”。それからZGMF-X666S“レジェンド”。どちらも従来のものをはるかに上回る性能を持った、最新鋭の機体だ。詳細は後程確認してもらうが、恐らくはこれがこれからの戦いの主力となるだろう」

「デスティニー……」

「レジェンド、ですか」

 

 興奮も確かなシンと対称的に、サヤは随分と大仰な名前だと胸の内で笑った。

 少し前に、ハイネが連合のネーミングセンスは酷いもんだとなじったが、ザフトもどっこいだと思った。

 嘗ては自由と正義。今度は運命と伝説ときたものだ。

 

 最愛の兄が作り上げたアカツキやシロガネ、カゼキリの方が、サヤには余程好ましい気がした。

 ここら辺はお国柄、という事なのかもしれない。

 

「デスティニーは火力、防御、機動性、そして信頼性。どの点においてもインパルスを凌ぐ最強のMSと言えるだろう────シン、君の機体として開発し調整されている」

「えっ、俺に……ですか!?」

「最新のインパルスの戦闘データを参考にしてね」

 

 穏やかな声音で告げられる事実に、シンの胸は躍った。

 最新鋭の機体。インパルスでの戦闘を評価されて任されるとなれば、それはこれまでの戦いを見止められたという事。

 抱き続けて来た疑問────強くなれた事への証明である。

 その事実に、シンの心はどうしようもなく踊った。

 

「インパルスでは機体の限界も見えていた事だろう。このデスティニーなら機体の限界にイラつく事も無い筈だ。私が保証しよう」

「はい! ありがとうございます!」

 

 聳えて立つデスティニーに視線をくぎ付けにされながら、シンは心からの礼を述べた。

 

「さて、一方でレジェンドだが、こちらは量子インターフェースの改良により誰でも操作できるようになった、新世代のドラグーンシステムを搭載している……実に野心的な機体でね。ヤヨイ・キサラギ、君にはこのレジェンドを任せる事になるのだが、どうかな?」

 

 ドクンと、表には出さずサヤの胸の内で黒い感情が鎌首をもたげ始める。

 ドラグーンシステム────仮に新世代となり誰でも使える様となったとしても、これまで機動戦を主軸としていた汎用機のセイバーを乗っていた彼女に宛がう機体では無いだろう。

 必然、そこにはある人物の想定が見え隠れしてくる。

 

「私は君ならば十分に使いこなせると思って──」

「お為ごかしはやめて下さい」

 

 鋭い視線を見せつけて、サヤはギルバートデュランダルを睨みつけた。

 一際、その場の空気が重くなる。若干16歳の少女が見せるその気配であるが、それでも血筋が保証する威圧感は本物。鬼才ユウキ・アマノの血を引く少女はその場の誰をも威圧する空気を纏っていた。

 

「私なら使いこなせる? 違うでしょう。この機体は彼、クルース・ラウラをパイロットとして開発していた筈です。そうでなければ、ドラグーンシステムなど、無用の長物でしかない。どれだけ扱う敷居を下げようとも、十全に使いこなせる人間は一握りしか居ません」

 

 最新鋭の機体だ。十全に使いこなせるものに託したいだろう。

 ドラグーンシステムを扱う。それも最高レベルで扱えるパイロットとなれば、その想定は間違いなくヤヨイ・キサラギではなくクルース・ラウラ。

 ORB-00シロガネを駆り、ジンライとビャクライの二つのドラグーン兵装を使いこなした、タケル・アマノに向けた機体である事は明白であった。

 

「──あぁ、確かにそうだ。これは元々彼の為に開発されていたものだよ」

 

 また一つ。サヤの胸で黒い感情が灯されていく。

 己を利用し、兄を巻き込み、その先で更に……最愛の兄を利用する腹積もりであったのだ────この男は。

 対面で伺っていたミゲルは、サヤの気配に総毛立って身を震わせた。

 

「聞かせて下さい、デュランダル議長────何故、お兄様を巻き込んだのですか?」

 

 掛けられた言葉に。その物言いに……デュランダルは目の前の少女が、ヤヨイ・キサラギではなく全てを取り戻したサヤ・アマノだという事を理解した。

 故に、この威圧感。小柄な少女でありながら周囲の全てを睥睨する黒曜の瞳は、彼ですらも僅かに身を竦ませるものであった。

 

「何故、か。それは無論君の為だ。私は巻き込んだのではない。彼に頼られたに過ぎない」

「聞く必要は無かったでしょう。他国の軍人でしかなかったお兄様をザフトに入隊させて、更には重用するなど……リスク以外に何が在るというのです」

「それは他ならぬ君達が証明したはずだ。彼の指揮下に入った事でミネルバは期待された戦果を十二分に挙げた。これは彼にしかできなかった事だ。彼の活躍を見込めば、当然の待遇だったと私は考えている」

「おいヤヨイ! やめろって」

「何喰って掛かってんだバカ野郎」

 

 思わず、気圧されていたシンとミゲルは止めに入った。

 一兵士が、最高権力者に楯突く。嘗てミネルバでその愚を侵したシンの事を考えれば、今の彼女がどれほど危険な橋を渡ろうとしているかが分かるだろう。ともすれば命の危険すらある。

 それ程までに彼女が冷静さを欠いてしまっているのはやはり、ギルバート・デュランダルが兄を更に利用としていた事実を垣間見たからであった。

 

 必死な様子で抑えてくるシンとミゲルに、漸くサヤは振り切れそうであった気持ちを落ち着かせていく。

 

「──申し訳ありません。感情的になり過ぎました」

「いや、それも仕方のない事だろう。君と彼の関係性は私も聞かされている。大切な家族だと……あの時私の前に表れた彼の表情を見れば、君達の絆がどれ程か想像は付く────彼の事は、本当に残念な事であった」

「お兄様は、私の弱さの犠牲になったのです。残念などと……そんな言葉で」

「そう思うのなら尚の事。君にはこんな世界を変える為にこのレジェンドで戦って欲しい。

 彼が戦い散ったのは、大切な君を守る為。そして、平和な世界でまた君達と暮らす為であったはずだ。であれば、生き残った君は彼の遺志を継いで、大切なものを守る為に彼が遺した想いと共に、戦うべきではないかな」

 

 あぁ……なんと醜悪な。

 サヤは、目の前で綺麗事を並べる愚かな男に心底愛想を尽かした。

 自分を餌に兄を利用した事。それを悪びれもしない。それどころか、未だこちらに良い顔をして利用しようとしてくる。詰まらない言葉で丸め込もうとしてくる。

 

 本当に、吐き気がする男であった。

 

「議長。もう1つだけ確認させていただいてもよろしいですか?」

「勿論だ」

「レジェンド……お兄様がダメだとしても、私より視野が広く射撃戦が得意なレイの方が適正が高いかと思われます。何故私にこれを?」

 

 瞬間、デュランダルは酷く困った様な顔をした。

 眉根を寄せ、目尻を下げ、何と言って良いかわからない────そんな表情だ。

 そんな彼の表情に、シンとサヤは訝しんだ。傍で控えていたミーアもまた同じく。ただ1人、何かを察して苦笑いを浮かべるのはミゲルだ。

 

「言っても良いのかね?」

「言えない様な理由なのでしょうか?」

「言えなくはないが、伝えにくいとは思う所だ」

「どんな内容であろうとも、私は一向に構いません」

 

 依然として引く気のない気配を醸し出すサヤに、デュランダルは意を決して口を開いていく。

 

「デスティニーはシンの専用機となる。そしてその相方、支援を念頭にしたレジェンドだ。当然ながら、パイロットの相性もまた重要なファクターと言えるだろう」

「はっ? パイロットの相性、ですか?」

 

 一瞬、何を言っているのかとサヤは呆けた。それは名前が出てきたシンも同じくである。

 だが、2人の惑いなど置いてデュランダルは続けていく。

 

「私の遺伝子学の見地から、君とシンの遺伝子的相性は非常に良好……いや、この程度では言い表せないな。君達2人は究極的に相性が良い遺伝子構造をしている。君達2人は互いに並ぶことで、お互いを高め合うことすら可能な程に」

「はっ?」

「要するにだ。お前とシン・アスカの組み合わせが最も相性がいいからお前にレジェンドが渡されるって事だよ」

「ミゲル。貴方まで何をふざけた事を──」

 

 視線を向けるも、いつもは軽い雰囲気であるはずの男が今だけは違った。

 ミゲルは至極真剣な顔を見せており、恐らくはデュランダルが述べた事を聞き及んでいたのだとわかる。

 そしてサヤがもう一度デュランダルへと視線を向ければ、こちらもまた決してふざけてるわけでは無い。そもそもこんな時にふざけるはずもないが、嘘の気配が欠片も無かった。

 

「そんな、ふざけた理由が──」

 

 何とか否定材料を探そうと、サヤはシンへと振り返った。

 瞬間、僅かにその事実をサヤは自覚する。

 

 思い返せば確かに────シン・アスカとヤヨイ・キサラギにはその節があった。

 オーブ沖での海戦。ヤヨイはシンの覚醒に促される様にSEEDへと至ることができたし、ベルリンでは逆に記憶を取り戻したサヤが手を引く様に、シンをそこへと至らせた。

 そして共にその領域へと踏み込めば、言葉を介する事なく互いの動きがわかる感触があったのだ。

 

 サヤが振り返って見れば、聞かされた事実に少年は羞恥の赤を顔に出している。

 年頃の多感な時期だ。遺伝子的相性と言われてもシンにはピンと来なかったが、目の前の超絶美少女と自身がとんでもなく相性が良いなどと聞かされては、気恥ずかしさが出てくるのも健全な青少年ならば仕方のない事である。

 

 そして、そんな少年の姿に不覚にもサヤの鼓動は跳ねてしまった。

 それがサヤ・アマノの感情なのか。内に巣食うヤヨイ・キサラギの感情なのかはわからない。

 だがしかし。そんな感情を、サヤは認めるわけにはいかない。

 必死に跳ねた鼓動と感情を押さえつけて、サヤは微かに身を震わせる。

 

「──絶対に」

「お、おい落ち着け、ヤヨイ!」

 

 嵐の前の静けさ…………と言うよりは、噴火前の火山という所。

 爆発直前の気配を察してミゲルが止めようとするが、僅かにそれは遅かった。

 

 

「絶対に、あり得ないです!!」

 

 

 格納庫を揺らす様な叫びと共に、サヤは押さえつけようとするミゲルを振り払った。

 

「私はこれまでと同じくセイバーを使います! その機体はどうぞ、レイにお与えください! 失礼します!!」

 

 走ると言えない最大限の速度を以て、サヤはその場を後にしていく。

 

 その場には爆発をモロに受けて固まるミゲルとミーア。苦笑いのデュランダル。

 そして、決して意図したわけではないが、なし崩し的に大切な仲間に、酷く強く、拒絶されたショックに沈む少年が残されるのであった。

 

 




最後の展開は決してギャグの要素ではないです。
ちゃんと大切な意味を持たせております。ギャグっぽく見えてしまうとは思いますが、笑いをとろうとしてるわけではないです。タケルとユリスだけでもう十分ですし。

さぁて、どうなるかは予想できると思いますが、どうなることやら。
作者も描いていくのが楽しい展開です。読者の皆様には是非とも楽しんでいただければ幸いです。

感想、よろしくお願いします。
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