機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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ヘブンズベースでとっぷりと話数を使う。
アニメじゃあっさり終わったけど、大事な戦いならしっかり描かないとって感じ。


PHASE-69 戦火と叫びと

 

 

 光条が行き交い、ミサイルが降り注ぎ、巨大な機械兵達が躍動する。

 

 ヘブンズベース周囲は正に戦場。それも先の大戦以来の、両陣営の威信をかけた全面的武力衝突となる激戦の戦場であった。

 ヘブンズベースからは巨大兵器デストロイを筆頭に、最新量産機であるウインダム。主流となってきたチームオペレートMAのザムザザーにゲルズゲー、更には新顔となるユークリッドなどの陽電子リフレクター持ちのMA部隊。

 更に地上空中だけに限らず、海中でもXシリーズ後期発展機体フォビドゥンの系譜であるフォビドゥンヴォーテクス等が参戦し、同盟軍へと襲い掛かる。

 

 対して同盟軍は、参集した連合の部隊からダガーL等の旧式MS部隊と、多くの巡洋艦。

 プラントからはミレニアムシリーズのザクやグフを中心に、空戦MSディンの系譜であるバビや、砲撃支援機ザウートの系譜であるガズウート。海中では旧式のグーンやゾノと併せて新鋭のアッシュなどを揃えている。

 そして、それらを有象無象と切り捨てる事が可能な最新鋭機デスティニーとレジェンド、インパルスを擁するミネルバ部隊。

 

 

 不意打ちとニーベルングの奇襲により浮足だった同盟軍側であったが、敵陣営を切り崩していくミネルバ隊の活躍により、どうにか態勢を立て直しつつあった。

 

 

 

 

「はっ、おせえおせえおせえ!」

 

 空中を疾走していくは、橙赤色のグフイグナイテッド。それを駆るのはミゲル・アイマンである。

 ドラウプニルをばら撒きながらウインダムをバラバラにしていくと、速度に任せてテンペストソードを一閃。一度翔ければ3機のMSが落ちていく活躍を見せる。

 

「あいつ……また腕上げやがって。ったく負けてられねえな!」

 

 それに魅せられ、ハイネ・ヴェステンフルスも奮起する。

 視野の広い彼らしく、放っておけば自陣に被害をもたらしそうな敵機を見据えてはドラウプニルで牽制。腰のスレイヤーウィップでコクピットを狙い、敵機を叩き伏せていく。

 

「──しかし、何て数だよこりゃ」

「愚痴んなハイネ。次、面倒なMAを仕留める、行くぞ!」

「あいよ!」

 

 接近してくる黒いMA。外見の印象は大きくしたガイアの様だろうか。厄介なリフレクター持ちのユークリッドを前に押し出して攻め込んでくる部隊を発見して、2人はともにグフを走らせた。

 

 グフはほぼ近距離をメインに立ち回る機体である。リフレクター持ちとの相性は良い。掻い潜れば彼等の方が有利だ。

 

「仕留めろ、ハイネ!」

「任せろって! 

 

 駆け抜け様にユークリッドが背負う2連装のビーム砲等を切り落とし背後よりドラウプニルで追撃。ミゲルがスラスターの一部を破損させて態勢を崩せば、ハイネのグフはそのまま機体を一気に両断して見せる。

 普通なら3機編隊で仕留めるMA群を2人で次々と落としていく様は、FAITHの面目躍如と言う所だ。

 

「ははっ、やっぱりお前と合わせるのは気楽で良いなミゲル」

「油断すんなよ。つーかヒヨッコ達の監督は良いのか?」

「心配すんなって。俺の指揮なんか必要ねえよ。あいつ等」

 

 発進と同時、シンとレイはデストロイの攻撃を引きつけるため最前線へと切り込んだ。

 インパルスのルナマリアはその2人と味方が分断されない様、最前線から少し下がったところで、味方部隊を鼓舞する様に奮闘している。

 

 ハイネが指示を下す必要もなく、3人共が自身の担う役割とできる事を理解して、最大限の戦果を挙げようとしていた。

 

 必死なのだろう。シンだけに限らず、レイやルナマリアも。

 アマノ兄妹が置いていった。遺していったものが、彼等を成長させ、二度と失うものかと今できる最善を取らせている。

 

 お陰でハイネもミゲルも好き放題に暴れて、ミネルバの安全確保のために敵機を寄せ付けない働きを示すことができているのだ。

 

「あーあ、俺って隊長に向いてないのかね?」

「まぁ向いてねえだろうな。少なくともアイツよりは」

「言ってくれる。それなら最後まできちっと面倒見ろってんだよ」

「それは違いない」

 

 軽い笑い声を挙げた瞬間、再び接近してくる敵反応に警告が鳴った。向かってくるのは新たにザムザザーが引き連れてくるMS部隊。

 前線で必死に働くヒヨッコ達の活躍に花を添えるには丁度良いだろう。ついでに、死んでしまったバカへの手向けにもなる。

 

「よし! 俺、必要無さそうだしこれ終わったらプラントに戻れないか議長に聞いてみるわ」

「ハイネ、戦場でそういう戦いの後の話する奴は確定で死ぬらしいぞ」

「マジ?」

「現実は非情なりってな!」

「嘘だろおい!」

 

 馬鹿なやり取りをしながらも全力で戦場を舞う2機。

 ハイネとミゲルは、攻め寄せてくる敵機の全てを落とし続けるのであった。

 

 

 

 

 

「っ!? えぇい!」

 

 飛んでくる光条を躱しながら反撃にライフルで撃ち抜く。

 既に落とした数は両手で数えられるところを超えていたが、それでも彼女に襲い掛かって来る敵機の数に変化は無い。

 次から次へと、変わらずくる攻勢に、息が詰まる想いであった。

 

「(こうして前線に出て見てわかる。前も後ろも敵だらけで、どこから狙われても不思議じゃない──そしてどれも見逃した瞬間に墜とされる!)」

 

 反射的に機体を翻せば、真下から放たれた光がインパルスの傍を通り過ぎた。

 動けなかったら墜とされていた──その事実に、ルナマリアの頬を冷や汗が伝った。

 

「シンも、サヤも……隊長も。ずっとこんな中で戦い続けて居たのね」

 

 迷いなく最前線へと飛び出していくエスペラントとセイバー。そしてそれを繋ぐシンのインパルス。

 脳裏に浮かんでくる彼等の戦いに、ルナマリアは改めて感嘆した。

 洋上での戦いが多かったこともあり、ザクに乗っていた彼女はミネルバの甲板で戦う事が多かった。

 必然、ミネルバの迎撃能力によって自身を狙う脅威は少なくなる。

 戦場に出る以上安全と言う言葉はおかしいかもしれないが、自分がこれまでどれだけ危険の少ない所で戦っていたのかを想い知らされていた。

 

「でも……」

 

 操縦桿を握るルナマリアの手に力が籠められた。

 才能の違いなど理解している。持って生まれた素養の差など見せつけられている。

 同じアカデミーの同期でありながら、シンとヤヨイは押しも押されもせぬエースパイロットとなり、レイとて急遽託されたレジェンドを問題無く使いこなしているのだ。

 不足しているのは自分だけ────それが、ずっと抱えていた彼女の劣等感であった。

 だから少しでも皆の力に成りたくて、隊の中の潤滑剤として機能することを選んだ。年下のシンとヤヨイに姉ぶって、堅物なレイを引き込もうとして、危なっかしい隊長には寄り添ってと。

 

 戦闘では届かない彼等に、普段であれば手が届くから。

 

「だからって、これ以上置いてかれるのも、うんざりなのよ!」

 

 コクピット内で、ルナマリア・ホークは吠えた。

 自分は足りないからと……そうやって言い訳し続けていたこれまでの殻を破り、自身もインパルスを駆るに相応しいエースだと証明する。

 

「ミネルバ! ブラストシルエットを!」

『了解。30秒で射出します』

 

 機械的に対応してくるアビーの声を聞きながら、ルナマリアは飛来してくるであろうシルエットフライヤーの進路を確保するためにビームライフルを連射。

 周囲に居るウインダム部隊を次々と落としていく。

 その間にミネルバより射出されたシルエットフライヤーを確認すると、フォースシルエットをパージ。

 相対速度を同調させて、ブラストシルエットへと換装する。

 さりげなく射出されたシルエットフライヤーを墜とされまいと隙間を縫って護衛してくれたハイネとミゲルのグフの姿が目に入り、胸の内でルナマリアは感謝した。

 

「よーし、行ってこいヒヨッコ」

「骨は拾ってやるぜ」

「墜とされる前提にしないでよハイネ!」

 

 ケルベロスやレールガン。ファイヤービーのミサイルなど、備えられる全てを使った砲撃殲滅戦。

 味方部隊の進路を切り拓くべく、インパルスの砲門が光と共に吠えた。

 

 

 

 

 

 

 最前線で戦い続けるレジェンドとデスティニー。

 圧倒的火力を以て、次々と同盟軍を殲滅していくデストロイを牽制し、引き付けるべく2人は機体を動かし続けた。

 

「くっ、こいつらぁ!」

「この程度!」

 

 放たれるスーパースキュラの極大な閃光を躱して、レジェンドはビームジャベリンでデストロイのアームユニットを破壊。

 デスティニーは背部の長射程ビーム砲で迫りくるミサイルを薙ぎ払った。

 

「シン、とにかくあれ等を潰さなければ俺達に勝機は無い。斬り込めるか!」

「やってやるさ!」

 

 瞬時に、シンはデスティニー背部のアロンダイトを抜剣。

 長大な刀身に光の刃が走り、全てを断ち切る剣となった。

 

「援護する、行け!」

 

 レジェンドのバックパックに備えられるドラグーンの砲塔がフル稼働。驟雨の様な光の雨がデストロイの1機を襲った。

 その瞬間に、デスティニーは光の翼を広げて吶喊。陽電子リフレクターの展開で足を止めたデストロイに肉薄していく。

 

 光の翼の最大展開と共に映し出される残像。デスティニーを狙う砲火の悉くをシンは掻い潜っていく。

 

「ここだぁあああ!!」

 

 翼を翻して、全てを潜り抜けたデスティニーは、大上段よりアロンダイトを振り下ろした。

 両断────全長で50mを超える巨大なデストロイを、一撃の下に断ち切って見せる。

 これが、デスティニーの真骨頂と言えよう。

 

 マニピュレーターで保持するメイン武装として、背部の長大なアロンダイトと長射程ビーム砲を備えるデスティニーのコンセプトは、デストロイの様な対大型MAを念頭に置いたものである。

 連合の兵器開発の潮流がMSから大型のMAへとシフトしてきた事を受け、開発されており、対MA、対ロゴス──その切り札である。

 長大なアロンダイトによる一撃と、長射程ビーム砲による、超長距離からの狙撃。これらで一方的に仕留める事こそがコンセプトなのだ。

 それを生かすは、巨大な光の翼を広げて莫大な推進力を得るヴォワチュール・リュミエールと、その速力に振り回されない反応速度を持つシン・アスカ。

 正しく、彼が乗る事でデスティニーはその真価を発揮するのだ。

 

 

 

「デスティニー、敵巨大MAを撃破!」

 

 バートの報告に、僅かに歓声が上がる。

 ベルリンではあれだけ苦戦した強敵だ。それをレジェンドの援護があったとは言えこうも簡単に沈められるとは、誰もが予想していなかったのだろう。

 

 彼、ギルバート・デュランダル以外は。

 

「あぁ、素晴らしい────もっとだ、もっと君の力を見せてくれ」

 

 静かに呟かれた彼の言葉は、歓声に包まれるミネルバの中ではあまりに小さい呟きであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘブンズベースでの戦い。

 デュランダルの思惑でメディアを通じて流される戦場の映像を、アークエンジェルに居るサヤ・アマノもまた注目して観ていた。

 戦場で躍動するシン・アスカのデスティニーは、随分と見事に活躍しているようである。

 少しだけ、面白くない気持ちであった。

 

「私を墜とした割には元気な様ですね、シン」

 

 こんな事ならもっと悲劇的にヤヨイ・キサラギの想いを伝えるべきであっただろうか。何なら涙を溢していたほうが効果的であっただろうか。

 決してそんな邪な狙いで想いを伝えたわけでは無いのだが、存外ショックを受けて無さそうなのはそれはそれで面白くないものなのだ。サヤの内でヤヨイ・キサラギが文句を垂れていた。

 

「おいおい、怪我人なんだから大人しく寝ておけよ、サヤ」

 

 医務室へと飛び込んでくる声。サヤが視線を向ければ、見知った顔が2人。それから知らぬ顔が1人入ってくる。

 

「──カガリ・ユラ・アスハ。それにキラ・ヤマトも」

「サヤ、具合はどう? 様子を見に来たよ」

「昨日も来たでしょう。たった一日でそんなに変わるとでもお思いですか?」

「ははは……まぁ、そうだよね」

「良いだろ別に。キラはお前の事を心配してるんだから、大人しく心配されておけよ」

「心配されておけとは、どんな文句ですか全く……それで、そちらの方は?」

 

 サヤは、カガリとキラの後ろに続いてきた女性に目を向けた。

 ショートに切り揃えられたサヤと同じ艶めく黒髪に、凛々しさを感じさせる切れ長の紫の双眸。

 靴のせいもあるかもしれないが、女性にしては高い身長はキラと並んでもやや高い。

 スラリとした四肢と女性らしさを湛えたその身体は、サヤの目を良く惹きつける。

 

 随分に見目麗しい女性だとサヤは感じ入った。

 

「あっ、その……」

「何ですキラ・ヤマト。そんなに慌てて」

「そりゃあ、慌てもするよ────最悪ここで、本人が居ないのに修羅場になりそうだし」

 

 聞こえないように小さく呟いた声は、サヤには届かなかったが隣に居たカガリには聞こえていて、カガリは確かにその通りだと半ば覚悟を決める様にして頷いてから、件の女性を前に出した。

 

「紹介するよ義姉さん、彼女がサヤ・アマノだ。アマノの家の子で、兄様の妹」

「姉さん? お待ちなさいカガリ・ユラ・アスハ。今何と仰いましたか?」

 

 聞き捨てならない言葉である。

 カガリ・ユラ・アスハに姉は居ない。そんな事は随分と昔から知れている。

 タケルがアマノの性を名乗るまでは、カガリ・ユラ・アスハとタケル・イラ・アスハの双子のみが兄妹関係。無論、それ以外がアスハの家に居たなどと言う事はあり得ない。

 弟であるキラの血筋の可能性もNoだ。キラとて元はヒビキ夫妻の子。ヤマト夫妻に子はおらず引き取ったキラだけの一人っ子として大切に育てられてきている。

 間違いなく、カガリ・ユラ・アスハに姉は存在しない。

 つまり。即ち。結論として。目の前の女性は──

 

「カガリ、言い辛いのであれば素直に私から──」

「いや、良いよ義姉さん。私から言った方がきっと受け止めやすいだろうから」

 

 次々と不穏な言葉を吐くカガリに、サヤはいよいよ耳を塞ぎたくなった。しかし、この身はまだ万全ではない。腕を動かすのにも痛みが走り憚られる。

 その間にも、カガリは静かに口を開き始めた。

 

「サヤ、こちらに居るのはナタル・バジルールさん。アークエンジェルではラミアス艦長を支える副長として乗艦している人で────兄様とは、今年の春に婚約している」

 

 恐る恐るといった様子で、カガリはそれを告げた。

 タケル・アマノの婚約者────まろび出たその言葉の意味を理解し、サヤ・アマノは石化した。

 受け入れ難い情報量に脳がショートし、何も考えられない様な顔をしている。

 

「────どういう、事ですか? カガリ・ユラ・アスハ」

 

 罰が悪そうにするカガリに、キラもまた同じように表情を曇らせた。

 彼女の想いは、良く良く知っている。タケル・アマノ至上主義とまで言われるその姿は、彼等の中で酷く印象強いものであったし、彼女はそれこそ命を捨ててまでタケルを救おうと身を擲つ事が出来た人間だ。

 それが偏に彼への愛故にという事は、彼女を知る者であれば誰でも理解している。

 理解しているだけに、この事実を伝える事は憚られた。それを知った彼女に、掛ける言葉が見当たらなかった。

 学生気分の軽い恋愛話などではない。サヤ・アマノは全てを賭してタケル・アマノを愛していたのだ。

 

「──ヤマト。それにカガリも。少し彼女と話をさせてくれないか?」

「えっ、でもナタルさん」

「そう心配するな。落ち着いて話をさせてもらうだけだ」

 

 柔らかく笑むナタルに心配を受け流されて、キラは押し黙った。

 

「わかった、ちょっと外で待ってるから。何かあったら呼んでくれ、義姉さん」

「あぁ、ありがとう」

 

 キラとカガリは頷き合うと、医務室を出ていく。

 話し声が聞こえないようにある程度離れながら、しかしサヤが暴走しようものなら直ぐ駆けつけられる様に、近くで待機することにした。

 

 やはり受け止めきれないかと、2人は視線を下げた。

 そうである事はわかっていた。特にキラは、2年前彼女の声を聞いている。

 

 “心の底から、愛しておりました……お兄様”

 

 死の間際に伝える心からの想い。全身全霊を掛けて、生涯を捧げて。愛していたのだと。

 頭ではなく心でそれをキラは理解していた。

 彼女がどれだけの想いであったかなど、想像に難くない。

 

「大丈夫かな……サヤ」

「大丈夫じゃないさ、絶対」

 

 死んでいた事になっていた────そう言えば仕方のない事ではある。

 生きていたが記憶を失っていたのだ。彼女自身に何も悪いこと等ないだろう。

 それでも、数奇な巡り合わせが彼女の想いを裏切り、運命は彼女を見捨てたのだ。その喪失感は計り知れない。

 

 キラとカガリは、部屋に残ったナタルに望みを託しながらソワソワとその場で待つ事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンとデスティニーの活躍により、デストロイの1機を沈めた同盟軍は少しずつ戦況を押し返しつつあった。

 

「でぇやああ!!」

 

 アロンダイトが再び振り下ろされ、デストロイ3号機の背部バックパックが半分切り落とされる。姿勢が崩れた所をレイのレジェンドが追撃。ドラグーン端末を交えた一斉射でデストロイの脚部を破壊し転倒させる。

 バックパックを背に倒れ込んだデストロイに陽電子リフレクターを展開する余裕はない。デスティニーの長射程ビーム砲が放たれ、大きな閃光が突き刺さる。

 

 爆発を上げて、デストロイ3号機が破壊された。

 

 

「はぁ……はぁ……次はっ!?」

「油断するな、まだ来るぞ!」

 

 機体を翻して迫りくる極大の閃光の数々を躱していく。

 

 疲労は重なり続けていた。ただでさえ膨大な数の火器を備えるデストロイを、それも複数を相手にして、被弾をせずに戦闘を続けているのだ。シンとレイの疲労は大きかった。

 

 ハイパーデュートリオンによる無尽蔵のエネルギーとソリドゥス・フルゴールのビームシールドがなければ、こうして戦い続ける事も厳しかっただろう。

 

 

 

 

 しかし、膠着を始めた戦場の中で見えるものには見えていた。

 

 

「各員、気を緩めるな! 索敵厳に!」

 

 

 旗艦ミネルバの艦長、タリア・グラディス。或いは同盟艦隊の指揮官達も。

 

 

「嫌な気配がするな」

「不吉だから止めろっての」

 

 

 また或いは、ハイネやミゲルの様に長い時を戦場に生きて来た者達。

 

 

 戦場の勘と言うのは、得てして馬鹿にならないものである。

 それは、肌で感じる空気と言うものか。悪い想定はしておくべきとする心構えか。

 論ずることではなく身体で感じる気配が、警鐘を鳴らすのである。

 

 

 この戦いで同盟軍は、最初につくられた劣勢から盛り返してきた。

 タケルが言った様に正攻法では同盟軍側に軍配が上がるという事だ。

 

 果たして、それを受け取ってロゴス側が無策であるものだろうか……? 

 

 各々が感じる警鐘の理由はこれだ。

 優位が見えて来たからこそ懸念する……このままで終わる様な相手であるのかと。

 

 

 動きが見えたのは些細な攻撃であった。

 深緑のMAザムザザー。それが単騎で攻め込んでくる。

 何てことは無いだろう。ハイネやミゲルだけに限らず、接近戦で潰す戦闘は確立されている。

 3機、或いは4機で分散しながら掛かれば、何ら問題なく落とせる事がわかっている。

 

 だが、単騎……嫌な予感が、ハイネとミゲルの間に過った。

 

「ルナマリア! 接近中のMAを破壊しろ!」

「アーサー、接近中のMAにミサイルを集中。囲んででも良い! 撃墜してちょうだい!」

 

 ハイネとタリアの指示が飛ぶのは同時であった。

 その間にも、ミゲルのグフはザムザザーへと吶喊。ドラウプニルで牽制しながら攻撃を掻い潜り、上部の陽電子リフレクター発生装置を切り落とす。

 

 だが、ザムザザーは止まる様子を見せずミネルバへと一直線で接近を続けていた。

 良く見れば、ザムザザーは腹に何かを抱える様に機体底面に見慣れぬユニットを搭載している。

 いよいよを以て、予感は確信へと至ろうとしていた。

 

「トリスタン! てぇー!」

 

 ミネルバの主砲が光を吐き出す。戦艦故に甘い照準が、ザムザザーの脚部を吹き飛ばすだけで終わった。

 

 

「ルナマリア!」

「わかってるってぇの!!」

 

 

 そこへ必死で駆けつけたブラストインパルスがケルベロスを構えた。

 旗艦ミネルバとの距離は凡そ500m。これ以上の接近は許すまいと放たれた閃光は、寸分たがわず飛行中のザムザザーを貫いた。

 

 

 

 瞬間────彼等の世界は紅蓮と鈍色に弾けるのだった。

 




できるだけエゲツナイ戦法考えた。
やるだろうなぁ、って思える様な事。
詳しくは次回ですね。

そして邂逅。サヤとナタル。先んじて言って置きますがギャグでは無いです。
どうぞお楽しみに。


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