機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-78 焔の扉

 

 

 

 ミネルバ艦長タリア・グラディスは、嫌な予感を拭いきれずにいた。

 

 戦いとは数である────より強くを目指すより、より多くを揃える方が容易くその価値は高いからだ。

 故に、今この時オーブに攻め入るザフト及び同盟軍の数は、たかが島国1つを攻めるには過剰な戦力を有している。

 

 だがこの世界に置いて、数が力となる事は真理であろうか? 

 

 タリアは自問して首を振った────否、と。

 先の大戦。数で圧倒的に勝る連合に勝利し続けたザフトの実績を考えれば、その通説は容易に覆る。

 古今東西、数で劣る側が勝利した例など、枚挙にいとまがないはずだ。

 

 

 

 

「展開中の部隊、20%が損失」

 

 

 

 バートからの報告に、タリアは驚嘆を禁じ得なかった。

 嫌な予感は当たった。戦闘開始から、それこそまだ僅かである。

 最初のぶつかり合いではその実力の差がもろに出ると言うが、こうまで違うのか。

 隣でいつも通りにえぇ!? と騒ぐアーサーを視界に入れない様にしながら、タリアは状況の変遷を確認しようとした。

 

 

 その瞬間────戦場に、眩い光が閃いた。

 

 

 何だろうか? そんな疑念を吐き出す前に、同盟軍の艦隊に衝撃が走る。

 

「なっ!?」

「バート、どうしたの?」

「──同盟艦隊6番艦から13番艦までが沈黙! 応答なし!」

「何ですって、一体何が!」

「艦長、狙撃部隊です! オノゴロ島山岳エリアにて布陣を確認!」

 

 アビーの報告と共に、モニターに映し出される映像。

 

 そこには、山岳地帯で巨大な砲塔を構えるMS部隊が8機並んでいた。

 

 

 

 

 モルゲンレーテ謹製、電磁投射砲“シュンライ”。

 莫大な電力による大型弾頭の投射。その射程距離は200kmに及ぶ。

 これを、高精度照準センサーを装備したカゼキリ狙撃部隊で狙い、艦船の艦橋を撃ち抜く。

 先の大戦でも用いられた、艦隊への直接攻撃部隊である。

 

「くっ、一体どこまで。やはり、羊の皮を被った狼ね……本当に、国土防衛戦の想定を徹底している」

 

 嘗ての失敗。嘗ての過ち。それがあったからこそのこの備え。

 国防に携わる皆がきっと、それだけの想いをしたという証左だ。

 積年の想いと言っても良いこの防衛体制を挫くのは生半では厳しいだろうと、嫌でも思い知らされる。

 

「艦長、このままではまずいですよ」

「わかってるわ……アビー、シン達を出して。敵の練度は高い。こちらも質で上回らなければ勝てないわ」

「はい!」

 

 

 投入するはデスティニーとレジェンド、インパルス。

 ザフトの最新鋭を揃えた彼等で、量産機で劣る戦線を覆すつもりだ。

 

『タリア』

「議長? 何用でしょうか」

『シン達を出撃させたら、ミネルバ及びザフトの艦隊を少し下がらせてくれ』

 

 下がらせる? 先手を取られているこの状況で? 

 浮かび上がってくる疑念に、タリアは眉を寄せた。

 

「どういう、おつもりで?」

『この場に集ってくれた同盟軍にまずは当たってもらう……消耗戦だ。あちらは孤立した島国。決して余裕はない。絶えず攻め続ければ、直ぐにでも苦しくなる』

「それはつまり、今横に並ぶ同盟軍を捨て石にしろと?」

『シン達が前線で活躍すれば、皆が奮戦するだろう。共にヘブンズベースを駆けた者達だ。彼は既に旗頭なのだよ』

 

 つまりは、ザフトの参戦はそれだけで事足りるという訳だ。

 そうしてオーブ軍の消耗を図り、戦局を優位に傾けていく。

 

 今のオーブは国民に被害を出さないためにも全力疾走状態と言えるだろう。何としても前線を押し上げ、国土への侵入を阻止する必要がある。

 人も物も、その消耗は激しいはずであった。

 だが──

 

「────甘すぎますわ、議長」

『何?』

 

 タリアは首を振った。

 普通の戦術的観念から考えれば、彼がいう事は間違いが無い。

 戦力における地力に差がある以上、長期戦を考え消耗を狙うのは正しい判断だ。

 だがそれは、防衛側のオーブが防衛に徹する事が前提である。

 防衛側が防衛に徹する────そのごく当たり前な事が当たり前でない事を、タリアは良く理解して居た。少なくとも彼女は、それを覆した戦いを知っているのだ。

 

『どういう事だね、タリア?』

「そんな戦術でどうにかなるのなら、2年前のオーブ戦役は伝説となっておりません。

 アビー、シン達の出撃を急がせて。出ないと────私達が沈められるわ」

「えっ?」

 

 タリアの言葉にアビーが疑問符を浮かべた瞬間────またもや同盟軍艦隊には衝撃が走るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「甘いのですよ……ここまで攻め込まれることは無いとでも思っていたのですか……」

 

 巡洋艦の1つが閃光に穿たれ煙を上げる。

 シロガネの背部プラズマ収束砲キョクヤによって撃ち抜かれた敵艦を見ながら、サヤは再びシロガネを飛翔させた。

 

 

 

 2年前のオーブ戦役。

 絶対的戦力の差を覆した防衛線には大きな理由があった。

 侵攻してくるMSと、洋上艦隊からの援護射撃に国防軍が釘付けにされる中、その圧倒的速力を以て洋上艦隊を直接叩きに来た、タケル・アマノとシロガネの活躍である。

 

 艦船の迎撃射撃を置き去りにし、最速最短を駆け抜け前線の艦隊の悉くを叩き潰す。

 侵攻に来た大西洋連邦を、自らの防衛に回らせた事で、前線への援護射撃は消え、結果MSとパイロットの練度の差を見せつけた国防軍は、侵攻してくるMS部隊を完封していった。

 

 要するに、攻撃こそが最大の防御になるという話だ。

 

 だから山岳部の狙撃部隊が配置されている。

 だから、シロガネを原型とした量産機カゼキリが生み出された。

 

 出撃したMSにとって、母艦の守護は必須だ。墜とされれば、正に帰る家が無くなってしまうのだから。母艦の危機は部隊の危機に直結する。

 

「お兄様程の活躍は難しいですが、サヤもセイバーを駆っていた身です。高速高機動は慣れたもの────お兄様が生み出した剣の切れ味、此度の戦いでもしかと刻んで見せましょう」

 

 口角を吊り上げ、フットペダルを踏み込んだ。爆ぜる様な音と共に、スラスターが火を噴く。

 強烈なGを感じながら、シロガネを加速させたサヤは、同盟軍艦隊へと突撃していった。

 

 カガリが言った、2年前のオーブ戦役を再現して見せてやると、サヤの心は奮った。

 ビャクヤからサーベルを出力。すれ違い様に艦橋への一撃で叩き潰すと、キョクヤを展開。左右二門でそれぞれに艦橋を狙い、2隻をまた潰した。

 

「流石ですシロガネ……どれだけ馬鹿げた軌道も、頭で描く通りになぞってくれる。その分……サヤへの負担は重いですが」

 

 僅かに冷や汗が頬を伝った。

 元より負傷の身。完治まではしていなかったというのに、全身を強烈なGに晒されて、サヤの胸中に不安が過る。

 

「ですが、アマノの人間としてここで引き下がるわけにも参りません」

 

 再び疾走。次々と飛んでくる迎撃射撃を躱しながら、巡洋艦の1つをまた叩き切る。

 

 オーブの領海の空で、サヤ・アマノとシロガネは躍動していった。

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、出てきたわね……シロガネ」

「ですが、艦長。彼はもう──」

「ダーダネルスでも同じ事はあったでしょ! 乗り手が変わる事なんてざらにある。アビー、シン達を急がせて頂戴!」

「は、はい!」

 

 

 急いで管制に入っていくアビーを見ながら、タリアは状況を見守った。

 次々と艦船を墜としていく白銀の閃光。その異名の通り、装甲が反射する光が軌跡となって目に映る。

 徐々にその位置をミネルバへと近づけて来るシロガネに、タリアは身震いした。

 

『デスティニー、レジェンド、発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します』

 

 

 カタパルトへと乗せられるデスティニーのコクピット内で、シンは惑っていた。

 開戦前の、デュランダルとカガリのやり取り。

 決意していたシンの心を揺さぶる事実がそこにはあった。

 

 セイランに牛耳られたオーブに、カガリ・ユラ・アスハが帰ってきていた。そして今、全力でジブリールを探しているという。

 ならば、この戦いに意味はあるのだろうか。この様に責め立てる必要など無く、それこそ一緒になって彼を探せば済む話では無いのだろうか。

 

 ぐるぐると疑念が過った。

 

「──シン」

 

 飛び込んでくる通信音声に、シンは顔を上げた。

 

「レイ……」

「集中しろ。余計な思考をするな」

「でもレイ! あいつは、アスハは──」

「議長が言ったはずだ。今のあの国の言葉に、そこまでの信用はできないと。議長が言う様に、オーブがジブリールを逃がす算段をしていたらどうする?」

「──そんな奴じゃないだろ。あいつ」

「余計な迷いは捨てろ。今のお前は、お前一人で戦ってるわけじゃないんだ。お前がそうして気持ちで遅れれば、ここに居る全員が影響を受ける。自覚を持て────今のお前は、議長が掲げる剣なんだ」

「剣……なんだよそれ」

「お前が惑えば、ここに居る仲間達を殺すことになる。それを忘れるな」

 

 ハッとして、シンは目を見開いた。

 そうだ。ヘブンズベースでの活躍から、シン・アスカに掛けられる期待は大きく重い。

 デュランダルが言う様に、シン・アスカとデスティニーは、既に同盟軍にとって旗頭なのだ。

 そんなシンが戦いに惑えば、それは皆に影響する。レイの言う通り仲間達を殺すことに繋がってしまう。

 

「ごめん、レイ……俺」

「謝るな。だが、覚えておけ……ヤヨイを討ったあの日から、俺達はもう止まらないと決めたはずだ」

「あぁ……議長が言う平和な世界を実現するために、俺も戦うって決めた」

 

 大切な仲間を討たなければならない様な、こんな世界を変えるために……彼が目指す平和な世界の為に戦うと決めたのだ。

 

 迷っている暇など無い。

 

「ありがとう、レイ」

「気は晴れたか。ならば行くぞ」

「あぁ」

 

 カタパルトが開かれ、混沌とした戦場が顔を覗かせる。

 シンは直ぐに戦士の顔となって、眼前の戦場を睨みつけた。

 

『進路クリア―。デスティニー、レジェンド、発進どうぞ!』

「シン・アスカ────デスティニー、行きます!」

「レイ・ザ・バレル────レジェンド、発進する!」

 

 

 迷いを払拭しながら、シン・アスカは故郷を討つべく戦場へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄金のMS────非常に目を引くが故に、良く狙われるのは自明の理。

 

 カガリ・ユラ・アスハが乗るアカツキは現在、国防本部上空を陣取って向けられる砲火にその身を晒していた。

 機体各部に備える光波防御帯発生装置。そして大型で備えるスカートアーマーのせいで随分と重装に見えるが、その実動きは軽い。

 

「スカートアーマーを展開。ビーム兵装を自動防御」

 

 制御AIトモシビに指示を下すと、アカツキのスカートアーマーが分離。自立機動で浮遊しアカツキの目の前に3枚並んだ。

 

「敵機を捕捉──迎撃防御を開始する」

 

 淡々と告げたカガリの声をトリガーに、スカートアーマーはアカツキを狙う砲火の自動防御に切り替わる。

 ドラグーンによる分離統合制御。AIトモシビが捉敵照準を検知しビーム兵装に対する自動防御を行う。

 

 そして──

 

「跳ね返せ、ヤタノカガミ」

 

 放たれたビーム兵装は、アカツキの全身を覆う鏡面装甲、ヤタノカガミによって撃った張本人へとそのまま返される。

 これが反射装甲ヤタノカガミを用いた、アカツキの新たな迎撃型防御システム────ヤタノカガミ・オオヒメである。

 

 光波防御帯に因る絶対的な防御だけではなく、ビーム兵装に対してはヤタノカガミに因る反射攻撃を行う事でアカツキの攻撃能力を向上させた。

 守るだけでは好転しない状況を危惧して生み出された、アカツキの攻撃兵装という訳だ。

 

 ミサイル等の物理兵装に対しては、光波防御帯アメノイワト。ビーム兵装に対してはヤタノカガミによる反射防御。

 

 オーブを襲う災厄から国を守り、そして手を出すものには容赦をしないと、中立でありながら武闘派であるカガリの信念を体現する機体となった。

 

 

「ビームが跳ね返されるなら!」

 

 接近────それこそが唯一の活路だろう。

 アカツキの防御能力を見て、その弱点へと辿りついたグフのパイロットが、アカツキへと機体を走らせた。

 

「嘗めるな!」

 

 テンペストソードを振りかぶった刹那、アカツキは双刀型ビームサーベルを出力。

 グフのテンペストソードを掻い潜り、コクピットから真っ二つに断ち切った。

 

 彼女を鍛えたのはタケル・アマノ────それはもう徹底的に。万難を排せる様にと鍛え上げた。

 接近戦ならば勝てると、安易に踏み込む様なパイロットに仕留められる道理はない。

 元よりアカツキの源流はアストレイであり、スカートアーマーを分離すればその運動性は十二分に高いのだ。

 高性能とはいえ量産機であるグフが追従できるわけもないのである。

 

「──ユウナ、状況は?」

 

 周囲の敵反応を確認しながら一息ついて、カガリは国防本部へと通信を繋いだ。

 

『戦闘の推移は順調。君の弟君とアスランが前に出てくれたお陰で、あちらさんも大分大慌てさ』

「そっちじゃない。ジブリールは? ウナトはまだ吐かないのか!」

『父上はとっくに吐いてるよ。でも残念ながらあちらさんも生き残るのに必死みたいでね。聞き出した場所はもぬけの殻だった。ついでに死体の山も……大分深い所まで、入り込まれてたみたいだね』

 

 ユウナの言葉が意味するのはつまり、代表首長であるウナトの周囲にまでロゴスの……いやジブリールの腹心の者達が入り込んでいたという事だ。

 やはり、カガリの周囲は暗部に生きる者達にとって隙だらけだったことの証左である。

 

「今更嘆いても始まらん。とにかく国民の避難と併せて捜索を続けろ。避難船の乗船には必ず人相の確認をさせるんだ。奴を絶対に国外に逃がすな!」

「了解」

 

 通信を切ると、カガリは再び戦場を睥睨。

 迫りくる敵部隊をヤタノカガミの反射とビームライフルで次々と撃ち落としながら、最前線へと意識を向けた。

 

 

「頼むぞ……キラ、アスラン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スナイパーが残り12発……まずいです」

 

 ここまで戦線を維持し続けて来たジュリのコンカクは、エネルギーと弾薬の枯渇が目の前であった。

 張り切り過ぎたと言えばそれまでだが、国土に侵攻させるわけにもいかない。一機たりとも通さぬつもりの防衛戦を続けていたのだ。補給が必要になるのは当然と言える。

 アマギ小隊もババ小隊も状況は同様。被弾もある。エネルギーも心許ない。しかし、敵勢力は依然として進軍を続けてきている。

 

 苦しい状況であった。

 

「はっ、あれは!」

 

 ザフト空戦MSバビ────8機の編隊が迫ってきていた。

 

「ちっ、厄介な!」

 

 ジュリのコンカクは即座にビームスナイパーを構えて狙い撃った。

 

 1、2、3、と立て続けに墜とすものの、敵は散開。

 大きく広がってジュリの視界から外れていく。

 

「くっ、アマギ小隊! 敵空戦MSが抜けます。迎撃を!」

 

 しかし、バビの速力は早く指示が飛ぶ間にジュリが2機墜としたところで抜かれてしまう。

 カゼキリとて空戦MS。追えば追いつく事は容易いが、そうして戦線を崩せば更に敵を抜かせてしまう事になるだろう。

 

 ジュリの脳裏に、バビがオロファトの街へと攻め入る光景が過った。

 

 

「──大丈夫、任せて」

 

 

 飛び込んでくる声。

 蒼天の翼が目の前を駆け抜け、抜けていった残りのバビを瞬時に撃ち落としていく。

 

 自由の翼────キラ・ヤマトとフリーダムの参戦であった。

 

「キラ君!?」

「ジュリさん、遅れてごめん! 一度下がってアマギ小隊と補給を。ここは僕が持たせるから」

 

 言うや否や、フリーダムは飛翔。前線へと躍り出ると即座に武装を展開。

 両手には持つ高エネルギービームライフルを2挺に、腰部のクスィフィアスレール砲。更に腹部のカリドゥス複相ビーム砲を以てマルチロックオン。

 計5門の一斉掃射で次々と迫りくるMS達を迎撃していく。

 

 ジュリとアマギ小隊、ババ小隊でようやく持たせていた戦線を、参戦と同時にすぐさま制圧していく様は、やはり伝説のフリーダムと言う所である。

 

「さぁ、補給を早く!」

「ありがと、キラ君────アマギ小隊、ババ小隊は補給に戻って下さい。補給が済み次第、直ぐに戦線に復帰します!」

 

 

 離れていくジュリ達を背中に感じながら、キラは戦場を見つめた。

 あちこちで起こる爆発。漂う硝煙と燃え上がる炎。

 

 2年前と同じ光景に、嫌でも心は奮い立った。

 

 

「──行くよ」

 

 

 ──種が開いた。

 誰に言うでもなく。しいて言うなら自分自身に言いつける様に呟くと、キラは即座にその領域へと至る。

 

 ジュリが維持し続けてくれたこの前線。一機たりとも通しはしないと。SEEDにおける知覚能力をフルに機能させて、敵機を迎撃していく。

 

 

 

 

 

 

 

 そして同じ頃。

 

 

「ぐぅっ、こ、のぉ!」

 

 臓腑がうねり、吐きそうになる熾烈なドックファイト。

 グフとバビの混成部隊が徹底して追従してくる状況で、止まれば討たれるであろう執拗な攻撃の中、アサギは必死にキンシャクを駆り続けた。

 

 漸く理解してきたと言う所か。

 キンシャクに乗るアサギが攪乱。かき乱したところへ、マユラのシュトリが敵を穿つ。

 であればそれぞれを分断し、数の利で追い詰めるという訳だ。

 シュトリの方にはガナーとブレイズを装備したザクの混成部隊が、ミサイルとオルトロスで遠距離から徹底してシュトリを狙い撃っており、マユラもビームシールドでの防戦一方であった。

 

「はぁ、はぁ……きっつー」

「くぅ……こいつら、いい加減」

「2人とも、今助けるぞ!」

 

 声と同時、真紅の塊がキンシャクに追い縋っていたグフの一機を貫いた。

 更にどこからか飛来してきたビームブーメランが、シュトリを狙い居並んでいた3機のザクをまとめて切り落としていく。

 そして、上空から新たな真紅が降りて来たかと思えば、動きをとめた2機のバビを両断した。

 

 真紅の機体────アスラン・ザラが駆るジャスティスである。

 

「アスラン君!」

「ありがとう、助かったよ」

「いや、こちらこそ遅れてすまない……2人も一度補給へ。ジュリの方にはキラが救援に向かったし、ここは俺が引き受ける」

「さっすが。それじゃすぐ戻るからお願いね!」

「ありがとう、アスラン君! それじゃ、任せるよ」

「あぁ、任せてくれ」

 

 

 戻ってきたファトゥム-01とドッキングしながら、ジャスティスはシュペールラケルタビームサーベルを出力。連結して双刀型にして構えると、先程までアサギとマユラに追い縋っていた敵機を睨んだ。

 

「ここまでノコノコ攻めに来たんだ。討たれる覚悟はあっての事だろうな?」

 

 ぐっと歯を食いしばり、暴れ出しそうな感情を抑え込んだ。

 大切な人が、必死に守ろうとしてきた祖国。

 それは今や自分にとっても随分と大切な場所となっている。

 

 先程行われたカガリとデュランダルのやり取り……わからなくもない言い分だが、とても納得できるものでは無かった。

 何より、あれだけ真っ直ぐに平和を求めてあがいてきた彼女を。信用できないと悪し様に言われるのは、アスランにとって我慢ならない事だ。

 

 

「来るなら来い。お前達が彼女の国を攻めると言うのなら、俺は彼女の騎士として全てを排除するだけだ」

 

 

 ──種が開いた。

 討つべきを討つ。その決意をトリガーとしてアスランもまたそこへと至る。

 

 

「俺はキラの様に優しくは無いぞ!」

 

 

 威風堂々たる構えの中、真紅の騎士は敵機へと飛び掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カガリ様、11時方向から新手です。ヘブンズベースで確認されたザフトの新型機の模様!』

「何!?」

 

 キラとアスランの活躍によって、前線での攻防はオーブ側が押し込み始めており、カガリはそれにともない自身も前に出て陣頭指揮に当たっていた。

 

 そんな最中、通信で飛び込んでくる情報に意識を向けると、該当の方角からデスティニーとレジェンドが向かってくるのが確認できる。

 思わず表情をゆがめるカガリであったがその直後に、今度は驚愕へとその表情を変化させた。

 

 目に見えてわかる白銀の輝き。

 もの凄いスピードで件の新型機へと突撃していくシロガネの姿。

 その動きを見れば分かる────あれに乗っているのが誰なのかは。

 

「サヤ!? あのお転婆め!」

 

 お前が言うなと、宇宙で誰かが突っ込んでいそうな驚きの声を挙げながら、カガリはアカツキを走らせた。

 

 向かう先は紅蓮の翼と相対する白銀の元へ。

 

 

 

 

 

 

「出てきましたね……シン、それにレイ!」

 

 

 圧し始めた戦線。ここで彼等を行かせてはまた崩される。

 彼等を知る自分が相手取るのは道理だろうと、サヤはシロガネを走らせた。

 

 一陣の風となり、シロガネはその速力を発揮してデスティニーへと接近していく。

 

「はぁあああ!」

 

 ビャクヤを出力し、叩きつける。デスティニーは急接近してくるシロガネに戸惑いつつも、ビームシールドで防御した。

 

「こいつ、いきなり!」

「気を付けろ、シン。ダーダネルスでの事を考えるなら、そいつはあの時隊長と互角だった奴だ!」

「わかってるさ!」

 

 デスティニーの出力に任せて押し返すと、2機は距離を取った。

 

「乗っているのが私だと告げるのは無粋でしょう……私はもうオーブ国防軍の1人サヤ・アマノ。貴方達とは知らぬ仲の人間です」

 

 シロガネのスラスターが甲高く鳴き始める。

 動き出す時を今か今かと我慢する様な、その気配にシンとレイは僅か息を呑んだ。

 

「故に、今私の胸にあるのはアマノの人間としての使命のみ。よって、貴方達2人をここから先へ行かせるわけには参りません」

 

 あの腹黒狸が用意したセイバーでは無く、兄が作り上げたこのシロガネであれば……負ける言い訳にはできまい。

 初見であったとは言え、あの日手も足も出せずに墜とされたのは屈辱の一言であった。

 

 

 ──種が開いた。

 

 

 リベンジの時は今と言わんばかりの好戦的な笑みを浮かべて、サヤはシロガネのフットペダルを一気に踏み込んだ。

 

 

「さて、リターンマッチと行きましょう!」

 

 

 爆発する感情と共に、サヤ・アマノは運命に反逆するべく飛び出した。

 

 

 

 




次回はまさかの妹2人が共闘な予感。

オーブ戦役だけでまたたくさん話数を使っておりますね。
でもようやくの前作主役勢の出番だからしっかり活躍してもらわないと・・・


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