機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-81 墜ちる光

 

 

「ええいっ、セイランはまだか!?」

 

 シャトルの中で彼、ロード・ジブリールは苛立ちを隠せずに操縦席へと座るオーブの軍人へと問いかけた。

 

 戦闘が始まってから直ぐに、セイラン所有のシャトルへと乗り込み宇宙へと逃げる算段をしていた彼だが、肝心のウナトが未だシャトルに搭乗できず。

 彼は準備万端なシャトルの中で足止めを喰らっているわけだ。

 

 残念ながら待ち人であるウナトは既に国防軍によって拘束されており、彼が乗るシャトルにたどり着く事は無いだろう。

 その情報も、開かれた戦端と戦況で情報が錯綜し、彼の元へと届く事は無く、結果先程の様にいつまでも脱出できない現状が彼を苛立たせていた。

 

「セイランめ……何を悠長に!」

 

 宇宙に上がれさえすれば。ロゴスの劣勢は覆る。

 オーブとの戦端を開いたザフトは、ヘブンズベースに続く連戦で更に戦力を疲弊させている事だろう。

 今この時に宇宙に上がり月基地の部隊と合流できれば、今度こそプラントへの総攻撃を確かなものにできる筈である。

 

 ジブリールにとって、今が天王山であった。

 

「急げ……オーブが攻め落とされぬ内に、何としても脱出を」

 

 未だ変わらぬ保身の声を漏らしながら、ジブリールは来るはずのない発進の合図を、今か今かと待ち続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カガリ・ユラ・アスハの号令の下、特殊試験機甲部隊の3人は戦場を駆け抜ける。

 

 それぞれがシロガネやフリーダム、ジャスティスを仮想敵として訓練を積んで来た彼女達。

 その目するところは一人一人が得意とする機動戦、接近戦、射撃戦への練度を飛躍的に高める為のものであり、いわば個人としての能力の向上。

 その成果は既に十分に見せつけていると言えよう。

 

 しかし、彼女達の本領はそこではない。

 

 見事にばらけてくれたその得意な領分を生かし、互いを補い合って戦う。連携を取れさえすれば、嘗て模擬戦で見せたようにザフトのエースですら手玉に取れるのが彼女達だ。

 その本領は、3人小隊を組んだ時にこそ真価を発揮する。

 

 

 同盟軍後方で待機する艦隊司令部に向けて、キンシャク、シュトリ、コンカクの3機は向かって行く。

 分厚く張り巡らされたMSと艦隊の防衛網に、臆せず飛び込んでいった。

 

「さっ、いくよ!」

 

 一番槍となって吶喊する黄色──キンシャクを駆るアサギは、艦隊の迎撃網を置き去りにする急加速を以て敵陣へと飛び込むとそのまま旋回。

 その驚異的な機動性で、一気に射線を引きつけていく。

 

「そぉら、隙あり!!」

 

 そうしてアサギが射線を引きつければ、居並ぶMS部隊の間をすり抜ける様に──マユラが駆るシュトリは全身に仕込んだ武装をフル活用して敵MSを撃破していく。

 だが、そうして駆け抜けた先ではキンシャクやシュトリを狙う様に艦隊からの艦砲射撃が襲った。

 

「ジュリ!」

「お願い!」

「任せて!」

 

 アサギが機体を翻し、マユラがビームシールドでの防御を選ぶ中。

 アサギとマユラが前に出てくれたことで安全を確保できたジュリのコンカクは、前方に居並ぶ艦隊の兵装、艦橋、更には放たれたミサイルに至るまで、膨大な数をロックオン。

 主兵装のビームスナイパーに背部大型ビーム砲塔。肩部ミサイルポッドに腰部レールガンと、全兵装をフルオープン。

 圧倒的な制圧射撃で、2人への援護と艦隊への射撃を担って見せる。

 

「お見事!」

「狙い通り!」

 

 一斉に沈黙していく多くの敵機と艦船に、アサギとマユラが感嘆の声を漏らし、ジュリはそれを僅かに笑みながら聞き入った。

 

 機動戦のアサギが攪乱し、接近戦のマユラが敵陣を崩し、そして後方からの援護射撃でジュリが仕留める。

 これこそが、彼女達の本来の形。1人の戦いでは無く3人での戦いこそがこれまで共に研鑽を積んで来た3人の持ち味である。

 

 

 

 

 

「くっ、なんなのだあの機体は!」

 

 忌々し気に、デュランダルは戦況を見ながら声を荒げた。

 ザフト及び同盟軍の規模は十二分である。

 いくらオーブが精強とは言っても、2年前と同様に数の上ではオーブ側が圧倒的に不利だ。

 それが何故こんなにも押し負けているのか。

 大西洋連邦と比べれば、凡そザフトの部隊も精強である。オーブとの優劣は決して大きなものでは無い筈だと言うのに。

 

「前線部隊より入電。戦線の維持は困難!」

「ミネルバより入電です! 艦隊司令部はオーブ領海外まで後退せよと!」

「何っ!?」

 

 驚きの指示に再びデュランダルが表情を険しくさせる中、艦隊司令部セントへレンズの艦橋内にタリアの顔が映った。

 

「グラディス艦長」

『司令部は直ちに後退を。オーブの攻勢が強まっております。敵の狙いは、間違いなくセントへレンズでしょう』

「バカな、これだけの布陣で抜かれると言うのか!?」

『抜いてくるはずです。それが……オーブの戦術ですから』

 

 断言して見せるタリアの声に、デュランダルは僅かに気圧された。

 

 鍛えに鍛え抜かれた国防軍による堅牢な防衛線。

 その攻略に躍起になってる間に、簡単に止められない強烈な一矢が本陣を狙う。

 少数精鋭を突き詰めているからこその個人頼みな戦術であり、軍略としては下の下。

 だが、それ故に凝り固まった戦術に対しては良く刺さるという訳だ。数の不利を元から想定しており、それを覆す術を良く追及している。

 

 嘗てはそれをタケルとシロガネが。そして今回はアサギ達が担っているという事である。

 

「グラディス艦長。デスティニーとレジェンドは……シンとレイは何をしている」

『抑えられていますわ……あちらも虎の子を切ってきました。フリーダムとジャスティスです』

「なんだと!?」

『恐らくは改良機かと思われます。戦況は────五分五分と言ったところです』

 

 再び、デュランダルの顔が歪む。

 先程から聞き及ぶのは想定外の事ばかり。

 ベルリンで喪われたはずのフリーダム。ヤキン・ドゥーエで喪われたはずのジャスティス。

 それらが何故改良されてオーブにあると言うのか。

 モルゲンレーテの開発事情には間諜を入れていたが、そんな情報はどこにもなかったはずである。

 

「わかった……セントへレンズは後退しよう」

『いざとなれば撤退も視野に』

「あぁ、分かっているよタリア」

『では』

 

 プツンと切られる通信モニタを見つめながら、デュランダルは僅かに笑みを浮かべた。

 

「────なるほど。ようやく表舞台に立つという訳か。アスラン・ザラにキラ・ヤマト」

 

 オーブの防衛戦。

 一応は所属不明であったアークエンジェルと合わせて、名実共にオーブの戦力として姿を現した彼等の存在に、彼は驚きながらもどこか憑き物が落ちたような心地であった。

 

「それに、ラクス・クライン」

 

 こうなった以上は彼女とて無関係ではあるまい。

 明確に彼が知らぬ動きの気配が見え隠れするのは、つまりはそう言う事である。

 再びこの世界の行く末を憂いて、彼女達が動き出したという事だ。

 

 

「ふっ、見せてもらおうか。君達が出す……その答えをね」

 

 

 不適な笑みを浮かべながら、ギルバート・デュランダルは何かを待ち望むかのように。戦場を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロード・ジブリール包囲網。

 同盟軍による猛攻もそうであるが、オーブ国防軍とてこの戦いの発端である彼の捜索には躍起になっている。

 発進準備を終えているセイランのシャトルは、未だ捜索の手が届いてはいないがそれも時間の問題。

 一分一秒を追うごとに厳しくなっているその包囲網に、ジブリールの恐怖心は頂点に達していた。

 

「もう待てん! シャトルを発進させろ!」

 

 シャトルの機長達へと告げる声は焦燥に満ちていた。

 

「し、しかし、まだウナト様が──」

「重要なのは私だ! セイランではない! 貴様等もわかっているだろう、私が月に上がらねばならんのだ」

 

 ブルーコスモスの盟主にして、現在残るロゴスメンバーの唯一。

 彼を失うことは確かに…………このロゴスとデュランダルの戦いの明暗を分ける。勝敗を決める事だ。

 

 血走った目を見せながら、焦燥に駆られるジブリールを見て状況を認識したか、静かにシャトルの機長達は頷いた。

 

 

 数分後。ウナト・エマ・セイランの到着を待たずして、シャトルは遂に発進する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 放たれる光条をまた一つ躱して、キラはフリーダムを走らせた。

 

「えぇい!」

 

 接近戦を狙おうとするフリーダムに対して、レイのレジェンドはバックパックのドラグーン砲塔も併せた驟雨の光で迎撃。

 弾幕を張ってフリーダムを寄せ付けない。

 

「くっ、あのパイロット……射撃が上手い」

 

 追い返される様に距離を取りながら、思う様に攻めきれずにいる現状にキラは歯噛みした。

 出来るのであれば、早々にケリをつけて他の援護に回りたい。しかし、それを許してくれるほど甘い敵では無かったのだ。

 

 フリーダムもレジェンドも、背部バックパックにドラグーンを備えた射撃兵装をメインに揃える機体である。

 VPSとビームシールドを備える両機での撃ち合いは、決定打にかける戦いの様相となっていた。

 レジェンドの射撃は、高い機動性と、キラの高い技量によってフリーダムを捉えることができず。

 逆にフリーダムがレジェンドを狙っても、堅実にシールドで受けては多すぎるレジェンドの砲塔で撃ち返す動きとなり、フリーダムの攻撃も届かない。

 キラにはその反応速度に任せた接近戦も狙えるのだが、その目論見をレイは徹底的にケアして牽制と後退を繰り返し、フリーダムの接近を阻んだ。

 偏に、サヤが駆るセイバーやシロガネが無遠慮なまでに踏み込んできて接近戦を狙ってきたことから得た、レジェンドの弱点への対処である。

 

「牽制が上手い……僕の動きの先へ先へと、次々に攻撃を飛ばしてくる」

「どれもが紙一重で避けられるか……その上、反撃の射撃の精度は恐ろしい程正確ときてる。なんてパイロットだ!」

 

 キラとレイは互いにその脅威を感じながら撃ち合いを繰り返した。

 

 

 そんな膠着状態の戦いとは打って変わって、近くで戦うデスティニーとジャスティスの攻防は激しいものとなっていた。

 

「はぁああ!」

「おぉおお!」

 

 デスティニーのフラッシュエッジとジャスティスのビームサーベルが火花を散らす。

 押し合いとなった瞬間に、アスランはジャスティスの脚部、膝と爪先間で出力されるグリフォンビームブレイドを展開。

 蹴撃を武器としてデスティニーを蹴りつけた。

 

「なんの!」

 

 振り上げられた蹴撃がデスティニーを捉える前に、シンは距離を取って躱す。

 光の翼を生かした高速機動。その中で次々と攻め手を繰り出しては即座に離脱するヒットアンドアウェイで、ジャスティスとの正面からの攻防を避けた。

 

 アスラン・ザラはザフトのアカデミーで教官たちが語り継ぐ程の英雄である。

 その成績は歴代に置いてトップ。ナイフを持った近接戦闘に置いては、教官をも下したという、天才中の天才だ。

 その彼を相手に、正面から近接戦闘を挑むなど正気の沙汰ではない。

 

 故に、シンが勝負を挑むのは一瞬の戦い。

 キラ・ヤマトやアスラン・ザラと同じく、大戦の英雄と謳われたタケル・アマノをして優れてると言わしめた、シン・アスカの反応速度と危機回避能力に賭けた戦いである。

 

 ビームサーベル代わりになるフラッシュエッジと、零距離で使えるパルマフィオキーナ。この2つを駆使して瞬間的な攻防でアスランの土俵に上がらずに仕留めに行く。

 

 先程の様なやり取りの攻防を、シンは既に3度繰り返している。

 脚部のビームブレイド。フラッシュエッジと同系統のビームブーメラン。連結ビームサーベルのシュペールラケルタ等、次々とジャスティスが備える武装を把握していった。

 

 相手の選択肢を知れば知る程、対処はしやすくなると言うものだ。

 聞いた限りでは、アスラン・ザラはレイやヤヨイと同じ優等生タイプ。戦いに置いて、豊富な手札があるなら同じ手は切らないタイプである。

 フラッシュエッジとパルマフィオキーナに手を絞り、ムキになって攻防を繰り返すシンとは真逆のタイプだ。

 

 後数度挑めば。ジャスティスの切り札は全部見えてくるだろう────後数度を躱し切れば、シンにも勝機が見えてくる。

 

 勝利に向けたか細い糸を必死に手繰る様に、シンは再び仕掛けた。

 

「はぁああ!」

 

 牽制に放たれるビームライフルをビームシールドで受け流しながら接近。

 デスティニーが繰り出せる最速を以て、先の先をとった。

 ソリドゥス・フルゴールのビームシールドを形状変化。出力範囲を絞りサーベル状へと変えてジャスティスに突き付ける。

 意表を突く攻撃に対して、アスランはジャスティスが備えるビームキャリーシールドを構えて受け止めた。

 

「そんな小手先の攻撃が通じると思ったか!」

 

 シールドで防いだ瞬間。アスランは即座にデスティニーを押し返した。

 シンはすぐさま機体を翻して距離を取るが、その瞬間に強烈な悪寒が彼を襲う。

 

「なっ!?」

 

 デスティニーの眼前にはグラップルフック。所謂、接近戦へと引き込むためのワイヤー付きクローが放たれていた。

 ヒットアンドアウェイで距離を取ろうとするデスティニーを逃すまいと、ジャスティスのシールドに備えられるグラップルスティンガーが遂にデスティニーの腕部を捕らえた。

 

「もらった!」

「ちぃ!?」

 

 巻き取られていくワイヤーと共に接近してくるジャスティス。

 片腕の自由を奪われ、絶対的な不利を悟ったシンはとっさにパルマフィオキーナでグラップルスティンガーのワイヤーを破断。

 光の翼の機動力にものを言わせて今一度大きく距離を取った。

 

「はぁ、はぁ……危なかった」

 

 デスティニーのコクピットで、シンは冷や汗が伝う感触を得ながら慄いた。

 満を持してと言う所か。繰り返された瞬間的攻防に対して、シンが距離を取った瞬間と言う僅かな意識の隙を突いた不意打ち。

 わかり易く射撃兵装を構えられれば身構えるが、シールドに仕込まれたグラップルフックは想定外であった。

 逃げおおせる事ができたのは運が良かったと言える。

 

「ちっ、逃したか」

 

 対するアスランも、今ので仕留められなかった事に落胆の色を隠せなかった。

 瞬間的な接近で先の先を狙うシンに対して、アスランは後の先。つまりはシンの攻撃を捌き、次のアクションへと入る前に仕留めようとしているわけだ。

 しかし、最初はまだわかり易かった攻撃が、攻防を繰り返す度に鋭く、そして早くなっていく。

 先程の意表をついた攻撃にしてもそうだ。徐々にシンは、アスランの牙城を崩しに来ていた。

 

「あの生意気小僧が短期間でよくもこんな……」

 

 戦いのたの字も知らなかった幼馴染の様に、彼もまた厳しい戦いの中で進化してきたのだろう。

 以前にミネルバで見た印象とは、随分と違って見える動きに、アスランは驚かされるばかりであった。

 

「このままじゃ埒が明かないな」

 

 1つ集中を高めてアスランは次の攻防へと身構えた。

 これ以上、相手の思惑の乗る必要は無い。接近と離脱を繰り返すと言うのなら、今度こそこちらの土俵に上がってもらおう。

 

 鋭い視線でコクピットから覗けるデスティニーを睨むと、アスランはラケルタの連結を解いてサーベルを両手に持たせた。

 

「来い、シン・アスカ」

 

 通信を繋がずとも、アスランの声はジャスティスが身構えた事でシンへと伝わる。

 

 光の翼を展開し、デスティニーが再び動いた。

 同時、目を見開いたアスランは同様にジャスティスを走らせる。

 待ち構える事を辞め、後の先では無くシンと同様に先の先を狙う攻防へ。

 

 瞬間、シンはフラッシュエッジを投射。

 向かい合いながら尚も、アスランの先手を取る。

 それをアスランはジャスティスのフォルティスビーム砲でフラッシュエッジを撃ち抜き破壊……両機の間に爆煙が舞った。

 

「でやぁああ!!」

 

 広がる爆煙を断ち切る様に、デスティニーはジャスティスにむかってアロンダイトを振り下ろした。

 爆煙を目くらましにした不意打ち。

 長大なアロンダイトのリーチで、カウンターを狙うにはジャスティスの間合いは遠い。

 躱すにしろ防ぐにしろ、質量のあるアロンダイトを捌くには大きなアクションが必要だ。その隙に懐へと潜り込んでパルマフィオキーナで仕留める。

 

 振り下ろされたアロンダイトを、ジャスティスは2本のビームサーベルを交差して防いだ。

 同時にアロンダイトを手放してデスティニーは吶喊。

 させまいと振り上げられたグリフォンビームブレイドを、必死に掻い潜れば後はデスティニーの掌部を押し当てるだけ。

 

 仕留めた……そうシンが思ったその刹那。

 

「がっ!?」

 

 巨大な衝撃がデスティニーを襲った。

 何が、と驚く余裕もなくデスティニーは叩き落とされ自由落下を始める。

 

「読み合いは俺の勝ちだ──シン・アスカ」

 

 シンとデスティニーが見上げるその先で、ジャスティスは背部のリフターであるファトゥム-01とドッキング。

 そこで漸く、シンは悟った。

 フラッシュエッジを破壊して発生した爆煙を目眩しにしたのはシンだけではない。アスランもまた、爆煙の奥でファトゥムを分離し、時間差でデスティニーへと突撃させていたのだ。

 そうとは気付かず、ジャスティス本体だけを見て仕留めにかかったのがシンの敗因と言える。

 少し機体を注意深く見れば気づける事が、勝負に出ていたがために気が付かけなかったのだ。

 

「くっ、そぉ……やっぱり百戦錬磨かよ」

 

 ファトゥムとドッキングし襲来してくるジャスティスに悪態を吐きながら、それでもシンは諦めずに向かい来る真紅を睨みつけた。

 

「終わらせる!」

「だとしてもっ!!」

 

 連結させたラケルタビームサーベルが振り下ろされる。

 それをシンはエネルギーチャージを終えた長射程ビーム砲をパージし犠牲にする事で難を逃れた。

 臨界直前の砲身を目の前に出されたジャスティスはそれを切り裂いてしまい誘爆。それなりに衝撃を伴う爆発に見舞われて思わず後退させられる。

 

「くっ、こいつ……やってくれる」

「そんな簡単に、負けてたまるか!」

 

 大戦の英雄。アカデミーの歴代トップ。

 そんな前評判などどうでも良い。

 今の自分は同盟軍の旗頭。どんな相手であろうとも、負けることは許されない。無様を晒す事などあってはならない。

 それが、デュランダルよりデスティニーを託された己の使命なのだ。

 

 持ち前の反骨心で己を奮い立たせて、シンはどうにか敗北の手を振り払った。

 

 

『シン、一度退くぞ。その装備状況では戦えまい』

 

 

 飛び込んでくるレイからの通信。

 ジャスティスへの警戒を緩めないままデスティニーの状態を見れば確かにレイの言う通りであった。

 デスティニーのメイン武装であるアロンダイトは先程囮に使い捨ててしまったし、長射程ビーム砲は助かるための犠牲にした。

 取り回しの良いサーベル代わりなフラッシュエッジも先程ジャスティスに撃墜され、残るはビームライフルと両手のパルマフィオキーナのみ。

 対して、ジャスティスに武装の損耗は無い。

 

 決定的な勝敗こそついていないものの、状況を見ればシンの敗北は明らかであった。

 

 

「あぁ、わかったよレイ。帰投す──」

 

 

 瞬間。

 シンだけに限らず前線にいた者達の元に、戦場に乱入した闖入者の来訪を告げる音が鳴った。

 

 オーブ本島ヤラファスの、それも戦場とは反対の方から立ち上る飛行機雲。

 

 

 

「はっ、本島二区に発進する機影────これは、セイラン所有のシャトルです!!」

 

 

 

 いち早く察知したのはオーブ国防本部のオペレーターだった。

 セイラン所有のシャトルと報告を聞きユウナがギョッとする中、通信を聞いていたカガリは即座にすぐ側にいたサヤを呼んだ。

 

「サヤっ!」

「言われずともっ!!」

 

 サヤの乗るシロガネが恐ろしい速度を見せて飛翔する。

 

「シン! 追いなさい! 撃墜してでも良いわ、止めて!」

「くっ、了解!」

 

 タリアの指示で、即座にシンもデスティニーを走らせた。

 誰の目から見ても明らかにわかる、戦場から逃げ出そうとするシャトルの姿。

 乗っているのは間違いなく、ロード・ジブリール────逃せるはずもない。

 

「くっ、間に合って!」

「くそっ、届けよ!」

 

 だが、いくら最速を誇ったシロガネや光の翼を展開するデスティニーと言えど。速度の乗ったシャトルに追いつける道理はない。

 戦闘用の機動兵器の速力で、大気圏離脱用のシャトルの速度に適うはずはなかった。

 徐々に、彼我の距離は広げられていく。

 

「なら、撃ち落とします!」

 

 サヤはシロガネのキョクヤを展開。

 シロガネの背後から追いついてきたデスティニーがライフルを放ちながら追従していく中、サヤはシャトルへとキョクヤをロックオンした。

 

 

 だがそこで。

 

 

 サヤ・アマノは言い様のない強烈な悪寒を感じ取った。

 本能に訴えかける様な危機感。

 それは同様にSEEDへと至っていたシンの危機を感じ取って得た感触だったのかもしれない。

 

 胸の内を揺さぶるその気配に従い、サヤはデスティニーへと通信を繋いだ。

 

 

『下がりなさい!! シン・アスカ!!』

「えっ…………」

 

 

 

 次の瞬間。

 

 

 地球を、淡い光が照らすのだった。

 

 




シンとアスランの戦いにめっちゃ尺を取っちゃった。
ほぼほぼ完敗なのだけど、でもまともにやりあえてる感じ。
これも訓練の賜物です。
レイもまた原作よりも強化。しっかり訓練してきてるし、元が元なので血統書付きですしね。
互いにドラグーンを封じられる大気圏内では、共に決め手にかけるくらいにまでは競り合ってもらいました。

感想、どうぞよろしくお願いします。
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