機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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年明けから執筆時間とれなくてつらい


PHASE-82 襲来

 

 

 

 月面ダイダロス基地。

 地球連合所有の基地でありながら、実質的にはロゴスやブルーコスモスの派閥が席巻する、月面の大規模基地である。

 

 そのダイダロス基地で現在、ある兵器の試運転が行われようとしていた。

 

 軌道間全方位戦略砲“レクイエム”

 

 死者に手向ける鎮魂歌の名を与えられたこの兵器は、基地内に敷設された超巨大なビーム砲と、月周辺に配備された複数の廃棄コロニーで構成される。

 廃棄コロニー内面に、フォビドゥンも装備していたビーム偏向装置ゲシュマイディッヒパンツァーを設置し、廃棄コロニーを巨大な偏向装置へと作り変え、これにより月面から放たれる巨大なビームを偏向させ、目標地点を狙撃するのだ。

 その出力規模は間違いなく大量破壊兵器の区分であり、その上廃棄コロニーの配置次第で射角は無制限。精度までをも両立させる。

 

 手軽さと言う点では核ミサイルを積んだ機動兵器に軍配が上がるが、その脅威度で言えば間違いなくこちらが上で在ろう凶悪な兵器である。

 

 そして、こんな兵器の開発を推進してきた者こそがロゴスのロード・ジブリールであったという訳だ。

 

 そんな彼の置き土産を前に、ダイダロス基地司令部で、ムルタ・アズラエルは笑った。

 

「う~ん、そろそろ準備はできましたか?」

 

 楽しみにしていたショーが始まるのを心待ちにするかのような声音であった。

 漸く完成を見たレクイエムの試射。これが順調に終われば、ギルバート・デュランダルの攻勢など鎧袖一触で蹴散らせると言う物。

 無論、失敗するなどとは露ほども思っていないが、それがもう間もなく見れるとなっては気持ちが逸るのは仕方のない事であった。

 

「チャージは完了しております」

「上々……それでは、カウントを始めてください」

「しかし、本当に撃つのですかな。貴方はこれを」

 

 ダイダロス基地司令官のどこか疑りを込めた視線を受けて、アズラエルは訝しんだ。

 

「当然でしょう? 撃つために造ったんじゃないんですか?」

「それは頼もしいお言葉です。最近は必要だと巨費を投じておきながら、肝心な時に撃てないというお優しい政治家が多いものでね」

 

 あぁなるほど、とアズラエルは納得の顔を見せる。

 2年前……Nジャマーキャンセラーが手に入った時もそうであった。

 折角用意していた核ミサイルが日の目を見ると言う時に、人道的見地から難色を示す者達は多く出て来た。

 それは今も変わらず。大西洋連邦大統領であるジョゼフ・コープランドは、このレクイエムの開発と発射に難色を示し続けて居た人間である。

 

「嘆かわしいですね」

「それでは我々軍人は一体何のために居るのかと。つい、そう思ってしまうのですよ」

「えぇ、違いない。撃つべき時には撃たないと」

「ですが、別の意味で……本当に今撃ってよろしいのですか? あの国にはどうやらジブリール氏が居るとの事ですが」

 

 再び疑惑の言葉が司令官より投げられる。

 レクイエムの試射。その目標地点は地球────もっと言うなら、現在戦いの渦中にあるオーブ首長国連邦首都オロファトの政庁である。

 撃てばジブリールを巻き込まないか……という事であった。

 

「あぁ、良いんですよそんな事。彼はもう十分地上での役目を果たしてくれました。後は……私が引き継ぎますから」

 

 アズラエルは何でもない様に答えを返した。

 元より、ベルリンでの一件から彼の出番はこのレクイエムの完成までという算段であったのだ。それまでデュランダルの目を引き付けてくれていれば、それで十分だったのである。

 

 ここから先、引っ掻き回すだけの無能は要らないという事だ。

 

「どうぞ、カウントを開始してください」

「──わかりました。では」

 

 発射の秒読み。最終安全装置を解除し残り30カウント。

 秒読みの声を聞きながら、アズラエルは2年前を思い出していた。

 

 不発に終わったプラントへの核攻撃。同時に、決定的な事にはならなかったジェネシスの地球への攻撃。

 散々となった世界で、一応とは言え平和の条約が結ばれたのは必然であった。

 だが、彼にとってユニウス条約が齎した平和は埋伏の時。依然としてムルタ・アズラエルはプラントの殲滅という目標を変えてはいなかった。

 

 そもそも、本来プラントとはその名前が示す通り地球にとっての資源生産プラントである。

 安定した生育状況を確保した食料プラントや、宇宙における資源採掘のプラント等、種類は多岐に渡るが、いずれも地球の為に建設されたものだ。

 元よりプラントという存在は、地球に住む彼等の飼い犬に過ぎなかったはずなのだ。

 

 それが何を血迷ってか、反逆。飼い主の手に噛みついてきた。

 無論そこには、諸々の言い分はあるだろう。どちらもが歩み寄れなかったというのはそういう事だ。

 だが、それ故に。決裂し独自国家となった今のプラントとそこに住むコーディネーターの存在を、認めるわけにはいかなかった。

 

 これ以上地球圏内で勢力が分かれる前に、プラントを1基残らず破壊する。

 それが、この2年間アズラエルが目論み、抱え続けて居た悲願だ。

 

 そして、その為に計画したのが、レクイエムのオーブへの試射である。

 地球圏から勝手に独立したプラントの殲滅。だがそんな事をすれば、彼の国は反発するだろう。

 2年前に気づかされた、小さな島国であるはずのオーブが持つ力。

 それは数倍の戦力を以てして落とせなかった軍事力もそうだし、その独自の思想と理想が魅せる影響力もそうだ。

 プラントを殲滅した後の世界で、最も邪魔となる国家であった。

 ロゴスの存在が表沙汰となった今、例えプラント殲滅が叶ったとしてもオーブを筆頭に地球圏はまとまりを示していく事だろう。

 

 彼の国が存在する事は、プラントの殲滅を図るアズラエルにとって、事の前後に限らず邪魔にしかならなかった。

 

「10、9、8、7──」

「ふふ、さよならですよジブリール。どうです、言った通りでしょう?」

 

 届かぬ言葉を、どこか満足げにアズラエルは告げた。

 

 

「高みの見物だけで物事が思い通りに進められると思っているから、お前は届かないんだ」

「3、2、1────レクイエム、発射」

 

 

 侮蔑の声音と共に、宇宙を巨大な閃光が引き裂くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼前を、巨大な閃光が横切り。

 オーブへと向かう途上であったタケルとユリスはその足を止めて呆然としていた。

 

「なん……だよ、今の」

 

 機動兵器が捻りだせる様な規模ではない、巨大すぎる閃光。あれは嘗て見たジェネシスの光と同じ。射線上の一切を無に帰す、埒外な破壊の力。

 

 後に何も遺らない……破滅の光であった。

 

「──恐らくは、新たに作られた大量破壊兵器でしょうね」

「大量破壊兵器って……そんなものがどこから」

「言わなくてもわかるはずよ。こんな事するのは連中だけ」

 

 含みを持たせるユリスの言葉に、直ぐタケルはその考えに至った。

 この世界で、あんなものを平気な顔で用いる存在は1つだけだ。

 

「──ロゴス」

「でしょうね」

「胸騒ぎがする。ユリス、急ぐぞ」

「わかってるわよ」

 

 止めていた歩みを再開し、再び機体を動かそうとしたところで、シロガネに緊急のメッセージが飛んで来る。

 

「メッセージ? 軌道上のエターナルから……」

「ピンク姫から? 一体こんな時に何よ」

 

 ユリスの怪訝な声を聞き流しながら、表示されるメッセージを読み進めていくと、次第にタケルは目を見開いていく。

 

「どうしたのよ兄さん」

「──目標地点は、オーブだ」

「はっ?」

 

 震えた声音で告げられた言葉に、ユリスは思わず戸惑う。

 

「何言ってるのよ。何でこのタイミングでロゴスがオーブを──」

「理由なんてどうでも良い! 行くぞユリス!」

「はっ、えっ、ちょっと待ちなさいって!」

 

 突然に進路変えて、シロガネを走らせるタケルに、ユリスは慌てて追従していく。

 シロガネが向かう先はオーブへと向かう大気圏突入のコースでは無かった。

 

「どこ行く気よ!」

「軌道上だ!」

「はぁ?」

 

 切羽詰まった様なタケルの声音に、ユリスは惑いながらも次の言葉を待った。

 

「さっきの光はオーブに……そして今、軌道上からロゴスの大部隊がオーブへと降下している!」

「何よそれ……何で」

「理由なんか知るか! とにかく、何としても止めないと!」

 

 祖国へと降り注いだ光だけでも、どれだけの被害が出ているのか……それを考えるだけで、足元から地面が崩れていくような喪失感がタケルを襲う。

 その上で尚、更なる暴虐の手がオーブの地に降り注ごうとしている。

 

 

「お願いだ……どうか……」

 

 

 ────これ以上、大切なものを壊さないでくれ。

 

 タケルは浮かびそうな涙と不安を必死に抑えつけて、シロガネを走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼の前で……宇宙へと逃げるシャトルが巨大な光に呑み込まれた。

 

 次いで、地球を震わせる様な巨大な衝撃が世界を揺らした。

 

 直上の空から降り注いだ、巨大な光の柱は、オーブ首長国の政庁へと突き刺さり大きな爆発を起こす。

 まるで全てを呑み込まんばかりの光景であった。

 

 

「あっ……あぁ……」

 

 

 時間にしてどれ程であろうか。

 認められない現実に震えながら、カガリ・ユラ・アスハは目の前の光景を見つめる。

 小さな島……オーブの首都があったヤラファス島に巨大な光の柱が突き刺さり。暴威の嵐が吹きすさび……

 

 後に残るは、巨大なクレーターとオーブであった物の残骸だけであった。

 

「な……に……が……」

 

 戦場で、まるで時が止まった様に誰もが動きを止めていた。

 それ程までに、先の光景と今目の前に映る光景が、信じ難くて仕方のないものであったのだ。

 

 

 

 

 

「なんだよ……一体さっきのは……なんだって」

 

 寸前のところでサヤからの警告が入り、どうにか巻き込まれる事無く無事であったシンもまた、目の前の光景に呆然としていた。

 既にシャトルがどうとか、ジブリールがどうこう言う話ではない。

 

 目の前で、オーブ首長国連邦という国が消し飛ぶ様を見せつけられたのだ。

 

「なんだよ……なんなんだよこれは!?」

 

 理解の及ばない事態にシンは叫んだ。

 それ以外に出てくる言葉など無く、ただ答えが返ってくるはずもない問いを、誰に掛けるでもなく問い続けた。

 

 

 

 だが────

 

 

「お、おい……なんだよあれ」

 

 

 返されるはずの無い、シンの問いの答えは──

 

 

「そんな……まさか……」

「────ロゴスの、降下部隊」

 

 

 絶望となって、彼等の眼前に突き付けられる。

 

 

「さぁ、今日で幕引きといきましょう────オーブと言う国をね」

 

 

 

 

 オーブの空が、悪意の限りで埋め尽くされていた。

 

 

 

 

 

 50か? 

 

 ──否。

 

 100? 

 

 ──否。

 

 空を埋め尽くす様なMSの大群は、正に数えきれない。

 地球軍所有の量産MSウインダムであった。

 

 

「何で……このタイミングで連合が」

 

 

 カガリが慄きと共に呟くと同時────惨劇は幕を上げる。

 

 

「なっ!?」

 

 

 降り注ぐ、光の雨。

 オーブの空を覆うような大部隊から墜とされる、破壊をもたらすビームの光。

 その余りの数は、オーブ国防軍と同盟軍を問わず、次々と撃墜していった。

 

 それだけではない。

 レクイエム同様、オーブの直上より降下してきた部隊がそのまま攻撃したとなれば、その銃口が向く先はオーブ本土。

 破壊の光は、僅かに残された首都オロファトをも、焼き始めた。

 

 目を見開いて、その光景を見つめたカガリは、現実を直視するのに数秒の時間を要した。

 ジブリールの入国を発端とした戦い。それでも、どうにか国土への被害を最低限に抑え、善戦しているはずであった。

 先程のシャトルにジブリールが乗っていたのなら、既にオーブと同盟軍の戦いとて無意味になる。

 

 講和の道をも、カガリは見据えていたというのに。

 

 目の前に広がるのは、そんな算段を全て無に帰す、圧倒的な暴力。

 最もわかり易い、数を揃えた飽和攻撃。

 

 人が、街が、国が……焼けていく。

 

 

「やめろおおおお!!!」

 

 

 我を忘れて、カガリはアカツキを走らせた。

 オロファトの街の直上に躍り出て、アメノイワトを最大範囲で展開。僅かな────本当に僅かな国土を守る。

 

「ユウナ! アマテラスは動かせるか!」

 

 戦艦アマテラス──モルゲンレーテで設計した、アカツキと同じく護る事を突き詰めた戦艦である。

 あれならば、アカツキよりも余程多くの範囲を守り切れるだろう。

 当然、この戦いでも出ていた筈であった。

 

 しかし、ユウナからの答えは返って来ない。

 

「ユウナ! 聞こえないのか!」

 

 そこでカガリは気が付く。

 オーブ全域に降り注ぐ光の雨によって────既に国防本部も破壊されていた事に。

 

「ユウ、ナ……くそっ!!」

 

 あの軽薄な声が返ってこない事に、また一つ胸を痛めながら、カガリは通信回線を開く。

 

「国防軍各機! 応戦しろ! これ以上オーブの地を焼かせるな!」

 

 悲痛を乗せた声と共に届けられた指示に、オーブ国防軍は動き出す。

 

 即座に、機体を走らせるのはキラとアスラン。

 蒼天の翼と真紅の騎士がオーブの空を翔けた。

 

「キラ!」

「うんっ!」

 

 最前線────即ち、降下部隊が佇む高高度。

 一気に飛翔した2機はマルチロックオンで次々とウインダムを撃ち抜いていく。

 

「マユラ! ジュリ!」

「了解!」

「任せて!」

 

 アサギ達3人も次々に吶喊。

 キンシャクが駆け抜け、シュトリが切り込み、コンカクが次々と敵機を撃ち落としていく。

 

 シャトルを追って飛び出していたサヤのシロガネも参戦。

 縦横無尽に駆け回り、次々と敵機を切り裂いていく。

 

 一面の青を見せるオーブの空が、硝煙と爆煙に覆われるまで、そう多くの時はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな……何という事を」

 

 エターナルの艦橋で、ラクスは信じられないものを見る目で慄いた。

 

 目の前を通り過ぎた巨大な閃光と、そしてどこから現れたのか、降下ポッドを大量に積んだ大艦隊。

 ポッドの降下軌道は、紛れもなくオーブ本国である。

 

「くそっ、一体何の真似だありゃ! ダコスタ、オーブの状況はどうなってる!」

「通信障害が激しく、現在連絡が取れません!」

「アークエンジェルとはどうなの?」

「そっちも無理ですよ!」

「前方より熱源接近────MSです!」

 

 オペレーターの報告に、一同緊張が走る。

 エターナルはオーブへ降下ポッドを落とすために軌道上で待機していた。

 当然、ロゴスの部隊が同様に降下軌道に入ると言うのなら、その近傍にいるであろうエターナルの姿もあちらから確認されるだろう。

 2年前の大戦で名を上げた英雄艦を警戒し、部隊を遣わすのは必至である。

 

「バルトフェルド隊長。ヒルダさん達は?」

 

 焦燥の浮かべながら、ラクスがバルトフェルドに問いかけた。

 エターナルには現在、クライン派が仕上げた新型MSが3機搭載されている。

 

 ZGMF-XX09T、機体名“ドムトルーパー”。

 先の大戦後のザフトにおける量産MS設計競争で、不採用となったお蔵入りの機体である。

 その設計データをクライン派が回収、及び改良した機体となっており、地上における高機動を実現するためのホバリング推進システムや、ユニウス条約で禁止されたミラージュコロイドを用いた攻性フィールドを備え、攻防両面に強い等その性能はザクやグフを軽く凌駕するものである。

 

 そして、これらには既にクライン派が抱えるパイロット達が乗り込んでいた。

 

「機体もパイロット達も準備はできているが……既に降下ポッドの中だ。今ここで緊急発進をすれば今度はオーブに降りられなくなる」

「そんな……」

 

 元々オーブへの増援の為の3機だ。

 降下ポッド内で待機している彼等を緊急発進させるためには、ポッドからパージするしかない。

 しかしそうなれば今度は彼等の大気圏突入が不可能になる──即ちオーブへの増援は送れなくなる。

 先程、大艦隊から送られた部隊数を考えるにオーブの窮地は確実。地上で戦うキラ達に余裕など在りはしない。

 

 オーブかエターナルか────ラクスはその選択を迫られた。

 

「────わかりました。では急ぎポッドを射出してください」

 

 静かに、ラクスはオーブを護る事を選択した。

 

「そんな!? そんな事をすれば我々は」

「今は私達よりオーブですわ」

「だが、射出した後はどうするつもりだ?」

「即座に転進して撤退を。あちらの狙いはあくまでオーブです。距離を離せば追撃の手は直ぐに退くはず────アイシャさん、カゼキリで降下ポッドの護衛をお願いできますか?」

「えぇ、勿論。直ぐに出るわ」

 

 射出した降下ポッドを撃ち落とされては元も子もない。

 エターナルに搭載してきた、先日タケルが乗ったカゼキリでのポッドの護衛を、ラクスはアイシャに命じる。

 それに間髪入れずに応じたアイシャはすぐさま艦橋を出ていった。

 

「格納庫! カゼキリ発進準備だ、急がせろ」

 

 

 

 

 

 降下ポッドに搭載されたMSドムトルーパーのコクピット内で待機する3人のパイロット。

 

 ヒルダ・ハーケン。

 ヘルベルト・フォン・ラインハルト。

 マーズ・シメオン。

 

 黒に染めたザフトのパイロットスーツを着こむ彼等は、シーゲル・クラインが存命の時からのクライン派のパイロットである。

 彼が亡き今は、クライン派として彼の娘であるラクスの為……彼女が目指す平和の為に戦うと誓った者達である。

 

 

『ヒルダさん。ポッドを射出致しますわ。降下後はプラン通りにオーブの防衛に』

 

 

 隊長であるヒルダに、ラクスからの通信が入った。

 漸くの指令に、ヒルダは僅かに頬を緩ませる。

 

『戦果を期待します……どうか、オーブをお守りください』

「委細承知。働きは結果で見せます、ラクス様」

「任せてくださいってね」

「うるさいよ野郎ども────任務了解です。行って参ります、ラクス様」

 

 割り込んでくるヘルベルトとマーズを黙らせて、ヒルダはラクスへと威勢よく返した。

 

 自分達はパイロットである。

 ご立派な理想に傾倒しても、出来る事は戦う事だけ。

 だがそれで少しでも彼女の理想に繋がるのなら。彼女の理想に役立てるのなら。

 

 この命尽きるまで戦う……それが、彼等の意志であった。

 

 

『降下ポッド────射出します』

 

 

 オペレーターの声を受けて、戦士たちはオーブ救援の為に地球へ向けて飛び出していくのだった。

 

 

 

 

 

 エターナルを発進したアイシャは、カゼキリを走らせ接近中のMS部隊へと向かった。

 

「んっ、結構な数がいるじゃない!」

 

 元々シロガネとアカツキ、シンゲツの開発の為にファクトリーへと運び入れたカゼキリは、豊富な選択肢がある筈の武装のほとんどを備えていない。

 ライフルとサーベルのみという、最も簡易な装備でエターナルに配備されたカゼキリ。これでエターナルと降下ポッドの防衛の為に戦うのは骨が折れる話であった。

 

 数の不利に押され、放たれる攻撃をギリギリのところで回避していく。

 そのままライフルによる牽制を続けてどうにかアイシャはウインダムの部隊を釘づけにして見せた。

 

「連合の機体だからってバカにはできないわね」

『アイシャ! ポッドの方は無事降下軌道に入った。こちらも撤退するぞ、帰投しろ!』

「了解、アンディ」

 

 彼女がウインダムの部隊を引きつけたお陰で、ヒルダ達が乗せられた降下ポッドは無事にオーブへの降下軌道に入れた様である。

 バルトフェルドの報告でアイシャはカゼキリを翻した。

 

 

『別方向より、新たなMS部隊接近!』

 

 

 しかし、帰投しようとするアイシャをオペレーターの報告が止めた。

 アイシャが引き付けた部隊とは別の方から……恐らくはオーブへと降下する後続部隊が来ていたのだろう。新たなウインダムの編隊が6機、接近していた。

 既に一杯一杯だった状況に現れた増援に、エターナルは一挙に窮地へと追い込まれる。

 

「全く、こっちはアナタ達の本命でもないでしょうに!」

 

 こうなれば、撤退するにもエターナルの殿を務める存在が必要である。

 アイシャの帰投を待つエターナルがハッチを開いているのを余所目に、カゼキリは帰投直前でエターナルへと背を向けた。

 

『アイシャ、何を──』

「アンディ達は行って! ここは私が抑えるから」

『バカを言うな。そのような事が』

 

 わかり易い……恋人の嫌な決断にバルトフェルドは慌てて首を振った。

 

 だが、次の瞬間である。

 

 エターナルとカゼキリに迫るウインダムの部隊が次々と撃墜されていく。目にもとまらぬ速さで何かが駆け抜け、白銀の閃光がウインダムを穿った。

 そして、その後には……エターナルの眼前に大きな花が咲いていた。

 

 背部の可動性多角スラスターから、ヴォワチュールリュミエールによる光を噴出。花弁のようなスラスターから噴出するそれによって生まれるは、巨大な光の花。

 

 

「シロガネ……タケル!」

「全く、坊やったら」

「良いタイミングで来てくれる」

 

 

 ラクス達が驚きと安堵に包まれる中、閃光は再び閃いて敵機を穿った。

 

 タケル・アマノとORB-0000シロガネ・コクウの来着である。

 

 




ここからきっと、読者の予想外の展開へ……


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