エターナルの眼前へと躍り出たタケルは、戦域の情報を俯瞰。
接近中の敵MSは合計12機。シロガネを以てすれば取るに足らない数であった。
すぐさま、タケルは通信を開いた。
「ラクス、オーブの状況は?」
聞こえてくるタケルの声に、ラクスは息を呑んだ。
必死に感情を押し殺した声だ。それが怖れか、怒りか、或いは悲しみか。
全部がない混ぜになっていても、彼であれば不思議ではない。
「先の光がオーブへと直撃。更に月からの降下部隊が、オーブへと次々降下しています────申し訳ありません。私達では、指をくわえて見ている事しか」
「ううん。ありがとう、教えてくれて」
努めて静かな声音である。
溢れて来る感情の全てを、意識的に外へと追いやりタケルは必死に今やるべきことを見据えた。
「ユリス、急いで降下してオーブをお願い」
「──兄さんは?」
「後続を全て断つ。そしたら直ぐに僕も降りるよ」
返された声と……そして繋がりを通して伝わってくるタケル・アマノの押し殺している感情。
怒りや憎しみが、無作為に全周囲へ向けられる様な気配はまるで世界を憎んでいた嘗ての自身やラウの様だと、ユリスは既視感を覚えた。
「了解──先に行ってるわ」
総毛立つタケルの心の気配に、ユリスは窘める様な意識を向けてからその場を離脱してオーブへの降下軌道に入っていった。
「ラクス、エターナルはアイシャさんを回収して一度撤退して。追撃をさせるつもりは無いけど、今の僕にエターナルを守る余裕は無いから」
それは敵の布陣を見てなのか。それとも彼の心にそれを気にする余裕が無いからなのか。
逡巡の末、ラクスはそれを後者と捉えた。
「わかりましたわ。ですがタケル、どうかご自分を責めないで下さい」
「──うん。大丈夫」
淡泊な答えだけを返し、シロガネは光の花を展開して戦場を駆けた。
「えっ」
シロガネが動き出してすぐ、エターナルのオペレーターが微かに驚きの声を漏らした。
「どうしたのですか?」
思わずラクスが問いかけた先で、オペレーターは恐る恐ると言う様に振り返って口を開いた。
「敵機が……もう……」
驚愕と共に挙げられた報告。見ればエターナルに接近していた敵MSは、悉くが撃墜されて既にエターナル周囲の安全は確保されていた。
「タケル……」
ラクスは、僅かに憂いを帯びた声を漏らす。
シロガネの速度を以てすれば、驚きはするがこの撃墜速度は不思議ではない。
だがどうにも嫌な予感を、ラクスはひしひしと感じ取っていた。
まるで、当たり前にあったものが全て壊されていくような……
目の前で起こるこの事態。その真なる意味がラクス達に伝わるまでに、それ程の時はかからなかった。
閃光となって駆け抜ける。
新たに作り上げられたシロガネのスラスターは、前身のシロガネから踏襲された可動性多角スラスターを採用。全方位への噴射を可能として高い機動性を得ており、その上で弱点であったサブスラスター兼ドラグーン兵装の展開に因る機動性の低下を克服する新機構が、ヴォワチュール・リュミエールによる光の噴射だ。
これにより、弱点であったはずの機動力低下はむしろ優れた点として生まれ変わった。
ドラグーン兵装ジンライの展開、それにより現れる光翼はシロガネに更なる機動性を齎す。
再び、現行MS最速の速力をシロガネに与えていた。
「っ!? しまった」
何かに気が付き、タケルはシロガネを急停止。
慌てて、射出していたジンライを“回収”する。
そう、ヴォワチュール・リュミエールによる機動性を得た代わりに、新たに別の問題が浮上していた。
それは切り離したドラグーン兵装の回収である。
前述した様にヴォワチュール・リュミエールによって規格外の速さを手にしたシロガネであるが、その本領を発揮すれば、今度は切り離したドラグーンの端末が追従できなくなる。
以前であれば射出状態での高い機動性は得られなかった為に、戦場を駆け抜ける時はドラグーンの回収が不可欠であった。それが今は、逆の意味で足かせとなり得てしまうのだ。
「ジンライを機体各所に接続──接続良好」
そこで、この問題を解決するのがカゼキリのマルチウェポンラックを参考に改良された新マルチウェポンラック機構である。
切り離したドラグーン端末と接続させるアタッチメントを機体各所に設ける。これにより先の問題を解消しつつ、更にはビーム刃を出力できるジンライを機体各所に接続する事によって、フレキシブルに機体の随所を武装化させ戦う事ができるのだ。
シロガネに搭載されているジンライと、現在はまだ未搭載となっているビャクライ。それら2種のドラグーン兵装とシロガネが構築する、全領域対応型武装化システムである。
逸る心を抑えつけて、タケルは一度機体を確認した。
憂いは無し────こんどこその全開起動で、戦場を駆ける準備は整った。
「駆け抜けるぞ、シロガネ!」
語り掛けた愛機は主の命に応える様に、動力部を唸らせた。
背部に巨大な光の花を咲かせて、エターナルに接近中のウインダム部隊の只中を、シロガネが駆け抜ける。
腕部と脚部に接続されたジンライから出力されたビームジ刃によって、ウインダムは全てがすれ違い様に真っ二つに断たれていった。
即座に、タケルは少し遠目に確認される艦隊を見つめた。
降下ポッドを大量に備えた、連合の大艦隊である。
ドクドクと、心臓が脈打つのをタケルは感じていた。
嘗て、サヤを目の前で喪った時と同じであった。
既にオーブは焼かれている。絶対的な悪意に晒され、オノゴロに限らず本土までも全て。
カガリが謳いタケルが護ってきた中立のオーブは、もう喪われているのだ。
あの日、ユリス・ラングベルトへ向けたのと同じ。憎悪だけに染まっていく心と理性を、タケルはもう抑えられなかった。
「────そうやってお前達は」
衝動の儘に、タケルはシロガネを走らせる。
最速、最短を進み辿り着くは軌道上。降下ポッドの射出態勢へと入っている艦隊の真っ只中へと飛び込んだ。
「平気で命を、踏み躙る」
何故こいつらは、こうも容易く自分の大切なものを奪っていくのだろう。
何故自分は、いくら抗っても守り切れないのだろう。
己と敵。その両方に抱く憎悪のぶつける相手に彼等を選び、タケルは艦隊の中央に────そしてSEEDの奥へと踏み込んだ。
「なんだ!?」
「白銀の……MS」
突如、流星の如く艦隊の内側へと潜り込んで来たシロガネに彼等が惑う中、タケルは暴れそうな感情を解放した。
「──1人残らず、ここで消してやる」
放たれるジンライが縦横無尽に飛び交い、周囲の戦艦をまとめて貫いた。
前後、上下、左右。3次元における無限軌道を描いて飛び交うジンライは、以前より大型化されその威力も十分。サブスラスターとして機能するこれらは通常のドラグーン兵装とは一線を画す速度を以て、次々と戦艦と降下ポッドを穿っていった。
「これ以上オーブの空を、侵させるものか!!」
変わらずのライフルとサーベルの複合兵装、ビャクヤを手にし、シロガネはジンライと共に戦場を駆けた。
その規格外な速度を、一切緩める事をせず。飛び、翔け、そして走り続けた。幾度も艦隊の中を往復し、その度戦場には大小様々に火花が散る。
数分────たった数分で、有無を言わさず連合艦隊は物言わぬ骸へと変わっていた。
数にして戦艦が8。MSは迎撃に出た機体と降下ポッドに搭載されていたものを含めて計38機。
全てが、艦橋やコクピットを狙った一撃の下に屠られている。
「はぁ……はぁ……」
激しい痛みを寄せて来る頭を抑えながら、タケルはセンサー類の情報を確認。
残存の敵がいない事を確認すると、直ぐに地球へと目を向けた。
「────お願いだ。無事でいてくれ」
カガリ、ナタル、サヤ、キラ、アスラン、マリュー、トダカ、アサギ、マユラ、ジュリ……。
次々と浮かんでくる大切な人達。その誰を失っても、きっとタケルは耐えられない。それはもう2年前に経験していた。
あの巨大な閃光を見た後では、望みなど欠片も抱けない……が、それでも縋る様にタケルは祈った。
ジンライを回収すると、シロガネは最大戦速で地球へと降下していくのだった。
「くっ、なんだよ……何なんだよこれは!」
降り注ぐ光条を躱しながらシンは叫んだ。
直上には連合のMSウインダムの大部隊。眼下には、焼かれるオーブの地。
一度は憎んだ国であっても、オーブはシンに取って祖国。
増してや今は、様々な事を聞き及び以前のような憎しみを抱いてはいない。
大切な家族達との思い出が眠るこの国を焼かれること……簡単に許容はできなかった。
「こっのぉおお!」
残されたビームライフルとパルマフィオキーナでも十分戦闘は可能だ。
シンがデスティニーを動かそうとしたところで、しかしコクピットに通信が飛び込んでくる。
『シン、同盟軍は一度撤退よ。帰投しなさい』
「そんな、艦長!」
『命令よ。ただでさえオーブとやり合って厳しい状況だったというのに……こんな不意打ち、相手にするだけ余計な損耗を生むだけだわ』
「でも、オーブがっ!?」
『艦長、でしたら同盟軍の撤退を援護する為に俺とシンが
『レイ、何を言って──』
『あちらはオーブも同盟軍も無差別に撃ってきています。撤退するにも、味方の安全確保は必要でしょう────シン、その装備状況でも行けるか?』
直接的に言葉にしないレイの気遣いに、シンはにべもなく頷いた。
「あぁ、勿論だ!」
戦闘の意思を見せるレイとシンの様子にタリアは逡巡。
シンの気持ちを汲んだが故のレイの進言ではあろうが、それでも確かに必要な事ではあった。
前線に出ている同盟軍の艦隊を徒に消耗するわけにもいかず、彼等なら殿としては十分な働きをしてくれるだろう。
険しい表情を見せながら、タリアもまた頷いた。
「わかったわ。レイとシンは同盟軍撤退の支援を。アビー、全艦に通達。殿はミネルバが持つから急ぎ撤退しろと厳命を出して!』
「了解!」
『ありがとうございます。艦長』
『艦長、私もこのまま行きます──アビー、ソードシルエットを射出して。シンに、エクスカリバーを』
『ルナ……ありがとう』
シンの感謝の言葉に頷きながら、同盟軍の撤退支援の為にミネルバが動き出す。
どの道、安全な撤退には程遠い状況であったし、このままオーブを目の前にして素直に撤退というのは、シン・アスカにはできなかったことだろう。
後々、胸の内にしこりを残すくらいなら、確りと理由をつけて戦えた方が、意味も意義もあると言う物だ。
即座に射出されるソードシルエットから、エクスカリバーを受け取ったデスティニーは光の翼を展開して、空へと飛翔した。
「うおおお!」
シロガネ、アカツキ、そしてジャスティス等と比べればなんと稚拙な事か。
放たれる迎撃の光条を難なく躱して、次々とウインダムを叩き切っていく。
「こんのぉお!」
ルナマリアとインパルスも同様に、フォースシルエットのままエクスカリバーを携え、敵陣へと切り込んでいった。
フォースの機動性を生かし、長大なエクスカリバーに振り回されず扱う様は、既に彼女がインパルスを乗りこなしている証である。
「えぇい!」
レイは撤退中の艦隊の眼前でビームシールドを展開。
降り注ぐ光条を防ぎつつ、隙を見てはドラグーンとライフルの一斉掃射で次々と敵機を撃墜していった。
「やぁああ!」
片腕を失いながらも、サヤの駆るシロガネは未だ健在という様に敵機を屠っていた。
しかし、シールドを持たないシロガネでは回避軌道ばかりを強いられ無茶ができない。
決して、大活躍とは言えない状況にサヤは歯噛みする。
「しっかりしなさいサヤ・アマノ。これ以上オーブを焼かせてはなりません」
声に出して己を叱咤し、シロガネを走らせる。
怪我も完治していない中での戦闘。シロガネの機動が齎す身体への負荷は大きく、嫌な感触がサヤの臓腑を捩らせていた。
だがそれでも、動きを止めるわけにはいかなかった。
オーブ上空に展開してきた部隊は正に数多。
フリーダムやジャスティス、アサギ達の新型アストレイも奮戦しているが数が多すぎる。
既に首都オロファトは壊滅しており、続いてはモルゲンレーテ。更には宇宙港となるカグヤまでも壊滅的な被害を受けていた。
いま、こうして戦っているのはもはや、国土を守る為では無く、まだ避難ができていない国民の被害を少しでも減らすことでしかない。
「はっ!」
背後から狙ってくるウインダムの攻撃を回避。
すぐさまビャクヤで撃ち返そうとした所で、しかし下方からの光条がウインダムを貫いた。
「あれは、デスティニー……シン」
『ヤヨイ!』
聞こえてきたのは聞き慣れた少年の声。
もう戦場で言葉を交わすつもりは無かったはずのサヤに、迷いのない呼びかけが届いた。
「シン……シン・アスカ」
『やっぱり、ヤヨイなんだな』
届いた通信。帰ってきた声。
先程、レクイエムの射撃から離れる様に警告してくれたサヤの声を、シンははっきりと覚えていた。
「シン、悪いですが今は貴方と問答している暇は──」
『わかってる。今は俺も戦うだけだから。ただ……』
互いに背中合わせとなってウインダムを撃ちながら。シンは気持ちを堪える様に一呼吸置いて口を開いた。
『──生きてて良かった』
万感の思いが込められた声音。
それだけで、セイバーを撃ち落としたシンの苦悩が見える様であった。
サヤは思わず、胸に温かいものを感じて口元を緩ませる。
胸の内で殺したはずのヤヨイ・キサラギの想いが、また堰をきって溢れて来ていた。
「──あの日言ったはずです。今の私はサヤ・アマノ。ヤヨイ・キサラギはもうここには居ません」
絆されないようにと予防線を引いて、サヤはまた表情を引き締め直した。
『わかってる……それでも、嬉しいんだ』
死んだと思っていた彼女が生きていた事。例え口では否定しようとも、先程返された声には嬉しさが含まれている様にシンは感じた。
はっきりとした自覚はまだなかったが、シン・アスカにとって、ヤヨイ・キサラギという少女は特別な存在ではあったのだ。
『ったく……戦場で何イチャイチャしてんのよ』
そこへ、無粋な声が飛び込んでくる。
赤い閃光が近くにいたウインダムの2機を撃ち落とし、それは2人の前に現れた。
「あれは」
『連合の……ディザスター?』
ダークパープルの禍々しい意匠。ユリス・ラングベルトが駆るディザスターである。
『そのシロガネに乗ってるのは誰? ジャスティスが出てる以上もうアスラン・ザラじゃないわよね』
「何故貴方にそのような事を教えなければならないのですか」
『ご挨拶ね。一応私は兄さんに言われてあんた達の救援に来てあげたんだけど?』
「兄さんって、まさか。お兄様……タケル・アマノの事ですか!?」
『うっさいわね。私が兄さんって呼ぶ人間がそれ以外にいる?』
「なっ!? 名乗りもしないで何をふざけたことを貴女は──」
『とにかく、今はそんなことどうでも良いでしょ。ここからは私も参戦させてもらう────お仲間にもちゃんとそれを通達しておいてくれって話。用件はそれだけよ。じゃ』
嵐の如く……マナーも配慮も置き去りに、言いたい事だけ言って去って行ったユリスとディザスターは、宣言通りに参戦。ウインダムに狙いを定めて両肩のシュヴァイツァとビームサーベルを駆使して戦闘へと入っていった。
「くっ……あれこそがお兄様の言っていたユリス・ラングベルト。なんて不躾な」
『とにかく、俺達も行くぞ、ヤヨイ!』
「無論です!」
再び並んだシンとサヤ。二度と並んで戦う事は無いと思っていた2人は、今この時。また同じ目的の為に手を取り合う。
共通するは同じく、祖国であるオーブの窮地を救いたい。
大切な想いを力に変えて、2人は惹かれ合う様にSEEDの領域へと突入していく。
「いきますよ、シン!」
『あぁ!』
白銀と紅蓮もまた、オーブの空をひた翔ける。
少しずつ……キラやアスラン。アサギ達に国防軍の活躍がロゴスの部隊を減らしてきていた。
数が減ればそれだけ対応は楽になっていく。
今尚オーブの地が焼かれている事に一瞬たりとて油断はできないものの、カガリはどうにかこの苦境を乗り切る可能性を感じていた。
だが、カガリのアカツキとキサカが艦長を務める艦船アマテラスによって、それなりの範囲を防御できてはいるが、所詮は一部。
2年前とは比べるべくもない程に被害は甚大…………それでも、全てが終わりではない。
まだ守れるものはある筈なのだ。
「────通信? エターナルから?」
軌道上のエターナルから届いたメッセージに、カガリは目を剥いた。
“すぐにそちらへタケルとシロガネが参ります────ですが、気をつけてください”
「兄様が来る……でも、気を付けろって」
「カガリ!」
「ラクスから連絡が!」
キラとアスランにも同様のメッセージが届いていたのだろう。慌てたように2人が通信を送ってくる中────
「おい、アレ……」
「銀色の……MS!?」
白銀は、空より舞い降りた。
次の瞬間、空が爆ぜる。
都合6機のウインダムが、頭部から真下へと射抜かれて爆散していた。
それを成すは、シロガネが備えるドラグーン兵装ジンライ。
本来重力下では使用できないドラグーン最大の弱点を、しかしシロガネは克服していた。
元よりサブスラスターを兼ねていたジンライには十分な推力が備わっていたが、ヴォワチュール・リュミエールの搭載に伴い、各端末を大型化。小型のバッテリーとジェネレーターを搭載し、端末の稼働時間の延長に成功。併せてその形状を空力特性を考慮したものへと刷新し、大気圏内においては戦闘機の様に揚力を得る事で飛翔を可能とする。
宇宙空間の様に鋭角軌道はできないが、ドラグーン最大の弱点に対する一つの解答となった。
「──オーブ、が」
眼下に広がる祖国だった場所を見て、タケルは目を見開いていく。
政庁を中心に広がるクレーター。ほとんどの建物が破壊された首都オロファト。オノゴロのほとんどを占めていたモルゲンレーテ。
どれもが、既に面影もない。
オーブ首長国連邦は、もはやそこに存在していなかった。
「あっ……あぁ……」
間に合わなかった。また居なかった。届かなかった。見えなかった。喪った。また奪われた。読めなかった。関われなかった。聞こえなかった。
また────守れなかった。
慄き、悲愴に包まれ……そして至る。
目の前で、サヤ・アマノを奪われたあの日と同じであった。
深く、深く、墜ちていく。底へ……其処へと。
黒い憎悪が、タケル・アマノの胸を満たした。
「あ……あぁあああああ!!!」
脳髄を焼く痛みは既に消えていた。
ただ、視界に映る兵器と言う兵器を全て破壊するべく、タケルはシロガネを走らせた。
ドラグーンが放たれる。それは獲物を求める狼の様にオーブの空を悠々と飛翔し、周囲にいるウインダムを喰い破っていく。
「あぁああああ!!!」
あの日と同じく、涙は流れぬまま叫びと怒りに変換されていく。それはそのまま、タケル・アマノのパイロットとしてのパフォーマンスを引き上げ、シロガネの撃墜速度に変わっていく。
ビャクヤを展開。接近する間にもセンサーが捉える機体の全てを捕捉し狙い撃ちながら、距離を詰めた敵機を両断した。
キラ達の活躍で、既に上空に居た部隊の大部分が墜とされていた中、現れたシロガネが止めとなる。
縦横無尽に空を翔けるシロガネは、ウインダム部隊の全てを破壊するまで、背部の光を収める事は無かった。
時間にしてどれだけか……5分にも満たない僅かな時間だ。
その間に、散らばって点在していた全ての敵機を破壊し、シロガネは遂に動きを止めた。
硝煙と爆煙が空を覆い、曇天となったオーブの空では、白銀の装甲が妙にくすんで見える。
『──兄様!』
コクピットに届く最愛の妹の声に、タケルは視線を向けた。
光を反射して見える金色の装甲。アカツキに乗るカガリの声に、我にかえったタケルを、内側と外側から針で突き刺したような鋭い頭痛が襲う。
「カガ、リ…………ごめん…………ね…………」
消え入りそうなか細い声を残し、タケルの意識とシロガネは、沈む様に落ちていくのだった。
きっつい。
ちょうど一年前くらいでSEED編のオーブ戦役書いてた気がして、1年振りにまた感情移入しすぎて泣きそうになった。
感想、是非ともよろしくお願いします。