機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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なんかもう、ほんとありがとうございます。


PHASE-86 戦いの矛先

 

 

 L5宙域近傍。

 

 プラント国防委員会は、移動中のレクイエム中継点“グノー”を捕捉。

 判明したレクイエムの詳細から次なる狙いをプラント本国と断定し、即応態勢で待機していたジュール隊とジャニス隊に、中継点破壊ミッションを下した。

 

 

 

 

 

 ナスカ級ボルテール艦内。

 

「目標、後600で艦の射程圏内に入ります」

 

 オペレーターの報告に、イザークは目を細めた。

 破壊命令を受けてはいるが、緊急招集のまま緊急出動。

 廃棄されたとは言えコロニーは巨大建造物だ。それ相応の用意が無くては、挑んだところで破壊は難しい。MSの搭載火器程度では、焼石に水である。

 目標を確認できたところでどうするか…………それが問題であった。

 

「んで、どうすんだ隊長さんよ」

 

 背後からかかる声にイザークが振り返れば、そこには特徴的なオレンジ色の髪に長身痩躯の男────特務隊ハイネ・ヴェステンフルスである。

 

 ミネルバを離れ宇宙へと上がっていた彼は、この事態にデュランダルの指示を受け、予定されていた新型機を受領すると同時にジュール隊へと合流。

 ミッションへ共に参加する事となっていた。

 

「逆に聞かせてもらいたい。特務隊ハイネ・ヴェステンフルス……貴様ならこの状況でどんな手段を取る?」

「イザーク、何でいきなり喧嘩腰なんだよ」

「ヴェステンフルスさん。ジュール隊長はプラントを守る為に少しでも確度の高い作戦を執りたいだけなのです。どうか、ご容赦を」

「ははっ、噂通りって事か」

「シホ、貴様は黙ってろ」

「申し訳ありません隊長。出過ぎた真似をしました」

 

 イザークにシホと呼ばれた赤服の女性は、一礼しながら後ろに下がった。

 彼女の名はシホ・ハーネンフース。元々技術職ではあったがアカデミーでの成績を買われ2年前にジュール隊へと配属となった。

 大戦を戦い抜き、技術職兼テストパイロットでもあった事からも、その実力は十分に証明されているエリートパイロットだ。

 

「確度の高い作戦ねぇ……とは言っても、それこそ俺は部隊長経験も無くただのパイロットだぜ? 余り参考にはならねえと思うんだが」

「ならディアッカ、お前はどうだ?」

「俺? あーまぁ、一応はこうすりゃいいんじゃねえかくらい考えているけどよぉ」

「提示しろ。今は全ての意見が欲しい」

 

 イザークに促され、皆の視線が集まると、ディアッカは居心地悪そうに肩を竦めてから、宙域図を映し出した。

 

「んじゃまぁ……例の兵器のデータを見たけど、正直運用するには欠陥だらけだ。中継点次第でどこでも狙えるとは言え、まともに狙いをつけるなら中継点の位置は僅かなズレも許されないってくらい繊細だろうさ。そうだよな、シホ?」

「はい。ゲシュマイディッヒ・パンツァーに因る偏向を正しく制御するには、緻密な計算とその数値結果をしっかりと現実に落とし込む必要があります。あの規模の中継点で偏向を掛ける以上、位置情報のズレは致命的になるかと」

「つまり、破壊は無理でも位置をずらせればって事か?」

 

 ハイネの問いに、ディアッカは小さく頷いた。

 大胆な発想の下生まれた大量破壊兵器レクイエム……だが、その運用は極めて繊細でシビアな調整が要求される。

 フォビドゥンの様な、ただ逸らして防ぐMSの防御兵装としての運用ではない。偏向する方向を制御しなければレクイエムによる狙撃は成り立たないのである。

 

 中継点のどれか一つでも位置を変える事ができれば、その脅威は大きく下がるだろう。

 

「だが動かすにしろあのサイズだ。それに、護衛艦群だっている。結局のところ簡単じゃねえ」

「それはそうだが。いや待て……おい、廃棄コロニーはまだ静止してなかったな?」

「えっ、あっはい! 現在はまだ……分速二○で移動しています」

 

 オペレーターの応答を聞いて、イザークは考え込んでいく。

 皆が答えを待つ中、イザークは数秒の後に口を開いた。

 

「よし、二手に分かれるぞ。ジュール隊は廃棄コロニーの移動方向とは逆側から強襲を掛ける。ボルテールも含めたありったけの火力で、移動中の廃棄コロニーを攻撃して加速させるぞ。

 ハイネ、貴様はジャニス隊を率いて移動方向側から強襲しろ」

「あん? わざわざ分かれてどうす……あぁ、そう言う事ね」

 

 得心行ったりというようにハイネは口元を緩めた。

 それに答え合わせをするようにイザークも頷くと、宙域図を指し示す。

 

「移動させる廃棄コロニーなら制止用のスラスターが在る筈だ。それを破壊して、中継点の制動を阻止する」

「なるほどね……動かすのは大変だが、止めるのも同じくらい大変ってわけだ」

 

 納得した様に、ハイネは何度か頷いて見せる。

 

 宇宙空間において、物体の移動が勝手に止まる事は無い。

 必ず移動とは逆方向に制動を掛けなければ、物体は動き続けるのだ。そして、その質量が大きければ大きい程、必要な力もまた大きくなる。

 巨大な建造物であるコロニーを動かすとなれば、必要な力は莫大。制動スラスターを破壊されれば中継点は止まれなくなり、間違いなくレクイエムによる狙撃は成り立たないだろう。

 

 聞いていたディアッカやシホからも否の声は挙がらず、作戦の方針は固まった。

 

「面舵30! ボルテールは廃棄コロニー右翼から強襲する。ジャニス隊に左翼から廃棄コロニーの制止スラスターを探して破壊する様に打診だ! 

 MS隊は先行して護衛艦群を引き付けるぞ。発進準備を急げ!」

「了解!」

 

 イザークの号令に、了承の声が強く返されると、直ぐに艦橋は慌ただしくなった。

 ジャニス隊への通達。発進シークエンスを進めるオペレーター。

 艦橋に居たディアッカとシホも出撃準備の為、艦橋を出ていった。

 

「俺は先行させてもらうぜ。あの機体なら先に行って連中を蹴散らしてやれるだろう」

「こちら側が加速させるより、そちらの制止スラスター破壊の方が重要だ────議長の信頼厚い貴様だから任せるのだからな。頼んだぞ!」

「おうよ!」

 

 颯爽と艦橋を出ていくハイネを見送り、イザークは眼前の宙域を見つめた。

 11月の核攻撃に続いて……今度はオーブを撃ったとされる大量破壊兵器がプラントへ向けられている。

 

 同じである。2年前と何ら変わらず、倫理も理性も無いような、馬鹿げた兵器による攻撃が行われようとしていた。

 これでもしプラントが撃たれようものなら……穏健を貫いてきたプラント評議会も黙っては居られないだろう。

 被害にあったプラント市民の感情を汲む為にも抗戦するしかなくなる。

 

 

 “あのミサイルを落とせぇ!! プラントをやらせるなぁ! ”

 

 

 脳裏に過るのは2年前。

 連合の核攻撃部隊を目の前に、何もできなかった事を思い出した。

 駆けつけたフリーダム等が居なければプラントが全滅していただろう事を容易に想像がつく。イザークは破壊の光をただ見ている事しかできなかった。

 

 二度と、あんな想いは御免だと、イザークは胸の内で奮起する。

 

「愚か者達が……二度とプラントを撃たせはせんぞ」

 

 侮蔑を小さく吐き捨てると、イザークも急ぎ乗機のグフの元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ボルテール格納庫にて。

 パーソナルカラーに染められたパイロットスーツを着たハイネ・ヴェステンフルスは、己の機体へと乗り込んだ。

 

「おっしゃ! 先に行かせてもらうぜ、艦橋(ブリッジ)!」

『了解しました────デスティニー、ハイネ機。発進シークエンスを開始します』

 

 カタパルトに接続されていく中、刺々しい気配を持つフォルムの中でデュアルアイが小さく光った。

 PS装甲特有の灰色装甲を持つ新型────ZGMF-X42Sデスティニー。

 シン・アスカと同様に、ハイネ・ヴェステンフルスの能力を反映させて調整された謂わばデスティニー2号機である。

 元々デスティニーは複数機の生産が予定されていたもので、シンに渡されたのは開発が一番進み、尚且つ最も有用な乗り手である彼の為に調整された最初の1機であった。

 プラント本国の工廠では、そのシンが駆る1号機の運用データも反映させて製造中であった2号機をハイネ用に調整。そうして、宇宙に上がった彼に渡されたのだ。

 

 システムが起動すると、ハイネのデスティニーは特徴的なオレンジカラーへと染め上げられる。

 

『発進準備完了。デスティニー、ハイネ機。発進願います』

「オーライ! ハイネ・ヴェステンフルス────デスティニー、行くぜ!』

 

 ボルテールから射出されたデスティニーは即座に最大全速。

 巨大な光の翼を広げると、眼前に構える巨大建造物────レクイエム中継点グノーへと飛翔した。

 

 その圧倒的速力で護衛艦群へと突っ込むと、戦端は遂に開かれる。

 

 

 

 ザフトとロゴスの一大決戦となる、レクイエム攻防戦の開幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カガリの指示の下。レクイエムの破壊を目的にアークエンジェルは宇宙へと上がり、エターナルと合流した。

 一同は状況の確認と方針を定めるために、クライン派の拠点となるファクトリーへと移動。

 地球と宇宙で暫く離れ離れであったキラとラクスは、そこでようやくの再会を果たすのだった。

 

「キラっ!」

「ラクス!」

 

 ファクトリーの工廠で一堂に会すると、2人は再会の喜びを見せて抱き合った。

 

「こうして無事に……ここに君がいる事が、本当に嬉しい」

「私もです、キラ」

 

 互いに大切な存在を失うことなく再会できたことは、きっと幸運なのだろう。

 キラもラクスも。どこかで何かが違っていれば、命を落としていたかもしれないのだ。

 オーブの惨状や、これまでに幾つも訪れた危機を考えれば…………その可能性は決して低く無いことを、2人は強く実感していた。

 

「それから……サヤ」

 

 キラとの抱擁を終えたラクスは、キラの背後に居並ぶアークエンジェルクルーの中からサヤを呼ぶ。

 名を呼ばれた瞬間にビクリと彼女の身体が奮えたのは恐らく気のせいではないだろう。

 僅かに目を見開き、サヤは何故このタイミングで自身が呼ばれたのかと逡巡した。

 呼ばれる理由に皆目見当が…………付かないわけでもないが、呼ばれる謂れはきっと無い筈である。

 

「(流石に、彼女とて人間……遠く離れたアークエンジェルでの出来事など知る由が無い筈。怪我で病床に臥せっていたサヤに、キラ・ヤマトがしたことなど……)」

 

 おずおずとサヤが前に歩み出ると、ラクスは2年前から然程変わらない小柄な身体を抱きよせた。

 

「えっ? ラクス……クライン?」

 

 突然の事態に、サヤは惑う。

 心配をかけた事。諸々皮肉の1つでも投げられるかと思えば、届けられたのは人が持つ温かな熱。

 

「──良く、生きていましたわ。貴女の生還を心より嬉しく思います」

 

 そして、彼女の帰還を心から喜ぶ言葉であった。

 鈴の音の様な美しい声音が、自身を慮る言葉を紡ぎ、サヤは漸くそこで素直に受け止める心持ちを得る。

 

「────ありがとうございます。御心配をおかけいたしました」

「本当です。貴女の戦死を、皆どれだけ悲しんだことか……」

 

 タケルはその程度が酷すぎただけで、2年前共に戦った皆が彼女の死を悼んでいた。

 サヤはまた1つ、自分が兄以外にもたくさんの人と深い関りを持っていたのだと思い知らされる。

 

「さっ、再会の喜びも良いけど……私達は直ぐにでもやる事があるわ」

 

 喜びに緩んだ空気をマリューの声が引き締めた。

 そうだ、彼等がここに集ったのは何も再会するためじゃない。

 

「はい。急ぎ会議室へ……あの兵器の調査結果と、現在の状況をお話いたします」

 

 大量破壊兵器レクイエムの排除────その為に、集まったのだ。

 ラクスの声に、皆は一様に頷いた。

 

 だが、一同がファクトリー内の会議室へと動き出す中、サヤの背後から声が掛かる。

 

「サヤちゃん」

「はい? っと、エリカ・シモンズ主任……」

 

 ファクトリーにてシロガネとアカツキの開発を行っていたエリカである。

 

「久しぶりね」

「ご無沙汰しております」

「早速だけど。話は皆に任せて、貴方はこちらにいらっしゃい」

 

 この状況での呼び出し…………呼ばれた理由を、サヤは直ぐに察した。

 ORB-12シンゲツ。聞き及んでいた、彼女の専用機の事だろう。

 この後直ぐにでも戦いに赴く可能性がある以上、新開発の機体とパイロットとのパーソナライズは急務だ。どれだけ優秀なメカニックが仕上げようとも、最後の最後で調整の要となるのはパイロットの操縦感覚なのである。

 同系統とは言え、いきなり新型に乗って、普通に戦ってしまうキラやアスランがおかしいのだ。

 

「はい、わかりました」

「それじゃ、こっちよ」

 

 

 

 

 

 サヤを連れて、エリカはファクトリー工廠内を進んでいく。

 フリーダム等がロールアウトとなり、空ばかりとなったMSハンガーの幾つかを過ぎたところで、作業員が細かなチェックを進めている場所に、それは聳え立っていた。

 

 宵闇を思わせる黒々とした青に染められた、鈍く光る鏡面装甲。

 背部にはシロガネと同系統のスラスターパックを備え、大きなビーム砲塔が2門。

 そして特徴的な、腰の長刀型実体剣が目を引いた。

 

「これが……シンゲツ、ですか?」

「えぇ、ORB-12シンゲツ。あの子の最後の置き土産……って言って良いのかしらね」

「最後などと……」

 

 それではまるで兄がもう戻ってこない様ではないか。

 サヤはエリカの言葉尻に、少しばかり不服を見せた。

 

「そう思っても仕方ないじゃない……あんな顔したあの子。初めて見たんだもの」

 

 静かに、エリカは自身の肩を抱いて震えた。

 

 あの日、タケルがユリスと共にファクトリーへとひっそり帰還した時の事だ。

 メイリンとスティング達をシャトルに乗せていくタケルを、エリカは目撃していた。

 しかし、その姿は彼女が知る彼とはまるで別人……呼ばれてシャトルに乗り込んでいくメイリン達が困惑するほどに、これまでの彼とはかけ離れた姿であった。

 

 当然ながら、話を掛けようとしたエリカを……だがタケルは近寄るなと言わんばかりにばら撒く殺気で射止めた。

 戦場に出る事のない……一技術者でしかないエリカには酷な気配が、彼女の足を完全に止めてしまい、タケルがシャトルに乗り込んでいくのを見送る事しかできなかった。

 エリカの胸には、まだあの時の恐怖が刻み込まれていた。

 

 

 だが、彼らしからぬこの対応も、ある意味では仕方のないことかもしれない。

 タケル・アマノは身内に甘い……この時のタケルは、エリカに引き留められて己の意思が鈍る事を恐れていた。

 エリカより伝えられた父の言葉……彼女がそれを理由に引き留めてくる事を危惧して、本来のタケルであればあり得ない行動で、エリカを押し留めたのだ。

 言うなればタケルは、エリカ・シモンズとの接触から逃げたのである。

 

 そうまでしてでも、タケルはオーブの仇を己の手で討ちに行きたかったのだ。

 

「あの子は本気よ。どこまで本気なのかはわからないけど……でも、恐らく戻ってくるつもりは無いと思う」

「そんな……」

 

 全てを擲ってでも、オーブを守る為この世界に在る万難を排する気でいる。

 その決意を、あの日エリカは離れていくタケルの背から見て取っていた。

 

「簡単じゃないわよサヤちゃん。今のあの子を連れ戻すのは……」

「それでも、連れ戻すと約束しましたから」

 

 脅してくるような物言いのエリカに、サヤは決意の表情で返した。

 

 甚だ遺憾でありながらも、同じ兄を持ち同じ妹と呼べる立場であるカガリとも約束してきたのだ。

 必ず兄を連れ帰ると。

 これまで幾度となくいがみ合ってきた間柄ではあるが、同じ妹としてその約束を反故にする気は、サヤにはない。

 何より、兄を連れ帰る為の最大の切り札は、共に宇宙へと上がってきている。

 怪我を押して伴だって来たナタルの存在だ。

 戦後、ボロボロになった兄を救ってくれた彼女であれば。今闇に向かおうとしている兄を止められるかもしれない。

 

「そう……なら、あの子をお願いね」

「無論です」

 

 サヤは、静かに己の機体となるシンゲツを見上げた。

 

「お兄様の為にも、どうか力を貸してください────シンゲツ」

 

 願いを込める様に呟くと、サヤは機体調整の為にシンゲツへと乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 ファクトリー会議室ではエターナルとアークエンジェルの面々が一堂に会して、状況の確認となっていた。

 

「月面に敷設された巨大ビーム砲……」

「それを中継点のコロニーで偏向して狙撃とは……とんでもないな」

 

 バルトフェルドからレクイエムの仔細を聞いて。キラもアスランも、遣る瀬無い表情を見せながら慄いた。

 あの威力と範囲……ジェネシスには及ばないが、単なる兵器としては規格外であることは間違いない。

 何よりも、中継点を介した狙撃が可能というのは、大きな脅威である。

 極端な話、この世界に置いてあれから逃げられる場所は無いわけだ。

 

 2年前の、戦略兵器を撃ち合う破滅的な戦争が脳裏に過った。

 

「恐らくですが、次の狙いはプラントですわ。ザフトもそれを見越して、中継点のコロニーでは現在戦闘が行われています」

「ラクスさん……どのプラントが狙い、とかはわからないのかしら? それがわかれば急いで避難も……」

「それは流石に無理だラミアス艦長。中継点の位置からあの兵器の矛先くらいは分かるが、中継点でどのような偏向を掛けるかはあちらさんのみが知る」

「それに、地球と違ってプラント間での大規模な避難は簡単では無いはずです。どのプラントが狙われるか分かったところで、即時の避難など現実的ではありません」

 

 バルトフェルドとナタルが返した反論に、空気は険しさを増していく。

 つまるところ避難はほぼ不可能。犠牲を出さない手段はレクイエムを止めるしかないのである。

 

 

「んで? それじゃあどうするのよ?」

 

 

 居並ぶ皆の後ろから、気の抜けた声が掛けられた。

 人垣が別けられ、そこにいたのはラクス達にとっては驚愕の人物────ムウ・ラ・フラガの姿があった。

 

「なっ、フラガ少佐!?」

「お前生きて──」

「だぁから……はぁ、まぁいいや。違和感もないし。呼びたきゃそう呼べ」

 

 ラクスとバルトフェルドのお決まりな反応に、ネオは呆れた様で、でも少しだけ悪くない気もしながら、遂に訂正するのを諦めた。

 そんな彼の様子に、ラクス達が未だ不思議そうな顔をする中、マリューが前に出る。

 

「驚かせてしまってごめんなさい。見た目はまんまムウなんだけど、一応彼は別人よ────ネオ・ロアノーク。地球軍の大佐です」

「まっ、既に死んだものとして扱われてるだろうがな」

 

 ベルリンでの戦いでネオの乗っていたウインダムはフリーダムによって撃墜判定。MIAで未確認の戦死扱いになってる事だろう。

 今更地球軍の大佐と言う肩書に頓着などあるわけもないようで、ネオは小さく肩を竦めた。

 

「んで、俺の事はどうでも良いだろ。それより、どうするのよこれから? 俺、一応はアスハ代表にあの機体任されて戦えって言われて来てんだぜ。やる事やらねえと怒られちまうだろ」

 

 ほら、さっさと作戦でもなんでも決めてくれ。そう言わんばかりの態度に、どこか毒気を抜かれた様で、皆の表情が和らいだ。

 怒られるとか、そういう次元の話ではない……のだが、これこそが彼だろう。

 切羽詰まった状況。不安ばかりが募る中でも。空気を和らげ、凝り固まった思考を柔らかくしてくれる。

 

 本質は確かにそう……やる事をやるだけなのだ。

 

「そうですね。やる事をやらないと、カガリに怒られます」

「あぁ、出来る事をするだけだな」

 

 キラとアスランの声に一同が頷いた。

 

「では────ザフトが中継点の対応に回っているのなら、私達は本体を。つまり、向かうは月基地だと考えます」

「そうね。ロゴスも中継点でのザフトとの戦いに目がいってる筈。ザフトには悪いけど、囮にさせてもらいましょう」

「だが、月基地ですよ…………地球連合の一大軍事工廠でもある。あそこの防衛戦力はヘブンズベースですら比較にはならないはずです」

「大丈夫ですナタルさん。エターナルと合流できたからミーティアも使えますし。サヤの機体も今調整中です」

「俺達が狙うのは電撃戦だな。馬鹿正直に敵戦力を全て相手にする必要はない。ミーティアの機動性を生かして突入し、あの兵器さえ叩ければ……」

「うん。僕達なら、それができる」

「詳細は道中で詰めましょう。とにかく今は急いで出撃を。バルトフェルド隊長、ファクトリーに通達をお願いします」

「了解だ────全員、発進準備にとりかかるぞ。急げ!」

 

 

 こうして行く道を定めた一同は決戦の地、月のダイダロス基地へと向かう。

 

 

 

 月面基地ダイダロス。

 多くの人の思惑を乗せて、幾つもの道が交錯しようとしていた。

 

 




ハイネデスティニー出撃!
ミゲルに続いて運命編の西川ニキの出番ですね。まぁミゲルはミゲルでこの後出てくるのですが。
そしてダイダロスに向かうオーブ勢力。ミネルバも向かうのでどうなることやら。
闇堕ち中の主人公君はどうするのか。
どうぞお楽しみに。

あと、劇場版で皆が盛り上がっているところ恐縮ではありますが
作者は執筆開始当初のプロットを崩さぬためにも劇場版は見ておりません。劇場版意識して変な伏線とか追加したく無いですし。
運命編完結させた後で鑑賞する予定です。
ネタバレするなとかいう話ではなく、作者はまだ劇場版を見ていないという事だけ、ご承知いただければと思います。

本作を楽しんでいただけましたら感想、評価の程よろしくお願いします。
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