機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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何か劇場版でシホにも触れてくれてるみたいで………作者としては嬉しい限り。


PHASE-87 レクイエム

 

 

 

「おらぁああ!」

 

 気合い一閃。

 長大なアロンダイトがアガメムノン級の艦体を両断する。

 夥しい火砲を掻い潜って艦船を仕留めたハイネのデスティニーは、即座に次へとターゲットを切り換えた。

 構えるは背部にマウントされた高エネルギー長射程ビーム砲。立て続けに3射した光条は新たに3機のMSを餌食とし、再び戦場に大きな花火を咲かせる。

 

「ちぃ、次から次へと……無尽蔵かよ」

 

 コクピットに促される警告音────小隊規模で固まってビームライフルによる制圧射撃。数にして10は下らない光の雨が、部隊のウインダムより放たれ、デスティニーはビームシールドを展開しながら後退していく。

 

「ったく、こちとらデスティニーでの初陣だぜ……少しくらいは手加減してくれても良いだろっての!!」

 

 ビームシールドを展開したまま光の翼による高機動をフル活用し急加速。吠えながらもウインダム部隊の只中へと飛び込んでいく。

 

「そらよぉ!」

 

 突っ切りながら、回転してビームライフルを乱射。

 密集していた陣形を崩しつつ、更に撃墜数を重ねた。

 

「っ! 来たか!」

 

 漸く……先行していたハイネに、ジャニス隊が追い付いてきた。

 戦場へと飛び込んでくるザクとグフの混成部隊に、ハイネはまた一つ士気を上げていく。

 

「特務隊ハイネ・ヴェステンフルスよりジャニス隊各機! 護衛部隊の相手はそこそこに廃棄コロニーに取りつけ。勿論、抜けた先で後ろから撃たれる何て間抜けを晒すなよ、良いな!」

「了解!」

 

 応の声を受けながら、ハイネもデスティニーを加速させた。

 

「グフ乗りは前に出ろ! 先んじて制動スラスターを探せ! ザク乗りは援護してその背中を守るんだ。以上! プラントを守る為にも全員死ぬ気で任務に当たれ!」

 

 行く道を示すかのように、ハイネはジャニス隊の眼前で護衛部隊へと突っ込んでいく。

 シン・アスカ同様、今この時プラントの運命を切り開く旗頭は彼だ。

 その機体の名に恥じぬ戦いを見せつけるべく。ハイネは奮起した。

 

 

 

 

 そしてまた、ハイネ達とは逆方向から攻め入るジュール隊の面々も、護衛艦群との激戦模様へと至る。

 

「ディアッカ、援護しろ!」

「オーライ!」

 

 ブレイズ装備にオルトロスを携えた突貫仕様のザクで、制圧射撃を敢行するディアッカ。

 その隙間を突く様に、イザークのグフが飛び込んでいく。

 

「シホ、後詰だ!」

「了解です!」

 

 ディアッカの声に従い、シホもまたブレイズ装備のザクで突撃していく。

 飛び込む前にファイヤービーのミサイルで弾幕を張りつつ、そこへと飛び込んでいく様に、ディアッカは密かに戦々恐々であった。

 

「はぁああ!」

 

 そんなディアッカの心配を他所に、シホのザクはビーム突撃銃を乱射しながらイザークの後背へと回り込む。

 

「ボルテールを射程圏内まで誘引する。俺達は敵機の排除を優先だ。行くぞ!」

「あいよ!」

「了解っ!」

 

 先の大戦を生き抜いた者同士。

 イザークとディアッカはアカデミーからの既知であるし、シホもまた2年前よりジュール隊で共に戦い抜いた面子である。

 連携を取るには十分すぎる時間を共に過ごしてきていた。

 

 

 いつ発射されるかもわからないレクイエムを止めるため、ひたすらに全力疾走を強いられる厳しい戦いへと……戦士達は迷わず踏み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、中継点グノーで激戦が繰り広げられている最中。

 月面へと到着したミネルバも、遂にダイダロス基地を捕捉していた。

 

 

 

「間もなく、敵制宙圏内に入ります」

 

 バート・ハイムの報告に、艦橋には緊張が増していく。

 小さく一息ついてから、タリアは視線鋭く口を開いた。

 

「ブリッジ遮蔽、コンディションレッド! 総員戦闘態勢」

 

 決戦の時を告げる声に、女神の名を冠する艦が動きだした。

 

 

 

 

『コンディションレッド発令。総員、戦闘態勢。繰り返す、コンディションレッド発令。総員、戦闘態勢』

 

 届いて来るアビーのアナウンスを聞きながら、コアスプレンダーのコクピットで、ルナマリアは小さく息を呑んだ。

 

「大丈夫か……ルナ?」

「ご心配なく。プレッシャーに押しつぶされそうになるのは慣れてるわよ」

 

 空元気の虚勢だと悟られぬ様に声を張りながら、ルナマリアは返した。

 

 思えば、ガルナハンでもこんな状態であった事を思い出す。

 エスペラントとセイバーによる陽動。そこからブラストシルエットのインパルスで砲台を狙い撃つ。

 それがまさか、シンではなく自分に託されて……彼女は酷い緊張状態の中苦手な射撃を敢行したのだ。

 

 今回もまた、同じである。

 ヘブンズベースでの活躍が目覚ましいデスティニーとレジェンドを陽動にして敵防衛戦力をつり出し、ルナマリアのインパルスがレクイエムの内部へと潜り込んで破壊する。

 ガルナハンとは桁違いの防衛戦力がいるダイダロスでこれをするとなると、シンとレイの負担は凄まじいものだろう。

 だが、急げば戦力を釣りだせずルナマリアが接近できないし、遅ければシンとレイがやられてしまう。

 

 鍵を握るのは、突入していくタイミングであった。

 

「(大丈夫……あの時だって防がれたけど狙いは外さなかった。緊張を御し切って、ちゃんと動けたんだから)」

「大丈夫だ」

「えっ?」

 

 突然投げられた言葉に、ルナマリアは呆けた。

 モニターを見れば、まっすぐにルナマリアを見るシンの顔が見える。

 

「シン……」

「俺とレイはやられない。きっちり暴れて、きっちり連中を引き付けてやる。ルナの道は、俺が切り拓いて見せるから」

「あ、甘く見ないでよ。そこまで心配されなくとも私だってやれるっての」

「それはわかってるけど……それでも、心配だから」

 

 強い瞳で決意を表明したかと思えば、一転して不安そうな目を見せる。

 散々失ってきたからこその心配……否、恐怖だろう。

 そんなシンの表情に、ルナマリアは何故か既視感を感じた。

 

「(あぁ、そっか……隊長と同じなんだ)」

 

 ふと気が付くのは、小さな共通点。

 頑張り過ぎて、折れてしまいそうで、知らず惹かれていた彼と同じ姿。

 今のシンは必死に己ができる事で、全てを守ろうとしている────全てを背負うつもりで居る。

 ヘブンズベースやオーブでの戦いを経て、デュランダルが掛ける期待と、デュランダルに向けられる世界の期待を知ってしまったが故だ。

 

 どうにか彼は、それに応えようとしているのである。

 

「(あぁ、やば……緊張とは別の意味で脈上がってるじゃない私)」

 

 大事な戦いの直前だと言うのに……胸が小さく高鳴る。

 あの生意気小僧が成長し、憂いを湛えながらも期待に応えようとしている。

 どうやら彼女は、そういった不安を抱えながらも必死な姿に心惹かれてしまう質らしい。

 自身の不安など、そっちのけで逆にシンの方が心配になってしまう始末であった。

 

「──ルナ?」

「な、何でもないわ!? 大丈夫……私はやれるから」

「あ、あぁ……俺も絶対に負けないから」

 

 それはきっと己に課した使命や期待への負けないなのだと、ルナマリアは悟った。

 

『コアスプレンダー、発進願います』

 

 改めて決戦に向けた緊張感を表情に宿すと、そこにアビーの声が届けられる。

 また一つ、ルナマリアの心持が固まっていった。

 

 

「ルナマリア・ホーク────コアスプレンダー、行くわよ!」

 

 

 高鳴る鼓動を抱えたまま、少女は決戦の地へと飛び出した。

 

 

 

 

『デスティニー、レジェンド。発進スタンバイ』

 

 続いて投げられた声に、シンもまた表情を引き締めていく。

 

「シン、ルナマリアの様子はどうだった?」

「レイ? どうだったって、別に……」

「なんだ。その様子じゃお互いにまだ何も無しか」

「何だよレイ? その何も無しかって」

「まぁ、戦場に出る前にそんな話をすると死の確率が上がるとも言うからな。ルナマリアも何も言えなかったのだろう。仕方あるまい」

「だから何なんだって」

「戻ってきたら話す……いや、ルナマリアに聞く事だな」

「はぁ?」

「その為にも、作戦を成功させて、生きて戻るぞ」

「あーもう、わけわかんないって。とにかくきっちりやれば良いんだろ!」

「あぁ、どの道俺達ができることなどそれだけだ」

 

 シンプルな話だ。ただ作戦のために全力で力を振るう。レイが言う通りそれだけなのである。至極単純で分かりやすい。

 また一つ、やる気を引き出してシンは開かれたハッチから見える戦場を見た。

 

 月面基地ダイダロス────ロゴスの悪意がひしめく総本山。

 これを討てば、今度こそロゴスとの戦いは終わる。

 緊張と共に、小さな期待が湧いて来るのを感じていた。

 

『デスティニー、レジェンド、発進どうぞ』

「シン・アスカ────デスティニー、行きます!」

「レイ・ザ・バレル────レジェンド、発進する!」

 

 飛び出すと同時に灰色装甲が色彩を纏い、2機は戦場へと向かう。

 

 

 レクイエム攻防戦第二幕────ダイダロス基地攻略戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファクトリーを離れ、アークエンジェルとエターナルはダイダロス基地へと向かう。

 

 アークエンジェル格納庫ではファクトリーより運び入れたシンゲツの最終調整や、ムウが乗る旧シロガネのビャクライユニットの調整が進められてんやわんやの事態に。

 その為フリーダムやジャスティス。ヒルダ等が乗るドム・トルーパー3機をエターナルへと移動。

 パイロット達も当然ながらエターナルへと移乗したために、アークエンジェルは少しだけ静かになっていた。

 

 

 

 そんなアークエンジェルの展望エリアで。ナタル・バジル―ルは目の前に広がるくらい宇宙を眺めていた。

 まるで自身の心持ちを表しているようなその光景に、自然と気は滅入って来て、ナタルの表情は憂いを帯びていく。

 

「──タケル」

 

 こうして大きな戦いを前に、彼の事を想うのには既視感を感じる。思えば、ドミニオンに居た時もこうだったのだ。

 ユリス・ラングベルトよりシロガネのパイロットが彼だと聞かされて……知らずその命を奪おうとしていた事にナタルは慄いて後悔し、こうして宇宙を見つめていた。

 

 今もまた、胸に渦巻くこの不安が…………どうにもあの時の焼き増しな気がしてならなかった。

 

「私はまた……タケルと撃ち合わなくてはならないのか?」

 

 ロゴスを討ちに行ったのだ……そうはならないはずである。それでも、嫌な予感だけがナタルの中に積もっていった。

 再会した時、彼は自身が知る彼のままでいてくれるのだろうか……そんな不安が後から湧き続けて来る。

 

「お姉様」

 

 最近では良く聞き慣れた呼び声。

 声に向かって振り返れば、そこには長い黒髪を無重力に揺らすサヤ・アマノの姿。

 

「サヤ。調整は終わったのか?」

「はい、滞りなく。今はロアノーク大佐が乗るシロガネの調整で大忙しとなってます」

「サヤは、そっちで呼ぶんだな」

「直近で、戦場にてやり合って来てますから」

 

 今思えばなんとも奇妙な縁である。

 互いに記憶を失い別の人格となって、本来居るはずの無い陣営で撃ち合っていた。

 ネオと直接やり合っていたのは主にシンのインパルスであったが、傍から見ても強敵であった事に代わりは無く。撃ち合う関係であった彼を今更ムウと認識するのも、サヤにとっては中々に難しい話であった。

 

「少佐も記憶が戻ればな……マリューの姿が少し痛々しいよ」

「そうですね。やはり気丈に振舞っている感触を、サヤも感じております」

「そういえば、サヤはどうやって記憶が戻ったんだ。何か、参考になるような話は無いのか?」

 

 記憶喪失など、そもそも症例が多くはない。更にはその記憶が戻ったとなれば、もっと稀だ。

 サヤの話はムウにも通じるのではないかと、ナタルは問いかける。

 対してサヤは、少しだけ顔を顰めるのだった。

 

「えっと、その……きっかけは勿論ありますが」

「何か、言い辛い事なのか?」

「その……私が記憶を取り戻したきっかけは、ダーダネルスでお兄様の戦死を目の当たりにしたからです」

 

 途端に、ナタルは気まずそうに顔を伏せた。

 確かに参考にはなるだろう……が、参考にはしたくない。そんな経験談であった。

 要するにそれはショック療法。喪われた人格であるサヤ・アマノにとって最も大きな出来事が彼女の記憶を呼び覚ましたのだ。

 ネオで試すのなら、彼の目の前でマリューを殺さなくてはならない────そんなのはナンセンスだろう。

 

「私は、ヤヨイとして生きていた時からお兄様と再会して記憶の想起がありました。ヤヨイとしては知らない記憶が頭を過り、知らない感情に振り回される様な……聞けばロアノーク大佐も、ラミアス艦長との再会でそういった感触は得ているとの事です」

「となれば、サヤの様にきっかけがあれば……と言う事か」

「はい。私と同じではなくとも、以前の人格が大きく揺り動かされる様な出来事があれば、可能性はあるかと思われます」

「なるほど……ありがとうサヤ、十分参考になった。それとなくマリューには伝えてみよう」

「サヤの経験がお姉様のお力に成れたのなら幸いです」

 

 ムウの記憶が戻るとなれば、欠けていたアークエンジェルクルーの最後の1人が戻って来る事になる。

 皆の喜びは大きい事だろう。

 こうして、記憶を取り戻して帰ってきたサヤがいる以上、その可能性はゼロではない。

 小さな期待感に、ナタルは先程まで抱いていた陰鬱な気分が晴れかける。

 

「問題なのは……お兄様です」

 

 しかし、沈黙を破り漏らしたサヤの声が、ナタルを現実へと引き戻した。

 

「あぁ……私もその事で不安が一杯だ」

「今回の出奔は、これまでと違うのです。お兄様はいつも、サヤに心配かけまいと強がって嘘をつく事はありましたが、その根本は常にサヤを慮っての事でした。

 でも今回は違います。明確に、自分がやりたい事の為にサヤに嘘をつきました。こんな事……今迄に在りません」

 

 あの日、あの夜……タケルは明らかに、自身が動くには邪魔な存在として、サヤに嘘をついて追い払ったのだ。

 今までに無いその行いは、サヤの心にしこりとなって大きな不安を与えていた。

 

「私も同じように感じている。私の為に強がることはあっても、こんな明確に背を向ける様な事をタケルは絶対にしなかった────それ程までに自分を追い詰め、余裕が無いのだと思う」

「シモンズ主任からも言われました……今のお兄様は、戻ってくる気が無いのかもしれないと」

「そうは、思いたくないがな」

 

 本来であれば屈託なく笑うのが似合うただの技術者であったはずなのに。

 生まれの業が、能力の業が。世界の業が────彼を変えてしまった。

 ナタルとサヤはそんなタケルの事を想い、遣る瀬なくなって表情を曇らせた。

 

「────お兄様は以前、ディオキアで言っていたのです」

「ディオキア?」

「はい。あの地でギルバート・デュランダルと対談した折に、彼からどうすれば戦争が無くなるかと問われ、お兄様はどこか疲れたように答えました」

 

 

 “人類の何かが変わらなければ、きっと滅びの時まで人類は戦いを止める事はできないのだと、私は思います”

 

 

 その時サヤはまだ記憶を取り戻しておらず、その真意を推し量る事はできなかったが、今思えばそれは諦めからくる言葉だったのではないか……そう思えた。

 

 あれだけの犠牲を出しながらもどうにか滅びの道を回避したこの世界で、僅か2年の時を置いて人類は新たなる争いを始めてしまった。

 平和な世界が夢物語なのだと実感するには十分な惨状が、今の世界には広がっている。

 人類の世に平和を求める事を…………諦めてしまっても決して不思議では無い。

 あれだけ必死にオーブの平和を守ろうとしてきたのだから、尚更だ。

 

「滅びの時まで戦いを止める事は出来ない、か」

「お兄様は、人類を変えるつもりなのかもしれません。他ならぬお兄様が変えられてしまった様に」

「サヤ、変わってしまった等と言ってくれるな。どんな事になっても、タケルはタケルだ。私が愛してやまない大切な人だ」

「私達が、ですよ。お姉様」

 

 少しだけ挑戦的な声音で投げて来るサヤに、ナタルは小さく苦笑い。

 

「そうだな、その通りだ……だから何としても連れ戻さないとだ」

「はい。お兄様が生み出してくれたシンゲツと共に、必ずや」

「オーブに戻った暁には、カガリと一緒にお説教だな」

「良いですね。その日は寝られない事を覚悟していただきましょう」

 

 不安を抑えつけて、どうにか明るい空気を作り出して2人は笑った。

 直ぐ背後に迫って良そうな嫌な予感を拭い去り、そうして虚勢だとわかっていても、必死に望む未来を思い描いた。

 

 そうでもしないと脳裏に過る最悪が、未来を塗り潰してしまいそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中継点グノーでの戦いは続く。

 

 ジュール隊とジャニス隊。そしてデスティニーを駆るハイネの猛攻に対して、護衛艦群の部隊は素直にグノーへと寄せ付けない事を目的に応戦。

 ザムザザーやユークリッド等の防御兵装持ちが居た事でザフトの攻めは効果が薄かったものの、ハイネやイザーク達の活躍が徐々にそれらを押し切り始めていた。

 

「このぉおお!!」

 

 テンペストソードがザムザザーを断ち切り、巨大な爆発と共に消えていく。

 いつ撃たれるかもわからないレクイエムの恐怖とも戦いながら攻め続けるジュール隊とジャニス隊には、疲労の色が見え始めていた。

 

「ボルテール、中継点の加速は!?」

『僅かに加速! 分速二四!』

「ちぃ! これだけ攻めてもか! ディアッカ、後退してガナー隊と隊列を組め。一斉掃射だ!」

「了解。シホ、イザークを頼んだぞ!」

「はい!」

 

 最前線でイザークと共に戦い続けるシホも、その表情には苦悶が伺える。

 精神的にも肉体的にも疲弊している中、グノー加速の為にディアッカを退がらせるとなれば、必然2人の負担が増える。

 だが、そこに泣き言を言える余裕もない。

 心許ないエネルギーゲージの残量をから目を逸らしながら、2人は再び戦場で躍動していく。

 

「(加速している以上、ジャニス隊の方も上手くいっている筈だ……それでもこの変化の無さ。やはりMSの携行火器程度では移動ですら困難か)」

 

 破壊を優先するべきであったか…………そんな疑念がイザークの脳裏に過った。

 廃棄コロニーの外壁部を横断する様に破壊して断ち切るべきだったか……或いは、偏向の要であるゲシュマイディッヒ・パンツァーの発生装置を破壊できればビームの変更は不可能。レクイエムの脅威は無くなるだろう。

 

 しかし、それはどこに装置があるかが判明して居たらの話だ。

 廃棄コロニー内面である事は分かるが、スラスター光など稼動している目印も無しにそれを探し出すのは困難である。

 そんな見つかるかわからないものを探すよりは、加速をさせつつ制動スラスターを見つけ出す方が無難だ。

 

 少なくとも、廃棄コロニーの制動を妨害するのは間違いではない戦術であった。

 

「くっ、ハイネ・ヴェステンフルス! そっちはどうなっている!」

 

 作戦の成功を祈る様に、イザークは通信でハイネを呼びつけた。

 しかし、呼びかけに応じる声は返ってこず、イザークは湧き始める恐怖に顔色を変えていく。

 

「おい、応答しろ! ハイネ・ヴェステン──」

『聞こえてるっての! 通信がちょっと鈍かっただけだ! 安心しろ、こっちは粗方制動スラスターを潰した! 多少残ってたとしても、その程度の数じゃバランスが崩れて回転するだけになる筈だ。後はこのままお前達が押し切ればいい!』

「そうか! 了解した」

 

 届けられた朗報に喜色が浮かぶ。

 疲労で散漫した集中力を少しばかり取り戻し、イザークは最後の攻勢をかけるべく激を放った。

 

「全機! 敵部隊に構うな、畳み掛けろ!」

「了解!!」

 

 部隊長の号令に、ジュール隊が奮起する。

 ボルテールの艦載砲から、ザク部隊のオルトロスにファイヤービー。

 更にはグフ乗りもドラウプニルで援護を掛け最後の攻撃をグノーへと叩き込んだ。

 

『中継点加速────分速三二。制動を掛けた位置から算出した予定地点を大きく超え始めています』

「やりましたか!」

「グゥレイト!! やったぜ」

「全員即座に離脱だ。構わず撃たれれば巻き込まれるぞ。急げ!」

 

 作戦を成功させたと確信したイザークは、部隊を下がらせた。

 同時に、護衛部隊の残党も一斉にその場を離れ始め、恐らくだが任務の失敗を悟ったのだろうと推察。

 

 漸くそこで、イザークは表情を緩めた。

 

 だが────

 

 

「隊長、違います! これは撤退ではありません!」

 

 

 それは決して、作戦の成功を示したものではなかった。

 

 

 些細な違和感……そこから気が付く大きな過ち。

 それに気が付いたのは、シホ・ハーネンフースが最初であった。

 

 元技術職故か、もし撃たれるのならば敵兵器の挙動を確認しておこうと目を光らせていた彼女は、護衛部隊の動きに違和感を覚えた。

 

 それは、在る一点へと集結しているという事。

 散々に蹴散らされた敗戦模様の中撤退すると言うのなら。追撃を忌避して散らばるのが合理的だ。

 撤退となって一か所に集結する等と言うのはあり得ない。

 

 それをするのは即ち────仕切り直し。

 新たな戦闘の予感を感じさせる行為に他ならなかった。

 

 

 集結していく護衛部隊。

 まるで口を開ける様に、意図的に空白を空けられたその配置の陰から。

 

 

 

「な……んだと」

 

 

 

 レクイエム中継点“フォーレ”は、姿を現した。

 

 

「そんな! さっきまであんなところには何も」

「まさか、ミラージュコロイド……」

 

 

 

 感じられるはずの無い気配。見えるはずの無い未来を、その場にいる皆が幻視した。

 月基地より放たれた光の奔流が、目の前の中継点へと突き刺さる様を。

 それは奇しくも、現実のものとなって彼等の眼前に飛び込んでくる。

 

 

 

「やめろぉおおお!!」

 

 

 

 ハイネの絶望が響き渡る中。

 

 

 

 

 宇宙を再び、巨大な光が引き裂いていった。

 

 




先んじてオーブを撃って、動いてくるとわかっているのに
アズラエルさんが何も考えていないわけがない。

次回から月基地決戦ですね。どうぞお楽しみに。

感想、よろしくお願いします。

この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!

  • タケル&ユリス
  • キラ&アスラン
  • シン&サヤ
  • イザーク&ディアッカ
  • ミゲル&ハイネ
  • タケル&キラ(SEED編より
  • ラウ&ユリス(SEED編より
  • アサギ&マユラ&ジュリ
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