大量破壊兵器レクイエム。
その悪意に晒されたプラントは、現在混乱の最中にあった。
「落ち着いてください! 慌てずに!」
「バカを言うな! まだ奴等の攻撃が終わったわけじゃないんだぞ!」
「いきなり撃ってくるなんて!」
「早く避難させろ!」
ヤヌアリウスと隣接しているプラント、ディセンベルでは我先にと避難用のシャトルに乗り込もうとする市民達で溢れかえる。
すぐ間近で、プラントが崩壊したのを見せつけられたのだ。その上、被害は自分達が居るプラントにも及んでいるとなれば。いつ崩壊するかもわからない状況に、市民達が混乱しパニックになるのも致し方ないことではあった。
「市内はどこもパニック状態です! とても収集のつくものではありません!」
「分かっている! だがそれを治めるのが仕事だろう! 泣き言を言っている暇はない!」
評議会議員の1人、ノイ・カザエフスキーの苦言にデュランダルは厳しい声で返した。
放たれたレクイエム。そしてそれが齎した埒外な被害。
ディセンベルに限らず、プラント市民の恐慌は凄まじいものであった。
この状況はデュランダルとしても想定外であり、こうして緊急の評議会を招集し対応に追われていた。
「兎も角、市民の避難を」
「避難だと? どこに逃げ場があるというのだ。奴等の兵器はどのプラントだって狙い撃てる。プラント市民をまとめて、地球に送れとでも言うつもりか」
「では、何とか和解や停戦を……」
「相手は国家では無いんだぞ。ロゴスと言う名のテロリストだ……それらを相手に、一体どんな交渉ができると言うのだね? 力に屈服しろとでも言うのか!」
その様な手段はない。否、取れはしない。避難を進言してきた将官にデュランダルは厳しく返した。
敗北を示すことはつまりまた以前の世界へと戻る事を示す。
漸くここまできたのだ。世界の敵であったロゴスと戦い、世界の膿を絞り出してきたのである。
今ここで、このテロ行為に屈服するわけにはいかなかった。
だがかと言って、このまま市民を犠牲にさせるわけにもいかない。
即時の避難も、逃げる場所も無いと言うのであればできる事は1つ────戦い、あれを破壊する事だけである。
「ジュール隊とジャニス隊、ゴンドワナは? ミネルバとの連絡は!」
「はっ、ジュール隊及びジャニス隊はゴンドワナと合流。至急補給を済ませて、中継点への再度の攻撃を仕掛けると。またミネルバも月へと到着し、作戦を開始したと報告が入っています」
「おぉ、そうか。来てくれたか」
少しだけ、デュランダルの声は上擦った。
この混乱の中では起死回生となある大きな一手である。
ミネルバは今や、ザフトを代表する英雄艦だ。ミネルバの活躍があれば、市民の安心にも一役買ってくれることだろう。
「それと…………彼等はどうなった?」
「現在ダイダロスに向かっていると。ジュール隊からの報告では、先の砲撃を僅かに逸らしてくれたのは彼等によるものだと」
「そうか……どうやら知らずまた救われた様だね。彼等とミネルバが居れば、きっと止めてくれるはず……ならば、ラクス・クラインをここに。市民の安心と理解を得るためには彼女の力が必要だ」
「はっ、直ちに」
近くの将校に指示を下し、デュランダルは再び議員達との議論で紛糾していく。
その口元は先程とは打って変わり、僅かに緩み弧を描いていた。
ダイダロス基地の攻防は、ロゴス側にとって厳しい戦局に成り始めていた。
圧倒的機動性と、それを生かしたアロンダイトによる一撃。
対大型MAを目標に掲げたデスティニーを、最高レベルのパフォーマンスで扱い切るシンによって、今やデストロイは張子の虎も同然である。
更には、宇宙空間で漸くフルスペックを発揮できるレジェンドも、大型のドラグーンに備えられるビームスパイクによってデストロイの陽電子リフレクターを突破。
明確な対抗手段を手に入れたレジェンドにとってもまた、既にデストロイの脅威は小さい。
当然ながら、通常のMSであるウインダムや、同じ陽電子リフレクター持ちとは言えデストロイと比較にならないザムザザーやユークリッド等はなんら脅威ではない。
「ふむ、流石にやる」
「司令、このままでは」
慌てた様子で進言してくる副官を制して、司令官は僅かに笑みを浮かべた。
ここまでは、ある種予定調和────いよいよ本題である。
レクイエムに続く、もう一つの切り札を出す時であった。
「わかっておる。頃合いだ……アレを出せ」
紅蓮の翼が宇宙を翔ける。
再び出て来たデストロイを捕捉すると、デスティニーはアロンダイトを構えた。
巨大な閃光、降り注ぐミサイルをものともせずデストロイへと接近していくと、上段から振り下ろし両断する。
ベルリンではあれ程に苦戦したデストロイがこうも簡単に叩き切られる様に、シンは僅か心地の良さを覚えながら次の標的を見据えた。
長射程ビーム砲でまた幾つものウインダムが墜とされていく。
「シン、少し出過ぎだ。自信があるのは分かるが余り突出するな!」
「俺とデスティニーなら大丈夫だ。あいつ等はもう、何も怖くなんかないさ」
戦果は上々……と言うよりは、もはや異次元の戦果を見せるシンではあるが、その気配は徐々に危うさを纏う様になっている事をレイは感じていた。
入り込みすぎているとでも言えば良いだろうか。まるで一人でも作戦を成功させようとしているような、そんな気配である。
「シン、少し落ち着け。ルナマリアが心配なのも分かるが、それでお前がやられては元も子もない!」
「わかってるけど! それもあるけど!」
だがそれだけじゃない────放たれる砲火を躱しながら、シンは被りを振る。
SEEDで先鋭化された感覚が、シンに“何か”を感じさせていた。
ヘブンズベースでも得た感覚────このままで済むはずがないと言う、嫌な予感を。
「ミネルバ! ルナは……インパルスの位置は!」
確かな予感を感じ、シンはミネルバへと通信を繋いだ。
『お待ちください────インパルス、ポイントB-24にて先行中!』
アビーから返される報告────それは主戦場から随分と離れたポイントであった。
誘引された敵主力部隊の裏をかくように……側面より敵基地中枢へと辿り着く完璧なルート。
だがそれ故に、彼等とは完全に孤立した無縁状態である。
いよいよを以て、シンの胸中は冷静では無くなってきた。
まるで誘い水である。
ヘブンズベースでも、デスティニーとレジェンドの性能は露見している。
デストロイですらこの2機に拮抗できるものではないと言うのにむざむざ釣り出され、そしてこの攻防戦において最も大事なレクイエムへのルートを無警戒で放置しておくはずがない。
居るはずだ、そこには。
デストロイを平気で前に押し出せるほどの脅威が。
瞬間的に息を呑んだシンの予感は、現実のものへとなった。
ダイダロス基地に設置された巨大なハッチが、ゆっくりと開かれていく。
そしてそこからせり上がって来る巨大な兵器。
せり上がる……せり上がる……せり上がる。
それはシンの眼前でいつまでたっても全容を見せずにせり上がり続けた。
漸くその動きが止まった時、彼等の眼前にそびえるのはデストロイと同じ黒と灰を纏った巨人。
あのデストロイですら大人と子供の様なサイズの差を見せる、黒い巨人であった。
「こ、これは……」
「なんて大きさだ」
距離感がおかしくなる。
シンとレイはまだ基地上空までたどり着いては居ないと言うのに、まるで目の前に居る様な威圧感を感じた。
「ふっはっはっは! さぁ見せつけてやろう。これが我らが生み出した最大にして最高の機動兵器! GFAS-X2“フルングニル”だ!」
司令官の声と共に、巨人の胸部で光が臨界していく。
「まずい、ルナ!」
胸部だけで6門を備える高出力プラズマ収束火線砲“ヨトゥン”が、その巨体に見合う威力と範囲を以て月面へと吐き出された。
「なんだ……あれは」
「ロゴスは、こんなものまで……」
ミーティアで月面へと辿り着いたアスランとキラは、眼前の戦場に慄いた。
遠めからでも分かる異常なサイズの大型MS。それが吐き出した破壊の光は、月面に巨大な爪痕を残し粉塵を上げていた。
少なく見積もっても、威力規模は艦船の陽電子砲と同等だろうか。
そのサイズと重量から考えると、恐らく地上では運用不可能な兵器であろう。
無重力、或いは低重力下でのみ実現できる、機動兵器としてあり得ないレベルのサイズだ。
『キラ、アスラン、気を付けて下さい。遠方より新手ですわ』
「えっ!?」
「なにっ?」
ラクスからの通達と同時、2人のコクピットにはセンサーの警告音が鳴った。
そして、その情報を確認した2人は驚愕に目を見開いていく。
「そんな……」
「まさか、アルザッヘルからか!?」
居並ぶ艦船。確認しきれない程のMS群。
彼等の眼前に見えてきたのは、地球連合の大艦隊であった。
月基地アルザッヘル。
ユニウス条約締結後に、前大戦で壊滅したプトレマイオス基地に代わって建設された、新たな地球連合の主力基地である。
当然ながらその戦力規模は大きい。そもそも表向きの主力基地はアルザッヘルであり、ダイダロスは本来レアメタル採掘用の軍事基地である。
レクイエムの配備によって防衛戦力を拡大させていたが、本来の主力基地はアルザッヘルだ。
少なくとも、その戦力規模がダイダロス以下であることはあり得ない。
月面でのこの戦いが一大決戦となる事を予見し、ロゴスは全ての戦力を投入してきたのである。
アークエンジェル艦橋でも増援に来たロゴスの大艦隊を捕捉し、驚愕に揺れていた。
「まずいわね。レクイエムをどうにかしなきゃいけないって時に」
「夥しいという言葉がこれ程似合う光景も無いでしょう────どうしますか、マリュー?」
『ラクス、ラミアス艦長。俺とキラで、艦隊の方を抑えます』
飛び込んで来たアスランからの声に、マリュー達も通信中であったラクス達も、小さく息を呑んだ。
額縁通りに受け取るのなら、大艦隊を相手にたった2機で相手取ろうとしている────無茶苦茶な話だ。
「どうするつもり、アスラン君?」
『艦隊とMSを相手にするならミーティアを装備した僕達の方が都合が良いです────逆に、あの巨大兵器を相手にするとなると小回りが利くMS単体の方が良い』
『それならば、俺とキラで艦隊を抑えて、皆はレクイエムの攻略を』
『ムウさんとサヤはレクイエムの方をお願い。サヤなら、ベルリンの時みたいにミネルバとの協力も取り付けられるでしょ?』
『それは、そうでしょうが……随分と簡単に言ってくれますね、キラ・ヤマト』
シンゲツのコクピットの中で、サヤは心底複雑そうな面持ちを見せる。
本当に、随分と簡単に言ってくれる。
こちとら裏切りに近い脱走劇の末ミネルバから離れたというのに。ましてやその中で撃墜されて死んだと思われているというのに。
どの面下げてミネルバの面々に通信を繋げと言うのだろうかこの男は。まだザフトの中では名高いアスラン・ザラの方がマシではないか。
そう思うも、それを押し殺してサヤは了承の頷きを返した。
「ヤマト、ザラも…………本当に2人で大丈夫なのだな?」
『はい、大丈夫です。ナタルさん』
『必ず、抑えて見せます』
「わかった。マリュー」
意志は固いだろう事が2人の声音から読み取れて、マリューとナタルは互いにこの進言を聞き入れる事を決めた。
やはり、こう言う所はエースパイロット故であろうか。最前線でその腕を振るう彼等だからこそ彼我の戦力差。己のできる事を良く見極めている。
確かに、戦艦数隻にも及ぶ火砲を備えるミーティアに、フリーダムとジャスティス。それらを操るのがキラとアスランとなれば、どれほどの大艦隊であったとしても立ち回れるだろう。
数の暴力に対して、同じ数の暴力で封殺できるだけの火線を、MSでありながら今の2機は備えている。
そしてキラが言う様に、巨大兵器を前にしてはそれが活かし切れない事も分かる。
ミーティアは推力こそ桁違いではあるが小回りの利く機動性は持ち合わせていない。あの巨大兵器がデストロイと同じ設計思想であるなら敵の攻撃を掻い潜り接近する必要があるだろう。
それは、ミーティアを装備していては不向きな戦いになる。
適材適所────己が成せる最大を提示した作戦であった。
「了解したわ────作戦を変更する。シンゲツ、シロガネ両機と、エターナルのドムトルーパー小隊はレクイエム攻略へ移行。アークエンジェルはこれの援護に回ります」
『では、エターナルは2人のサポートで戦域管制を。アイシャさんは艦の護衛をお願いしますわ』
「はぁい。任せて」
エターナルの艦橋より、アイシャが出ていく。
ファクトリーで武装も用意された、今やアイシャの専用になりつつある開発用のカゼキリが、そう時を置かずにエターナルより発進した。
『最優先となるのはレクイエムの破壊です。その為にも、皆さん奮起してください』
「了解!!」
ラクスの号令と共に動き出すキラ達。
フルングニル。
アークエンジェルとエターナル。
そしてアルザッヘルからの大艦隊を加えて。
レクイエム攻防戦は第2幕へと突入した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
パイロットスーツのヘルメットの中で、自分の吐息が妙にうるさく感じる。
ルナマリア・ホークは今、生きている事を実感していた。
目の前には、大きく地面を抉られて彼方まで痕を残した破壊の軌跡。
目の前に、死の光が奔った痕であった。
フルングニルの出現と、続く主砲ヨトゥンの発射を察知したルナマリアはギリギリのところで射線から後退。それはもう必死に。命からがらで逃げ出した。
途轍もない衝撃に機体が晒される中、破壊の奔流の余波を受けインパルスが月面を転がっていくと、生きた心地などまるでしなかった。
下腹部の更に下で少し濡れた感触があるのは、気のせいではないだろう────それ程までにルナマリアの目の前には、死が迫っていたのだ。
「生き……てる?」
幸いにも巻き上がった粉塵がインパルスの機体を覆い隠してくれて追撃は無い。
突然に己を襲った死の恐怖を振り払い。ルナマリアは己を掻き抱いていた手を操縦桿へと戻した。
力を込めて、握りしめる────腕は恐怖の硬直から解放され、しっかり握りと操縦桿の反発を感じた。
「はぁ……はぁ……大丈夫、やれるわ」
死の恐怖など、とうの昔に覚悟しているはずだと己に言い聞かせる。
ザフトに入り、MSに乗って戦うと決めた時から────いまさらこんな恐怖で止まるようでは、ザフトレッドは務まらない。
『ルナ!!』
飛び込んでくるわんぱく小僧の声が張りつめた気持ちの中では良い着火剤となった。
フットペダルを踏み込み、インパルスを飛翔させる。
粉塵を抜けて飛び上がれば、改めて巨人の目の前へと躍り出る事になるが、ルナマリアは構わずケルベロスを構えた。
「死ぬかと思ったでしょ! このデカブツが!!」
このサイズ差では大した脅威にはならないだろうケルベロスの砲火を、ルナマリアはお返しとばかりにフルングニルへと撃ち付けた。
当然ながらそれは、お家芸とも言える陽電子リフレクターによって簡単に無力化されるも、ルナマリアはそれで恐怖を払拭した。
効かぬと理解しているし届かぬとわかっている。それでも、この巨人を相手に固まったままではいられない。
これを超えなくては、レクイエム破壊はならない。
先の攻撃で植え付けられた死の恐怖と、敵わぬという想像を────彼女は今必死に振り払ったのだ。
「あっ、やばっ!?」
当然ながら、そんな事をしていればフルングニルにとっては良い的である。
すかさず向けられるは、巨体の随所に備えられたビーム砲。まるで戦艦の迎撃設備の様である。
「ルナっ!!」
そこへ、駆けつけたデスティニーがビームシールドを展開。
インパルスに向けられたすべての砲火を凌ぎ切った。
「シン……助かったわ」
「ルナ、無事でよかった。とにかく、一度後退するぞ!」
「えぇ」
こうなった以上…………この巨大兵器が立ちはだかった以上。
当初の予定であった作戦などもはや無意味だろう。
厳しい状況に歯噛みしつつ、シンとルナマリアはフルングニルから吐き出される火器を躱しながら後退していった。
「アビー! インパルスは、無事なの!」
「お待ちください」
突如現れた巨大兵器。
そしてそれが齎す大きな破壊の爪痕に、タリアは慌てながらもアビーへと確認を促した。
先の攻撃で電波障害が酷い中、アビーは必死に戦域の情報を漁っていく。
「インパルス……健在。デスティニーと共に後退して来てます」
「そう、良かった……」
艦橋に小さく安堵が漏れるのは仕方ない事だろう。
あれだけの規模の攻撃を目の前で受けていた筈なのだ。
巻き込まれて撃墜、と言う可能性は嫌でも過る。
「艦長、別方向より熱源が多数────これは!?」
「バート、どうしたの?」
「そ、それが……」
バートがモニターに光学カメラの映像を映した。
そこにあったのはアルザッヘルからの大艦隊。
驚愕が、艦橋を包み込んだ。
「アルザッヘル基地からの増援部隊……」
「えぇっ!? か、艦長、こんな数我々だけでは──」
「言わないで、アーサー! それを口にしたら呑み込まれる」
ただでさえ戦艦1隻でダイダロスを攻略すると言う無茶な作戦であったと言うのに。
想定外の巨大兵器に、想定外の大艦隊。
不可能────その言葉を口にしたが最後。もうそこで戦意が折れてしまいそうな状況であった。
ここで折れてしまっては、プラントに明日は無い。
歯を食いしばって、どうにかそれを振り払わなくてはならなかった。
「艦長! 報告です!」
アビーの声に表には出さず、内心で震えながらタリアは振り返った。
「どうしたのアビー?」
「はい。後方より戦艦とおぼしき反応────アークエンジェルとエターナルです」
「なんですって!?」
次から次へと。
タリアの脳内で、目の前の戦場が混沌としていく。
エターナルはともかく、アークエンジェルは直近でミネルバとやり合っている。
オーブの所属と言う事も今や疑い様が無く、今この時この戦場に現れた真意が図り兼ねる。
オーブを攻め込んだその報復か……それとも、正義の大天使として、自分達と同じくレクイエムの排除に来たか。
だが、タリアが抱いた疑念の答えは、意外な形で見せつけられる事に成った。
「本艦に高速で接近する機影を確認──ライブラリ照合、在りません!」
俄かに緊張で張り詰める艦橋には、接近してくる熱源の正体────暗夜を思わせる暗い青の鏡面装甲を持つMSが映った。
『こちらは、オーブ国防軍二尉────サヤ・アマノです。ミネルバ、聞こえますか?』
届けられた声は、それ程時を置いてるわけでもないのに随分と懐かしく感じる少女の声であった。
驚きに皆が揺れる中、艦橋モニターには通信を投げて来た彼女の姿が映し出される。
パイロットスーツのヘルメット越しで分かりにくいが、爛々と輝く黒曜の瞳とその整った容姿で彼女だと言うことは一目でわかった。
死んだはずの、ヤヨイ・キサラギだと言うことが。
『──お久しぶりです、と言っても良いのでしょうか。グラディス艦長』
「ヤヨイ……貴女、生きていたのね」
オーブ戦の後に、タリアはMS隊から密かに彼女の生存を聞かされてはいた。彼女が生存しており、今はオーブに居たという事を。
故に、他のクルー達比べれば、タリアの驚きはまだ小さかった。
それでも、こうしていざ目の前にすると、やはり生きていてくれて嬉しいとは思うもので、タリアはどこか母の様な面持ちで表情を柔らかくした。
「貴女がこうして通信を投げてきたと言う事は……アークエンジェルも含めて、私達と目的は同じと言う事で良いのかしら?」
『はい、私達の目的もまたオーブを撃ったあの兵器の破壊です』
「その為に、アークエンジェルと共に再び手を取り合いたいと」
『脱走した私から、今更こんな申し出をするのも烏滸がましい話ではありますが、それが可能であればお願いしたく思います────私はともかく、皆さんが知る彼女にとっても、プラントは大事な場所ですので』
ハッとする様に、ミネルバクルーはサヤを見た。
記憶を取り戻し、今はサヤ・アマノの中に溶けた記憶。ザフトに居たヤヨイ・キサラギにとって、プラントはやはり帰る家、帰る場所であったのだろう。
サヤの中にも、彼女として生きた記憶は確かに存在しており、今この時プラントを守りたいと言う気持ちは彼等と同じなのだ。
故に、今この時は同じ目的の為に手を取り合いたい。
そう言う事である。
「そう、わかったわ」
「か、艦長!?」
「この状況では是非もない話よ────どの道、私達にこの提案を拒否している余裕などは無いもの」
『英断に感謝致します』
「プランは? そっちの戦力は如何程かしら?」
『作戦プランと共に戦力を提示いたします。
敵増援艦隊はこちらで引き受けます。フリーダムとジャスティスがこれに。エターナルがその援護です』
「あの2機だけ?」
『それができるだけの者達です。皆さんも、御存知だとは思います』
言われて、タリアも含め皆がどこか納得する。
先の大戦で、プラントへと放たれた核ミサイルの数々を撃ち落とし、更なる攻めを敢行しようとした連合艦隊のその悉くを彼等が叩き潰した事。
プラント市民であれば知らないはずもない。
プラントを核の炎から守った……フリーダムとジャスティスは、そう言う意味でも伝説的である。
「ヤヨイ。じゃ、じゃあダイダロスの方はどうするんだい?」
『トライン副長。こちらにはアークエンジェルとMS5機が当たります。私が乗るこのシンゲツと、オーブの剣であるシロガネ。それから、送りましたデータの3機小隊がエターナルより発進しています』
「それで、あの巨大兵器を撃破すると?」
『あのような機動兵器、破壊できればそれに越したことは無いでしょうが……今優先すべきはプラントを狙える方でしょう。その認識は共通かと思います』
「えぇ、そうね────了解したわ。アビー、シン達に通達を! 彼等の情報を送って協力を打診して」
「は、はい!」
取り掛かるアビーの声を聴きながら、タリアは1つ嘆息してモニターを見やった。
どうにか、まだ可能性はあると言う所。
厳しい状況ながら、心強いと言えば心強い……むしろこの世界において最高の援軍と言えよう。
まだ、絶望するには早かった。
「──頼むわね、ヤヨイ」
『無論です』
極自然とその名で呼ばれた事に、サヤが忌避感を抱く事は無かった。
いくら捨てようとしても、その胸の内で彼女として生きた記憶と想いは消しきれずに。こうしてサヤ・アマノはザフトのヤヨイ・キサラギとしての彼等の期待に応えるべく機体を翻した。
共に来ていたシロガネと並ぶと飛翔し、向かう先は最前線。
懐かしき顔ぶれが揃うミネルバのMS隊の元へ。
離れたはずの道は、再び細く交わるのであった。
盟主王的には数と大きさこそが力。
デストロイじゃ負ける? じゃあもっとでかいの作っとくわって話。
潜り抜けられないように火線増やせば負けんやろってな具合。
ちなみにフルングニルとは北欧神話に出てくる巨人の名前です。
感想、何卒よろしくお願いします。
感想の分だけ本当に執筆の勢い付きますので、どうぞお願いします。
この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!
-
タケル&ユリス
-
キラ&アスラン
-
シン&サヤ
-
イザーク&ディアッカ
-
ミゲル&ハイネ
-
タケル&キラ(SEED編より
-
ラウ&ユリス(SEED編より
-
アサギ&マユラ&ジュリ