機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-90 舞い戻る剣

 

 

 ミーティアを装備したフリーダムが、全砲門を解放。居並ぶMSを次々と潰していく。

 その近くではジャスティスがミーティアのMA-X200ビームソードで艦船を真っ二つに断ち切った。

 

 続くはミネルバ。

 艦首の陽電子砲が放たれフルングニルを狙うも、陽電子リフレクターによってそれは防がれ、余波が月基地を揺らす。

 そこへ突撃していくデスティニーとレジェンド。さらに続くはシンゲツとシロガネ。後方からはヒルダ・ハーケン率いるドム・トルーパー隊がフルングニルを狙うも、フルングニルは機体各所に備えられた近接防御ビーム火線“ニブルヘイム”を縦横無尽に発射し寄せ付けない。

 

 一進一退の攻防────ダイダロス基地で行われている戦いが、メディアを通してプラントの各所に流されていた。

 

 

『どうか皆さん、落ち着いてください。勇敢なザフトの将兵達が今、皆さんを守る為に奮起しております』

 

 

 ミーア・キャンベル扮するラクス・クラインの声が、映像と共に市内へと流れていく。

 

 

『戦局は難しいのかもしれません。ですが信じて下さい。皆の為に戦う彼等を。そして、彼等に託したデュランダル議長の事を。私にはそうして信じる事しかできませんが……皆さんもどうか、私と共に彼等を信じて祈って下さい』

 

 

 祈れば何が変わるわけでもない。

 だが、プラント市民が平静を取り戻すには十分な光景であった。

 何故ならラクス・クラインは、アプリリウスの市民達の目の前に出て、声を上げ祈りを捧げているのだ。

 こんな事態を招いた評議会──ひいてはデュランダル議長への不満を、ラクス・クラインの祈りと言葉がかき消していく。

 平和の歌姫が自分達と同じくプラントに居て、こうして議長やザフトの兵士を信じ祈りを捧げている。

 プラント市民の恐慌状態は、その姿に急速に沈静化していった。

 

『私も、皆さんと共にここにいます。怖いのは私も同じです。ですが、それと同じくらい私はザフトの皆さんを信じています』

 

 それはラクスを扮する彼女(ミーア)の心からの声であった。

 ラクス・クラインを扮する────演じる。

 だがどうあっても、彼女は彼女。歌手を夢見た1人の女の子でしかなかった。

 ヤヌアリウスが撃たれディセンベルが巻き込まれ。市民達と同様に、彼女もまた怖くて仕方がない。

 議長の傍にいて実情を知る分、次はここアプリリウスが撃たれるであろう事を彼女は聞き及んでいる。

 本当なら彼女だって、皆と同じく喚いて我先にと避難したい気持ちだ。

 

 それでも、今ここに居るのはラクス・クラインなのだ。

 彼女が憧れた平和の歌姫が、ここに居るのだ。

 抱いてきた憧れと、議長に見初められてそれを任されたと言う誇りが、ミーアをどうにか奮い立たせていた。

 皆の前で言葉を紡ぎ、祈りをささげる────たったそれだけが、何と重い事か。

 万が一暴動が起きた時の為にとすぐ後ろに控えているミゲルに、今にも泣き言を言ってしまいそうであった。

 

 そんな胸の内を、ただの女の子であったミーアに隠し切れるはずも無く、彼女の心の震えは漏れ出てしまう。

 が、それこそがプラント市民の気持ちを鎮めていく。

 恐怖を堪え皆に呼びかけるラクス・クラインの姿に、市民は絆されていくのである。

 

 

 

 こうして、ラクス・クラインと言う名の盾を────デュランダルは見事に用意して見せたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 GFAS-X2“フルングニル”。

 

 長らく進んで来た連合の兵器開発の潮流である、多人数オペレートシステムを用いた巨大機動兵器。その最高傑作である。

 デストロイ開発途上において、構想自体は挙がっており設計の段階で地上での開発は不可能とされて月面へ。その月面の低重力下においてですらも、製作が厳しく大部分を別の宇宙拠点にて開発製造している。

 サイズはデストロイの2倍を優に超え。MSの形態をとりながらも、その実はもはや機動要塞である。

 Nジャマーキャンセラーによる核エネルギーを動力とし、そのサイズ故の耐久力と、陽電子リフレクターによる鉄壁の防御。

 攻撃面では確認できるだけでも胸部のプラズマ収束火線砲が6門。デストロイ同様に両腕部は切り離しを可能とし、更には4分割で陽電子リフレクターが2基と5指のビーム砲塔を備えるものが2基の構成を組んでいる。

 頭部口腔部のスーパースキュラですら、その口径規格はデストロイの主砲であるアウフプラール・ドライツェーンを凌駕し、両肩部の108門ミサイルポッドは上向き発射から誘導を開始する誘導ミサイルで死角もない。

 そして近づくもの全てを振り払える全身に備えられた50門のビーム砲塔ニブルヘイム。

 

 

 彼等の前に立ちはだかるのは、兵器を身に纏う巨人であった。

 

 

 

 

「ゴットフリート1番2番。照準、左舷前方敵MS──てぇ!!」

 

 ナタルの声と共に放たれるアークエンジェルからの光の矢がウインダムを2機撃墜していく。

 

「ミリアリアさん、敵巨大兵器の観測を怠らないで頂戴。ノイマン、動きがあればすぐに回避軌道を」

「了解!」

「了解です」

 

 激戦の様相の中でも、流石はアークエンジェルと言う所。その構えは盤石を思わせる。

 特にノイマンは、先日ベルリンでアークエンジェルを大きく被弾させたこともあり、厳戒態勢である。

 視線も纏う気配も鋭いものであった。

 

「そう気を張り過ぎるな、ノイマン」

「ふふ、そうね。昔の貴方の方がリラックスしてたわよ」

 

 ナタルとマリューに窘められ、ノイマンは小さく苦笑しながら肩の力を抜いた。

 確かに、嘗てザフトに追われながら逃避行していた時の方が必死ではあったが今よりも気持ちの余裕はあった気がする。

 必死だったからこそ、余計な思考は無く精一杯やれることをやっていた。

 だが今は、艦を僅かでも被弾させるわけにはいかないと、成すべき事より結果だけを見据えて、入らぬ思考がノイマンを固くしていた。

 

「前に出てる皆が居るわ。艦を直してくれるマードックさん達もね。貴方1人で艦を守るわけじゃないのよ」

「失礼しました。少し……気負い過ぎてたみたいです」

「構わん。そういうお前だから皆も信頼している。頼むぞ、ノイマン」

「えぇ、了解です!」

 

 1つ肩の力を抜いて、ノイマンは操縦桿を握り直した。

 やるべきことは変わらない────操舵士として、艦に迫る危機の全てを躱して見せる。

 

 重すぎた責任感を排し、ノイマンの瞳には負けてたまるかと言わんばかりの闘志が宿った。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあああ!!」

 

 ヴォワチュール・リュミエールを稼動。可動性多角スラスターを備えるシンゲツは背面に放射状の光を生やして、フルングニルへと突撃していく。

 

「おいおい、ったく突撃狂か? あの嬢ちゃん!」

 

 その背後でビャクライユニットを背負ったシロガネに乗るネオは、嘆息しながらもドラグーンを射出。

 8基のビャクライがシンゲツを狙うミサイルを撃ち落としていく。

 

「これで!」

 

 肉薄────長尺の多目的ビームライフル“ゲツエイ”から光の刃を出力しフルングニルへと迫るも、フルングニルの全身に備えられたニブルヘイムの光に追いやられシンゲツはギリギリのところで回避軌道。

 再び距離を取らざるを得なくなる。

 

「ちっ! 数が多すぎです!」

「おいおい、援護したんだから決めて来てくれよ」

「心外な。援護だと言うのならあの砲門の1つや2つ潰してから言ってくださいませ」

「無茶言うなって。ミサイルだけでも手一杯だっての」

「お兄様ならミサイルを潰しつつ後詰で一緒に接近してくれました。その機体を駆る以上、貴方にはそれが求められます」

「できるか、そんな事!」

 

 ドラグーンをコントロールしてミサイルを叩き落しながらの全開機動。そんな右を見ながら左を見る様な事、普通の人間にはできることではない。

 ネオ・ロアノークを普通の枠に収めるのも大概おかしい事ではあるかもしれないが、とにかくサヤの無茶な要求に、ネオは怒りと呆れをないまぜにして返した。

 

「それにしても──」

「あぁ、俺もあっち側だったとはいえ、驚きだよ全く」

 

 眼前で暴威の嵐を巻き起こす巨人に、2人は慄いた。

 

 

 掻い潜り接近する事も困難な上、このサイズ感では決定打を与える事が容易ではない。

 接近して致命の一撃を入れたと思っても、それが致命に成り得る程薄い装甲ではないのだ。

 

 高さが2倍に成ったのなら当然厚みも2倍になる。

 デストロイですらその巨大さから、アロンダイトの様な長大な兵装が無ければ有効打にならないというのに……このフルングニルともなれば、一撃で仕留めるのは不可能だろう。

 

 

『ヤヨイ、今度は俺が行く。援護してくれ!』

 

 

 赤い光の翼を放出して、今度はシンとデスティニーが吶喊していく。

 

「ハーケン隊、随伴をお願いします!」

「あいよ! 道案内してやるよ、来なザフトの坊主!」

「ぼ、坊主!?」

 

 ヒルダの言葉にシンが小さく憤慨する中、デスティニーを守るようにハーケン隊が前に出る。

 

「私達は露払いだ。行くよ、野郎ども!」

 

 合図と同時に加速していく3機のドムは、機体前面に赤いフィールドを形成する。

 スクリーミングニンバス────ビーム兵装の粒子を機体前面に展開する、攻防一体の謂わばビームフィールドだ。

 単騎での展開も可能なこのフィールドを、ハーケン隊は3機並んで出力する事で強度を向上。

 出力の低いビーム兵装やミサイル程度なら、これで問題無く切り抜けられるだろう。

 

 彼等を狙うニブルヘイムのビームは次々と弾かれ逸らされていく。

 胸部か口腔部の大出力ビームであればフィールドごと呑み込まれていただろうが、初見ではフルングニルのパイロット達も対応ができず、接近を許してしまった。

 

「そらいくよ!」

「あいよ」

「おう!」

「ジェットストリームアタック!!」

 

 接近を果たした瞬間に攻性フィールド越しにヒルダのドムが主兵装のJP536XギガランチャーDR1マルチプレックスを構える。

 上下で分かれた実弾とビームの複合兵装バズーカから光を放ち、フルングニルのビーム砲塔を1つ潰す。

 続くようにヘルベルトが放ったバズーカがもう1つ。更にマーズのドムも同様に顔をだして3つ目を破壊する。

 スクリーミングニンバスの防御力とドムの高い機動性。そして並んだ状態から、次々と顔を出しては3機で攻撃を加えていく波状攻撃。

 高い練度の連携を求められるこの攻撃が、ハーケン隊の誇るジェットストリームアタックだ。

 

 そうして、僅かに前方からの攻撃の圧を弱めれば──

 

「うぉおお!!」

 

 紅蓮の翼と共にデスティニーが後に続いた。

 

「行ってください、シン!」

 

 だが、ここまでは想定内。フルングニルの両肩から放たれた誘導ミサイルが、高い精度を以てデスティニーへと降り注ぐ。

 

 そこへ、白銀と灰色のドラグーンが飛来。

 ネオとレイは、降り注ぐミサイルの悉くを撃ち落としていく。

 

「シン、行け!」

「気に喰わんが、任せたぞザフトの坊主!」

「くっ、どいつもこいつも坊主坊主って!」

 

 SEEDを発現していながらも正常な思考が回っている辺り、インド洋の時と比べたら確かな成長を見せつつも、シンはフルングニルへと吶喊した。

 

 

 両手に握られたアロンダイトが、フルングニルの腹部へと突き立てられる……そのはずであった。

 

「なっ!?」

 

 驚愕に目を見開く。

 シンの目の前では、フルングニルの腹部装甲がぽっかりと口を開け、内側より臨界した光が広がっていた。

 

 腹部臨界出力拡散ビーム砲“スリュム”。

 フルングニルが持つ兵装の中で最もエネルギーを必要とする、最大出力火砲である。

 

 瞬時に、シンは死期を悟った。

 眼前には光が集う砲口。アロンダイトを保持していたせいで両腕部のビームシールドを展開するには間に合わない。

 躱すにも、デスティニーはスピードが乗り過ぎている。

 

「シン!!」

 

 割って入るは暗夜の機体シンゲツ。

 ハーケン隊の援護を受けて接近したデスティニーを見て、嫌な予感が過ったサヤは追従して来ていたのだ。

 

 必死に急制動をかけたデスティニーの前へと躍り出たシンゲツは腕部の光波防御帯発生装置を起動。

 

 どうにか、フルングニルのスリュムを受け止める事に成功した。

 

 

「ヤヨイ、大丈夫か!」

「ご心配なく……この程度で手折られるシンゲツではありません!」

 

 

 後退し、再び距離を取りながらも、心配の声を上げるシンを一蹴してサヤはフルングニルを見据えた。

 

「手厚い歓迎ですね……そう言うのはお兄様だけにして欲しい所ですが」

「おい、無事か嬢ちゃん!?」

 

 駆けつけてくるシロガネ──ネオの問いに対しても無事だと返しながら、サヤは機体のパラメータを確認した。

 

 残るエネルギーは6割。僅かな攻防で結構な消耗であった。

 しかし、フルングニルの火線を掻い潜るのに機動性の要であるヴォワチュール・リュミエールは必須。

 消耗の激しい機動戦で、シンゲツはアタックする度に大きくエネルギーを失っていくだろう。

 ネオのシロガネもドラグーンのフル稼働で消耗は激しいが、ビャクライユニットが機体とは別に大容量バッテリーを積んでいる分シンゲツよりは幾らかマシだ。

 

「とにかく助かった、ヤヨイ」

「いえ、私もあれは予想外ではありました。予見できたのは偶然に過ぎません」

 

 あえて言うなら、フルングニルが出現するときのシンと同じく……このままで済むはずがないと言う嫌な予感。

 その感覚が導くままにデスティニーへと追従していたお陰であった。

 

「だがどうする? この感じじゃ、あいつを倒すのは簡単じゃないぜ」

「同感だね。このまま無暗に攻め続けても、エネルギーが尽きるのが先だよ」

 

 ネオとヒルダから届けられる声に、シン達は歯噛みした。

 これだけの戦力が揃いながらも、圧倒的な火力と防御力の前ではまるで意味が無い。

 時間も余り無いと言うのに、接近すら容易にさせてくれないフルングニルを前に、彼等は手をこまねいているばかりである。

 

「ヤヨイ、こうなれば方針は1つだ」

「レイ? どうするつもりですか?」

 

 腕部のドラグーンが切り離されて次々と襲ってくるのを躱しながら、勝機を手繰り寄せるべくサヤはレイの言葉を待った。

 

「はっ、来たわよレイ!」

 

 それに答えを返すのはレイではルナマリアの声である。

 向かってくるのはミネルバから射出されたフォースシルエット。

 レイとシンがインパルスを援護しながらドッキングを果たしてフォースインパルスとなた。

 

「レイ、まさかインパルスを切り札にでもするつもりですか?」

「まさか、そんなわけないだろう──ただ、手数は多い方が良いと言うだけだ」

「手数?」

 

 

 読み切れないレイの言葉に、サヤは小さく首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリーダムのコクピット内で、センサーが捕捉した敵機が次々とロックオンされていく。

 

 放たれるはミーティアの77門エリケナウス対艦ミサイル。

 それらで弾幕を作れば、即座に次のロックオンを済ませて今度はミーティアのアームユニットと合わせたストライクフリーダムの全兵装をフルオープン。

 ドラグーン、クスィフィアス、腹部のカリドゥスに2丁のビームライフル。これらで一斉に敵機を撃ち抜いた。

 

「くっ!?」

 

 だが、集中してくる艦隊からの制圧射撃にキラは機体を翻した。

 そう、既に艦隊からの攻撃は面制圧となってフリーダムとジャスティスを狙い始めている。

 先程から2人はほんのわずかな隙を縫う様に、攻撃を繰り返してどうにか戦局を維持していた。

 

「敵の射線に寄せられ始めている……まずいぞキラ!」

「分かってる、でも!」

 

 徐々に、回避軌道によって主戦所となっている月面より遠ざけられ始めている。

 フリーダムとジャスティス……その名と力を認めているが故だろうか。

 或いは、味方と完全に孤立させ2機を完全に仕留める算段か。

 いくら最強の名を欲しいままにする2人とて、数の暴力を覆すことは簡単ではない。

 既に幾つもの敵機を破壊していると言うのに、2人に向けられる砲火はまるで衰える事がなかった。

 

「キラっ!」

「はっ!?」

 

 僅かに、意識の間隙を突かれたか。

 艦船の主砲がフリーダムの直撃コースに乗っていた。

 

「このぉおお!」

 

 寸でのところでビームシールドの展開を間に合わせてビームの直撃を受け切っていく。

 即座にその場を離脱して、高速機動へと移行し逃げ切った。

 

「はぁ……はぁ……」

「キラ、無事か!」

「な、なんとか……」

 

 追いついてきたジャスティスがビームキャリーシールドで広範囲を防ぎながら、2人は僅かばかり息を吐いた。

 流石に数が違い過ぎる。

 本来であれば敵艦隊の照準はもっとばらけてこうはならないだろう。

 ミネルバにレクイエムを任せ、サヤやネオ、ハーケン隊もこちらに回っていればいくらでも戦えたはずだが、それをするにはフルングニルが大きすぎた。

 はっきり言ってしまえば、こうして2人を追いやっている大艦隊と比べても、フルングニルの方が脅威と言える………… 2人はそう判断していた。

 敵艦も、敵MSもまだ墜とせる。減らせる。

 このまま戦い続ければ、綱渡りの攻防でも攻略は可能だろう。

 だがあちらは違う。明確に戦力を揃えなければ到底突破はできず、突破ができなければプラントは撃たれてしまう。

 

「まだやれるなキラ」

「うん、当然」

 

 ここで自分達が抑え込まれているようでは、あちらに援軍を送られてしまう。

 そんな事を許すわけにはいかない。

 

 

 

 ──種が開いた。

 

 

 至れば疲弊する切り札。しかし、温存の余裕もない。

 意識的に陥ったその感覚のままに、キラとアスランは再び戦闘を開始した。

 

 向けられる射線の数は膨大。察知できる数が多い分、これまでよりもずっと負担は厳しいだろう。

 それでも、入ったが最後2人は敵の撃墜速度を上げて、攻勢に出ていく。

 ビームソードが敵艦を叩き切り、夥しい光とミサイルがMSを落としていく。

 

 

 こうしてキラとアスランは、無酸素運動の様な全力戦闘へと陥っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “まずは敵の戦力を削ぐ“

 

 レイが切り出した作戦に従い、彼等は縦横無尽に宇宙を掛けた。

 

 ハイパーデュートリオンでエネルギーの心配が無いデスティニーとレジェンドが切り込み、フルングニルの注意を引きつける。

 その隙にシンゲツ、シロガネ、ドムトルーパーに、フォースシルエットで機動性を上げたインパルスが接近。散漫した迎撃射撃を掻い潜り、1つ1つ確実にニブルヘイムのビーム砲塔を潰していく。

 

 そうしてフルングニルの迎撃能力を奪った後に、デスティニーのアロンダイトやインパルスのエクスカリバーでフルングニルを撃破する。

 この急を要する事態においては厳しい、時間のかかる作戦だ。

 しかし、なにもできず有効打を与えられなかった先よりはずっと良い。

 

 現にサヤは2門、ネオとヒルダが1門ずつ、既にニブルヘイムの砲塔を破壊している。

 

 やっとの思いではあるが、潰せば潰すほど彼等に有利となっていくだろう。

 

「はぁ、きっつぅ……」

 

 張り詰め過ぎた緊張の糸を僅かに緩めて、ルナマリアは一度後退した。

 入れ替わりにネオのシロガネが突っ込んでいくのを見送りながら、機体の状況を確認すればインパルスのエネルギーも危険領域に入りつつあった。

 

「むぅ、シンとレイが羨ましいわね」

 

 核動力の潤沢なエネルギーを持つ機体。

 自身がそれを与えられるに相応しくないのは今更文句も無いが、それ故に戦いを制限されるのはかなり煩わしい。

 無い物ねだりとはわかっていても、こうして補給を必要とする事態に陥ってはやはり2人を羨ましく思ってしまうものであった。

 

「ルナマリア! 貴女も一度補給に戻ってください」

「サヤ」

 

 近くまで後退して来たシンゲツより通信が入ってくる。

 インパルスよりも余程消耗の激しい戦いを見せているシンゲツは、既に2度アークエンジェルよりMCSでエネルギー補給をしていた。

 ヴォワチュール・リュミエールによってデスティニーと並ぶ機動性を発揮し、シンと並んで戦う彼女を見ていると、ルナマリアの中ではどうしても敗北感が募った。

 先日漸く、ずっと抱いていた劣等感から解放されたはずなのに、いつの間にか彼女の胸にはまたそれが居座っていた。

 

「(アンタは良いわよね……そうやって隣で一緒に戦えて)」

「ルナマリア? どうしました?」

「ううん、なんでも無いわよ。とりあえずお言葉に甘えさせてもらうわ」

 

 そう言ってその場から後退していくと、アビーにデュートリオンビームの補給を依頼してミネルバの元へと向かう。

 

 しかし、その途上で彼等にはアークエンジェルより通信が飛び込んできた。

 

 

『ダイダロス基地に動き有り! 大規模兵器稼働!!』

 

 

 やはり、と言う様に彼等は表情を険しくさせた。

 それほど時間がないのはわかっていた。理解し、焦る気持ちを必死に抑えてフルングニルを攻略しようとしていたのだ。

 そして結果、その猶予が無かったと言う話である。

 

「ルナマリア、急いでください!! 戻ると同時にソードシルエットを!」

「え、えぇ!」

 

 背面に光を広げながらシンゲツがフルングニルへと向かう。

 こうなれば強引にでも仕留めに掛かって隙を作り出し、誰かがレクイエムの破壊に向かうしかない。

 稼働を始めたところで直ぐに発射されるわけではないだろう。

 残された僅かな猶予に賭けるしかなかった。

 

 

「アビー、チャージ急いで!」

『は、はい直ちに!」

 

 

 ミネルバの眼前でか細い緑の光を受け取ろうと構えたインパルスに、ミネルバも艦の足を止めて構えた。

 

 

 

 その瞬間を────敵は見逃さなかった。

 

 

「ルナマリア!」

「ルナ!!」

 

 

 届いたのはサヤとシンの声。

 ルナマリアの眼前には巨大な閃光が迫って来ていた。

 

 デスティニーとレジェンド、シンゲツを振り払うべく放たれたフルングニルの胸部6門の火線ヨトゥン。その射線上にインパルスとミネルバが居た。

 敵はシンゲツとアークエンジェルの動きから補給の瞬間を把握し狙っていたのだ。

 

 

「くっ、このぉおお!!」

 

 

 背後にはミネルバがある。ルナマリアに迷いはなかった。

 どれだけ防げるかはわからなくとも────インパルスにシールドを構えさせる。

 

「(あぁ……これ絶対防ぎ切れないわよね……)」

 

 そうして相対して初めて気がつく、迫り来る閃光の巨大さに、ルナマリアの脳裏には走馬灯が過ぎっていく。

 

 

 

「先に逝っちゃってごめんね……メイリン……」

 

 

 

 

 閃光はインパルスの目の前で砕けて散った。

 

 

 

 

 

「────へっ?」

 

 

 

 皆が彼女の安否を思う中、当の本人は呆けた声を。ともすれば随分と間抜けな声を通信越しの皆に届けて見せた。

 

 

 

「白い……翼……」

 

 

 

 光に呑まれながらも無事であった彼女の目の前には、無機質な機械が背負う白い翼が広がっていた。

 

 彼女は…………否、彼等はその機体を知っていた。

 

 ZGMF-X42Sデスティニー。

 シン・アスカに託された、運命を切り開く力。

 

 

『こちらはザフト特殊戦術機動部隊、”コンクルーダーズ”隊長────クルース・ラウラだ』

 

 

 現れたのは、白い羽を背負った新たな運命の剣であった。

 

 




というわけで、本作では出て来ます。コンクルーダーズ。
量産型ではなく、正式な複数生産。
基礎をデスティニーとしつつ、搭乗予定のパイロットに合わせた武装バリエーションを持ちます。
詳細はもう少し先になりますが、どうぞお楽しみに。

次回、レクイエム攻防戦決着。そして………

楽しんでいただけましたら
感想、是非是非よろしくお願いします。

この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!

  • タケル&ユリス
  • キラ&アスラン
  • シン&サヤ
  • イザーク&ディアッカ
  • ミゲル&ハイネ
  • タケル&キラ(SEED編より
  • ラウ&ユリス(SEED編より
  • アサギ&マユラ&ジュリ
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