機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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特異な2人再び


PHASE-91 報復の顎

 

 

 遠目からでも分かる巨大兵器────フルングニル。

 

 デストロイですらも規格外の火力を有して都市を壊滅させたというのに……それすら子供のおもちゃに見える圧倒的存在感。

 月面の戦略兵器に加えて次はこれかと、タケルの胸中に燻っていた憎悪は再燃していく。

 

 これ以上ロゴスに因る犠牲者など御免だと、フットペダルを踏み込みタケルは機体を加速させた。

 

 眼前でインパルスとミネルバへと向かう閃光に割って入ると、ソリドゥス・フルゴールを最大出力。凶悪な光の奔流を受け止め切って見せる。

 

 

 そうして直ぐさま、タケルはオープン回線で通信を開いた。

 

 

「こちらは、ザフト特殊戦術機動部隊“コンクルーダーズ”隊長────クルース・ラウラだ」

 

 

 憎悪の鎌首をもたげながら、タケルは戦場に己の存在を知らしめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ミネルバ、聞こえるか?』

 

 届けられた声と言葉に、タリアは驚きを隠せなかった。

 戦死したはずの彼が、再びミネルバの前に現れたのだ。

 モニターに映るは記憶と同じ仮面を着けたタケルの姿…………タリアも含め艦橋は驚愕に動きを止める。

 

「クルース、貴方本当に生きて──」

『グラディス艦長、呆けてもらっては困る。事態は急を要するはずだ』

 

 厳しい声を投げられ、タリアはハッとした様に驚きの表情を隠した。

 そうである。今その様なことはどうでも良い。

 既にレクイエムはチャージに入っているのだ。のんびり問答はしていられないのである。

 

「えぇ、そうね……ごめんなさい」

『話はあとでしましょう。今はあの兵器を何とかするのが先です』

「手立てはあるのかしら?」

『巨大兵器はこちらに任せて下さい。ミネルバは目標の破壊を────あの程度、我々ならば問題ありませんので』

 

 記憶とは違う随分と険しい声音に、艦橋内の空気は張りつめていく。

 大概無茶だと思える提案を、しかしタケルはやらせろと言わんばかりの気配であった。

 大口を叩くタイプでは無い。できる算段がないのであれば、彼はこんな申し出をしないだろう────つまりは、十分に勝算があるのだとタリアは読み取った。

 

「了解したわ──ただ、ミネルバは現在アークエンジェル、エターナルと共闘しているわよ。大丈夫かしら?」

「そちらも特に──問題はありません」

 

 少し間が空いたのは気のせいではないだろうが、湧いて来た心配の念を直ぐに払拭できるくらいには迷いのない答えであった。タリアもならばと頷いて返す。

 

 どの道余計な問答をする猶予はないのだ。今はとにかく信じて戦うのみである。

 

「シン、レイ、ルナマリア。巨大兵器はコンクルーダーズに任せる。貴方達は急ぎ目標の破壊に掛かりなさい!」

『えぇ、でも!』

『無茶ですよ、隊長!』

『せめて、シンと一緒に』

 

 届いて来る嘗ての部下たちの言葉。僅かにタケルの口元は緩んだ。

 戦死したとされてから暫く経つというのに────変わらずこうして慕ってくれているのはまるでオーブに残してきた教え子達の様である。

 特にあの生意気坊主が未だに自身を隊長と呼んでくれるのは、妙に嬉しく感じるものであった。

 

 しかし、湧いて来た気持ちを押し殺してラウの仮面で蓋をする。

 懐かしの部下たちに喜んでもらうためにザフトへ戻ったわけではない。

 

 果たすべきはロゴスの壊滅────オーブを撃った者達の断罪である。

 新たに生み出された、御自慢の巨大兵器(フルングニル)を完膚なきまでに破壊し、ロゴスの手札を全て打ち砕く。

 これ以上一切の被害を許さないことが、タケルの悲願である。

 

 そしてそれが、2人であれば可能であった。

 

「無用な心配をするな。とにかく、急ぎ大量破壊兵器の排除に当たれ。プラントが撃たれれば終わりだ」

 

 突き付ける様に言ってから通信を終えると、タケルは一度息を吐いた。

 

 ドクドクと脈打つ────嫌な気分が増してくるのを感じていた。

 オーブの為、これ以上あれの被害を出さない為。そんなお為ごかしの裏で沸き続けるのは、結局のところ報復。

 己の大切なものぶち壊していった者達への復讐だ。

 

 随分と…………タケルは仮面を被るのに慣れてきた気がしていた。

 

「いくぞ──ユリス」

「えぇ、背中は任せるわよ」

 

 僅かな喜びと共に、ユリスを呼ぶ。

 互いに伝わる胸の内。共有していく意識。先鋭化されていく感覚がよくわかる。

 

 

 ──種が開いた。

 

 

 2対の群青の瞳が光を失い、戦闘への没入状態に入り込んでいく。

 

 示し合わせたかの様に揃って、タケルとユリスは機体を走らせた。

 ユリスが乗る紫のウイングを持つ機体もまた、ZGMF-X42Sデスティニー。

 搭載されたヴォワチュール・リュミエールによる光の翼を広げ、その圧倒的推力でフルングニルへと接近していく。

 

「迎撃────来るよ」

「避けて見せるわよ!」

 

 タケルの先を走るユリスのデスティニー目掛けて、フルングニルより光の雨が放たれる。

 それらを、ユリスは全て紙一重で躱していく。

 装甲表面が微かに焼かれる程の隙間。被弾と回避の境目で抜けていく様は、正に透り抜けると言った所。

 

 そうしてユリスが射線を引き付けてくれれば、後を追従するタケルには反撃の余裕が生まれる。

 

「ミサイル発射よ!」

「任せろ」

 

 陥ったSEED領域で細分化された2人の意識が、向けられる脅威を全て捉えていく。

 放たれた100を超えるミサイルに対して、タケルはデスティニーのウイングバインダーに備えられる、翼の骨子となっているドラグーン兵装“ライソウ”を射出。

 左右6基ずつで計12に及ぶドラグーンピアースが、全てのミサイルを貫き落としていく。

 

 戦場を、数多の爆炎が彩った。

 

 そのまま最大戦速でフルングニルへと接近していく2人へ、フルングニルは口腔のスーパースキュラとニブルヘイムによる迎撃射撃を敢行。

 口径の大きいスキュラで視界を奪い、ニブルヘイムの制圧射撃で接近を阻もうとした。

 

 しかしそれすらも──

 

「直撃コース……見えた!」

「行かせてもらうわ!」

 

 先を行くユリスのデスティニーに向けられた砲火。それを後背から捉えたタケルの意識が、ユリスに直撃コースの射撃だけを伝える。

 SEED領域下での認識共有を生かした、2人だけができる強引な突破方法で、ユリスは遂に絶対不可侵であったフルングニルの迎撃網を抜け懐へと入った。

 

「ここまで来れば!!」

 

 最大戦速のまま軌道を変えて、フルングニルの頭部すぐ横へとユリスは取り付く。

 そうして取り付いた瞬間に、背部分割多目的ビームランチャー“アキシオン”を狙撃モードで展開。

 

「たっぷり、喰らいなさい!!」

 

 高出力収束ビーム砲が、ゼロ距離でフルングニルに突き立てられた。

 

 1射、2射、3射と……トリガーを引かれる度に、光の矢がフルングニル装甲内部へと侵食していく。

 

 こうなれば、フルングニルにデスティニーを振り払う手段はない。

 取りつかれてしまった以上どのような攻撃を用いようが、それは自滅と同義。

 仮に装甲の厚さに任せて、自滅覚悟の攻撃を敢行しようとも、タケルがそれを察知しユリスは即座にその場を離れ回避し、また取り付くだろう。

 

 何より、彼女の対応で後手に回ってしまったが最後。

 

「──隙だらけだ!」

 

 一瞬の猶予も見逃さず、憎悪を携えて白いデスティニーが吶喊する。

 

 叩きつけられるは極大の光を湛える掌部ゼロ距離ビーム砲、パルマフィオキーナ。

 それを、フルングニル胸部のプラズマ収束砲へと叩きつけ眼前の2門を破壊する。同時にフラッシュエッジを投射しつつウイングのライソウを射出。周囲で稼働を始めるニブルヘイムの砲塔を瞬く間に駆逐していった。

 

 そうして脅威が消えれば、機体を翻しビームライフルに持ち替えて連射。胸部のプラズマ砲残り4門を破壊。

 

 僅か十数秒で、フルングニルの武装を一挙に解体していく。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様……」

 

 あれほどまでに苦戦したフルングニルを、鮮烈とも言える勢いで制していくタケルとユリスの姿に、サヤは呆然とする。

 

 何故その機体に。

 何故ザフトへ。

 何故、またその名前を背負っているのか。

 

 駆け巡る疑問を、だが戦士としての本能が今なすべき事へと意識を向けさせた。

 

「はっ、呆けている場合ではありません。ロアノーク大佐!」

「あぁ、分かってる!」

 

 一早く我に帰ったサヤは、ネオを呼びつけて機体を走らせた。

 向かう先はレクイエム────作戦目標の破壊である。

 既にフルングニルの脅威は潰えており、取りついた2機のデスティニーは間もなくあれを完全に破壊するだろう。

 

 それが作戦上は嬉しい話だとしても、今のサヤはそれを素直に喜べなかった。

 

 燻る気持ちを払拭する様に、フルングニルの傍を通り過ぎてダイダロス基地へと向かっていく。

 

「はっ!? ちぃ!!」

 

 苛立ちの声と共にサヤは回避軌道を取った。

 見れば残っていたデストロイやウインダムの部隊が基地への進路を塞ごうとしている。

 

「この期に及んで────嘗めるな!!」

「こっちは任せろ、嬢ちゃん!」

 

 もう猶予はない。消耗度外視でヴォワチュール・リュミエールを展開。一気に加速してシンゲツはそれらを置き去りにする。

 同時にネオはシロガネのビャクライを射出し、デストロイ等を押し留めた。

 

「シン、お前も行け! 援護する!!」

「きっちり仕留めて来なさいよ!」

「わかってるさ!」

 

 別の方向より、シンのデスティニーもフルングニルを抜いて疾走。

 後背でレジェンドとインパルスも同様に足止めに入った。

 

 

 最大戦速で走らせたシンゲツとデスティニーが、並んでダイダロス基地施設内部へと突入していく。

 地下へとしばらく潜っていけば、2人の視界の中に目標地点が見えて来た。

 

 

「────見つけた、シン!」

「あれがコントロール・ブロックか!」

 

 

 潜り込んでいったその先にあったのは、基地中枢。

 レクイエムの発射を司る指令エリアである。

 目標の確認と同時に、シンゲツは背部より折りたたみ式の高出力プラズマ収束砲“ツキヨミ”を展開。デスティニーもまた、長射程ビーム砲を構えた。

 

 

「これで──」

「最後です!!」

 

 

 放たれた太い閃光は、基地中枢を完全に破壊してみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『月面大規模兵器、稼働停止を確認!』

 

 

 観測していたアビーの報告に、ミネルバの艦橋が沸いた。

 プラントの、一先ずの安全…………これが確保できたのだ。

 

「気を抜くな! まだ戦闘は終わってないわ! バート、敵巨大兵器は?」

「ラウラ隊長のデスティニーと交戦中です」

「レイ達に援護させて。いくら彼でも、あれを相手に無事だと言う保証は無いわ」

「はい、直ちに──」

『その必要はありません。艦長』

 

 艦橋に通信が飛び込んでくる。

 モニターに映るはレイ・ザ・バレルの姿であった。

 

「レイ? 必要ないとはどう言う事」

『大規模兵器の停止と共に、敵防衛部隊は撤退を始めています。あちらはもう、戦意は無いようです』

 

 言われて艦橋内で観測できる情報を洗うと────確かに敵部隊は撤退を始めており、キラとアスランが相手をしていた艦隊も既に戦域の外へと離れていくところであった。

 レクイエムの破壊。そして基地司令とのコンタクトが途絶えたことで、部隊は早々に見切りをつけた様である。

 残るは基地上空で戦う防衛部隊とフルングニルだが、レイの言うように防衛部隊も既に敗走の様子を見せている。

 

 

 こうして、決戦となったレクイエム攻防戦は終わりの様相を呈していた。

 

 

「そう、わかったわ。では警戒体制で──」

『兄さん、こっちは解体しておくから他の後片付けをお願い』

『あぁ、了解だ』

 

 

 だがそこへ────未だ戦闘の熱が冷めやらぬ声が、戦場に響き渡った。

 

 

 フルングニルに取りついていたユリスのデスティニーは、立て続けにアキシオンを連射。

 遂にその光の矢をフルングニルのコクピットへと到達させ、乗っていたであろうパイロットを蒸発させる。

 沈黙し、その巨体が動きを止めた事を確認したユリスはフルングニルから距離を取ると、アキシオンの砲塔を組み替え散弾砲へと切り替えた。

 

 そうして、動きを止めたフルングニルを全壊にさせるべく滅多撃ちにし始める。

 

 

「クルース? 貴方達一体何を──」

『こんな馬鹿げた兵器、遺しておけるわけないでしょ艦長さん。これは完全に破壊しておかないとね!!』

「敵は撤退しているのよ! 既に彼らに戦闘の意思は──」

『無いのなら投降して来るでしょう。それを撤退ということは、まだ再起を図るつもりという事です────プラントを破壊した者達の再起を、我々は見過ごすわけにはいきません。それがコンクルーダーズの本懐です』

 

 

 そう言って、タケルのデスティニーはライソウを展開して戦場を駆け抜けた。

 駆け抜け様に…………撤退していくMS 、MA問わず全てを宇宙の藻屑へと変えていく。

 デストロイも、ザムザザーも、ユークリッドもウインダムもダガーLも皆。タケルが駆るデスティニーの前に、なんの抵抗もできずライソウで貫かれて爆散していった。

 

『必要ないんだよ』

 

 その最中。

 通信越しに届くのはまるで呪詛の様な呟き。冷たさしか感じられない、ひどく陰鬱な声。

 そして込められた────狂える程の激情であった。

 

『この世界に────お前達は!!』

 

 撤退の途に付いていたアルザッヘルからの増援艦隊にまで、タケルとデスティニーは手を広げた。

 駆け抜け様に艦船の艦橋を貫き、さらには機関部を破壊して航行能力を断つ。

 後の回収も無意味なデブリへと変えていった。

 

 そうしている間に、ユリスはフルングニルの破壊を終え、次はダイダロス基地の殲滅に動いた。

 次々と放たれるアキシオンの散弾砲が基地全域を蹂躙していく。

 あっという間に、ダイダロス基地は破壊の爪痕を遺すだけの更地へと姿を変えられていった。

 

 

 こうして。

 たった2人。たった2機の参戦によって────

 

 ロゴスの勢力はここで壊滅的な被害を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────思わず、胸を抑えた。

 

 

 “必要ないんだよ“

 

 

 ────底冷えする様な冷たい声音。

 優しいはずの彼から未だ嘗て聞いたことのない、悪意に彩られた声。

 

 

 ”この世界に────お前達は!! “

 

 

 まるでこの世界の全てを憎んでいる様で。

 まるで誰かに懺悔している様で。

 

 姿を確認できないはずの彼が、2年前のあの日(戦後再会した日)と重なって見える様であった。

 

 

 

「────タケ、ル」

 

 アークエンジェルの副長席。

 己の責務を果たすべきその席で、こんなにもか細く弱い声をナタルが漏らしたのは初めてであった。

 それ程までに、目の前の光景がナタルの心を穿っていた。

 

 まるで何かを振り払う様にロゴスの部隊を壊滅させていくデスティニー。

 そして先の…………怨嗟に塗れた声。

 

 また自分は、大事な時に彼の傍にいることができなかったのだと。隣で助けることができなかったのだと────無力な己を掻き抱く。

 

「何をしているの、ナタル!」

 

 まるで拳骨を落とされた様な衝撃の声。

 見上げれば艦長席から厳しい目を向ける、今は親友とも言える艦長の姿があった。

 

「貴方の戦いは今よ! 顔を上げなさい! 鬼の副長の名が泣くわ!」

「マリュー……」

 

 その呼び名はやめろ、と言いたくなるのを堪えてナタルは気を持ち直した。

 そうして胸の内で彼女に深く感謝する。

 さっきの呼び名も意図して出してきたものだろう。

 そう言われるくらいの気概で事に当たれという事だ。

 

 2年前、この席で檄を挙げていた時の様に。

 

「俯く前に頭を働かせなさい。今の彼に言葉を届けられるのは…………きっと貴方だけなのよ」

「すいません、弱気になりました」

 

 そうだ。

 彼がどんな想いでいるかなど、とうに想像付いていた。

 絶望に堕ちてしまった彼をまだ取り戻せると信じたからここにいるのだ。

 俯くのは、今ではない。

 

「────ハウ、タケルと通信を繋げられるか?」

「はい。少し時間を頂ければさっきの通信から秘匿回線は取れるかと」

「頼む」

 

 ナタルの表情に、ミリアリアは静かに頷いてコンソールを叩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユリス、終わった?」

「えぇ、こっちも終わったわ」

 

 

 戦いを終えて…………SEEDを解いて僅かにくる倦怠感に身をゆだねながら、2人は一息吐いてから合流した。

 

 目立った被弾も無く。コンクルーダーズの初陣の戦果としては十分だろう。

 作戦の障害となっていた巨大兵器フルングニルの撃破。併せて危険分子となるテロリストたちの根城となった基地の殲滅。更には、敵戦力の大半を沈めたのだ。

 この戦果があれば、ぽっと出で最新鋭機を任されたユリスや自分。更にはコンクルーダーズの存在意義を最高評議会に認めさせるにも十分なはずである。

 

 タケルとユリスを重用した専門部隊の設立。それは議長の独断と専横だ。

 彼が如何に最高権力者であったとしても、その判断に利を生み出せなくては彼の影響力と権威は失墜する。

 今回の戦いで2人がこれほど苛烈に攻め立てたのは、タリアへ伝えた通りプラントに対する危険分子として排除と言う名目もあるが、それ以外に目に見えてわかりやすい戦功を立てる為でもあった。

 

 もちろん、タケル個人の感情もそこには上乗せされているが、一先ずの作戦目標は完遂と言えるだろう。

 

「兄さん、疲れた」

「あぁ、わかっている」

 

 普段よりも厳しい疲労感を感じながら、タケルはミネルバへ通信を繋ごうと手を伸ばした。

 タケルとユリスが持つ繋がりを利用した特異な戦い。

 二つの脳が拾う戦域情報を共有し合うのは非常に有用であるが、その分頭の痛くなる話であった。

 端的に言えば、脳が受け止める情報がざっくり2倍に増えるわけなのだ。それもSEEDによって先鋭化された知覚領域の中でである。タケルとしては、SEEDの奥へと入った時に近い感覚である。

 

 フルングニルを相手に異次元な回避能力を見せたが、その代償は2人にとっても大きいものだった。

 

「ふぅ、まだアレよりはマシだけど、頼りすぎるのは考えものだね」

 

 小さく呟きながら、タケルはミネルバへと通信を繋いだ。

 

「こちらコンクルーダーズ。ミネルバ、聞こえるか?」

『はい、こちらCICアビー・ウィンザーです。ラウラ隊長』

「ウィンザー、グラディス艦長は?」

『それが…………少し情報を整理するから待って欲しいと』

「情報を整理?」

『ごめんなさいアビー、もう大丈夫よ。待たせたわねクルース』

「情報整理とは、何かありましたか?」

 

 プラントの被害状況でも飛び込んできたのだろうか。

 重要な事ならば聞いておきたいとタケルが問うも、対するタリアはどこか苦虫を噛み潰した様な顔であった。

 

「グラディス艦長?」

『はぁ、貴方にその気はないんでしょうけど。私が混乱してるのは貴方の…………いえ、正確には()()()のせいよ』

「我々の、ですか?」

『コンクルーダーズじゃなくて、貴方達兄妹の事』

「あっ」

 

 言われてようやく、タケルも状況を理解した。

 タケル・アマノとサヤ・アマノ。共にザフトで別の名を持ちミネルバにいた2人。そして、共に戦死したとされていた2人。

 それがこのレクイエム攻略作戦の中で立て続けに生きて目の前に現れたのだ。

 タリアを含めて、皆が混乱するのは道理である。

 

「ふふ…………まっ、言われても仕方ないわよね」

「半分は君のせいなんだが? はぁ…………とりあえずグラディス艦長。我々は急ぎで出撃してきた身です。母艦もない為ミネルバへの一時受け入れをお願いしたい。併せて、色々とお話しさせていただきます」

『無論受け入れます。あの子達にも、MSから降りて顔を見せてあげてちょうだい』

「それはまぁ…………叱責が飛んでこないことを祈りますよ。では、これよりミネルバに着艦させて──」

 

 機体を動かそうとした、その瞬間であった。

 

「兄さん!!」

「っ!?」

 

 タケルとユリスの眼前に、赤い閃光が奔る。

 それは言うまでもなく、高出力のビーム砲。それも、当てるつもりのないものであった。

 

 

「私達相手に牽制?」

「いや、僕に向けてだろう」

 

 タケルが出所へと視線を向ければ────白亜の機体フリーダムと鮮やかな紅を纏うジャスティスが、迫ってくるのが見えた。

 

 

 

 

 

「タケル!」

 

 届けられる義理の弟(キラ)の声は、どこか不安を抱えている様な気配がして。

 

「タケル!」

 

 アスラン(義弟予定)の彼からは、随分と険しい声音が向けられて。

 

 

 タケルは、湧いてくる感情を必死に押し殺して彼らと対峙した。

 今の自分はもう、オーブの人間ではない。今ここにいるのはクルース・ラウラだと…………そう言い聞かせて。

 

 

 

 英雄達は再び、戦場で望まぬ再会を果たすのであった。

 




次回、大荒れの予感。

この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!

  • タケル&ユリス
  • キラ&アスラン
  • シン&サヤ
  • イザーク&ディアッカ
  • ミゲル&ハイネ
  • タケル&キラ(SEED編より
  • ラウ&ユリス(SEED編より
  • アサギ&マユラ&ジュリ
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