機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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これが終われば......


PHASE-94 討滅

 

 

 

 ミネルバの格納庫にて。

 喜色を隠し切れない声音でタケルを呼ぶ声が響き渡った。

 

 

「クルース! てめぇ、この野郎!」

 

 声の主はハイネ・ヴェステンフルス。

 漸くミネルバに合流したゴンドワナの部隊から、指揮官等がミネルバへと来艦してきたのだ。

 そうしてやってきたハイネは、見覚えのある仮面を見て喜びの声を挙げたという訳である。

 

「ハイネ、心配かけてすまなかった」

「本当だぜ全くよぉ。生きてるならさっさと帰ってこいっての! お陰でこっちは大変だったんだぜ」

 

 げしげしと拳で押してはぐりぐりとねじ込む様に。微妙に痛みを伴うハイネからの歓迎を、仕方ないとタケルは受け止めた。

 

 心配も苦労も掛けた事は良くわかっている。

 誇張抜きに、今ミネルバのMS隊が成長しまともな形を保っていられるのは、タケルが居なくなった後牽引してくれた彼のお陰だろう。

 感謝の証として、タケルは頷きながらハイネの歓待を受けるのであった。

 

「本当に苦労を掛けた。すまない」

「つっても、一番苦労を掛けてくれた聞かん坊はもうここに居ないけどな」

「それは…………重ねて申し訳ない」

 

 思い当たる事は1つだけだ。

 ヤヨイ・キサラギの話であり、苦労とは勿論彼女がジブラルタルでハイネの制止を振り切り脱走したことだろう。

 当然ながらそんな事態になれば、彼女を指揮下に置いていたハイネとタリアの監督責任も問われる話である。

 多分な苦労と迷惑を掛けた事を察して、タケルは先程よりも平謝りな気分であった。

 

「おいおい、マジになるなよ。冗談だって」

「事実だ。素直に受け止めさせてくれ」

「ハイネ・ヴェステンフルス。俺達にも少し話をさせてもらえるか。噂のコンクルーダーズ……議長から大層な期待を寄せられているらしいじゃないか」

 

 ハイネの背後から別の声が掛かる────同行してきたジュール隊隊長イザーク・ジュールだ。

 その後ろには副官のディアッカ、更にはシホも一緒であった。

 

「イザーク・ジュール……」

「初対面、で良いんだな? クルース・ラウラ」

「あぁ、初めましてだよ────コンクルーダーズ隊長、クルース・ラウラだ」

 

 仮面越しではあるが見知った仲。しかし、記憶の通りとはいかない目の前の男に、イザークとディアッカは必要な事を察して取り繕う。

 何故ザフトに、とかその名前は何だとか、問いたい事は多く涌いて来るが、少なくとも今この場で問う事では無いだろう。

 必要な言葉だけを捻りだした。

 

「ジュール隊、イザーク・ジュールだ」

「同じく、ディアッカ・エルスマン」

「同じく、シホ・ハーネンフースです」

「歴戦の勇士達だな。共に戦えて光栄だ」

「貴様がそれを言うか」

「議長お墨付きの部隊の隊長に言われてもねぇ」

 

 苦々しい顔を見せるイザークに、おどけて見せるディアッカ。相変わらずのらしい姿に小さくタケルは笑った。

 そこへタケルに続いて待機していたタリア達も前に出る。

 

「ミネルバ艦長、タリア・グラディスです」

「副長の、アーサー・トラインであります」

「MS隊隊長のレイ・ザ・バレルです」

 

 後ろでシン達も合わせて敬礼を交わした。

 これで顔合わせは済んだというところ。残念ながらのんびりおしゃべりをしている時間は無い。

 

 彼等がここに集った理由は1つ。次なる作戦であるアルザッヘルの攻略の為の顔合わせとブリーフィングだ。

 

 ダイダロスで確認された超巨大兵器フルングニル。

 コンクルーダーズが攻略したとはいえ、また現れれば大概の部隊は成す術なく崩壊するだろう。それだけの脅威を有している。

 事前のすり合わせは不可欠であった。

 

「まずはブリーフィングルームへ案内するわ。アーサー、お願い」

「はっ! では、どうぞこちらへ」

 

 アーサーに連れられ、面々が移動していく。

 ミネルバからはタリアとアーサー、それにMS隊隊長としてレイが。

 コンクルーダーズはタケルとユリスの両名。そして来艦したハイネ等4人の大所帯である。

 更には、通信越しでゴンドワナからも指揮官達が参席する。

 

 その様相に集った部隊の規模を感じて、見送るミネルバクルーの中には、次の作戦に対する張りつめた緊張感が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙空間のとある場所。

 

 

 居住エリアに宛がわれた私室にて、彼ムルタ・アズラエルは不機嫌さを露わにしながら手元のデータ端末を操作していた。

 

 画面に映るのは映像記録。先のダイダロスにおける戦闘の映像記録だ。

 

「まさか、フルングニルまで攻略されるとはね」

 

 口調は穏やかであるが、その声音は随分と苛立ちが乗せられていた。

 

 フルングニルは正に虎の子の切り札。

 この2年で主流となったチームオペレートにより、攻防の両面で絶対的な性能を有した機動兵器。

 完全無欠を目指して作り上げられた、連合の集大成だ。

 その運用の為に、ブーステッドマンから発展させたエクステンデッドの作成にも多額の巨費を投じたし、機体の製造を監視するべく彼は月基地に籠っていたのだ。

 

 それがまさかの初陣で完全破壊。

 全ての目論見を打ち砕かれたかの様な衝撃が、彼を襲っていた。

 

「ザフトもザフトで、開発の粋を集めた高性能機……と言うのは分かりますがねぇ。それすらも呑み込む規模の兵器として開発したはずだと言うのに」

 

 想定外が過ぎる────その要因を見定めなければならなかった。

 

 映像を見ていけば、ヘブンズベース以降確認されたザフトの新鋭デスティニーと、駆けつけて来たオーブの戦力であろう黒い鏡面装甲のMSが何度もフルングニルへと攻勢をかけていた。

 

 それを防ぎ、追い払い、寄せ付けない様はまさに巨人の姿。

 これだけみれば、フルングニルの設計思想は成功と言って良い筈である。

 

 だが──

 

 

「こいつらか」

 

 

 映し出される新たな機体。細部で異なる点はあっても、それが先程も映っていたデスティニーだとアズラエルには直ぐに分かった。

 そしてその動きを見て、彼は目を見開いていく。

 

 フルングニルに備えられた火線の悉くを通り抜け、そして機体へと取り付いた紫のデスティニーを。

 

「そうか、そう言う事か……くくく、はっはっは! どこに行ったのかと思えば、お前はそんなところに居たのか────ユリス」

 

 類稀な危機回避能力。それを活用した果敢な突撃。

 嘗てはその能力の高さから、一番目を掛けていただけに、アズラエルにはそれが彼女だとすぐに分かった。

 

「なるほど……確かにお前だったらフルングニルを攻略するのも不思議じゃあない」

 

 その可能性が過らなかったと言えば嘘になるだろう。

 懸念点……フルングニルの開発計画を推進した上で、2年前彼に煮え湯を呑ませた彼等の存在が。

 

 3隻同盟として立ちはだかったフリーダムにジャスティス。そしてシロガネ。

 腹心の部下を装いながら、最後には己の野望の為に反旗を翻し、彼へとその銃口を向けたディザスター。

 アズラエルが知る中でも、これらのパイロットは傑出している。そんな彼等が今の技術を用いた最新鋭の機体を持ち出せば……それはアズラエルにとって、最大の不確定要素であった。

 

 所詮彼は戦士ではない。戦闘能力の良し悪しがカタログスペックでしか捉えられない彼には、どうあっても最強の兵器を生み出すことは困難なのだ。

 自分の想像の上を行く兵器と人間が居る事を、アズラエルは百も承知であった。

 

「だが底は見えた。想定よりは上だが、予定よりは下だ。この程度ならば問題は無いだろう────後は、時間か」

 

 現在建造中のあれが完成を見れば、それで十分である。が、それを見るには後数カ月の時間が必要だ。

 その間に世界がどう動くか。ギルバート・デュランダルが何を繰り出してくるのか。それが目下最大の懸念である。

 

「──まぁ、レクイエムを受けてもしぶとく生き残っているみたいですし、奴の相手はオーブとミュラーに任せるとしましょう。一先ずは、ここも離れる必要がありそうですしね」

 

 先程は言った情報によると、既にここアルザッヘルにもザフトは戦力を差し向ける動きを見せているようであった。

 もはや一欠片もロゴスの戦力を宇宙に残してはおけないと言う事だろう。

 殲滅作戦────ダイダロスの惨状を見れば、その目的は明らかである。

 

「はぁ、全く……いくら悲願の為とはいえこの僕が宇宙に缶詰めとはね。そろそろ陸で食事がしたいものですが今は我慢の時です。楽しみはもうしばらく後に取っておくとしましょう」

 

 彼らしい軽い笑みを浮かべて、アズラエルは端末の電源を落とした。

 そうしてそのままどこかへ通信を繋げると、基地から脱出する手配を始める。

 

 

 

 誰にも気づかれぬまま、悪意の陰はまた暗がりの中へと潜み消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月面基地アルザッヘル。

 先の大戦によって喪われたプトレマイオス基地に代わる連合の主力月面基地であり、その保有戦力は十分に高い。

 しかし、その部隊規模はともかくとして、配備されているのはダガー等旧主力MSとウインダムを主軸とした通常のMS部隊。

 ザムザザー等のMAも居るには居るが、虎の子であったデストロイや、ダイダロスでお披露目となったフルングニルなどの、大型機動兵器は配備されていない。

 アルザッヘルはあくまで、後方支援部隊しか備えていなかった。

 そこに来て先のダイダロス攻防戦における派遣部隊の全滅。

 レクイエムを死守する目的があった為に、その規模は正に大部隊であり、それらが失われた今、本来の戦力からすればもぬけの殻とも言える程の戦力しか今のアルザッヘルには存在していなかった。

 

 

 ミネルバ及びゴンドワナの合同部隊は、そんなアルザッヘルを目前にしており、もうすぐ作戦の開始が告げられる所であった。

 

 

 ミネルバの艦橋は既に降りており戦闘態勢。

 コンクルーダーズも含めたパイロット達は搭乗機にてスタンバイ。

 当然ながらゴンドワナでもジュール隊にジャニス隊、ハイネ等も含めた中継点を落とした精鋭たちがそろい踏みで出撃の時を待っている。

 

 

 

 

『──タケル・アマノ』

 

 デスティニーで待機中のタケルの元へ、ここでは呼ばれるはずの無い名で呼びつける声が、届けられた。

 

「イザーク。個人回線とは言え傍受される可能性も無くはない。余りその名前を出さないでくれ」

『だったら偽るなバカ者。と言うか、偽るような事態に身を置くな。貴様の居場所は……こんな所では無いはずだ』

『そうそう、何やってんだよお前』

 

 繋がっているイザークの通信を介して、腐れ縁のディアッカからも苦言が呈される。

 彼等が顔を合わせた回数はそう多くは無い……が、以前ミゲルと共にオーブを訪れた時の事を思い出して2人は呆れとも取れるし心配とも取れる様な表情で問いかけた。

 人懐っこい笑みを浮かべ、愛する人と穏やかに過ごす。そんな平穏が似合う優しい人間であったはずの彼が、今ロゴスを殲滅するべく大切な居場所を離れてここにいる。

 2人は、タケルとナタルが仲睦まじくオーブで過ごしている様を知っており、それを目にしたことがあるのだ。

 心配するなと言う方が無茶と言うものであった。

 

「ディアッカまで……イザーク経由で一緒に畳み掛けてくるのはやめてくれ。君達に言われて引き下がるなら、私は初めからここには居ない」

『ならば誰に言われれば引き下がる? 連れて来てやる、名前を挙げろ』

「だから引き下がらない。例えカガリに言われたとしてもだ…………僕は僕の意思で、成すべき事を成す為にここに居る」

 

 イザークとディアッカ。

 合流したこの部隊の中で彼等だけが知るタケルの素の顔。それが言葉の中で僅かに垣間見えるも、まるで揺らがない意思を感じて2人は嘆息した。

 恐らくは言っても聞かない。それだけは今この瞬間にわかった気がした。

 

『ええぃ……後でミゲルも交えて詳しく聞かせてもらうぞ。タケル・アマノ!』

「だからその名前で呼ばないでくれと……ディアッカ、良く言い聞かせておいて」

『そりゃあ良いけどよ。お前、本当に大丈夫かよ?』

 

 心底慮る声音でディアッカは問うた。きっと、その問いには幾つもの意味が含まれているだろう。

 オーブが撃たれたと言うのに、こんな所に居て良いのか。こんな所で、こんな戦いをしてて良いのか。

 何より、切羽詰まった様なタケルの気配に2人は彼の心的な負担を心配していた。

 

「──時間だ。話はまた後にしよう」

 

 逃げの一手である。

 事実として作戦時間はもう目の前ではあるが、煮え切らない答えと共にタケルは通信を切った。

 

 そうして静寂になれば、コクピットの中で一度呼吸を整えてこれから出ていく戦場へと意識を向ける。

 

 可能性としてはあの巨大兵器フルングニルの出現も視野に入れている。

 あれが出て来たとなれば、特効となるタケルとユリスの連携が必要だ。決して些事に気を取られていられる余裕はない。

 

『ラウラ隊長、お時間です』

 

 飛び込んで来るは、ミネルバCICアビー・ウィンザーの声。

 ブリーフィングで定められた、第一陣であるコンクルーダーズ発進の要請であった。

 

「了解したウィンザー。発進シークエンスを開始してくれ」

『はい。X42Sデスティニー、ラウラ機、ラングベルト機。発進シークエンスを開始します』

 

 張り詰めた空気の中、格納庫内で機体が運ばれていく。

 タケルのデスティニーがミネルバのカタパルトへと乗せられると、ミネルバのハッチが開かれタケルの眼前には月面の大仰な基地アルザッヘルが映されていた。

 

『進路クリア。ラウラ機発進どうぞ』

「クルース・ラウラ────デスティニー、出るぞ!」

 

 掛けられた電圧が解放され、カタパルトよりデスティニーが飛び立って行く。

 すぐ後に、ユリスが乗る紫のデスティニーも続いた。

 

 

 

 

「ユリス、武装はまだ展開するなよ」

「はいはい、わかってるわよ」

 

 発進こそしたものの、距離としては基地までまだ十分な距離があった。

 

 タケルとユリスは警戒をしながらも、有視界通信が届く距離に至るまでデスティニーをゆっくりと先行させていく。

 その姿はまるで敵対の意思がない事を匂わせるかのような姿だ。

 

「全く、議長さんもお優しい事ね」

「そんなんじゃないさ。必要だからする……それだけの事だ」

 

 ともすれば歩み寄りにも見えるこの姿。

 これがギルバート・デュランダルよりコンクルーダーズへと託された、一つのパフォーマンス作戦であった。

 

 プラントは、既に問答無用でレクイエムを撃たれている。

 市民達の憤りは激しく、この惨状に地球圏でも反ロゴスの声が再燃していた。

 つまりは世界の声をまとめる為の攻め時である。

 

 非道を行われたからこその、温情。

 有無を言わさずの殲滅作戦など、どのような結果に成ったとて、誰にとっても決して気持ちの良い話ではない。

 

 故に、宣言と勧告を行う。

 開戦からここまで、穏健で動きを貫いてきたギルバート・デュランダルの意思を体現するのである。

 

「兄さん、そろそろよ」

「あぁ」

 

 ユリスの言葉に、操縦桿を握る手に少し力が籠っていく。

 既に索敵では捉えられているだろう。敵対勢力の接近故にいきなり撃たれることも可能性としては考慮しなければならない。

 そんな緊張感の中、タケルはアルザッヘルに向けて全周波での通信回線を開いた。

 

 

「こちらは、ザフト特殊戦術機動部隊コンクルーダーズである」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球軍月面基地アルザッヘルに届けられた声には、有無を言わさぬ意思が感じられるものであった。

 

 

『我々ザフトはプラントを撃たれた事実を重く受け止め、宇宙にある地球連合所有の軍事施設。その一切をプラントに対する脅威とみなし、これを排除することをここに宣言する。

 しかしながら、プラント最高評議会はあくまで此度の戦争に対して穏健で在る事に代わりは無い。従って、貴君等に対して人命のみ保証はしよう。アルザッヘル基地に居る人員はこれより1時間以内に基地を放棄。地球へと脱出する事を認める。無論、そちらに敵対行動、戦闘行動、交渉による猶予の引き延ばしが見られた場合には即時攻撃を開始させてもらう。

 我々は貴君等が行った大規模破壊兵器での虐殺を決して許しはしない。この提案は、プラント最高評議会からの最大限の温情である。

 猶予は1時間だ。賢明な判断を期待する』

 

 

 

 嵐のように告げる事だけ告げて、ザフトからの通信は終わった。

 基地司令官ケイン・ハルマ―は、驚愕に目を見開きながらモニターに映るデスティニーを見ていた。

 

「まだ若い男の声? 嘗めた事を、既に勝ったつもりか!」

 

 基地規模としてはダイダロスの上を行くこのアルザッヘルを目の前にして、随分と大口を叩いてきたとケインは怒りの声を挙げた。

 

「しかし司令。あの機体はダイダロスで確認された、フルングニルを破壊した機体です」

「だからなんだ! 僅か1時間で脱出しろと奴等は言っているんだぞ! このままおめおめと基地を捨てて逃亡など、できるわけがあるまい!」

 

 命令に服す。所属する陣営の為に生きるのが軍人である以上、先の降伏勧告においそれと応じることはできない。

 何故ならこれは戦闘の末の白旗とは違う。全てを捨てて脱出とは即ち、今ここにある何もかもが奪われる事と同義だ。

 ヘブンズベースにダイダロスを失った今、アルザッヘルこそが連合の最大拠点であり、そこに集約されているのは何も戦力ばかりではない。情報、技術、その他機密となるものが集積されている。

 

 無血開城とは陣営に対する裏切り行為となる。

 

 出来るわけがない。そもそも彼等は、まだ大勢が決して自分達が敗北するとは考えていないのだ。

 進んでいる計画、完成を待ちわびる一手が控えている以上、敗北など認められようはずもない。

 何よりも、それらがザフトに露見する事だけは決してあってはならない。

 

「MS隊の発進準備を進めろ! ザムザザーとユークリッドもだ!」

「しかし、今の戦力では──」

「分かっている! だがそれでも、基地を破棄する時間だけは稼がなくてはならない。非戦闘要員は要求通りに基地を脱出させろ。それを見せれば、奴等も1時間は待ってくれるだろう」

「──司令」

 

 残り少ない戦力で出来る最善。それは、出来得る限りの時間を稼ぎ、基地が保有する一切の破棄を成し遂げる事。

 一切の破棄とは文字通り、最後にはこの基地を自壊させるのである。

 それまでに、必要なデータを必要な所へ送らなければならない。

 当然ながら、それを成すには今ここに居るオペレーター達の力が必要だ。

 

「──皆、すまない」

 

 悔恨の声が司令官より漏れ出た。

 つまりは、ここに居る者達に基地と共に死ねと……そう言っているのだ。

 陣営の為、勝利の為に犠牲に成れと。

 

「──わかりました」

 

 覚悟の籠った声音であった。

 命令に服す。それこそが軍人の定め。どのような状況であろうとも、そこに異を唱えるべきではない。

 上官が漏らした悔恨の声だけで、その覚悟は十分に決まった。

 

 命を捨てた最後の1時間。

 生涯最後の時となるそれを、彼等は無言のまま成すべき事の為に費やすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────動きは、無さそうね」

 

 

 勧告から20分。

 未だ基地から何の動きも見られない事に焦れたユリスが呟くのを聞き流して、タケルはメインカメラが映す基地の様子を見つめ続けた。

 

「兄さん、どうするのよ?」

「20分じゃシャトルの発進準備くらいが精々だよ。そもそも1時間じゃ基地内の全員を脱出何て普通には不可能だし」

「何よそれ? それじゃ最初から無理難題をふっかけたわけ?」

「脱出だけに全てを向ければ可能って所かな。シャトルは用意できなくても、ノーマルスーツを着させてMSやMAに牽引させるとか。流石に、そんな状態の機体を見て敵対行動とは受け取れないしね」

「つまり、何が狙いよ?」

「余計な事はさせないって話。基地が保有する諸々の破棄。そんな事を進める余裕は与えない。本当に生き残りたいのなら全てを放り出して逃げなくちゃならない。そのギリギリの時間を指定している」

「ふぅん……だから議長さんに言われていた2時間じゃなかったわけか」

「ジブラルタルの規模を参考に脱出シミュレーションはしてみたからね。時間は妥当な筈だ。つまり──」

 

 この時点で動きが無い。逆を言えば、人員の脱出だけを図っているわけではないと取れる。

 勿論、勧告通り決定的な動きを見せるまで戦闘に入るつもりはタケルに無いが、既に警戒は必要な状況であった。

 

「兄さん……シャトルよ」

 

 そうこうしている内に、基地より1機のシャトルが脱出してくる。

 それを皮切りに2機3機と後続が続き、アルザッヘルを放棄する動きが見て取れた。

 

 それを見てタケルはコンソールへと手を伸ばし、部隊へと通信を繋いだ。

 

「コンクルーダーズより各機へ。敵は脱出の様相を見せてはいるが定刻には動いてくるはずだ。全員即応態勢で待機。警戒を怠るな」

「どういう事だクルース。あれがブラフだってのかよ」

「ハイネ、脱出で在る事は確かだ。だがアレが全てではない。そもそも本当に全てを捨てて脱出するなら通信の1つでも返してこちらの要求に了承する旨を伝えて来る筈だ。最悪は勘違いして撃たれるのだからな」

「なるほどね。無言はつまり含むところありと言う事か」

「でも脱出が確認された以上、定刻までこちらも動き出せないわよ」

「構いませんグラディス艦長。何を準備してようが、正面から叩き潰します」

 

 元より、タケルはそのつもりである。

 ユリスに言った脱出までの刻限も、ある種の意趣返し。

 嘗て無理難題を突き付けられて開戦させられたオーブ防衛戦。その意趣返しであり、その先で徹底して叩くのもまた同じ。

 体裁とデュランダルへの配慮として、人命のみ救える道は示したが、ロゴスに加担する軍事勢力の一切をタケルは残すつもりは無い。

 

 

 

「残り時間はあと30分だ。その後ロゴスを壊滅させる」

 

 

 

 

 

 かくして、タケルがその時を待ち望む事30分。

 時間になると、想定された通りアルザッヘルは戦闘行動へと至る姿を見せつけた。

 

 現れるは主力となるMS部隊。大半を喪われたとは言えその数は十分に多く、更にはザムザザーなどのMA部隊も出撃。残っていた僅かな艦船も発進し、最後の抵抗をするべくザフトへと砲火を向けた。

 

 

 ロゴス討伐戦の最後の戦いが幕を開けたのである。

 

 

 




更新あいちゃうのはごめんなさい。
年度末でどうしても忙しく。


感想よろしくお願いします。

この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!

  • タケル&ユリス
  • キラ&アスラン
  • シン&サヤ
  • イザーク&ディアッカ
  • ミゲル&ハイネ
  • タケル&キラ(SEED編より
  • ラウ&ユリス(SEED編より
  • アサギ&マユラ&ジュリ
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