蒼天の空の下。
光の大翼を広げ、装甲を蒼灰に染めた機体は躍動する。
迎撃に放たれる光の矢を悉く躱し、地表へと到達すれば居並ぶMSウインダムを巨大な戦斧“ブラズニル”で叩き伏せる。
長大なリーチから放たれる大きな一閃は光の刃と共にいとも容易く上下に断ち切ってみせる。
「退がれイザーク!」
相方の声にイザーク・ジュールはその場を離脱。瞬間、次々と光の矢が降り注ぎ周囲に居たウインダムを駆逐していく。
ディアッカ・エルスマンが駆る、ベージュと濃緑を基調としたカラーリングの機体は、その手に持つ二つの砲“イヴァルディ”で以て次々と爆炎の花を咲かせた。
「今ので敵の機動戦力は片付いたか……ディアッカ、時間は?」
「戦闘開始から10分ってとこだ。まぁ、まずまずだろ?」
「ふんっ、当然だ。大した戦力も配備されておらんだろうが……とにかく、目標を完遂して帰投するぞ」
「オーライ」
イザークの指示に応えて、ディアッカの機体デスティニーtype-Bは2門の砲を連結。
大口径の高出力ビーム砲へと形状を変えて、眼下の小さな基地へと狙いを付けた。
動かぬ的に狙いをつける時間は然程必要もない。向けられた砲門はすぐさま巨大な閃光を吐き出し、地表を爆発と共に穿つ。
大きくえぐられた地表を見て、2人は目標を達成したことを確認。機体を翻し、ジブラルタル基地への帰還ルートに入るのだった。
過日。
ギルバート・デュランダルが世界にデスティニープランを公表し、後にカガリ・ユラ・アスハとラクス・クラインが声明を発表したあの日から、2週間が経過していた。
己の専用機として用意されたデスティニーを駆り、イザークとディアッカは現在、地表にてとある任務を遂行中であった。
目標は、地表に残っているロゴスの息の掛かった施設────その一切の排除である。
ロゴスの息の掛かった……それは即ち、彼等の影響を最も強く受けていた陣営、大西洋連邦だ。
デュランダルより新たに公表された、ロゴスが保有する強化人間製造施設の実態。嘗てミネルバが見つけたエクステンデッドのラボの情報を世界に発信し、非道な研究施設が地上にある事を公表。
併せてレクイエムに因るプラント2基の壊滅を以て、ロゴスと繋がりの深い大西洋連邦が保有する軍事基地を、ギルバート・デュランダルは標的としたのである。
狙いは1つ────デスティニープラン遂行への不安要素を排除する為に。
オーブとラクス・クラインの声明によって、反デュランダル、反デスティニープランの勢力が出来上がるのは時間の問題だ。元よりデュランダルもタケルも、反対勢力が起こる事は想定し、それを人類の敵と断じて決戦とする腹積もりであった。
しかし、アルザッヘル攻略で垣間見えたロゴスの影を無視はできない。
決戦を前に、不安要素を取り除く為、少数精鋭であるコンクルーダーズを地球に派遣し、ロゴスの手足となるであろう軍事力の一切を排除しているのだ。
これに伴い、先日特務隊クルース・ラウラ監修の下仕上げられた計4機のデスティニーがロールアウト。同時にギルバート・デュランダルは直轄部隊コンクルーダーズを正式に発足。
隊長のクルース・ラウラを筆頭に、副官のユリス・ラングベルト。イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、ハイネ・ヴェステンフルスにミゲル・アイマンと、ザフトでも最高峰の実力者ばかりで構成された、最強の部隊が生まれた。
そして、デュランダルの命によりコンクルーダーズは地球の各地へと向かい、ロゴスの遺産の全てを消し去るべく動き出した。
イザークとディアッカは欧州を中心に。ミゲルとハイネはアメリカ大陸へ。2人1組のバディとなり、プラントの諜報機関が調べ上げた大西洋連邦保有の全ての軍事施設を襲撃している。
機体のロールアウトが後発となった残るタケルとユリスはというと……2人は宇宙にてミネルバと共に居た。
討伐対象は、まだ隠されているであろうレクイエムの中継点と、宇宙に潜む敵対勢力である。
ロゴス、ではなく敵対勢力。下されたデュランダルからの指示に、タケルは小さく苦笑いを溢した。
敵対勢力となれば当然ながらロゴスの残党は標的に入っているだろう。だが、それだけでない。宇宙に潜む敵対勢力となれば必然、タケルとデュランダルにとって彼等がそれにあたる────ファクトリーと呼ばれる資源衛星を拠点としているクライン派が。
今のタケルにその所在は知れないが、凡そL3かL4のどちらかの宙域に居る事だろう。エターナルとアークエンジェルを引き連れて。その保有戦力は目下最大の脅威と言える。
新たに製造された新型のフリーダムとジャスティス。そしてオーブ製ハイエンド機の新たな系譜であるシンゲツに、旧式とは言えセカンドステージに劣らぬシロガネ。更には、ザフト機の系譜にあたるドムトルーパーが3機。
デュランダルは暗に、彼等を討ってこいとタケルに指示を下したという事だ。
同志としてその信念を試そうと言うのか……タケルはこの指令をそう受け取った。いざという時、嘗ての仲間とは戦えません、等と言われては困るのだろう。
先んじて、タケルの意思が揺るぎないものなのかを確認するつもりなのだ。
「全く、何が信用しているのやら……」
「裏切らない事は、でしょ。それと兄さんが本当に戦えるかどうかは別問題よ」
格納庫で己の機体を眺めるタケルの呟きに、隣に居たユリスが呆れたように返した。
そう言う事かと納得しながらも、そっちの方面では信用が無いのだと言われて、少しだけ不服なのは内緒である。
尤も、そんな心情は彼女には筒抜けであるわけだが。
「それにしても、流石兄さんね。私の事を良くわかってくれてる……最高じゃない、あの機体」
喜色満面と言う様に、ユリスは声と顔に浮かべて見せた。
目の前にあるのは彼女の専用機として仕上げられたデスティニーだ。地上でタケルが一度だけ乗り込んだディザスターの使用感をベースに、足りないと感じた部分を重点的に組み込んだ機体となっている。
やはり遺伝子から同じユリスとタケルは戦闘において似通った思考をしているのだろう。彼女が望む事が手に取る様に分かるタケルが仕上げたデスティニーは、唯一無二の彼女専用機として仕上がっていた。
「ディザスターは動きが硬かったからね。ストライク等GAT-Xシリーズの系譜はどうしても運動性に難がある。僕や君の戦闘スタイルには合わないよ」
「それで、兄さんは自分のだけ魔改造ってわけね」
「人聞きの悪い事を言わないでくれ。兵装の製造が間に合わず僕の機体の分は用意できなかったんだ。ドラグーンとウイングバインダーの改造は苦肉の策だよ」
コンクルーダーズの面々の機体を完成させるにあたり、工廠は限界ギリギリの手一杯。最後に取り掛かったタケルの機体は新たな兵装を用意するわけでは無く、戦闘能力の根幹たるドラグーンとウイング回りの改造を施すのみとなった。
携行武装はビームライフルのみであり、プリセットのフラッシュエッジやパルマフィオキーナはあるが、ほとんどの攻撃を背部のドラグーン兵装に頼る事になる。
戦闘能力としてはやや心許ない。
「まっ、兄さんならそれでどうにでもなるでしょ。それより本当に良いの? 今回の任務……あの男の思うままじゃない」
「必要なら戦うだけだ……僕はもう、覚悟している」
「それが揺るがないとは思えないけど」
「────うるさい」
間を空けた悪態に、ユリスはタケルの内心を見透かす様な目を向けた。
そもそも筒抜けではあるわけだが、揺るぎないとは程遠い覚悟の気配に、ため息を溢さざるを得ない。
所詮この男に身内殺しはできない……それが良くわかる気配であった。
「──なぁ、クルース」
ふと横合いから飛び込んでくる声。
赤い瞳の少年がレイを伴い、どこか心配そうな顔をしてやってきていた。
「シン、どうした?」
「えっと、その……」
ちらりと隣にいるユリスへと視線を向けたシンに、なんとなくを察してユリスは肩を竦めた。
「お邪魔の様ね。レイ・ザ・バレル、少しあっちで話さない? 兄さんの恥ずかしい話でも聞かせてあげるわ」
「あっ、あぁ……了解した」
「レイ、そこは了解しないでくれないか」
「ですが、俺としても興味はあるので」
からかい交じりのレイの声音で、仮面の奥で顔を顰めたタケルを尻目に、ユリスがレイを共だって離れていく。
後には、少し気まずそうにして見せるシンと、やれやれと肩を落とすタケルが残った。
「それで? どうしたんだシン。わざわざユリスを追いやってまで」
「いや、その……あいつの前だと、クルースも答えにくいかなって思って」
「答えにくい?」
話の内容を加味してそんな気遣いができる様な奴だっただろうか……タケルは訝しんだ。
「一体何を聞きたい?」
「その……どうするつもりなんだ? 今回の任務」
「どうするつもり? つもりもなにも、任務を遂行するだけだろう」
「だって、わかってるのかよ。狙いはエターナルとアークエンジェルなんだぞ。あんたにとっては──」
「古巣、だろうな。だが、それが任務を放棄する理由にはならない」
信じられないものを見る様な目で、シンは目を見開いた後にタケルを睨みつけた。
「あんた、そうなればヤヨイとだって──」
「戦う事になるのだろうな……あの子だけじゃない。大切な人達があそこにはたくさんいる」
「なら、何でそんな平静に」
「平静なものか。私の無様は……お前もこの間見たはずだ。結局私は、自分の意志すら簡単には貫く事の出来ない半端者だ」
己の意思を示すべく戦おうとした刹那。大切な人の声を聞いて何を返すこともできなくなり、そうしてミネルバへと逃げ帰った。
無様な姿を晒したと、タケルは自嘲してみせた。
「だったら……なんでこっちに居るんだよ」
そんな思いをしてまで、何故こちら側に居るのか。大切な人達と敵対しようとするのか。シンには理解できなかった。
タケルの懐の深さと言うものを、シンは良く知っている。
散々に噛みついて、遂には命まで狙われて。それでも許し、救い上げてくれた情の深い人間。タケルがミネルバの皆をどのように想っていたのかは、記憶を取り戻したヤヨイ・キサラギより聞き及んでいるのだ。
そんな人間が何故、こんな辛い道を選んでいるのか。
「大儀の為だ。もう二度と、あんな光景を生み出さない為の……」
タケルの脳裏にはっきりと浮かぶ、今は無き故国の姿。
大戦後、漸く平和を取り戻した温かな故郷。誰もが笑い、平穏に暮らしていた。
それが、跡形も無く吹き飛ばされ、戦火の中に消えた。
巨大なクレーター。島中を穿つ光。一面に広がる首都であった瓦礫の山。
そこかしこで誰かが助けを求め叫び、目の届かぬどこかで人知れず命が消えていく。
地獄と呼ぶならあれこそが相応しい光景であった。
「そんな……ご立派な大儀の為なら、大切な妹であっても討つって。そう言うのかよ、あんたは!」
「君に何がわかる! 必死に生きて、戦って、守りたかったはずのものが無残なまでに消し飛ばされた僕の気持ちが!」
思わず声を荒げ、タケルは仮面の奥に秘せられた素を見せた。
大切な妹と……家族達と敵対する。それが本来望んでいた事では無い事も、きっとそれが正しい選択ではない事も、心の奥では理解して居た。
だが、それと同時に……もう必死に戦い続ける事が困難だと言う事も身に染みているのだ。
いくら戦おうが、いくら必死に守ろうとしようが、世界の悪意からは逃れられない。
それはこの2年間の頑張りと、先日のオーブ崩壊が全てを物語る。
タケルはもう、正面から抗う事を諦めてしまったのだ。
「例え全てを失ってでも……この戦いばかりの世界を変える。あの日僕はそう決めたんだ」
「っ!? この!!」
瞬間、タケルの視界は揺れた。次いで頬に走る痛みに、自身が遠慮も無くシンに殴られたのだと悟る。
衝撃に小さく吹き飛び、床に倒れ、仮面はカラカラと音を鳴らした。
「──っ、手荒いな。相変わらず沸点の低い奴だ」
「だったらあんたは! そうやって何でも自分が正しい気になって、自分がおかしい事に全く気が付いていない大バカ野郎だ!」
「自覚はあるよ……さっきも言ったね、君に僕の何が分かると言うんだ」
「分からないさ! まだ生きている大切な人達から目を背け、そうやって独り善がりな正義に酔ってるあんたの気持ちなんて、俺には全く分からないね!」
「っ!?」
目を見開き、言われた言葉を反芻する。タケルは目の前の少年の境遇を思い出し、顔を背けた。
既に大切な者達がこの世にはいない彼からすれば、タケルの言葉は聞き捨てならないと言う事だろう。
そんなタケルを見て、シンは怒りの儘に歩み寄るとその胸倉をつかんで見せる。
「逆にあんたには俺の気持ちが分かるのかよ?」
「何?」
「ついさっきまで目の前に居た家族が皆……父さんも母さんも、大切な妹も。皆ひしゃげた肉塊に変わり果てて殺された俺の気持ちが……」
肌を焼くビームの熱波。ぐしゃぐしゃになった身体から漂う焼けた肉と鉄の匂い。
そんな中で、何の因果か千切れた小さな手は綺麗なまま、シンの目の前に転がっていた。
あの時自分が抱いた絶望が、怒りが、悲しみが────
「それが、あんたに分かるのかよ!」
既に家族は死に、大切な者のいない世界で生き続けて来た少年の、心の底からの糾弾だった。
まだ生きている家族を見捨てて、下らない諦めの境地に至った男に向ける、口下手な少年の精一杯の激励であった。
「──隊長が来てくれたのは嬉しい。また隊長と並んで戦える日が来るとは思って無かったから……隊長と一緒なら心強いのは確かだ」
少し前、まだミネルバに仲間が皆が居た頃の様に。
特務隊クルース・ラウラに率いられ、部隊として戦場を駆ける。それがまた叶うのだと、シンは再会した折に歓喜していたのは事実であった。
「でも、俺が見たかったのは……俺がまた一緒に戦いたかったのは今の腑抜けたあんたじゃない!
ヤヨイの為に……ミネルバの皆を守る為に必死に生きていたあんたと一緒に戦いたかったんだ!」
その姿こそが、皆を惹き付け、シン・アスカが憧れた背中だった。そんな背中と、今度は確り並んで共に戦えることを喜んでいたのだ。
「今のあんたは抜け殻だ。守る為の戦いから逃げて、自分の想いから必死に目を背けて、大層な名分に縋って戦っているふりをしてる────そんな奴に俺達の。ザフトの隊長が務まるもんか!」
殴られたのは先の1回のみの筈が、タケルの胸の内はまるで散々に殴られ続けたような衝撃に揺れていた。
「ちょ、ちょっとシン! 何してるのよ!」
小さく呻いて曖昧に返す事しかできないタケルにシンが再び言い募ろうとしたところで、たまたま通りかかったルナマリアの登場に、シンはハッとして掴んでいたタケルの胸ぐらを離した。
「ルナ……別に、これは」
「そうやってまた隊長に突っかかって! あんたもいい加減大人になりなさいよ!」
「うるさいな……そんなんじゃないって!」
何も知らずに子供扱いをして来るルナマリアに面白くない様な顔をしてから、シンはタケルを一瞥すると鼻を鳴らしてその場を離れていく。
「あっ、シン! 全く、ほんっといつまで経ってもガキなんだから!」
去っていくシンの背中を見送ってからルナマリアは悪態を吐きつつ振り返った。
目の前には仮面を剥がれ、どこか力のない表情をしているタケルの姿があり、僅かに訝しむ。
「あのぉ、隊長?」
返事は無く、項垂れた頭が僅かに揺れる。
ピクリとも動かないタケルに、ルナマリアは焦りを覚えた。
「隊長────その、大丈夫ですか?」
「あぁ、うん大丈夫……でも、今は僕の事なんか放っておいてくれない?」
聞き慣れない声音と一人称に、ルナマリアは更に眉を顰めた。
ミネルバでサヤと再会した時と同じ、クルース・ラウラではなくタケル・アマノとしての素が表に出ている。
つまり今は、何一つ取り繕う余裕が無いと言う事であった。
「シンの事でしたら私から艦長に……」
「良いんだルナマリア、全部僕のせいだから……彼は悪くないから責めないであげて」
「でも、口元から血が出てますし……せめて、治療だけでも」
「本当に、気にしなくて良いから」
ヨロヨロと覚束ない足取りで立ち上がると、心配の声を挙げるルナマリアを他所にタケルは艦内の通路へと消えていってしまう。
その背中に、ルナマリアがこれまで見て来た強く頼りがいのある感触はなく。すぐにでも壊れそうな脆さを、ルナマリアは感じ取るのであった。
「────本当に止めに入らなくて良かったのか? ユリス・ラングベルト」
格納庫を眺められる艦内通路の端にて、タケルとシンのやり取りを遠巻きに見つめていたレイは隣に佇むユリスへと問いかけた。
「ん、何でよ? 兄さんがあのちんちくりんと揉めた所で私には関係ないでしょ?」
「そう思っているのなら、俺は別に構わないが……」
「まっ、損な性格はしてるわよねぇ……兄さんもちんちくりんも。素直になれないって言うか」
「貴女程率直なのも、困りものだがな」
「言ってくれるわね。私はごちゃごちゃと面倒事が嫌いなだけなの────だから、単刀直入に聞かせてもらって良いかしら?」
「なんだ?」
居住まいを正し、レイへと向き直ったユリスは鋭い視線を投げながら口を開いた。
「あなた……ラウとどういう関係なのかしら?」
投げられた問いは、常に澄まし顔なレイ・ザ・バレルの表情を、驚愕へと変えるのだった。
同じ時。
同じ場所……つまりはミネルバ格納庫内での事である。
メイリン・ホークは整備班達が職務に励んでる最中、とある機体の目の前で厳しい表情をしていた。
それはもう、厳しいと言うか鬼気迫ると言うか。その機体の整備担当であるヴィーノは漏れ出る彼女の気配に息を呑んで慄く程である。
“ミネルバの皆を守る為に必死に生きていたあんたと一緒に戦いたかったんだ! ”
反響して聞こえてくる少年の叫びに、メイリンはまた1つ険しさのオーラを引き上げた。ヴィーノはまた1歩、少女から後ずさった。
さて、何故彼女がこんな事に……そもそも何故ここに居るかと言う所だが、彼女の所属はコンクルーダーズとなり、実質的にはクルース・ラウラの副官の位置に落ち着いたからである。
既にミネルバのCICにはアビー・ウインザーが居る。一度はMIA認定されたメイリンに、ミネルバでの席が残されているわけも無く、本来なら今回の任務において、ミネルバへ同乗するはずがない所ではあった。
しかし、ユリス・ラングベルトの副官適正は低い……この上なく低い。
元より戦う事しか能の無かった秘匿部隊の人間だ。正規の軍人として訓練は受けていないし、本人の気質もまた傍若無人そのもの。他者と合わせる事ができない人間である。
そんな彼女に副官として、隊長であるクルース・ラウラの補佐ができるだろうかと問えば、それは絶対的に否である。彼女に誰かを支える等と言う事は不可能に近い。いや、不可能だ。最悪はコンクルーダーズとその他部隊との間に大きな軋轢を生む可能性すらあるだろう。
故に、独立部隊であるコンクルーダーズが円滑に他部隊と連携が取れる様、ユリスの代わりにタケルの補佐と折衝役を務めるのが今の彼女である。
「な、なぁ、メイリン?」
「えっ、何? ヴィーノ」
険しい表情を浮かべていたメイリンは、同期の声に現実へと帰ってきて、ヴィーノが良く知る彼女へと戻った。
「どうしたの?」
なんて可愛らしく小首を傾げる少女に、出撃前のパイロットの如く鬼気迫る表情が見えたのは気のせいかとヴィーノは呆気にとられた。
「いや、何て言うか……ずっと難しい顔して唸ってるからさ。しかも俺が担当してるラウラ隊長のデスティニーの前で……だから、何か俺失敗しちゃってるのかなぁ、とか思ったりして」
「えっ、ううん全然! そんなことないよ! ヴィーノはちゃんとできてるもん! って、私が見ても良くわかんない作業だけど……」
少し慌てて首を振る姿に、良く知る彼女が戻ってきた気がして、ヴィーノは続いてほっこりと気持ちが緩んだ。
「じゃあ一体どうしたんだ? ラウラ隊長の機体について何かあるなら聞くぞ?」
「あぁ~、えっと……その何かあるのは機体よりも、どっちかって言うと本人と言うか……」
本人? 要領を得ない回答に今度はヴィーノが首を傾げた。
そんなヴィーノを見てメイリンは逡巡。何かに思い至ると、またも先程の様な真剣な表情へと戻り問いかけた。
「ねぇ、ヴィーノ。思うがまま素直に答えて欲しいんだけど……良い?」
「えっ? あ、あぁ勿論。俺に答えられる事なら」
年頃の少女が真剣な面持ちのまま、決意の声音を見せてくる……年頃であるのはヴィーノも同じくで、どこか淡い期待を抱きかけながら小さく頷いた。
「ヴィーノ、ミネルバで再会したラウラ隊長を見てどう思った?」
「へっ?」
随分と予想外な質問に思わず間抜けな声を返してしまう。
「な、なんでそんな事──」
「それはちょっと言えないけど……お願い、答えて! 戻ってきたあの人に、どんな印象を抱いた?」
「ど、どんなって……」
どこか必死の形相に気圧されつつも、それが彼女の望みならばと、少年は首を捻って考えを巡らせた。
期待していた言葉とはまるっきり違ったが、だからと言って考えない、答えない等と言う選択肢は、心優しい少年に残されてはいなかった。
「う~ん、印象ねぇ……ホント、直感に近い話なんだけど良い?」
「うん」
「あの人、前は整備班にも顔出してて頼りになると言うか、親しみやすい感じが強かったんだけどさ。今は何て言うか、あの頼もしかった背中が小さく見えて、失礼な話だけど、何をするにも一杯一杯というか、余裕が無いと言うか。もっと言うなら何かこう……今にも倒れそうって言うか」
「倒れそう、やっぱり?」
予想していたのか、少しだけ前のめりになるメイリン。予想と言うよりはいっそ、そうあって欲しいという願望が見え隠れする様である。
「やっぱり、そうだよね。そう見えるよね」
「やっぱりってメイリン……あの人、どこかおかしいのか?」
「あっ、ううんそういう訳じゃ、ないんだけど……でもありがとうヴィーノ。お陰で決心付いたよ!」
「お、おう? 良かったのか、今の答えで?」
「うん! 助かったよ。それじゃ私、ちょっとやる事できたから、またね!」
「あ、あぁ……」
一転変わって溌剌な表情を見せたメイリンは、ヴィーノに礼を述べると踵を返して、デスティニーのコクピットへ向かって跳んで行ってしまう。
慌てふためくヴィーノを他所にメイリンはそのまま、コクピットハッチの開閉スイッチへと手を掛けていくのであった。
修正してやる!
書いた後でシン君カミーユ枠になってくれた事に気づいた。
最近更新するたび低評価もらって気が滅入っちゃってます
もう更新して不評貰うのが怖くなっちゃって。
楽しんでいただけてる読者の皆さんにはどうか、その楽しみを声にしてお教えいただければと思います。お願いします。
この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!
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タケル&ユリス
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キラ&アスラン
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シン&サヤ
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イザーク&ディアッカ
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ミゲル&ハイネ
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タケル&キラ(SEED編より
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ラウ&ユリス(SEED編より
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アサギ&マユラ&ジュリ