どうぞお楽しみください。
星々の大海の中、オーブ製宇宙特装艦アマテラスはL4宙域へ向かっていた。
過日の緊急サミットによって、地球圏統一同盟は締結された。
カガリが望む形と、望まない形をもって。
現在、地上では同盟各国が宇宙へと送る戦力をかき集めており、カガリはそうして出来上がる同盟軍の総指揮官として任命されている。
その第一手として月面都市コペルニクスを同盟軍の一時拠点とするべく、少数戦力だけを伴い宇宙へと上がってきたのだ。
統一同盟軍の発足に伴い、キラやアスラン。アークエンジェルの皆を正式にオーブ国防軍へと組み込む事となり、アークエンジェル艦長マリュー・ラミアスは国防軍三佐。キラ・ヤマトは国防軍二尉。アスラン・ザラはアレックス・ディノとしてだが、MS隊隊長を担い国防軍一尉となっている。
更にはモルゲンレーテ所属のテストパイロット達3人も臨時徴用され、それぞれに三尉の任官を果たし、キラ、アスランと共に艦船アマテラスの保有部隊ライトニング隊として同行している。
そうして、一先ずはアークエンジェルと合流する予定を立てていた矢先の事だ。
宇宙に潜伏していたアークエンジェルとエターナルがザフトに発見され、戦闘に入ったとの知らせを受け、彼等はL4へと急行する事になった。
「キサカ、宙域までは後どれくらいだ?」
艦長席に座って宙域図を見つめていたレドニル・キサカ一佐の下にモニタが表示されてカガリから通信が入った。
通信先のカガリは既にパイロットスーツを着こみ、オーブの象徴たるアカツキに乗り込んでいる事が見て取れる。
「そうだな。そう時を置かずに、と言う所かと」
「そうか、わかった……索敵は厳に。感があったらすぐに知らせてくれ。戦闘を確認したらすぐに出る」
「本当に、MSで出るつもりか?」
思わず、立場を忘れた物言いとなってキサカは苦言を呈した。
カガリ・ユラ・アスハは既にオーブ代表の立場だけでなく、統一同盟軍の代表。指揮官なのだ。
その立場と命の重さは、以前にも増して重要なものとなっている。
端的に言えば、命の危険が多い最前線の戦場に等、出て良い筈がない。
しかし、キサカの憂いをカガリは首を振って返した。
「キラとアスランが先に。その後はアサギ達だ。私は針路に十分な安全が確保されてから出ていくことになる。案ずるな、兄様が設計したこのアカツキ。接近せず撃墜できる様な機体ではないんだからな」
「そう言う問題では無いと言うのに」
軽く返してくるカガリの返答に、キサカは顔を顰めた。キサカの憂いは全くの別のことだなのだ。
既に、彼等は戦況を聞いている。今アークエンジェルとエターナルがどこの誰と戦っているのかを。
このままいけばカガリは、戦場で彼と相対することになる。
タケルとカガリ。
幼少より護衛としてカガリの傍に居たキサカは、一度たりともこんな事態となる事を想像したことは無かった。
まさか、タケルとカガリが戦場で敵対する事になるなどとは。
絶対であったはずだ。カガリに対するタケルの親愛は。
不変であったはずだ。タケルに対するカガリの信頼は。
何がどうして、何故こんな事態となってしまったのか。キサカは、不可思議で悪辣な世界の定めを呪った。
こんな事態……先に逝ったトダカも報われないだろう。今は亡き国防の同胞を想い、キサカの遣る瀬無い気持ちは重くなっていく。
「カガリ……今のお前は」
「分かっている。今の私に私情を挟むこと等許されない」
「ならば無理して出撃など──」
「それでも私は、兄様の妹だ。兄様がアカツキに託した役目を、私は背負い体現しなければならない。
でないと、アカツキの存在理由を……兄様のこれまでを否定する事になってしまう」
燦燦と煌く、金色のフラッグシップ。
オーブを守護する絶対の盾であり、何者も害する事の出来ない護りの象徴。
MSアカツキは戦場に存在する事に意義がある。
「カガリ……」
「戦うさ、私は。それがアカツキを託された私の役目なのだから」
揺るがぬ決意のなんと悲しき事か。
最も大切な家族と戦う事に、何ら躊躇いの気配を見せない強すぎる意志に、キサカは大きく息を吐いた。
「──センサーに、感! 前方距離7000にて、戦闘と思しき反応を確認!」
オペレーターからの報告に、艦橋内を張り詰めた空気が覆った。
忙しなく動き出すオペレーターが次なる報告を挙げるまでの僅かな時。カガリとキサカは固唾を呑んでその時を待つ。
「アークエンジェルと……ザフト艦、ミネルバを確認!」
「了解だ。アマテラス、第一種戦闘態勢!」
即応の言葉がふさわしく、キサカの指示に艦内システムは戦闘モードへと移行していく。
艦体の随所に設置された光波防御帯がスタンバイ状態に入り、いつでもフィールド防御が可能となった。
「戦闘目標はアークエンジェル、及びエターナルの救援だ。MS隊は出撃。先行して救援に向かう! 行くぞ!」
続いて指揮官であるカガリの指示で、アマテラスの両舷ハッチが解放され、艦載機の発進態勢を取った。
『ジャスティス、フリーダム。カタパルトスタンバイ』
聞こえてくるアナウンスと共に、キラとアスランはコクピットの中で眼前に広がる戦場を見つめた。
「アスラン……あの白いデスティニー」
「あぁ、わかっている。どうやらサヤでもバジル―ルさんでもダメだったみたいだな」
「止められるのかな……僕達」
僅か、キラは不安を抱えた声音で呟いた。
未だ嘗て、有り得なかった事だ。タケル・アマノがサヤ・アマノやナタル・バジル―ルに対して銃口を向けるなどと。
あり得ない、考えられない事態が目の前にあった。
親友であり兄でもある彼が、根本的に何か変わってしまったのではないか。もう戻れないところまで行ってしまったのではないか。
そんな不安がキラの心に付き纏っていた。
「俺はお前程アイツと深い関係ではないからな。タケルがどんな状態かなんてわからない。一緒に戦った回数より、敵として戦った回数の方が多いくらいだしな……ただ、あいつがカガリを悲しませる以上、俺はあのバカ野郎を力づくでも止めるだけだ」
「あぁ、うん。そうだね」
気持ち的に戦えるか。そして戦えたとしても自分達に彼を止められるのか。
キラが抱えていた不安はそういう話であったのだが、この男にはそのような不安は皆無だったらしい。
カガリが悲しんでるから止める。ただそれだけ。
シンプルで迷いのないアスランの答えに、キラは苦笑いを溢しながらも頼もしさを覚えて通信を切った。
出会ってからこれまで。
キラ・ヤマトにとってタケル・アマノはずっと戦場における先達であった。
なし崩し的に巻き込まれた自分よりもずっと早くから、MSに触れてきた人。キラよりもMSを深く理解しているし、戦闘への理解も深い。
MSを扱えるだけのなんちゃって軍人である自分とは格が違う。と言うのが、キラにとってのタケルだ。
そう言う意味ではキラにとってのアスランも同様なのだが、アスランとはまだ直接……それも死闘と言えるほどの戦いを繰り広げた事がある。その結果は互角。相打ちと言って差し支えない。
ずっと隣にいたはずのタケルと撃ち合う事はキラにとって全くの未知であり、勝てるヴィジョンが思い浮かばない相手なのだ。
ずっと隣で共に戦い、いつもキラの前に出てくれていた彼。
劣等感等と言うものは抱いてこなかったが、敵わないと言う半ば確信に近いものが、キラの内にはあった。
だが、それも今日で終わり。
胸の内で沸々と湧いて来るのは、ダーダネルス海峡へと出撃するときと同じ気持ち。
自身の生まれの為に不幸を背負った、彼を助けたいと願う気持ちだ。
その為に彼を越えなければならないと言うのなら、やるだけである。
『ヤマト二尉、発進願います』
オペレーターからの通達に、気持ちがまた一つ昂っていく。
フットペダルを踏み込むと、愛機は嬉しそうに唸りを挙げた。
「キラ・ヤマト────フリーダム、行きます!」
自由の翼は誓いを胸に、戦場へと飛び出す。
『続いてディノ一尉。発進どうぞ』
「了解した。アレックス・ディノ────ジャスティス、出る!」
続いて真紅の騎士もアマテラスより飛び出した。
「アマノ三佐……いるってさ」
「白い羽の機体でしょ?」
「でも姫様はキラ君とアスラン君に任せるって」
続いてカタパルトに乗せられて発進準備に入る機体。
そのコクピットの中で、彼女達もまた緊張の途にあり揺れていた。
敵は散々教えられ、導かれて来た憧れの教官。
直接相対するわけでは無いと言っても、彼女達にとってそれは大きな事実であった。
『キンシャク、シュトリ、コンカク。発進準備完了です。発進どうぞ』
「了解です。アサギ・コードウェル────キンシャク行きます!」
「マユラ・ラバッツ────シュトリ、出撃します!」
「ジュリ・ウー・ニェン────コンカク、発進します!」
黄色、朱色、紺色。
オーブ戦役でザフトを相手に猛威を振るった三羽烏が、今再び戦場へと躍り出る。
そうして、先に出た5人によって針路が確保され、最後にカタパルトに乗せられるのは、太陽の如き輝きを放つ金色のMS。
型式番号ORB-11。機体名アカツキ・ヨウコウ。
それに乗り込むはオーブの獅子、カガリ・ユラ・アスハである。
『アカツキ、カタパルト接続。全システムオールグリーン。発進のタイミングをパイロットに譲渡します』
「兄様、今行くぞ────カガリ・ユラ・アスハ。アカツキ、発進する!」
戦場に向けて飛び出す金色。
世界の命運を左右する戦い、L4の分岐点────その第2幕の幕開けであった。
向かい来る蒼天の翼。真紅の騎士。
そして、燦燦と輝きを放つ黄金のMS。
なぜ……どうしてこうなってしまったのか。タケルは自問した。
ただ、守りたかっただけだった。
大量破壊兵器によって消滅したオーブ。
大切な祖国へ二度と悪意が向かない様に、オーブを離れプラントへと渡り、ザフトとしてロゴスを討つ。
そうすれば後は、デスティニープランによって世界に平和を齎し、今度こそ本当の意味でオーブを守れる。
その為の障害はなんとしても取り除く────そう胸に誓った。
全ては、祖国とそこに居る大切な人達を守る為に。
どうしてこうなってしまったのか──再び自問すれば、答えは簡単に出た。
デスティニープランの障害として、大切な人達が立ちはだかってしまった。ただそれだけである。
そしてこの事態に対する回答をタケルは持っていなかった。ひねり出すこともできなかった。
もはや引き返せない所に、タケルは居る。
ユリスと共に結んだデュランダルとの契約。エクステンデッドの3人の治療。ラクスの影武者ミーア・キャンベル。巻き込んでしまったメイリン・ホーク。結成されたコンクルーダーズ。
立場が。理由が。想いが。
今のタケルを雁字搦めにしている。
眼前に広がる
オーブ崩壊から張り詰め続け限界状態のタケルが、どちらかを選ぶ事などできはしなかった。
自ら選べないタケルの立ち位置を定めるのは────それを彼を見る周りの者達しか居ない。
アークエンジェルの艦橋へと突き付けられたビームライフル。
サヤが乗るシンゲツを囲うように展開されたライソウ。
タケルの気持ちがどうであろうとも、その構図が見せる現実は1つだ。
戦場に、再び閃光が奔った。
飛来するビームの光がシンゲツを囲んでいたライソウを2基撃ち抜き退ける。更に本体であるデスティニーに対しては、ビームブーメランが接近。シールドで防ぎ躱したデスティニー目掛けて更に真紅のバックパックリフター“ファトゥム-01”が強襲。
巨大なビームスパイクを出力するリフターに、タケルは堪らずデスティニーを後退させた。
「ムウさん、交代です」
「サヤ、君も一度退がるんだ」
アークエンジェルを庇うように陣取って、キラとアスランは2人へと後退の指示を下す。
既にシロガネは半ば解体状態。サヤが乗るシンゲツも損傷こそないものの、デスティニーとの戦闘で全開機動を続けていたせいでエネルギーは枯渇寸前であった。
「悪いキラ、助かった」
「いえ、大丈夫です────えっ?」
思わずキラが間抜けな声を漏らす。
極々自然と交わされたやり取りの意味に気が付いて、キラは呆けた。
「ムウ、さん?」
「おう! 俺だ!」
「えっ、なんで……とっ、とにかく、アークエンジェルに一度帰還してください。そんな状態では戦えないですから!」
「あぁ、わかってるよ…………キラ、あいつを頼む」
「はい、わかってます」
「アスラン・ザラ、私からもお願いします……お兄様を」
「確約はできないが、カガリが悲しむような事にはしないさ。安心してくれ」
シロガネとシンゲツが、アークエンジェルへと帰投していく。
それを見送りながらキラとアスランは、眼前のデスティニーを見据えた。
嘗ての友が、オーブの敵となってしまった────傍から見る構図は、そこに疑いの余地を挟まなかった。
「タケル……お前、自分が何を討とうとしているのか。本当にわかっているのか」
「サヤにも、ナタルさんにも……君は銃口を向けたんだよ」
『アスラン……キラ……』
責める様な声と言葉は、タケルに現実を突きつける。
心の奥底ではそんなはずではなかった己の気持ちが、今は様々で上塗りされて変遷していた。
「──兄様」
『カガ、リ……』
通信越しに聞こえてくる声の何と暗く、か細い事か。
まるで悪い事を隠して伺う子供の様な声音に、カガリはタケルの表情が目に見える様であった。
「何で、皆して……僕の前に出て来るんだ」
呪詛の様に、タケルは呻いた。
世界の悪意が向かない様、オーブはもう目立つ事は避けるべきなのだ。
表立って戦えば……世界に何かを発信すれば、それだけ世界はオーブを見過ごせなくなる。
また……どこかで誰かが悪意を向ける。
だからタケルは、オーブの人間であることを捨てた。オーブの為と言う大義名分を心の底に隠したのだ。
平和の為に戦い、声を挙げ続けるのはオーブでなくて良い。
世界の悪意……それらからオーブを守る術などどこにも存在しないのだ。
「──もう、戦わないでよ」
戦火の話だけではない。
自国の理念を。己が信念を貫き通す。そんな眩しい強さを見せつける様な所業が、世界の目を引く。
「──大人しくしていてくれよ」
でないと自分は、本当に。
『兄様、私達は──』
「じゃないと……」
──種が、開いた。
「またオーブが巻き込まれるんだよ!!」
どうにもできない現実に。卸し切る事の出来ない感情の発露に────タケル・アマノはSEEDへと陥った。
光の翼が展開され、デスティニーは圧倒的な速力を以てカガリのアカツキへと迫る。
「っ!? キラ!」
「うん!」
その動きに即応するキラとアスラン。フリーダムは背部ウィングのスーパードラグーンを展開。両手に持つビームライフルと共に迎撃射撃を敢行し、デスティニーの進路を阻んでいく。
SEEDへと陥ったタケルであれば、難なくそれを躱していくだろう。
しかし、それで一直線にアカツキへと向かえなくなれば、彼が間に合う。
「させるか!」
接近の叶ったデスティニーがフラッシュエッジを叩きつける刹那、ジャスティスは高出力のビームシールド発生装置を備えた実体盾ビームキャリーシールドで受け止めた。
「兄様!」
「タケル、一度冷静になれ!」
「なれるものか!」
ジャスティスがシールドで弾き返して距離を空けると、再びフリーダムのドラグーンが飛来。
8基の端末から放たれる光条に追いやられ、デスティニーは退いていく。
「くっ、シン!」
「っ!? あぁ!」
状況を見守っていたレイとシンも、再び起こる戦いに慌てて機体を動かした。
「アークエンジェル、MCSを! 直ぐに戦線に戻ります!」
アークエンジェルの元へと一度退いたサヤもまた、シンゲツのエネルギーを即座にチャージし、戦線へと向かっていく。
「ミネルバ、フライヤーとデュートリオンビームを! このまま戦線復帰します!」
別の方では帰還したルナマリアが失った各種フライヤーとエネルギーチャージをミネルバに要請。彼女もまた、機体を立て直すと、ソードシルエットを装備して戦線へと飛び込んでいく。
静寂から一転して、戦場は再び激しい討ち合いの様相へと呈していくのであった。
ストライクルージュに乗るアイシャは、目の前の光景に戦慄する。
タケルとユリスのデスティニーが発進したことを受けて、ルージュに乗り込みアークエンジェルより発進した彼女はエターナルの援護へと向かっていた。
そうしてエターナルの元へと到着すれば、ハーケン隊とエターナルが連携しながらユリスのデスティニーと必死に渡り合っており、アイシャもすぐさま参戦する。
自分も加われば、戦局は4対1。エターナルの援護も合わせれば決して後れを取ること等ないだろう。そう考えていた。
「何なの……貴方」
呟きは自然と漏れた。
ヒルダのドムトルーパーとビームサーベルで打ち合う最中、隙を見出して放たれたオオトリ装備のレールガンとビームランチャーは、見えているかのように躱される。
お返しと言わんばかりに放たれるビームライフルの照準精度は恐ろしいまでに正確で、アイシャは慌ててシールドを構えて防御した。
「アイシャ! ルージュは所詮旧式だ。前には出るな!」
「えぇ、分かってるわアンディ……」
援護射撃が精一杯。
成す術の無い状況に歯噛みしながらも、必死にアイシャは隙を見出そうとデスティニーの動きを観察し続ける。
彼女は本来パイロットではない。
勿論、2年前から活躍しておりパイロットとして十分な能力を持っている事は実証済みではあるが、本来の彼女はサブパイロット。複座による正パイロットの支援こそが真骨頂である。
バルトフェルドとのラゴウしかり。タケルとのシロガネしかり。可能性だけで言うならカガリが乗るアカツキへの複座も考えられていた。
機体を操る正パイロットの到達点である彼等とはやはり一線を画してしまう。
ユリスは言わずもがな。ハーケン隊とて、その実力は紛う事なきエース級。正規の軍人で在ればどこに行っても部隊長格のパイロットと言える者達だ。
アイシャでは入り込めない領域がそこにはあった。
「ちっ! 姉さん、そろそろエネルギーが厳しい!」
「隙を晒すな! 後ろにはエターナルがあるんだよ!」
「そうは言っても! このままじゃ!」
ユリスのデスティニーから齎される苛烈な攻撃を、防ぎ、躱し、捌き切る。
ドムとは違い過ぎる速力のせいで、彼等の連携ジェットストリームアタックもまるで機能していない。
突撃しながらの波状攻撃を行うより先……距離をとられ、回り込まれ、むしろ致命的な隙を晒してしまう。
本来なら敵の機動性を潰すべく3人の連携射撃で追いこんでいくのだが、ユリス・ラングベルトはそれを歯牙にもかけなかった。
シールドで防ぐことすらせず、放たれた弾頭は撃ち抜かれ、向けられた閃光は腕部ビームサーベルで切り捌いてみせる。
異次元の危機回避能力に、彼等は絶句した。
むしろ、波状攻撃で追い込まれるは彼等の方である。
背部複合ビーム砲塔アキシオンの連射。時間差で投射される2本のフラッシュエッジ。投射と同時に放たれるビームライフル。
そして接近してされた時には、ゼロ距離で敢行されるパルマフィオキーナの一撃が襲い来る。
一手一手が、まるで必殺だ。
一つ一つ全てに全力で回避と防御に傾注しなければ、彼女の攻撃は捌き切れないのである。
「ミサイルで弾幕を張る。ハーケン隊は一度下がれ!」
バルトフェルドの声と共に、エターナルより夥しい程のミサイルが発射された。
狙いを付けず、一帯を爆発の渦に巻き込む面制圧。ハーケン隊を追従しようと飛び込めば、VPS装甲でダメージが無くともその衝撃は間違いなくデスティニーの足を止める。
止める……筈だった。
「──嘗めんじゃないわよ」
SEEDによる埒外な知覚領域が、向かい来るミサイルの中で直撃コースとなり得るものを見分け、僅か数発のビームライフルの射撃で面制圧に穴を作り出す。
迫りくるミサイルを正確に射貫く技量。それをこなすだけの反応速度。何もかもが異次元の所業であった。
爆炎をかき分けて、紫の悪鬼は遂にハーケン隊を捉えた。
「くっ!?」
万事休すか。振り下ろされようとしているビームサーベルを見て、コクピットの中でヒルダ・ハーケンは己の死期を悟った。
「オイタが過ぎるわよ!」
ヒルダのドムを大きな衝撃が襲う。
近接信管で放たれたルージュのミサイルが、ドムとデスティニーの間に飛び込みドム諸共爆発に巻き込む。
至近の爆発にドムは大きく損傷したものの、どうにかデスティニーをドムから引き剥がす事に成功した。
「ちぃ、小賢しいわね!」
悪態と共に、ユリスは横槍を入れて来たアイシャのルージュを睨みつける。
どうにかデスティニーを足止めしようとするマーズとヘルベルトの攻撃を軽くあしらうと、ユリスは先にルージュへと狙いを定めた。
「ちっ、アイシャ! 逃げるんだよ!」
それを察したヒルダの声が響く中、デスティニーがルージュへと飛翔する。
だが、アイシャがどうにか応じようと身構えた次の瞬間、デスティニーは突如その動きを止めた。
「──っ!? この感じ、兄さん!?」
脳髄を叩くような、意識の声────繋がりを介してユリスに届くのは、まるで感情の叫びだ。
覚えのある感覚であった。これはそう……2年前のあの日と同じ。
目の前でサヤ・アマノを奪われ、感情の箍を壊してしまったあの時の伝わってきた叫びと同じ感覚であった。
「ちぃ! あのおセンチ兄さんが!」
届いた声と感情に、ユリスは状況を全て理解した。
即座に踵を返すと、ユリスはハーケン隊もエターナルも放りアークエンジェルへとデスティニーを走らせる。
「────退い、た?」
「どうやら、助かったようだね」
途端に訪れた静寂に、アイシャとヒルダは呆けながらも安堵の息を溢すのだった。
主人公の行動がおかしいだろうとの声が届きましたので解説。まぁおかしいのは間違い無いですが。
毎日眠れていない(寝たらまた何かを失ってそうで怖くて眠れない
眠ってもあの日を思い出してうなされる
ぶっちゃけラウと同様に人類を見限ってるからプランに縋るくらいしか本人としては平和への道がない。
何より本当はもう、一切戦いたくない。戦闘行為に限らず、己が信念に準ずる戦いも。
オーブ崩壊から引き摺り続けた結果、もう鬱病待ったなしの主人公。
言動行動が本来の彼ではあり得ないのはそう言う状態だからですね。
許せとは言いませんが、彼の状態をご理解いただければ幸いです。
次回は全力戦闘回。多分決着しないと思う。戦闘だけであと2話かな。
運命編のゴールが見えつつも、まだ遠いですが今後もどうぞお楽しみください。
感想聞かせていただければ幸いです。よろしくお願いします。
この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!
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タケル&ユリス
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キラ&アスラン
-
シン&サヤ
-
イザーク&ディアッカ
-
ミゲル&ハイネ
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タケル&キラ(SEED編より
-
ラウ&ユリス(SEED編より
-
アサギ&マユラ&ジュリ