どうぞお楽しみ下さい
L4宙域最端。
周りに何もないこの場所を、小さなシャトルが漂っていた。
いや、漂っていると言うのは適切ではないだろう。正確には速度を維持しつつ、推進機関を使用していない状態である。
故に目立たず、シャトルの外装が黒色に染められている事も相まって妙に隠密性が高い。
この上なく怪しいシャトルだが、ふと何もない空間へとシャトルが消えていった。
進んでいく船首側から、まるで宇宙の暗黒に食べられていくように……僅か十数秒。シャトルは虚無の中へと消えていった。
「ふぅ、やれやれですね」
「お疲れ様でした」
薄いブロンド髪のビジネスマン風な優男────ムルタ・アズラエルは、シートに座りっぱなしで凝り固まった身体をほぐしながら、足元を確認してシャトルを降りていく。
迎え入れるのは、未だその軍服を着ている意味があるのかが大いに疑問な地球連合の軍服。襟章を見ればいっぱしの将官であった。
「いかがでしたか?」
「散々だね。全くケインは忠実によくやってくれた。アルザッヘルは壊滅的だったよ。何も遺っちゃいない」
アルザッヘル基地はザフトの侵攻を受け壊滅。司令官ケイン・ハルマーの手に因って全てを灰燼と帰す自爆を行った。
アズラエルはその跡地を見て回ってきたのだ。
目的は確認────施設はきちんと爆破されたか。基地の跡からザフトへと情報が漏洩していないかである。
「では、ダイダロスは?」
「あっちもまぁ、基地としての機能は完全に潰されているだろうね。レクイエムは完全に破壊。迎撃設備も全て。勿論、駐留してた戦力なんかもまるっきりだ。
そして恐らくはこちらも自壊機能を起動したのだろう。主要な設備が全部死んでてザフトの調査部隊も早々に帰ったみたいだ。今じゃ誰も居ない」
「と言う事は一先ず、安心と言う事ですかな?」
安心か────将官の疑問に、アズラエルは表情を緩めなかった。
「どうだろうねぇ。デュランダルはエクステンデッドの情報も随分早くから手に入れていたみたいだし。この間あった近くでの戦闘……聞くところによれば宇宙に巣食う不穏分子の排除が目的だそうだ────狙ってやってる気がしないでもない」
「我等の潜伏を感づいていると?」
「確証までは無いけどね。先の戦闘で敗北を喫したから、今は
こっちはどうだい?」
シャトルの発着場から通路へと入り込み、会話を続けながら輸送チューブ内を小さなゴンドラで2人は移動し始めた。
ゴンドラから見える光景には、数多の作業者がそこかしこでここを作り上げるために作業を進めている。
「進捗は95%と言う所でしょう。もう間もなくかと」
「うーん、良いですね。漸く良いニュースが聞けましたよ」
眼前に広がる開けた巨大な空間。それを見てアズラエルは小さく笑みを浮かべた。
「楽しみですよ────本当にね」
オーブ軍宇宙特装艦アマテラス艦内。
その一角に置かれているシミュレータールームにて、現在熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「くぅ、早すぎる!」
「何なの、その反応速度!?」
「ダメ……ロックオンが、定まらない!?」
仮想エリアで繰り広げられる戦い。
キンシャクを駆るアサギ。シュトリで挑むマユラ。コンカクで狙うジュリ。
その相手は──
「うぉおお!」
気合い一閃。アロンダイトがシュトリを叩き切ると、転進して即座にキンシャクを捕捉。
異次元の機動でキンシャクを追い詰めパルマフィオキーナで粉砕。
直後に狙い撃たれた閃光を躱せば、コンカクのドラグーン兵装カクヨクをフラッシュエッジで撃墜し、機動力を奪ったところで長射程ビーム砲を3連射。
見事な追い込み射撃でコンカクを撃ち抜き、シミュレーションは終了した。
「ふぅ──うゎ!?」
「君、凄いっ!」
「一体どうなってるの!?」
「さっきの射撃どうやったの、教えて!」
戦闘シミュレーションを終えて一息吐いた瞬間、シミュレーターを囲む様に詰め寄る3人。思わぬ事態に、シン・アスカは目を剥いて驚いた。
タイプは違うが揃いも揃って見目麗しい彼女達だ。年頃の男の子としてはそれなりに緊張する。
これがサヤやルナマリア、メイリンの様に気心知れた仲なら特段緊張する事も無いのだが、彼女達とはほぼほぼ初対面。
仲良くおしゃべりできる様な関係性は皆無である。
「えっ、あのっ、その──」
「ストップストップ。3人ともちょっと落ち着いて。シン、困ってるよ」
「あっ、ごめんごめん」
「ついアマノ三佐に詰め寄るみたいになっちゃって」
「だってキラ君、アマノ三佐と違ってこういうの教えてくれないし……」
ボソッと呟かれたジュリの小言を苦笑いで流しつつ、キラは助かったことに胸を撫で下ろすシンへと視線を向けた。
「どう、シン? 一応僕もそれなりにタケルの手伝いとかしてきたから、結構再現性は高いと思うけど」
「──悪くないっす。俺の操作にしっかり追従してくれるし、ウィング展開時の機動性も、ミラージュコロイドの再現性もばっちりでした。ただ」
「ただ?」
「ビームブーメランの操作性はちょっと鈍かったです」
「あぁ、あれね。ドラグーンシステムを利用しているのは分かったんだけど、通常のドラグーン兵装と比べると動かし方に癖があってさ。ちょっと難しかったんだ」
「ジャスティスも持ってませんでしたっけ?」
「うーん。それはそうなんだけど、ジャスティスのはドラグーンシステム無しなんだよね」
「えっ? じゃああの人、システム操作なしでブーメラン使ってるんですか?」
「うん、まぁ……そうみたい」
「意味わかんねえ」
もはや何でもありだ。
確かに彼は白兵戦に置いて無類の強さを誇る。ナイフから銃まで、生身での戦いではあらゆる武装を使いこなせるらしいし、その片鱗を対峙して体感している。
だがしかし、ブーメランは通常兵装の類では無いだろう。白兵戦でブーメランを扱うやつ等あり得ないし、遊びでするにしたって、ブーメランを自在に扱える様なのは極稀だ。
一体どんな訓練をしたら制御無しにブーメランを自在に操る軍人になるのか────シンは辟易とする気持ちでアスラン・ザラを変態認定した。
「それにしても随分やる気になってくれたね。データができた途端直ぐに確かめたいなんて。ちょっと嬉しかったよ」
「別に……あんた達の為じゃないですし」
どこかむすくれた表情で、シンはキラから顔を逸らした。
照れ隠しでもなんでもない。こうして研鑽を積もうとしているのは全て、自分の目的の為であった。
“私達と共に、戦うつもりは無いか? ”
先日、カガリ・ユラ・アスハから齎された提案。
シンは最初、何をふざけたことをと怒りを露わにした。
「あんた、何をふざけたことを──」
「お前が怒るのは百も承知だが。まずは俺達の話を聞け、シン・アスカ」
若干の怒気を孕ませつつ……ついでに額に青筋を浮かべつつ告げて来るアスランに、シンは押し黙った。
「──アスラン」
「すまない、カガリ」
「はぁ……話を戻すぞ。
シン、君が何故戦闘中に意識を失ってしまったか分かるか?」
「何故って……それは」
何故だろうか……記憶を掘り返してみても、その原因はシンには理解できなかった。
目の前にいる彼等の言葉に血が沸騰したみたいに怒りに振れて。
彼が感情のままに叫ぶ声を聞いて。
そしたら、居てもたっても居られなくなって……
「──サヤ」
「はい。シン、貴方は恐らく、お兄様と同じなのです」
「ヤヨイ……どういう事だよ」
「ここに居るキラ・ヤマト。アスラン・ザラ。そして私も貴方も。戦闘中に至る不思議な感覚に覚えがあります」
「前に隊長が言ってたやつだろ? この2人も?」
「えぇ、そうです。寧ろ彼等はお兄様と同じく、その先駆者と言えます。私達と違い、ある程度は意識的に扱えるのですから」
「僕は実戦中じゃないと無理だけどね」
「黙っててくださいキラ・ヤマト。
そして、お兄様と貴方だけは────その領域へと、より深く入る事ができてしまうのです」
人が無意識的に制限を掛けている、脳領域の拡張。
制限が掛けられている脳の使用領域を意識下へと引き上げ、通常では考えられない速度で情報処理を行う。
Superior Evolutionary Element Destined-factor────通称“SEED”
そして、その意識化へと引き上げるその度合いを更に深くできてしまうのが、タケル・アマノとシン・アスカの2人というわけだ。
「以前にお兄様が言っていたように、あれは諸刃の剣です。脳への負荷が酷く、その度合いを深めれば貴方やお兄様の様に耐えられず意識を落とす。貴方に残るその頭痛は、これによる後遺症です」
「後遺症……」
言って、シンは未だ痛む頭を抑えた。
今まで不確かであった奇妙な感覚。その答えが見え始めこれまで抱く事の無かった未知の能力への恐怖を芽生えさせていた。
「シン、あの状態へ陥るのには心理的条件がある────嘗て俺が、敵を討つ覚悟を持った時に目覚めたように」
「僕が、大切な友達を守りたいと願った時の様に」
「サヤは────もう二度と、あのような結末は御免だと誓った時に」
それぞれが覚えのある、目覚めた時のきっかけ。
3人の言葉を聞き及び、シンもまた嘗ての記憶を反芻した。
初めての発現はオーブ沖での海戦。
強くなってきた。力を手にしてきた。その自負を打ち砕かれそうになった、絶体絶命の窮地の時。
新しくできた大切な場所。大切な人達────それを、二度と世界の理不尽に奪われるものかと。そう決心したあの日。
「俺はもう、大切なものを失いたくないって……ただ、そう思ったんだ」
だから、許せなかった。
壊れかけている彼に、鞭打つような彼等が。
自分を認め、救ってくれた彼が。壊れて消えてしまいそうな気がして、失いたくないと願った。
それが、シン・アスカに更なる扉を開けさせた。
「シン……やはり君は兄様を助けようとしてくれたんだな」
これまでとは違う、随分と優しい声音で、カガリは問いかけた。
「それは……だってそこの2人が言ってる事、正直ムカつきましたし……あの人の事、何も知らない癖にって……」
「それについては僕達も自覚してる。戦闘後に、カガリに凄く怒られちゃったし……」
「当たり前だ。あんなの、兄様の本心じゃないってすぐわかるだろ。なのに、2人して勝手に本気になりやがって……」
「ゴメン」
「すまない」
「あんた等、この人に全然頭上がらないんだな……」
男二人が鶴の一声と言う様でシュンとしょげているのを見て、シンは抱いていた怒りと敵意を随分と削がれる想いであった。
結局のところ彼等も、決して彼を敵だと思っているわけでは無い……それに気が付けたからであった。
そして、カガリが言い出した提案の意味も朧気ながら理解できた。
「はぁ……要するにあんた達は、俺にザフトを裏切ってあの人を連れ戻すため一緒に戦ってくれって────そう言いたいのか?」
「そう言う事だ」
「無茶苦茶言うなよ。俺はそこのアスランやヤヨイの様に、易々と自分の仲間を裏切るような事はしない」
「失礼ですねシン。私の本来の居場所はオーブです。それに私の場合ザフトを裏切ったのではなく追い出されたが正しいでしょう。文句はあらぬ嫌疑をかけたギルバート・デュランダルに言ってください」
「ぐっ!? そうかもしれないけど……だからと言ってそんな簡単に仲間を裏切れるかよ」
「では、ザフトに戻ると? ですがシンもデスティニープランには懐疑的なのではありませんか? 人が生きる道を遺伝子によって決める……シンもそれで、世界が本当に平和になるとは思っていないのでしょう?」
またも痛い反撃を喰らい、シンは小さく唸って押し黙った。
デスティニープランに懐疑的であったのは事実だ。
話を聞いたところでどんな世界となるかは想像つかなかったし、嘗てデュランダルに教えられた目の前の少女との遺伝子的究極の相性というのも依然としてシンの中で実感は無かった。
教えられても実感の湧かない遺伝子の力に、いったいどれ程人類を導く事ができるのか────シンには思い至らなかった。
「シン……兄様も含め、世界中で皆が議長による幻想を魅せられている。
この世界はこうであった。こうなってきた。誰かのせいで。誰がいたからと。皆に都合の良い現実だけを突きつけて、世界にデスティニープランを受け入れる態勢を、議長は此度の戦争で作り上げて来たんだ」
「何でそんな事が言えるんだよ」
「以前にサヤが言ったでしょう。あの人の言葉はこうあるべきだと。こうしなくてはならないと。彼の言う正しさを押し付けてくる。正しいかどうかなど、己の内にしかないと言うのに」
「そんな事──」
「サヤの言い方は少し語弊があるが。正しさを押し付けて来る、と言うのは事実だ。現に議長はプランに従わないものを人類の敵と断じている。これは正しい以外を受け付けない、随分と排他的なやり方だと言わざるを得ない」
「そうしなければ人類は変わらない……隊長だってそう言ってた」
「変わらないさ、人類は」
「っ!? あんた!」
カガリのどこか投げやりな言葉に、シンは思わず声を荒げた。
人類は変わらなければならない。変えなければならない。だから彼等は事を起こした。その根本を否定してしまうのか。
食って掛かろうとする前にアスランが割り込むも手で制して、カガリは続ける。
「デスティニープランがあろうとも、人が人で在る限り人類は変わらない。遺伝子が導いたところで……結局のところそれは、今のナチュラルとコーディネーターの問題の延長線にしかならない。寧ろ今度は人種としての別ではなく、遺伝子によって決まる優劣が優生思想を生むだろう。コーディネーターの中で千差万別な今の方が、まだマシなくらいだ」
「そんな……じゃあ、なんで議長はこんな」
「彼の思惑に、どんな先があるのかはわからない。だが、少なくとも今世界は議長に騙され、違う未来を夢見させられている」
「違う未来?」
皆が見ているそれが、議長の見据える未来ではないと言う事か?
シンは首を傾げた。
「不思議な人だよね……彼自身が世界を支配したい、とかならよっぽどわかりやすいけど。デスティニープランは、彼を王様にするようなものじゃない」
「議長が、王様?」
瞬間、少しだけ自分が知るよりも偉そうにふんぞり返るデュランダルがシンの脳内に幻視される。
似合わぬ光景にシンは頭を振った。
「タケルも、プランの歪さには気が付いているはずだ。それでも尚、議長と共に歩もうとしている」
「えっ、えっ?」
プランの歪さ? なんだそれは。まるで意味が解らない。
シンは惑いながら説明を求める様にアスランを見るも、既に彼は彼等だけの会話に夢中になっている。
「利用されていると考えるのが妥当でしょう。あの男は死にかけのサヤも、そうして利用せしめたのですから」
「は? 利用? 死にかけ?」
またも知らぬ情報がまろび出て来る。
シンの頭は既に情報の洪水状態であった。
「だが兄様はそんな簡単に利用されはしないはずだ。そもそもサヤの事を調べにプラントへ渡った時だって、最初は議長が怪しいと踏んで──」
「だぁああ! 待った! ストップ! ストップだ! 俺の知らない事ばかりで会話を続けるなって!」
論に熱が入り始めたところで、遂にシンの頭は限界を迎える。
ただでさえ急に一緒に戦えなどと言われて混乱していたと言うのに、話を聞いていれば次々とこれまで信じて来たものが覆されていく。
シンはじっくり考える時間が欲しかった。
「と、とにかく! あんた達の言いたいことは分かった。色々と俺が知らない事が沢山ある事も。だから、ちょっと考えさせてくれ」
「あ、あぁ……そうだよな。急な話だし、直ぐには決められないよな」
第一に、シンはまだ目覚めたばかりで一応は戦闘中に意識を飛ばした負傷者だ。まずは休養も必要だろう。
頭痛が残る頭で、冷静に物事を考えるのも難しい。
「時間はまだあります。色よい返事を、サヤは期待しますが、シンがミネルバの皆を裏切れないと言うのなら、その意思もまた尊重しますので、じっくり考えて下さい」
「あぁ、わかった。とりあえず少し1人にしてくれ……それと、後でまた俺の知らない話を聞かせてくれ」
「えぇ、勿論。貴方を篭絡する為ならどんな作り話もしてあげます」
「──はぁ、サヤ」
「冗談です。真に受けないで下さい、カガリ・ユラ・アスハ」
「時と場合を考えろ。そんな状況じゃないだろ」
「サヤとて不思議な程にどうしてもシンを相手にすると素直になれないのですよ……記憶喪失は、本当に厄介なものなのです」
「ん? それって──」
「へぇ、つまり記憶を取り戻す前のサヤは彼に──ふが!?」
余計な事を口走ろうとしたキラへ遂に、サヤの拳が突き刺さった。
「次余計な事を言ったら叩きのめしますよ」
「サヤ、それはもう叩きのめしているからな」
「ふんっ、失礼します!」
憤然とした足取りでサヤが退室していき、弁解する為にその後を情けなくキラが追う。
続いてため息と共にアスランが出ていき、最後にカガリだけが残った。
どこか意味ありげに残ったカガリに、シンは眉を顰めた。
「──シン・アスカ」
「な、なんだよ」
「兄様の事、助けようとしてくれて。本当にありがとう」
どこか寂しそうで。でもどこか安心した様で。少しだけぎこちない笑み。
今や世界の代表とも言える立場に居るカガリの、普通で年相応な表情に、シンは不意に心臓を跳ねさせた。
「べ、べつに……あんたの為じゃないし」
「あぁ、それでもさ。私にとって、兄様はなにものにも代えがたい、大切な人だから」
それじゃ、じっくり考えてくれ────そう言って、カガリは部屋を出ていった。
残されたシンは、その後姿を見送りながら、少しだけ早鐘を打つ自身の胸を抑えるのだった。
それから数日。
シンはサヤから様々を聞き及び、その果てで彼等に協力する事を決めた。
タケル・アマノがデュランダルに利用されているとはまだ思えなかったが、しかしデスティニープランが彼の本懐とならない事だけは見えたから。
このままいけば、彼は今よりもずっと後悔することになる────そう思ったのだ。
シン・アスカは彼等と共に、タケル・アマノを救いたいと願った。
「────シン、大丈夫かい?」
少し前の事を思い出し黙り込んだシンを、キラが覗き込んでいた。
「えっ、えぇ、あぁ。はい……別に何とも」
「疲れたかな? 体調もまだ万全じゃないのかもね。とりあえず調整もかねて休憩──」
「シン、手隙だったら相手してもらえますか?」
飛び込んでくる凛とした声。
その声音だけでわかる、バリバリにやる気全開なサヤ・アマノの登場である。
「デスティニーのデータができたのでしょう? なら丁度良い、あの日の借りを返してさしあげます」
まるで負ける気のない。勝てる前提の物言いに、シンもムッとして返す。
「あぁ、そういえばセイバーじゃ手も足もでなかったもんな。ん? でもそれはこの間も一緒だったか」
売り言葉に買い言葉。互いに気配は戦場でもないのに臨戦態勢。
ピクリと頬をひくつかせたサヤは、言葉を発さずにシミュレーターへと乗り込んでシンゲツのデータをロードした。
「そっちの機体、エネルギー設定は制限なしにして良いぜ。ハンデ無しだ」
「貴方こそ、データの調整をキラ・ヤマトに願い出なくて良いのですか? まだ不備があるのでしょう。どうせ結果は変わりません。そのくらいなら待ってあげます」
「はっ、必要ないね」
「では私も必要ありません」
ピッピッと音が鳴り、演習環境が設定されていく。
どうやら先日と同様、真っ新な宇宙空間がステージらしい。
あれよあれよという間に準備されていくエキシビジョンマッチに、
「ほえ面かきなさい」
「はっ、思い知らせてやる」
今ここに、運命の決戦が幕を開けた。
「あ、あはは……なんかサヤちゃん」
「随分ムキになってるね」
「私達にはとんと淡泊な対応なのに」
「へぇ、そうなんですね。じゃあやっぱり彼がサヤの……」
意味深な発言に、アサギ達はぐるりと視線をキラへと向けた。
「えっ?」
「やっぱり?」
「彼が?」
乙女の反応はえらく過敏だ。
何かを察知して鬼気迫る雰囲気を見せる3人に、キラは後ずさりした。
「え、えっと……三人共、どうしたの?」
「質問してるのはこっち!」
「シン君とサヤちゃんって」
「どんな関係なの? 教えて、キラ君!」
「えっと……その、なんでも……サヤとシンはどうやら」
「「「きゃあああああ!!!!」」」
熾烈な戦いを繰り広げる2人の背後で、酷く黄色い悲鳴が湧きあがるのであった。
ちなみに、黄色い悲鳴で肩を震わせた2人は揃いも揃って互いの射撃兵装を喰らいダブルノックアウト。
何とも締まらない決着を迎え、その原因となった彼女達は非難轟々となったそうな。
おまけ
「うぉおお!」
「ふんっ、相変わらずの無謀な突撃────芸の無い!」
「突撃癖は隊長直伝だ!」
「貴女のは唯の突撃。お兄様の洗練された機動とは似ても似つかない! 片原痛いです!」
「言ってくれる! ヤヨイの方こそ、隊長に鍛えられた癖に動きにキレが無さ過ぎるんだよ!」
「ただ早く動けばいいわけでは無いと判らないのですか? あぁ、シンはそう言う考え無しでしたね!」
「そう言うヤヨイは余計な事ばかり考えて、動き出しが遅れるもんな!」
「なにぃ!」
「このぉ!」
「あいつ等、随分と仲が良いんだな」
「良い事だろ。サヤはずっと、兄様兄様と他人に興味を示さなかったし」
「なるほどな……あぁしてムキになれることが、つまりは近しい人って証か」
「そう言う事さ。兄様が知ったら切れそうだけど」
「今のアイツにはそんな余裕もないだろうさ」
「今なら私とお前の事も、認めてくれるかもしれないぞ」
「バカを言うな。俺はそんなずるいやり方で、あいつに認めてもらおうとは思わない────ユウナにも、申し訳ないし」
「ん? 何か言ったか?」
「いいや、何でもない。ただ、ユウナに報いるためにも、俺達は頑張らなきゃなって思って」
「アスラン────あぁ、必ずな」
おまけpart2
「貴女達は、人が真剣に戦っている後ろで、何をふざけた声を挙げて──」
「サヤぁ!」
「ひっ、あ、アイシャ!?」
「うーん、全然エターナルに会いに来てくれないから来ちゃったわ。それじゃ、早速」
「ちょっ、何を、やめっ?! あっ、ひゃっ、んっ……んひっ!?」
「…………」←いつだかの何かを思い出して悶絶するシン
「あれ、シン? どうしたの?」
「な……なんでもないっす。とりあえずデータの調整お願いして良いですか。あと、おわったら模擬戦の相手も」
「うん、勿論」
「だったら俺も相手してやるぞ、シン」
「いや、アスランは良いです」
「むっ、何故だ?」
「あんたとやっても真っ向勝負過ぎて隊長との戦いの参考にならなそうですし」
「なんだよそれは」
「ちょっと分かるかも……アスラン君の戦い方って、戦闘というよりは、決闘っていうか。1対1に特化してるのよね」
「う~ん、そう言われると確かに。アスランってイージスに乗っていた時もそうだったけど、周りに意識を割くと途端に弱体化するというか……」
「それは……あの頃は味方が少し勝手が多いと言うか、心配というかだな」
「余計な事考えず、己と相手のみの戦いなら、本当に尋常じゃないんだけどね────僕も殺されかけたし」
「えっ!?」
「はぁ!?」
「キラ……それはジョークにしてもブラックすぎるからな」
「サヤとシンはどうやら運命の赤い糸で結ばれてるとかなんとか」
「きゃあああ!!!」
これが流れ。勿論このあとサヤに締められるしシンはショックを受ける。
悶絶するシン←記憶に無い知り合いの女の子達の絡み合うシーンが脳内に想起された。(幕間参照)
最近陰鬱なやり取りも多かったので、少し楽しげなやり取りを。
シンの離反は助けたいもそうだけどデスティニープランに懐疑的であったことも大きいです。
感想、どうぞよろしくお願いします。
この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!
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タケル&ユリス
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キラ&アスラン
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シン&サヤ
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イザーク&ディアッカ
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ミゲル&ハイネ
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タケル&キラ(SEED編より
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ラウ&ユリス(SEED編より
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アサギ&マユラ&ジュリ