機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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110かぁ、、、完結は130くらいかな


PHASE-110 火の手は上がる

 

 

 その日の映し出される空模様は、生憎の曇天であったが、対照的に彼女────サラの気持ちは晴れやかであった。

 

 

 仕込みは上々。

 監視窓から見下ろす先では、少女達が何ともなしに戯れながら、待ち人が来るのを今か今かと楽しみにしている姿が見える。

 それを見てサラも、今か今かと待ちわびた。

 

 厳重監視であった少女達が、漸く手にいれた外出の機会。

 これから来る知人等の護衛監視の下でなら、コペルニクスの街へ出歩いても良いとのデュランダルからの許可が下りたのだ。

 ここにきてから暫く缶詰め状態であった彼女達からすれば、漸く本当の意味での休暇と言う所だ。

 煩わしい視線と警備からも解放されて、見知った仲の者達と心安らかに楽しめる時間が訪れるのである。

 

 それを想ってか、実に晴れやかな表情が伺えた。

 

 

『サラ、そろそろそっちに着く頃合いだ』

「了解よ。各員所定の位置で待機。指示があるまで待て」

『OK、ボス』

 

 

 都市内の監視システムは把握済み。モニターが並ぶ一室で待機している仲間からの通信であった。

 ミッションスタートのカウントダウンである。

 

「あぁ、漸くよ……漸く、この退屈な任務ともオサラバね」

 

 待ち遠しいと声が上擦る。

 それをどうにか押し殺して、階下へとサラは降りていく。

 邸宅へと予定通りの来客が来た報せが飛んできていた。

 

 

「精々華々しく散って頂戴────偽りの歌姫様」

 

 

 

 悪意は、静かに動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、何で俺が買い出しなんか行かなきゃいけないんだよ!?」

 

 

 搭乗用のハッチが開かれ、眼前にはシャトル発着場の喧騒が広がる中。シン・アスカは己の想いの丈を叫んだ。言葉の通り大した想いの丈では無い。

 

「仕方ないでしょう。皆やる事が多い中、パイロット組は有事以外では基本暇なのですから」

「そう言う事じゃないっての! 俺はちょっと前までヤヨイ達に敵対してたんだぞ! おかしいだろ!?」

 

 身振りも含めてシンが訴えて見れば、相手となっていた黒髪の少女サヤ・アマノは、そう言えばそうだった。今気が付いた。と言わんばかりに目を丸くして見せる。

 

「すっかり忘れていました。貴方が余りにもキラ・ヤマトに懐いていたものですからつい……数年来の友人くらいの感覚で扱っていました」

「懐いていたって、なんだそのペットみたいな扱いは!?」

「だって、その……貴方は犬の様なのですよ。元々ミネルバでも狂犬と謳われていたではありませんか。懐いた貴方の姿はさしずめ忠犬と言うところで……」

「あ、あはは……サヤ、流石にそれは」

 

 犬扱いされて憤然とするシンに、キラは苦笑いだ。

 確かに先日から彼とは仲良くやっている自覚がキラにはあった。シミュレーションでデスティニーのデータを再現した事や、それを用いての模擬戦相手になっていくうちに距離感が縮まったものとキラは受け止めているが、それにしても良く尋ね、良く訊いて来る。

 そこには強くなろうとする明確な意思が見え隠れしていたが、その矛先がきっと親友に向いていると言う事をキラは理解し、故にシンの声にはできる限り耳を傾ける気持ちであった。

 

 シンとしても、そんなキラの対応がミネルバに居た時のタケルとのやり取りを彷彿とさせ、自然と角が取れ素直な対応となっていたのだ。

 サヤの言葉も頷けると言えば、頷ける。

 

「くっ、ヤヨイお前──」

「ストップ。おしゃべりはここまでです、シン」

「あ? 何が──」

 

 前のめりとなっていたシンを手で制して、サヤは視線をハッチから延びるタラップの先へと向けた。

 シンが追いかける様に視線を向ければそこには、こちらへと向かってくる3人組の姿が。1人は目深に被ったフードで顔を隠し、その後ろに浅黒の肌の男を2人引き連れている。

 明確にこちらへと向かってくる気配に、シンは確認する様にキラ達を見た。

 サヤはどこか不服そうに。そしてキラは────これでもかと言わんばかりに、嬉しそうな笑顔を見せている。その反応に、シンの疑問は更に増えた。

 

 迎えに行くようにキラがタラップを降りていき、シンもサヤとそれに続く。

 降りた先で3人組と顔を合わせれば、目深に被ったフードの人物は随分と綺麗な顔立ちをした女性だとわかった。

 

「お待たせして申し訳ありません。キラ、サヤ。後ろの御二人がここまで来るのにも護衛は必要だと、1人で行かせてくれなかったもので」

「そんなこと言うけどねぇ……1人で行かせたら後でキラに小言を言われるのは俺なんですよ、お姫様。その上、タケルの奴に似て来たのか訓練と称して変なおしおき計画を立てて来るんだもんなぁ」

「そして僕はその後、隊長に長々と愚痴を聞かされるんですよねぇ……」

「いやそんな、僕は別に……」

 

 つまり、巡り巡ってキラ(あんた)のせいじゃん────と、シンは思わなくも無かった。

 

「全く、自分の立場もわきまえず無茶をさせてくれます。彼女はコペルニクスに来たのが初めてなので、街で少し息抜きをさせてあげたいなどと……付き合わされる私達の身にもなって下さい。そうは思いませんか、シン?」

「えっ? あ、いや……そんな事聞かれても……って言うか立場ってじゃあこの人」

「えぇ、そうです。今日は彼女とキラ・ヤマトのお忍びデートを護衛する為に、私達も駆り出されたという訳です」

「ちょっ、サヤ! その言い方はシンに印象悪すぎるって!?」

「何か違うのですか?」

「いいえ、違いませんわ────御二人とも、私の我儘で申し訳ありません。ただ、どうしても艦内暮らしが長かったもので、すこしでも息抜きをしたくて」

 

 目深に被ったフードから、目の前の女性がお忍びで出かけようとしている事は直ぐに理解できた。そして、彼女が誰なのかも。

 カガリ・ユラ・アスハは既にアスランとキサカを連れてコペルニクスの都市代表との会談へと赴いている。彼等の身内でその他の重要人物など、シンの足りない知見でも直ぐに想像がついた。

 

 顔が起こされ、まっすぐとシンを見つめるは蒼白の瞳。

 微かに見え隠れする桃色の髪に、シンの予想は確信へと至る。

 

 

「貴方の事はキラとサヤからきいております、シン・アスカ────初めまして、ラクス・クラインです」

 

 

 シンはこの日、カガリに続いて二度目となる胸の高鳴りを感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あっ、ユリス!!」

 

 開口一番。否、邂逅一番。

 ユリスの姿を認めた瞬間に飛びついて来るステラを抱き止め、ユリスは彼女にしては珍しすぎる程に柔らかな笑みを浮かべた。

 

「ふふ、ステラったら相変わらずね。それにアウルとスティングも、元気そうじゃない」

「まぁね」

「のんびりさせてもらってるぜ。お陰で身体が鈍って仕方ねえ」

 

 我が子をあやす様にしてステラを撫でつけながら、向かいに居るアウルとスティングとも言葉を交わす。

 その声音に普段ならある棘は無く、ミゲルが散々見せつけられたはずの彼女の知らない素顔がそこにはあった。

 

「(あいつ……周囲を威圧する様な目つきじゃなきゃマジでタケルにそっくりだな。髪が長いことくらいしか違いがねぇじゃねえか。つーか何だその顔、そんな表情(かお)もできんのかよ)」

 

 これまでミゲルが見て来た彼女は悪辣にして苛烈。

 戦場では悪鬼と恐れるに相応しい残忍さを持ち、理不尽とも言える程の戦いで敵を蹂躙する。それがミゲルの知るユリス・ラングベルトだ。

 だが今目の間に居るのはどうか。年の頃もタケルの1つ下で17歳。その辺に居る普通の少女と何ら変わらない。

 

「──ミゲル。何女の子同士が抱き合ってるのを見て鼻の下伸ばしてるのよ」

「いぃ!? ばっ、ちげえよミーア。何言ってんだ!」

 

 隣から届く冷ややかな声に、思わずミゲルは慌てて自身の目的である桃色の歌姫を見やった。

 みるからに膨れっ面────漸くの再会と相成ったと言うのに、大切な相手が明後日の方向を向いていた事で、お姫様は大層お冠である。

 

「ふ~ん、どうだか。確かにステラちゃんは可愛いものね。あっちの人も綺麗……あれ? あの人、ラウラさん?」

「あぁ、滅茶苦茶似てるけど、ややこしいからあんまり気にするな。アイツはダチ公の双子の妹だ」

「双子の妹さん? どうりで」

「んな事よりこっちはどうだった、ミーア? 少しはのんびりできたか?」

 

 ミゲルの問いに、ミーアは先程までの膨れっ面を呼び戻しまたも彼へと目を細めて睨みつける。

 

「分かってて言ってるでしょう? こんな所で、こんな警備態勢で……のんびり何かできるわけないじゃない」

 

 何なら自身の境遇もあって気の休まる暇さえないと言えた。彼女は現在、ギルバート・デュランダルとラクス・クラインの名前に纏わりつく様々に絡めとられ、命の危機にあってもおかしくない状況なのだ。

 

「あ、あぁそうだったよな……悪い悪い。だから俺達が来たんだもんな」

 

 

 

 

 

「皆様、車の方は用意ができてます」

 

 

 再会を喜ぶ彼等に分け入る様に、警備の声が入って来る。

 目を向ければそこには用意していたと思われる黒塗りの車があった。

 恐らくは装甲も十分な耐久力を持つ要人用の車だろう。それが必要だとはわかっているが、ミーア達の扱われ方が見える様であった。

 

「本日はドライバーを我々の方で用意してあります。行先は彼にお申しつけを──」

「お断りよ」

 

 全てを言い終わる前に、ユリスはきっぱりと突き付けた。

 

「なぜでしょう?」

「分からないかしら? そんな車、狙ってくれと言っている様なもの。それに、どこの誰が用意したかもわからない車に、歌姫様を安易に乗せられるわけ無いでしょ? その車に発信機や盗聴器の類、更には爆薬でも仕掛けられてたらどうするの?」

「そんな事は有り得ません」

「何故言い切れる? 貴方が車を解体して全部確認でもした? 不可能よね。私達が今日ここにきて、この子達と外出する事は予定されている……つまりは格好の狙い時よ。用意されたもの全てにどんな悪意が紛れ込んでいるかわからないわ。自ら棺桶に入るなんて愚行はしない。車が必要なら自分達で調達する────良いわよね、ミゲル・アイマン?」

 

 先程までとは打って変わって、ミゲルが良く知る彼女の顔であった。

 周囲を睥睨するその瞳は、何者も信じないと言わんばかりの敵意に塗れ、唯一この中で信用しているであろうミゲルをも威圧せんばかり。

 彼女の気配に呑まれかけながら、ミゲルは静かに肯定を示した。

 

「あぁ、俺もお前に賛成だ」

「しかし、それでは我々の役目が──」

「くどい。今日の貴方達の役目はここで大人しく私達の帰りを待っている事。或いは有事の際の呼び出しに迅速で対応する事よ────漸く降りた外出許可。今日くらい、この子達から不躾な視線を外して頂戴」

 

 否の答えを許すつもりのないユリスの言葉に、警備の者達は押し黙った。

 それを肯定と受け取りユリスは不適な笑みを浮かべる。

 

「ご理解頂けたようで何より」

「だがよぉユリス、本当に良いのか? 俺達は別に構わねえけどよ……あっちの姫さんは」

 

 スティングが懸念を漏らす先────あれよあれよという間に己を守る壁がぶち壊されて不安を覚えるミーアの姿があった。 

 

「何の為に私達が居ると思ってるのよ。お姫様の護衛はここに居る5人、十分じゃないの」

 

 身体が鈍って仕方ないなら丁度良いでしょ? そう付け加えて、ユリスはスティングを見やった。

 どうやら彼女は、護衛の仕事を彼等の運動不足解消に当てるつもりのようだ。

 戦闘時以外では大人しいステラはともかく、アウルやスティングは思わぬ荒事の気配に僅か気持ちを上擦らせた。

 

 平穏無事に過ごしていたとしても、やはり染みついたこれまでは消えない。ユリスは彼等に平和な人生を送ってもらいたいと願っているが、それが彼等の幸せ絵に繋がるとは微塵も思っていなかった。

 彼等は一度、兵器(エクステンデッド)として仕上げられてしまっているのだから────言うなればこれは護衛任務と言う名の戦いでもあるわけだ。

 

「という訳で歌姫様。本日は私達が貴女の護衛させてもらうわ。その辺の有象無象より余程できるから安心して頂戴」

「こりゃまた豪勢な護衛だな。良かったじゃねえかミーア、今日一日安心だぞ」

「これ、本当に安心して良いの? むしろ不安なんだけどぉ」

「何よ、何が不安なのよ?」

「ばぁか、いきなり護衛対象に噛みつくお前が一番の不安要素なんだよ」

「はぁ? どこか噛みついてるって!」

「そう言う所だばぁか」

「あんたねぇ──」

「あぁ、もう良いから早く行こうぜ。相変わらずめんどくさいなユリスは」

「ちょっと、アウル!? めんどくさいって何よ! あんた誰のおかげで──」

 

 

 

 こうして余計な警備を振り解いた姫と5人の護衛達は、コペルニクスの街中へと繰り出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェル艦内、格納庫にて。

 

 最近はもっぱら……否、この格納庫が忙しくない時などこれまで片時も無かった気がするが。

 それにしても忙しいと言える状況に、コジロー・マードックは大きく息を吐いた。

 

 眼前に聳えるは暗夜を思わせる深い濃紺の鏡面装甲。サヤ・アマノが駆るMSシンゲツである。

 先の戦闘で損傷を受けたシンゲツはコペルニクスでの物資補給を受け本格的に修理が施される事となっており、その準備中だ。

 恐らくはエターナルでもフリーダムの修理が急ピッチで進められているだろう。

 

「こっちはまだ良い。だがあっちはまぁ……派手にやられたなぁ、少佐」

 

 もう一方に目を向ければ、白銀に輝く鏡面装甲。ネオ・ロアノーク改め、ムウ・ラ・フラガが乗ったシロガネである。その姿たるや、惨憺たるものである。

 タンホイザーの直撃を防いだことでビャクライユニットは大破。その衝撃で本体の内部フレームにもガタが来ていたのだが、更にそこへ機体各所を貫いたtype-Lのライソウ。

 見るも無残な状態へと様変わりだ。

 

「予備パーツはオーブを出る時に積んできたが……こりゃすぐには作業が終わらんなぁ。んでおまけに──」

 

 更にもう1つ、マードックは視線を巡らせる。

 アークエンジェルに置く予定だったのは本来であればシンゲツとシロガネのみ。オーブを発つときに載せて来たフリーダムとジャスティスはエターナルだし、アイシャ用のルージュもそちらに運ばれている。

 だが、そこに鎮座する招かれざる客。両腕を失くした大きな翼をもつ機体────ZGMF-X42Sデスティニー。ザフトが生み出した、最新鋭機である。

 

「技術体系はフリーダムとかと同じだから応用は聞くが……にしたって手が足りん。ったくなんだってここは色んなところの機体がこうも集まってくんだぁ?」

 

 2年前、元は地球連合軍の最新艦であったアークエンジェル。

 当時から新型のMSストライクの他に、連合の主力であったメビウスの系譜メビウス・ゼロ。そしてタケルが乗ったアストレイに、砂漠で調達したジンなど、様々なものが格納庫に舞い込んできていた。

 その後は帰ってきたキラが乗ったフリーダムやジャスティス。ディアッカが乗るバスター。ヤキンの戦いでは一時的にイザークが乗っていたデュエルも迎え入れている。

 古今東西、恐らく類を見ない程に多様な技術体系に触れて来た格納庫。それが、アークエンジェルの格納庫であり、整備長コジロー・マードックである。

 

 そして此度。

 純オーブ製ハイエンド機シロガネ。ザフトの純正最新鋭機デスティニー。一番厄介な、ターミナルによって生み出されたオーブとザフトの技術を用いたハイブリッド新鋭機体シンゲツ。

 

 いい加減にしろと言いたい。せめて積載する機体の技術体系は統一して欲しいと、マードックは叫びたい気持ちである。

 多様な技術のオンパレード、技術屋としては最高の環境だ。マードック自身この現状には嘆くと同時に楽しんでいる節はある。

 しかしそれでも────忙しすぎる。

 

「こんな時、あんたが居てくれたらよぉ……アマノ二尉」

 

 思い浮かべる嘗ての光景。

 自身も戦闘で一杯一杯だと言うのに、自分の機体は徹底して自ら調整し。メビウスもストライクも、必要な作業にはとことん手を出して。

 パイロットとして居ながも、格納庫で整備班と共に居た時間の方が余程長かった彼。

 自分の機体の為なら自ら作業着を着こんで、整備作業に没頭するその姿勢は、マードックの中に印象強く残っていた。

 全ては戦いに向けて万全な体制を整え、大切な妹を守るためであったのは間違いないが、その為に見せられた彼の背中は、整備班の皆にとって酷く眩しく見えるものであった。

 

 彼が今ここに居れば、きっと嬉々として機体に手を付け始めるのだろう────そう思ったらなんだか、先程までのうんざりとした気持ちを消え失せていく。

 

「はぁ────ヨシ! とりあえずシロガネは後回しだな。まずはシンゲツからだ。アマテラスに居るシモンズの姐さんと連絡を取ってそれから──」

「よぉ曹長、っともう曹長じゃねえか。久しぶりだな、マードックさんよ」

 

 びしっと気合いを入れて作業に取り掛かろうとしたところで、不意に背後から呼ぶ声にマードックは振り返る。

 

「フラガ少佐……っと、少佐ももう少佐じゃねえですか」

「あぁ、いいって別に。好きに呼んでくれ」

 

 ムウ・ラ・フラガ。久方ぶりに帰ってた戦友のご登場であった。

 

「んじゃ、どうしたんですかい少佐? 言っておきますがシロガネは後回しですよ……こんな派手にやられちゃねぇ」

「そんな言うなって……あいつが相手だったんだぜ? バラバラにされなかっただけマシじゃねえか」

「敵わない事なんて分かってたでしょうに。その結果がアレじゃないですか。こっちの仕事を増やさんでくれ」

「それも言わないでくれって。あいつのあんな姿……見捨てておけるかよ」

「まぁ、それもわかりますがね……」

 

 ムウとマードックは2人したボロボロのシロガネを見やった。

 

「副長は、行ったよ────プラントへ」

「そうですか。あの人らしからぬくらい、ゾッコンってわけですね」

「あぁ……全くあいつは、鬼の副長をよくもあぁまで骨抜きにしたよな」

「少佐は知らねえでしょうが、あの人は元来優しいひとですよ。俺らも、体調には気を遣えと口煩く言われたもんでさぁ」

「ははっ、なるほど。艦の厳しい状況に、皆の前では心を鬼にする必要があったってことね」

「逆を言やぁあの人がらしさを捨てる必要があるくらい、アマノさんがヤバいって事なんじゃないですかねぇ」

「あぁ、そうだろうな」

 

 マードック等整備班も、戦闘はモニタリングしていた。

 事の顛末と、届いた通信音声も、彼等は聞き及んでいる。

 

 戦艦に居ながら、無邪気に、思うがままにMSを弄繰り回す。本来であれば根っからの技術屋である少年の笑顔が。

 そして、戦闘後は事あるごとに死んだような顔をしていた少年の顔が。

 まるで昨日の事の様に、鮮明に思い出せた。

 

「あいつが今、一体何を想って戦ってるのか────そいつが俺には、想像もつかないんだ」

「わかりませんね。ただ……まぁ、良い気持ちじゃあないでしょうよ」

 

 良い気持ち。抽象的なマードックの言葉に、ムウは様々な捉え方で読み取った。

 

「良い気持ちじゃない……か。そりゃそうだろうな」

 

 少なくとも、ムウが知る彼は心弱くも折れない男だった。

 父を喪い、国を失い。重すぎる責任に押しつぶされそうになっても────最後まで、必死に戦い抜ける男だった。

 

 それが、先日。全てを覆される姿でムウの前に現れた。

 不快、絶望、憎悪、諦念、自棄────様々な負の言葉が、彼の姿を見て脳裏に浮かんでいく。

 そしてそれらを思い浮かべた先で、ムウはある男を想起した。

 

 ラウ・ル・クルーゼ────嘗ての宿敵の名を。

 

 感情の発露は違うが、彼から受ける印象はラウ・ル・クルーゼそのものだ。

 ムウの胸の内には静かな焔が灯された。

 

「曹長、大変かもしれないがシロガネも頼むぜ。俺はもう一度、戦場であいつと相対しなきゃならなくない」

「まぁ。勿論やりまさぁ……その代わり、次は負けんでくださいよ」

 

 了解だ────そう言い残して、ムウはその場を後にした。

 

 

 

 擦り切れてしまった彼の今。これはきっと過去からの楔だ。

 ムウは、そう思えてならなかった。

 

 

「あの野郎の妄執が今も残ってるってんなら、今度こそ俺が──」

 

 

 2年前に届かなかった手……今度こそはと、ムウの気持ちは逸るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目立つ桃色の髪を束ねて帽子に隠したミーアを引き攣れ、コペルニクスの街へと出た一行。

 

 何の気兼ねも無い、穏やかな休日の始まりであった。

 

 ミーアが年頃の女の子らしく大通りでウィンドウショッピングを楽しんだり、気に入った店に入ってはユリスがステラを着せ替え人形にしたり。

 後には小さな喫茶店に入ってデザートパフェに舌鼓を打つミーアとステラを見て、どちらが可愛いかと水面下でバトルをする2人がいたとか。

 

 他にも、人目を憚らずに誰でも好きな歌を歌えるカラオケなるお店に入り、ミーアとミゲルが仲良くデュエットしていたりとか。

 彼等は年相応のらしい休日を楽しんでいた。

 ちなみにこの時、部屋から聞こえるその類稀なる歌声に店内から人が集まり、大慌てで一行は店を後にした事を追記しておこう。ユリスはこの事態に大笑いであった。

 

 

 そんなこんなでお昼時となり、一行は見晴らしの良い通りのレストランで食事をすることに。

 ミーアの歌声が気持ちよかったのか、カラオケ以降妙に懐いたステラを、妹ができたみたいとミーアが甘やかす新たな関係性も芽生えつつ、5人は静かに食事を楽しんでいた。

 

「それにしてもミゲルには驚かされたわ。貴方、随分と歌が達者じゃない」

「ザフトに入る前にダチとちょっとな……昔取った杵柄って奴だ」

「全然そんなレベルじゃないわよ。もったいないわね……そんなに歌えるなら今頃売れっ子だっただろうに」

「その道は無くも無かったが……まぁ、丁度その時にユニウスセブンの1件もあってな。お陰で今や特務隊入りさ」

「物好きねミゲル・アイマン。わざわざ戦争に駆り出される道を選ぶなんて。普通ならしないわよ」

「普通じゃねえんだろ。それだけさ」

「でもそれなら! 平和になった時にはそんな道を選んでも良いわよね? ね、ミゲル?」

 

 前のめりになってせっついて来るミーアに、ミゲルは僅か後ずさりだ。

 

「な、なんだよミーア。随分その話に積極的じゃねえか」

「だって絶対成功するもの! ずっと歌手を目指してた私が言うんだから間違いないわ。声、歌、何より貴方は人を惹き付ける何かを……貴方は必要なものを全部持ってる!」

「ちょっと歌姫様。あんまり勢いついて人目を引かないでよ。一応私達、お忍びで街に出て来てるのよ」

「それに俺は今の仕事を辞めるつもりねえしな。ミーアが俺を買ってくれるのは嬉しいが、だからと言ってな」

「そう──」

 

 見るからにしょげるミーアを、隣でステラがよしよしと撫でつける。どうやら知らぬ間に少女は少しだけ大人になっていたらしい。

 

 

 

 

 

『ボス、連中は仲良く食事の真っ最中だ』

「えぇ、見えているわ」

 

 気取られぬ様、随分と距離をとったビルの上から、サラはターゲットを監視していた。

 和気藹々と、年相応の素顔を見せる少女を。

 これまでマネージャーとして共に居たサラには見せた事のない素顔がそこにはあった。

 

「中々可愛い顔で笑うじゃない。お姫様」

 

 専ら後ろ暗い仕事の多かった彼女に任された、ミーア・キャンベルのマネージャーと言う職務。

 有名になった子供のお守りかと、良くある話に乗り気ではなかったが、議長の頼みとあれば断れるはずもない。

 責任の重い仕事を請け負う少女には、同性の理解者が傍に居た方が良いだろうと言うのは、デュランダルたっての配慮であった。

 

「でも、もうそれも終わりよ」

 

 静かに、サラは合図となる指示を飛ばす。

 目標はレストランでの食事を終え、店から出てくるところであった。

 

 

 

「貴方はもう────議長の御傍に立てる存在ではなくなったのだから」

 

 

 

 悪意は、静かにその刃を振り下ろした。

 




歌が達者(ガチ勢
ミアステとか新境地過ぎないかね?
胸キュンするシン←仕方ないね。超絶綺麗な女性が目の前に出てきたら健全な青少年はそうなる。
サヤも容姿だけ言えばラクスと同じレベルなんだがいかんせん距離感がね、、、同い年で軍学校同期だし。

そんなわけで早速動き出すコペルニクス事件。
次回をどうぞお楽しみに。
感想よろしくお願いします。

最近感想以外からのお小言多くてしんどいよもう。
あ、展開のせいですか、そうですか、、、ごめんよ

この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!

  • タケル&ユリス
  • キラ&アスラン
  • シン&サヤ
  • イザーク&ディアッカ
  • ミゲル&ハイネ
  • タケル&キラ(SEED編より
  • ラウ&ユリス(SEED編より
  • アサギ&マユラ&ジュリ
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