機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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アタフタする回
キャラ背景捏造注意


PHASE-111 復活の狼煙

 

 

 よくある話だ。

 

 

 

 それはまるで、自身を御する為に吐き出された言葉であった。

 

 

 

 良くある話だった。

 まだまだ未完成なコーディネーターを生み出す技術。その先で生まれた、コーディネート通りにできなかった子供────それがサラである。

 

 裕福な家庭で両親の夢と希望を載せられ、生まれたと同時に施設に捨てられ、親の愛を知らぬまま幼少の頃を過ごす。

 遺伝子操作と言う両親の欲望に塗れた彼女は、同世代の子等とはまるで違う異質な存在となり、容姿に優れ文武に優れた……彼女がコーディネーターとしてナチュラルの者達から疎まれる様になるまで、さしたる時間はかからなかった。

 

 良くある話だった。彼女の周りでは他に聞かなかったが、ニュース他様々で地球圏では取りあげられ、偉そうな学者がご高説のコメントを垂れるのをよく聞く。少なくとも地球圏では既に、極々ありふれた話である。

 

 そうして彼女が年頃を迎えるころには、コーディネーターらしい歪んだ自我を形成しており、親も、友も、無論愛する人もおらず。

 自身の能力だけを頼りに、彼女は生まれ故郷を捨てプラントへと移住した。

 

 だが、その先でも彼女の苦難は続いた。

 所詮は井の中の蛙。コーディネーターの総本山であるプラントへと移住すれば、彼女はプラントに多くいる十把一絡げに過ぎない。

 地球では特別であったアイデンティティーは失われ、彼女は平凡と言う言葉に上塗りされた。

 

 これもまた、良くある話だ。

 地球から移住してきたコーディネーターが、プラントで現実を突きつけられるのも。そうして打ちひしがれて、墜ちていくのも────本当に、良くある話だった。

 

 

 

「────君は中々面白い可能性を秘めているね」

 

 

 ちょっとした厄介事で警務部隊の世話になり、少し大きな病院へ検査入院をしたときの事であった。

 担当医が伴だってやって来た、長身痩躯の男。

 医者の癖に随分長い髪だと訝しんだサラに、彼は先の言葉を投げかけて来た。

 

 訊けば遺伝子学の権威で、たまたま病院に訪れていたそうだ。

 

 

「私の所へ来る気はないかい? 君が成すべき……いや、君に相応しい仕事を与えてあげよう」

 

 

 それが、彼女の運命の出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めに違和感に気が付いたのはユリスであった。

 

 レストランを出て通りを歩こうとした瞬間、彼等の目の前へ不躾に車が止まり、中からスーツ姿の男が通話中のまま出て来た。

 運転中であったのならサングラスをかけてるのは頷けるし、強い剣幕で通話していた為、車を停めるのも理解できる。

 しかし、出て来た男は通話しながら、彼等とすれ違う様にスタスタと歩いて行ってしまった。

 

「(待って、今の男──)」

「ユリス!!」

 

 違和感に振り返るより先に、本能的に身体が動いた。

 彼女と同じく機微に察知していたステラがレストランのドアを蹴破り、ユリスはミーアを抱えるとレストラン内のテーブル席の奥へと放り込んだ。

 

 

「伏せなさい!」

 

 

 瞬間、閃光が爆ぜる。

 周囲に大きな衝撃と音をまき散らしながら、件の車は大きな爆発を起こすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月面都市コペルニクスの観光地区にて。

 キラ、シン、ラクスにサヤの4人は、諸々の買い出しを進めながらとある衣裳店へと足を運んでいた。

 

 

「あのぅ……キラさん?」

「ん? なに、シン?」

 

 

 何だろうと、首を傾げる年上の男性が妙に幼く見える今日この頃。

 シン・アスカは絶賛、羞恥の最中に居た。

 何故なら彼等が今いる場所は、婦人服売り場なのだから。

 

「俺達……ここに居ていいんすか?」

「だって、ラクスからここに居てくれって言われたし」

 

 試着室の目の前。当然、婦人服売り場にある試着室となれば周囲は女性で固められている。

 刺々しい視線が、己を全周包囲している気がして、シンは肩を縮こまらせた。

 

「(くっそぅ、何で俺がこんな……というか、キラさん何で全く動じてないんだよ)」

 

 “だからあんたはガキなのよ”と脳内で赤髪の少女にバカにされた気がしなくもなくて、シンは負けるかと頬を叩き気合いを入れ直す。

 一体何と戦っているのか……キラはシンの隣で再び小首を傾げた。

 

 そうこうしている内に、目の前で試着室のカーテンが開かれる。

 

「キラ、どうですか?」

 

 目の前に現れるは絶世の歌姫が自ら選んだコーディネート。シンは目を見開いて視線を釘付けにされた。

 良い──これまでの清廉潔白を漂わせる印象から一転。少し活発さを取り入れつつも彼女のお淑やかさを殺さない見事なコーディネートである。

 

「うん、良いと思うよ」

 

 ちょっとまてぇ! と、シンは声に出さずキラへとツッコんだ。

 何だその淡白な答えは! もっとこう、色々とあるだろう? 少なくとも自分が知るラクス・クラインとは似ても似つかない、大変身が目の前で行われたと言うのに、その感想がそれか!? 

 

「では、キラこちらはどうです?」

「うん、良いんじゃないかな」

 

 2着目は少し露出が増えてスカートや肩口の見えるトップス等をチョイス。しかし、これにもキラ・ヤマトは動じない。

 先程と似たような……いや、もはや同じだろう。淡白すぎるコメントを返し、ラクスが端正な顔を顰める。

 

「なんだか、どうでもよさそうですわね?」

「えっ、いや……そんな事は」

 

 ほら見ろ、声には出さなかったが言わんこっちゃない。

 女の子は面倒な生き物なのだ。自らの変化には良く、敏感に反応してもらえないと拗ねるのだ。

 アカデミー時代はヴィーノやヨウランと共にホーク姉妹の買い物に1日連れまわされて、散々学ばされたものである。

 細かなアクセサリー1つ。布柄やデザインの1つ1つにすら、いちいち似合うかどうか感想を求められるのだ。

 それを踏まえれば、キラ・ヤマトの対応は0点どころかマイナスへ天元突破である。やんわり苦言を呈されるだけまだマシだ。これがホーク姉妹や今ここに居る彼女であれば……

 

「キラ・ヤマト。この服はどうでしょうか? サヤには少し露出が多いですが、お兄様を射止めるにはこのくらいの大胆さも必要かと愚考するのですが……」

「ぶっ!? なんて格好してるんだよサヤ! 確かに可愛いとは思うけど、そんなに短いスカートはダメだって!?」

 

 艶やかな長い黒髪は左右で結んで長いツインテ―ルにし、短すぎるスカートにニーソックスと言う癖を詰め込みつつ、上は身体のラインがはっきりわかる際どいノースリーブに、緩めのアームウォーマーでささやかな装飾。

 まるで画面から出て来た二次元キャラクターの様な出で立ちとなったサヤ・アマノに、キラはこれまでの鉄面皮を引っぺがして抗議の声を挙げた。

 

「むっ、そうなのですか? 道行く人にはもっと凄い方もいらっしゃいましたし……シン、貴方はどう思いますか?」

「えっ!? いや、その……」

 

 言えない。細くスラリと伸びる脚やアームウォーマーの隙間から見える肩口に視線が釘付けだった等と……邪な視線が向いてしまった等とは口が裂けても言えなかった。

 ついでに言うと、試着室が開かれてからキラとシンを包囲していた視線はラクスとサヤに向けられていた。時折ため息が漏れる辺り彼女達はこの場に居る同性達を容易く虜にしてしまったらしい。

 故に、不用意な発言はできない──シンは足りない頭で必死に考えを巡らせた。

 

「その……俺はもう少し、静かな感じの方が……ヤヨイには似合うと思うぞ」

 

 ぱぁ! っと、顔をかがせるのは何故かラクス・クライン。

 そうですよね。貴方もそう思いますよね、とシンへと詰め寄る。そんなラクスの接近にシンがタジタジとなっていく中、言われた当人のサヤは顔を顰めていた。

 別に嫌だったわけでは無い。寧ろ、照れ臭そうにしながらもちゃんと考えて返してくれたコメントには嬉しさが湧いてくるものだ。

 だがそれと同時に、サヤの意思とは関係のない所でまた鼓動が跳ねて、胸の内ではもう一人の自分の心がはしゃいでいる。

 

 それがどうにも、煩わしかった。

 

「ところでキラ────何故、私の時よりサヤの時の方がコメントがとても(30文字)長いのですか?」

「えっ!? あっ、いやそんな。僕はただ、サヤに邪な視線が向けられるのはって思って」

「では私にはそういう視線が向けられても良いとおっしゃるのですね?」

「そ、そんなことないよ!?」

 

 情けなくオロオロと想い人へ弁解するキラを流し見て、シンは大きく安堵の息を吐いた。

 危なかった。自分も先程微妙なコメントを残していれば、あんな風に詰め寄られていたかもしれない。着替えて隣に戻ってきた少女を見やりながら、脳裏に過ったその光景を頭を振って払拭する。

 

「やれやれ……お忍びだと言うのにあの人達はまたあぁして騒いで」

「ヤヨイも十分視線を集めていたからな?」

「褒めても何も出ませんよ?」

「いや褒めてな……くはないかもだけど、もっと目立たない様にできただろ」

「このような時は、サヤも久しぶりですから……少し我慢が利きませんでした」

 

 ヤヨイ・キサラギとして過ごした時間の中では、同期の者達と同じ様な過ごし方をした事はあった。

 だが、サヤ・アマノとしては無い。そもそもサヤは、記憶を失くす前も兄一筋でその他大勢と時を共にするような付き合い方をした事は無かった。

 精々がタケルが連れて来たカガリと共に出かけた事くらいだ。

 このように友人と言える者達が居た事は、サヤのこれまでに無い。

 

「不思議なものですね……以前は煩わしいと思っていた関係性が、今はとても心地良いのですから」

 

 自他共に厳しい。己を律する事の出来る少女が見せる、酷く穏やかな気配と笑顔に、思わずシンは見惚れた。

 これまでに彼女に抱いて印象とはまるで違う────それこそ、ラクス・クラインを思わせる様などこか儚く、清らかな雰囲気に、鼓動が早くなる。

 

 “君達2人は究極的に相性が良い”

 

 ふと、以前デュランダルに言われた言葉が頭を過る。

 相性が良いと言う言葉の意味がその時は理解できなかったが、こうして時を重ね共に過ごし、時間を得ていく内に彼女との間に確かな何かがあるのをシンは感じていた。

 それが彼の言った遺伝子的相性なのかはわからないが、少なくともシンは彼女に好ましい感情は抱いている。

 

「シン、どうしたのですか? 貴方に似合わぬ考え込んだ顔をしていますが」

「っ!? う、うるさいな。俺が考えこんじゃ悪いのかよ」

「ふふ……いいえ、そうして思慮深くなるのなら、貴方を導いたお兄様も報われると言うものですから」

 

 くすくすと、不快感の無い笑い声を漏らす彼女に、やはりシンは目を奪われた。

 今日の彼女はやはり、今までと違う。

 いや、そうではないのだろう。今が本来の彼女と言うだけの話だ。

 記憶を取り戻した彼女を、シン・アスカは未だにヤヨイ・キサラギとして見ていただけの事であった。

 

「な、なぁ──ヤヨイ」

「はい?」

「俺もさ……お前の事サヤ──」

 

 瞬間、彼等を大きな衝撃が揺らした。

 

 

 瞬時に切り替わる意識。

 忍ばせた武器に手を掛けながらも、混乱する店内からサヤは外を伺った。

 

 

 

「サヤ!」

「落ち着いてくださいキラ・ヤマト。貴方はラクス・クラインの傍に……シン、外は!?」

 

 先んじて動き出したシンへと声を掛ければ、首を振って返される。どうやら、今の位置からでは状況が把握できない様である。

 

「キラ・ヤマト、アークエンジェルへ連絡を。急ぎ応援を呼んでください────状況からして、私達に関連する事態では無いでしょうが、万が一があります。下手に動くよりはこのまま形を潜めて応援を待つ方が安全です」

「ヤヨイ、少し通りに出てみたが煙が上がってる! そこまで近くは無いが遠くも無い」

「分かりました。御二人はここで待機を。状況の把握と周囲の警戒に私達が外へ出ます。良いですね、シン?」

「あぁ、勿論だ」

「危険です、サヤ。狙いが私達でないのなら、このまま潜み応援を待っていた方が──」

「騒動がここまで飛び火しないとは限りません。かと言って、迂闊にここを出て巻き込まれるのも御免です。一先ずは状況の把握と周囲の安全確保が急務です。キラ・ヤマト、店内のお客さんには外に出ない様呼び掛けてください」

「うん、わかったよ」

「サヤに勝つために少しは身体も鍛えたのでしょう? 期待しています」

「う、うん」

 

 自信なさげな返答だがとりあえず良しとして、サヤはシンと共に店内を出ていく。

 年下の2人がこうも頼りになる中、ここでラクスと待つしかできない自分に歯噛みするキラ。

 ラクスはそんなキラの手を不意に取ると、見つめ合いながら首を振った。

 

「──キラ」

「うん、そうだよね……僕もできる事を」

 

 嘆いている場合ではない。今すべきことを。

 ラクスの瞳が語る言葉を汲み取り、キラもまたお客さんを誘導するべく動くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひしゃげたレストランの入り口が崩れ落ち、ぱらぱらと塵が降って来る。

 爆発の衝撃で少しの間意識を飛ばしていたユリスは、振って来る瓦礫の破片の感触に目を覚ました。

 

「(くっ、痛ぅ……こんな街中でふざけたことを。やってる事はブルーコスモスと変わらないじゃない……って言うか一体どこの連中よ)」

 

 街中にふらっと停まった車に爆薬を仕掛けての自爆テロ……否、運転手は逃げ出しているのだからただのテロだ。

 無関係な人間がどれだけ巻き込まれたかなどユリスの関知するところでは無いが、余りにも乱暴なやり方に反吐が出る想いであった。

 

「(ちっ、目は大丈夫だけど耳はやられたわね……暫く聞こえないか。でも怪我は無し、動ける!)」

 

 僅かに身体へ積もった瓦礫をどけて、立ち上がると周囲を確認する。

 未だ粉塵は止んでいないが目を凝らせばそれなりに目立つ緑と水色は見えた。

 

「スティング、アウル!」

「つぅ……油断したぜ、ったく」

「いってえなもう。頭おかしいんじゃねえか」

「大丈夫そうね──」

 

 2人の無事が確認されたところで、急いでレストランであった場所へと飛び込んでいく。

 衝撃から戻ってきて、無事だった者達がちらほら顔をのぞかせていた。

 そんな中、床に横たわる金色の髪────ユリスは目を剥いて彼女の元へと駆け寄った。

 

「ステラ!」

 

 どうやら彼女はギリギリの所でミーアを懐に抱いて庇っていたらしい。

 ステラの胸の内にはミーアの頭があり、近くには恐らく衝撃で飛ばされたであろうミゲルの姿もあった。

 位置関係から2人をさらに庇う形でミゲルが守ってくれていたのだろうと読み取り、ユリスは感謝の念をこぼすも、暢気に寝ている場合ではない。

 

 このテロ行為のターゲットは間違いなく自分達だ。そして、自分達は未だ生きている。となれば──

 

「っ!? お出ましか!」

 

 粉塵が晴れた先。

 車から身を乗り出して武器を構えるエージェント姿の男たちが見えた。

 構えられるのは、容易く人を吹き飛ばせるロケットランチャー。

 

 僅かな逡巡。ユリスは懐からお気に入りのナイフを取り出し全力投擲。

 ロケット弾が放たれる直前にナイフが飛来し射手を脅かす。発射された弾頭はあらぬ方向へと放たれ店の建屋上部を破壊し瓦礫を降らせた。

 

 視界を瓦礫が埋め尽くした瞬間にユリスはしゃがみ込み皆の元へと向かう。

 幸いにもミゲルもステラも目を覚まし動けるようであった。

 

「裏口から出るわよ。ミゲル・アイマン、歌姫様をお願い」

「了解だ。悪い、助かったぜ」

「急ぎなさい! アウルとスティングは先行して警戒」

「あいよ」

「任せな」

 

 追加で巻き上がった粉塵が漂う中、ミーアを連れて5人は店の裏口へと回り店内を脱出した。

 同時にすぐさま近くの建屋へと身を隠し、一先ずの追撃の手を躱す。

 

 入り込んだ先はこれまた飲食店の裏口の様であった。

 幸いの者も含め全員が至近で起きた出来事に外へと出ている。彼等の存在に騒がれるような事も無いだろう。

 

 

「はぁ────っとに最悪。一体どこの連中よ! なりふり構わないにも程があるわ」

 

 騒がしい周囲にこれ幸いと、思う存分に声を挙げてユリスが怒りを露わにした。

 

「恐らくは、サラの奴だろうな……」

「あぁ? サラって、確かミーアのマネだったか。お前、心当たりあるのかよ?」

「サラが? 何で、どういう事スティング?」

 

 ふと溢したスティングの言葉に、ミゲルもミーアも詰め寄った。

 この騒ぎを仕掛けた人物……予測し得ないはずのそれに見当がついている様なスティングの声に、ユリスも訝しんだ。

 

「前にこっちに来た時にな……嫌な気配は感じてた。特にステラは、あの女が嫌いだって……ステラの事だからただの人見知りかと思っていたが、逆にステラが言う事だからこそ一理あるだろう?」

 

 悪意に敏感なステラであれば……現に先程も嫌な予感を察知してユリスと共にミーアを守る為一足早く行動を起こせていたのだ。

 スティングが言う様に、ステラの感覚はある種の信憑性を持つ。

 

「確かに、あの女なら俺達の予定知っててもおかしくねーしさ。この状況から見れば妥当な所じゃね?」

「そんなアウルまで。だってサラはずっと私の事──」

「人の腹の内なんざ、誰にも読めやしねえ。つまりはお前の為ではなく別の誰かの為であっただけの事だ。そして、その誰かの為にお前は消されようとした────ちっ、胸糞悪ぃ!」

「って事は、議長さんの手の者ってこと? 少し考えにくいけど……」

 

 先程まで怒り心頭だったユリスであったが、彼等の見解を疑問視した。

 

「あぁ? 何でだよ。今の議長にとっちゃミーアは──」

「だけどそれは、兄さんとの重大な契約違反よ。頭の良い議長さんがそんな選択をするとは思えないわ」

「んなこと────いや、確かにそうだな」

 

 それはタケル・アマノからの信用を損なう行為だ。

 そもそもデュランダルが用済みとなったミーアを害する可能性を払拭する為に、スティング達を護衛として同行させてコペルニクスに軟禁させていたのだ。

 そして、その間にコンクルーダーズは発足されロゴス壊滅に一役買っている。直近で不手際があったところで、その戦果は十分である。

 今更デュランダルが、タケルとの関係性とふいにする様な手を打ってくるとは思えなかった。

 

「あの女の独断って事か?」

「まぁ、議長さんの管理不行き届きであることには違い無いわね。とにかく今は──」

 

 ハッとして、ユリスは口を噤んだ。

 ミーア以外の他の面々も同様。近づいて来る人の気配。

 

「探せ! 近くに居るはずだ!」

 

 目の前にある扉が開かれる────瞬間、ユリスはしゃがみ込んで視界が居から不意を突くと、侵入者の顎を蹴り抜いた。

 すかさずその背後に居たもう一人の眉間を撃ち抜き、迫っていた追っ手を仕留める。

 

「ちっ、このままじゃ袋のネズミね……」

 

 迎撃し駆逐する事は可能だ。ユリスは何人来ようとも白兵戦で負けるつもりはなかった────が、護衛対象たるミーアは別。

 目の前であっさりと失われた命。何より、先程から問答無用で己の命が狙われている。その恐怖に歯をガチガチと鳴らして震えている。

 

 無理もない。元は歌手志望であっただけの普通の少女。

 ラクス・クラインの影武者になっていなければ、命のやり取り等遠い世界な筈の、平穏無事に暮らしていた少女なのだ。

 恐怖に身を竦ませ、まるで動けない状態になっていた。

 

 周囲の喧騒は未だ止まず。追っ手の気配は確実に迫ってきている。この状況でミーアをミゲルに抱えさせて逃げるのも困難だろう。

 意を決して、ユリスは脳裏に描いた方針から最良の手段を執りだした。

 

「落ち着け、ミーア……大丈夫だ」

「ミゲル……で、でも」

「落ち着きなさい。MSでも持ち出されない限り、私が貴女を死なせはしないわ。スティング、アウル、周囲の警戒をお願い────ステラ、ナイフ借りるわね」

「うん……良いよ」

「お、おい、何する気だお前」

 

 ステラからナイフを受け取ると、ユリスは徐に自らの長い後ろ髪を切り取った。

 山吹色の髪が主の元を離れて毛の束となる。それをユリスは取り出したヘアゴムで端を縛り束ねる────即席のヘアウィッグである。

 

「悪いけど歌姫様、貴女のも貰うわよ」

「へっ、えっ!?」

 

 断りを入れれば問答無用とばかりに、ミーアの長い後ろ髪をバッサリと切り取って、また同様にヘアゴムで端を縛る。

 ここまですればミゲルもミーアも、彼女が何をするのかは理解できた。

 

「スティング、帽子頂戴。縛り口を隠すわ」

「お、おいお前──」

「変な心配はしないで。入れ替わりで囮になったからと言って死ぬわけじゃないわよ。歌姫様に成り代わって私達が連中を引き付けるわ。その方がこっちも楽だし。

 歌姫様はミゲル・アイマンと2人で店の表から一般人として脱出。あぁ、あの家には戻っちゃダメよ。どこまで息が掛かってるかわからないもの」

「おい、待てってお前」

「それから! 応援なんか要らないから────良い? 私達は足手まといさえいなければあの程度の連中5分と立たず片付けられるの。今の状況では動けない歌姫様が邪魔で戦えない。それだけ」

「ユリス……ミーア、守るって」

「ちょっ、ステラ! 変な事言わないの!」

「ちがった?」

「違うわよ! 邪魔なだけ、良いわね!」

「むぅ──わかった」

 

 素直に感じるまま言った言葉を否定されて、ステラはややご機嫌斜めである。

 後で甘やかさなくてはならないだろうと、ユリスは素直になれなかった自分を呪った。

 

「歌姫様、漸くわかったでしょ? 貴方はどこにでもいる普通の人間。本当の歌姫様には成れないわ────本物はきっと、こんな状況でも眉1つ動かさない位には常人離れしているもの」

「おい、こんな時に何言って──」

「身の丈に合った事を望みなさい。貴方は精々、好きな人と歌でデュエットしている位がお似合い。でないと、ウチのバカ兄さんみたいになるわよ」

「ユリス、そろそろ来るぜ」

「もう行けるのかよ?」

 

 惑うミーアを他所に、目の前で彼等は動き出していく。

 それぞれが用意していた武器を取り出し臨戦態勢。スティングは拳銃片手に警棒。アウルは2丁拳銃。ステラは自動小銃とナイフ。

 

 今までにミーアが見た事のない知らない彼等がそこには在った。

 暫く共に過ごしてきて、普通の子供達だと認識していた彼等の、戦士の顔をそこに垣間見た。

 途端に、彼等自分は歩んで来た世界が違うのだと、それをはっきりと突き付けられた。

 

「ミゲル・アイマン、暫くは潜みなさい。監視の目は常にあると思って、動きは自然に」

「分かってる。お前達こそ気を付けろよ」

「私は兄さんみたいに甘くはないわ。折角の休日をぶち壊された報いは、しっかり連中に受けてもらう」

 

 戦意もたっぷりに返されてミゲルは苦笑い。

 もはやどちらが狙われているのか……言った以上はやり遂げるであろう目の前の悪鬼の言葉に、顔も知らぬ彼等に同情した。

 

 

「さて、ファントムペイン復活よ────準備は良いわね」

「もち!」

「おうよ!」

「──がんばる」

 

 

 裏口のドアを蹴破り、桃色の髪を被った悪鬼が飛び出す。

 

 招かれざる客へ本物の痛みを叩きつけるべく、彼等はコペルニクスの街を駆けだした。

 

 

 

 

 

 




服装の描写の所はツッコまないで。作者オシャレとか知らないので。こんな小説書いてるんだからそういう人種よ

丸くなっちまって(ユリスネキ
キラ、お前もアスランと同じく朴念仁やったな
シン君は既に調教済み。
サヤちゃんはお兄様を想うとぶっ飛んでる子。基本は常識人枠なのにね
ファントムペイン復活(ネオ居らんけど)。彼らの今後にも期待したい。

さてさて次回はドンパチかな。どうぞお楽しみに

感想よろしくお願いします。

この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!

  • タケル&ユリス
  • キラ&アスラン
  • シン&サヤ
  • イザーク&ディアッカ
  • ミゲル&ハイネ
  • タケル&キラ(SEED編より
  • ラウ&ユリス(SEED編より
  • アサギ&マユラ&ジュリ
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