言葉が思い浮かんでこなかったと言うか……とりあえず、色々と理屈や事情をこねる説明が多くなります。
少しだるいかもしれないけど、お楽しみいただければ幸いです。
「仕留めきれてないだと!? バカ共が、何をやっている!」
車に乗り込んだサラは、届けられた報告に思わず罵声を返した。
初手を仮に躱されたとしても、その後の追撃で仕留められる……その算段であったと言うのに。
追撃すらも防がれ、更には現在対象を見失ったと言う。
状況は一気に悪い方へと転がった。
「ちっ、役立たず共が!」
通信を切ると、サラはすぐさま車を走らせた。
脳裏には次々と嫌な予感が過っていく……計画の失敗、露見。そしてその先に破滅。
この騒ぎに乗じて、必ず動き出す者が居るはず────何故ならミーアは、
ミーア・キャンベルは現在、非常に危険な立場に居る。
彼女を狙う勢力は主に2つである────デュランダルに与する者と、与しない者達。
まず第一に彼女はギルバート・デュランダルにとって目下最大の懸念事項だ。偽りの歌姫として重用した彼女の存在が露見すれば、今のデュランダルの地位は容易に傾いてしまう。
仮にタケルとの協力関係が無かったのなら、デュランダルは彼女を闇に葬る事を辞さなかっただろうし、彼が目的の為に手段を択ばない人間であることは、記憶を失くしたサヤ・アマノが証明している。
つまりは、本来味方であるはずのデュランダルの関係者にとって、彼の立場を脅かしかねないミーアの存在は十分に命を狙う理由となる。
その筆頭が彼女、サラと言えるだろう。
だが、この勢力は決して多くは無い。
そもそもが、彼女の存在を把握している者など多くは無いのだから当然だ。
ミーアの存在を知り、ギルバート・デュランダルの為に行動を起こせる様な人間は、そう居ない。
ましてや、デュランダルの方針は彼女を脅かすつもりではない────いくらデュランダルの為とは言え、サラの行動は彼の意に沿うものではないだろう。
しかし、サラも決して浅慮に行動を起こしたわけでは無かった。
当初は本当に、ミーア・キャンベルの警護任務を全うするつもりであったのだ。
コペルニクスへの出入りの全てを監視し、不審な者達を未然に摘発。
護衛として傍に居る
だが、それでは足りなかった。
デュランダルに与しない者達────彼女を狙うものは多い。多すぎた。
プラントでデュランダルの専横を憂う者。地球で彼とデスティニープランに反発する者。オーブの声明に現れたラクス・クラインを見て、違和感に気がついた者。
どこで、どれが結託したのかはわからない。が、ミーアを狙う者達は日に日に増えていった。
それらをどうにか防いでいたが、いずれ破綻する未来がサラには目に見えていた。
このままではいつか突破される────事が起きる。
それがどのような事態を招くかは想像に難くない。デュランダルにとって最大の爆弾だ。今デュランダルが手にしている全てがひっくり返る可能性を秘めている。
だから彼女は、此度の抹殺計画を起こしたのだ。
守り切れず彼女が奪われ、その存在を利用される前に────先んじて彼女を闇に葬り去ることをサラは決意したのである。
デュランダルへと取り計らい外出の機会を作り、彼女を狙っていた者達の仕業に見せかけて葬り去る。それが唯一、デュランダルに被害をもたらすことなく状況を変えられる一手。
外出中となり、警護体制を任されていた自身の責が薄くなる今この時を置いて、事を起こせるタイミングは他になかった。
『ボス、出入りを監視している者達からの連絡です。アークエンジェルが、密かにコペルニクスに入港しているとの報告が』
「なんだと!?」
予想外な報告に目を剥いた。
事を起こすのに集中する余り、監視体制が緩んでいた弊害であった。
まさか今日と言うこの日のタイミングで、そのような珍客が来るなどとは予期できるはずもない。
「連中の目的は!!」
『オーブのアスハ代表が、都市の代表と会談中との報告が先程……恐らくはこれかと』
歯を食いしばり、サラは状況を見た。
とんだ事態である。何が目的かわからない不足の事態は、どうにかニアミスで終える事を願うばかりだ。
「ターゲットを人気のない所へ誘導しろ! 私もすぐに向かう!」
始末さえ済ませてしまえば、後の裏工作はどうとでもなる。むしろカガリ・ユラ・アスハが来訪していたのならありがたい話だ。
テロの理由など、彼女の存在だけで事足りるだろう。
「絶対に逃がさないわよ────ラクス様」
嘲りの笑みと共に、車を加速させる。
様々な思惑を載せて、事態は刻一刻と変化していくのだった。
初めに違和感に気が付いたのはユリスであった。
ラクス・クラインを扮したミーアの……その替え玉となったユリスは、ステラ達を引きつれ街を進む。
彼女を囲う様に、スティングは左、アウルが右、ステラが前を陣取る防衛体制。そのまま都市の裏路地を疾走し、追っ手を振り切ろうとしていた時。
ユリスは、自分が当たり前に疾走している事に気が付いた。
最高のコーディネーター。その夢の副産物であり被検体でもある彼女は、人間兵器としてあらゆる訓練を施されて来た。無論、その身体能力はそう並ぶ者が居ない程に高い。
だと言うのに、全力でないとは言え何の苦も無く並走する彼等に、ユリスは違和感を覚えた。
「(この子達……治療、されたはずよね? もうクソッたれな強化措置なんて……)」
無い筈だ。
ユリス自身、彼等の身体が治療された治験データをタケルと共に確認している。タケルは間違いなく快復の傾向にあると言って見せたし、タケルとユリスの間に嘘は通用しない。
治療が進んだ彼等の身体は間違いなく、エクステンデッドとしての能力を保有して無い筈なのだ。
だと言うのに────
「(歩調に乱れがない。息も切れてないし……って言うか、むしろ以前より……)」
躍動感がある気がしてならない。
踏みつけ蹴りだされる脚。油断なく構えられれる銃を持つ腕。一挙手一投足に、これまで通り……ともすれば、これまで以上に力を感じる。
ユリスは表情に出さずとも、混乱の最中にあった。
そしてそれは、彼等もまた同じである。
「(何だこれ……)」
「(以前よりもなんか)」
「(体が、軽い……?)」
簡単に表すなら────調子が良い。
過酷な訓練で培われた神経系が覚えている、自身の身体の動き。
そこへまるで一切の齟齬が無く、今の自分がピタリと嵌っていく感覚。
妙な充足感が、彼等を襲った。
これは、誰もが予期せぬエクステンデッドの結果であった。
いや、もしかすると彼等の治療を簡単に引き受けたギルバート・デュランダルだけは、この事態を予期できていたのかもしれない。
強化措置を施され、あらゆる施術を施され、そうしてコーディネーターすらも凌駕する生体部品を生み出す技術────エクステンデッド。
部品とされるが故に、未来を、寿命を、耐久年数を考慮されない非人道的な扱いを受けていた彼等であるが、果たして本当にそれは部品足りえるのか。
部品の1つ。兵器に乗せる歯車の1つ────だがそこには確実に、彼等が人である現実が存在する。
人で在るのだ。人間である以上、完全に不変な部品とは成れない。
変化し適応していく……自らを求むる姿へと。求められたものへと、進化させていく。
意図せず行われるそれは、所謂“慣れ”と言うものだ。
過度な負荷で壊れた筋肉が、筋繊維の再生と共に強くなる様に。運動を続ける事で、心肺能力が鍛えられていく様に。
一人二人と数を重ねるごとに、銃で撃ち殺す気持ち悪さを感じなくなるように。
数多の投薬が齎す効果。齎す反動。
あらゆる施術にボロボロとなっていた彼等の身体は、ゆりかごでの治療と共にそれを記憶し、その状態に
ゆりかごによる施術は所詮が延命措置。彼等の身体を治すものでは無い。再び同じだけの能力を得るには、より強く、多くの強化措置が必要である。
結果、彼等は更なる負荷を与えられ続けた。
例えばだ────機械の中にある歯車が、1箇所欠けたとする。
本来であれば致命的な欠陥になるが、意外と機械は回り続けたりするものだ。
その分の負担を他の歯車が補い、回りにくくなる分は油を差して誤魔化したりなどすれば、回し続ける事自体は可能であったりする。
だが同時に、機械にとっては枷が掛かるも同義である。
欠けた箇所がある以上、最大能力は発揮できないのは必然だ。仮に欠けた箇所が増えていくのなら、掛けられる枷もまた幾重にも増えていく。
エクステンデッドの扱いは正にこれだ。
戦闘の度に歯車が欠けていき、それをゆりかごと言う潤滑油で誤魔化していたに過ぎない。
結果彼等は、投薬とそれによる反動に晒され続け。欠けに欠けた歯車のせいで何重にも肉体に枷を張り巡らされていた。
しかし、人は慣れるものだ。
多くの枷に縛られる中で生きて来た彼等。戦ってきた彼等。
枷に縛られながらも、最大値を求められ、発揮し続けて来た彼等。
だが治療を終えた今。彼等は漸く、枷だらけの肉体から解放される。
欠けだらけの歯車は一新され、数多の施術に晒された身体は全盛期の状態を記憶していた。
元通り? いや、否である。
枷で抑圧され続ける事に慣れた肉体は、とうの昔に全盛期を超えるだけの力をその身に宿していた。
誰もが気軽にやる様なトレーニングのレベルではない。命を代価にする程の負荷を与えられ続けた彼等はいわば、極限のトレーニングを終えて快復したのと同義である。
ユリスが感じ取った違和感────エクステンデッドの、真たる成果がそこに在った。
路地の先。回り込んで道を塞ぐ男が一人。当然の様に自動小銃を構える男目掛けて、ステラ・ルーシェは姿勢を低くし餓狼の如く駆けていく。
「ステラ! 交た──」
「大丈夫!」
ユリスの心配の声も何のその。
ステラが姿勢を低くした事で高さをずらされた相手は、照準の修正を余儀なくされる。が、左右に動きを振ったかと思えば壁を蹴りつけ三次元軌道でステラはいとも容易く接近。速度を緩めることなく飛び掛かり愛用のナイフを一閃する。
自動小銃を握る手首を大きく切り裂き銃を取り落とさせた瞬間、跳躍の勢いを載せた右ひざで側頭部を打ち抜き昏倒させる。
そこへ、両脇より増援が2人。
しかしユリスが反応すると同時、アウルとスティングがそれぞれ対応して撃ち抜きこれを始末していく。
「オーライ!」
「任せな!」
「(っ!? 反応が早い。私と変わらないじゃない……この子達、本当に)」
頼もしさと共に、ユリスの胸の内に随分と久しく感じる昂揚が湧いて来た。
この感覚はきっと、2年前のオーブ戦役で初めてタケル・アマノと出会った時以来だ。
2年の時と共に、ただ破壊するだけであった自分が手にした守りたい存在。
皮肉にも世界の破滅を望まなくなったと同時に舞い込んできた、この世界で失えない大切な者。
おセンチな兄と同じく……ユリス・ラングベルトもまた、失う事を許容できず奔走するばかりであった。
しかし今。漸く彼等は全ての境遇を跳ね除け自由に成れた。
エクステンデッドの制約も、大西洋連邦とロゴスの呪縛も、全てを乗り越え共に肩を並べて歩き出すことができる様になった。
ユリス・ラングベルトは今初めて、共に歩める大切な仲間を手にしたのである。
「あっは! 最っ高じゃない、貴方達!」
愉悦が浮かぶ。
これもまた2年前。タケル・アマノと初めて出会った時以来の色濃く出た感情であった。
ふと視界に入るのは、大きい施設────少し古くさい趣のあるスタジアム施設であった。
今日は使用の予定もなく、人気はまっさらで感じられなかった。人目を憚らず戦うにはちょうど良い舞台である。
ユリスは嬉しさの余り、煩わしいウィッグと帽子を払い落とした。
「丁度良い……さっさとケリをつける。行くわよ!」
初めて手にした仲間と共に、ユリスはスタジアムへと逃げ込んでいくのであった。
時は、少しだけ遡る。
アークエンジェルを降り、単身プラントへ向かうべく動き出したナタルであったが、マリューから渡された連絡先へとコンタクトを取ろうとした瞬間の事だ。
大きな地響きが、彼女の身体を揺らした。
「っ!? なんだ……」
流石は生粋の軍人の家系。
異常な事態を察知した瞬間に身構えたナタルは、周囲を警戒する。
遠めからでも分かる、上がっている煙に視線を鋭くさせた。
「(近くで爆発? 一体何事だ……まさかコペルニクスに入ったカガリ達を狙って? いや、今日この日にカガリがコペルニクスに来たのは予定から大きく外れたものだ。そんな都合よく……)
疑念は絶えないが、市民を守るは軍人の務め。
身体の芯にまで根付いた気構えは消える事無く、警戒をしながらもナタルの足は自然と渦中の場所へと向かいはじめた。
もしかすれば、救命活動が必要な事態かもしれない。できる事があるやもしれぬ。
だが、そうして歩みを進め始めた刹那、ナタルの耳は大きな物音を聞いた。
「──っ、銃声!?」
何か大きなものが叩きつけられる様な音。次いで、続くように聞こえる銃声。
目を見開いて音の出所を見れば、ナタルが今いる通りから外れた裏路地の方である。
危険な気配を感じ取り、ナタルは裏路地から見えぬ様に身を隠した。
恐る恐ると様子を伺えば、軽快な足音と共に裏路地を突っ切る集団が見られる。
1人、2人、3人……次々と過っていく目立つ色合いの髪を持つ少年少女。
そして最後。過った4人目を目にしてナタルは目を丸くした。
「タケ……ル?」
同年代と比べ低めの背丈。夕焼けを思わせる山吹色の髪。
特徴だけなら
何故なら先程の彼は、
「追え!」
「逃がすな!」
続いていく声と足音に、一度身を竦ませる。
遠ざかっていく気配に胸を撫で下ろしながら、ナタルは逡巡した。
事態の詳細などまるっきり読めないが、アークエンジェルを降りた目的である彼が目の前にいると言う事。
降って湧いて来たような現実に、ナタルが意を決するのは早かった。
「──タケル」
乞い願うように大切な彼の名を呟くと、ナタルは爆発があった渦中の場所と反対の方へと走り出した。
「────よし、不審な気配は無い。いくぞミーア」
「え、えぇ」
ユリス達が去ってから暫く。
崩壊したレストランのある大通りを避けて、ユリス達とは別の方へと、ミゲルとミーアは歩き出した。
ミーアの頭にはユリスから切り落とされた長い山吹色の髪が乗せられており、目深に被った帽子で表情を隠せば、誰がみても彼女をラクス・クラインだとは思わないだろう。
このままシャトルの発着場へと向かい、ミゲルとユリスが乗ってきたシャトルへと乗り込めば、一先ずのミーアの安全は確保できるはず。
目的地を定めて、警戒心を表には見せない様にしながら裏路地を進んでいく。
「ね、ねぇ……ミゲル」
「んぁ、なんだ?」
ふと小さな声で、ミーアはミゲルを呼んだ。
「私って、もうずっとこのままなのかな……」
それは降りかかった命の危機に直面して沸き上がった不安。
容易く命を狙われたこの事態。自らの境遇の意味を真に理解してしまったが故に抱いた恐怖からでた問い掛けであった。
「──こんな予定じゃ、無かったのにね」
「ミーア……」
こんなはずじゃなかった。そんな後悔の声音がミーアから漏れ出る。
居なくなってしまったラクス・クラインが戻るまで。本当に最初はそれだけの話であったのだ。
彼女が齎す影響は大きい。戦争へと向かい始める今の世界に彼女が……自分が必要なのだと議長に言われて。
そうしてミーアは、今の姿とラクス・クラインの名を得た。
「最初はね、自分の出番何て来るのかなって……半信半疑だった。
大好きな歌で生きていきたくても、ずっとダメで。そんな時に議長に声を掛けられて。それで、このまま夢が叶わないよりはって……縋るような想いでこの話を受けたの」
手術を終えて、鏡を見たミーアは信じられない心地であった。
自分を写すはずの鏡に、憧れのラクス・クラインが写っていたのだ。
「きっかけも、そして出番も突然だった。その頃には、もう貴方が傍に居てくれたけど」
「あぁ、そうだったな」
最初の出番を終えた時。
自らの言葉と姿は、ちゃんとラクス・クラインを演じる事ができているのか。重責に悩むミーアを傍で励ましてきたのはミゲル・アイマンであった。
「ねぇミゲル。私、死ぬ前にちゃんと貴方に言って──」
「ばぁか、何縁起でもねえこと言ってんだよ。
お前は俺が守ってやるっつったろ。下らねえこと言ってねえで行くぞほら」
「ミゲル! 私は──っ!?」
瞬間、言い募ろうとしたミーアの手を引いて、ミゲルは勢い任せに彼女を抱き寄せた。
瞬時に顔へと熱を集めるミーア。
「ミ、ミゲル! こんな時に何を──」
「良いから! 俺に合わせろ」
合わせろ? 何を言っているのだ一体。
再び抗議の声を挙げようとしたミーアも、近づいて来る人の気配に、漸く状況を理解した。
「ミゲル……ど、どうすれば」
「なぁ、良いだろ
「なっ、何を言ってるのよ貴方。こ、こんな所でなんて……」
耳元で囁かれる甘美な声が、ミーアの心を蕩かせる。
返す言葉と共に、恥ずかしそうに抱き寄せた腕の中で身じろぐミーアを見て、ミゲルは思わず不敵な笑みを浮かべた。
彼女の反応に良い演技だとミゲルが受け取る一方で、演技もクソも無いミーアは、想い人の腕の中にいる事実だけで一杯一杯である。
ふと、身じろぐミーアをミゲルが軽く放せば二人は互いを見つめ合う形となった。
「──ミリア」
「まっ、待って……」
「ダメだ、待たねえ」
演技ではないのか? それとも演技でそこまでしてしまうのか?
どこまで本気かわからずミーアの頭がハチャメチャに惑う中、2人の距離は縮まっていく。
そして、2人は1つに────
「おい、あんた等! さっきの爆発がわからなかったのかよ! こんな所にいたら危ないだろ!」
ならなかった。
切り裂くように飛び込んでくる、どこか焦った少年の声。
あからさまに怪訝な表情を見せるミゲルと、あからさまに安堵……とがっかり感が混在する奇妙な顔を見せるミーアは、飛び込んで来た少年へと目を向けた。
「おい、聞こえないのか。ここに居たら巻き込ま──」
「落ち着いてくださいシン。と言うか、空気を読んであげてください。こんな裏路地で男女2人……
まぁ確かに、爆発のあった直ぐ傍で盛ってるなんて、おサルさんも良い所ではありますが、わざわざ邪魔する必要もない……で……しょう……」
先にやってきた黒髪の少年。そして次いでやってきた黒髪の少女。
ともすれば兄妹の様にも見える2人を見て、ミゲルは目を見開いた。それは少女も同じで、予想外に過ぎる再会に完全に固まってしまう。
「ヤヨイ、それにシン・アスカか? お前ら……何でここに?」
「ミゲル。貴方こそどうしてこんな所でその本当に……盛り合っているのです? シンが言う様にこの辺は余り安全では無いはずですが」
「さっ、盛っ!? ちょっと!」
「ばっ!? おめえちげえよ!」
いや、間違いではないのだが…………しかし真実でも無い。先程のはあくまで演技。一般人を装うためであり本身では無い。
年下の少女が向けるやや軽蔑した眼差しにミーアは慌ててミゲルから離れ、ミゲルもまた険しい表情で否定を返した。
「全く、人の気配を感じてこの騒ぎを引き起こしたテロリストでも居るのかと警戒しましたが、貴方だったとは…………無用な心配でしたね、シン」
「あ、あぁそりゃあまぁ」
流石のシンとて年頃の多感な時期だ。自身にそう言った経験がないとは言え、サヤが言ったことの意味は理解できた。
チラチラとミゲル達に向ける視線には、興味と言うか様子を伺う様な気配が見え隠れしている。
「仲睦まじいのは良いですが、時と場所くらいは選んでください。貴方もいい大人ではありませんか」
「だからちげえっての! お前達が追っ手だと思ってアベックを装ってただけだよ! 誰が好き好んで外でおっ始めるか!」
「ふぅん? 仲睦まじいのは否定しないのですね? 良い事を聞きました。
アカデミーでは散々貴方との男女関係を邪推された身。貴方が身を固めてくれると言うのであれば是非もありません────そちらの方、ミゲルは存外本気みたいです。良かったですね」
それはもう晴れやかに。誰もが見惚れる程に綺麗な笑みを湛えて、サヤはミーアへと笑いかけた。
耐性のないシンが何度目かわからぬ鼓動を跳ねさせる中、ミーアはその笑みに薄ら寒い気配を感じて、投げかけられた事実を素直に喜べず腕をさすった。
「って言うか、ミゲルさん。今追っ手かと思ったって…………それじゃこの騒ぎ」
シンの問いに、ミゲルが顔を顰める。
それが答えだと理解し、サヤはミゲルの背後に隠れるミーアを盗み見た。
「──なるほど、そう言えばディオキアでもその気配はありましたか。
シンも覚えているでしょう? 情けなくラクス・クラインに平謝りするFAITHがいた事を」
「えっ? あ、じゃあその人……」
「えぇ、先程まで本人と顔を合わせていたのだから貴方にもわかるはずです。シン、彼女がラクス・クラインの替え玉です」
短く切られたが垣間見える桃色の髪。蒼白の瞳と見惚れるほどの端正な顔。
瓜二つなミーアの容姿にラクスとの違いを見つけるのが難しいくらいだと、シンは唸った。
「恐らくは今回のこの騒ぎも彼等が原因でしょう。大方本物が出て来たからそちらは用済みという所ですか? あの議長がやりそうな事です」
「おいヤヨイ、お前言い方ってもんが──」
「そう考えるだけの過去が! サヤにはあります…………ミゲル・アイマン、貴方もご存知の筈です」
記憶を失ったサヤ・アマノの痕跡を決して、彼女をザフトへと招き入れた事。
そして記憶を取り戻した彼女にスパイの嫌疑をかけ、ザフトを追い出した事。
後者は本来、サヤに出奔されるのを防ぐためではあったが自分の目的のためなら手段を選ばないという点では同じであろう。
サヤにとって、ギルバート・デュランダルはそう言う存在であった。
「とにかく、これで状況は読めました。シン、急いで戻りましょう。こうなった以上、私達も…………正確にはあちらのラクス・クラインも安全ではありません」
「あ、あぁ、そうだな。キラさんだけだと心配だし急いで戻ろう」
議長にとっては用済みとなった替え玉、ミーア・キャンベルの誅殺。
それが現在進行形で成し遂げられていないのなら、罷り間違って本物が巻き込まれて誅殺されかねない。
「ま、待って!」
踵を返して、少し足早にその場を去ろうとする少女達の背中に、ミーアは慌てて声をかけた。
「ミーア?」
「何でしょうか?」
怪訝な表情と共に振り返るサヤの瞳には、山吹色のウィッグを取り去り俯かせていた顔をしっかりと上げたミーアの姿が映り込む。
どこか決意の表情に彩られたその姿に、サヤは嫌な予感を禁じ得なかった。
「急いでいます。手短にしてください」
「本物のラクス様、近くにいるのよね?」
「はい、騒ぎが起こるまで一緒にいましたから」
「お、おいミーア。何を──」
割り入ろうとするミゲルを手で制して、ミーアは静かにサヤ・アマノへと頭を下げた。
「お願い、私を一緒に連れて行ってください!」
投げられた願いに、サヤはこれでもかと顔を顰めてため意を吐くのであった。
まぁ何が言いたいかと言えば
復活! って事ですね。
そりゃあせっかく生き残るんだし、活躍して欲しいし…………
後はあちこちでニアミスしたり遭遇したり。ハチャメチャが押し寄せて来てますね。
多分次回でコペルニクス騒動編は終わり………かなぁ。もしかしたら2話になるかも。
それが終われば、幕間でキャラのそれぞれを描いて、いよいよクライマックス。
長かった運命編も終わりが見えて来ます。
是非とも、応援の程よろしくお願いします。
感想が面倒なら“ココ好き”機能でも良いです。読者の皆さんの声を教えてくださると、非常に嬉しく、やる気がぐっど出て来ますので。
どうぞよろしくお願いします。
この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!
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タケル&ユリス
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キラ&アスラン
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シン&サヤ
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イザーク&ディアッカ
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ミゲル&ハイネ
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タケル&キラ(SEED編より
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ラウ&ユリス(SEED編より
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アサギ&マユラ&ジュリ