──何故、こうなった。
眼前に広がる光景に、サラは驚愕と絶望をない混ぜにした表情を浮かべて自問した。
「あら? さっきぶりね、マネージャーさん。
随分とイカついお友達と一緒みたいだけどどうしたのかしら?」
不敵に笑う山吹色の悪鬼の傍には、追跡中であった仲間達が伏している。
伏して……恐らくは息はしていないだろう。地面に広がる血溜まりが、それを物語っていた。
近くにはどこにも、本来追っていたはずの
もっと言うならもう1人。共にいるはずのミゲル・アイマンの姿もだ。
「────どこに行った?」
絞り出す様な声でサラが問う。意訳、ターゲットであったはずのミーア・キャンベルはどこか。
訊かれた悪鬼は、ニタリと笑みを深くさせた。
「どこでしょうね? この近くに隠れているのかもしれないし、既にどこか遠くへ飛んで行ってしまったかも? もしかしたらアンタが望む様に、私が殺っちゃったかもしれないわね。ふふ……あはは!」
愉悦を浮かべて笑うユリス・ラングベルトだが、しかし彼女の佇まいには一寸の隙も無い。ここまで来て追い詰められた末の投降、等でない事は一目瞭然である。
同行してきた仲間達へと目配せをして、サラは最大限の警戒の下対峙する彼女を囲わせた。
逃げ込んだ人気のないスタジアムの中央に座するステージ────そこに立ちすくんでいたユリスへと、周囲から鈍色の銃口が向けられる。
渇いた音が2発。ユリスの足元を穿った。
「死にたくなければ正直に答えなさい。彼女はどこに行った?」
「答える必要性を感じないわね。追い詰められた貴方達がそれを知っても、何の意味も無いでしょ?」
どこか空気が冷たくなる気配を、サラは感じた。
まるでスイッチのオンオフを切り替えたように。先程まで愉悦に嗤っていた彼女が、息も忘れそうな程冷たい殺気を漂わせ始める。
「貴様──」
「お仲間と一緒に来てくれてありがとねマネージャーさん。これで後顧の憂いなく事を終わらせる事が出来るわ」
司令塔が前線まで顔を出してきたのなら。そして、司令塔が事態の全容を把握し切れていないのなら────置いてきた彼等が追撃されている事は無いだろう。
それはつまり、ここに居る者達で今回の襲撃者は全てと言う事だ。
周囲に人気は無く、一般人を巻き込む心配も無い。
ここは正に、彼女達にとって都合の良い最高のステージであると。
「何を……言っている?」
問いかけるサラの声は震えていた。既にユリスの言わんとしている事は理解しているが故であった。
「貴方達は既に、虎穴に迷い込んでしまった後なのよ────死になさい」
悪鬼は直後、命を刈り取る死神と化した。
「お願い、私を一緒に……ラクス様の所へ連れて行ってください!」
偽りの歌姫ミーア・キャンベルの願い事に、投げかけられたサヤ・アマノは眉を顰めた。
「聞き間違いでは無いでしょうね? 偽物である貴女を、本物である彼女の元へ連れて行けと……そう言うのですか?」
「はい、お願いします」
突然のミーアの申し出に惑いを隠せなかったミゲルが、慌ててミーアに詰め寄った。
「お、おいミーア。お前急に何を言って。そんなの無理に決まって──」
「全くその通りです。今現在こうしてケツに火が付いている状態の貴女を、わざわざ私達が匿う理由など有りません────御断りします」
「ヤヨイ、女の子が余りケツとか言うなよ。品が無──」
瞬間、頭がもげそうな程の強烈なデコピンを喰らい、シンは弾かれたように後方へと転がった。
「あぁああああ!!」
と、苦痛に叫ぶシンの絶叫を背景にしながら、サヤは今一度ミーアを睨みつける。
「大体、何のために貴女を連れて行くのです? 貴女は彼女の名を騙った。それだけで私達が突っぱねるには十分な事実があるのです。いくら命を狙われて貴女が困っているとは言え……その様な虫の良い話、通るわけが無いでしょう」
「違う! 私はそんな、助けて欲しくて言ってるわけじゃないんです!」
「では何故です? 他に理由があるとでも?」
問い詰めるサヤの気配に、ミーアは僅かに怯むも。それに負けじとサヤを見つめ返し、脳裏に浮かんでくる言葉を必死に整理してゆっくりと紡ぎ出していった。
「────謝りたいんです。ラクス様に」
それは、誰にも漏らすことなく彼女が抱え続けて居た、彼女の懺悔の言葉であった。
「オーブの、アスハ代表の声明の中に出て来たラクス様を見て……私、ずっと思ってた。
私は……私がラクス様の平穏を壊してしまったんだって」
後悔の念に埋め尽くされて、ミーアは己の内を吐露していく。
あの日の声明で詳らかにされた、平和の象徴と担がれ続けたラクス・クラインの本心。
普通で、当たり前な、極々平穏な生活に幸せを見出していた……そんな無垢な少女であった事。
歌があって、肩書があって、立場があって血筋があって────人々を動かす声と言葉を持っていながら彼女は何ら、それらに価値を見出せず平穏で静かな幸せを望んでいた事。
ラクスが抱え続け、ため込んで来た本心を世界に晒した時、ミーアは大きな衝撃と罪悪感に駆られた。
彼女に、あれをさせたのは自分なのだと────そう、自覚してしまった。
表舞台に立ってしまった今、ラクス・クラインにはもう平穏な未来など無いだろう。
再び平和の象徴として声を挙げてしまった今、彼女には必ずまたその名と立場が求められていく。
今の争いが終わったとしても、ずっとだ。
平穏な生活を望むのなら潜み続けて居ればよかった。だが、それができなかった────できなくなってしまった。
何故なら己の名を騙り、世界に言葉を発信する者がいたから。
後先を考えず、ただギルバート・デュランダルが求める事だけをこなす、偽りの自分が現れてしまったから。
ミーアの存在によって、ラクス・クラインに沈黙は許されなくなってしまったのだ。
「許されると思ってない。でも、ちゃんと私の言葉で……私自身の声で! ラクス様に……謝りたいんです」
「──ミーア」
「どうか、お願いします!」
深々と下げられる頭に、サヤは納得できない様な気配を見せミゲルを見やった。
責任者はお前だろう。どうにかしろと物語るサヤの視線を受け、ミゲルはサヤとミーアへと視線を巡らせていく。
「なぁ、ヤヨイ……この人が謝りたいって言うなら、俺はその気持ちを支持する──」
「シンは口を挟まないで下さい」
「あぁあああ!?」
哀れ、二度目のデコピンにシン・アスカは退場となった。
微妙に胸の内で暴れるヤヨイ・キサラギの声に蓋をして、サヤはミゲルへと視線で促し続けた。
果たして────ミゲルは静かに口を開いた。
「悪いヤヨイ。ミーアがそれを望むなら、俺からも頼む……ラクス様の所へ連れて行ってくれねえか」
下げられる頭に、険しさが3割増しとなったサヤの目元が細くなっていく。あからさまにミゲルへと嫌な顔をして見せたサヤは、大きく溜め息を吐いた。
「はぁ……ずるいです、ミゲル・アイマン。
貴方に頭を下げられては、サヤに断ること等できないではありませんか」
傲岸不遜な態度から一転。随分としおらしく態度を軟化させたサヤの言葉に、ミゲルは呆気にとられた。
次いでに今度はミーアが表情を険しくさせる。
「はっ? な、なんでだよ?」
「ちょ、ちょっとどういう事、貴女! もしかして貴女も──」
「下衆な勘繰りは止めて下さいませ! 私がミゲルの様な三枚目を慕う等あり得ませんから!」
「おまっ! 三枚目は言い過ぎだろ!」
「そうよっ! ミゲルはまだ二枚目半ってとこじゃない!」
「ミーア、それフォローになってねえからっ!」
揃いも揃って失礼な。
ミゲルはそれなりに見知った仲の2人から、なし崩し的に明かされた己の評価を受けて、心へ深い傷を負わされてしまう。
ハッとするミーアと鼻息荒く憤慨を示すサヤの姿が印象的であったと、後にシンは語った。
「私サヤ・アマノは、ミゲル・アイマンに命を救われた大恩があります。更に貴方はそれだけでなく、嘗てお兄様の命をも救ってくださいました」
依然として険しい表情ながら、先の発言の理由をサヤは明かしていく。
サヤにとって、ミゲルは命を救われた人物だ。その上記憶を失っていた自分を引き取ってくれた恩義もある。
嘗て、ヤヨイ・キサラギとしてザフト入りを決めたのはそれに報いる為であったし、記憶を取り戻した今は、兄と彼の関係を知り更なる大恩となった。
最愛の兄が今生きて居られるのは彼のお陰とあれば、サヤがミゲルの願いを聞き入れるには十分である。
「どうせなら貴方にはお兄様を連れてきて欲しかったのですが、仕方ありません。今は彼女で我慢するとしましょう」
彼女をこちら側に手繰り寄せてしまえば、これ以上ややこしい事態になるのも避けられるだろう。
偽りのラクスと言う不確定要素が消えれば、ラクス本人も今後動きやすくなると言える。
彼女を匿う事は、危険性を抱える悪い面ばかりではない。
納得させるように、胸の内でサヤはこの事態へのメリットを思い浮かべていった。
「ヤヨイ────すまねえ。恩に着る」
「その恩を受けたのは私が先なのです。感謝など、必要有りません」
相変わらずのつっけんどんな態度にミゲルが苦笑いを浮かべる中、サヤは手元で端末を操作して通信を繋いだ。
現在、アークエンジェルから動ける人員を増援に呼んでいる。直にラクスとキラの元へと辿り着き合流を果たす事だろう。
サヤとシンもこのままミーアを連れて合流すれば、共に問題無く帰還できるはずだ。
連絡を取り合うサヤの裏で、ミーアは漸く落ち着きを取り戻しミゲルへと向き直った。
「──ミゲル、ありがとう。貴方のお陰よ」
「そうは言ってもな……俺は別に、感謝される様な事はしてねえんだが」
ミゲルとしてはどうにも落ち着かない心地であった。
サヤも、そしてタケルも。命を救った事実はあれど、その根本はミゲルにとって捨て置けなかった。ただそれだけの事である。
プラントに居る家族の為に戦っていたミゲル・アイマンにとって、眼前に相対していた敵でも、流れ着いてきたどこかの誰かでも。そこにはきっと、帰りを待つ家族が居るのだと思うと見捨てることはできなかったのである。
結局のところ、ミゲルと言う人間もまた目の前で命が失われていくのを許容できない、甘い人間なのかもしれない。が、ナチュラルとコーディネーターで対立してきたこの世界においては、彼こそが人間臭く、優しいと評される人間なのだろう。
「──ひとまず、連絡は付きました。貴方を迎え入れる事に否の声は出ておりません。それでは急ぎ合流をしましょう。
あぁ、そう言えば何度か顔は合わせていましたが自己紹介がまだでしたね。私はサヤ・アマノです」
「一応俺も……シン・アスカです」
「──ミーア、キャンベル、です」
ザフトに居た折、何度か顔を合わせてはいるが、サヤはヤヨイ・キサラギであったしミーアもこれまでラクス・クラインであった。
色々と状況が変わった今、互いに名乗り自己紹介を済ませておく。
「それではミゲル。私達はこれで────彼女の事は我々が責任をもって安全な場所へと連れて行きましょう」
「あぁ、頼んだ」
当然の様に繰り広げられたやり取りに、ミーアは目を剥いた。
「ミゲル、貴方も一緒に──」
「無茶を言わないで下さいミーア・キャンベル。彼はザフトの正規な軍人。そしてプラントを捨てられない理由もあります。
戦闘中に捕虜となり、紆余曲折を経てこちらに居るシンとは違います」
「つーわけだミーア。悪いけど、俺は一緒には行けねぇ」
「──そんな」
一緒にミゲルも来るとばかり思っていたミーアは、己の浅はかさを呪った。
「ミゲル、私──」
「止めるのなら構いませんよ。無理してまで連れていくつもりはありませんから」
「ダメだヤヨイ、ミーアは連れて行ってくれ。ミーア……こうして事が起こった以上、少なくとも議長の庇護下に居るよりはこいつらと一緒の方が安全だ。
ヤヨイ、ミーアの安全は保障してくれるんだろう?」
「古妹とラクス・クラインが取り計らってくれることでしょう。この世界であの2人が後ろ盾となる事がどういう意味を持つかは理解できるはずです」
「古妹ってのは、多分アスハ代表の事だよな? はっ! ならこの上ない事じゃねえか」
安心しろ。そんな意を込めてミゲルはミーアへと笑いかけた。
「後はさっき言ったお前の気持ち次第だ、ミーア。俺の事なんか気にしてないで、お前の気持ちとやるべきことを優先しろよ」
「ミゲル……」
「──はぁ、ニブチンがここにもですか」
踏ん切りがつかないのは、彼と離れたくないという乙女心も同じくらいに大きいからだと何故わからないのか。
キラ、アスラン、シンにミゲルと。サヤは周囲の男共の朴念仁っぷりに辟易としていた。
「誰がニブチンだ────安心しろミーア。全部終わったら必ず迎えに行く。
そしたら今度は俺が、お前をプロデュースしてやるから」
利用された彼女の夢を……良い様に使われた彼女の歌を取り戻すために。
何気なく溢された宣言に、ミーアの胸は強く高鳴った。
当然だ。いつの間にか惹かれていた意中の相手が、自身の事を想って示してくれた、最大限の言葉が見て取れたのだから。
感極まったミーアの足は、今一度ミゲルへと向かい駆け出していた。
「ミゲル!」
飛びつく様に駆け寄ってきたミーアを抱き止めたミゲル。2人はそのまま深い口付けを交わしていく。
ちなみに目を丸くして食い入るようにその様を見つめるシンの顔はトマトの如く赤く。このクソ切羽詰まってる事態を忘れ、演技から本当の睦事を始めた2人にサヤの顔もまたトマトの如く赤かった。
「────そろそろ良いですか? 急がないと帰りの列車に乗り遅れるのですが?」
「あっ!? ごっ、ごめんなさい!?」
冷めた声に自身の状況と行いに気が付いたミーアが跳ねる様にミゲルから離れた。
少しだけ名残惜しそうなのは、やはり想いを隠し切れるものではないということだろう。
そんなミーアを微笑ましく見ながら、ミゲルはサヤへと向き直った。
「それじゃヤヨイ────頼んだ」
「これで私とお兄様の大恩は無しですから。構いません」
「連れないねぇ。まぁ、お前らしいけどな」
「それに貴方こそ────お兄様の事をお願いします」
「当たり前だ。俺にとっちゃ大事なダチ公だからな」
「──では、失礼します」
フイっと、踵を返してキラ達との合流の途に着き始める3人。
最後にもう一度ミーアはミゲルと視線を交わし、頷きあってからその場を後にしていく。
「これで……一安心だな」
静寂に包まれる裏路地の中。
心底の安堵を含んだミゲルの呟きが溶けて消えていくのであった。
いつの間にか、周囲の喧騒は消えていた。
サラの腹部には激痛が走っており、その身体はスタジアムのステージ、その中央に横たわっている。
こつこつと靴が床を鳴らす音に視線を巡らせれば、金色の少女、水色と緑の少年が歩み寄って来るのが見えた。
やはり、周囲の喧騒は消えていた。
「ステラ、アウル、スティング────残党は?」
「──大丈夫」
「1人も逃がしちゃいないぜ」
「人数と死体は確認している。間違いない」
近くで佇む悪鬼は何でもない様にその報告を受け取っていく。
たった今、総勢24名の人間を殺し尽くして、それでも何ら感慨の無い平坦な声で報告をし合う彼等に、サラは漸く自分達が何に手を出してしまったのかを理解した。
生身での生き死にが掛かった戦闘行為。裏方のエージェントとて常ではない。事があれば大なり小なり命をやり取りした興奮状態などが表に滲み出るものだ。
しかし、彼等にはそれが微塵も無い。戦闘があった事をまるで感じさせない声音とやり取り────こんな事態が日常茶飯事な、そんな連中を相手にしていたのだと理解させられた。
「お、お前達は……一体……」
まだ自分は生きている────ではなく、生かされている。
サラがそれに気が付くのに時間はかからなかった。
他の者達は憂いを絶つために全員物言わぬ骸に変えられているのだ。自分だけがこうして意識を保ち、声を出せる状況など意図した結果しかありえない。
その答えを示す様に、悪鬼ユリス・ラングベルトは懐から通信端末を取り出した。
操作され、映し出される映像に、サラは目を見開いた。
『────すまないね、サラ。君がこれを見ていると言う事は、きっと君は行動を起こしてしまったのだろう』
リアルタイムではない、恐らくは映像記録。だがそこに居る人物は紛れもなくサラが忠誠を誓った人間、ギルバート・デュランダルであった。
『私は君の能力を買っていた。だからこそ、君が彼女達の外出許可を取り付けた事には驚き、不審を抱いた。優秀な君であれば今の情勢でそのような提案はするはずがない────必然、何らかの含みがある可能性は嫌でも思い浮かんだ』
「つまり、私とミゲル・アイマンの来訪は議長からの提案ってわけ。まぁ、ミゲル・アイマンの方は何も聞かされてなかったけどね。聞いてたらあの子を連れだす様な事はしなかっただろうし」
「そ、そんな……じゃあ、議長は……」
サラの問いの答えは、通信端末に映る本人から返される。
『だから、彼女に任務を任せた────事が起きた場合には私に繋がる全ての痕跡を消して欲しいとね』
目を見開く。それは、死刑宣告と同義……否、もっと酷い現実をサラへと突き付けた。
コペルニクスで起きた一連の騒動。そこにギルバート・デュランダルへと繋がる可能性のある一切を抹消する。
つまりそれは、彼の腹心であったサラを、存在諸共闇へと葬り去る事である。
デュランダルに忠誠を誓い、彼の為を想ってミーアを葬り去ろうとした彼女は、皮肉なことにそれが原因で自らが存在を闇に葬られる側へと陥ってしまっていたのだ。
『すまないね、サラ────さようならだ』
「いや、待って……待って下さい議ちょ──」
渇いた音が、1つ大きく鳴り響いた。映像が途切れ、サラの声が途切れるのもまた同時。
ぱたりと力無く伸びる肢体。命の灯があっけなく消された音と共に、感慨の無い瞳が絶望を浮かべた眼を見下ろしていた。
「────胸糞悪いわね。あの狸議長はホント」
手配していた暗部の者達に死体の処理を任せる中、ユリスは冷めた瞳でそれを見つめた。
恐らくはこうして全てを利用し、使え無くなれば捨てるのだろう。
今回とて、事が起きた結果ミーアが巻き込まれ命を落とすなら嬉しい限り。だからサラの進言に耳を貸したはずだ。
あわよくば最大の不確定要素を、デュランダルはサラと共に葬り去ろうとしていたのである。
「バカ兄さんは議長の本性くらい見抜いてるんでしょうけど────ミイラ取りがミイラにならない事を願うわね」
元々タケルとデュランダルの関係は利用し、利用される関係。
世界に真なる平和を齎すために、戦える立場と力を求めてプラントを訪ねたタケルと。
デスティニープラン実行の為に、反発勢力とやりあう為の戦力を求めてタケルを受け入れたデュランダル。
タケルの胸の内を感じ取れるユリスは知っている。
タケル・アマノは決して、ギルバート・デュランダルを信じてはいないと。デュランダルから齎される全てが、彼の大望の為であり、そこにタケルを慮る気持ちなどは無い事を。
タケルもそれを理解し、彼が求めている歯車となって利用されたうえで、彼の事を利用しているに過ぎない。
2人が見る先の未来が、どの程度重なっているのかはわからないが、完全に一致等と言う事は無いだろう。
何れ2人は、どこかで道を違える────ユリスはそう読んでいた。
「でも残念。兄さんもデュランダルも大事な事を見落としてるわ」
ユリスは懸念を隠す事なく呟いた。
事が進んで来た今、視野狭窄になっていると言う所だろうか。
2人は今現在、最大の戦いを目前に控えその準備に奔走している。
反デスティニープランを掲げ同盟を結んだ、地球圏統一同盟軍との戦いだ。
実質、世界の行く末を決める戦い。
地球では着々と加盟国が軍事戦力を集結させているし、同様にプラント側にもユーラシア西地域などプラント寄りの国家から戦力が集まってきている。
ギルバート・デュランダルは先日の声明でプランに賛同しないものを人類の敵と断じたし、同盟軍の代表となったカガリ・ユラ・アスハもまた、デスティニープランは人類を種として滅ぼす破滅の施策だと表明している。
どちらもが、人類が滅びぬ為と嘯きながら戦力を集結させている今の状況に、人類最後の戦争の気配を、ユリスは感じ取っていた。
だが、そうして2つの勢力による衝突が目に見えているからこそ……ユリスには悪意の気配が世界に潜んでいる気がしてならなかった。
カガリ・ユラ・アスハの誅殺未遂。ユーラシア西地域を襲ったデストロイによる破壊。死の商人ロゴスの公表と排除。オーブを撃ったレクイエムに、ダイダロス基地で作り出された超巨大兵器フルングニル。
これまで世界で起こってきた事の全てが点となり、薄くか細くも線で繋がる────その先に、あの男が関係していると。
2年前……あのオーブ戦役より苦渋を味合わされ続けた彼が、嘗てのラウの様に暗躍していると。
ユリスはそれを信じて疑っていない。
「ロゴスを壊滅させたからって勝った気になっているなら、足元を掬われるわよ────あの男はもう、立場も利益も求めていないんだから」
「何怖い顔してんだ、ユリス?
「ユリス、怖いの?」
「んなわけねえだろ。ユリスが何かに怖がるタマかよ──痛ぇ!?」
不穏な気配を纏うユリスに疑問符を浮かべる3人。アウルには拳骨を叩きつけながらユリスは警戒心を霧散させた。
懸念は幾つもある。しかし、今心配しても詮無い事だ。それよりも今は、治療を完全に終えた結果、今では最高の仲間と言える存在になった彼等を祝福する方が有意義であった。
「あぁもう、こんな時が来るなんてね……おいで、ステラ」
ぱっと顔を輝かせて飛びついて来るステラを抱き止めつつ。苦笑するアウルとスティングと視線を交わす。
そうしてユリス・ラングベルトは、人生で初めて幸せの感情に満たされて誰もが見惚れる様な笑みを浮かべるのであった。
「────ラングベルト」
飛び込んできた声に、ユリスは幸せな表情から一転。
「バジルール…………少佐……」
目に映る人物に驚愕と混乱を顕にするのであった。
というわけで、コペルニクス編終了。
運命が変わったミーアとエクステンデッド。
主人公、ユリス、ミゲル、サヤと原作では居ない者達がseed編から紡がれた繋がりをもって、死の運命から掬い上げてくれました。
戦争終わったらミゲルはプロデューサーさんになる様です。中の人変わるけど革命デュアリズムとか一緒に歌って欲しいね。
ちなみに作者の見解ではミゲルは二枚目半。ハイネが二枚目です。二人とも主要キャラとは違うモブ顔の作りですがその中でもカッコいいのは間違いないと思う。
さてさて次回は幕間。
ラクスとミーアのお話と、、、、主人公が嫁と再会の予定。どうぞお楽しみに。
それでは、感想よろしくお願いします。
この組み合わせ気持ち良すぎだろ!!
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タケル&ユリス
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キラ&アスラン
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シン&サヤ
-
イザーク&ディアッカ
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ミゲル&ハイネ
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タケル&キラ(SEED編より
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ラウ&ユリス(SEED編より
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アサギ&マユラ&ジュリ