機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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登場キャラが…………決戦を前に描くキャラが多すぎる。
故に2部構成


幕間 心を決めて 前編

 

 

 C.E74年8月某日。

 

 

 

 プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、月面ダイダロス基地跡地へと集結した地球圏統一同盟に対し、プラント侵攻を目論む敵勢力と断定。

 先だって行われた統一同盟軍指揮官カガリ・ユラ・アスハのデスティニープラン反対声明を付随する形で、彼らに対し滅びを歩む人類の敵として宣戦を布告。

 機動要塞メサイアを伴い、同盟軍討伐に向けて動き出した。

 

 対する地球圏統一同盟は、オーブ、ユーラシア連邦、東アジア共和国、大西洋連邦を中心とした統一同盟議会での決を採択。

 人類を遺伝子で縛り、種としての未来を閉ざそうとするギルバート・デュランダルとデスティニープランを潰滅するべく、ダイダロス基地跡地より全戦力を派遣する事を決定。

 地球圏に存在していた大半の軍事戦力を集結させた大艦隊が、プラントへ向けて動き出す。

 

 

 

 こうして、人類を救おうとする者達による史上最大の戦いが、L5近傍にて勃発しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

『果たして人類は、これまでに何を失い得て来たのか。豊かを求め、飽くなき欲望の果てにたどり着いた今の我々に、争いを終わらせることが……過ちを学び、正すことができるのだろうか? 

 否である。彼等は何も理解できていない! 2年前、そして此度の大戦を経て滅びかけている人類の現状。彼等は見て見ぬ振りをし、そしてまた彼等は、まだ人類が滅びの道を歩んでいないと嘯いている!

 デスティニープランは人類を殺す計画だと彼等は言う。だが! なれば一体どんな計画が、今の人類を救えると言うのか! 今この時だけの義憤に駆られ未来を見据えぬ者達が。繰り返される戦いの歴史にどうやって終止符を打つと言うのか。それが示されぬ限り、デスティニープランこそが唯一、人類を存続させる救済策である!』

 

 

 プラントへ……世界へと発信されるデュランダルの演説。

 鬼気迫る表情には、これまでの彼らしからぬ程に強い気持ちが伺え、プランと人類に向けた想いの程を声と言葉で訴えかけていた。

 

 

『人類は生き残るために、未来を繋ぐために、今度こそ変わらなければならないはずだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな映像をフォルトゥナの艦橋でタケル達は聞いていた。

 ユリスを筆頭にMS部隊コンクルーダーズも全員集結。艦長席にはナタル・バジル―ル。CICにメイリン・ホークも座り、その他艦橋クルーにも先の大戦を生き抜いた者達から選ばれたエリート揃い。

 現行ザフトにおける、最強の部隊の面々であった。

 

 

「議長さんってば、随分な演技派じゃない」

 

 

 嘲る様に呟いたユリスの言葉に、他の面々は眉根を寄せた。

 

「──ラングベルト、その物言いは止めろ。貴様にはあれが演技に見えるとでも」

「はいはい、わかってますよ。相変わらずお堅いわねバジル―ル艦長。皮肉で言ってるのよ。

これまで腹の底が読めない演技派だったせいで、その疑念が払拭し切れてないじゃないって話」

「だが、演技かどうかはともかくとして……議長の急な強行姿勢への転身は、確かにプラント内でも疑念の声は出ている」

「ハイネ、君から見てプラントの情勢はどんな感じ?」

「身辺警護に回っていた俺の所感だが……8:2ってとこだな。俺達が行ったロゴス討滅の件もあってやっぱり議長への信奉はまだまだ篤い」

「足元はまだ盤石と見て良いだろう、タケ────ラ、ラウラ隊長」

「イザーク……頼むからボロ出さないでよ」

 

 真面目な会話の中で、イザークの今だ慣れない隊長呼びに思わず苦笑が漏れる。

 イザークとしても、タケルが自身の上に立ち隊長を務める事に不本意な気持ちはあるのだろう。なんならイザークは、タケルをふん縛ってダイダロスへと送りつけたいくらいであった。

 今もまた、タケルの言わんとした事を察して締めてくれる辺り、なんだかんだで優しい対応をしてくれるイザークにタケルが密かに救われていたのは内緒である。

 これがアスラン相手であれば、きっとこうはならないだろう。

 

 緩みそうな己の口元を引き締めて、タケルは今一度艦橋内を見渡した。

 

 

「さて、フォルトゥナ隊諸君。改めての確認だ────敵は大軍。背後にはプラント。その(未来)にはデスティニープランがある。

 僕達に負けは許されない。諸君等の覚悟を今一度聞かせてもらいたい」

 

 

 今ここで、ギルバート・デュランダルの演説を聞いて。そして、その先にあるデスティニープランの導入実行を見据えて。

 此度の戦いに挑むその士気を確認するべく、タケルは問いかけた。

 

「ここに居る人間の大半は、お前みたいに大それたことは考えてねえよ。ただ俺達には、もう二度とプラントを争いに巻き込まない責任がある」

 

 代表として声を挙げるのはミゲル・アイマン。

 上の人間が……戦争を起こす人間が持つ思惑など関係ない。あるのはただ、目の前にある現実のみ。

 背後にある大切な場所に向けて戦いの火が迫りくる以上、それを排し守る事こそが彼等の務め。

 

「核ミサイル。レクイエム……もうあのような犠牲は沢山だ」

「俺達は目の前でそれを撃たれちまったしなぁ」

「あれ程自分の無力さを痛感する事もねぇだろうさ。プランがどうこうは関係ねえ。先の事は後で考える。とにかく今は、これ以上プラントに戦火を持ち込むわけには行かねえだろうよ」

 

 悔恨を浮かべて述べるのはイザーク、ディアッカ、ハイネの3人。

 2度に渡って伸ばした手が届かず齎された破壊の光は、彼等に決して拭いきれぬ恐怖を植え付けていた。

 世界を敵に回しプラントへの侵攻勢力と銘打つ事で、ギルバート・デュランダルは上手い事彼等にとってのプラント(人質)をとったと言うべきだろうか。

 ある意味では、見事な立ち回りと言える。

 

「私はそうね……このクソッたれな世界がプランで少しはマシになるなら是非も無しって所かしら。あの子達にとってもまだ生きやすい世界になりそうだし」

「いや、君には別に聞いてないよ。大体が筒抜けなんだからわかってるし」

「わかっててもそこは黙って聞いときなさいよ……」

 

 冷ややかに告げられ怒り心頭のユリスが拳を握りしめるも、必要かと言わんばかりの意志がタケルから伝えられユリスは拳を下げた。

 そう、大体が筒抜けであるのだ。

 タケル・アマノがこの戦いに向けている想いも、覚悟も────その先に見ている未来も。

 

「──バカ兄さん」

 

 静かに、誰にも聞こえない声でユリスは呟いた。

 

 

「メイリン、君はどうだい?」

 

 

 艦長席へと背を向けて状況を注視していたメイリンは、投げかけられた問いにゆっくりと振り返った。

 

「──覚悟も何も必要有りません。私は、ラウラ隊長に付き従うだけですから」

 

 覚悟決まった表情で、そんな事を返してくる。

 艦橋内でも一番年下の少女が見せる強い声と言葉に、妙に空気が引き締まる気がした。

 

「他の皆はどうだろうか?」

 

 艦橋内を見渡して投げかける。

 コンソールを前に己の職務に集中していた者達は皆、メイリン同様に振り返ると変わらぬ覚悟の表情を見せていた。

 

 コンクルーダーズの皆と同じ想いである。

 プラントにこれ以上、被害は出せない。

 平和な世界が、これで訪れるなら。

 

 異句でありながら、そこにあるのは退かぬ心。戦う覚悟が並んでいた。

 

 

「──重畳だ」

 

 

 万感の感謝を込めて、タケルは溜め息と共に吐き出した。

 新たに得た仲間と共に────今日この日、争いだらけの世界に終止符を打つと。

 

 

「コンディションレッド発令! 全員、決戦に備え持ち場に付け!」

 

「了解!」

 

 

 応の声は同時。重なる敬礼に礼を返し、持ち場へと向かう仲間達を見送る。

 

 

 

 

 最後に残ったタケルは、艦長席に座るナタルへと寄り添った。

 

「──行ってくるよ」

「あぁ、気を付けて」

 

 小さく、そして言葉は少なかった。既に2人の間に確認も何も必要はない。

 デュランダルに呼ばれジェネシスを見せられたあの日に、2人は十分に必要な時間を取っている。

 

 同盟軍の代表であるカガリと、オーブ軍旗艦であるアマテラスを討つ事で決戦の幕を引くとタケルは告げ、ナタルはその覚悟を受け止める。

 余計な事は言わず、ただ自身を抱きしめながら静かに“わかった”と言ってくれたナタルの胸で流した涙を、タケルは最後にすると胸に誓った。

 

 世界を平和にするために。2度とオーブを焼かせないために────タケル・アマノは初めて、大切な人を失う覚悟を決めたのだった。

 

 

「バジル―ル艦長、指示があるまではフォルトゥナも待機だ────留守を任せる」

「はっ!」

 

 

 肩書のやり取りを最後に示すと、タケルも艦橋を後にして己の機体へと向かう。

 出ていく際に振り返っていたメイリンと目が合えば、“御武運を”等と声に出さずに鼓舞される。

 頷きで返せば、タケルの気持ちはまた1つ固まった気がした。

 

 

 

 

 

 静かな艦内通路を進めば、妙な高揚感と共にタケルの身には力が入り微かに震え始める。

 武者震いと言うやつだ。奥底に沈めた憎悪と絶望にケリをつけるべく、逸る気持ちの表れであった。

 

 

「──父さん、漸く終わらせる事ができるよ。オーブを焼いたこの世界の争いの連鎖を」

 

 

 亡き父、ウズミを思い浮かべた。

 

 

「それが父上に託された、僕の役目だから」

 

 

 記憶に刻み込まれたユウキの薫陶が脳裏をよぎった。

 

 

「見ててください、トダカさん」

 

 

 慕っていた最後の庇護者の無念を、タケルはその身に宿した。

 

 

 

 

 悪意に満ちた世界に反旗を翻すべく。タケル・アマノは最後の戦いへと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あぁ言う所は議長に敵わないな。見事なものだよホント」

 

 

 

 オーブ国防軍旗艦アマテラスの艦橋にて、統一同盟軍指揮官カガリ・ユラ・アスハは映し出されたいたデュランダルの演説を見届けていた。

 

 理をもって説く言葉の数々。学者肌で聡明な彼だからこその切り口だ。

 感情で人を動かすタイプのカガリとは真っ向から相容れない様相である。

 

「痛い所を突いて来る……確かにこちらは、この混迷した世界に対する解答を持ち合わせてはいない」

 

 人類を遺伝子によって管理する……意思を奪い、種としての生き方を完全に否定するデスティニープランを受け入れられないと非難する事はできる。

 だが、プランに対する問題点は挙がったとて、彼がプランへと踏み切った根本の事由、滅びの道を歩み続ける人類の救済に対して、彼等はまるで答えを持ち合わせていない。

 

 確かに彼が言う通り、それがない以上はデスティニープランこそが人類救済の唯一となる道である。

 

「だが、それに呑み込まれるわけにはいかない。

 確かに、プランを否定したとて今後も平和への道は模索し続けることになるだろう……仮に平和を手に入れたとしても再び戦乱が起こらないとは限らない。

 それでも、遺伝子による管理は生物として存在する意味を殺す」

『それは議長が言う人類の滅びと、意味を違えぬ事だと私も思います』

 

 モニターに並んだエターナルの艦橋に居るラクスからも声が挙がり、カガリは静かに頷いた。

 

『皮肉な話よね。私達はどちらも、滅びに向かう人類と言う現実を突きつけられた結果動いていると言うのに。望む未来がこうも違うのだから』

 

 もう一方に映り込むアークエンジェルの艦橋からも、マリューは悲しい表情を浮かべて口を開いた。

 争いを無くし、平和な世界を────人類の滅びを回避したい。

 その想いは同じだと言うのに。こうして大きな戦いへと至ってしまった。

 

 これこそがやはり、人類が半永久的にわかり合えず戦い続けた歴史の集大成な気がしてならなかった。

 

「ラミアス艦長、ラクス……準備は?」

『艦隊の方は滞りなく展開中よ。これだけの布陣とお膳立て……今更不意打ちも無いと思うけど、全艦隊で警戒態勢は厳にしているわ』

『私達も問題無く。遊撃部隊のエターナルはMS隊も含めて即応態勢で待機中です』

「わかった。艦隊はポイントD-01のラインまで出て停止。

 議長の声に、私は返事をしなくてはならない……キサカ、艦を任せる。指示があるまでは絶対に動くなと厳命を出しておいてくれ」

「了解だ」

『カガリさん、余り気負わないで』

『どうか、気を付けてください』

 

 アカツキに乗り込む為艦橋を出ていくカガリにかかる心配の声を、カガリは大丈夫だと何とも無い様に返した。

 

 決戦前の最後の舌戦。その為に、フラッグシップであるアカツキに乗り込み艦隊の最前へと躍り出るつもりで居るのだ。

 マリューが言った様に今更不意打ちは無いだろうが、それでも2人の不安の種は尽きなかった。

 

 

 

 静かな艦内通路を進み、格納庫へと向かう道中。

 カガリもまた、タケルと同じくその身を震わせていた。

 

「兄様……」

 

 不安の身震いであった。

 未だ嘗て無い、敬愛する兄が敵となる事態。戦いにくいと言うような心構えの話ではない。

 唯々、勝てるのかという不安に身を震わせていた。

 

 2年前のオーブ戦役の折、兄と共に国の英雄と持て囃される事になったカガリではあったが、かの英雄譚は実質兄の功績である。

 カガリ・ユラ・アスハが成したこと等、ただ声を挙げただけでしかない。

 

 戦略、兵器、そして活躍。それらは全て、兄が積み重ねて成してきた事の結果であった。

 

 双肩にのしかかる、地球圏の代表と言う重荷。

 国の為にも、地球の為にも。そして人類の未来の為にも。

 カガリとてこの戦いで敗北を喫するわけにはいかない。

 

 その負けられない戦いの相手に兄がいる事は、どう足掻いても拭いきれない不安の種である。

 

「大丈夫だ……やれる。私は、負けるわけにはいかないのだからな」

 

 頭を振って疑念を払拭した。

 戦力差はざっと4:1。フレイが言った様に、十分に数だけで圧勝できる戦力差だ。

 2年前のオーブ戦役とは違う。今度はこちら側の練度も十分に高い。

 兄がどのような手段を用いたとて、負けるはずがない。

 

 

「止めて見せるぞ────兄様」

 

 

 言い聞かせるように呟くと、カガリ・ユラ・アスハもまた決戦の舞台へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミネルバ艦内。

 

 スティング、アウル、ステラの3人を新たに加えたミネルバMS隊も、格納庫で各々機体に乗り込むところであった。

 

 

「────シン、サヤ」

 

 己の乗機、コアスプレンダーを見上げながら、先に待つであろう戦場に想いを馳せてルナマリア・ホークは陰鬱な表情を浮かべた。

 

 今やミネルバの生え抜きパイロットは自身とレイの2人のみ。

 堅物で愛想の無い初代隊長も。どこか危なっかしい意地っ張りな少年も、もう居ない。

 更に、一時はここで彼等を率いていた先達である二代目三代目の隊長2人も艦を離れている。

 平々凡々であった自分や、優秀ではあったものの目立たなかったレイが最後まで残っているのは、結局のところ地味な奴ほどなんだかんだで生き残るという、アカデミー時代に聞いた戦争の裏話を体現したような気分になった。

 

「(別にいなくなった皆が死んだわけじゃないんだけど……まぁ、死にかけてる人もいるしね)」

 

 結局今回の戦いでもひっそりと生き残れる……何となくそんな根拠の無い自信も湧いて来るが、頭を振って気持ちを切り替える。

 

 これまで彼女だって何度も死にかけてきている。

 直近では月面でフルングニルに消し飛ばされそうになったし、L4ではハーケン隊に仕留められかけた。

 生き残れたのは全て、これまで自身が研鑽を重ね生き抜いてきた結果だ。

 

「(私だって、あんた達と同じつもりよ)」

 

 劣等感に苛まれ続けた自身を奮い立たせる。

 サヤ・アマノとシン・アスカ……ユリスが言った様に、シンがあちらへと寝返り敵となったのなら、彼等と戦わなくてはならない。

 勝てるわけはないと以前の自分なら諦めていただろう。

 

 だが平凡な自分でも戦い抜いてきたという自負が、決戦を前にしたルナマリアを支えていた。

 

「──ルナマリア?」

 

 ふと、傍らから飛び込んでくる声に目を向ければ、新たに轡を並べる事となった、少女が居た。

 

「ステラ……どうしたのよ。何か用?」

「ルナマリア、怖い?」

 

 手折られそうな心の機微を、彼女の表情から読み取ったのだろうか。

 普段からは想像つかない様な聡い彼女に、驚きを浮かべる。

 

「怖い? 大丈夫よ、今更なんてことはないわ」

「気負うなって。あれからユリスとシミュレーションもしたろ? 俺達4人の小隊編成なら、ユリスとだって渡り合えた」

「ユリスの奴とやり合えるなら、怖い敵なんてタケルくらいだろ?」

「スティング、アウル……」

 

 いつのまにか集まってきた彼等の顔を見て、少しずつ肩の力が抜けていく。

 その通りであった。インパルスシステムの完成後、ユリス・ラングベルトが徹底的に彼等を鍛え上げたのだ。

 その成果は十分にその身に沁みついている。タケルよりもよっぽどスパルタであった分、想い出すだけでルナマリアの目には涙が浮かぶくらいなのだから。

 

「彼等の言う通り、気負うなルナマリア」

「レイ……」

 

 新たに飛び込んでくるのは、ミネルバ生え抜き最後の1人。

 今や彼も、FAITHとなりMS隊の隊長として存分に力を発揮しているレイ・ザ・バレルである。

 

「敵にシンとヤヨイが居る事は俺達にとっては辛い事だ……だがそうだとしても、俺達にはプラントを守り、議長とデスティニープランを守る使命がある────フォルトゥナに居る隊長の為にもな」

「えぇ……そうね」

 

 遠い目をして、ルナマリアは再びコアスプレンダーを見上げた。

 

 今こうして、生きて戦いに臨めるのは。恩師たる彼が居たから。

 射撃が苦手な事以外特筆する事が無い、平凡だった自身を磨き上げてくれたのは、一時は好意さえ抱いた彼のお陰と言えるだろう。

 その恩義に報いるのに、此度はまたとない戦いとなる。

 守りたい家族もプラントに居るとなれば、迷いも不安も吹き飛ばせる気がした。

 

「ありがとう、レイ。ちょっと気合いが乗った」

「ふっ、それでは困るな。インパルス小隊の小隊長はお前だ。空回りされては困る」

「レイ、あんたねぇ……最後の最後まで澄ました顔で、毒吐かないでくれる?」

「これも同期の愛故だ」

「そんな歪んだ愛はお断りよ!」

 

 ゲシっ、と拳をレイへと押し当てて、ルナマリアはレイと笑い合った。

 少なくなった同期ではあるが、共に戦い抜いてきた絆はいつの間にか強く、思いの他深くなっていた様であった。

 

 隣に彼が居る。これ以上心強い事は無いと、そう思えた。

 

 

「ではいくぞ────これがきっと、最後の戦いだ」

 

 

 隊長からの指示に頷き、皆が己の機体へと乗り込んでいく。

 

 

 起ち上がる機体システムと共に、彼等は戦意を引き上げていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エターナル艦内。

 

 フリーダムとジャスティス。

 キラ・ヤマトとアスラン・ザラ。

 

 オーブ国防軍へと組み込まれた2人ではあるが、ミーティアの運用を考え自由に動きやすい遊撃隊となったエターナルへと配置される事となり、彼等もまた決戦を前に昂る戦意を抱えてコクピットで待機していた。

 

 

「──ねぇ、アスラン」

「むっ、どうした?」

 

 

 淡々とシステムチェックを続ける親友へと通信を繋ぐ。

 決戦を前に何の淀みも無い答えを返してくるアスランに、キラは緊張している自分が妙に情けなく思えた。

 

「僕達は、本当に正しいのかな?」

「何だ、急に?」

 

 要領の得ない問いかけであった。アスランは眉を顰めて首を傾げて見せる。

 

「デュランダル議長の言ってる事、決して間違ってはいないんじゃないかなって思うんだ」

「それはそうだろう。議長だって間違ったことであんな風に演説などできないさ」

 

 自身の言葉に自信がなくては、あの迫力は出せはしまい。

 自身の信念に偽りがあっては、世界を相手にすることなどできるはずもない。

 今目の前にある現実こそが、ギルバート・デュランダルの述べる事が決しておかしなことを言っていないことの証明である。

 

 人類は確かに、多くの同胞を自ら殺し、滅びへの道を歩み続けていた。

 

「じゃあ、僕達は何でこんな風に争わなきゃいけないの? 議長だってこんな強行姿勢じゃなくて、ゆっくりとプランの実用性を訴えて行くことだってできたはずなのに」

「わからないさ、そんな事は…………議長の言う通り、俺達は本当に滅びに瀕しているのかもしれない。プラン以外に、生き延びる道は無いのかもしれない」

「だったら──」

「だがそれは誰にもわからない。未来の事なんて誰にも────でも、だから俺達は戦って、前に進み続けるしかないんだ。それが平和な世界に繋がることを信じて」

 

 信じるものが違うから。

 願う未来は同じでも。求める結末は同じでも。己の内にある大切な柱が、彼等と自分達では違う。

 

 今は向こうにいる、親友(タケル)とも。

 

「負けられないのは、皆一緒だ。本当は戦いたくなんて無いのも,俺達はきっと同じはずなんだ」

「うん、そうだよね」

「アイツは本当に大馬鹿野郎だ。人一倍戦いたくなくて、弱い癖に、最後の最後まで強がって」

「うん、本当にね」

 

 度し難い、と言わんばかりにアスランは憤慨の声を飛ばしてくる。

 それでもその声音に、彼を責める様な気配が感じられないのは、恐らくキラの気のせいでは無いのだろう。

 キラも、アスランも…………そのベクトルが向かう先は同じ。自分自身へと向いていた。

 

「アスラン、僕達で必ず」

「あぁ、俺たちでケリを付けよう」

 

 彼を討つ事になるのなら。それだけはカガリにさせてはならない。

 全ては、無力であった自分たちの責だ。

 

 静かに途切れた通信と共に、2人は同じ様に虚空を見つめるのであった。

 

 

 

 

 




決戦前の覚悟前編。
いよいよの決戦模様。後編書いたら本当に最後の戦い開始です。

感想、よろしくお願いします。

完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)

  • 後日談の日常回
  • オリジナルプロットの劇場版
  • SEED FREEDOM
  • 企画:タケルユリスinOO世界
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