『私は、地球圏統一同盟軍指揮官カガリ・ユラ・アスハである』
全周波で届けられる音声。
アマテラスを発進した金色の機体アカツキは背後に3機、3色の近衛を従え、ザフトの前へと黄金の身を曝していた。
L5近傍にて対峙する2大勢力、プラントと統一同盟軍…………いや、地球圏を統一した連合母体となった今こそ字面の通り“地球連合”と呼ぶことが相応しいだろうか。
2年前に一度は終わった、連合・プラント大戦と同じだけの構図が今、カガリの目の前に広がっていた。
『私は、統一同盟代表としてギルバート・デュランダル議長へ最後の通告をさせてもらう。
貴方が提唱したデスティニープランは、人類の意思を奪い生物として生きる意味を殺すものだ。地球圏統一同盟は、斯様な人類の管理プログラムを断じて許容する事は出来ない。
また、プランの提唱に伴いデュランダル議長が世界に示した、プラン否定派を人類の敵とする強行姿勢……これは人類がそう在らねばならないと決めつける画一的な思想であり、断固として受け入れられぬものである。
以上の事から、我々統一同盟はデスティニープランの即時撤回と、プラント国家が保有する軍事組織ザフトの解体────そして、地球圏との融和政策を、氏に望むものとする』
俄かに、音の広がらぬ宇宙空間にどよめきが起こった気がした。
ここにきて。これだけの決戦模様を敷かれていて尚、統一同盟の代表となったカガリ・ユラ・アスハが望むのは、講和による平和。
ある者は甘えた事をと罵倒した。ある者はここまで来ておいて何をと憤慨した。
『────以上、賢明な判断を期待する』
まるで勝った気でいる……通信を聞いたザフトの兵士達が浮足立つ中、艦隊には逸るなと厳命が飛び交った。
降伏勧告に等しい物言いである。少なくとも、カガリ・ユラ・アスハに相応しい呼びかけとは言えない。
疑問と疑念が渦巻くその中で、デスティニーで待機中のタケルは酷く冷めた瞳で呟いた。
「カガリ、それがこの世界の……人類の限界だよ」
これは歩み寄りではない。通告の内容の大半は正に勝った気でいる者達の言葉だ。
いくら同盟の代表になろうとも、
即ち先程の通告は、カガリ・ユラ・アスハが同盟を通じて言わされているに過ぎない。彼女の意思が通った言葉など、最後に付け加えられた一文のみである。
亡国に近しい惨状となった自国の復興と国民の暮らしを、同盟各国からの支援と言う形で盾に取られた彼女は、同盟の傀儡となる以外に道は無いのである。
中立でいる自由を奪われた獅子の牙は、既に折られ抜かれてしまっていた。
「──だから、僕達は変わらなくてはならないんだ」
間違った者達が権力を握り、争いを呼び起こすものが支配階級に蔓延る。
そんな腐り切ってしまった人類の社会構造を一度破壊し、立て直さなくてはならない。
タケルは再び、この世界のどうしようも無い部分を見つめて憎しみを募らせた。
待ち構えている内に、通信口に小さなノイズが走り、宙域に居る誰もが待ち望んでいた返答の声が発信される。
『プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです。統一同盟の意向は良く分かりました。ですが、私は残念でなりません。
戦う力を集め、寄越し、プラントの安全を脅かそうとする……その姿勢を見せられて自らを守る軍事組織の解体など、受け入れられるはずも無いでしょう。
特にそれは────アスハ代表の方が良くお分かりの筈です』
それは、嘗ての大西洋連邦……ロゴスに与する者達のやり方と同じだ。
戦端を開く為にふっかける無理難題。断れば攻め入ると……あらかじめ定められた結果に向けた、意味の無い茶番でしかない。
そんなやり口に染められてしまった、気高かったはずの獅子の娘を、デュランダルはまるで哀れむ様に告げた。
『然るに、要求を受け入れる事はできません。我々はその様な、旧態のやり方に縛られるべきではないでしょう』
『どのようなやり方であれ、プランの導入と言う人類抹消計画よりはマシだ』
『どれ程荒唐無稽な計画でも、人類滅亡の道をこのまま往くよりは良い』
聞いている者達にわかりやすい様に、カガリ・ユラ・アスハとギルバートデュランダルの間で、対立の構図が成った。
どちらもが自分達が正しく、相手こそが間違いであると。
互いの代表が決裂を示した時、その場にいる者達の戦意に火が入る。
『────決裂の時だ、議長』
『えぇ、残念でならない……アスハ代表』
合図は、今この時。
『同盟軍各位! 人類を見誤り、世界の趨勢を定めようとする彼の計画を打ち砕き、我等の手で人類の未来を切り拓く────全軍、ギルバート・デュランダルを討て!!』
『勇敢なるザフトの将兵達! 自らの愚かさから目を背け、未だ破滅への道を歩み続けようとする者達を討ち、我々は閉ざされようとする人類の未来を守り抜く────全軍、カガリ・ユラ・アスハを討て』
戦闘目標は互いの代表……どちらもが失われれば、組織の瓦解を意味する総大将。
『開戦だ!!』
C.E74────今ここに、人類最後の戦いが幕を開けた。
両雄の開戦の声と同時、二つの陣営は即座に艦隊へと指示を下した。
居並ぶ大艦隊に火が入り、次々と動き出していく。
艦載砲の稼動────そして、MSの発進である。
「フォルトゥナ、機関最大。ハッチ解放! コンクルーダーズを発進させろ!」
『了解した、コンクルーダーズ発進する────メイリン、頼む!』
『はい! ハッチ解放、カタパルト接続』
カタパルトに乗せられるはデスティニー。
格納庫に響くメイリンのアナウンスと共に運ばれ、次の瞬間にはVPSが機体を紫へと染め上げた。
type-Cに乗るユリス・ラングベルトは、2年前を超える規模の戦いの舞台に思わず舌舐めずりをしていた。
「さぁて、戦うとしますか!」
『デスティニーtype-C、発進どうぞ』
「ユリス・ラングベルト────type-C、行くわ!」
紫翼を広げ、フォルトゥナより悪鬼が飛び立った。
『続いて“アスパイア”スタンバイ。カタパルト接続、タイミングをパイロットに譲渡します』
ユリスに続く2機目はZGMF-X62Sアスパイア。
嘗てミゲル・アイマンが駆ったディバイド。タケル・アマノが乗り込んだエスペラントから受け継がれる、一撃必殺のコンセプトを追求し昇華させた、最後の機体。
任されるは当然、ミゲル・アイマンである。
「よし、行くぜ! ミゲル・アイマン────アスパイア、発進する!」
背部の大型スラスターがけたたましい音を吐き出し艦を飛び出せば、VPSが機体をエスペラントと同じ純白へと染上げる。
友の想いと母国を背負いし戦士が、最後の戦場を駆けだした。
『続いてデスティニーヴェステンフルス機。発進どうぞ!』
「あいよ、ハイネ・ヴェステンフルス────デスティニー、行くぜ!」
気さくな声と共に飛び立つはデスティニーの2号機、ハイネ専用に色鮮やかなオレンジカラーで染められた運命の翼が、光を広げて戦場に舞った。
『デスティニーtype-D、type-B。両機スタンバイ、発進どうぞ』
「了解した……ぬかるなよディアッカ」
「OK、今回ばかりはおふざけ無しだぜ」
「イザーク・ジュールだ────type-D、出撃する!」
「ディアッカ・エルスマン────type-B、発進する!」
長きを共に歩んだ
『ラウラ隊長、type-L発進準備完了です────お気をつけて』
「うん、ありがとう」
向けられる特別な想い────それを確かに受け止めて、タケルはメイリンへと頷いた。
ナタルと再会した事で、彼女に対して強い負い目を覚えたものの、他ならぬメイリン自身がまるで気にしていないと……そんな事は大丈夫だと言う様に、彼女はいつも通りであった。
ともすればこれまで以上に、タケルに対して明け透けに想いを向けている様な気さえした。
だがそれを、戸惑いながらもタケルは素直に受け止める事とした。
もう、これで終わらせるのだ。
辛い戦いの日々も、守れぬ恐怖に怯える事も終わる。
最後まで折れず戦い続けるために。ナタルとメイリン……2人の好意に甘えてでも自身の心を律することに決めたのだ。
見据えた戦場はまだ静か……これより出撃し、死地へと向かう。
見開いた目には覚悟を宿し、タケル・アマノはフットペダルを踏み込んだ。
「クルース・ラウラだ────type-L、出るぞ!」
人類の争いに終止符を打つ為、白翼は最後の戦場へと赴いた。
「こちらも動くわ。アーサー、アビー!」
「は、はい!」
「了解!」
フォルトゥナ同様、艦長タリア・グラディスの激でミネルバも動き出す。
「トリスタン、イゾルデ起動! ミサイル発射管、全門ナイトハルト装填!」
アーサーの指示と共に発射の準備を進める艦載砲。
そして、MS隊の発進準備を進めるアビー・ウィンザーである。
『MS発進シークエンスを開始します────レジェンド、カオス発進スタンバイ』
両舷のハッチが解放され、レイのレジェンドとスティングのカオスがカタパルトへと乗せられていく。
「スティング・オークレー…………ルナマリアを頼んだ」
「あぁ? あんたも大概心配性だな。まぁ、ファントムペインが付いて回るんだ。安心しときな」
「ふっ、そうだな。ユリスの肝いりなら問題は無いか」
始まりはアーモリーワン。敵対し、撃ち合った間柄である。
しかし、今ここに蟠りはなく、あるのは信頼。
タケルが居て、ユリスが居て、彼等もまた共に戦う仲間となった。
スティングの返答に燻っていた心配の種を捨て去り、レイは開かれたハッチの先を見つめた。
『レジェンド、カオス発進どうぞ』
「レイ・ザ・バレル────レジェンド、発進する!」
「スティング・オークレー、カオス行くぜ!」
灰色に染まるレジェンド、濃淡の緑色へと装甲が色づくカオスを吐き出して、ミネルバのカタパルトには続いて青と黒が乗せられた。
「さぁて、行くよステラ」
「うん。ステラも、戦う」
この身を救ってくれた大恩を胸に、少年と少女は自らに植え付けられた力を振るうことを誇りとした。
タケルとユリス。今の自分達が彼等のおかげで在ると言うのなら。それに報いるのは今この時をおいて他にない。
『続いてアビス、ガイア発進どうぞ』
「アウル・ニーダ────アビス行くよ!」
「ステラ・ルーシェ…………ガイア、発進する」
アウルとステラの機体もまたVPSに装甲を染められ、再び戦場へと飛び出した。
『メインハッチオープン。コアスプレンダー、及びフライヤー射出準備完了』
ミネルバMS隊最後の一人。そしてインパルス小隊隊長。
特別な経緯で割り当てられた小隊長の立場ではあるが、それでも自身が小隊長になる事など考えたことが無かったルナマリアは、胸中に湧き上がる
今となっては、自身がそれに不足だとも思わなかった。
尊敬する
優秀過ぎた同期のせいで劣等感を抱えていた彼女だが、それも過去の話。乗り切ってきた過去があるからこそ、ルナマリア・ホークは今、自信を持って己を見つめることができた。
「了解したわ。ルナマリア・ホーク────コアスプレンダー、出るわよ!」
小さな戦闘機が一つ。胸部、脚部、そして武装シルエット────初手は混戦となる前に遠距離戦を想定したブラストシルエットである。
全てが繋がりドッキング。此度の戦争で多大な戦果を挙げたミネルバと並ぶ立役者、インパルスの完成であった。
「さぁスティング、アウル、ステラ、行くわよ!」
返される応の声を背後に並べ、ルナマリア・ホークもまた最後の戦場へと飛翔した。
ザフトが一斉に動き出すと同時、同盟軍でも次々と部隊が動き出していく。
『イケヤ隊、ゴウ隊、ニシザワ隊、順次発進』
『ババ隊、アマギ隊は後詰で待機せよ』
『試作機甲部隊はカガリ様の後退を護衛せよ』
第一艦隊のオーブ国防軍。
その中で、白亜の大戦艦アークエンジェルも開戦の合図に即座に行動を開始した。
「アークエンジェル、発進します! MS隊出撃よ────ムウ、サヤちゃん、シン君!」
『了解だ。ムウ・ラ・フラガ────シロガネ、出るぞ!』
『サヤ・アマノ────シンゲツ、参ります!』
『シン・アスカ────デスティニー、行きます!』
白銀、暗夜、紅蓮。
それぞれの翼を広げて、アークエンジェルから3人が出撃していく。
「こちらも動きましょう────キラ、アスラン」
『うん、出撃するよ。アスラン!』
『あぁ、行こう。アスラン・ザラ────ジャスティス、出る!』
『キラ・ヤマト────フリーダム、行きます!』
エターナルからはフリーダムとジャスティスが。
『私等も行くよ!』
『アイサー!』
『いつでも!』
更に、カタパルトより次々と飛び立って行くのは、ハーケン隊の3機のドムトルーパー。
エターナルを守る様にハーケン隊が固まる中、発進したフリーダムとジャスティスはミーティアユニットとドッキング。
大部隊を相手に暴力的なまでの火力を持つ装備を備え、戦場に向けて動き出した。
続くように第二艦隊であるユーラシア連邦の艦隊からも夥しい数のMSが出撃。
更に第三の東アジア共和国の艦隊も、次々と艦船が動き出し前線を押し上げ始めた。
ザフトの眼前に大きく広がる、圧巻と言える超戦力。
戦力差は4:1────-とてもザフトに勝ち目はない。
戦場に出た同盟軍の殆どは、そう認識していただろう。
────オーブ国防軍と、彼を知る者達以外は。
「っ!? 艦長!」
一番最初にそれに気が付いて声を挙げたのは、最前線を走ろうとしたアークエンジェルの艦橋にいるミリアリアであった。
目に映ったのは、センサーが検知した熱源のマーカーが、恐るべき速度で画面を移動していく様。
そしてそれは、伝染病の様に瞬く間に同盟艦隊へ
「アカツキに向かって、高速で接近する熱源を確認! 数は2……彼です!!」
報告と同時に、同盟軍の悪夢が始まった。
光の翼を最大展開────白翼と紫翼のデスティニーが、戦場の只中を駆け上がっていく。
ザフトも同盟軍も、艦隊戦のセオリーとも言うべき艦砲射撃から次いでMS戦闘へと移行する動きを見せる中、両軍どちらからも孤立するように飛び出したタケルとユリスの2人は、ただ真っ直ぐに戦術目標────カガリ・ユラ・アスハを目指していた。
「──行くぞ、ユリス」
「兄さん、今度こそ腑抜けたら許さないわよ!」
共鳴するようにSEEDへと陥ると、光を失った二対の蒼穹の瞳が居並ぶ大艦隊を睥睨した。
機体が悲鳴を上げそうな更なる加速を以て、2人は最大戦速で同盟軍へと突撃していく。
勃発したこの史上最大規模の戦い────だが、2年前の戦争とは大きく異なる点がある。
それは、明確な戦術目標があることだ。
同盟軍はアカツキを駆るカガリ・ユラ・アスハ。
ザフトはメサイアに居るギルバート・デュランダル。
どちらも自分達の代表を失った瞬間、戦う意味は失われると言って良い。
もしカガリが討たれてしまえば、オーブと言う国が名実共に潰えることになるだろう。そうなればその先に、統一同盟をまとめ上げデュランダルへ対抗できるような人間は居ない。
対するザフトもまた、ギルバート・デュランダルが討たれてしまえばデスティニープランは潰えることになる。
彼が居るメサイアの中枢にはプランの根幹を支える量子コンピューターが設置されており、人類の遺伝子を分析・管理する設備が備えられていた。彼を討ちメサイアを破壊してしまえば、もはやデスティニープランは泡沫の夢と消える。
つまり、此度の戦いは2年前の互いを滅ぼし合う様な戦争とは違う。
両陣営とも、明確な
であるなら、同盟軍が最も恐れる事態は何か────それは無論、総大将であるカガリ・ユラ・アスハを討たれる事。
勿論それは簡単ではない。
総戦力差で凡そ4倍の差を持つ同盟軍は、当然ながら艦船の数もMSの数も桁違いだ。
目標をアカツキに絞って突撃したところで、馬鹿げた数の迎撃射撃に沈められて終わるのみである。
──―そう、この2人を除けば。
稼働を始めた艦隊の艦砲射撃が一斉に2機のデスティニーへと向けられた。
数多のミサイルが…………灼熱のビームが襲いかかってくる中、しかし白と紫の翼は止まらなかった。
前衛のユリスと後衛のタケル。先行するユリスに向けられた火線を、後方のタケルが把握し回避先を認識共有によってタイムラグ無く伝える。
「3秒後!」
「オーライ!」
光条と時間差でやって来るミサイルの雨。それすらもtype-Lのライソウが迎撃し隙間を作って抜けていく。
SEEDによる知覚領域の拡大。常人を遥かに超える埒外な思考速度────そして、同じ遺伝子がもたらす認識の共有。
死角を無くしたこの2人に、狙いの甘い艦船の遠距離射撃など無意味であった。
2人の様に認識を共有できるのであればいくらでも回避先を限定させ追い込んでいくことが可能だろう。
優秀な指揮官と統率された射手がこの事態を想定し備えていたのなら或いは、撃ち落とすことができたのかもしれない。が、事ここに至って────数の利と開戦直後と言う意識の隙間が、対応を後手にさせる。
彼我の距離は、このままでいけば後数分と言う所まで詰められていた。
何という失態だ……。
マリュー・ラミアスは対応に慌てふためく同盟軍を見ながら、僅かな時を後悔に沈んだ。
知っていた筈だった。理解している筈であった。
タケル・アマノが敵に居る時点で────―セオリーや定石と言ったものは全て覆してくることを。
増してや今彼は、数の不利を抱える
戦力差を覆す戦いにおいて、彼の右に出る者はそうは居ないだろう。
彼自身が高い戦術眼を持ち、戦力差を覆すその駒と成れるのだ。
できる事を100%把握している人間が駒となれば、これ程想定通りに戦えることもない。
人の意識を、陣営の隙間を、戦力の弱点を突く────タケル・アマノは戦場におけるトリックスターである。
相手が想定する予想図を覆し続ける。それこそが彼の戦い方だ。
こうして大慌てとなった同盟軍の陣容を見るに、初手から同盟軍は完全に術中にはまってと言える。
艦隊同士の撃ち合い。そこから続くMS戦闘と言う流れを取っ払い接近されたことで、同盟艦隊は混乱し艦載砲の向ける先を持て余してしまった。
無論、ザフトがその好機を逃すはずも無く、次々とザフトからは同盟艦隊へと攻撃が加えられ始めている。
2年前。タケル・アマノがシロガネを駆り大西洋連邦艦隊を強襲した時と同じ戦術が、今目の前で繰り返されていた。
懐に入られた多数陣営は、フレンドリーファイヤを恐れて迎撃もままならない。こうなれば後は一方的な戦いとなるだろう。
既に彼等はアカツキを射程圏内へ捉えようとしていた。
「──でも甘いわよ。タケル君」
静かに、どこか対抗する様にマリューは険しい声で呟いた。
先頭を走るユリスのデスティニーへ白銀が飛来する────ドラグーン兵装ジンライが、ユリスの行く手を遮った。
数多の火線が捉えられなかった悪鬼を捉えたその攻撃は、彼の機体を駆るフラガの血族が成せる業か。
「貴方はいつでも……自分を侮り過ぎている」
足を止められたユリスを置き去りにし、駆け抜けたtype-Lはアカツキへと急速接近。
腰部に増設されたフラッシュエッジを抜き放ち、アカツキへと振りかぶる。
瞬間、光が散った。
間に割り込む朱色の機体。
ORB-08────マユラ・ラバッツが駆るシュトリが脚部ビームブレイドでフラッシュエッジを受け止めていた。
「シュトリ……マユラかっ!?」
「姫様は、やらせない!!」
瞬間的に悪寒を感じた時には、デスティニー目掛けてシュトリの掌部にあるビームニードルが叩き付けられようとしていた。
「ちっ!」
タケルは即座に距離を取るも、次の瞬間type-Lの全周囲を夥しい数のミサイルが囲んだ。
「これは、コンカクの制圧射撃……君か、ジュリ!!」
「アマノ三佐、墜ちて下さい!」
「嘗めるな!」
ライソウの展開と一点集中でミサイルを迎撃し隙間を抜ける。
背後に広がった爆炎を抜ければそこには急速で接近してくる黄色。
「これでぇええ!!」
「キンシャク……その程度で仕留められると思うのか、アサギ!」
駆け抜け様に振るわれるビームサーベルを切り払うも、即座にキンシャクは背部のビーム砲塔を展開。
光の翼を広げているデスティニーの背部を狙い撃った。
「なっ、早い!?」
振り返りビームシールドで受けながら、タケルは僅か冷や汗を流した。
良く知る動き。良く知る戦い────これは紛れもなく、自身が育て導いた彼女達の連携だ。
しかしその練度は、明らかに想定を大きく上回る。SEED領域下にいるタケルを相手に、3対1とは言えタケルが回避と防御に専念させられた。
アカツキの眼前に居並び立ち塞がる3色を見て、タケルの表情は険しくなった。
「甘く見るな兄様────兄様が鍛えた彼女達だぞ。練度も対策も、抜かりない!」
「マユラ、ジュリ、行くよ!」
「油断しないでねアサギ!」
「援護は任せて2人とも!」
悲しき
難しいやり取りが苦手でごめんなさい。
初手は奇襲の読み合いと言うべきか。
カガリの近衛は伊達ではない、な3人娘。次回は主人公とガチってもらいます。
そしてサラッとユリスを押し留めるフラガの血族。こっちもこっちでネオとユリスの再会で一悶着。
次回から本格的に決戦模様。どうぞお楽しみに。
感想、よろしくお願いします。
完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)
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後日談の日常回
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オリジナルプロットの劇場版
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SEED FREEDOM
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企画:タケルユリスinOO世界