機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-119 原因と結果

 

 

 幕は上がった。

 

 

 デスティニープランを巡って、総力を結集した統一同盟とプラント────L5宙域近傍にて展開された、史上最大規模の総力戦。

 

 

 第2次連合・プラント大戦である。

 

 

 

 開幕はコンクルーダーズ率いるタケル・アマノとユリス・ラングベルトによる、異次元の中央突破。

 虚をつかれる形となった同盟軍が、防衛対象であるカガリ・ユラ・アスハへと意識を割かれる中、次々と打たれるザフト側の巧手。

 前線艦隊を薙ぎ払う2隻のミネルバ級が放った陽電子砲。続く一騎当千の集団コンクルーダーズによる、広域での蹂躙戦。

 

 対応が後手に回った同盟軍指揮官カガリ・ユラ・アスハは、コンクルーダーズのカウンターにフリーダムとジャスティスを宛て各所の劣勢を覆し、体勢を立て直したところで戦力差を頼みにした包囲戦を画策。

 少数精鋭による一点突破で陣営を喰い破ろうとするザフトに対し、彼女もまた自身が良く知る精鋭をぶつける事でこれを相殺。戦力差を頼みにできる状況を作ろうとした。

 

 画して、戦場は一先ずの戦いを定め始めた。

 

 

 

 

「っ!? 来たか────ディアッカ!!」

 

 声が挙がるのとほぼ同時。ディアッカ・エルスマンはtype-Bのイヴァルディを切り離し、散弾砲と高出力ライフルを撃ちまくる。

 大量に吐き出された光条は、広範囲への弾幕となって接近してきたフリーダムへと襲い掛かる。

 

「くっ、狙い撃たれた!? この攻撃は────」

「でぇええい!!」

 

 虚をつかれて僅かに動きを止めたフリーダムを、全開速度で接近したtype-Dが強襲する。

 反射的にミーティアのアームユニットからビームソードを出力して薙ぎ払うも、光の翼が齎す高機動が空を切らせた。

 

「なめるなぁ!」

 

 剛毅果断────迷いなく潜り込んで接近したイザークは、ミーティアのアームユニット1つをブラズニルで両断した。

 

「ぐっ、うぅ……ちぃ!」

 

 ヴォワチュール・リュミエールが齎す高機動────シンの活躍が記憶に新しいキラは、2機のデスティニーを確認して早々にミーティアユニットを乗り捨てた。

 いくら速度が出ようとも、機動性を犠牲にする大型アームドユニットを装備してデスティニーを相手取るのは下策である。

 乗り捨てられたミーティアユニットが即座にイヴァルディに撃ち抜かれる中、再び迫りくるtype-Dのブラズニルをキラはビームサーベルで受け止めた。

 

「嘗めるなと言ったはずだ──キラ・ヤマト!!」

 

 接触回線から届く裂帛の声。総毛立つ危機感と共にとっさに機体を背後へと翻せば、僅かな差でtype-Dの脚部ビームクロウがフリーダムを逃して空を切った。

 

「はぁ……はぁ……イザーク、さん?」

「俺もいるぜ、キラ」

 

 通信越しに届く声。キラには覚えがあった。

 2年前は共に肩を並べて、最後の戦いに赴いた知人だった。

 

「ディアッカ……」

「ふっ、久しぶりの再会なのに悪いけど、こっちもやる事が多いんでね」

「早々にここで墜ちてもらうぞ。キラ・ヤマトぉ!」

 

 威勢良く相対して居並ぶ蒼灰とベージュのデスティニ────―どこか既視感を覚えて、キラは表情を険しくさせた。

 

 キラが駆る“ストライク”フリーダム。イザークが乗るタイプ“デュエル”。ディアッカが操るタイプ“バスター”

 まるで過去(2年前)から這い出て来た悪夢の再来であった。

 

 何も知らず、ただ生き残るために必死に抗い続け、そうして今へと至る始まりの戦い。

 

 重く苦しい、嫌な記憶がキラの脳裏に過った。

 

「くっ、だからって!」

 

 逃げ出すわけにも行かない。キラとて昔と今では背負っているものも覚悟も違う。

 ここで臆して負ける様な事があればこの戦いの趨勢を決めかねないのだ。

 開幕で先手を打たれた以上、今のキラは戦況を覆すための一矢となる事を求められている。

 

 

「こっちだって負けられない!」

 

 

 ドラグーンを射出。青白いヴォワチュール・リュミエールの光を吐き出し全力戦闘へと移行。

 

 2年越しの戦いに決着をつけるべく、両雄は再び激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時、第3艦隊に向かったジャスティスにも、2人の英雄が牙を剥く。

 

 

「相棒、待ちかねていたお客さんだ」

「おぅ、それじゃあまぁ……挨拶代わりだ!」

 

 アスパイアの大型バーニアが全開稼動。

 ヴォワチュール・リュミエールによる高い機動性ではなく、尋常ではない推力を求めたその設計思想から生み出される最大戦速はシロガネ・コクウと並ぶ。

 

 純白が、宇宙を彩り駆け抜ける。

 

 

「──接近する熱源。この速度!?」

「おらぁああ!」

 

 アスランが察知したと同時、ミゲルが駆るアスパイアはティルヴィングを叩き付け、ジャスティスが装備するミーティアのスラスター部を破壊する。

 

「バカな、ミーティアに背後から追いついたと言うのか!?」

「久しぶりだな、おセンチデコリン! 元気だったかよぉ!」

「ミゲル! くっ──」

 

 使い物にならなくなったミーティアを切り離し、ジャスティスもまたMS単独での戦闘に移行。

 そこへ即座に、次の一手が向けられる。

 

「背後がガラ空きだぜ!」

 

 叩きつけられるアロンダイト。とっさにビームキャリーシールドで受け止めれば、アスランの目には色鮮やかなオレンジカラーのデスティニーが映った。

 

「くっ、オレンジカラーのデスティニー……確かシンの言っていたハイネ・ヴェステンフルスか!」

「光栄だな! 裏切り者の英雄にまで俺の名が知れ渡ってるとは驚きだぜ!」

 

 出力任せに押し切られると、背部の長射程ビーム砲を構えて、ハイネは執拗にジャスティスを狙い撃った。

 

「くっ、その程度で!」

 

 射撃間隔の隙を見出して接近。連結したラケルタビームサーベルを出力し、ハイネのデスティニーへと接近していく────が、その瞬間を待っていたかの様にジャスティスの直上から巨大な光条が降り注いだ。

 

「ぐっ、このぉお!」

 

 放たれたのはアスパイアのガラディン大口径モード。

 ジャスティスを丸ごと呑み込まんばかりのビーム砲を、どうにかシールドで受け止めて難を逃れていく。

 

「くっ、息の合った連携。デスティニーと未確認の新型か……」

 

 息つく間の無い攻め手をどうにかやり過ごしたアスランは、冷や汗交じりに慄いた。

 

 ミゲル・アイマンはザフトにおいてトップのパイロットである。

 2年前、タケル・アマノと一騎打ちを続けて来た彼の実力は、決して自分達と遜色無い領域にあるをアスランは知っている。

 そしてハイネ・ヴェステンフルスもまた、特務隊となりデスティニーを託され、コンクルーダーズの一員である。

 その実力は、推し量る事ができる程度には折り紙付きと言えよう。

 

「──すまないカガリ。少し苦戦しそうだ」

 

 覚悟を定めて戦意を引き上げる。

 嘗ての同僚。そして彼等はザフトの先達────アスランの胸に敬意はあった。

 2年前の弱く迷ってばかりであった自分にとって、ミゲルは常に頼れる先輩だったし、プラントを守り続けて来た彼等には尊敬の念しか湧かない。

 だがそれでも、臆するわけにはいかない。

 

 ライフル、シールド、サーベル、リフタ────―次々とステータスをチェックして戦いの時を読んだ。

 

 

「はっ、2年前に比べたら大分迷わなくなったじゃねえか」

「貴方のお陰と言っておきます」

「すぐに化けの皮を剥がしてやるさ」

「生憎だが、裏切り者と蔑まれたのは初めてじゃない」

「ふっ、そうかい────じゃあ、遠慮はいらねえな!」

 

 

 ジャスティス、アスパイア、デスティニー。

 赤、白、橙に彩られた3機もまた、決戦の時を示す様に激しい死闘を繰り広げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時、第2第3艦隊と同じく激戦模様となる中央の第1艦隊。

 

 type-Lに並ぶように到着したミネルバMS隊と、カガリの窮地に駆けつけたシン・アスカとサヤ・アマノ。

 更には、初手の中央突破をどうにか防ぎ止めて見せた、ネオ・ロアノーク改めムウ・ラ・フラガとユリス・ラングベルトも激戦へと突入していた。

 

 

 

 シロガネのビャクヤとtype-Cの腕部ビームサーベルが火花を散らす。

 久方振りの対面となったファントムペインの同僚同士が、鎬を削っていた。

 

「久しぶりねロアノーク! いえ、今はムウ・ラ・フラガかしら? こうして無事再会できてとっても嬉しいわ!」

 

 背部の複合砲アキシオンを展開。散弾砲でシロガネへと面制圧を掛ければ、ムウはジンライを集結させてシールド上に展開。

 鏡面装甲の疑似シールドを形成して面制圧の光条を霧散させる。

 

「相変わらずの跳ねっ返りだな! こっちはこうして再会できたことが、複雑で堪らんよ!!」

 

 ネオ・ロアノークで在った時は、結局被検体であったステラ達を使い捨て、形式上ではあるがユリスへと“けじめ”を促した。

 その先で彼女がどう動くかも見越したものではあったが、それでもネオが行った所業は外道の一言に尽きる。

 記憶を取り戻した今となっては、そこにアル・ダ・フラガの遺した業も加わり、彼女に対して合わせる顔が無いと言うのはムウの本音であった。

 

「安心しなさい! 今も昔も変わらず、私が貴方に向けるのは憎しみだけよ!」

 

 接近と同時に苛烈な剣戟。腕部ビームサーベルを2本出力し、旧式のシロガネを縦横無尽に切り付ける。

 それをムウはジンライを牽制に掛け、ビャクヤも2本出力しどうにか凌いで距離をとった。

 

「くっ! それがそっちに居る理由か!」

「はっ! ふざけた事言わないで頂戴! 貴方なんかの為に私の生きる道を決める筈がないでしょ! 兄さんはステラ達を助けてくれた──私だけじゃどうにもならなかった現実を、兄さんは覆してくれたのよ」

 

 驚愕に揺れる。

 齎された事実は、ネオ・ロアノークの罪科の在処。そしてその清算が成されていた事。

 再び、ムウの表情に苦痛が過った。

 

「タケルがステラ達を…………くっ、俺はどこまで」

「ステラ達だけじゃない、兄さんは私の生きる道を示してくれた……私がこっちに居る理由なんて、それで十分」

 

 ヴォワチュール・リュミエールをフル稼働。眩い光の翼を展開し、type-Cはシロガネへと迫った。

 

 

「世界の愚かさを知る私達は、このクソッタレな世界を今度こそひっくり返すって決めたのよ!!」

 

 

 2年前と変わらぬ憎悪を……だが、2年前とは違う未来を見据えて、ユリス・ラングベルトはシロガネへとパルマフィオキーナを叩きつけた。

 寸前でジンライを1基滑り込ませた事でどうにか難を逃れたムウは、必死にユリスから距離を取り続ける。

 

「ちぃっ!!」

「さぁ、抗ってみなさいムウ・ラ・フラガ! 2年前と同じ戦いを……今度は兄さん抜きでね!!」

「上等だ、この利かん坊がっ!」

 

 己の罪を叩きつけられたムウは、それを糧として奮起した。

 ジンライの残る7基を展開。常に死角を狙い続ける驚異的なコントロールと、2本のビャクヤによる連続射撃でtype-Cを狙い続ける。

 

 

 白銀と紫。

 2年前と変わらぬ構図を作りながら、2人は熾烈な争いを続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灰色のドラグーンから降り注ぐ光条を回避して、シンはデスティニーのライフルでドラグーン端末を牽制。

 直後、最大戦速で接近しフラッシュエッジを抜いた。

 

「その程度の動きが通用すると思ったか、シン!」

 

 接近戦における反応速度では劣る筈のレイが、レジェンドのビームジャベリンでフラッシュエッジを切り返す。

 僅かに虚を生んだシンの意識を突くように、再び驟雨の光がデスティニーを襲った。

 

「くっ、レイ!」

「ユリスの言った通りだ。ヤヨイの元へ行き、お前は容易にギルと……そして彼を裏切った」

「違う、俺は──」

「裏切り者の言葉を聞く程、俺は甘くない!」

 

 ドラグーンと高出力ビームライフルによる波状攻撃が、デスティニーを襲う。

 全方位を囲ってくる光の檻から、シールドを駆使して抜け出せば、そこには更なる機体が待っていた。

 

「アビス!?」

「そぉらよ!!」

 

 振り下ろされるビームランスをどうにかビームシールドで逸らし、ギリギリのところでシンは危機を脱した。

 

「シンっ! 今援護に──」

「あんたの相手は私よ、サヤ!!」

 

 シンゲツへと降り注ぐ巨大な閃光。

 動き出しを完全に抑えたそれはブラストインパルスが持つ最大火砲ケルベロス。

 無論、これを駆るはルナマリア・ホークである。

 

「くっ、インパルス……ルナマリア!」

「呆けてる場合かよ!!」

 

 周囲から向けられる光条。分離された緑色の機動兵装ポッドからの攻撃を回避すれば、即座にシンゲツにはカオスのビームサーベルが叩きつけられた。

 

「ルナマリアから聞いてるぜ……お前がミネルバの赤いMSのパイロットだったんだってなぁ!」

「接触回線!? まさかこの機体とパイロットは、アーモリーワンの──」

「散々やられたカリは、今ここで返してやるぜ!」

「くっ、なんで貴方達がルナマリアと!」

 

 連合が生み出したエクステンデッド……地上で見た研究施設を思い出し、サヤは惑った。

 最愛の兄が彼等を救うためにファクトリーへと滞在していた事はラクスより聞かされていたが、その先でまさかプラントへと渡り、更にはミネルバのMS隊の一員となって相対することになるなど。一体誰が予想できようか。

 アーモリーワンへの襲撃はザフトにとって大きな出来事である。その主犯である3人を再製されたセカンドステージに乗せる等、本来有り得ない。

 

「ギルバート・デュランダル……一体どこまで利用するつもりですか!」

「やぁあああ!」

 

 背後より接近する漆黒の機体──ステラ・ルーシェが駆るガイアが背部のソードシルエットに備えられたエクスカリバーを抜いて迫る。

 

「その程度……甘く見られたものです!!」

 

 ゲツエイ2本からビームサーベルを出力。エクスカリバーを受け止めると同時、シンゲツの腰部に展開されるビーム砲塔ツキヨミが光を吐き出した。

 ステラはシールドで受けながらどうにか後退し距離を取った────それを見て、サヤの表情が僅かに揺れる。

 

 急速接近からの攻撃。それを受け止めると同時にマニピュレーターを必要としない兵装で奇襲紛いの反撃に出たと言うのに、ガイアは反応し防御して見せたのだ。

 

 この反応速度は記憶にない……彼女は知らぬ事だが、超再生で強化されたエクステンデッドの真髄を感じ取っていた。

 

 

「サヤ!」

 

 長射程ビーム砲でレジェンドを牽制しながら、フラッシュエッジを投射しシンゲツへ接近を掛けようとするカオスを退ける。

 どうにか距離を引き離し、紅蓮の翼を持つデスティニーはシンゲツへと並んだ。

 

「──シン、気を抜かないで下さい」

「そんな余裕は無いさ。でも……正直キツイ」

 

 後悔を湛えてシンは呟いた。

 

 裏切り者の誹りを受ける自覚はあった。

 鹵獲されたと思えば敵方に回っていたのだ。共に死線を潜り抜けて絆の深い者ほど、そう感じる筈である。

 ただそれをシンは現実にまで落とし込めていなかった。それが自分の甘さだとシンは己の浅慮を悔いた。

 憎しみをぶつけられる覚悟をしておくべきであった。その前提があれば、今この時心を乱すことは無かっただろう。

 

「だけど……俺だって、負けられないから」

「はい、私もです」

 

 どこまでも利己的に。

 これだけの規模の戦いでありながら、世界のために等とお為ごかしはせず、2人はただ己の悲願の為にこの時を戦う。

 全てを失って初めてできた大切な人と、全てを引き換えにしても失えない大切な人。

 

 守りたいから、力を欲した。

 

 

 紅蓮と暗夜に光が灯る。

 

 

「いくぞ、サヤ!」

「参りましょう、シン!」

 

 

 背部に広がる煌々の翼。戦場を照らさんばかりに広げられた大翼と共に────2人は戦場を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリーダムとジャスティス────キラとアスランの救援によって、同盟軍の第2第3艦隊はどうにか落ち着きを取り戻し始める。

 死闘を繰り広げる6人を避ける形で艦隊は動きを開始し、ザフト艦隊へと目を向けていく。

 

 織りなす艦砲射撃による艦隊戦────漸くの正攻法である。

 

 そうなれば今度は数で劣るザフト側が不利となるだろう……が、戦況はそう簡単にいくわけでもなかった。

 第2艦隊と第3艦隊の主軸はユーラシア連邦と東アジア共和国だ。

 主戦力はダガーやウィンダムのMS部隊。艦船の性能とて、連合において勇躍の限りを示したアークエンジェル級を除けば、基本的にザフト艦の方が優秀である。

 何より、人員の能力の差は決定的と言えよう。

 

 兼ねてより連綿と続いてきたナチュラルとコーディネーターの差────それは未だ健在である。

 ザク、グフ等ミレニアムシリーズに対して性能面ではウィンダムで漸く並べる程度。ダガーでは相手にもならない。

 そこにパイロットの能力差も加われば、その差はより顕著となる。

 

 数に対する個の力……古の時代の戦争から兵士の絶対数は大きく数を減らし、1人から1機へと数え方を変えた。

 今この時代において、個の力の差は如実なまでに戦力の差を埋めるのである。

 

 

 思う様にいかない戦況を変えるには、ザフトの個の力に対応できる手が必要であった。

 そして、その一手こそ同盟軍第1艦隊────オーブ国防軍。

 パイロット一人一人に合わせて武装を選定し、量産機でありながらワンオフへと昇華させたMSカゼキリを主軸とした、精鋭部隊。

 地上ではまだ発展途上であったとは言え、ミネルバMS隊を相手に猛威を振るった実績があった。

 

 しかし、その手はまたも彼によって封じられている。

 

 中央の第1艦隊を抑えつける様に襲来したのは、タケル・アマノとユリス・ラングベルト。そして、ミネルバMS隊の面々である。

 一度は大将機まで迫った敵機を放って、オーブ国防軍が前線を押し上げられるわけもない。

 

 気を抜けばいつまたアカツキへとその手を伸ばされるかわからないのだ。

 それ程までに、タケルとユリスの中央突破の衝撃は大きかった。

 

 脳裏に強烈に刻み込まれた危機感が、この戦いの要たるオーブ国防軍の動きを縛り付けたのである。

 

 

「(くっ、ここまで兄様の思う通りという訳か────だが!)」

 

 

 一度後退し、タケルのtype-Lから距離を取ったカガリはオーブ軍へと全体通信を回した。

 

「国防軍各位! 中央を迂回し第2第3艦隊へ追従。両翼より敵拠点へと進軍する! MS隊は全機前進! 先陣を切れ!」

「しかし、カガリ様──」

「侮るな! 私がこれより中央を抜く! オーブの獅子の勇姿、その目にしかと刻みつけろ!」

 

 指示に狼狽えた声を一喝する。

 心配。不安。恐怖────それらが獅子の身体を縛り付けると言うのなら、カガリ・ユラ・アスハこそがその戒めを解く唯一なり。

 

 会心の一手を打ち、この戦局を打開する。

 不退転の決意と共に、カガリはアカツキを走らせた。

 

「アサギ、マユラ、ジュリ────共に往くぞ!」

「はい!」

「了解!」

「続きます!」

 

 見据えるは、彼女達が最も尊敬し目指してきた遥かなる高み。

 

 白い大翼を広げ迎え撃とうとするデスティニーへ、4人は突撃していく。

 

 

 

「────戦局に焦ったかカガリ。それは玉砕と言うものだ!」

 

 

 種が開いた。

 引き出される人間の100%を超える力。SEEDを持つ者だけが到達できる、埒外の情報処理能力。

 

 降り注ぐコンカクのミサイルを迎撃し、迫りくるシュトリの近接格闘戦をいなし、背後へと回り込んだキンシャクのビームライフルを切り捌いた。

 盤石を余裕を生み出し、最後の一手────アカツキへと意識を向ける。

 双刀型のビームサーベルを出力し振り下ろしてくるアカツキを、ビームシールドで受け止め逆腕のパルマフィオキーナをチャージ。

 

 反応する余裕すら与えない。

 反撃の一手で今度こそタケルはアカツキを仕留めに掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──あぁ。

 

 

 それは4人の内誰かが漏らした声だった。

 

 

 ──やっぱり、届かないなぁ。

 

 

 どれだけ研鑽を積んでも。どれだけ強くなった実感が湧こうとも。

 この教官は、もっともっと先へ行ってしまう。

 届かない所へ。手を伸ばせない高みへ。

 

 いつだってそうだ。置いて行かれる人の気持ちなど気にする事無く、足りない足りないと咽び泣く。

 それを聞かされる者達がどれだけ惨めになるのかを、考えた事も無い癖に。

 

 

 ──あぁ、嫌だなぁ。

 

 

 また誰かが呟いた。

 こんな所で終わるのも。こんな形で負けるのも。こんな形で諦めるのも。

 

 

 ──負けたく、ないな。

 

 こうして目の前に現実を突きつけられるのも。

 もう、たくさんであった。

 

 

 

 

 

 

 ぞわっと、タケルの背中を不快な風が撫でた。

 宇宙空間の。それもコクピットの中でパイロットスーツを着ているのに、風を感じる等と言う事は有り得ない。

 それはあくまで、タケルの身体がそれを感じ取った感覚に過ぎなかった。

 

 

 目の前で炸裂した金色の装甲。

 想定外の反応速度で割り込んだアカツキのスカートアーマーが身代わりとなり、パルマフィオキーナを受け止めたのだ。

 

 

 次の瞬間、タケルの周囲を敵意が囲んだ。

 

 

 放たれるカクヨクからの高出力砲。回避先を狙いすましたビームスナイパー。

 その先を読み取ったかのように、待ち構えたシュトリとキンシャクがライフルと近接戦闘の波状攻撃で追従してくる。

 反撃に放ったビームライフルはその悉くを金色のドラグーン端末が備える光波防御帯によって防がれ霧散し、今一度と接近してきた金色が再びビームサーベルを振り下ろしていた。

 

「くっ、これは!?」

 

 湧き上がる動揺を抑えつけ、タケルは必死にそれらの脅威から退くとデスティニーの機動性に任せて距離を取った。

 

 

 戦いは、先程の一合で終わる筈だった……否、終わらせる筈だった。

 覚悟を決めて、容赦なくアカツキを墜とすつもりで、反応できないはずの動きを見せて攻撃したのだ。

 彼女達の能力では、この結果は有り得ない。

 

 

「届かせたの……君達が……」

 

 

 目が覚めた様な動きの変化。それはタケル自身が何度も経験している。

 

 

「引き寄せたと言うのか……この結果を」

 

 

 ナチュラルでもコーディネーターでもない。己の内に眠る全てを解放する、人類の新たな到達点。

 

 ────種が、開いた。

 

 

 

「──SEED」

 

 

 

 4つの双眸が、空虚となってタケル・アマノを見据えていた。

 

 

 

 

 

完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)

  • 後日談の日常回
  • オリジナルプロットの劇場版
  • SEED FREEDOM
  • 企画:タケルユリスinOO世界
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