機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-123 羽撃く翼

 

 月面ダイダロス基地跡地。

 

 幾分かの復旧が進み、統一同盟軍の簡易的前線基地として運用されてるこの場所で、フレイ・アルスターは今起きているであろう戦闘の趨勢に思いを馳せていた。

 

「────カガリ、しっかりね」

 

 彼女にとって、今では良き友と言えるだろう。戦場で熾烈を演じているであろうカガリに向けて声を漏らす。

 互いに公的な立場を持ち接する頻度は少なくなったが、そう言えるだけの感情をフレイは持ち合わせていた。

 カガリ本人は否定するだろうが、2年前父の死を目の当たりにして壊れかけたフレイ・アルスターを救ってくれたのは彼女である。

 以来良き友人となれた今のフレイが居るのは彼女のお陰と言っても過言ではないだろう。

 

 先程まろび出た言葉は、公私を問わずフレイの本心が漏らしたものだ。

 

 公私────私としては無論、友人の勝利。この大きな戦いにおける彼女の成功を祈って。

 此度の戦いはプラントを相手に勝利することだけが目的ではない。その先でオーブの復興、そして復興後の地位を確立するためにも、カガリに敗北は許されないだろう。

 負けるな。がんばれ。そんな気持ちが載せられている。

 

 一方で公として。即ち、ユーラシア連邦に関わる人間としては何か? 

 その答えは、フレイが今向かうその先にあった。

 

 微重力の中基地内を進めば、フレイの眼前には基地を一望できる場所がみえてくる。

 そうして眼下の地表、月面の無機質な基地区画には目を向ければそこにはポッカリと開かれた巨大な穴。

 

「レクイエム、ね────大量破壊兵器には相応しい、随分と洒落た名前だこと」

 

 はっきりと侮蔑を乗せた声音で呟かれたその名。

 先日ザフトとオーブ軍が協力して破壊した、かの兵器レクイエム……それが今、統一同盟の総力を挙げて修復作業が行われているところであった。

 

 既に中継ステーションの大部分はザフトによって墜とされているが、広大な宙域にはまだザフトに発見されていないものが数基残されている。

 目の前の本体さえ修復出来れば、再び悪魔の兵器は運用可能となるだろう。

 

「私にだってわかるわよ。大西洋連邦────コープランド大統領が主導となったこの動き」

 

 狙いは一つ。今行われている最大規模の戦争における最高の戦果を獲得する事。

 即ち、レクイエムによるメサイアへの攻撃だ。

 ジョセフ・コープランドはカガリを戦いの矢面に立たせている内に修復したレクイエムでデュランダルを討ちとり、この戦いの決め手となる事で同盟における最大の戦果を得て、落ち込んだ大西洋連邦の勢力と権威を取り戻すつもりでいるのだ。

 

「そう言う事でしょう…………ミュラー事務次官?」

「おっと、感づかれてたか。軍人でもないのに驚きだな」

 

 2年前より僅かしわがれた声と共に、背後から近づいて来る気配にフレイは剣呑とした表情で返した。

 向かい来るのは未だ軍属で在った時の気配が抜けない、偉丈夫と呼べる体格の初老の男。

 事務次官と言う(まつりごと)への進出を果たし、老獪さをも併せ持つ様に成ったボルト・ミュラーであった。

 

「気密エリアでは空気が循環するので。事務次官は煙草臭いからすぐわかります」

「娘よりも若い子に真正面から臭いって言われるのは傷つくんだがなぁ」

「でしたら煙草を辞めれば良いのではありませんか? 百害あって一利なしですけど」

「大人の嗜みだ。今更辞められんよ」

「そんなんだから目の前のこれも止められなかったのでしょう?」

「そう言うな。俺だけ反対してもどうにもならなかった」

 

 同盟内では保険と銘打たれたレクイエムの修復案。これは此度の戦いに出兵する直前に、同盟全体で採択された案件である。

 大量破壊兵器を振りかざす事に断固として反対を示すカガリに対し、各国代表がカガリの声を支持する事は無かった。それはフレイの目の前にいる、この偉丈夫とて同じ事である。

 ミュラーの言う通り、ユーラシアの反対一つでは止められなかったわけだ。

 

「結局、どの国も最初からカガリを認めてなんかいなかったってわけね。大変な戦いの矢面に立たせるだけ立たせて……胸糞悪いったらないわ」

 

 再び侮蔑と共にフレイは吐き出す。

 そもそもが同盟の発起からしておかしかったのだ。壊滅したばかりのオーブの代表であるカガリを呼びつけ、あまつさえ同盟の代表に挿げる動き。

 18歳の世間知らずな子供を上に立たせたのはそれだけ御し易いからに他ならない。

 相応しかったからではなく、使い易かったから……ただそれだけだ。

 フレイが言う様に、誰もカガリ・ユラ・アスハの力を認めて同盟の代表へと推したわけでは無いのである。

 

「そう言うなアルスター。だからこそ俺達はここに居るのだろう。あれの修復に賛成したからこそ、今ここでできる事がある────修復作業にこちらの技術者を潜り込ませれば、作業の遅延くらいは容易だ」

 

 修復の主導は大西洋連邦……それはレクイエムを生み出したロゴスの隠れ蓑で在った事からも相応しいと言えば相応しい。

 とは言え、ギルバート・デュランダルに追い込まれた大西洋連邦にそれを一から全部やれるだけの余裕が無いのも事実。必然、同盟内での助力は必要であった。

 これまでの戦火の中で、一早くロゴス陣営から距離を置く事ができ、比較的国力の損耗が少ないユーラシア連邦が助力を申し出る事は容易である。

 技術者の中に間者を潜り込ませれば、いま行われている戦いが終わるまでの時間を稼ぐことも可能だろう。

 

「お前さんの言う通りアスハ代表に賭けてやったんだ。わざわざ古巣の地球軍基地まで出張ってきてな。少しくらい感謝しろ」

「それも後にはカガリに売りつける恩の為なんでしょ?」」

「それもまた大人の嗜みだ。綺麗事だけでやっていけるのは、あの嬢ちゃんくらいだ────どの道、アスハ代表が勝てなければそれまでだしな」

 

 カガリが勝てなければそれまで────吐き捨てられた言葉に拳を握り締め、フレイはまた一度ミュラーを睨みつけた

 どちらに転んでも、同盟軍に敗北は無い。そしてユーラシア連邦に損も無い。

 カガリが勝てれば陰ながらの支援を元に恩義を売れるし、カガリが負けるのなら同盟の総意に従いレクイエムによってメサイアを撃ち勝利を得る。

 

 狡猾な……ずるいやり方に反吐が出る想いであった。フレイの剣呑な気配は増していく。

 これが大人になると言うことなのだろうか…………強くなると言うことなのだろうか。

 目指すべき地位と立場が見せる目の前の戦いに、フレイはそうなのかと素直に頷く事はできなかった。

 

「そうだ、それで良い。そのくらい俺達のやり方には反感を覚えておけ。その気持ちががいずれあの嬢ちゃんと肩を並べた時にお前を正してくれる────この戦いが終わったらやる事やって、お前は俺の補佐官に抜擢の予定だ。今の内にそれは飼い慣らしておけよ」

「皮算用ね。まだ終わってもいない事の先を予定しても仕方ないわよ。勿論、準備はしておくけど」

「ったく、素直じゃねえなお前さんは。2年前はもう少し真面目で素直だったのに」

「優秀な部下はご立派な上司の鏡写しとなるのですよ。御存知ありませんか?」

 

 すっと立場の仮面を被り、フレイに痛烈に返されたミュラーは肩を竦めて黙り込んだ。

 出会った頃は何も知らない世間知らずの少女……それがなかなかどうして。随分と荒波に揉まれてやさグレてしまったものである。

 

 そんなミュラーを捨て置きフレイは再び修復中のレクイエムを見つめた。

 

 

「急いでカガリ…………じゃないと、間に合わなくなるわ」

 

 

 届くはずの無い忠告を、遠い宇宙にいる友へと向けるなか、悪魔の兵器は虎視眈々とその時を待っているかの様であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁああ!!」

「おらああ!!」

 

 

 ぶつかり合う紅蓮と橙色の翼。2つのアロンダイトがぶつかり合い火花を散らす。

 同じ機体、同じ性能────2機のデスティニーが繰り広げる熾烈な戦い。勝敗を定める残りのファクターは乗り手のみ。

 

「甘いんだよヒヨッコが!」

 

 しかし、その部分で本来では有利を取れるはずのシンのデスティニーが、ハイネに僅か後れを取っていく。

 ぶつけ合ったアロンダイトを切り返され、即座にデスティニーの頭部へと突き出されシンは目を剝いて機体を仰け反らせた。

 

「くっ、ハイネ!」

 

 アロンダイトをマウント。ライフルへと持ち替え狙い撃ちながら距離を離そうとするも、橙の翼はそれを許さない。

 

「なんだそのやる気の無い射撃は! どこを狙ってやがる!」

 

 光の翼が齎す高機動。漆黒の宇宙を無為に裂いていくビームライフルの閃光を置き去りにハイネはシンへとパルマフィオキーナを叩きつけた。

 

「ぐっ、あぁ!?」

 

 とっさにシールドで受け止めるも体勢を崩されてシンのデスティニーは弾かれた。

 追撃をさせまいと投射したフラッシュエッジで牽制を掛ければ、ハイネは深追いをせずに一度距離を取る。

 

 膠着と共に、2人の間に距離ができた。

 

「はぁ、はぁ…………くっ」

 

 息も絶え絶えに、シンは眼前のデスティニーを見やった。

 思う通りに戦えない────そんな情けない自分を呪う。シンは未だ、踏ん切りが付いていなかった。

 自らがザフトを離反し裏切った事実を。嘗ての仲間達にとって、自分はもう敵だと言う事実を。

 理解して、飲み下して────そうして彼等を敵と認識する事ができずにいた。

 

 あの日、ヤヨイ・キサラギをセイバーごと撃墜した記憶が。シンに仲間であった者達を打つ事を躊躇させる。

 2年前全てを失ったシン・アスカにとって、ザフトで紡いだ繋がりは全てなのだ。

 胸に宿した怒りと誓い────それを形作るための力となった。彼らのおかげで、ようやくシンは自らを誇れる強さを手にする事ができた。

 

 そうは簡単に、手放せる関係ではない。

 

 

 

「シン!」

 

 

 怒号の様な声。

 記憶に残る飄々とした彼には似つかわしくない。随分と怒りに塗れた声を受けシンは僅か身を震わせた。

 

「ハイ、ネ……」

「何迷ってやがるんだてめえは! 俺が相手じゃ本気になれねえとでも言うつもりか!」

 

 構えられる長射程ビーム砲。次々と吐き出される太い閃光をシンは危なげなく躱していく。

 その最中、ハイネからの怒号は続いた。

 

「何で其処にいる! お前は何しにここに来た! 一体何のために戦っている!」

 

 突きつける様に。まるでそれを認識させるかの様に。シンへと言葉で以てハイネは殴りつけていく様であった。

 

「軽い気持ちでそっちに行ったんじゃねえはずだろ! 俺と戦ったぐらいで揺らいでんじゃねえよ!」

「──ハイネ」

 

 呆気に取られるシンへ、再びハイネのデスティニーはアロンダイトを構え接近。

 シンのデスティニーもそれを受ける様に身構えて、またも2機の間に火花が散る。

 

「ヤヨイと一緒に、あのバカ(クルース)を取り戻しに来たんだろうが! その体たらくで敵うと思うのか!」

「ハイネ、何で──」

「跳ねっ返りな部下2人の事くらい、お見通しなんだよ!」

 

 出力に物を言わせて押し切られ、またしてもシンのデスティニーは弾かれて後退する。

 そこへ追撃に投げ込まれたフラッシュエッジをどうにかアロンダイトで捌き切り、シンは静かに口を開いた。

 

「────ごめん,ハイネ」

「あぁ? 何に対してだよそりゃ。ヤヨイに諭されてあっさり寝返ったことか? それとも情けねえ面で今俺にボコボコにされてることか?」

「その、色々」

「はっ! 言葉なんていらねえ。そう言うのは戦いで示してみろ」

「あぁ────わかってる」

 

 申し訳ない。情けない。不甲斐ない。続く言葉を幾つも飲み込んで、シンはただ静かに告げた。

 臆病になっていたのだ。助けたいと誓った(タケル)を見据えていた事で。

 失えば自分もあんな風になってしまうのだろうと────悪いお手本がずっとチラついていたせいで、恐怖に縛られ怯えてしまっていた。

 レイやルナマリアと戦い、ヤヨイの時の様にまた大切な人を撃ち落とす事を恐れていたのだ。

 

 だが、今は恐れる事など何も無い。

 シンは今一度、ハイネのデスティニーを見据えた。

 

「────見ててくれハイネ。俺、ちゃんと戦うから」

「上等だ、かかってきなヒヨッコ。先達として最後のお節介をしてやるよ」

 

 憎まれ口を返してくるハイネに、シンは小さく笑った。

 きっと初めからそのつもりだったのだろう。部隊を離れ敵対することとなった今でも、ハイネ・ヴェステンフルスは変わらず彼等の隊長で在ってくれたのだ。

 迷ってばかりの自分に、道を示してくれようとしていた。

 

 

 “ シン、あの状態へ陥るのには心理的条件がある“

 

 

 思い出すは先日。アスラン・ザラより聞き及んだ言葉。SEED────人が持つ新たな可能性の総称。

 陥るのには人それぞれ条件がある。

 敵を見定め討つと覚悟する時。大切な人達を守ろうとする時。2度と後悔しないと誓う時。

 

 そしてシンの条件は────無力な己に怒りを覚えた時。

 理不尽に奪う世界を前に、何もできない自分への怒り。それこそがシンの没入するためのトリガーである。

 

 未熟な以前は、そのトリガーとなった怒りを外に向けることで暴走してしまった。が、それももう過去の話。

 おあつらえ向きにハイネが自身の不甲斐なさを指摘してくれたのだ。シンが怒りの矛先を己に定めるには十分であった。

 

 愚か者めと、胸の内で誰かが罵倒した。この腑抜けがと、頭の中で誰かが言った。

 須く、自身を叱咤する怒りの声であった。

 

 

 ────種が、開いた。

 

 

 真紅の(まなこ)が光を失う。

 こじ開けられた可能性の扉。遺伝子が約束したその力を、シン・アスカは手元へと引き寄せる。

 目の前の全てを意のままにできそうな全能感に浸りながら、シンは光の翼を展開してデスティニーを走らせた。

 

「良いぜ、やってみろ! シン!」

 

 受けて立つと言わんばかりに、ハイネは身構えた。

 接近してくるシンのデスティニーを確認して、フラッシュエッジを選択し出力。

 対するシンはアロンダイトを選択。右手に握らせたまま左手にフラッシュエッジを取らせ投射する。

 

「その程度!」

 

 牽制にもならない。ビームシールドでフラッシュエッジを弾きそのままハイネは接近してくるシンを迎え撃つ────が、直後にハイネは驚愕に目を見開いた。

 目の前に飛来してくるは長大な実体剣アロンダイト。その切先がデスティニーの頭部めがけて迫ってきていた。

 

「なっ!?」

 

 フラッシュエッジの投射ならまだわかる。そもそもが投射武器であるし何度も牽制に用いられてきた兵装だ。受けるか、躱すか。投射されたところで対処は既に脳裏に刻まれている。

 だが、長大な実体剣────デスティニーのメイン兵装と言えるアロンダイトを投げつけてくる発想は、ハイネにはなかった。

 投げ捨てる理由がないだろう。他のどの兵装よりも高い威力を持つ武器。投げるより手にしたまま攻撃を繰り出していった方が余程有用だ。

 

 故に、ハイネの対処が僅かに遅れる。

 

「くっ、小癪な真似を!!」

 

 十分な質量を持つ実体剣…………弾くにしても簡単ではない。機体の姿勢を大きく変える必要があるだろう。

 なら、躱す。眼前に突き出される様に投射されたアロンダイトを、機体を僅かに横へずらす事でどうにかやり過ごす。

 そして躱したそのすぐ先では──

 

「読みやすいぜヒヨッコが!」

 

 躱した瞬間を狙う様に、アロンダイトへと追従してきていたシンのデスティニーが再びアロンダイトの柄を握った。

 

 想定内────ハイネは万全を喫して、振り下ろされたアロンダイトをフラッシュエッジで受け止める。

 瞬時にビームシールドを展開。出力範囲を調整してビームガンへと仕様を変えるとシンのデスティニーへと狙いをつける。

 

「もらった!」

 

 光条が放たれる刹那────ハイネが乗るコクピットに大きな衝撃が走る。

 

「がっ!? 何っ!」

 

 次いで表示される機体ステータスには、今まさにビームを放とうとしていたシールドが左腕部ごと切り落とされていることが示されていた。

 

 

「俺の勝ちだ──ハイネ」

 

 

 再びの衝撃────左腕部の支えを失ったハイネのデスティニーにアロンダイトが振り下ろされ、右肩口も切り落とされた。

 

 

「ぐっ、バカな! 一体何が──」

 

 

 自分は何を受けたのか。ハイネが浮かべた疑問の答えはすぐに目に入ってきた。

 アロンダイトを背部にマウントし、そしてドラグーンシステムを用いて帰ってくる2()()のフラッシュエッジを格納するデスティニー。

 

「────そうか、アロンダイトを投射した時既に」

 

 接近と同時に投射された1本目のフラッシュエッジ。それを牽制とするかの様に本命のアロンダイトを投射────その影に隠れて2本目のフラッシュエッジを投射し、ハイネがアロンダイトに注力したところへ飛来させる。

 オーブの戦いでシンが以前アスランにやられた戦術と同様の…………だが、より高度に昇華させた単騎での3段波状攻撃であった。

 

 

「あぁったく、この俺がヒヨッコにここまでしてやられるとはなぁ」

 

 

 清々しい声で、ハイネは敗北を認めた。両腕を使えなくなった今、デスティニーにできることはない────完敗であった。

 

 通信越しに聞こえてくる彼の声にシンはSEED領域を脱して通信を返す。

 

「ハイネ、ありがとう」

「やめろやめろ。こちとら墜とすつもりでやってたんだぜ。んな事言われても惨めったらねえだろ」

「あ、あぁ…………とりあえずそのまま撤退してくれよハイネ。もうどうせ戦えないだろ?」

「おう、そうさせてもらうぜ────もう大丈夫だろうが、後はしっかりやれよシン」

 

 最後に見せる厳しい表情と声音。シンは言葉を返す事なく、しっかりと頷いて見せた。

 隊長として最後まで面倒を見てくれた彼に胸中で深く感謝すると、デスティニーを翻しその場を離脱していく。

 

 向かう先はメサイア前方の最前線。

 現在最も激しい戦いが繰り広げられている場所であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ〜あ、負けちまったなぁ」

 

 1人残されたハイネも、静かになったコクピットの中で大きく…………それは大きなため息を吐いた。

 

 発破をかけた。言葉を投げて鼓舞した。それは事実である。

 相も変わらず迷いばかりを見せるヒヨッコの尻を叩き、前を向かせるのは隊長であった自身の責務であったからだ。

 だが、墜とす気で戦っていたこともまた事実であった。

 最初から最後まで────結果としては彼を導く様な問答をしたが、戦闘中の全てにおいてハイネはシン・アスカを墜とすつもりでいた。

 彼の隊長であった事を捨てられなかったが、同時にプラントを守るため、コンクルーダーズの一員として戦っていたことも、また事実なのである。

 

 

 それでも、全くと言って良い程、届かなかった。

 

 

「わりぃなクルース────やっぱり俺は、お前達には敵わねえみたいだ」

 

 

 どこか諦観のある声音と共に、ハイネは静かに眼前の戦場を見て涙を流すのだった。

 

 




久々出番のミュラー氏。

ハイネ、お疲れ様(まだ出番あるけど
次回はサヤちゃんのターン。


感想頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願いします。

完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)

  • 後日談の日常回
  • オリジナルプロットの劇場版
  • SEED FREEDOM
  • 企画:タケルユリスinOO世界
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