機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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断じて、アンチではないです。


PHASE-125 彼方への憧憬

 

 

 戦場のそこかしこで激戦が繰り広げられる中。

 

 

 誰も割り込めない熾烈な死闘を、この世界における最強と最凶が繰り広げていた。

 

 

 

「はぁああ!!」

「おぉおお!!」

 

 

 ぶつかり合う真紅と紫檀。

 アスラン・ザラが駆るジャスティスと、ユリス・ラングベルトが駆るtype-Cはビームサーベルで切り結んだ。

 

 互いに既に、SEEDへと陥り。常人では届かぬ埒外な思考速度のままぶつけては翻す、絶対的な即死の刃。

 アスランはユリスを討ち取るべく。ユリスはアスランを殺すべく、己の全てを総動員して敵へと殺意をぶつけていく。

 

 

 フラッシュエッジを投射しながら腕部ビームサーベルを出力。type-Cがジャスティスを挟む様に迫れば、ファトゥムを切り離しフラッシュエッジを迎撃しつつジャスティスはtype-Cを迎え撃つ。

 即座に肩口へと展開されたアキシオンからの射撃を、ビームキャリーシールドで受け止めれば、ジャスティスはお返しとばかりに脚部ビームブレイドを振り上げた。

 

「見え見えよ!」

「こちらもだ!」

 

 回し蹴りの要領で振り上げられた脚部に合わせるように回転し、至近で投射されるジャスティスのビームブーメラン。

 しかし、ユリスもそれは読み切っていたのかビームサーベルで容易くブーメランを切り捌く。

 

「くっ!」

「遅い!」

 

 投射後の隙を狙う様にtype-Cが踏み込む。

 零距離へと飛び込めば、叩きつけられるのは掌部ビーム砲パルマフィオキーナ。

 

「させるか!」

「はっ、ちぃ!?」

 

 戻らせたファトゥムからフォルティスビーム砲を放ち飛び込んで来たtype-Cを引き剥がす。

 危うく撃ち抜かれるところで距離を取ったユリスは、仕留めきれなかったことに小さく舌打ちした。

 

 息を吐く間もない、熾烈な攻防。

 徐々に膨れて来るSEEDの疲労を感じながら、アスランとユリスは一度距離を取った。

 

 

「はぁ……はぁ……さっすがじゃないアスラン・ザラ! まさかここまでとは思わなかったわよ」

 

 

 2年前と同じ狂気の垣間見える顔でユリスは愉悦を浮かべた。

 

 精神的にムラのある彼女────故に彼女は常勝と言う事は無かった。

 しかし、最高のコーディネーターの被検体であり、様々な強化措置を与えられた最強の人間兵器。

 ムラのある精神性が100%傾いた時に彼女と本当にやり合えるのは同じ存在であるタケルだけ……ユリスはそう信じて疑わなかった。

 

 だが、その領域に無遠慮にも飛び込んで来た目の前の男────ユリスは驚嘆と喜びを禁じ得なかった。

 2年前タケルと演じた最高の死闘。それを同じく演じられるだけの逸材がまだこの世界には居たのだ。

 ユリスが嘗てを思い出し狂喜に震えるには十分な戦いが、そこにはあった。

 

 

「1つ聞かせろ、ユリス・ラングベルト……」

 

 

 その最中、通信越しにユリスの元へアスランから声が届く。

 

「はぁ? 何よいきなり……今最高の戦いをしてるって言うのに、余計な問答?」

 

 折角の戦いに水を差されたような気分になりユリスは狂喜から険悪な気配へと変わって、アスランの声に通信で答える。

 

「この戦い……デスティニープランは、本当にタケルの意思なのか?」

「どういう意味かしら? この戦いは兄さんの意思ではない。あの議長さんに利用されているとでも言いたいの?」

 

 何を言っているのか……真意の読み切れないアスランの問いに、ユリスは嘲る様に返した。

 

「お前が……オーブを失って絶望したあいつに付けこんで、利用しているのではないのか? 2年前の企みを、お前はあいつを利用することで再び──っ!?」

 

 瞬間、アキシオンから閃光が放たれジャスティスを狙い撃った。

 同時に、通信越しからでも感じるユリス・ラングベルトの膨れ上がった気配に、アスランは息をのんだ。

 

 

「利用したですって? 勘違いも甚だしい。その言葉そっくりそのままお返しするわ────お前達は一体どれだけ、兄さんを利用してきた!!」

 

 

 先程までの狂喜から凶気へと己を変えて、ユリスはデスティニーを走らせた。

 無遠慮なまでの接近と同時、腕部ビームサーベルを叩き付け、激昂した表情を見せる。

 

「ふざけたことを言ってくれる!! こうなったのはお前達のせいだろう! 兄さんが国を離れたのも。デスティニープランに飛びついたのも! 心を殺して、貴方達と敵対する事になったのも。全てお前達の責任だ!」

 

 至高の領域で縦横無尽に翻される光刃。それを必死に受け、逸らし、躱しながら、アスランはどうにかユリスの猛攻を凌いでいく。

 

「くっ、何を言って──」

「あれだけの犠牲を払い、あれだけの想いをして。ようやく手に入れた平和……それを自ら崩し、再び悪意の矢を世界中に振りまき始めた人類。そんな愚かとしか言いようのない世界に、兄さんが愛想をつかすのは当然の帰結でしょ!」

「ふざけるな! タケルがそんな事を──」

「ならお前達は何故逃げた!!」

 

 逃げた────要領を得ないながら、しかし聞き捨てる事の出来ない言葉に、アスランは目を見開いた。

 そんなアスランの動揺が見えているかのように、ユリスは隙を突いてパルマフィオキーナを叩き付けジャスティスをシールドごと吹き飛ばす。

 

「逃げた……だと」

「アスラン・ザラ、お前だけじゃない! ラクス・クラインもキラ・ヤマトも……2年前兄さんと共に戦ったはずのお前達は皆! 己の名に背負わされた責任を放棄し平和となった世界の維持を兄さん達に任せ、のうのうと平和を享受しているばかりだった!」

 

 それは、アスランが抱いていた葛藤。

 ラクスもキラも。オーブで静かに暮らす事を選びながら、不安定のままにある世界の未来を憂いつつも、ただ何もできず安寧を享受するままであった。

 

「兄さん達が必死に世界と睨み合ってる間、お前達は一度とて表舞台に顔を出すことなかった。自分達が背負うはずの責任から逃げ続けていた!」

 

 糾弾するユリスの声が、アスランの心を打ち据えていく。

 できる事があるのでは。このままで良いのか。そんな葛藤を抱きながら、無為に過ごしてしまった2年間。

 重ねて来た心の不安を打ち抜かれ、アスランは苦痛を見せる様に表情を歪める。

 

「こうはならなかったはずだ! 世界は少し、今とは違っていたはずだ! お前達が己の為すべき責を全うし、表舞台から雲隠れしなければ────世界はもう少し、兄さんにとって優しい世界になっていた!」

「俺達は、逃げたわけでは」

「己が居れば余計な諍いを生んだか? 要らぬ混乱を招いたか? 詭弁だ! そんなもの、お前達が逃げて良い理由にはならない!」

 

 パトリック・ザラの息子。シーゲル・クラインの娘。名と肩書に付いて来る意味。

 過ぎた時間にもしもは無い……が、仮にもしもアスランとラクスが戦後オーブへと渡らずにプラントに帰っていたのなら。

 ザラ派の残党が起こしたブレイク・ザ・ワールドは起きなかったかもしれない。ギルバート・デュランダルの台頭も無かったかもしれない。

 2年前の大戦を知る2人がプラントに居たのなら、オーブの代表となったカガリと共に、もっと世界は平和への道を歩めていたのかもしれない。

 

 それは巡り巡って、タケル・アマノがオーブを失いデスティニープランへと傾く可能性を否定できたかもしれない材料である。

 

「何故目を逸らし続けた! 平和を維持しようと必死に戦い続けるあの兄妹から……世界が選んだ答えを嘘にしないように戦い続けていたあの2人の傍に居ながら、何故お前達は戦う事を選ばなかった!」

 

 例えプラントに戻れなくても、できる事はあっただろう。

 何もできないと葛藤するだけで、何もできなかった事実が、彼等にはあった。

 

 

「その結果が今だ! 全てを押し付けて来た貴方達が今更、兄さんの何を否定できるという!」

 

 

 怒りの感情に併せて苛烈になっていくユリスの攻撃。

 アキシオンによる散弾砲がばら撒かれ、フラッシュエッジが襲い掛かり、ビームサーベルとパルマフィオキーナが叩きつけられていく。

 

 1つでも判断を誤れば墜とされるその絶対的な攻撃を受けながら、激情をぶつけられるアスランは己の内に沸々と湧いて来る想いに気がついた。

 

「(そうか、俺は……抑えつけていたのか)」

 

 迷って。慮って。黙って。引いて────次々と思い起こされる、様々な場面。

 己の為すべき事に迷い、愛するカガリの立場を慮っては公的な場では黙りこみ。そして陰ながら支えようと自ら表舞台から身を引いた。

 オーブ、プラント、カガリ、キラ、ラクス、タケル、ユウナ。

 ユリスが言う様に、己が成すべき……否、やりたいと言う想いに蓋をして抑えつけ。そうして逃げてしまった。

 

 2年前の戦いの前には有った強い気持ちが、戦いと共にアスランの心から抜け落ちてしまっていた。

 

 

「────だがっ!」

 

 

 振り下ろされるビームサーベルを脚部ビームブレイドで蹴り払う。

 タイミングを完璧に合わせたそれに、反撃の気配を感じたユリスは即座に後退して距離を取った。

 

 

「お前の言う通り俺達は逃げたのかもしれない。だが、なれば尚更、俺達はもう逃げるわけにはいかない!」

 

 

 湧き上がるのは後悔。それは自身に対する絶対的な怒りとなってアスランの胸に煮えたぎっていた。

 気が付いた以上……もう逃げずに戦うと決めた以上。罵詈雑言を投げかけられようとも、退く気は無い。

 迷う必要は無いのだ。やるべきと決めた事に対して、それを抑えつける枷は存在しないのだ。

 

 再び起こった大西洋連邦とのオーブ防衛戦の日。

 自らをタケル・アマノとしてシロガネに乗り込み戦ったあの日の様に、やりたい事に邁進できるその解放感がアスランの心を奮い立たせる。

 

「今更向き合っても遅いのよ!!」

「まだ間に合うさ!」

 

 遅いなんてことはない────何故なら自分達はまだ生きているのだから。

 全てを捨て、世界に生きる事から背を向けようとしている大切な友も、まだ生きている。

 

 

「止めて見せるさ! プランも……あいつも!!」

「ふざけた言葉を囀るな、アスラン・ザラ!!」

 

 

 激昂するユリスと、信念を1つ宿したアスラン。

 戦意を増した2人の戦いは更なる死闘へと突入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8基のドラグーンを射出。

 機体周囲に展開し、ビームライフルと合わせた迎撃態勢を整えた。

 

「──くっ!?」

 

 察知した瞬間には斉射──接近してくる白翼のデスティニーを計10門の砲口で狙い撃つ。

 対するデスティニーはフラッシュエッジを2本手にし、ライソウのビームスパイクを展開。

 驟雨の光条をドラグーンと合わせて切り払う離れ業でストライクフリーダムの制圧射撃を潜り抜けて見せる。

 

「ドラグーンの機動制御プログラムは変えて来たか……でも、その程度で!」

「させない!」

 

 ライフルをマウントすると同時に2本のビームサーベルを出力。

 叩きつけられるフラッシュエッジを受け止めれば、2機の間に光が散った。

 

 

「ごめん、タケル────僕はずっと君に甘えていた」

「何?」

 

 

 通信が繋げられ、届いたのは後悔の声。

 キラから投げられた言葉に、タケルは怪訝な表情をしながら距離を取るも、即座にライフルへと持ち替え連射。フリーダムを狙い撃つ。

 

「君はいつも僕の前に居てくれた。僕より先に戦っていた…………そんな君に、僕はいつも守られてばかりだった!」

 

 守るべきオーブの国民────初めて出会った時から。平和を取り戻した世界でも。

 タケルにとってキラ・ヤマトは、守るべき対象の中から抜け出さなかった。

 ラクスも、アスランも、自らの手元に居る人達は皆総じてタケル・アマノが守ろうとして来た人達である。

 

「君に頼ってばかりだった僕だけど……今更と思うかもしれないけど!」

 

 放たれたビームライフルを、自身のビームライフルで撃ち抜く離れ業で対処。

 迎撃と同時に撃ち返す光条に、今度はtype-Lが退く番であった。

 

「ちっ、戯言を! 今更何を語る必要がある!」

「僕の意志だ!」

 

 光条を躱して突撃してきたtype-Lのパルマフィオキーナをビームシールドで受け止めると同時、胸部のカリドゥス複相列ビーム砲を展開。

 追い払う様に鮮やかな閃光を吐き出していく。

 

「くっ!」

「ずっと守られて来た僕だから……君を助けられなかった僕だから……今度こそ僕が、“君達”を守って見せる!」

 

 2年前果たせなかった誓い────タケルとキラが目の前でサヤ・アマノを喪ったあの日。

 タケル・アマノはキラ・ヤマトの存在を生み出すために犠牲となり、キラの存在を守る為に利用された。そんな過去を持った大切な友であり、兄。

 彼の為に戦うと決めたその誓いは、未だ果たされていない。

 

 ドラグーン、クスィフィアス、全砲門を用いたフルバーストがtype-L目掛けて放たれた。

 

「もう君も気付いているはずだ! デスティニープランは都合の良い平和を実現する計画なんかじゃない!」

「ここに至って……ならどうするつもりだ! プランなくして平和を生み出せるというのか! また何の見込みも無い平和の幻想に縋って、君達は再びオーブを焼くつもりか!」

 

 ビームシールドで受け止めながら、その場を離脱しライソウを射出。再び全方位からフリーダムを狙うが、キラはこれを順当に回避していく。

 既にドラグーンによるオールレンジ攻撃だけでは、決め手にならないレベルに2人は至っていた。

 

「あの人が言った通りだった……いつかは、やがていつかはと。そんな甘い毒に踊らされて、人類は何も省みる事無く争いを繰り返す! 変わるんじゃない……もう人類は、変えなくてはならないんだ!」

「そんな傲慢な世界を、皆が望むと思うのか!」

「望みなど要らない! 皆が生きている以上の価値など在りはしないはずだ!」

「そんなこと!!」

 

 投射される2本のフラッシュエッジをドラグーンで撃ち抜き軌道を変えると、フリーダムがtype-Lへと接近する。

 接近しながらライフルを放ち、防御をさせたところでドラグーンを2基背後へ回らせてビームスパイクを出力。挟み込む様に本体もビームサーベルを出力しながらtype-Lへと切りかかった。

 

 ライソウを差し向けてフリーダムのドラグーンを受け止めると同時に、タケルは機体を僅かに後退させサーベルを躱すと、腰のフラッシュエッジを翻す。

 今度はそれをフリーダムがシールドで受け止めた。

 

「遺伝子によって管理されれば、人は生きる意味を見失う……生きながら死んでいるのと変わらない!」

「だが! その先に、人類の本当の未来がある!」

「なにっ?」

 

 出力任せに振り払い距離を取ると、再び2人はドラグーンによる撃ち合いで牽制を掛けた。

 その最中、タケルの言葉にキラは違和感を抱いた。

 先程の言い様はまるで、デスティニープランの先があると思わせるもの言いである。違和感を抱いたキラの疑問に答える様に、通信からタケルの言葉は続いた。

 

「プランによる人類の管理は、減り過ぎた人口を戻すための一時凌ぎに過ぎないさ。ナチュラル、コーディネーター、遺伝子による優劣。そんな違いでは辿り着けない領域が人類には残されている────僕達はそれを知っているはずだ!」

「まさかっ!?」

 

 驚愕に染まるキラに答えを示す様に、タケルはライソウを戻すとフリーダムから距離を取った。

 

「SEED────遺伝子による優劣など置き去りにする人類の新たな可能性だ。

 滅びの道を回避し、プランを超えた先で、人類は本当の変革を経て正しい支配構造を確立し、種として正しい繁栄を歩んでいく」

「支配……構造……そんな」

「優れた存在が支配構造を確立する事こそが正しい秩序を生む。これはは人類の争いの歴史と共に証明されてきた事だ!」

 

 王政。君主制────支配する側とされる側の構造は、人類の歴史に絶え間なく存在する。

 その崩壊は支配権を持つ者達の腐敗が殆ど。

 どれだけ優秀な人間が生まれようともそこには必ず寿命があり、支配構造が確立され続けるのは長くても数十年。それ以上はどう足掻いても同じ人間である以上どこかに綻びが生じる。

 誰も支配する資格の無い人間には支配されたくないのである。

 

 だが、遺伝子による優劣すら飛び越える隔絶された人類の可能性────SEED。

 発現する者は極稀で一握りではあるが、それを持つ者は人類の支配構造を確立させる事の出来る存在と言えるだろう。

 

 ナチュラルとコーディネーター……遺伝子による優劣は所詮、現在における人類の到達点の範囲を脱しない。

 部分的にはコーディネーターを超えるナチュラルが存在する事がその証左である。

 しかし、SEEDは違う。人類が今だ到達できない脳領域の開放。遺伝子の優劣では届かない高みへと人類を至らせる。

 ナチュラルであろうがコーディネーターであろうが、SEEDを持つ者と持たぬ者には隔絶された開きが存在するのだ

 

 

「プランにより管理される世界……そうして減り過ぎた人口を取り戻したその先で、遺伝子の軛を振り解いた人類は本当の意味で進化し、種として正しい支配構造を確立する────これが、僕と議長が目指す本当のデスティニープランだ!」

 

 

 放たれるライソウを回避しながら、キラは伝えられたデスティニープランの全容に驚愕を隠し切れなかった。

 デスティニープランは人類から意思を奪う、いわば種としての生存の意義を殺すもの。

 故に、カガリもラクスもこれを否定し人類に生きる意思を残さなくてはならないと言った。

 だが、今聞かされたプランの全容を見れば、この反論も否定される。

 デスティニープランは人類から意思を奪うものでは無い。遺伝子によって管理する世界のその先で、人類を遺伝子の軛から解き放ち、新たな進化────SEEDへと至らせるための枷だ。

 

 遺伝子による管理で平和な世界を実現するのではなく、その先にある人類の進化を以て正しき支配構造を確立し恒久的な平和を実現しようと言うのである。

 

 

 

「それが────あの時あんたが言ってた大義かよ!!」

 

 

 飛び込んでくる声────飛び込んで来た紅蓮の翼。

 振り下ろされたアロンダイトをビームシールドで受け止めて、タケルは目を見開いた。

 

「シンっ!?」

「やぁああ!!」

 

 背後へと接近してくる暗夜のMS────シンゲツがゲツエイを振りかぶり、type-Lへと叩きつけた。

 咄嗟にフラッシュエッジを抜いて防御したタケルは、機体駆動に任せてシンゲツを振り払い、アロンダイトを受け流して距離を取った。

 

 

「くっ、サヤまで。それじゃハイネとミゲルは──」

 

 

 直前まで戦っていたであろう2人の事を考えて、タケルは表情を険しくさせた。

 目の前にシンとサヤがいる以上、恐らくは討たれたか……胸中に嫌なものが競り上がってくる。

 そんな感情に蓋をして、どうにかデスティニーとシンゲツを見据えた。

 

 

 

 

「キラ・ヤマト。お兄様の相手は私とシンにやらせてください」

「ダメだよサヤ。タケルは僕が──」

「やらせてくださいキラさん! 隊長は絶対……俺が止めますから」

 

 声音から感じ取る意思を見て、キラは僅か押し黙った。

 戦況を考えれば数が多いこの総力戦。対多数に強いフリーダムがメサイア攻略に向かうのは理に適っている。

 逆にデスティニーとシンゲツは、対エース向けの機体だ。タケルと相対するならこちらの方が都合が良いのは事実。

 

 だが、そう簡単に任せられる程単純な話ではない。

 

「サヤ、本当に大丈夫なの?」

 

 心配の声は沸き出て来た。

 サヤ・アマノがタケル・アマノを相手にして、まともに戦うこと等できるだろうか。

 デスティニープランの全容を聞き、タケルの覚悟が見えて来た今、彼はサヤを相手にしても容赦のない戦いを繰り広げるだろうと読み取れる。

 キラの不安は消えなかった。

 

「ご心配なく、キラ・ヤマト。討たぬ覚悟も討たれぬ覚悟もできております」

 

 力強い意志の籠められた瞳。

 討つ事も討たれる事も無く。タケル・アマノを制して見せるとサヤは言う。それがどれだけ難しい事なのか、キラは余程良く知っている。

 

「サヤ、でも──」

「逃がすと思うのか!!」

 

 3人のやり取りに割り込む様に、タケルはフラッシュエッジを投射しながらフリーダムへと肉薄。

 惑うキラを仕留めに掛かるべく飛び込んできた。

 

「ちっ、させるか!!」

 

 投射されたフラッシュエッジにぶつけるようにシンもフラッシュエッジを投射し、飛び込んで来たtype-Lをアロンダイトで受け止める。

 凌いで見せたシンの反応にキラが僅か驚く中、タケルは更に追撃に回る。

 

「シン! 良い反応だ……でもまだ甘い!」

 

 機体を回転させ、アロンダイトを潜り抜けたtype-Lは増設された腰のフラッシュエッジを更に抜いた。

 逆手で抜かれた光の刃がデスティニーの胴体を両断せんと迫る。

 

「甘いのはあんたの方だ!!」

 

 アロンダイトから手を離し、フラッシュエッジを逆手に握るtype-Lのマニピュレーターへ向けてパルマフィオキーナを向ける。

 このままいけば光の刃が届くよりも早く、先にtype-Lの手が粉砕されるだろう────思わぬ反撃の姿勢にタケルは慌てて勢いを殺さぬまま流れを変えてデスティニーから距離を取っていく。

 

「くっ、反応して見せたか────だが!!」

 

 ライソウを射出し、全周囲からのオールレンジ攻撃。

 ドラグーンを扱うキラならまだしも、経験の浅いシンに躱すことは容易ではない。

 その目論見の元放たれたライソウが、デスティニーへ次々と襲い掛かる。

 

「くっ、このぉ!!」

 

 ヴォワチュール・リュミエールを展開し最大戦速へと移行。

 ライソウをフラッシュエッジで捌きながら接近を図り、シンはタケルをドックファイトへともつれ込んでいった。

 

「シン──」

「キラ・ヤマト、見ての通り今の私達なら大丈夫です。貴方は貴方の成すべきことを。お兄様は私達が」

「────うん、わかった。でも気を付けてね」

「要らぬ心配です」

 

 逡巡の末、2人の言葉に従う事としたキラは、最後に心配の声を残しながら機体を翻した。

 向かう先はメサイア。この戦いの戦術目標である。

 

 そんなキラを見送ったサヤは、眼前で白翼と接戦を繰り広げるシンのデスティニーを見やる。

 

 

「────危なっかしいですね。やはり、お兄様とは比べるべくもありません」

 

 

 必死に食らいついてはいるが、機動の1つとってもまだまだ稚拙な戦いである。

 彼の強みである反射能力が発現したSEEDと殊更相性が良い事もあってようやく成り立っている綱渡りの接戦だ。

 

 

「ですが、そんな貴方だからこそサヤには心強いです」

 

 

 互いに未熟であるからこそ、追いかけたいのだ。追いつきたいのだ。

 

 我儘なまでに、手を伸ばしたいのである。

 

 

 

「さぁ、参りましょうシンゲツ────この手と心を、お兄様に届かせるために」

 

 

 

 応えるように、シンゲツ背部の可動性多角スラスターが光と唸りを上げる。

 主の言葉に従う様な機体の反応に、サヤはまた1つ口角を上げた。

 

 

 いざ、尋常に────

 

 

 

 決闘の心地を得ながら、サヤ・アマノは絶影となって宇宙を翔けた。

 

 

 




あくまでユリスから見た話ってだけ。

そして明かされた計画の全容。
作者としてはプランの可否を論ずると言うよりも、終わってるCE世界をどうやったら平和に向かわせられるかって妄想していった結果ですね。
公言している通り作者は頭悪いので難しい話はできないんです。あまり深く追求しないでもらえると助かります。


感想よろしくお願いします。

完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)

  • 後日談の日常回
  • オリジナルプロットの劇場版
  • SEED FREEDOM
  • 企画:タケルユリスinOO世界
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