機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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もういくつか書くと…………エンディング


PHASE-126 止まらない世界

 

 

 オーブ軍旗艦アマテラス。

 

 攻撃の為の兵装を一切排し、代わりに絶対的な防御性能を備えた難攻不落のフラッグシップ。

 迎撃能力を艦載MS────オーブ国防軍の中でも精鋭揃いで埋めたアマギ率いる護衛部隊に頼り、近づいて来るザフト機の一切を排除しながらアマテラスは戦線を押し上げていく。

 

 その眼前で指揮を執るのは金色のMSアカツキとカガリ・ユラ・アスハだ。

 ビーム兵器へと機体を晒しヤタノカガミによる反射で敵機を墜としていく中、実弾にはドラグーン兵装オオヒメで対処。サポートAIトモシビが油断も隙も無く攻撃を検知しカガリを守り続けている。

 

 ザフトの眼前には、メサイアよりも余程強固に思える不抜の陣容が広がっていた。

 この防御性能は接近戦を挑まなければ墜とせない……が、それを成すのは到底容易ではないだろう。

 そも数で劣るザフト側は同盟軍からの膨大な迎撃火線に晒されるのだ。それを掻い潜りながらの接近を図るなど、命を捨てる特攻と同義。

 故に、同盟軍は徐々に戦線を押し上げ優勢へと進み、対するザフトの戦況は芳しくなかった。

 

 しかし、その戦況の中にあってもカガリの表情は優れない。

 

 

「──くっ、進軍に時間がかかり過ぎる!」

 

 

 また1機、ビームライフルを放ちザクを墜としながらカガリは苦悶を浮かべた。

 要であるコンクルーダーズを抑え、戦闘開始から散々に弄ばれた戦線を立て直し、今では数の利をもって押し返し始めていると言うのに────目標であるメサイアまでの道のりが遠かった。

 ザフト陣容の中央を守るミネルバとフォルトゥナの二大看板。ぶつかり合ったアークエンジェルとエターナルは苦戦を強いられ思う様に進めずにいる。

 更には中央で激闘を繰り広げる英雄達の戦い。ユリスとアスラン。タケル・アマノはシンとサヤと戦闘中だ。

 近づく者を巻き込む英雄達の激闘に、被害を避けようと迂回せざるを得ない。結果同盟軍の侵攻は優勢でありながら遅々として進まない状況へと至っていた。

 

 突破されないギリギリの陣容を────だが強固で堅牢なまでに、ザフトはその戦線を維持し続けていた。

 

 

 ハッとカガリが思考から帰るとアカツキのセンサーが脅威を検知していた。

 反射的に展開したアメノイワトにはミサイルが降り注ぐ。

 

「(ちっ、兄様との戦いの影響で疲労が強い……私自身はもう迂闊に前には出れなくなったか)」

 

 身体に色濃く残る疲労────不意に発現したSEEDの慣れない疲労感に、カガリは己のパフォーマンスが落ちている事を感じ取る。

 言うなれば睡魔に近い。脳が休息を求めて意識を落そうとしているような感覚であった。

 この状態で迂闊に出れば危ういのは明白。そしてカガリが墜とされればそれは同盟軍の敗北と同義。

 己を戦局を覆す一矢とできないもどかしさが、カガリの内に募っていった。

 

「キサカ、ダイダロスから────フレイからの連絡はあるか!」

 

 アマテラスへと通信を繋ぎ、艦長であるキサカを呼びつける。

 

『まだだ! 最終連絡は3時間前。少なくともまだ稼動の気配は無い!』

「有ればすぐに報せろ────このままでは、間に合わない可能性がある」

 

 モニター越しに息をのむキサカは、静かに頷いた。

 

 間に合わない……それは現在月面で進められているレクイエムの発射の事だ。

 大量破壊兵器の発射を決して容認できないカガリとしては何としても防ぎたい。その為にはカガリが敗北を喫するときの保険と言う名目を完全に切り捨てる事実が必要だ。

 レクイエムの修復を前に、この戦いに勝利する必要があった。

 

「あんなもの────もう二度と撃たせてなるものか」

 

 疲労を振り払い、カガリは今できる最大限を執り続けた。

 アカツキで敵を討ち、陣形を整え、戦線を押し上げていく。

 例えこの戦いに勝利したとて、それがレクイエムによるものなら……世界と人類にはまたしても禍根が残る。デスティニープランを否定したところでそうなってしまっては意味が無いのだ。

 寧ろその結果は、人類が争いを止められない事の……ギルバート・デュランダルが述べた事の証明となるだろう。

 

 何としても、レクイエムの発射だけは阻止しなければならない。

 

 

 

「頼む……キラ、アスラン!」

 

 

 

 もう二度と、あんなもの(大量破壊兵器)を人類に撃たせないでくれ。

 

 

 言葉に出さず漏らしたカガリの願いは、激化する戦火の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バリアント、てぇ!」

「回避! 取り舵20!」

 

 放たれる巨大な砲弾を、艦体を翻して躱せばそのまま艦載砲の射線を取る。

 

「トリスタン、てぇ!」

「ノイマン!」

「おまかせを!」

 

 お返しと吐き出されたフォルトゥナの主砲を、今度はアークエンジェルが捌いて見せる。

 白亜の巨大な戦艦が2つ。艦船とは思えぬ激闘を繰り広げていた。

 

 

「本当に……知ってはいたけど優秀の極みね、ナタル」

「尽く退けるとは……流石です、マリュー」

 

 

 艦長席で、互いに届かぬ賛辞を送りながら次なる一手を指示していく。

 御しきれない想いを抱えながら撃ち合う2人の戦いは、更に激しさを増していった。

 

 

「艦長、シロガネ帰投です──被弾有り!」

「何ですって!?」

 

 

 ミリアリアから挙がる報告にマリューは目を剥いた。

 嫌な記憶が脳裏に過る中、モニターに映し出されるのは原型は留めているものの、明らかに損傷し動きの鈍いシロガネの姿であった。

 

 

『悪ぃなマリュー……またこんな姿で』

「泣き言も報告も後よ! 直ぐに艦へ──」

「艦長! 敵MS接近!」

 

 嫌な報告は重なる。

 シロガネを収容しようとハッチを開いたところで飛び込んでくるチャンドラからの声。

 

 接近してくるのは──

 

 

 

「逃しはしないさ、ムウ・ラ・フラガ!!」

 

 

 

 灰色の機体。レイ・ザ・バレルの駆るレジェンドである。

 

「ちぃ! あいつと一緒でしつこいんだよお前も!!」

 

 追走してきたレジェンドがドラグーンを展開すると同時、ムウはシロガネのジンライを展開。放たれたドラグーンを牽制して見せた。

 

「ムウ!」

「大丈夫だ!」

 

 降り注ぐ光条を必死にジンライで防ぎながら、ムウは虚勢とも言える言葉を張り続けた。

 大丈夫だと……その言葉を現実にするべく、ギリギリの所でレジェンドとの攻防を保って見せる。

 

 だが、そんな状態を見過ごす程レイ・ザ・バレルは甘くない。

 

「ならば、こちらからだ」

 

 レジェンドの高出力ビームライフルが狙うのはアークエンジェル艦橋。

 ドラグーンでシロガネを封殺し、この戦いにおいて同盟軍の要とも言えるアークエンジェルを仕留める気であった。

 

「なっ!? やめろぉ!!」

 

 レジェンドが向ける矛先に蒼白となってムウが叫んだ。

 

 これは2年前と正に同じ光景。戻ろうとした大切な場所へ向けられる悪意の光。

 しかし、それを防ぐ手立てが今のムウには無かった。シロガネは身動きを取れず、アークエンジェルもまたシロガネを受け入れるために動きを止めてしまっていた。

 

 絶望の未来が、ムウの脳裏に過った。

 

 

「させない!!」

 

 

 

 アークエンジェルへと放たれる閃光────だがそこへ、蒼天の翼が飛び込んでくる。

 輝くヴォワチュール・リュミエールの翼がアークエンジェルの前に広がり、ビームシールドがライフルを防ぐと、レジェンドには蒼翼のドラグーンが光の雨を降らせた。

 

「ちぃ!? フリーダムか!!」

 

 即座にレイは回避軌道へと移行。

 またもや因縁の敵を仕留められなかった事実に表情を険しくさせながら、シロガネとアークエンジェルを捨て置きフリーダムへと意識を移した。

 

 

「ムウさん! 早く帰投してください! マリューさん、あれは僕が!」

「ありがとう……キラ君」

「悪いキラ、助かった。だが気を付けろ、奴は」

「そんな事は良いですから早くアークエンジェルに──はっ!?」

 

 

 問答を遮る様に周囲へ展開されていく灰色のドラグーン。

 そしてレジェンド本体も、フリーダムへと接近していく。

 

「くそっ!!」

 

 再びキラもドラグーンを展開。更にクスィフィアスと胸部のカリドゥスも展開しフルバーストでレジェンドのドラグーンを追い払うと、ビームサーベルを出力してレジェンドを迎え撃った。

 

 光と光が火花を散らし、両者を照らす。

 

「今度は貴様か、フリーダム────キラ・ヤマト!」

「っ!? この感じ……君は」

 

 キラの頭に直接届いて来るような、奇妙な感覚。タケルとユリスに似た、何かを持つ者同士のシンパシー。

 覚えのある思念の感覚に、キラは僅か惑った。

 

「つくづくこの戦いは俺にとって因縁の多い戦場の様だな!」

 

 サーベルを弾き距離を取った瞬間に差し向けられる数多の砲塔。

 吐き出される驟雨の光を躱し、防ぎながら、キラは懐かしいとも思える感覚に囚われていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 がしゃんと言う様に、アークエンジェルの格納庫にシロガネが崩れ落ちた。

 レジェンドのドラグーンに因る攻撃で、内部フレームはガタガタ。ジンライも数機を失い、肩口に突き刺さったビームスパイクによって左腕の機能も死んでいる。

 

 這う這うの体の中キラの参戦によってどうにか無事に帰還を果たしたムウは、戦いでボロボロとなったシロガネのコクピットシートに感謝を伝える様に一度撫でつける。

 これが元の主である彼であったのなら、こうまでボロボロには成らなかっただろう……僅かな申し訳なさを感じながら、ムウは気持ちを切り替えて直ぐにコクピットから這い出した。

 

「少佐! 無事でしたか!」

 

 駆け寄ってきたマードックの安堵の顔を見ながら、ムウは険しい表情と共に彼へと返した。

 

「どうにかな……でだ、戻ってきて早速で悪いが曹長、直ぐに出撃したい」

「は、はぁ!? 無茶言わんでくださいよ、ここまで損傷したシロガネをすぐに直せるわけが無いでしょう」

「そんな事は分かってるさ。だが、ここにはまだ使える機体があるだろう?」

「使える機体って……」

 

 思い至り、マードックの表情もまた険しさを孕んでいく。

 使える機体……即ち、ユリス・ラングベルトがオーブに置いていった機体、ディザスターである。

 

「バカな事考えんでください。少佐用に調整しているわけでもない……機体の状態は問題無いですが、アマノさんならともかく即時のパーソナライズ何て俺達だってできませんよ」

「どうにかして見せるさ────それに、あの機体なら経験はある」

 

 はぁ? とまたも驚くマードックを尻目に、ムウはディザスターへと向かった。

 そう、経験はある。嘗てファントムペインの長としてネオ・ロアノークだった時。ユリスが駆るディザスターのスペックを図るために自ら乗り込みその性能を確かめた。

 そもそもディザスターは元がGAT-Xシリーズの後期発展機体。設計はストライクから派生した機体である。

 己の内にある2人の記憶があれば、あの機体を操る事はそう無茶と言えるほどの事でもないと言う自信があった。

 

「曹長! ディザスターの出撃準備だ! 悪いが、異論は認めん!」

 

 彼にしては珍しい、有無を言わさぬ声音であった。そのままディザスターに乗り込んだムウは、機体を起ち上げていく。

 

 2年前と同じく、肝心の戦場でまだ何も為せていない自分をムウ自身が許せるはずもない。

 無様に逃げ帰ってきてしまったムウが、細々と艦内で燻っていられるわけはないのである。

 未だ戦場で、己が巻き込んでしまった因縁の結果が争っているのだ。

 

『ムウ』

「マリュー……」 

 

 繋げられた通信から顔を覗かせる愛する人。

 ムウは声だけでその表情を読み取り、意識して視線を向けない様にしながら機体の準備を進めて行く。

 

「止めてくれるな、マリュー」

『止めはしないわ、ムウ」

 

 少し驚き、目を見開いたムウはモニターへと視線を移した。

 そこにはやんちゃな幼子を見守るような、何とも言えない愛する人の顔があった。

 

『でも約束よ、ちゃんと生きて帰ってきて』

「あぁ、約束するさ……だから、ちゃんと終わらせて帰ろう。マリュー」

 

 失いたくない。失わせたくない。

 2年前に起こしてしまった悲劇を振り返り、そこから重ねてしまった罪過を悔いて。ムウ・ラ・フラガは贖罪の戦場へと再び目を向けた。

 

『ディザスター発進、どうぞ!』

 

 急遽進められたディザスターの発進シークエンスが終わり、ミリアリアから合図が下される。

 

 

「ムウ・ラ・フラガ────ディザスター、出るぞ!」

 

 

 再び手にした戦う力と共に、ムウは改めて最後の戦場へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉおお!!」

「はぁああ!!」

 

 何度目であろうか。既に光の刃が交錯した回数は100を超える。

 ユリス・ラングベルトとアスラン・ザラの死闘は、死闘の激しさを増したまま終わりの見えない戦いへと突入していた。

 

 接近戦での手数では脚部ビームブレイドを備えるジャスティスが有利か。しかしユリスはtype-Cのフラッシュエッジを巧みに用いて手数を補い、更には零距離へと踏み込んでパルマフィオキーナによる一撃必殺を狙う。

 脅威に対する察知能力。危機回避能力に長けたユリスの攻め筋は、接近戦を好手とするアスランにとってこそ脅威となり、迂闊に攻め入れば踏み込まれる綱渡りの攻防となるだろう。

 だがユリスとて余裕は無い。苛烈に過ぎるアスランの攻撃を掻い潜るのはユリスの能力を以てしても至難の業。一度誤れば切り捨てられるのは我が身と、決死の攻防を幾度となく続ける。

 

 乱れる呼吸。全身を震わせる悪寒。溢れて来る冷や汗。

 全てが死を纏う戦いの最中で、2人はSEEDの疲労を振り払いながら戦い続けて居た。

 

「くっ、いい加減!!」

「墜ちなさい!!」

 

 グリフォンビームブレイドと腕部ビームサーベルが火花を散らす。

 互いに背部からフォルティスビーム砲とアキシオンを展開し放てば、至近でその動きを察知して回避して見せる。

 フラッシュエッジの投射。それを弾く様にシールドのグラップルフックで迎撃すれば、弾かれたフラッシュエッジを片手に再びtype-Cが踏み込む。

 連結したラケルタビームサーベルを分離。フラッシュエッジを一方で受けると同時にもう一方で切り返すが、type-Cはそれを展開したビームシールドで逸らしつつ懐へと飛び込んだ。

 

「くっ!?」

「捉えた!」

 

 僅かに過る勝機の気配……そこで慢心するはずもなく、全身全霊を以て叩きつけられるパルマフィオキーナ。

 ジャスティスの胸部へと叩きつけられそうなそれを、アスランはとっさに機体を後ろに倒れ込ませて回避。

 同時に振り上げられた脚部が光の刃を展開。ビームブレイドがtype-Cを襲った。

 

「ちぃ!」

「仕留める!!」

 

 今度はユリスが目を剥いた。瞬間で悟った決着は……

 

「くっ!?」

「がっ!?」

 

 共に機体へと衝撃が襲う相打ちに終わる。

 

 咄嗟に翻されたtype-Cの掌部。それがジャスティスの脚部へと向けられビームブレイド出力部を狙った。

 それを察知したアスランも、僅かに蹴り上げる軌道をずらしユリスの思惑を覆そうとする。

 結果、ジャスティスの右脚部はパルマフィオキーナに破壊され、同時にビームブレイドによってtype-Cの左マニピュレーターも切り落とされた。

 どちらも大きな戦力低下にはならないが、小さくもない損傷である。

 

「はぁ……はぁ……」

「はっ……はっ……」

 

 息も絶え絶えに、距離をとって2人は互いを見据えた。

 

「(信じらんないわね……遺伝子上のスペックは私の方が上だってのにこのレベル……議長さんの面目丸つぶれじゃない)」

「(こっちの攻め手を尽く……何を繰り出しても躱されるか……まるで勝てる気がしないな)」

 

 どちらもが疲労を積み重ねた今、このままでは“勝てない”と思い始めていた。

 負けはしない……どんなことがあろうとも討たれる事だけはしないと。2人が同じように考えている中、故に相手を討ち取る事は難しいと、ここまでの戦いが悟らせる。

 

 しかし、手をこまねいている時は無い。

 戦況は変わりに変わって予想していない展開へと至っている事だろう。自身が成すべきことは多い筈であった。

 

 

「ふぅ、次こそ仕留め──」

 

 

 戦いの趨勢を定める────そう誓って、今一度最大限の集中をしようとした矢先の事であった。

 ユリス・ラングベルトは、答えの示せない何かを感じ取った。

 

 予感。第六感。虫の報せ……様々な言葉で表される、人間が超常的に未来を察知する何か。

 それが、ユリスの胸で激しく警鐘を鳴らしていた。

 

 

「────これ、は」

 

 

 嫌な胸騒ぎであった。まるで胸の内に蛇が這いずり回っているような、気色の悪い悪寒。

 間違いなく、目の前の男(アスラン)が発している殺気の類ではない。

 根源的に恐怖を抱かせる様な、そんな気配。

 

 

「っ!? 貴様か……」

 

 

 誰ともなしに呟いて、その気配の正体をユリスは察した。

 感じ取った、或いは視えたと言っても良いのかもしれない。

 

 それが長きに渡り探し求めていた、()()()()()()()()と。

 

 

「悪いわね、アスラン・ザラ────決着はお預けよ!」

「何っ!?」

 

 

 ユリスは機体を翻し、戦場とは真逆のあらぬ方へと走らせる。

 そのまま、type-Cに追加された特殊機構ミラージュコロイドを作動させ虚空の中へとその姿をかき消していった。

 

 

「────どういう事だ、一体」

 

 

 突如置き去りにされたアスランは呆気にとられ、史上稀に見る死闘は突如として終わりを迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやぁああ!!」

 

 

 対艦刀エクスカリバー。それを握るはステラ・ルーシェが駆るガイア。

 振り下ろされた巨大な対艦刀を前にして、マユラ・ラバッツは冷静にその太刀筋を読み切り、シュトリを僅かに横へずらした。

 これまで散々重ねてきた、アスラン・ザラとジャスティスを仮想敵としたシミュレーション。大ぶりで強力な一撃など、マユラにとっては児戯に等しい。

 

「マユラちゃん、後ろ!」

 

 ゾクリと総毛立つ。背後に現れた敵意の正体は緑の機動兵装ポッド。

 カオスが展開していたそれに狙い撃たれマユラはシュトリのビームシールドで受け止めた。

 

「くっ、連携が早い!」

 

 再び翻されるガイアのエクスカリバーは、しかし状況を把握していたジュリがビームスナイパーで牽制し引き剥がす。

 

「ジュリ!!」

 

 だが、牽制の隙を狙う様にフォースシルエットを装備したインパルスがサーベル片手にコンカクへと迫っていた。

 

「もらった!」

「させない!!」

 

 間一髪で割り込むのはアサギのキンシャク。

 同じ高機動機体同士、隙を突かれたのなら突き返すと言わんばかりにルナマリアとインパルスをマークしていた。

 

「アウル!」

「はっ、任せろってぇ!!」

 

 ルナマリアがアサギを引き付けると同時、コンカクに迫るもう一機。アウル・ニーダの駆るアビスがビームランスを叩きつける。

 

「ルナマリア、渡す!」

「ありがとステラ!」

 

 コンカクが大型防循でそれを受け止める中、インパルスシステムによってソードシルエットがルナマリアの元へと送られた。

 そこからエクスカリバーを抜き放ったルナマリアは、フォースシルエットのまま対艦刀を装備しキンシャクを迎え撃つ。

 

 これこそが、インパルスシステムの真骨頂。

 小隊を組んだ4機によるシルエットの連携展開。携行武装であればどのシルエットを装着していても運用でき、あらゆるタイミングでシルエットを切り換えて戦闘が可能。

 振り下ろしたエクスカリバーでキンシャクを退ければ、即座にブラストシルエットを装備してケルベロスの追撃が放たれた。

 

「くっ、このぉお!」

「相手はルナマリアだけじゃねえぞ!」

 

 キンシャクの機動性を駆使して何とかケルベロスを躱したところへ、迫りくるはビームクロウを展開したカオス。

 手にしていたビームサーベルで必死に受け止め捌いて、キンシャクは離脱してカオスから距離をとった。

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

 パイロットスーツ越しに感じる、全身を濡らす汗。

 既に幾度となく命を取られかけているこの状況に、アサギ、マユラ、ジュリの三人は息苦しさを禁じ得なかった。

 

 不意に至ってしまったSEEDの疲労もあるだろう。しかしそれ以上に、インパルスを中心とした小隊の練度が高い…………否、高すぎる。

 

 ボロボロとなった肉体の超再生を経て更なる境地へと至ったエクステンデッドが3人。そしてタケル・アマノが手塩にかけて育てたザフトのエリートパイロットであるルナマリア・ホーク。

 3対4という数的不利もさることながら、彼等が駆る機体はセカンドステージでキンシャク等と大きな差は無いし、身体能力で言えば間違いなくエクステンデッドやコーディネーターである彼等の方が上だ。

 

 積み重ねて来た経験と連携でこれらを覆し、食い下がることができているアサギ達の方が本来であれば異常と言えよう。

 ナチュラルでありながら、最高レベルのパイロットに名を連ねる事が出来たのが彼女達なのだ。

 

 それでも、劣勢は否めない。

 徐々に追い詰められている戦い。疲労と共に落ちていくパフォーマンス。

 このまま戦い続ければ遠からず墜とされていく……その気配を、如実に感じ取っていた。

 

「マユラ、ジュリ……」

「うん、このままじゃまずい」

「でも、引けないよ」

 

 これだけの練度だ。抑えられる人間は限られる。一度放置すれば、同盟軍の優勢を覆す一手に成り兼ねない。

 故に、今彼女達は退くわけにはいかなかった。3人の背後には守るべき大切な姫(カガリ)がいるのだから。

 

 

 

 一方で対峙しているルナマリアも、決して余裕のある心境では無かった。

 優勢は手に取る様に感じられる。が、それで油断できるほど自分が強いわけでは無い自覚がある。

 今優勢を取れているのは、共に戦っているスティング達の高い能力と、タケルが考案したインパルスシステムによるもの。

 機体の挙動1つ1つに感じられる差を見れば、やはり目の前の3人は自分とは別格のパイロット達だと理解できた。

 

「(でも、このままいけば……)」

 

 やり切れる……墜とし切れるはず。油断なく、ルナマリアは眼前のオーブ三羽烏を見つめた。

 背部には再びフォースシルエットを装着しての機動戦。エクスカリバーをそのまま用いて、機動と強力無比な対艦刀の一撃で接近戦を制していく腹積もりだ。

 

 

 身構え、そして再びの死闘を始めようとした時。

 

 

 ルナマリアの視界にある光景が飛び込んで来た。

 

 

 

「あれは、隊長(クルース)の機体と…………」

 

 

 

 白翼のデスティニーが熾烈な争いを演じるその相手を見て、ルナマリアは目を見開いていく。

 紅蓮の翼と暗夜の鏡面装甲。間違いようのないその特徴的な機体。

 そんな2機に責め立てられている白翼を見て、ルナマリアは湧きあがる怒りを抑えられなかった。

 

「(そう……今度は2人して、あの人を責め立てようっての?)」

 

 大方取り戻したいとか、助けたいとか。そんな陳腐な理屈を並べているに違いない。

 

 何もわかっていない。その行為は彼が望むものでは無いと。

 何も理解していない。それは彼のこれまでを否定するものだと。

 

 捕縛されたかと思えばちゃっかり寝返り、自分達と敵対する事を選んだ意中の(シン)も。

 死んだかと思えば華々しく戻ってきて、ちゃっかり彼の隣に居ついた彼女(サヤ)も。

 

 気に喰わなくて仕方ない。

 

「ごめん、スティング────ここをお願い」

 

 自然と漏らした声は、十分にルナマリアの気持ちを体現するものであった。

 

「あぁ? 一体何だって…………ちっ、そう言う事か」

「うん。私もメイリンと同じで、あの人を助けてあげたい気持ちに変わりはないから」

 

 状況を見て理解の早いスティングに感謝しつつ、ルナマリアはインパルスを走らせた。

 

 嘗ては抱いた恋心。だがそれ以前からあった、危うさばかりの彼を慮る気持ち。

 張り詰めてばかりであった彼を、密かに助けてあげたいと思っていたのは嘘では無かった。

 何せミネルバには、彼に負担をかける問題児が2人もいたのだ。ルナマリアの心配は大きかった。

 

 

 

 

「────あんた達が悪いのよ」

 

 

 

 呪詛の如く吐き出すのは、こんな事態となった世界の不条理に対してか。

 それとも言葉の通り、こんな選択しかしてくれなかった彼等に対してか。

 

 突撃していく最中、暗夜の機体シンゲツへと狙いを定めインパルスはエクスカリバーを突き出し吶喊した。

 

 

 

「あんた達が裏切るからぁ!!」

 

 

 

 悲しき定めに翻弄されたまま、少女は嘗ての大切な人達と討ち合う事を選ぶのだった。

 

 

 

 




最強対最凶が多分CE世界最高峰の戦いを演じている…………はず。

雑な伏線回収のムウinディザスター。まぁストライクの系譜なら多少はね。
アサギたちは疲労と数的不利もあるけど、超再生エクステンデッドって言う異物がスペック的には高すぎって感じ。
seed時代にキラアスと互角ってた三馬鹿以上と思って良いです。

祝 ルナマリア、正妻戦争参戦! シン君の明日はどっちだ

感想よろしくお願いします。
どうか、最後まで応援していただけるとありがたいです。

完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)

  • 後日談の日常回
  • オリジナルプロットの劇場版
  • SEED FREEDOM
  • 企画:タケルユリスinOO世界
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