巨大な光が、宇宙を引き裂いていく。
砲身内部で起きた核爆発が、一次二次ミラーを経て収束する。
瞬間、空間を焼き尽くすガンマ線レーザーが奔り、射線上のすべてを呑み込んだ。
ジェネシス────創生を関する破壊の光は再び放たれ、嘗ての悪夢を再現した。
光の奔流が戦場を呑み込み、同盟艦隊は壊滅的な被害を受けた。
右翼に展開していたザフトは被害を抑えたが、それでも犠牲は避けられなかっただろう。
敵も味方も等しく焼き尽くす──まさに嘗ての終末戦争の再来だった。
「な……んで……そんな……」
放たれた禁断の光に戦場の誰もが釘付けとなる。それは、激闘を繰り広げていたタケルとシンも同じ。
激しくなる動悸を抑えながら、タケルは2年前と同じ光景に呆然としていた。
”我々に負けは許されない────それを覚悟してもらう”
脳裏に過る、彼と交わした言葉────約束。
つまりは敗北を悟った。そう言う事なのだろう。
足りなかったのだ────また自分は。
届かなかったのだ────また此度も。
己の不甲斐なさを悔いて言い聞かせても、しかし何故、と怒りが募る。
「まだ……まだ僕達は負けて……」
劣勢ではあっただろう。しかしまだ決定的では無かったはずだ。
撃つ必要は……まだなかったはずであった。
「なんで……なんで!」
どうして世界はこうもあらぬ方向へと進んでいくのか────信じたはずの人を。約束してくれたはずの言葉を、タケルは脳内で切り捨てた。
こんな事をしていては、変わらない……人類は変えられないと言うのに。
呆然とし、何もなくなった射線上を見つめていたタケルを、コクピットのアラートが引き戻した。
「はっ!?」
振り下ろされるアロンダイト。
反射的にビームシールドで受け止めたタケルは、相対する紅蓮の翼に怒りの炎を幻視した。
「──こんな! これが、あんたの望んだ答えかよ!」
「ちがう!」
撥ね返し、距離を取られるもシンの声は止まらなかった。
「あんな光景を作って、あんたはまだ議長の為に……プランの為に戦うのか、なぁ!」
「くっ、議長はそれが必要だと判断しただけだ! 僕達は、負けるわけにはいかなかった!」
そうだ。責任はデュランダルだけのものでは無い。
負けられないはずの戦いで、敗北を視せてしまった……ジェネシスが撃たれた責は劣勢を作り出してしまった自分達にある。
「こんな事で変わるのかよ……変えられるのかよ! あんたが望む平和な世界へと!」
「囀るな! 平和の意味さえ知らなかった君が、何を偉そうに吠える!」
「あんたがバカで、愚か者だってことをだ!」
再び飛び込んでくる────思考を置き去りにしたシンの反射的連続攻撃。
タケルはそれを徐々に掴み始めたシンのリズムに合わせて躱していく。
僅かな惑いを抱えながら、2人はまたも熾烈な争いを続けていった。
駆け抜けた禍々しき光。
一瞬の内に消えた、数多の命。
嘗て見た絶望の光景の焼き増しに、ラクスは震えた。
先の一撃で同盟軍の右翼が根こそぎ喰い破られた……同盟軍は混乱し、戦場はまた、一気に同盟軍側を押し返し始めていた。
『ラクス!!』
通信に飛び込んでくる声。
開かれたモニターには、焦燥に駆られたカガリ・ユラ・アスハの姿。
「カガリさん、先程の光は」
『あぁ、ジェネシスだ……狙いは、月面のダイダロス基地になる』
「そんな、あそこにはまだ同盟参加国の人達が──」
『そこの心配は必要ないわ、ラクス…………尤も、決して良い意味じゃないけど』
続いて開かれる通信回線には、カガリと共に到着してきたアマテラスの艦橋が映り込む。
そこに居るのは鮮やかな赤髪の女性フレイ・アルスターの姿があった。
「フレイさん……何故アマテラスに。それに先程の言葉は」
『ダイダロスはさっきのジェネシスが撃たれる少し前に、大西洋連邦とロゴスによって制圧されていたの────目的は1つ、レクイエムによるメサイアへの攻撃よ』
「ロゴス……そんな」
『デュランダル議長は想定していたのよ。恐らくは、同盟軍がダイダロス跡地を駐留場所に選んだその時からね……私達は皆、目の前の決戦に一杯一杯だったから。こうなる事は読めなかった』
穏健派を貫いていたはずのデュランダルが、かつてのパトリック・ザラと同じ道を選ぶとは──誰も想像しなかった。
更には大西洋連邦の裏切りと、潜んでいたロゴスの暗躍。
先のジェネシスがフレイの言う通りダイダロスを狙ったのものであるなら、同盟軍としてはむしろ感謝するべき事態でもある。
彼等の後背を突こうとするコープランドとロゴスの企みを打ち砕いてくれたのだから。
『こうなった以上、次の可能性があるわ』
だが、それで終わるわけもない。弱まるどころか強くなっていく危機感を湛えて、フレイは毅然と告げた。
「はい、フレイさん。恐らくデュランダル議長が次に狙うは地球────それもオーブでしょう」
ラクスの言葉に、カガリの顔が恐怖に染まった。
何故、とその表情が問うも、ラクスは疎かフレイも同意見と言う様に頷いていた。
『同盟をまとめ上げた盟主────カガリさん。貴女は現在、実質的な地球圏の代表です。そしてオーブの思想と強さは、間違いなくデュランダル議長とデスティニープランの障害になります』
「だが、兄様がそんな。オーブを撃つなんてこと──」
『カガリ、現実を見なさい! 既にジェネシスは使用された……撃たれたのよ! 2年前、引き金が撃つ度に軽くなっていったあの戦いを、忘れたわけじゃないでしょ!』
甘い幻想を抱くカガリを、フレイは一喝して見せる。
2年前の大戦。核動力MSが露見したことを発端に容易く実行された、地球連合によるプラントへの核ミサイル攻撃。
無辜のプラント市民を殲滅するその所業は、当時の最高評議会議長パトリック・ザラを激昂させ、大量破壊兵器ジェネシスの使用に踏み切らせる。
撃って、撃たれて…………その度軽くなっていくその引き鉄の重さ。
彼等はそれを2年前。この戦場で目の当たりにしてきたのだ。
声を荒げて罰が悪くなったように目を背けるも……フレイは僅かに身を震わせていた。
『────ダイダロスにはまだ、ミュラー事務次官もいたんだから』
仮にフレイ達がダイダロスを脱出した時のあの状況から生きていたとしても。もう生きてはいないだろう。
先のジェネシスがダイダロスに着弾したのは確認されている。
ボルト・ミュラーは、影も残さずこの世から消えてしまったはずだ。
必死に涙を流さぬよう歯を食いしばるフレイの姿は、妙に痛々しかった。
「──もう2度と、あんなものは撃たせてはならないのに」
悔しさに苦痛を滲ませてカガリは呟いた。
こんなことにならない様にと、戦後の2年を戦い続けてきた。
平和を壊さぬ様、決して向かぬ政治の世界に身を置き、必死で世界に争い続けてきた。
それでも止められないのなら…………兄と自分の戦いは、一体何だったのだろうか。
いやだ────子供じみた反感の声が湧き上がる。
これまでが無駄だったなどと信じない。認めない。
同盟軍代表としての義心から転じてカガリの胸を満たすのは、まるで癇癪の様な怒り。
こんな世界を思い描いた者達に負けたくは無いと心が反骨していた。
『同盟軍全軍! 何としてもメサイアを墜とせ! 人類にこれ以上、あれを撃った歴史を作らせるな!』
金色の閃光が、口火を切る様に駆け出す。
ジェネシスで浮き足だった同盟軍に再び1本芯が通った。
『どうか皆さん、私たちに力を貸してください』
ラクスが後を追って声を上げれば、彼女の声もまた皆の士気を上げていく。
応じる様にエターナルも動きだしミネルバを突破するべく砲火を集中させていった。
メサイア攻防戦は、遂に最終局面へと向かい始める。
「ジェネシス、だと……っ! ふざけるな!!」
コクピットへと叩きつけられる拳。
怒りのぶつける先を求める様に視線を彷徨わせ、イザーク・ジュールは吠えた。
「何故だ、何故あれがまた……」
ディアッカまた、信じられないものを見たように、恐怖の声を挙げる。
2機のデスティニーとジャスティス。
ザフトの旧友同士の戦いもまた、埒外な破壊の光によって動きを止めていた。
「これが狙いだったか……! ギルバート・デュランダル、タケル・アマノ!!」
「お、おいイザーク!?」
イザーク・ジュールはメサイアへと目を向け怒りの声を挙げた。同時にtype-Dは出力していたブラズニルを収めると、踵を返してメサイアへと向かい始める。
驚きと共に追従するディアッカ。そしてアスランのジャスティスもまた、その後に続いた。
「イザーク、驚くのは分かるが落ち着けって!」
「うるさい! 今すぐあれを破壊するぞ!」
あれ────即ちジェネシスの事だろう。
怒りの矛先を、なりふり構わずかの大量破壊兵器に向けるイザークの気迫に、ディアッカは否を返せなかった。
「イザーク、何のつもりだ……!」
「貴様だって目的は同じだろう。大人しくついて来い、アスラン!」
先程まで死闘を繰り広げていたと言うのに、もはやその気配は影も形もない。
イザークの目に映るのはジェネシスのみであった。
「──俺達は誓ったはずだ。もう二度と、あのような戦いは御免だと……! 二度とあんなものを守る為の戦いはしないと! それがあの大戦を生き残った俺達の、守るべき最後の一線だったはずだ!」
迫りくる地球軍を殲滅し、あまつさえ地球の生物の半数を死に至らしめる……その寸前までいったのが、パトリック・ザラが持ち出したジェネシスであった。
あの大戦は────ギルバート・デュランダルが声明で述べた通り地球は、人類は滅びる1歩手前まで至っていたのだ。
そんなジェネシスを守るべく戦っていた……それこそが、あの大戦でザフトとして戦っていた彼等の罪であった。
「まぁ、確かにな……議長は俺達若者に、戦争の罪を被らせるわけにはいかないと寛大な処置をくれた。俺は正直感謝していたが……それでもあれを持ち出してくるのは違う話だ」
イザークの言葉に、ディアッカも頷いて機体を横に並べる。
ザフトを寝返り大戦を戦いぬいて、それでも復隊できたのは新議長となったデュランダルのお陰と言える。
その恩義もあったから、ここまでプラントを守る為の名目に殉じて戦い続けて来た。
だが、再びジェネシスが使用されたのなら……話は別だ。
あれはまた新たな大量破壊兵器をプラントへと呼び込む。核動力MSが核ミサイル攻撃を決行させ、核ミサイル攻撃がジェネシスを使わせたように。
次なる悪意が、プラントを襲うのだ。
あれを持ち出してしまった以上、プラントを守る為にも、ザフトである彼等がケリを付けなければなるまい。
だが、事はそう単純な話でもない。
『何をしている、イザーク・ジュール! 持ち場を離れるな!』
割り込んでくる通信回線。
厳しい視線と声音をモニター越しに向けてくるのは、フォルトゥナ艦長のナタル・バジル―ルである。
「ナタル・バジル―ル……!」
『コンクルーダーズは戦線を維持する要だ。貴様等が抜ければ、戦線が崩壊するのだぞ!』
「……っ! その冷静な物言い、貴様は知っていたのか、あれを!」
2年前に同じ光景を見た者同士だ。
今この時、冷静に戦況を見て物申してくるナタルの気配に、イザークはそれを看破した。
だが、激昂するイザークに全く怯むことなく、ナタルは変わらぬ態度で返した。
『知っていた────私達は戦いの前に、議長からあれの存在を知らされていたからな』
「っ! 何故黙っていた!」
『撃つ予定はなかったからだ! あれは本来……この決戦で使用される予定のものではなかった!』
「何だとぉ……!」
戦術には組み込まれていない。現実との不可解なギャップにイザークは怒り交じりに訝しむ。
タケルが述べたように、ジェネシスの使用は、間違いなくプラン導入を遅らせる────場合によっては不可能にするものだ。
絶対的な大量破壊兵器による勝利。そんなものは、一時のものに過ぎず、世界はデュランダルとプランを認めない。
「バジル―ルさん、どういうことですか? あれが本来の予定ではないと」
『アスラン・ザラ……あぁ、その通りだ。本来撃つ予定のものではなかった。だが撃たざるを得なかった────プラントを守る為には』
「プラントを、守る?」
アスランの疑問が伝搬し、イザークとディアッカもナタルの次の言葉を待った。
『先の一射……目標座標は月面のダイダロス基地だ。そしてダイダロスでは、レクイエムが発射体勢にあった────貴様等であればこの意味が分かるはずだ』
思わず息をのむ3人。
齎された情報が真実であるなら、それは緊急事態。正にプラントを守る為の最後の手段であったと言える。
もしそうであるのなら、今抱いているこの怒りなど、お門違いも良い所。ギルバート・デュランダルの決定は、プラントを守る為に他ならない。
「────だが、ならばもう! あの兵器は必要あるまい!」
『不本意だがジェネシスによって状況は好転した! 目の前の勝機を不意にし、お前達は叛意を示すと言うつもりか!』
「俺達だって納得はできねぇんだよ! 議長も、タケルもあんたも、そうやって重要な事を秘匿していた。それで本当にジェネシスの次射がないって信じ切れるかよ!」
「その通りだ。戦況が変わったこと等知った事か。あんなものを使用した戦場で、勝利する事に意味など有るわけもない!
行くぞアスラン────俺達で、ジェネシスを破壊する!」
「あぁ!」
type-D、type-B。そしてジャスティスの3機が、メサイアへと向かい飛翔していく。
通信を切断され、フォルトゥナ艦橋内に動揺が広がるのを、ナタルは厳しい声音で指示を下して制した。
「全員、浮足立つな! 戦闘を継続するぞ!」
湧
き上がってくる疑念を払拭し、戦い続けなければならない。
精強さを欠いては、この最前線……僅かな迷いが命取りになるのだ。
だがそれでも、ナタルの胸に燻る迷いをかき消すことはできなかった。
「ちっ……! だから、私は覚悟が足りないのだ!」
正しいか否か、そんな事は後にならなければわからない。
今はただ、己が座るこの場所で成すべきことを…………。
再び視線を白亜の戦艦へと移し、ナタルは迷いと共に戦い続けた。
シン・アスカは、戦闘が始まって以来の不思議な心地の中で戦っていた。
「はぁ!」
フラッシュエッジを叩きつけると同時に転身し、パルマフィオキーナを叩きつける。
幾度となく行われ、その全てを防がれながらも、愚直なまでにそれを繰り返す。
頭に過っていくのは、決戦を前にキラやアスランと訓練で詰めていた話であった。
“反射速度? ”
“うん、データから見えて来る君の強さ────それが君の戦闘における反射速度。反応速度ともいえるね”
“それ、確かに重要かもしれないですけど……そんなに有利な事なんですか? ”
“そう思うのはお前がそれを活かせていないからだ”
決して止まる事のない連続攻撃。
それが目の前の……本来であれば決して叶わぬはずの相手を、苦しめている。
ただ本当に、全力をぶつけているだけだと言うのに。
“シンはね、反射速度に思考速度が追い付いていないんだよ”
“追いついて……いない? ”
“あぁ。隊長となったタケルに鍛えられた弊害っていうべきか……あれこれと豊富な選択肢を使いこなそうとしてしまう。だがお前は、その武装を使いこなす思考が入るせいで折角の反射能力を殺してしまっているんだ”
“何だよそれ。それじゃまるで俺が何も考えられないバカって事かよ! ”
“そうは言って無いが……まぁ、似たようなものかもな”
“何ぃ!! ”
己に合った最適解────それは即ち、余計な思考を捨て反射的に繰り出し続ける連続攻撃。
扱う武器をただ距離に合わせて選択するだけ。
防がれれば次へ。躱されれば先へ────先の先を取り続ける、終わりの無い攻撃。
“キラさん、本当にそんな事であの人をやれるんですか? ”
“タケルは理論派だからね。それこそ、彼はMSの全てを知っている……良く知る機体で戦うシンの攻撃は、全部読み切って対応してくるはずだ”
“だが、読まれることが前提の攻撃であれば関係ない。どんなに動きの先読みができても、それはその時のアクションのみ。次の攻撃が何で来るかまでは読めないんだからな。あいつはあくまでも受けた後の反撃を狙う、後の先を取る事に長けているだけだ”
“追いつかない程に、反撃の暇すら与えない程に攻撃を繰り出していく……多分これが、シンの取れる唯一の対抗策だと思うよ”
目論み通り、目の前の彼にこの戦い方は通用していた。
僅かに彼を上回る反射能力が、徐々に彼の動きを後手に回らせている。
反撃の隙間が取れなくなり、回避と防御に重きが置かれる様になり────そして今。
「うぉおお!」
遂にデスティニーのフラッシュエッジは、type-Lの捌き手を掻い潜り、外装を僅かに剥ぎ取るまでに至った。
「くっ……!」
前のめりとなっていたデスティニーを蹴りつけ、距離を取るとtype-Lのヴォワチュール・リュミエールを最大展開。
ライソウの骨子が更なる機動性を齎し、デスティニーとの距離を引き剥がしていく。
「はぁ……はぁ……っ!」
意識が薄らけて来る。疲労で思考が回らない。
そんな中、タケルは必死に気持ちを繋ぎ止めてデスティニーの猛攻を凌ぎ続けた。
開戦と同時にユリスとのSEEDによる認識共有で敢行した一点突破。
そこからカガリ達4人との戦いに追い詰められ。一度撤退してからの全面対決に入ってからは、キラとの死闘。
そして続くシン、サヤとの激闘を繰り広げて今……己の可能性を完全に開花させたシン・アスカの猛攻に晒されている。
負けられないと心で奮起しても、タケルの身体は否応なくその疲労を意識へと溢れさせていた。
「あぁああ!!」
変わらずの攻勢。衰えるどころか早さを増していくシンの攻撃密度は、距離を問わず続いた。
ライフルの牽制。僅かにでも機動を捉えれば即座に全開で接近。
振るわれるフラッシュエッジとパルマフィオキーナによる、畳み掛ける様な接近戦。
既に牽制で放っていたライソウは12の内半数を破壊され、フラッシュエッジも残り2本しかない。
徐々に、タケルの中に焦りが生まれていた。
「くっ……このぉ!」
ここ一番の集中を以て、接近してくるデスティニーへと残り6基のライソウを差し向ける。
それと同時に、type-Lもまた前に出てフラッシュエッジを2本出力すると、ライソウを掻い潜ってきたデスティニーを迎え撃った。
激しく火花を散らす光の刃が、まるで2人のぶつかり合う想いを示しているようであった。
「隊長! もうわかってるんじゃないのかよ! あんたの戦いは、もう無意味だって!」
「無意味なものか! 戦いはこれで終わる……終わらせる! その為には、戦争の痛みを世界が正しく知らなければならない!」
それこそが、ギルバート・デュランダルが描いたこの戦いの展望であった。
ジェネシスを放ち、この痛みを以て人類は本当に滅亡の寸前であると自覚する。
そうする事で不満も不安も呑み下し、提示された平和の道であるデスティニープランを受け入れさせる。
本来は予定に無かった道とは言え、今更デスティニープランを諦めること等、タケルにはできなかった。
「この戦いで終わるんだ! 人類は変わるんだ……でなければ僕も君も! また戦い続けなければならない!」
「だったら戦い続けるさ! あんたと一緒に!」
「っ! 僕にはもう、そんな道は残されていない!」
怒りの感情に任せて、デスティニーを押し切るとライソウを再び差し向け追い込んでいく。
その最中、タケルは己の心を全て曝け出す様に言葉を紡いだ。
「もう守れないと判ったんだ! もう戦えないと気付いてしまったんだ! オーブに弓引いた僕に……プランに全てを擲った僕に、一体この先何ができるって言うんだ!」
平和な世界さえ実現できれば……もう二度と、オーブに悪意の矛先が向かないのなら。
例えこの先に大切な人との未来が無くとも、構わない。
そう思ったからこそ、タケル・アマノはデスティニープランを求めてデュランダルの元へ向かった。
その時から既に道は定めた。振り返る先に道はなく、そして向かう先にも、これから先を歩む道は無い。
「──だからあんたは、何も分かってないんだよ!!」
掻い潜り放たれる長射程ビーム砲。それがまた2つのライソウを墜とす。
僅かに怯んだタケルの意識を突くように、デスティニーは接近しフラッシュエッジで切り結んだ。
「いつもいつも独り善がりで! 大層な名分に縋って! あんたは自分の本当の願いを、何1つ叶えようとしない!」
「ふざけるな! これが僕の願いだ! 望みだ! 君に一体何がわかる!」
「あんたの為じゃないだろ! それは全部、あんたが守りたいものの為……あんた自身の願いじゃない!」
「なら僕に皆を捨てろって言うのか! 僕の願いを何故君が否定できる!」
「だったらその皆の願いを、何であんたは否定しているんだよ!」
僅かに鈍ったtype-Lの隙を突いて、叩きつけられるパルマフィオキーナが回避しきれなかったtype-Lの右脚部を捉え粉砕する。
重量バランスが崩れた事で、type-Lの劣勢は更に確かなものとなった。
「くっ……!」
「あんたが守ろうとする人達は皆、あんたと一緒に生きる事を望んでる! サヤもアスハ代表も、キラさんやアスランだって皆!」
「……っ! そんな事、もう僕には関係ない!」
「逃げるな! 全部投げ捨てて終われる程、あんたの願いは軽く無かった筈だ!」
逃げるな──その言葉に負けぬ様、タケルは脚部を失ったtype-Lで敢えて前に出る。
脚部を失おうがその程度……タケル・アマノにとっては損傷に値しない。
制御バランスは機体各所のスラスターで。過重移動は四肢の残りがあればどうとでもなる。
そんな事よりも、囀るシンの言葉に反する方が重要であった。
「逃げたって……逃げる事の何が悪い!!」
全身を逆撫でする悪寒────まるでtype-Lに乗るタケルの意識が広がっていくような気配と共に。
ここ一番で振り抜かれるフラッシュエッジ。光の刃はデスティニーの肩口を掠めた。
この瞬間に全てを賭したタケルは、最後の扉を開く。
SEEDの奥へと……タケルとシン、2人だけが踏み込める人類の極致へと。
攻勢を受けて、怯んだデスティニーへと追撃。
超反射で戦ってきたシンのお株を奪うような、予定調和の二の太刀がデスティニーに迫る。
「くっ……んのぉお!」
割り込ませたフラッシュエッジ。かろうじて防いだ光の刃が花を咲かせた。
「次で!」
「っ──だから、あんたは」
応じる様に開花する────遺伝子の可能性が齎した人類の極致へと。
シン・アスカもまた、瞬間的にタケルと同じ領域へと突入した。
「なんにも分かってないんだよ!」
翻されるフラッシュエッジ。寸分違わずコクピットへと向けられたそれを、デスティニーが脚部で蹴り上げた。
これまでフラッシュエッジとパルマフィオキーナで応酬していたがタケルの虚を突いた。
跳ね上げられた腕部。同時に脚部を失っていたtype-Lのは大きくその姿勢を崩された。
満を持してチャージされるのは、掌部ゼロ距離ビーム砲パルマフィオキーナ。
「うぉおお!!
渾身の声と共にそれは、type-Lの頭部メインカメラを粉砕した。
シン・アスカ育成計画。これにて完
いや、本当にしっかりと主人公してくれましたね。作者はこのシン君の活躍に満足です。
さて、いよいよ最後の最後。
もう少しだけお付き合いください。
感想よろしくお願いします。
完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)
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後日談の日常回
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オリジナルプロットの劇場版
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SEED FREEDOM
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企画:タケルユリスinOO世界