機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-final 終わらない未来へ

 

 

 嫌な空気が────漂い始めていた。

 

 

 

 嫌な空気、などと言えば語弊があるかもしれない。

 

 一縷の望みも無い、絶望の空気である。

 

 

 

 

「くっ、キラ達はまだ突破できないのか! アスランは!」

 

 戦闘開始から15分。想定された残り時間の半分が既に過ぎている。

 しかし未だ状況の好転は無い。カガリの声は震えていた。

 

「ダメです! 両機とも依然として敵の巨大MSと戦闘中!」

 

 返って来る答えは、カガリとて分かり切っている。

 2年前の大戦を潜り抜けた英雄たちでようやっと渡り合える────そんな巨大兵器(フルングニル)が5機。

 そしてその奥にある目標レーヴァテインですら、膨大な迎撃砲を搭載した異常な兵器。

 

 無理して突破してもレーヴァテインとの挟み撃ちとなるこの状況で出来るのは、フルングニルの脅威を片付けた後にレーヴァテインへと取り掛かるしかないのだ。

 

 そんな無謀とも言えるような作戦で、短時間の攻略が可能なわけが無い。

 むしろ状況は刻々と悪化の一途をたどっている。

 

 決戦で数を減らした同盟軍とザフトは、フルングニルの蹂躙でいよいよ無視できない数にまで被害を増やしていた。

 

 時間も。戦力も。手立ても足りない。

 それが、今のレーヴァテイン攻防戦の実情だ。

 

 

 

 

 

「バルトフェルド隊長────エターナルも、皆と共に前へ」

 

 

 カガリと同じく絶望の気配を感じ取ったラクスは、覚悟と共に指示を下した。

 

「馬鹿を言いなさんな! 巨体の艦船なんかであの中に突っ込めば、1分ともたんぞ!」

「ですが、そうなったとしても今はそれが必要です! 私には皆を率いる名と力があります。この命を賭してでも…………皆の絶望を振り払う必要があるはずです」

 

 ラクス・クラインの名と力。

 彼女が乗るエターナルが前へと出れば、決戦で共に戦ってきた同盟軍も、彼女をよく見知っているザフトの者達も、再び勢い付くことが可能。

 僅かでもこの苦境を覆す一矢となれるなら────そんなラクスの考えに、バルトフェルドの答えは否で返す。

 

「バカヤロウが! 今ここでお前を失ってどうする! こうなった以上、ラクス・クラインが必要になるのは最悪の事態の先だ。アスハの嬢ちゃんと同じくここで死なれては困るんだよ────ダコスタ、エターナルは後退だ!」

「りょ、了解!」

「バルトフェルド隊長! それでは皆が──」

「悪いが、具申は聞き入れられん!」

 

 今この時、一時凌ぎの為の特攻に、ラクスを犠牲にしてしまえば。

 プラントが撃たれた後、本当にコーディネーターをまとめられるものがいなくなる。

 目の前の戦況を見れば、最悪の事態の先を考えるのは、既に必要なことであった。

 

 アンドリュー・バルトフェルドは、未来のために今プラントを切り捨てたのである。

 

「バルトフェルド隊長!」

「俺だって、諦めたわけじゃ無い…………だが、この状況で俺達にできる事は限られている!」

 

 奮える拳を握りしめるバルトフェルドをみて、ラクスも押し黙ることしかできなかった。

 

 

 

 残された時間は、後僅か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦隊損耗率、65%を超えました!」

 

 フォルトゥナ艦長席に座るナタルは、足元が崩れ落ちていくような感覚であった。

 

 もはや件の巨大要塞を止められるかではなく、自分達が生き残れるかの状況へと至り始める。

 双肩に乗せられているプラント存亡の危機と、自らの命が天秤に掛けられ始める。

 そも守るために戦っている自分達が生きていなければ、プラントを守る事などできない。

 全滅の憂き目が見えてきた今、度外視していた守勢を見つめなければならなくなってきていた。

 

「くっ! メイリン、敵兵器の解析は!」

「全力で取り掛かっていますが、外からでは余りにも情報が少な過ぎます!」

「────とにかく、続けてくれ」

 

 止める手段は無いか。有効な手立てはないか。

 藁にも縋る思いでメイリンに…………誰かに答えを求める。

 情けなくなる思考を、かぶりを振って追い出して、今一度と戦場を見つめる。

 

 フルングニルは5機。

 ザラ隊の3人。レイとの連携もあり、キラとムウでもう1機。共闘を始めたオーブ三羽烏とインパルス小隊で更に1機。

 だが、善戦できているのはここまでだ。

 ミネルバとフォルトゥナ。更には同盟軍とザフトの部隊。これらの援護を受けながら、満身創痍のハイネとミゲルがどうにか落とされないように渡り合っている。

 そして最後の1機は、後背から参戦してきたシンとサヤの二人。疲労も著しく、更には数の不利もあり厳しい戦況。

 

 これでどうにか、フルングニルを抑えているのみである。

 

 その背後にいる巨大な戦艦レーヴァテインには、誰一人としてたどり着けず手を伸ばせないでいる。

 フルングニルの隙を縫って飛び出して行ったところで、レーヴァテインの迎撃火砲に見舞われて、普通の兵士ではまるでなす術がないのだ。

 

 後一手…………フルングニルを突破し、レーヴァテインの迎撃火砲すら潜り抜けられる切り札が必要だった。

 

「(何か…………何か手立ては……)」

 

 必死に戦域情報を見つめるナタル……しかし、その瞳に答えはまだ映らない。

 

 希望はどこにも見当たらなかった。

 

 

 

『──バジルール艦長。きこ、える……かしら?』

 

 

 落とし掛けた視線が、飛び込んできた通信とモニターに引き寄せられる。

 

「──ラングベルト?」

 

 瞬間的にナタルの顔に喜色が浮かぶ。求めていた切り札になり得る人物だ。彼女の能力があれば、戦況を覆す一手になり得る。

 

 しかし、浮かんだ喜色はすぐさまナタルの表情から消えていった。

 

「ラングベルト…………お前、そこは」

『悪いわね……余計な問答はしていられないわ。メイリン・ホーク……今からこの巨大戦艦レーヴァテインの内部図を送る。解析して破壊プランを提示しなさい』

 

 届けられる言葉と情報。

 ナタルもメイリンも驚愕に目を見開くが、メイリンは有無を言わさずの作業に入った。

 

「お前は、そこに居るのか…………?」

『悪かったわね。でも、貴女にとってもあの男は(アズラエル)無関係では無いでしょ? ケリをつけていたの────それで気持ちよく寝てたら、ドンチャンが騒がしくて起こされただけ』

 

 独断の戦闘放棄。

 モニタリングされていたその行為の先にあった、彼女だけの戦い。

 ユリスの破天荒など、今更驚くところではないナタルではあったが、空白の時間で起きていた事実にはやはり驚きが大きかった。

 

「そこに居るのなら、お前が止めることはできないのか…………ラングベルト」

『無理よ、出来たらやってる────システムはロック済み。ご丁寧にクラックできる可能性がある維持人員にもとっくの昔に退去命令が出てるわ。多分私の潜入を見て、でしょうね』

 

 万が一にも防がれない様に。

 アズラエルにとっては恐らく、自らが生き残ることはマストではなかったのだ。

 

 そうまでしてでも、コーディネーターを滅ぼしたかったのだろう。

 

『とにかく…………私にできるのはここまで…………あとは、任せる…………わよ…………』

「待て、ラングベルト!」

 

 途絶える通信。

 静けさを取り戻した艦橋に、僅かに上擦る空気が戻っていた。

 

 自らが流した鮮血に身を染めて、虚な瞳で逆転の鍵を送ってくれたユリス・ラングベルトの姿に。

 

 か細くも確かな希望が見え始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 霞んでくる視界を必死に気力で繋ぎ止めて、ユリスは身体を投げ出した。

 

 

「──はっ、本当らしくないわね」

 

 

 長きにわたる因縁との決着をつけて、気持ちよく微睡んでいたところに。

 まるで大音量の目覚ましでも頭に突っ込まれた様に()()()()()()()()が、ユリスを叩き起こしたのだ。

 

 

「わかってるわよ兄さん。このまま…………逃げたりなんてしないわ…………私も、ステラ達と生きていくって決めたんだから……」

 

 

 

 重い身体を引き摺って。ユリスは司令室の外へと目を向ける。

 ここから置いてきたtypeーCの場所までは遠い……が、時間はそう多く残されていない。

 

 

「ちゃんと最後まで────闘い抜くわよ、兄さん」

 

 

 

 ユリス・ラングベルトも一人、最後の抗いをみせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイリン・ホークは、焦燥を必死に抑えつけて目の前の情報を洗い続けた。

 双肩にかかる重圧は、正に世界の重さに等しい。

 自身の出来不出来が、今この時は世界の命運を左右する。

 

 それでもキーを叩く手はまるで精密機械の様に止まらず、そして思考は回り続ける。

 

 タケルと共に過ごした時間。

 ミネルバで。ファクトリーで。エターナルで。プラントの工廠で。

 好意と共に過ごしてきたのは、オーブの兵器開発を一手に引き受けていた傑物との、少女らしくない時間ばかり。

 だが、それこそがメイリン・ホークにとっての至福であり、ある種の戦いでもあった。

 

 これまでの全てをぶつけるようにキーを叩くメイリン。

 その背中に、姉の後ろに自信なさげに隠れていた、少女の面影は無かった。

 

 

「──解析、出ました!」

 

 

 フォルトゥナのモニターに表示される、レーヴァテイン内部の図面。

 そこの中心にある、砲身に最も近い地点に赤いマーキングが施される。

 

 

「巨大な砲撃を行うための中枢動力炉です! 3基の副動力炉とエネルギーバイパスで繋がり、中枢動力炉から一括で砲身へのエネルギー供給を行っています────ここを破壊すれば!」

 

 

 僅かに艦橋内に歓声が挙がる。

 まだ、やれる。どうにかなる可能性が僅かでも提示される。

 

 しかし、その声に反してナタルの表情は苦しそうに歪んでいた。

 

「よくやってくれたメイリン────通信回線を同盟軍代表のカガリ・ユラ・アスハに繋いでくれ」

 

 指示を下し数秒。

 優秀なオペレーターによって即座にカガリとの通信が繋がれ、艦橋にアカツキのコクピットが映し出された。

 

『義姉さん!』

「メイリン、データを」

「はい!」

 

 カガリへと共有されるレーヴァテイン内部の見取り図と、中枢動力炉のマーキング。

 その意味を解し、カガリは目を見開いた。

 

『義姉さん、これは……』

「ラングベルトが届けてくれた。恐らくこれが、唯一の手立てになるだろう────だが」

 

 挙がった歓声に素直に喜べなかったナタル。

 ナタルの表情の意味にメイリンもそこで気が付いた。

 

 一体どうやって、それを成すか。

 

 

 既に同盟軍もザフトも手一杯。

 時間をかけてフルングニルを確実に潰していけば可能かもしれないが、そんなことをしている間にレーヴァテインの発射準備は整ってしまう。

 

 依然として、これを成す戦力の一手が足りていないのだ。

 

 

「すまないカガリ。方策は見えど、それを成す手立てが私達にはもう──」

『いや、大丈夫だ義姉さん』

 

 

 しかし、ナタルの予想に反して。返って来るカガリの声は力強いものだった。

 

「大丈夫、だと?」

 

 あぁ、と頷き返す義妹の表情は希望に満ちていた。

 まるで出来ることを疑っていない。正に、これで大丈夫だと。

 

 パズルの最後のピースが嵌った────そんな確信を感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、戦場を観測する管制官達が一斉に戦域情報の異常を発見する。

 

 同時に抑えられない喜色が、カガリの胸を満たした。

 

 

 

『もうすぐ、戻って来る』

 

 

 

 接近してくる高速の物体────否、それは高速などと生温い表現ではない。

 異次元と呼べる、馬鹿げた速域で迫る高熱原体。

 

 

 

『いつだって、私の窮地に駆け付けてくれる』

 

 

 

 宇宙を。戦場を。

 迸る光条よりも尚輝いて────駆け抜けていく、閃光。

 

 

 

『それが────私の兄様だから』

 

 

 

 

 

 

 

 直後────フォルトゥナの眼前を、白銀の閃光が駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!? このタイミングでとは────恐れ入るぜダチ公!」

 

 薙ぎ払われたヨトゥンをビームシールドで防ぎながら、ミゲル・アイマンは百万の軍を得たと言うように声を挙げた。

 

 

「全くもぅ……」

「待たせ過ぎです!」

「遅いですよ!」

 

 

 アサギ、マユラ、ジュリと。三者三様に彼の帰還を喜ぶように嘆息した。

 

 

 

 

 

 ──閃光、来来

 ──白銀、来来

 

 タケル・アマノとシロガネ・コクウの来着である。

 

 

 

 

「戦況は絶望の一言────でもいけるわね、坊や?」

「無論です!」

 

 完成されたシロガネ・コクウ。そして背部に接続された大型アームドモジュール“テンライユニット”。

 馬鹿げた戦速を実現するスラスターが、一斉に炎と光を吐き出していく。

 

 

『タケルさん! 敵巨大戦艦レーヴァテインの内部図です! 主砲を止めるには、中枢動力炉の破壊を!』

 

 

 加速するシロガネにメイリンからの作戦指示が届く。

 相変わらず自分が迷わぬ様支えてくれる少女に嬉しさを覚えながら、タケルは大きく頷いた。

 

「ありがとう、メイリン! これより敵兵器の迎撃を掻い潜り突入する────血路を拓け、コンクルーダーズ!!」

 

 指示を飛ばす。未だ健在の仲間達へと。

 

「漸くか、待ち侘びたぜダチ公!」

 

 即座に答えるは、親友の彼であった。

 ボロボロのアスパイアとオレンジカラーのデスティニー。

 付き合い長い友と共に、戦域を駆け上がる。

 

「いくぜハイネ、ついてきな!」

「上等、お前こそ遅れるなよ!」

 

 互いに片腕のみの満身創痍。しかしその手に握るは未だ折れず健在の大剣。

 ティルヴィングとアロンダイトを引っ提げ、眼前のフルングニルへと突貫する。

 

 直後、ミネルバとフォルトゥナ。その他多くのMS達が援護射撃を一斉に放った。

 

「仕留めるぞ!」

「オーライ!」

 

 爆炎と夥しい射線に紛れ、フルングニルへと接近。

 異常速度のシロガネに僅かでも意識を奪われていたか、フルングニルの対応は遅かった。

 

「これまでの礼だ、受け取りな!」

 

 勢いのままに、ハイネはアロンダイトをヨトゥンへと突き刺し薙ぎ払う。

 

「これ以上、お前らの好きにさせっかよ!」

 

 ティルヴィングの出力範囲を調整。

 全てを断ち切るアスパイアの一振りを以て、ミゲルはフルングニルの頭上からその巨体の背中を切り裂いた。

 

 動力部にまで割け入った光の刃によって遂に、フルングニルの一機が爆散する。

 

 

「いけ、ダチ公!」

 

 

 傍を駆け抜けていく閃光に最期のエールを送れば、友はまるで応えるように光の花を広げて見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戻ってきた白銀の閃光に、アスランは懐かしい頼もしさと、抑え切れない嬉しさを覚えて口元を緩めた。

 ようやくらしい姿が見れたというもの。今この時、これ程頼れる人間もいない。

 

「あのバカ野郎が────すまないイザーク、俺は先に行かせてもらうぞ」

 

 翔け出そうとする真紅を、しかし蒼灰と砂色が阻んだ。

 

「ふざけるな! 今はあれが俺達の隊長だ!」

「血路を開けとの隊長からの指示だぜ? 元隊長の出番なんかないっての」

 

 最近では落ち着きを見せてきたはずの2人の血気に逸る声音に、アスランは獰猛な笑みを浮かべてしまう。

 

 

「ふっ、残念だがそれは譲れないな。あいつが戻ってきたのなら、あのバカの道を切り開くのが友である俺の役目だ」

「ふんっ、だったら──」

「さっさと目の前の敵を片付けるとしようぜ!」

 

 

 翔け出す英雄が3人。

 ジャスティス、type-D、typeーBが三位一体となってフルングニルへと躍りかかる。

 ファトゥムが陽電子リフレクターの発生装置を破壊すれば、イヴァルディがニブルヘイムの砲塔を次々と薙ぎ払う。

 そして、決め手はtypeーDのブラズニル。巨大な戦斧が、フルングニルのコクピットへと突き刺さった。

 

 

「さぁ、次だ!」

「遅れるなよディアッカ!」

「お前達こそ、墜とされんなよ!」

 

 

 英雄達は、閃光と共に躍動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 不意に放たれたレーヴァテインからの迎撃火砲。

 

「兄様!」

 

 シロガネに向けられたそれを、眼前に現れた金色のドラグーンユニットが防いで見せる。

 防ぎ終わった金色のドラグーンは、シロガネの腕部へと取りついた。

 

「カガリ……」

「臆せず前だけを見ろ! 全ての妨害は、私達が抑える!」

「──うん!」

 

 余計なやり取りを省いた応答。

 しかし、信頼の証は駆けていく背中と預ける背中に確かにあった。

 カガリは打ち震える心と共に最後の檄を挙げる。

 

 

「同盟軍各機! シロガネを援護しろ! 命を賭して、最後の希望を守り抜け!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、もう! いつもいつも私だけ出遅れる!!」

 

 サヤに敗れ、アマテラスへと回収されたはずのルナマリア・ホークは、必死に機体を走らせる。

 

 その手が駆るのはストライクルージュ。アマテラスに搭載されていたこの機体を駆りて防衛戦に赴いてきたのだ。

 

 

「タイミング悪いんですよ、隊長!」

 

 

 悪態付きながらも、オオトリ装備のレールガンとビームランチャーを展開。

 シロガネへと向けられるミサイルを眼前で薙ぎ払って見せた。

 

「ルナマリア!」

「皆さんが先で待ってますよ! 早く行ってあげてください!」

「あぁ、ありがとう!」

 

 憧憬を抱いた背中が遠ざかっていくのを見つめながら、ルナマリアもまた戦場を駆けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アサギ、ジュリ、援護を!」

「もち!」

「任せて!」

 

 

 翔け出すキンシャク。援護に入るコンカク。

 そしてマユラのシュトリが、ビームシールドを展開して吶喊。

 

 

 アサギがその機動性で引きつけ、ジュリが敵火線を牽制し、そうして敵陣貫く一矢となるのがマユラの役目。

 

「やぁあああ!」

 

 放たれる巨大な閃光に臆せず飛び込めば、機体が悲鳴を挙げる────が、その先にこそ活路がある。

 

 

「見えた!」

 

 

 胸部下に存在する陽電子リフレクターの発生装置。

 ヨトゥンを受けきったからこそ手を届かせることの出来る、最短の血路。

 

「こぉんのおお!」

 

 叩きつけられるシュトリのビームサーベルが、シールド発生装置を破壊する。

 

 強固な盾を失えば、後は──

 

 

「皆さん! 一気に破壊します、続いてください!」

 

 

 構えられたキンシャクの背部ビーム砲と、コンカクのミサイルポッド。ドラグーン兵装カクヨク。そしてビームスナイパーのオールウェポンズフリー。

 

「あいよ!」

「任せな!」

「墜とす!」

 

 更にブラストシルエットを装備したアビス、カオスとガイアもフルオープン。

 一斉に攻撃を叩きこんだ。

 

 しかし、それですぐ終わるわけでもない。

 先んじて放たれていたフルングニルのミサイルが、彼等の機体に降り注ぐ。

 

 次々とその衝撃でVPS装甲が落ちていく中、爆煙の中より現れるは黄色のMSキンシャク。

 唯一。彼女だけは、その機動性をもって全てのミサイルを躱し追撃の一手に動いていた。

 

 

「これでぇえ!」

 

 

 最後に残された腹部最大火線スリュム。そこへビームサーベルを叩きつける。

 

 エネルギーの臨界を迎えていたスリュムは大きな爆発を起こし、遂に3機目のフルングニルが無力化された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイ、僕たちもできることを」

「えぇ、行きましょう」

 

 フリーダムとレジェンドが動き出す。

 後方から迫るアスランたちに眼前のフルングニルを任せ、2機はレーヴァテインの迎撃火砲を潰しに向かった。

 

 膨大な数を誇るレーヴァテインの迎撃火砲。

 それを20を超えるドラグーンの砲門と、フリーダムのマルチロックオンによって一斉に蹂躙していく。

 

 即座に背後から迫るフルングニルからの攻撃を、レイとキラは必死に回避した。

 それでも放たれたドラグーン端末はレーヴァテインを狙うことをやめず驟雨の光を浴びせ続けた。

 

 全ては、彼が行く道を切り拓く為。

 

 

「行って、タケル! 

「道は、俺たちが切り開く!」

 

 

 呼びかけると同時に、キラとレイの側を白銀の閃光が駆け抜けていく。

 

 

 レーヴァテインは既に目前────しかし、その眼前に最後のフルングニルが立ち塞がった。

 

 

「お兄様!」

「ここは俺たちが——」

 

 

 暗躍の機体シンゲツと、紅蓮の翼を持つデスティニーが駆けつける。

 同時にタケルはシロガネを急制動。テンライユニットの全兵装を展開した。

 

 シロガネのビャクライユニットと、ミーティアを参考に開発されたテンライユニット。

 その目指すところは巡航時の莫大な推進力と、艦隊すら殲滅する事を可能とする超火力。

 いわば、通常MSサイズに落とし込んだフルングニルと同じコンセプトのアームドモジュールである。

 

 シロガネ本体を背後から包み込む様に覆っていたテンライユニットから次々と武装が展開された。

 両肩部の大口径プラズマ砲“ホムラ”。

 背部の高出力砲搭載大型ドラグーン兵装“テンライ”。

 そして40門を超える高性能誘導ミサイル。

 

「制圧射撃を行う! サヤはシールド装置を! シンはそのまま叩き切れ!」

 

 同時に放たれるシロガネの最大砲火。

 フルングニルに陽電子リフレクターを展開させ、足を止めさせると共に火線の渦に沈め込む。

 

 その中を、SEEDがもたらす先鋭された知覚領域でシンとサヤが突撃する。

 

 

「やぁああ!」

「うぉおお!」

 

 

 シンゲツがゲツエイでシールド発生装置を破壊。

 同時に、デスティニーがアロンダイトでフルングニルを十字に切り捌き、前面の主兵装を破壊する。

 

 

「これで!」

 

 

 シロガネはドラグーン兵装ビャクライを射出。同時に取り出した2本の複合兵装ビャクヤを横に連結すると、ビャクライ端末を集結させる。

 ビャクヤの各所に突き刺さるビャクライの端末から過剰にエネルギーを供給され、異常火力を得た巨大な閃光がフルングニルを撃ち抜いた。

 

 これが、完成したシロガネ・コクウの唯一無二の兵装────オーバードーズシステム。

 ジンライを機体各所に装着するフレキシブルウェポンシステムと同様に。大型化しジェネレーターを備えたドラグーン端末から、主兵装ビャクヤへエネルギーの過剰供給を行い、異常出力まで発揮することを可能とする。

 

 巨体であるフルングニルを、一撃で撃ち抜く事すら容易な武装システムである。

 

 

 

 

 

 道は開けた。

 

 

 

 

「行ってください、お兄様!」

「頼む……隊長!」

 

 

 

 サヤとシンに託され、タケルはシロガネを走らせる。

 キラとレイによって減らされても尚、異常な数の砲撃が襲い来る中、その代名詞とも言える機動性でレーヴァテインへと接近していく。

 

「っ!? くっ、後は任せるわ……行きなさい坊や!」

 

 ここまでテンライユニットを制御していたアイシャが、苦悶の声と共にシロガネとの接続を解除して離れていく。

 迎撃の砲火を避ける異次元の起動に、アイシャの身体が付いていけなかったのだ。

 

 

 1人になったコクピットで────しかし、タケルの胸に恐怖も孤独も無い。

 

 皆が開いた血路を行く────そこになんの気兼ねも無い。

 

 

 ただ、成すべきことを。

 

 

 

「やるんだ! 今生きている僕が!!」

 

 

 ヴォワチュール・リュミエールによって光の花を咲かせ、シロガネは更なる加速を見せた。

 SEEDを深め、タケルは更なる反応速度を以てレーヴァテインの攻撃を避け続ける。

 

 

「見えた!」

 

 

 目前まで迫った巨大な砲身。そこから突入ルートを見つけると、ジンライを展開。

 ビャクヤの先端に集結させると、巨大な光の槍を形成させる。

 

 

「はぁああ!!」

 

 

 

 雄たけびと共に、タケルはレーヴァテインへと突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シロガネ、レーヴァテイン内部へと突入!!」

 

 

 メイリンの声に、フォルトゥナ艦橋に歓声が再び巻き起こった。

 

「──タケルさん」

「大丈夫だ、メイリン」

 

 心配の声音を零したメイリンを、ナタルは静かに抑えた。

 

「バジルール、さん?」

「タケルが本気になったのなら、守れないものなんて無いさ。だから信じて待っていれば良い」

 

 いつだって、皆が望む以上の戦果を見せてきた。

 それがナタルの愛するタケル・アマノである。

 此度もそう……彼が本当の意味で帰ってきたのなら、その先に見せてくれるのは予想以上の結果。

 

 

「だから、大丈夫だ」

「そうですね────私も信じています」

 

 

 憂いの消えた瞳で戦域を見つめる2人。

 

 

 白銀の閃光が、また一つ宇宙に瞬いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中枢動力炉────ここか!」

 

 

 幾つもの壁を破壊し、撃ち抜いて、遂にタケルは辿り着く。

 

 レーヴァテイン内部の中枢動力炉。その目前へと。

 

 

「大きい……それに……」

 

 

 フルングニルほどもある巨大な動力炉。そしてそこには、案の定施されている陽電子リフレクターによる光の盾。

 周囲に発生装置らしきものは無く、恐らくはシールド内側に敷設されたもの。

 

 ここにきて、タケルに最後の壁が立ちはだかった。

 

 

「時間はもう無い……なら、取れる手段は一つ」

 

 

 武装を一つ選択し、シロガネは2種類12基のドラグーンを全て展開する。

 同時に胸部装甲が開き、そこに大口径の砲門が現れた。

 

 

「──エネルギー分配率正常。ジンライによる砲身を展開。ビャクライとのエネルギーバイパスを直結」

 

 

 胸部臨界出力荷電粒子砲────ゴウライ。

 

 ジンライによる磁場フィールドで巨大な砲身を形成し、機体各所に接続したビャクライのジェネレーターを直結しオーバードーズシステムをフル稼働。

 胸部に集中させたい過剰エネルギーを全て放出する、シロガネ・コクウが持つ最強の切り札。

 

 嘗て、ユニウスセブンの破砕が成しえなかったことを受け、エリカ・シモンズによって考案された絶対的破壊兵装である。

 

 

「エネルギーチャージ終了……これで!」

 

 

 眼前に広がる鉄壁の光。しかし、それを打ち破るべくシロガネの胸部に光が収束していく。

 

 弱い己を。無力な己を信じ。

 ここまで背中を押してくれた皆の希望を……無駄にすることなどできるはずがない。

 

 過剰に注がれていくエネルギーに、シロガネの内部フレームが熱を持ち光り始める。

 その様は、まるで太陽の様であった。

 

 

「人類は必ず、絶望を乗り越えられる……そうでしょう、議長!」

 

 

 託された言葉と想いを今一度反芻する。

 嘆いた分だけ強くなった心と共に、最後のトリガーに指を掛けた。

 

 

 

「証明します! 僕が今、この命でできる事で!」

 

 

 トリガーを引く。

 

 放たれる超密度の閃光。

 それが陽電子リフレクターへとぶつかると、まるで紙屑の様に光の盾を粉砕する。

 そのままレーヴァテインにチャージ中であった中枢動力炉へと、シロガネのゴウライは突き刺さった。

 

 

 瞬間、光が爆ぜる。

 

 

 溢れんばかりのエネルギーを蓄えていたレーヴァテインの動力炉に、過剰なエネルギーが叩きこまれ瞬間的に巨大な爆発とエネルギーの暴走が巻き起こる。

 

 中枢動力炉から副動力炉へと。繋がれていたエネルギーが連鎖的に爆発を起こしていき、巨大戦艦レーヴァテインは内部から崩壊を始めた。

 

 ぽっかりと宇宙に空いていた巨大な砲身の穴が崩れ落ちていく。

 次々と巻き起こる爆発に、艦体の外装が剥がれ落ちていき、稼働中であった迎撃火砲が全て沈黙していく。

 

 

 そして最後には、レーヴァテインは巨大な爆発につつまれ、宇宙に散った。

 

 

 

 

 

「──レーヴァテイン、沈黙! やりました!!」

 

 

 

 

 誰かが、挙げたその報告が。

 

 

 

 長きにわたった戦いの終わりを告げるのであった。

 

 

 




戦いはこれで終わり。
最後に、エピローグが2つの予定。


この決着に、皆さんからの感想をいただければ幸いです。

完結後、読みたい話は? (どれから書くか参考までに)

  • 後日談の日常回
  • オリジナルプロットの劇場版
  • SEED FREEDOM
  • 企画:タケルユリスinOO世界
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