機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

32 / 330
PHASE-26 激闘の先で

 

 

 

 

 シャトルの爆発によって流されるアストレイ。

 アークエンジェル近辺に居たが徐々にその距離を空けていく。

 

「ストライク着艦を確認!」

「アストレイは!」

「本艦との突入角に差異あり。このままでは……」

「何ですって!?」

 

 ストライク着艦の報に喜んだのも束の間、アストレイとの距離が開いている事にマリューは表情を険しくさせた。

 

「アマノ二尉! 戻って下さい、アマノ二尉!」

「ハウ二等兵、無理だ! ストライクならまだしもアストレイの推力では!」

「艦を寄せて! アークエンジェルの推力ならまだ間に合う!」

「艦長! アストレイを拾う事になればどうなるか、お分かりのはずです!」

「ここまでを彼に頼っておきながら、見殺しにできるはずがないでしょう!」

「第8艦隊の犠牲を無にするとでも言うのですか!!」

「それでも、彼が居なければ降下だってできなかったわ!!」

 

 マリューの剣幕にナタルは気圧され押し黙った。

 単独での大気圏突入ならアストレイとて可能。

 今アストレイを追えば、降下予測地点は大きくズレ、最悪はザフトの勢力圏内に……そんなナタルの予想する最悪をマリューが塗り替える。

 

「今のアストレイはシールドを失っているのよ! それに、脚部の内部フレームだって剥き出し……拾えなければ機体が熱に耐えられず燃え尽きる可能性だってあり得る!」

「なっ!? ですが出撃前は!?」

「カタログスペックならの話よ! シールドを失い、ここまでの戦いでボロボロのアストレイが、スペック通りに耐えられる保証は無いわ!」

 

 ナタルさえもマリューの推測に驚きのあまり息を呑んだ。

 明確に死を予見させるマリューの言葉に、あの優しくも気丈に戦う少年の姿がクルー達に過る。

 

「ノイマン少尉!」

「了解!」

 

 もう、アークエンジェルの動きに迷いは無かった。

 スラスターを吹かして流されるアストレイへと艦を寄せる。

 

 

「はぁ、はぁ……アークエンジェルが? そっか、僕のせいで」

 

 大気圏突入の熱で、機体のあちこちのステータスが赤く染まっているアストレイのコクピット内。タケルは朦朧とする意識を必死に繋ぎ止めながら目の前に現れたアークエンジェルを見やった。

 

『タケル! こっちに!!』

『なんとしてもたどり着け! タケル!』

 

 キラとムウが近距離通信で必死に呼び掛けている声が聞こえた。

 煩わしいと思いつつも、それがタケルの意識を繋ぎとめるものであると朧気ながらに理解していた。

 

 だが、胸の痛みはタケルを熱と共に苛み、通信越しに聞こえる声が無情な音となってタケルの頭を揺さぶる。

 

 無意識にタケルは操縦桿を動かしアストレイの腕を伸ばした。

 もう意識は保っていられない、それを悟ったからであった。

 奇しくもそれは、ストライクが手を伸ばすのと同時であり、アストレイはなんとかアークエンジェルの甲板の上に着艦した。

 

 

 

 事切れた様に眠るパイロットを、その懐に抱えたまま……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地上へと降下するアークエンジェルを、結果的には見送るまでとなってしまったザフト。

 

 ヴェサリウスの休憩エリアでアスランは先の戦闘を思い返しながら1人佇んでいた。

 

「あれ、ここに居たんですか。アスラン」

「ニコル? あぁ、ちょっと疲れたからな」

「あれだけの大規模な戦い、僕達も初めてでしたもんね」

「あぁ──それでガモフも、墜ちてしまったからな」

 

 僅か、陰りを見せるアスランの表情をニコルも沈痛な面持ちで見つめた。

 戦争中である。討つことも討たれることも、覚悟の上である。

 それが自分か味方かは置いておいて。

 

 だが、理解はしていても心は別であった。

 もっとできる事がなかったか。助けることはできなかったか。

 そんな仮定がどうしても脳裏にちらついた。

 

「そう言えば、イザーク達。無事に地球には降りられたみたいです。さっき連絡が来ました」

 

 そんな空気を払拭する様に、ニコルは表情を変えて努めて明るい声を出した。

 明るい話題の1つでもないと、この空気は変えられないだろうと。

 聡いニコルの気遣いがアスランにはわかり、習う様に口もとを緩めた。

 

「そうか、よかった……」

 

 心底そう思えた。

 あの時、アストレイと対峙した時も思った。

 仲間を死なせること、それはアスランにとって許せない事であった。

 

 普段はやっかみも受けるし、決して仲の良い同期とは言えない。

 それでも、大切な仲間であった。

 それを失う怖さが、あの時アスランの背中を押してくれたのだ。

 

 今でも覚えている。

 あの彼我を問わず全ての動きが見えてくるような洗練された感覚。

 あの時の自分は、恐らく隊長であるクルーゼとやり合ったとて負けはしないと思えた。

 

「おーニコル。アスランは居たか? ってなんだ、2人でもうイチャイチャしていたか」

「ミゲル……貴方は一体何を言っているんだ?」

「おセンチなお前の事だ。ガモフの事でさぞ落ち込んでるだろうと思ってな。ニコルに慰めに行ってやれって言ったら飛んでいくもんだからよ。てっきりその気があるのかと……」

「──ニコル、すまないが俺は」

「アスラン、ミゲルの変な口車に乗らないでください! 全て嘘ですし僕もその気はありません!」

 

 俄かに距離を取ったアスランにショックを受けながら、ニコルはきつくミゲルを睨みつけてらしくない声を張り上げた。

 

「あーそうだったよな。悪い悪い、ニコルはラクス様一筋だもんな」

「──ニコル、それもまた君には悪いんだが」

「違いますよアスラン! 僕は同じ音楽家として彼女の歌を尊敬しているだけです! ミゲル、いい加減にしてください!」

 

 がー! と、珍しく噛みつかんばかりに怒った表情を見せるニコル。

 彼が言う音楽家とは、ニコルが好きな事にピアノの演奏がある事から来ている。

 自宅にも大きなピアノを持ち、家に帰れば必ず弾いていた。

 いつかは大きなコンサートホールで演奏するのがニコルの夢なのだ。

 

「ははっ、どうだ少しは落ち込んだ気分も紛れたか?」

「全く、素直じゃないんですから本当に……」

 

 こうしてバカなやり取りをすることで気を紛らわせる。

 ミゲルなりにアスランを気遣った結果であった。

 その甲斐あってか、アスランの意識も先の戦闘からこのくだらないやり取りへと移り、表情にも温かさが戻ってきていた。

 

「だがよ、マジな話ニコル。部屋に行くと必ずラクス様の歌が流れてるのはどうなんだ?」

「え? 別に良くないですか?」

 

 ミゲルの問いに不思議そうに首を掲げるニコル。

 ニコルとしては好きな歌を聴きながら、そこに自分が思い描くピアノの演奏を当てていく。

 そんな趣味であるピアノの1つの楽しみ方の延長でしかなかった。

 

「ニコルの夢だもんな、ラクスの歌とピアノで共演をするのが」

「ちょっ、ちょっとアスラン! やめて下さいよ、そんなのあくまで夢なんですから」

「そうか? 以前ラクスにピアノが好きな友人が居ると言ったら、是非ご一緒したいですと歓迎の言葉をもらったぞ」

「む、無理ですよ。そもそも僕とラクス様では接点も無いんですし」

「アスランがいるだろ?」

「あぁ、友人の夢をかなえる為なら、一肌脱ぐことくらい構わない」

 

 なんてことないだろうと言った様に答えるミゲルと、それを肯定するアスラン。

 手が届かぬ夢がいきなり目の前に降ってきたような、そんな奇妙な感覚をニコルは覚えて、次いで何度も思い描いた光景が再び脳内を埋めた。

 ラクスが歌う側で、その歌に合わせた旋律をピアノで奏でるニコル。

 叶えたい。そんな抗い難い衝動にのまれ、ニコルは小さく呟くのだった。

 

「──今度、ご予定が合いましたら是非にと」

「ふっ、わかった。今度ラクスとあった時に言っておこう」

「あ、ありがとうございます!」

 

 思わず目を輝かせたニコルはアスランの手を取った。

 今やニコルはアスランに抱き着かんばかりにはしゃいでいる。

 

「あーやっぱりお前ら、もしかしてその気がある?」

「ない!」

「ありません!」

「──息もぴったりじゃねえか」

 

 再び、笑い合う3人。

 

 戦火の中に置いて本当に僅かな……心が安らぐ時を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 地上へと降りたアークエンジェル。

 その医務室は、普段はそれほど出番のない場所であるが、今日に限っては大所帯であった。

 

 備え付けられた簡易ベッドが2つ。そのどちらもが埋まっており、それぞれに看病に付く者が2人ずつ。

 

 計6人が狭い医務室に居るのだ。

 その上、ベッドで寝ているキラ・ヤマトとタケル・アマノは大気圏突入の際にMSとは言え艦外に居た影響で酷い高熱にうなされて居る。

 

 大所帯でかつ、騒がしくもあるわけだ。

 

「ぐっ、はぁ、はぁ……うぅ……」

「兄様! しっかりしろ!」

「カガリ。私、先生を探してくるわね」

「──すまない。頼むフレイ」

 

 その場を離れたくないのだろう。

 心配そうにタケルの手を握るカガリの姿に、一緒に看病にあたっていたフレイは医務室を出てアークエンジェルの医務官を探しに向かう。

 

「はぁ、はぁ……はぁ……うぅ」

 

 そして向かい側で寝るキラもまた、苦しそうに声を上げており、高い熱に額には汗が浮かんでいた。

 

「トール、どうしよう……キラも熱が下がらないよ」

「とにかく、冷たいタオルとかで対処しようぜ。俺、準備してくるよ」

「あっ、トール!」

「わかってるよ、アマノ二尉の分も……だろ」

「うん、お願い」

 

 そう言ってトールもまた医務室を出ていった。

 その場に残ったのはカガリとミリアリア。

 互いに、熱に浮かされるタケルとキラを沈痛な面持ちで見つめる。

 

「キラ……ごめんね」

 

 苦しむキラを見るのが居た堪れなくて、ふと呟かれたミリアリアの声をカガリは聞きつけた。

 

「それは、何に対してのごめんだ?」

「えっ? 何に対してって……それは」

 

 ミリアリアは言葉に詰まった。

 志願した自分達の為にキラも残る事を選んでしまった。

 先の戦いで出撃する前のタケルにも言い含められていたがそれで負い目が消えたわけでもない。

 抱えた負い目を素直に曝け出すには、まだミリアリアの気持ちは整理されていなかった。

 

「キラがこうなったのは皆のせいじゃない。

 私は、キラが何のためにこの艦に残ったかを知っている。キラの言葉を目の前で聞いている」

「キラの……言葉」

「キラはお前達を守る為じゃない、この艦を守るために戦う事を選んだ──もう、お前達が乗っているから戦ってるわけじゃない」

「カガリさん……」

 

 強い眼差しで見つめてくるカガリの言葉には、それが事実であり説得力があることをミリアリアに感じさせる。

 言い聞かせるのではない。ただ純然たる事実として、彼らに負い目を感じる必要は無く、キラが謝られる様な謂われもない。

 それを理解させる声だった。

 

「戦うキラに謝るな──それは自ら戦いを選んだキラへの侮辱だ。誰のせいにするでもなく、自ら戦う意味を見つけたキラへのな」

「──そう、なんだ。キラも、自分の意思で戦う事を」

 

 1つ肩の荷が下りた様な感覚を覚えて、ミリアリアはうなされるキラの汗をタオルで拭ってやる。

 どこか先程までより、しっかりとした動きであった。

 それをみたカガリもタケルへと視線を戻すと、同様に彼の身体をタオルで拭ってやった。

 

 

 

 それきり沈黙が医務室を包み込み、それはフレイが医務官を連れてくるまで続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェル艦長室ではムウとマリューが顔を突き合わせ、地図を睨みつけていた。

 

「アラスカ、そして現在地がここか。こいつは見事にザフトの勢力圏内に降りちまったな」

 

 現在アークエンジェルが居る位置は南アフリカ大陸。広大な砂漠のど真ん中であった。

 目的地であるアラスカはそこから北東に海を越えた遥か先。

 北アメリカ大陸の北西部に位置する。

 かなりの距離の航行が必要な距離であった。

 

「仕方ありません。あの状況でアストレイを見殺しにするわけには、いかなかったですから」

「そりゃあな……俺だって、見殺しになんて絶対できなかったぜ。その点は間違っちゃいないさ」

 

 これまでアークエンジェルの為に必死に戦ってきたタケルを見殺しにしてまでアラスカに降りる等、誰ができると言うのだろうか。

 直前まで異を唱えていたナタルですら、マリューがアストレイの危険性を訴えて以後、何も否定を見せる事は無かった。

 

「とにかく、本艦の目的地は変わりません。なんとしてもアラスカにたどり着きます」

「──大丈夫か、艦長?」

「えぇ、大丈夫です」

 

 マリューもまた、先の戦いで尊敬する上官を亡くした直後だ。

 まるで力の入っていないマリューの返事に、ムウは先程の大丈夫がから返事だという事を悟る。

 

「とても大丈夫そうには見えないがね」

「大丈夫です……本当に」

「大丈夫かと言えば、副長さんもだ」

「──そう、かもしれないわね」

 

 マリューは、優秀な副艦長の表情を思い出した。

 

 事が収まり、地上へ降り立った直後。

 副艦長席に座るナタルの、苦悶に満ちた表情。

 そんな胸中を外に見せるような事、常の彼女であればしないはずだ。

 必然、その時の彼女は常では考えられないほどに動揺していたのだとも読み取れる。

 

 地球軍の士官として、艦を預かる副長として。

 ナタルはあの時、アストレイを見捨ててアラスカへと降りる事を具申した。

 

 その判断は軍人としては間違ってはいない。

 模範的軍人であろうとするナタル・バジル―ルという人間を捉えれば、何らおかしい事ではない。

 

 だがその具申が、知らぬこととは言えタケル・アマノの命を見捨てる判断であった事が、彼女にとっての大きな負い目となったのではないか。

 そうマリューとムウは考えていた。

 

「なんだかんだ、副長はタケルの事を目にかけてたしなぁ」

「優秀な軍人であっても、血も涙もない人間にはなれない。ナタルにとってもアマノ二尉は、決して軽く切り捨てられるような子ではないという事ね」

「それを見殺しにしようとした……か。知らぬ事とは言え、きついだろうな」

 

 考えれば考える程、艦もクルーも問題だらけである。

 また一つ、大きくマリューはため息を零した。

 

「一先ず、今疲れてるこの状況であれこれ考えても仕方ないな。俺はキラ達の様子だけ聞いてから寝る事にするよ」

「わかりました。また後程」

「艦長もそんなにクタクタのボロボロじゃあ、これから先もたないぜ。ちゃんと休んどけよ」

 

 そう言い残して、艦長室を離れるムウ。

 彼を見送ったマリューもまた、癖になりつつあるため息を零しながら、自室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 医務室は現在、少し刺々しい空気に包まれていた。

 フレイが呼んできた医務官。その彼がタケルとキラを診るも、問題は無いと述べたからである。

 掴みかからんとばかりに医務官へと詰め寄ったカガリと、それに呼応する様に疑心を見せるミリアリア達。

 医務官が自身を弁護する様に口を開いた。

 

「だからさ、感染症の熱じゃないんだ。内臓にも特に問題はないし、今はとにかく水分を取らせつつ身体を冷やしておく他無いでしょう」

「だが! 昨夜からずっとこんな調子じゃないか!」

「そりゃあ俺だって、コーディネーターを診るのなんて初めてだから、はっきりと大丈夫なんて言ってるわけじゃないが、俺達ナチュラルと比べると、彼らは遥かに丈夫な身体をしている。心配する事はないって」

「でもっ!」

 

 カガリは振り返って、苦しそうにしているタケルを見やった。

 それにつられるように医務官も視線を向ける。

 

「高熱は大気圏突入時のコクピット内の温度が原因だろう。俺達じゃまず助からない温度だったんだぜ。だからこんな熱くらいで──」

「フラガだ、入るぞ」

 

 針の筵の上に居たような現状を変えてくれそうな来客の報に医務官は居住まいを正して応対した。

 

「フラガ大尉」

「あ? なんだ皆して集まって?」

「大尉からも言ってくれ! 兄様とキラの熱が下がらないんだ。医務官としてちゃんと診てくれと!」

「いや、ですから俺は」

「病気や感染症の類は無いんだろう?」

 

 タケルの側にしゃがみこんで様子を見ながら、ムウは医務官へと問いかけた。

 

「ええ、そうです。それは確かかと」

「なら、時間を置けば快復するさ」

「なっ、大尉まで!」

「心配なのはわかるけどな、嬢ちゃん。彼だってちゃんと医務官としての立場から言ってるんだぜ。気持ちはわかるが信用してやれって」

 

 冷静に窘められて、頭に血が上っていたカガリもその勢いを失っていく。

 確かに心配のあまり、思うような答えが得られない医務官の言葉に反発してしまっていた。

 落ち着けば彼の言ってる事が恐らくは間違ってはいないことも理解でき、カガリはバツが悪そうに、目を伏せた。

 

「──すまない。容態が良くならなくて、当たってしまって」

「まぁMSでの大気圏突入なんて例、多分ないからな。どんなことになるかなんて、正直誰にも分らないんだ。とにかく、現状の状態では問題は無いんだから、大人しく快復を待ってようぜ」

「わかった」

「さっ、そうと分かれば必要な奴だけ残って全員ちゃんと休んでおけよ。嬢ちゃんはともかく、お前達はもう全員軍人なんだからな」

 

 一緒に居たミリアリアやトール、サイにフレイ等を見回して、ムウは努めて明るい声で促した。

 

 その場にはカガリとフレイだけが残り、他の面々は一度休憩に医務室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗く、昏い。何も見えぬ空間に溺れていくような心地の中、タケルは朦朧とした意識を必死に手繰り寄せていた。

 

 何故かは知らないが、ひどく胸の奥が痛くて。

 何故かはわからないが、胸が苦しくて仕方なかった。

 

 “そんな半人前の顔してるくせに保護者面すんなって……お前一人で背負うなよ”

 

 “私達のやった事を……過ちだと言わないでくれ”

 

 自責に駆られた己を、救ってくれた言葉が思い返される。

 が、今感じている苦しさを消し去るには足りなかった。

 

 “これは……紙で折った、お花かな? ”

 

 “うん、守ってくれてありがとう! ”

 

 “お兄ちゃんが頑張ってたの、エル知ってるよ”

 

 “それじゃ、バイバイ! ”

 

 無垢な笑顔と共に差し出されたお礼の花。

 タケルとキラを救ってくれたあの笑顔が、無情にも奪われた。その原因──

 

 

 何故、シャトルから離れた? 

 

 ──敵はもうデュエルとバスターを除いて居なかった。故に、その脅威を抑える為バスターへと向かった

 

 

 何故、シャトルの位置を把握していなかった? 

 

 ──内部フレームが剥き出しであったアストレイは予想よりずっと早く機体の装甲温度が上昇していた。メインカメラが映している映像ならまだしも、各種探知センサーが熱によって死ぬことは仕方のない事であり、あの状況でシャトルを探してバスターから目を離せるわけも無かった。

 

 

 何故、機体を何も考えずシャトルが下りてくる方へと寄せた? 

 

 ──知らなかった。どうしようもなかった。

 タケルが予測していた降下ルートから、戦火を避ける為にシャトルは少しでも安全なルートを目指して、降下ルートを変えていた。

 それはシャトルに乗っていた地球軍の兵士が必死に安全を確保するために起こした行動であり、あの状況下でタケルに伺いを立てている暇も無かった。

 

 

 自問自答をすれば、体の良い言い訳が出てくる。

 だがそのどれをとっても、胸の内に巣くう罪悪感を軽くすることは無かった。

 

 

「僕が、殺した」

 

 “バスターに殺させた”

 

「あの子を、エルちゃんを……」

 

 “守るべきはずのオーブ国民を大勢”

 

「ハルバートン提督からも、託されたのに」

 

 “彼を助ける事も、託された願いを果たすこともできずに”

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ……あの子は、兄様が殺したんだ」

 

 

 

 

 

 最も聞きたい声で放たれた、最も聞きたくない言葉に痛む胸を貫かれ、暗闇の中に居ながら、タケルの意識はブラックアウトしていった。

 

 




いかがでしたか

またちょっとアンケ取らせてください。
テーマは本作においての
「現状のヒロインムーブが強いキャラは誰?」

です。

ご感想と併せて是非是非お願いいたします。

現状のヒロインムーブ最強は誰?

  • ザ・苦労人マリュー
  • 牙城が崩れつつあるナタル
  • 妹?姉?母?3属性持ちのカガリ
  • 救済ルートで今後に期待フレイ
  • 発進どうぞだけでイケるミリアリア
  • 未だ底が知れないラクス
  • 忘れちゃいけないアストレイ3人娘
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。