seed編の時と同じくドラマCD風。
3回くらい書く予定です。
どうぞお楽しみください
時は少し遡る。
未だコンパスの始動も先であり、戦後の復興が優先されていた頃の事だ。
プラント最高評議会議長となったラクスがコンパス設立に向けた国際会議の為オーブを訪れ、その随員としてキラも同行。
当然、当事者になるであろうフレイやタケル等コンパス人員もオーブへと来訪する事となる。
併せてアルスター総裁の計らいでサヤも一時オーブへと帰国。なればシンとルナマリアにも休暇を貰えないかとと無理を通し、彼等を伴だっての故郷への帰還となった。
ついでに言えば、タケルの随員としてメイリンが。フレイの随員としてナタルが着いてきており、アマノ家は皆がそろってオーブへの帰還を叶える事に。
そうして、各々が初日の予定を終えて、夜の帳が降りて来た時分の事である。
とある大きなホテルへと、3人の少女はやってきた。
1人は長い黒髪の人形の様に端正な美少女。最近は少女から大人へと変化の兆しも見えるサヤ・アマノ。
そして残る2人は色彩の異なる赤毛を揺らす姉妹。ご存知ルナマリア・ホークとメイリン・ホークの2人である。
どこか勝手知ったると言う様にエレベーターに乗り込めば、サヤはいくつかのボタンを押してシステムを起動させる。
「サヤ・アマノ────ゲスト、ルナマリア・ホーク、メイリン・ホーク」
「へぇ~、流石はオーブ。音声とカメラ、その上事前申請のゲスト情報との審査もしているんだ────セキュリティ、ガチガチだね」
「当然でしょう。このホテルはVIP御用達。ましてやオーブは未だ国内にどれ程不穏分子が紛れているか知れたものでは無いのですから。
古妹も各国首脳が今回の会談で安心して宿泊できる様、このホテルを手配しているのです」
「で、それが佐官以上の事前申請と音声プラス映像の審査システムってわけか。アスハ代表の機関への本気度合いが分かるって感じだね」
「えぇ、古妹にとっても大事な時、というわけです────それで、ルナマリアは何をそんなガチガチになっているのです?」
「当たり前じゃない! 今から向かう場所に誰が居ると思ってるのよ!」
「誰って……そのアスハ代表と、アルスター総裁でしょ?」
「それから、プラントのラクス・クライン最高評議会議長ですが。何か問題でも?」
「問題大有りだっての!? 何よその面子! 今や世界を統べるであろう御三方でしょうが!」
「関係は無いでしょう。呼ばれた名目は前例もある“パジャマパーティー”なのですから」
「そうだよお姉ちゃん。何も身構える必要無いじゃない」
「何でアンタはそんなにお気楽に構えてられるのよ!?」
「だってパジャマパーティだよ? 私達だってアカデミーの頃は多少なりともしたことあるでしょ?」
「どこの世界に国家の代表とパジャマパーティする兵士が居るのよ! 何、おかしと思ってるの私だけ? 私の方がおかしいの!?」
「だって私はもうアルスター総裁とも結構面識あるし……ラクス様だって、少し前はファクトリーで一緒に過ごしてたから」
「先程も言いましたが身構えるだけ無駄ですよ。名目通りパジャマパーティーでありそれ以上でもそれ以下でもありません。そしてこれも言いましたが前例があります」
「な、何よその前例って!」
「だから前例です。あの人は4年前にも同様に企画し、私達を集めてパジャマパーティを催したのですから。まぁあの時はオーブ三羽烏やラミアス大佐も一緒に呼ばれていましたが」
「何よそのオールスター!? やっぱり私なんて場違いじゃない」
「いえ、だからそう言う事では。ルナマリア……ラクス・クラインは典型的な箱入り娘。同世代の同性と接する機会に疎く、あの時集まった面々との交流や親睦を深めるためにパジャマパーティを企画したそうです」
「箱入り娘の具合で言えば、当時のサヤも相当なものだと思うけど……タケルさんの話だと、家族以外にまともな交友関係無かったって」
「うるさいですメイリン。当時の私はお兄様しか目に映っていなかった。それだけです。常識も何もない世間知らずな箱入りとは違います」
「それって暗にラクス様が常識知らずって言ってない、あんた?」
「その通りですが何か?」
「アッハイ」
「──っと、着いたようですね。ここが、最上階のVIPエリア。これより先は私も知らない所です」
「さっ、行くよお姉ちゃん。このエレベーターを降りたら最後、もう後戻りはできないからね」
「その地獄へ行く手前みたいなやり取りやめてくれる!?」
「大丈夫だよ──骨は拾ってあげるから」
「あ、あんたねぇ!?」
「バカなやりとりをしている暇はありません。温厚温和な彼女ですが、怒らせれば寧ろ一番恐ろしいタイプです。時間遅れてあの冷たい笑みを見せられたくなければ覚悟を決めて下さい、ルナマリア」
「そうだよお姉ちゃん!」
「おのれらは怯える私をいじめてそんなに楽しいか、えぇ!?」
「いえ、だからそう言うつもりでは……」
「良いからもぅ、ほらいくよお姉ちゃん。不審な動きしてると警備に連絡いっちゃうから」
「部屋番号は……ここですね」
〈ブザー音〉
『──誰だ?』
「カガリ・ユラ・アスハ? サヤ・アマノです。ルナマリアとメイリンも指示通り同行させています」
『あぁ、来てくれたか。すまない少し待ってくれ』
〈ドアが開かれる〉
「──おまたせ。いらっしゃい、サヤ。それにホーク姉妹の2人も」
「む? キラ・ヤマト……大佐。それに」
「ザラ少佐まで……なんでここに?」
「お、お疲れ様です!」
「いや、こんな場で敬礼はしなくても良いのだが……俺達は警護に同席させてもらっている。大事な要人が3人も────外部に漏れれば狙えと言っているようなものだからな」
「サイも今はホテルフロントの方で警備の担当者に回ってるしね」
「ついでに言うなら国防軍は現在索敵を厳戒態勢にして待機中だ。有事の際はアマテラスから射出されたシールド発生装置でホテルを囲む事になっている」
「はぇ~、セキュリティだけでなくそんな備えまで」
「で、ヤマト大佐。ザラ少佐も……何なんですか、そのふざけた格好は?」
「あ、あはは……深くは聞かないで欲しい……ニャン」
「俺達だって好きでこんな格好をしているわけでは……ペン」
「ヤマト大佐は猫で、ザラ少佐はペンギン……着ぐるみパジャマ、ですか?」
「その通りだ」
「カガリ・ユラ・アスハ……貴方まで。と言うか貴方はライオンですか?」
「そうだよ。ラクスがこれじゃないとダメだと聞かなくてな」
「あぁ、オーブの獅子……ですね」
「で、今日は男子禁制のパーティだからな。2人は給仕係の猫さんとペンギンさんだ。キラ・ヤマト大佐も、アスラン・ザラ少佐もここには居ない。
サヤはともかく、ホーク姉妹の2人も、今日は気兼ねなく2人を顎で使ってくれて構わないから遠慮せず申し付けてくれ」
「と、いうわけなんだ……ニャン」
「お姫様方の仰せのままに、だ……ペン」
「ぶっ!?」
「ルナマリア、はしたないですよ。いくら2人が面白可笑しいとは言え、乙女がみだりに噴き出すのはNGです(小声)」
「だって、仕方ないじゃない!? 伝説的英雄が2人揃ってニャンとペンって語尾つけてんのよ!? 冷静でいられるかっての!? (小声)」
「もぅお姉ちゃんもサヤも。お2人を前に失礼な事言っちゃだめだって(小声)」
「とりあえず、ここで問答していても仕方ないだろう。一先ず部屋に入って──」
『カガリー! ホーク姉妹来たんでしょ。早く入れてあげてー』
「あぁ分かってるって!」
「と、言う訳で女王様がお呼びだ。気兼ねなく入ってくれ」
「3人の着替えはこれね。入って右の部屋で着替えて来てよ」
「私は……カッパですか?」
「えぇ、牛? 私牛なの!? どうしてぇ……」
「ルナマリアにはお似合いなのでは? 私は……柴犬、ですか?」
「ふっ、君も中々お似合いだぞ、サヤ」
「誰がちんちくりんですか!」
「ふぐっ!? ご、誤解だサヤ……」
「またそうやってナチュラルに人の神経を逆撫でするんだから……その気がないと言えば許されるわけじゃないよ」
「キラ、お前まで」
「はいはい、そこまでだ。話が進まないだろお前達。じゃあ、そう言う訳だから、3人共着替えたら奥の部屋に来てくれ」
「はい」
「はぁ……」
「了解しました」
一方その頃、復興が進んだオノゴロ市街では……
「ナタルー、こっちよ!」
「マリュー、それにフラガ大佐も。お疲れ様です」
「えぇ、お疲れ」
「お疲れさん……んで、副長。こちらが?」
「はい、お伝えしていましたこちらが──」
「元ミネルバ艦長、タリア・グラディス……現在は中佐です」
「副長のアーサー・トライン、現在は大尉であります」
「そう硬くなりなさんなって」
「初めまして……ではないし、私達は色々と縁も深いけれど改めて……マリュー・ラミアスよ」
「ムウ・ラ・フラガだ。縁深いと言えば俺もだがな」
「おやおや、僕達が最後か」
「みたいね。アンディがのんびり歩いていたせいかしら?」
「僕は、焦って動くのは趣味じゃないんだ。出立が送れたのは君のコーディネートが決まらなかったせいだろ?」
「あら、そんな事言って良いのアンディ?」
「はいはい、バルトフェルドさんにアイシャさんも。来て早々言い合いしないの。
2人共、こちらがナタルの言っていたミネルバの御2人。タリア・グラディスさんとアーサー・トラインさんよ」
「ほー、貴方がバジルール君の言っていた。いやはや、これまた美人艦長が来たものだ。ラミアス艦長といいバジル―ル君といい、美人艦長は英雄艦に乗ってるジンクスでもあるのかねぇ」
「それなら、アンディが負けたのも頷けるものね」
「御2人共、今ここでそんな会話をしなくても良いでしょう。折角の集まりなのですから」
「あぁ、そうだったな。すまんすまん」
「でも、良かったのかしら、ナタル? ナタルとグラディスは機関の話で忙しいんでしょ? 坊やとサヤも折角オーブに帰ってきたのに、会いに来てくれないくらいだし」
「坊やとサヤ? ってもしかしてクルースとヤヨイの2人の事ですかね、艦長?」
「その様ね……あの2人をそんな風に呼ぶ人間が居る。彼等も故郷では普通の兄妹だった、と言う事かしら」
「アイシャの言動は気にしない方が良いです、グラディス艦長。あれは基本、人を振り回す人間ですから。タケルもサヤも、ただ弄ばれていただけの話です」
「えっ、それは……本当なのかしら?」
「あぁ、そういえば確か……ユニウスセブン破砕作業の直後、ヤヨイが着艦したオーブの人に襲われたとかなんとか……えぇ!? じゃあこの人がその?」
「当時はサヤも正式にザフトに所属していたからな……一歩間違えれば大問題だったぞ」
「仕方ないじゃない。ミネルバに乗り合わせたら死んでたはずのサヤが生きて目の前にいるんですもの。あの抱き心地は失われたものだと諦めていたから、止められなかったのよ」
「──理解できたでしょう。グラディス艦長、これがアイシャの本質です。他人を弄ぶのが大好きな部類の人間ですよ」
「いけずねナタル。遊ぶのは身内だけよ。勿論、ナタルも含まれるわ」
「身内だろうと弄ぶなと言っている!」
「どぉどぉどぉ、副長落ち着きなさいって。
あ~なんだ、とにかくこれで揃ったんだし店に行こうぜ、な?」
「そうね。積もる話はないけど、折角だから今後を見据えて交流をしておきたいもの────さっ、こっちよ。案内するわ」
「じゃあ、揃った事だし始めるわよ、ラクス」
「はい、それでは────嬉しい夜に、乾杯!」
「「乾杯!!」」
「今日は、嬉しい夜なんですか、ラクス様?」
「はい。今日の会談で漸く、治安維持機関の本格的採択が成されました。これからフレイさんを筆頭に、メイリンさんもルナマリアさんも、勿論サヤやタケルも動き出す事が──いひゃ!?」
「ふ、フレイさん……何かおかしかったですか?」
「スタートダッシュでいきなり趣旨と違う道を突っ走るんじゃないわよ。ラクス、貴女なんて名目でここに呼び出したかもう一度言ってごらんなさい」
「何って、皆さんとまたパジャマパーティーをと──」
「ど、こ、の、世界にパジャマパーティーで各国首脳との会談の話をする女子が居るのよ! パジャマパーティーであなたが開きたかったのは女子会でしょ!」
「ま、まぁまぁフレイ。そんなに語気を荒げるとホーク姉妹が萎縮するだろ。特にルナマリア・ホークはラクスともフレイともほとんど初対面なんだから」
「失礼ね。私はちゃんとセルヴァで面通しは済ませているわ。そりゃあ、アマノ総括のお付きだからメイリンと顔を合わせる事は多いけど、ルナマリアだって別に知らないわけでは無いわよ」
「きょ、恐縮です……アルスター総裁」
「あぁ、良いのよ今日はプライベートなんだから。肩書何て禁止、とは言っても、呼び方はこまっちゃうでしょうから、そうね…………素直に名前で呼んでもらおうかしら?」
「いぇえ!? いやそれは──」
「敬称は許すわ。それに、名前で呼べば肩書って付け辛いでしょ?」
「あぁ、確かに。フレイ総裁、カガリ代表、ラクス議長……ちょっと呼び方的にしっくりこないですね。
フレイさん、カガリさん、ラクス……様。うぅ、ラクス様にさん付けはちょっと難しいよお姉ちゃん!」
「順応早すぎないあんた!? 難しいどころか私からすると既にハードル3つくらい飛び越えてるわよ」
「私は性分なのでそう馴れ馴れしく他者を呼ぶのも難しい所なのですが……」
「サヤは好きにしろ。どうせ言っても聞かないだろうし?」
「失礼な、私も大人になりました。分別は弁えております。
それに、お兄様と結ばれた今、カガリ・ユラ・アスハとラクス・クラインは私にとって義妹です。妹の頼み事くらい聞いて差し上げます」
「ほぅ、言ったな? ラクス、サヤがお姉ちゃんと呼んで良いらしいぞ?」
「まぁ、それでは────んっ、ラクスと呼んでくださいな、サヤお姉様?」
〈ゾワッ〉
「や、止めて下さいラクス・クラ……ラ、ラクス。貴方にお姉様等と呼ばれると、色んな意味で恐怖に鳥肌が立ちます」
「サヤ……あんたは対照的に順応性無いわね。妹キャラから脱却できてないじゃない」
「ルナマリア、私が姉だと言っているでしょう! この似非お姉ちゃん!」
「なっ、誰が似非お姉ちゃんよ! 正真正銘私はメイリン・ホークの姉ですが?」
「どうだか? ここまでを見ても、メイリンの方が物怖じしないしっかりとした姿でお姉さんらしく見えます。 姉妹を入れ替えた方が良いのではないですか?」
「やだもうサヤってば、そんな急におだててもタケルさんとのデート日は変えてあげないからね。それに、なんだかんだ私は、やっぱりお姉ちゃんには敵わないし……」
「うーん、なんだか3人共順応するのは早いよね。呼び名どころか、既に平常運転だし……」
「みたいだな。変に気を遣われないかと心配ではあったが、丁度良くサヤが良い緩衝材になってくれている。図ってか図らずかはともかくとして……」
「それじゃ、問題無さそうだし僕達は料理の給仕に入ろうか、アスラン」
「あぁ、了解だ。飲み物を用意してくる」
「うん、お願い────ん、電話?」
〈着信音〉
「こんな時間に連絡、誰からだ?」
「えっと……タケルからだ」
「なんでまた」
「──はい、もしもし。
うん、丁度さっき来たところだけど……問題は無さそうだよ……えっ? あぁ、まぁ大丈夫だとは思うけど、申請は? そっか、わかったよ。それじゃカガリ達に伝えておくね……うん、それじゃ、待ってるから」
「キラ、タケルはなんだって?」
「うん、なんかね────」
こうして、オーブの夜は更けていく…………
やっぱりこういう戦後の日常的な話のほうが作者は好き。
若い子たちがはしゃぐ一方で大人たちもしっとり楽しんでいるようです。
楽しかったら是非とも感想をいただけたら幸いです。