機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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Freedom編
プロローグ


 

 CE75

 現地時刻1:37

 

 

 

 空を、数多の弾頭が横切り。

 

 幾つもの機械人形が飛び交う。

 

 

 

 アフリカ共和国────その中で、地上に住むコーディネーターが集まり形成された経済特区オルドリン市。

 

 今ではプラントが有する地上の直轄地であるここは、蹂躙の最中であった。

 

 周辺都市カナジよりミサイルが放たれ降り注ぐと共に、飛翔したMS──105ダガーやウィンダムと言った、嘗ての地球連合主力MS達がオルドリン地区へと攻め入る。

 

 オルドリン市に配置されたザフト第117防衛隊は必死に応戦するが、決して要所でもないエリアにまともな戦力が配置されてるわけでもない。

 ジンやザウートと言った旧式MS等ではまるで歯が立たず、戦況は劣勢──否、物量と奇襲によってそもそも戦いと呼べるかすら怪しい。

 

 

 閃光が走るたび、街の輪郭が一つ、また一つと失われていく。

 道を埋めるのは瓦礫と火の粉、そして逃げ場を失い絶叫する人々だけ。

 逃げ遅れた子供ですら────灼熱の光は容赦なく、その命を焼いた。

 

 そこにあるのは、ただ一方的な破壊と殺戮だけであった。

 

 

 大戦を経て1年────世界は未だ、争いを絶やすことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙────地球軌道上。

 

 コンパス所属スーパーミネルバ級MS惑星強襲揚陸艦“ミレニアム”。

 

 

『コンディション・レッド発令! 

 アフリカ共和国、オルドリン自治区領内で、ブルーコスモスと思われる攻撃部隊が侵攻中』

 

 艦内に響くアラート。そして状況を知らせるアナウンスに、待機中の面々に緊張が走った。

 

 

「行動探査によると侵攻部隊はカナジ市街より侵攻したと推測────会敵予測、ネクスト05」

 

 艦橋に詰めるアルバート・ハインライン大尉は届いてくる状況を整理。

 早口に捲し立てられた情報を、無難に聞き届けるは艦長席に座る“アレクセイ・コノエ”大佐だ。

 

「コンパスHQ(ヘッドクォーター)並びに、オルドリン自治政府と回線を固定」

 

 少し軽い口調ながら芯のある声音に艦橋の空気が引き締まった。

 

 

 

 

 同艦────MS格納庫。

 

 暗夜を思わせる鏡面装甲を持つMSシンゲツへと乗り込むサヤ・アマノ。

 隣には大翼を背負うMSデスティニーへと、シン・アスカも乗り込んでいく。

 

「サヤ、急ぐぞ」

「シン、慌てないでください。まだ指示は出ておりません」

「そうは言ってもブルーコスモスなら出撃は確定でしょ」

「すぐ指示なんて出るわよ。出遅れるなんてありえないんだから」

 

 軽口と共に通信が入れば、“ゲルググ”に乗り込むルナマリアが。“ギャンシュトローム”に乗り込むアグネスがモニタに映し出された。

 

 更には格納庫内に並び立つ、白と橙赤色を基調としたコンパス主力MS“ムラサメ”にも、パイロットが次々と乗り込み、発信準備を急がせる。

 

 慌ただしい空気が、出撃に向けて緊張感を煽っていた。

 

 

 

 

 

 

 同時刻────コンパス拠点セルヴァ。

 

 

「オルドリン自治区…………また綺麗に抵抗の弱そうなところを」

 

 司令室の椅子に座り、フレイ・アルスターは唇を噛んだ。

 

 これまで何度も繰り返されたブルーコスモスによるテロ紛いの攻撃行動。

 全てコーディネーターをできるだけ多く巻き込むことを念頭においた、自爆侵攻ばかりである。

 此度もまた、コーディネーターが多く住み、防衛戦力が薄い自治領区を狙ってきていた。

 

 そんな脅威から世界を守るのが務めと宣言したコンパスにとって、まさに不倶戴天の敵というところである。

 

「──いかがしますか?」

 

 傍の副官が意味深に聞いてくれば、睨め付けるように視線を返した。

 この事態に動かぬ理由も、そして躊躇う事由もない。

 わかりきったことを聞くなと言外に伝えれば、紫陽の双眸は細められ頷かれた。

 それで良い、と言うことなのだろう────迷わないようにと発破をかけられたらしい。

 

 太鼓判を押されたフレイもまた、頷き返した。

 

「無論、動くわ。

 現時刻を持って緊急時対応B項を適用。これより24時間、コンパスは独自判断でオルドリン市の侵攻勢力の排除にあたる────アマノ総括、部隊は動ける?」

『既に即応態勢で待機済みです。ミレニアムからヴェステンフルス部隊長とアマノ小隊、アスカ小隊が。フォルトゥナではグラディス艦長の指示の元、議会承認後の救助活動を視野に物資と後詰め部隊を準備中。24時間以内に現着します』

 

 ミレニアムから通信で返してくるタケルの言葉に、わずかフレイは表情を険しくさせた。

 

「遅いわ12時間にして。人命救助は時間が要よ。承認は出させる。

 バジルール少佐、アスハ代表とクライン議長に至急議会の招集を要請。3時間後には理事国の半数以上が────事後承認の成立ラインが取れる様に図って」

『仰せのままに。時間を厳守しましょう』

「承知しました」

 

 指示を受け、退室するナタルとミレニアムでの指示に回るタケル。

 それを見送ると、フレイは司令室で大きく深呼吸し、口を開いた。

 

 

「セルヴァもこれより緊急時体制に移行します。状況報告は厳に。我々の任務は一つのミスも許されないわ。各員、確実に己の職務を果たしてください!」

 

 

 応じる声は強く重なった。

 頼もしい現場の返答に、フレイは硬くなりすぎた肩を僅かに緩めるのだった。

 

 

 

 

 

 

「聞いての通りだ、ハイネ」

 

 フレイからの指示を受け、タケルはミレニアム艦橋に映し出されるハイネへと投げた。

 

『オーライ。勧告は?』

「現着と同時に。だが容赦は無しだ。被害を増やさないためにも敵勢力排除は最速で行ってくれ」

『了解だ、わかりやすくて助かるぜ』

 

 容赦は無し────その言葉に乗せられた冷たい声音。

 わかりやすいタケルの憤りを受けて、ハイネにはそれが戦意として伝播する。

 平和に暮らすだけの人々を無作為に巻き込むテロ行動。こんな非道を行う者達に容赦の必要はない。

 

 これがまだ進行途中であれば勧告の1つでもかけるところだが、既に敵勢力は()()してきているのだ。

 既に事が起こっている今、平和的解決は放棄されている。

 

「準備が出来次第発進してくれ。僕も直ぐに向かう」

『急いでくれよ』

「わかってるさ────メイリン」

「艦橋とシロガネとの通信回線は固定してあります。お気をつけて」

「え、あ、うん。ありがとう」

 

 指示を下すよりも先を読まれて、タケルはわずか息詰まった。

 優秀であるのは嬉しいが、出撃前の一言くらい素直にかけさせて欲しいものだと、胸中でごちる。

 

「──はぁ、コノエ艦長、後を頼みます」

「承知しました。ご武運を」

 

 代わりに告げるべき艦長にだけ一声掛けてから、タケルは艦橋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

「よし! ってわけだから行くぞお前ら!」

 

 発進準備を終え、その時を今かと待ち構える面々に、ハイネは威勢の良い声を張り上げた。

 

「アマノ隊は準備万端です、ヴェステンフルス部隊長────いつでも行けます」

「こっちもだ、ハイネ。ルナとアグネスも完了してる」

「そいつは上々。ウィンザー、発進シークエンスを頼む」

『了解、発進シークエンスを開始します』

 

 CICアビー・ウィンザーよりミレニアムのカタパルトが起動。

 甲板両舷の滑走路が展開し、先んじてアマノ隊のムラサメ2機が甲板へと押し上げられていく。

 

 シグナルはオールグリーン。

 パイロットに射出のタイミングが委ねられた。

 

『アマノ隊、発進どうぞ』

 

「ムラサメ、アマギ機発進します!」

「ムラサメ、ババ機行くぞ!」

 

 白と橙赤色を基調としたコンパス主力MSが、二筋の光となって宇宙へと飛び出した。

 

 続いてカタパルトへと競り上がるのは、真紅を基調としたゲルググと、白き騎士を思わせるギャンシュトローム。

 

『ゲルググ、ギャン、発進スタンバイ────発進どうぞ』

 

「ルナマリア・ホーク────ゲルググ、行くわよ!」

「アグネス・ギーベンラート────ギャン、出ます!」

 

 ルナマリアとアグネスもまた、慣れた手つきで機体を滑走路へと走らせる。

 火花のような推進光を曳きながら、二機は軌道上へと躍り出た。

 

 

 続いてカタパルトへと押し上げられるのは、暗夜と紅蓮。

 

 眩く光を反射する鏡面装甲を纏うシンゲツ。

 そして既にPS装甲を展開し、紅蓮の大翼を広げるデスティニーである。

 

『シンゲツ、デスティニー、発進スタンバイ────発進どうぞ』

「先に行きますよ、シン────サヤ・アマノ、シンゲツ参ります!」

 

 細身の機体が、勢いに負ける事なく綺麗にカタパルトを飛び立っていく。

 その背を見送りながら、シンもまたフットペダルを踏み込んだ。

 

「シン・アスカ────デスティニー、行きます!」

 

 紅蓮の翼が大きく翻り、デスティニーもまたサヤの後を追うように宇宙へと駆け上がった。

 

 

 

 そして最後にカタパルトへと競り上がるのは、目も眩むほど白く染められたPS装甲。

 

 ZGMF-X62S アスパイア。

 

 嘗てはミゲル・アイマンの愛機であり、今はこの男、ハイネ・ヴェステンフルスの乗機となっている。

 

『ヴェステンフルス部隊長、アスパイア発進準備完了です』

「オーライ! ハイネ・ヴェステンフルス────アスパイア、出撃するぞ!」

 

 巨大なバーニアが熱と光を吹き上げる。

 純白のMSは一際強い推進光を残し、ミレニアムより宇宙へと飛び立った。

 

 

 

「総員、大気圏突入体勢を取れ!」

 

 ハイネの号令と共に各機は姿勢を制御。

 デスティニー、シンゲツ、アスパイアはシールドを展開し構え、ゲルググとギャン、ムラサメは大気圏突入用のバルーンユニットを展開する。

 

 赤熱する視界の中、コンパスの先鋒達は重力に引かれながら地球へと降下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイネ達が飛び立った数分後。

 ミレニアムのカタパルトが最後の動きを見せる。

 

 競り上がったその機体は眩い白銀の装甲を纏い、その背には細身のフレームに不釣り合いにも思える大型のスラスターユニットが多数突き刺さる。

 

 ORB -0000 機体名はシロガネ・コクウ

 

 パイロットは無論、タケル・アマノその人である。

 

『アマノ総括、シロガネ、発進シークエンスを完了────タイミングを譲渡します』

「了解した。コノエ艦長、戦況は?」

『敵は中隊規模。まぁ現地からの報告なので多く見積もっておくに越したことはないでしょう』

「油断や慢心はありませんよ」

『総括、ご存知でしょうが今のシロガネは──』

「わかってますよ、ハインライン大尉。シロガネは現在改修中でドラグーンを積んでいない────わかってます」

 

 通信に飛び込んでくるアルバートの言葉に、タケルは今更とでも言う様に返した。

 そんな返答が琴線に触れたか、アルバートは目を細めてわずかに身を乗り出す様にすると、再び口を開く。

 

『欠陥機にも程があります。シロガネ・コクウは武装システムの根幹をドラグーンに依存している。いくら総括の技量があるとはいえ短銃型のビャクヤ2本しか武装を積んでいない状態のシロガネで出撃するのは余りにも無茶──』

『はいはい、タケルさんはどうせなんとでもしますから心配しなくても大丈夫ですよ』

『メイリン・ホーク!? 待て、まだ話は──』

 

 メイリンによって無理矢理に通信を切られたアルバート。

 まだ繋がってるコノエの背後でやり取りが薄らと伺えるが、タケルは意図してそれを見ない様にした。

 

「やれやれ、僕は大尉に信用されてない様で」

『心配されてるのですよ。それは私とて同じことです』

 

 こうしてチクリと刺してくるところが、この男の良いところであり悪いところでもある────タケルはなんともいえない気持ちに眉を顰めた。

 

「では、懸念は戦果で払拭してみせますよ」

『改めてですが、ご武運を』

 

 2度目の武運を祈られて、タケルは頷いてから一度コノエとの通信を切った。

 

 

 落ち着いて、目を閉じれば。すっと、入り込んでいける。

 容易くあの状態へと落ちる事ができる。

 

 随分ともう慣れた、あの感覚へと──

 

 

 

 

 種が、開いた。

 

 

 

 

 フットペダルを踏み込み、母なる青い星を見つめる。白銀に熱が入り背部に光が灯った。

 

 

「タケル・アマノ────シロガネ、出撃する!」

 

 

 巨大な光の花を咲かせて、白銀は再び戦場へと飛び立った。

 




もう頭の中はfreedom流れ続けてる感じ。西川ニキ最高かよ。

原作との相違点はそれなりにあるけど
シンはコンパス所属。ルナは一応ザフトからの出向。アグネスとハイネも出向側。
サヤ、ババ、アマギの3人もオーブからの出向扱い。
タケルを含め、ファントムペイン組はもちろんコンパス直属。
とりあえず今の時点ではここまでですかね。

さて、ついに描き始めました自由編。
そこまで長くはならないと思いますが、どうぞ最後の連載、楽しんでいってください。
感想よろしくお願いします。


ちょっと嬉しいのがタケルのシロガネ出撃セリフ。
destiny編のユニウス破砕以来なのでようやく、現実世界で3年ぶりにかけたって話。
主人公がちゃんと主人公機で出撃できました。ありがとう。

劇場版で活躍して欲しい子アンケート

  • 忠犬主人公シン
  • お兄様至上主義サヤ
  • ザ・お姉ちゃんルナマリア
  • オーブ三羽烏
  • エクステンデッド組
  • ユリス&レイ
  • 一応主人公タケル
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